説明

樹脂粉末の製造方法

【構成】 水および特定の非水溶性分散安定剤の存在下で、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと非水溶性鎖伸長剤とを反応させることを特徴とする熱可塑性ウレタン系樹脂粉末の製造方法。
【効果】 ポリウレタン系樹脂粉末の効率的な製造が可能であり、得られる樹脂粉末は自動車内装材用スラッシュ成形材料や衣料用接着剤等の産業材料として優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は樹脂粉末の製造法に関するものであり、さらに詳しくは、成形加工性、柔軟性、耐久性、耐洗濯性に優れたスラッシュ成形用樹脂や芯地用接着剤等に使用する樹脂粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スラッシュ成形法は、複雑な形状(アンダーカット、深絞り等)の製品が容易に成形できること、肉厚が均一にできること、材料の歩留まり率が良いことから、近年、自動車の内装材等を中心にした用途に広く用いられており、主に軟質のポリ塩化ビニル(以下PVCという)粉末がこのような用途に広く用いられている。しかし、軟質化されたPVCは低分子の可塑剤を多量に含有するため、長期間の使用において、可塑剤の揮発により車両のフロントガラス等に油膜を形成(フォギング)して運転者の視認性を阻害したり、成形物表面への可塑剤の移行による艶消し効果やソフト感の消失、さらにはPVCの経時的劣化による黄変の問題があった。また、低分子可塑剤を用いずにソフト感を与えるものとして、PVCに柔軟性のある熱可塑性ポリウレタン樹脂を配合して変性したものが知られている(例えば特公昭53−29705号、特公昭59−39464号、特公昭60−30688号各公報)。しかし、いずれにおいても主体樹脂がPVCであるため、成形物の経時的劣化の問題は依然として解決されていない。前記の問題点を改善するために、最近ポリウレタン樹脂のみを使って所望の物性のものを得ようとする試みも行われている(例えば特開平4−255755号公報)が、成形性の点で満足できるものでない。さらに水中で樹脂粉末を作る方法も提案されている(特開平3−2266号公報)。しかしながら、この方法で製造した樹脂粉末は熱溶融せず熱可塑性樹脂としては使用できない。また芯地接着用樹脂粉末として従来、アミド樹脂、ポリエステルおよびアクリル樹脂等が使用されているが、特に柔軟性能および熱溶融性が充分ではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の軟質PVC系の多量の低分子可塑剤の添加に伴う問題点や成形物の経時的劣化の問題点および芯地接着用樹脂粉末の柔軟性能および熱溶融性の問題点を解決すると共に、成形品の軽量化、柔軟性、耐久性、耐洗濯性および熱溶融性の優れた熱可塑性ウレタン樹脂粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、長時間の使用においてもソフト感が失われず、耐光性、耐熱性および成形加工性に優れ、かつ低コスト化を実現できる熱可塑性樹脂粉末の製造法を見いだし、本発明に到達した。すなわち本発明は、水および非水溶性分散安定剤(A)の存在下で、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B)と非水溶性鎖伸長剤(C)とを反応させることを特徴とする熱可塑性ウレタン樹脂粉末の製造方法である。
【0005】本発明において使用される非水溶性分散安定剤(A)としては、分子中にSP値が10.0〜20.0の基(A1)とSP値が9.5〜5.0の基(A2)を含有する化合物が挙げられる。(A1)の具体例としてはエステル基、炭素数3個以上のアルキレンオキサイドからなるエーテル基、オレフィン基等が挙げられ、これらのうちでエステル基およびエーテル基が好ましい。(A2)の具体例としては炭素数2個のアルキレンオキサイドを主構成成分とするポリエーテル基が挙げられる。(A1)および(A2)の分子量は、通常100〜10000、好ましくは500〜6000である。SP値および分子量が上記の範囲外では水中での(B)の分散性が悪く樹脂粉末が得られない。(A1)と(A2)の結合法は特に限定はないが、通常エステル化、ウレタン化、アミド化等による方法が挙げられ、その中でもエステル化およびウレタン化による方法がより好ましい。
【0006】本発明において用いられるウレタンプレポリマー(B)は、ポリイソシアネート(B1)とポリオール(B2)とをNCO基とOH基のモル比が[NCO/OH]≧2.0で反応せしめたものである。
【0007】ポリイソシアネート(B1)としては、■炭素数(NCO基中の炭素を除く)2〜12の脂肪族ポリイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等];■炭素数(NCO基中の炭素を除く)4〜15の脂環式ポリイソシアート[イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等];■炭素数(NCO基中の炭素を除く)8〜12の芳香族/脂肪族ジイソシアネート[キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等];■芳香族ジイソシアネート[トリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、 ナフチレンジイソシアネート等];これらの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基および/またはイソシアネート基含有変性物など);およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0008】これら(B1)として例示したもののうち、好ましいものは脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートであり、特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)である。
