説明

樹脂板の再生方法

【課題】樹脂板を比較的簡便に再生できる樹脂板の再生方法を提供する。
【解決手段】道路に沿って設置された遮音用等に用いる樹脂板の再生方法であって、再生する樹脂板1’のコーティング層3および基板2の一部を除去し、除去した部分Bにフリラジカル補足性官能基を分子中に有する樹脂を含む保護剤を塗布することにより保護層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂板の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂板としては、様々なものが知られており、例えば、遮音のために高速道路に沿って設置された透光性のものが知られている。この種の樹脂板は、紫外線などの影響によって表面部分が黄変して劣化する。劣化した樹脂板は、例えば新しい樹脂板と取り替えられる。
【0003】
上記のごとく劣化した樹脂板を取り替える方法としては、具体的には例えば、樹脂板の黄変度を測定し、黄変度が所定値を超えたものを新しい樹脂板と取り替える方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この方法においては、劣化した古い樹脂板を新しいものに取り替えるため、古い樹脂板を利用できないという問題がある。
【0006】
これに対して、古い樹脂板を利用すべく、該樹脂板をいったん溶解して再度板状に成形する樹脂板の再生方法が考えられる。
ところが、斯かる樹脂板の再生方法は、再度板状に成形するという煩雑な工程を要することから、古い樹脂板を簡便に再生できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、樹脂板を比較的簡便に再生できる樹脂板の再生方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る樹脂板の再生方法は、樹脂板の表面部分を除去する表面除去工程を実施することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る樹脂板の再生方法においては、樹脂板の一部である表面部分を除去するため、必ずしも樹脂板全体を加工する必要がないことから、比較的簡便に古い樹脂板を再生することができる。
【0010】
本発明に係る樹脂板の再生方法は、前記表面除去工程の後に、前記樹脂板の表面部分が除去されることにより生じた面に保護剤を塗布する塗布工程を実施することが好ましい。
前記保護剤を塗布することにより、再生した再生樹脂板の劣化を抑制できるという利点がある。
【0011】
本発明に係る樹脂板の再生方法は、前記保護剤が、フリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂を含むことが好ましい。
前記保護剤が斯かる樹脂を含むことにより、紫外線によってフリーラジカルが発生しても該フリーラジカルが保護剤において捕捉されて安定化される。従って、再生した再生樹脂板の紫外線による劣化を抑制できるという利点がある。
【0012】
本発明に係る樹脂板の再生方法においては、前記表面除去工程で用いる前記樹脂板が屋外で使用された樹脂板であることが好ましい。また、前記表面除去工程で用いる前記樹脂板が、道路に沿って設置された遮音用樹脂板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る樹脂板の再生方法は、樹脂板を比較的簡便に再生できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、表面除去工程を実施する前の樹脂板の断面を模式的に表した図。(b)は、表面除去工程を実施した後の樹脂板の断面を模式的に表した図。(c)は、塗布工程を実施した後の樹脂板の断面を模式的に表した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る樹脂板の再生方法、即ち、再生樹脂板の製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の樹脂板の再生方法における樹脂板の断面を模式的に表したものである。
【0016】
本実施形態の樹脂板の再生方法は、樹脂板の表面部分を除去する表面除去工程を実施するものである。該再生方法を実施することにより、古い樹脂板を再生させることができ、また、該再生により再生樹脂板を製造することができる。
好ましくは、本実施形態の樹脂板の再生方法は、前記表面除去工程の後に、前記樹脂板の表面部分が除去されることにより生じた面に保護剤を塗布する塗布工程を実施する。
【0017】
前記表面除去工程において用いる再生前の樹脂板1’の形状としては、平板状、湾曲板状などが挙げられる。また、前記樹脂板1’は、透光性のものであってもよく、不透明のものであってもよい。
【0018】
前記樹脂板1’としては、例えば、屋外で使用されたもの、又は、屋内で使用されたものなどを用いることができる。
