説明

樹脂封止型モジュール

【課題】充分な耐振性を持つとともに、はんだ接合部を容易に視認することができる樹脂封止モジュールを提供する。
【解決手段】開口部を有する箱状ケース22と、開口部を臨むケース底面部に開口部に向けて植立された金属端子24と、金属端子24に組み付けられ、表面に電子部品が実装される回路基板42とを備え、回路基板42が埋没するようにケース内を充填樹脂材27で封止した樹脂封止型モジュール10において、
回路基板42に取り付けられるとともに、金属端子24にはんだ接合される接合用端子45をさらに備え、金属端子24は、ケース底面部から突出した位置にキンク部24Aを有し、金属端子24と接合用端子45とのはんだ接合部50および金属端子24のキンク部24Aが充填樹脂材27の外部に露出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐振性の要求される電子機器のモジュールとして、樹脂により封止される樹脂封止型モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐振性の要求される電子機器の組み付け構造として、例えば、特許文献1に開示されているように、ケースの底面部に金属端子が植立され、この金属端子の先端部に回路基板がはんだ付けされたものが考えられている。金属端子には、曲線状に湾曲した湾曲部(キンク部)が形成されており、この湾曲部において振動の吸収を行い、はんだ付け部に応力が加わることを低減している。さらに、ケース内には樹脂材が充填され、これにより耐振性の向上を図っている。
【0003】
金属端子と回路基板の組み付け部は、はんだ付けが施され、回路基板のはんだ付け部表面はフィレットを引き、回路基板裏は同様に金属端子に対してはんだが馴染む状態であり、はんだ上がりが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−26955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、耐振性が要求される電子機器の組み付け構造には、キンク部を有した金属端子が用いられるとともに、耐振性を向上させるための樹脂材が充填されている。しかしながら、樹脂充填により、金属端子のキンク部も樹脂で覆われてしまうため、キンク部における振動吸収効果が低減するという問題があった。
【0006】
また、金属端子と回路基板とを接合するはんだ付け部は、樹脂充填により覆われてしまい、はんだ付けの状態を確認することが困難になるという問題があった。
【0007】
この問題を解決するための一つの方法として、金属端子と回路基板とのはんだ付け部確認手段として、従来、回路基板の裏面側に確認用小窓を設ける方法、または回路基板に組み付けられてなるパワーモジュールに一定の空隙を設け、回路基板裏面のはんだ上がりを確認する方法が用いられるが、充填樹脂材が空隙から流れ出るという問題があり、解決策としては未だ不十分であった。
【0008】
そこで、本発明は、充分な耐振性を有し、はんだ接合部を容易に視認することができる樹脂封止モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂封止型モジュールは、開口部を有する箱状ケースと、開口部を臨むケース底面部に開口部に向けて植立された金属端子と、金属端子に組み付けられ、表面に電子部品が実装される回路基板とを備え、回路基板が埋没するようにケース内を充填樹脂材で封止した樹脂封止型モジュールにおいて、回路基板に取り付けられるとともに金属端子にはんだ接合される接合用端子をさらに備え、金属端子は、ケース底面部から突出した位置にキンク部を有し、金属端子と接合用端子とのはんだ接合部および金属端子のキンク部が充填樹脂材の外部に露出していることを特徴とする。
【0010】
このような構成を有する発明によれば、金属端子のキンク部が充填樹脂材に埋没することなく、充填樹脂材の外部に露出していることにより、キンク部が充填樹脂材に固定されず、自由度を保つため、回路部品を実装した回路基板を組み付けた際、振動吸収が効果的に行われ、はんだ接合部のクラックの発生を防止することができる。
また、接合用端子を設け、該接合用端子を介して金属端子と回路基板とを接続しているので、金属端子と接合用端子とのはんだ接合部が充填樹脂材に埋没することなく、充填樹脂材の外部に露出することにより、はんだ接合部の状態を容易に視認することが可能となる。
【0011】
また、前記回路基板に貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通するように金属端子が前記ケース底面部に植立され、前記金属端子と前記接合用端子とのはんだ接合部が前記金属端子のキンク部よりも前記回路基板から離間していることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、金属端子と接合用端子とのはんだ接合部と回路基板との間に、金属端子のキンク部が位置することとなり、はんだ接合部に加わる振動の影響を効果的に低減することができる。
【0013】
また、本発明の樹脂封止型モジュールは、キンク部は、金属端子が直線状に屈曲する「く」の字、「コ」の字、または台形の形状であることを特徴とする。
前記屈曲形状のキンク部を有することにより、湾曲した形状と比べて柔軟性を有し、上下方向の振動吸収効果に優れている。また、同じ幅寸法のキンクに加工しやすく(加工における寸法バラツキが小さい)、複数本植立した金属端子24のキンク部に対する力の伝わり方が均一となる。
【0014】
また、本発明の樹脂封止型モジュールは、回路基板上には、はんだ接合部を覆うカスタムコネクタが設けられ、カスタムコネクタには、接合部を外部から視認する窓部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