【0009】ポリオール(B2)としてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、シリコングリコール、ポリブタジエングリコール、アクリルポリオール、フッ素含有ポリオール、ポリマーポリオールおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0010】ポリエーテルポリオールとしては、2個の活性水素原子を有する化合物(たとえば多価アルコール、多価フェノールなど)にアルキレンオキサイドが付加した構造の化合物およびそれらの混合物があげられる。
【0011】上記多価アルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、および環状基を有するジオール(たとえば、特公昭45−1474号公報明細書に記載のもの)などの2価アルコールが挙げられる。多価フェノールとしてはピロガロール、ハイドロキノン、フロログルシンなどの単環多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォンなどのビスフェノール類などが挙げられる。これらのうち好ましいものは2価アルコールである。
【0012】アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−、1,4および2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等、およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。これらの付加物のうち好ましいものはEOおよびPOのブロック付加物である。
【0013】ポリエステルポリオールとしては、例えば■ポリオールとポリカルボン酸との縮合重合によるものおよび■ラクトンの開環重合によるものが挙げられる。
【0014】上記■は低分子ポリオールとポリカルボン酸から公知の方法により製造できる。
【0015】該低分子ポリオールとしては、例えば脂肪族低分子ジオール類[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど];環状基を有する低分子ジオール類[例えば特公昭45−1474号公報明細書に記載のもの:1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−またはp−キシリレングリコールなど]等が挙げられる。
【0016】また、ポリカルボン酸の具体例としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0017】上記■のラクトンとしてはγ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。上記(B2)として例示したものは2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】(B2)のうち好ましいものは、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールである。その数平均分子量は通常500〜10,000、好ましくは700〜8,000である。
【0019】(B)の製造時に必要により公知の触媒を使用できる。触媒の具体例としては■有機金属化合物[ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート等];■アミン類[トリエチルアミン、トリエチレントリアミン、ジアザビシクロウンデセン等];およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。添加量は特に限定はないが通常、(B)100重量部に対し通常0.001〜0.01重量部である。
【0020】本発明において使用する非水溶性鎖伸長剤(C)としては、芳香族ジアミン[ジエチルトルエンジアミン、2,4/2,6−ジメチルチオトルエンジアミン等]および脂環式ジアミン[4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、ジアミノシクロヘキサン等]が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂環式ジアミンである。
【0021】本発明において必要により用いられるエチレン性不飽和単量体(D)としては、エチレン性不飽和炭化水素単量体(D1)、不飽和ニトリル(D2)、官能基含有ビニル類(D3)、(メタ)アクリル酸およびその誘導体(D4)、(メタ)アクリル酸塩(D5)等が挙げられる。
【0022】(D1)の具体例としては、芳香族炭化水素単量体[スチレン、アルキルスチレン(α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン等)]、脂肪族炭化水素単量体(モノオレフィン等)などが挙げられる。
【0023】(D2)の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等などが挙げられる。
【0024】(D3)の具体例としては、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、ビニルエーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等)、N−ビニル類(N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等)、ハロゲン化ビニル類(塩化ビニル等)等が挙げられる。
【0025】(D4)の具体例としては(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル{アルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数は好ましくは2〜4)(メタ)アクリレート[ヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等]、アルコキシ(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜4)アルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは2〜3)(メタ)アクリレート[メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等]、アミノ基含有(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