屋外で使用された樹脂板1’は、通常、紫外線などの影響を受け、表面部分が黄変すること等により劣化している。
屋内で使用された樹脂板1’も、長期間にわたって使用されると、照明光に含まれる紫外線などの影響により、表面部分が劣化し得る。
【0019】
屋外で使用された樹脂板1’としては、具体的には例えば、高速道路などの道路における自動車等の騒音を遮蔽すべく、道路に沿って設置された遮音用樹脂板を用いることができる。
【0020】
該遮音用樹脂板は、例えば、透光性を有し矩形状に形成されている。また、遮音用樹脂板は、一方の面が道路側を向くように配置されており、通常、道路に沿って複数設置されている。また、該防音用樹脂板は、縁端部において型枠にはめ込まれて設置されている。
【0021】
前記再生前の樹脂板1’としては、例えば、図1(a)に示すように、板状に形成された樹脂製の基板2と、該基板2の表面を覆うコーティング層3とを備えたものを用いることができる。該コーティング層3は、該基板2の少なくとも一方の面側に配されている。また、上述したように、屋外で使用された樹脂板1’は、紫外線などにより劣化し表面部分が黄変(Aで示す)している。
なお、前記樹脂板1’は、前記基板2のみを備えたものであってもよい。
【0022】
前記基板2の材質は、特に限定されず、該材質としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
前記基板2の材質としては、特に遮音用樹脂板などの樹脂板において耐衝撃性が優れたものになるという点で、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0023】
前記コーティング層3の材質は、特に限定されず、該材質としては、前記基板2の材質と同様に、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、又は、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0024】
前記コーティング層3には、紫外線による基板2の劣化を抑制すべく、従来公知の一般的な紫外線吸収剤やフリーラジカル捕捉剤などが含まれ得る。
【0025】
前記コーティング層3の厚みは、特に限定されず、通常、1〜100μmである。
【0026】
前記コーティング層3は、具体的には例えば、樹脂を含むコーティング組成物を前記基板2の表面に塗布することにより形成されている。また、例えば、樹脂フィルムを前記基板2の表面に貼り付けることにより形成されている。
また、前記コーティング層3は、例えば、コーティング層3を構成する成分と基板2を構成する成分とを共押出成形することにより形成されている。該共押出成形において、コーティング層3は、基板2の表面と接するように形成される。
【0027】
前記表面除去工程においては、例えば、再生前の樹脂板1’の黄変劣化した部分(A)を除去することにより、該樹脂板1’の表面部分を除去する。
具体的には、再生前の樹脂板1’が前記基板2と前記コーティング層3とを備えている場合、前記表面除去工程においては、例えば、コーティング層3と基板2の表面側部分とを除去することにより、樹脂板1’の表面部分を除去する。
【0028】
前記表面除去工程においては、再生前の樹脂板1’の両面側の表面部分を除去してもよく、片面側の表面部分を除去してもよい。
【0029】
前記表面除去工程を実施することにより、図1(b)に示すように、基板2の少なくとも一方の面側に、樹脂板1’の表面部分を除去することによって生じた新たな面Bができる。
【0030】
前記表面除去工程においては、通常、再生前の樹脂板1’の表面から0.05mm〜1mm深さまで、表面部分を除去する。
【0031】
前記表面除去工程における除去の方法としては、例えば、機械的な除去方法、化学的な除去方法などを採用することができる。これらの方法は、組み合わせることができる。
【0032】
機械的な除去方法としては、具体的には例えば、グラインダーによる研削、ダイアモンド粉末の存在下におけるバフ研磨などを採用することができる。また、はつり工具やワイヤーブラシ等を用いた人力による除去方法を採用することができる。
【0033】
化学的な除去方法としては、具体的には例えば、有機溶剤による表面部分の溶解除去などを採用することができる。
【0034】
前記塗布工程においては、再生前の樹脂板1’における表面部分が除去されることによって生じた面Bに、該面Bを保護する保護剤を塗布する。
【0035】
前記塗布工程においては、図1(c)に示すように、上記の面Bに接する層状の保護層4が形成されるように、前記保護剤を塗布する。該保護剤は、含まれる成分の少なくとも一部が前記保護層4を形成するように調製されている。
上記の面Bに保護剤を塗布することにより、前記表面除去工程によって生じた面Bにおける傷を保護剤で埋めることができることから、再生した再生樹脂板1”の外観が良好なものになるという利点がある。
【0036】