カスタムコネクタの窓部を介して、カスタムコネクタ内のはんだ接合部を外部から視認できることにより、カスタムコネクタによりはんだ接合部を保護しながらも、はんだ接合部の確認を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂封止型モジュールによると、充分な耐振性を有するとともに、はんだ接合部を容易に視認することができる樹脂封止モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂封止型モジュールを示す断面図である。
【図2】樹脂封止型モジュールのパワーモジュール部を示す断面図である。
【図3】樹脂封止型モジュールの集積回路基板部を示す断面図である。
【図4】金属端子と接合用端子との接合部を示す斜視図である。
【図5】回路基板上に設けられたカスタムコネクタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る樹脂封止型モジュール10を示す断面図である。図1に示すように、樹脂封止型モジュール10は、パワーモジュール部20(図2)および集積回路基板部40(図3)を有している。
【0020】
図1および図2に示すように、パワーモジュール部20は、開口部を有する箱状ケース22の底面部にアルミベース基板23を有し、アルミベース基板23から箱状ケース22の開口部に向けて複数の金属端子24が植立されている。各金属端子24は、アルミベース基板23の配線部分と電気的に接続されている。
【0021】
本実施の形態の場合、金属端子24は、銅製の直径0.6mmの丸棒形でなり、その一部にキンク部24Aが設けられている。このキンク部24Aは、金属端子24の一部において直線的に屈曲した「く」の字、「コ」の字、または台形の形状を有している。このように、直線的に屈曲した形状を有していることにより、湾曲した形状と比べて柔軟性を有し、上下方向の振動吸収効果に優れている。また、同じ幅寸法のキンクに加工しやすく、複数本植立した金属端子24のキンク部に対する力の伝わり方が均一となる。
【0022】
図1および図3に示すように、集積回路基板部40は、回路部品41を主面(ケース底面と対向しない表面)に実装した回路基板42と、この回路基板42の主面に設けられたカスタムコネクタ43とを有している。カスタムコネクタ43は、その内部に複数の接合用端子45が設けられている。
本実施形態の場合、カスタムコネクタ43の材質は、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂)またはPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の樹脂材であり、また、接合用端子45は、銅製の断面四角形形状の角棒で構成される。このようにカスタムコネクタ43を用いて、接合用端子45を回路基板上に取り付けることにより、接合用端子45の回路基板42への取り付けを容易にすることができるとともに、金属端子24と接合用端子45との接合部(はんだ接合部)50を保護することができる。
【0023】
接合用端子45は、回路基板42の主面側配線部分等にはんだ付けされ、これにより、カスタムコネクタ43が回路基板42に固定される。
【0024】
複数の接合用端子45は、その各々が対応する金属端子24と接合されるように配列されている。回路基板42には、金属端子24を挿通するための複数の貫通孔42Aが、金属端子24の配列に応じた位置に形成されている。この貫通孔42Aの直径は、金属端子24のキンク部24Aを挿通し得る程度の大きさとなっている。
【0025】
パワーモジュール部20の箱状ケース22内には、エポキシ樹脂等の充填樹脂材27が充填されており、金属端子24を回路基板42の対応する貫通孔42Aに挿通させ、集積回路基板部40を、パワーモジュール部20に組み付けることにより、樹脂封止型モジュール10が得られる。
図4に示すように、金属端子24と接合用端子45とは、接合部50においてはんだ付けにより接合される。この接合部(はんだ接合部)50は、回路基板42および金属端子24のキンク部24Aよりも上部に位置し、充填樹脂材27に埋没することなく、充填樹脂材27の外部に露出している。
【0026】
充填樹脂材27’は、パワーモジュール部20に集積回路基板部40を組み付けた状態において、回路基板42を封止し得る程度の充填量で充填されている。これにより、回路基板42を含めて充填樹脂材27、27’によって封止されることにより、耐振性の向上が図られている。
【0027】
金属端子24においては、集積回路基板部40がパワーモジュール部20に組み付けられた状態において、回路基板42よりも接合部50側であって、接合部50よりも回路基板42に近い位置にキンク部24Aが形成されている。
また、金属端子24においては、充填樹脂材27、27’に埋没することなく、充填樹脂材27、27’の外部に露出する位置にキンク部24Aが形成されている。これにより、キンク部24Aが充填樹脂材27、27’によって固定されることなく、自由度を保つため、集積回路基板部40の組み付け構造に対して、耐振性を効果的に発揮することができる。
【0028】
すなわち、金属端子24のキンク部24Aは、充填樹脂材27、27’に埋没することなく自由度を保っていることにより、パワーモジュール部20と集積回路基板部40との間に生ずる相対変位は、キンク部24Aによって柔軟に吸収される。これにより、金属端子24と接合用端子45との接合部50におけるはんだにクラック等が発生することを防止することができる。
【0029】
また、金属端子24においては、集積回路基板部40がパワーモジュール部20に組み付けられた状態において、パワーモジュール部20の底面部(アルミベース基板23)から、回路基板42、キンク部24A、接合部50の順に設けられている。これにより、パワーモジュール部20と集積回路基板部40との間に生ずる相対変位は、キンク部24Aによって柔軟に吸収されるとともに、金属端子24と接合用端子45との接合部50は、キンク部24Aと同様に充填樹脂材27、27’に埋没することなく、充填樹脂材27、27’の外部に露出した状態となる。これにより、接合部50は、外部から容易に視認可能となる。