【0026】(D5)の具体例としては(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】(D1)〜(D5)は2種以上を混合して使用してもよい。また必要によりビニル基を2個以上有するモノマーを併用することができる。
【0028】上記(D)として例示のうち好ましいものは(D3)、(D4)および(D5)である。
【0029】(D)を重合するための重合開始剤としてはアゾ系重合開始剤およびパーオキサイド系重合開始剤が挙げられる。
【0030】アゾ系重合開始剤の具体例としては2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムミド(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)アゾジ−tert−オクタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)(アゾジ−tert−ブタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリルなどが挙げられる。
【0031】パーオキサイド系重合開始剤の具体例としては、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、などのジアシルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシ-ネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ-ピバレートなどのアルキルパーエステル類、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート類などの過酸化物および特開昭61−76517号公報記載の上記以外の過酸化物が挙げられる。
【0032】アゾ系重合開始剤の添加量は(D)100重量部に対し、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部、とくに好ましくは0.1〜1重量部である。パーオキサイド系重合開始剤の添加量は(D)100重量部に対し、通常0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、とくに好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0033】(D)の重合体は(B)、(B1)、(B2)のいずれの中で重合してもよく、また別途、製造した(D)の重合体を(A)と混合して本発明における熱可塑性ウレタン樹脂粉末に含有させることもできる。(D)は熱可塑性ウレタン樹脂粉末100部に対し、通常0〜100部、好ましくは5〜80部である。この範囲外では柔軟性、強度および熱溶融性を同時に満足することができない。
【0034】本発明において必要により重合停止剤(E)を用いてポリウレタンの重合度を調整することができる。該(E)としては1価のアルコール[メチルアルコール、エチルアルコール、セロソルブ、フェノール等]}およびモノアミン{ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン等}が挙げられ、これらのうちモノアミンが好ましい。(E)の添加量はイソシアネート基に対して通常0.01〜0.2当量である。この範囲外では成形品の熱溶融性と柔軟性とを同時に満足することが困難となる。
【0035】次に本発明の樹脂粉末の製造法について説明する。例えば(B)または必要により(D)の重合体を含有した(B)を(A)を含有する水中で高速分散機で分散し、その後(C)と(E)の配合物を添加して、均一に混合し熱可塑性ウレタン樹脂粉末の水分散体を得る。次いでこの分散体から樹脂粉末を遠心分離機等で濾過し、乾燥することによる樹脂粉末が得られる。この製法はバッチ方式でも連続方式でもよく、特に限定はない。
【0036】バッチ方式による各工程における条件を例示すると、(A)の水への添加量は水100重量部に対し通常0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。この範囲外では好ましい粒度の樹脂粉末が得られない。また、(B)100重量部に対する(A)含有水の量は、通常100〜1000重量部、好ましくは500〜1000重量部である。この範囲外では(B)の分散状態が悪く、そのため好ましい粒度の樹脂粉末が得られない。必要により(B)を低粘度化するために40〜100℃に加温してもよく、またエステル系溶剤、塩素系溶剤、芳香族溶剤等の溶剤を添加してもよい。高速分散機の回転数は特に限定はないが、通常1000〜10000rpm、好ましくは3000〜10000rpmである。分散時間は特に限定はないが、通常0.5〜5分である。回転数や分散時間がこの範囲外では好ましい粒度や熱溶融性のよい樹脂粉末が得られない。
【0037】本発明における非水溶性鎖伸長剤(C)の添加量は(B)のイソシアネート基1当量に対し、通常0.5〜1.5当量、好ましくは0.7〜1.2当量である。この範囲外では良好な機械的物性を有する樹脂粉末がが得られない。また、反応停止剤(E)の添加量は(B)のイソシアネート基1当量に対し通常0.03〜0.4当量、好ましくは0.05〜0.3当量である。この範囲外では良好な機械的物性が得られない。(C)と(E)はウレタンプレポリマーに(C)を反応させた後に(E)を使用してもよいが、両者を予め混合して使用する方が好ましい。(B)と、(C)および(E)との接触時間は特に限定はないが、通常0.5〜60分、好ましくは0.5〜40分である。この範囲外では樹脂粉末の熱溶融性が悪くなる。本発明の製法における(A)、水、(C)および(E)の液温は0〜10℃が好ましい。この温度範囲外では熱溶融性が悪くなる。
【0038】本発明の樹脂粉末には必要に応じ、公知の顔料、離型剤、染料、耐候性安定剤、滑剤、可塑剤、カップリング剤、耐熱安定剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0039】これらの添加方法については特に限定されず、樹脂粉末の製造時に添加しても良いし、また粉体化を行った後添加しても良い。