前記保護剤としては、具体的には例えば、無機金属酸化物を含むもの、有機化合物を含むものを用いることができる。
【0037】
前記無機金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン又は酸化亜鉛などを用いることができる。
【0038】
前記有機化合物としては、例えば、樹脂、又は、加水分解により金属酸化物を生成する金属含有有機化合物などを用いることができる。
【0039】
前記樹脂は、基本分子構造が特に限定されるものではなく、該基本分子構造としては、ポリアクリル酸エステル構造、ポリエチレン構造、ポリプロピレン構造、又は、ポリ塩化ビニル構造などが挙げられる。
【0040】
前記樹脂としては、例えば、フリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂、紫外線吸収性官能基を分子中に有する樹脂、又は、フリーラジカル捕捉性官能基及び紫外線吸収性官能基の両方を分子中に有する樹脂等などを用いることができる。
【0041】
前記フリーラジカル捕捉性官能基は、フリーラジカルを捕捉し不活性化するものである。フリーラジカルは、例えば、紫外線などによって有機化合物分子の結合が切断されることによって生じる。
【0042】
前記フリーラジカル捕捉性官能基としては、例えば、ヒンダードアミン基等が挙げられる。
前記ヒンダードアミン基としては、例えば、下記一般式(1)に示す分子構造のものが挙げられる。式(1)における分子構造においては、水素原子がアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子などの他の原子に置換されていてもよい。
なお、式(1)において、Rは、H、アルキル基、ヒドロキシル基、又はアルコキシ基を示す。
【0043】
【化1】

【0044】
前記紫外線吸収性官能基は、波長190〜400nmの紫外線を吸収し光エネルギーを熱エネルギーに変換するものである。前記紫外線吸収性官能基としては、例えば、ベンゾフェノン系官能基、ベンゾトリアゾール系官能基、トリアジン系官能基、サリチレート系官能基、及び、置換アクリロニトリル系官能基からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
前記ベンゾフェノン系官能基としては、例えば、ベンゾフェノン[H56(CO)C65]の分子構造を有する官能基が挙げられる。斯かる分子構造においては、ベンゼン環における水素原子が、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子などの他の原子に置換されていてもよい。
【0046】
前記ベンゾトリアゾール系官能基としては、具体的には例えば、下記式(2)で表される分子構造を有する官能基が挙げられる。式(2)における分子構造においては、ベンゼン環における水素原子が、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子などの他の原子に置換されていてもよい。
【0047】
【化2】

【0048】
前記トリアジン系官能基としては、具体的には例えば、下記式(3)で表される分子構造を有する官能基が挙げられる。
【0049】
【化3】

【0050】
前記サリチレート系官能基としては、具体的には例えば、サリチル酸エステル化合物の分子構造を有する官能基が挙げられる。
【0051】
前記置換アクリロニトリル系官能基としては、具体的には例えば、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートの分子構造を有する官能基が挙げられる。
【0052】
前記保護剤に含まれる樹脂としては、再生した再生樹脂板1”の紫外線による劣化がより抑制されるという点で、上記のフリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂が好ましく、上記の紫外線吸収性官能基及び上記のフリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂がより好ましい。
【0053】
前記保護剤に含まれる上記の金属含有有機化合物としては、例えば、アルコキシル基含有シラン等を用いることができる。
前記アルコキシル基含有シランとしては、具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを用いることができる。
【0054】
前記保護剤は、硬化樹脂を生成させる成分を含んでいてもよい。該成分としては、具体的には例えば、メラミン樹脂を生成させるメチロールメラミン、イソシアネート架橋反応を起こすイソシアネート基含有化合物などを用いることができる。
【0055】
前記保護剤は、上記の樹脂や金属含有有機化合物以外の有機化合物として、該樹脂などを溶解する溶媒を含み得る。
前記保護剤は、構成成分としての前記溶媒を含むことによって、塗布するために適当な粘度に調製される。
【0056】
前記溶媒としては、例えば、水、又は有機溶媒を用いることができる。