【0030】
図5に示すように、カスタムコネクタ43には、当該カスタムコネクタ43の内部の接合部50が外部から視認可能な窓部43Aが形成されている。この窓部43Aは、集積回路基板部40がパワーモジュール部20に組み付けられた状態において、充填樹脂材27、27’に埋没することなく外部に露出する位置に形成されている(図1)。
また、本実施形態の場合、複数の金属端子24が回路基板42の対向する両側縁部に沿って配置されることに応じて、これらの金属端子24と接合用端子45との各接合部50をカスタムコネクタ43の外部から視認し得るように、窓部43Aは金属端子24の配列方向を長手方向とする長方形状に形成されている。
【0031】
これにより、金属端子24と接合用端子45との接合部50におけるはんだ付けの状態(はんだ付け部表面のフィレット51の状態)および当該はんだ付け部からのはんだ上がりの状態を、窓部43Aを介して外部から視認することができる。
【0032】
回路基板と金属端子とを直接はんだ付けする従来の構成においては、回路基板を充填樹脂材によって封止した場合、回路基板と金属端子とのはんだ付け部分を外部から確認することが困難になるが、本実施形態においては、回路基板42の上部において接合用端子45と金属端子24とが接合部50においてはんだ付けされることにより、回路基板42を充填樹脂材27、27’によって封止しても、接合部50が充填樹脂材27、27’に埋没することがなく、この部分を視認することが可能となる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態の樹脂封止型モジュールによれば、振動を吸収するためのキンク部24Aは、充填樹脂材27、27’の外部に位置することにより、充填樹脂材27、27’に固定されず、自由度を持つため、回路基板の組み付け構造に対して耐振性を効果的に発揮し、はんだクラックの発生を防ぐことができる。
【0034】
また、回路基板42上に設置したカスタムコネクタ43にはんだ接合部(接合部50)を確認するための窓部43Aを設けることにより、外観上容易にはんだ上がりを確認することが可能となる。このため、従来のように、回路基板の裏面側へのはんだ部のはんだ上がり確認用の小窓、または空隙を設ける必要がなくなり、充填樹脂材が空隙から流れ出るという不具合を回避することができる。
【0035】
なお、上述の実施の形態においては、金属端子24として、銅製の直径0.6mmの丸棒形のものを用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、材質、直径、断面形状は、種々のものを用いることができる。
【0036】
また、上述の実施の形態においては、接合用端子45として、銅製の断面四角形形状の角棒を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、材質、断面形状は種々のものを用いることができる。
【0037】
また、上述の実施の形態においては、金属端子24に形成されたキンク部24Aとして、直線的に屈曲した形状としたが、これに限られるものではなく、曲線を含める形状等、要は、当該キンク部24Aにおいて、パワーモジュール部20と集積回路基板部40との相対変位を柔軟に吸収し得る形状であれば、種々の形状を適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 樹脂封止型モジュール
20 パワーモジュール部
22 箱状ケース
23 アルミベース基板
24 金属端子
24A キンク部
27、27’ 充填樹脂材
40 集積回路基板部
41 回路部品
42 回路基板
42A 貫通孔
43 カスタムコネクタ
43A 窓部
45 接合用端子
50 接合部(はんだ接合部)
51 フィレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する箱状ケースと、前記開口部を臨むケース底面部に前記開口部に向けて植立された金属端子と、前記金属端子に組み付けられ、表面に電子部品が実装される回路基板とを備え、前記回路基板が埋没するように前記ケース内を充填樹脂材で封止した樹脂封止型モジュールにおいて、
前記回路基板に取り付けられるとともに、前記金属端子にはんだ接合される接合用端子をさらに備え、
前記金属端子は、前記ケース底面部から突出した位置にキンク部を有し、
前記金属端子と前記接合用端子とのはんだ接合部および前記金属端子のキンク部が前記充填樹脂材の外部に露出していることを特徴とする樹脂封止型モジュール。
【請求項2】
前記回路基板に貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通するように金属端子が前記ケース底面部に植立され、
前記金属端子と前記接合用端子とのはんだ接合部が前記金属端子のキンク部よりも前記回路基板から離間していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型モジュール。
【請求項3】
前記キンク部は、前記金属端子が直線状に屈曲する屈曲形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂封止型モジュール。
【請求項4】
前記回路基板上には、前記はんだ接合部を覆うカスタムコネクタが設けられ、前記カスタムコネクタには、前記接合部を外部から視認する窓部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂封止型モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−77311(P2011−77311A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227458(P2009−227458)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)