【0057】
前記有機溶媒としては、従来公知の一般的なものを用いることができ、具体的には例えば、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類溶媒、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類溶媒、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル類溶媒、又は、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、若しくは2−メチル−1−プロパノール等のアルコール類溶媒などを用いることができる。また、分子中にケトン基とヒドロキシル基とを有する4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ダイアセトンアルコール)などを用いることができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
前記有機溶媒としては、フリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂をより溶解させることができるという点で、エステル類溶媒又はアルコール類溶媒が好ましく、酢酸エチルと4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンとを混合したものがより好ましい。
より具体的には、前記有機溶媒としては、酢酸エチルと4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンとを、酢酸エチル:4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン=1:1〜1:5の重量比で混合したものが特に好ましい。斯かる重量比で混合した有機溶媒によれば、保護剤の塗布によって有機溶媒が樹脂板1”を白化させることを抑制することができる。
【0059】
前記塗布工程において保護剤を塗布する方法としては、従来公知の一般的な方法を採用することができ、具体的には例えば、刷毛塗り法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、又は、グラビアコート法などを採用することができる。
【0060】
前記塗布工程において保護剤を塗布する方法としては、樹脂板を移動しなくとも比較的簡便に保護剤を塗布できるという点で、刷毛塗り法、又はスプレーコート法が好ましい。
具体的には、再生前の樹脂板1’が上記の防音用樹脂板である場合、該防音用樹脂板は、上述したように、縁端部が型枠にはめ込まれて設置されている。このように設置された防音用樹脂板は、型枠から取り外されるには煩雑な作業が必要とされる。従って、塗布工程において保護剤を塗布する方法としては、樹脂板1’を型枠から取り外さなくとも保護剤を塗布できるという点で、刷毛塗り法、又はスプレーコート法が好ましい。
【0061】
前記塗布工程においては、通常、塗布した保護剤を室温にて放置する。また、必要に応じて加熱しつつ塗布した保護剤を放置する。
前記保護剤が前記溶媒を含んでいる場合は、該放置によって溶媒を除去することができる。また、保護剤が硬化樹脂を生成させる成分を含んでいる場合は、該放置によって硬化樹脂を生成させることができる。このように、放置によって溶媒を除去したり、硬化樹脂を生成させたりすることにより、前記保護層4を形成させることができる。そして、該保護層4は、前記保護剤に含まれていた成分の少なくとも一部で構成されることとなる。
【0062】
前記塗布工程を実施することにより、前記基板2の少なくとも一方の面側に前記保護層4を形成させることができる。
該保護層4が形成されることより、再生樹脂板1”は、例えば、屋外で使用されても、紫外線などによって劣化することが抑制される。
【0063】
前記保護層4の厚みは、通常、5〜100μmである。
【0064】
前記樹脂板の再生方法、即ち、再生樹脂板の製造方法は、様々な用途において使用される。具体的には例えば、道路に沿って配置された上記の遮音用樹脂板を再生し、再生樹脂板1”を製造するために使用される。
【0065】
前記遮音用樹脂板は、自動車等からの騒音を遮蔽するために使用されるだけでなく、自動車等によって道路上から跳ね飛ばされた石を遮り、石が外側へ飛んでいくことを回避するためにも使用される。前記遮音用樹脂板は、屋外で使用されるため紫外線により表面部分が黄変して劣化するだけでなく、例えば、上記のごとく石が当たることにより表面部分が傷によっても劣化する。このように、前記遮音用樹脂板は、様々な原因によって特に表面部分が劣化するものである。
前記樹脂板の再生方法は、上述のごとく前記表面除去工程において再生前の樹脂板1’における表面部分を除去するものである。従って、前記再生方法は、様々な原因によって表面部分が特に劣化する前記遮音用樹脂板に対して実施することが好ましい。前記再生方法を遮音用樹脂板に対して実施することにより、再生前の樹脂板1’の劣化した部分を確実に除去でき且つ樹脂板を比較的簡便に再生させることができるという利点がある。
【0066】
また、前記樹脂板の再生方法は、前記表面除去工程において、再生前の樹脂板1’の表面部分を除去するものである。従って、上述のごとく縁端部が型枠にはめ込まれて設置された防音用樹脂板等の樹脂板1’を型枠から取り外さなくとも実施できる。また、前記再生方法は、前記塗布工程においても、必ずしも防音用樹脂板等の樹脂板1’を型枠から取り外さなくてよい。即ち、前記樹脂板の再生方法は、必ずしも再生前の樹脂板1’を型枠から取り外して移動させる必要がなく、樹脂板1’が設置された場所において実施することができる。
【0067】
本実施形態の樹脂板の再生方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の樹脂板の再生方法に限定されるものではない。
また、一般の樹脂板の再生方法において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において採用することができる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
以下に示すようにして、樹脂板の再生方法を実施した。
即ち、まず、再生前の樹脂板として、ポリカーボネート樹脂製の基板と該基板の両面側をコートしたコーティング層とを備えた樹脂板(サイズ1.8m×0.9m×厚み0.5cm)を用意した。該樹脂板は、屋外に放置されたことにより、両側の表面部分が黄変していた。
続いて、樹脂板の表面部分(両側の黄変した表面部分)を、ダイアモンド粉末を利用したバフ研磨によって研磨して除去することにより、表面除去工程を実施した。研磨深さは、0.5mmであった。
続いて、樹脂板の表面部分が除去されることにより生じた面に対して、樹脂を含む保護剤を、刷毛付きローラーを用いた刷毛塗り法により塗布した。該保護剤は、固形分以外に溶媒として酢酸エチル及びダイアセトンアルコールを含むように調製したものである。
なお、保護剤は、塗布前において予め有機溶媒を加えることにより粘度を調整した。具体的には、下記の製品1重量部に対してダイアセトンアルコール2重量部を加えて保護剤の粘度を調整した。
製品名「ハルスハイブリッドUV−G12」(日本触媒社製)樹脂含有製品
有機溶媒として酢酸エチルを含有、固形分43重量%
樹脂の基本分子構造:ポリアクリル酸エステル
分子中にフリーラジカル捕捉性官能基及び紫外線吸収性官能基を有する
フリーラジカル捕捉性官能基:ヒンダードアミン基
樹脂の水酸基価:11
そして、塗布工程の後、室温にて放置した。放置することにより保護剤中の溶媒が揮発し、上記の樹脂で構成された保護層(厚み20μm)が形成された。
【0070】
(実施例2)
保護剤の調製において、下記に示すものを用いた点以外は、実施例1と同様にして樹脂板の再生方法を実施した。
製品名「ハルスハイブリッドUV−G13」(日本触媒社製)樹脂含有製品
有機溶媒として酢酸エチルを含有、固形分42重量%
樹脂の基本分子構造:ポリアクリル酸エステル
分子中にフリーラジカル捕捉性官能基及び紫外線吸収性官能基を有する
フリーラジカル捕捉性官能基:ヒンダードアミン基
樹脂の水酸基価:10
【0071】
各実施例で保護剤を調製するために用いた製品について、詳細を一覧にしたものを表1に示す。
【0072】
【表1】

【符号の説明】
【0073】
1’ 再生前の樹脂板
1” 再生した再生樹脂板
2 基板
3 コーティング層
4 保護層
A 黄変した部分
B 樹脂板の表面部分が除去されることによって生じた面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂板の表面部分を除去する表面除去工程を実施することを特徴とする樹脂板の再生方法。
【請求項2】
前記表面除去工程の後に、前記樹脂板の表面部分が除去されることにより生じた面に保護剤を塗布する塗布工程を実施する請求項1記載の樹脂板の再生方法。
【請求項3】
前記保護剤が、フリーラジカル捕捉性官能基を分子中に有する樹脂を含む請求項2記載の樹脂板の再生方法。
【請求項4】
前記表面除去工程で用いる前記樹脂板が、屋外で使用された樹脂板である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂板の再生方法。
【請求項5】
前記表面除去工程で用いる前記樹脂板が、道路に沿って設置された遮音用樹脂板である請求項4に記載の樹脂板の再生方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91989(P2013−91989A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235097(P2011−235097)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】