【0040】本発明の製法によって得られた樹脂粉末をスラッシュ成形用および芯地接着材料として用いる場合、粒径は通常30〜300μmであり、かつ安息角が通常40度以下の粉末であることが好ましい。粒径が30μm未満では、粉塵が多く発生し作業環境が悪化し、300μmを超えると成形物表面にピンホールが多く発生するようになる。また、安息角が40度を超えると粉体の流動性が低下して成形性が悪化し、成形物の膜厚が不均一になる。
【0041】また、メルトフローレート(条件:g/10分、200℃)は70〜150であることが好ましい。この範囲外では適度な流動性が得られず満足する成形物ができない。
【0042】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0043】製造例1攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ポリカプロラクトンポリオール(分子量2000)787部、ポリエーテルジオール(分子量4000、EO含量50%)800部を仕込み、120℃で減圧脱水した。脱水後の水分は0.05%であった。次いでHDI55.5部、水添MDI65.5部およびジブチル錫ジラウレート0.6部を添加し80℃で5時間反応を行った。これを[分散剤1]とする。
【0044】製造例2[分散剤1]1部を水100部に分散し、乳白色の液体を得た。これを[分散液1]とする。
【0045】製造例3ポリビニルアルコール[「PVA−235」、(株)クラレ製]1部を水100部に溶解した。これを[分散液2]とする。
【0046】製造例4攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ヒドロキシル価が56のポリカプロラクトンジオール[「プラクセルL220AL」、ダイセル化学工業(株)製]2000部を投入し3mmHgの減圧下で110℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてIPDI457部を投入し、110℃で10時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。該プレポリマーの遊離イソシアネート含量は3.4%であった。これを[プレポリマー1]とする。
【0047】製造例5攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ヒドロキシル価が56の「プラクセルL220AL」2000部を投入し3mmHgの減圧下で110℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてIPDI457部を投入し、110℃で10時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。更に、このプレポリマー中でメチルアクリレート1052部、アゾビスイソバレロニトリル(以下、AIVNと略す)を3部、添加し70〜110℃で3時間重合した。該プレポリマーの遊離イソシアネート含量は1.02%であった。これを[プレポリマー2]とする。
【0048】製造例6攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、ヒドロキシル価が56のポリエーテルポリオール[「サンニックスジオールPP−2000」、三洋化成工業(株)製]2000部を投入し3mmHgの減圧下で110℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてHDI343部を投入し、110℃で10時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。更に、このプレポリマー中でメチルアクリレート1052部およびAIVNを3部添加し、70〜110℃で3時間重合した。該プレポリマーの遊離イソシアネート含量は2.8%であった。これを[プレポリマー3]とする。
【0049】製造例7攪拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、HDI343部を投入し、その中にメチルアクリレート1052部およびAIVNを3部添加し、70〜110℃で3時間重合しポリメチルアクリレート含有ポリイソシアネートを得た。続いて、予め脱水した「サンニックスジオールPP−2000」2000部を投入し110℃で10時間反応を行い末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。このプレポリマーの遊離イソシアネート含量は2.7%であった。これを[プレポリマー4]とする。
【0050】実施例1[プレポリマー1]50部に[分散液1]250部を添加しウルトラデスパーザー(ヤマト科学製)を使用し、回転数9000rpmで1分間、混合した。ついで予めジエチルトルエンジアミン(DETDA)3部とジ−n−ブチルアミン0.3部の混合液を添加し、更に10秒均一に混合した。次いでブロッキング防止剤[「サイロイド978」、富士デヴィソン化学製]1部および耐光安定剤[「DIC−TBS」、大日本インキ化学工業製]0.5部を加え、脱水、乾燥を行い樹脂粉末(F1)を調製した。
【0051】実施例2実施例1において[プレポリマー1]の代わりに[プレポリマー2]を使用した以外は実施例1と同様にして、樹脂粉末(F2)を得た。
【0052】実施例3実施例1において[プレポリマー1]の代わりに[プレポリマー3]を使用した以外は実施例1と同様にして、樹脂粉末(F3)を得た。
【0053】実施例4実施例1において[プレポリマー1]の代わりに[プレポリマー4]を使用した以外は実施例1と同様にして、樹脂粉末(F4)を得た。
【0054】比較例1実施例1において[分散液1]の代わりに[分散液2]を使用した以外は実施例1と同様にして、比較の樹脂粉末(F5)を得た。
【0055】比較例2実施例1のDETDAの代わりにイソホロンジアミンを使用した以外は実施例1と同様にして、比較の樹脂粉末(F6)を得た。
【0056】物性測定例1実施例1〜4および比較例1、2で得た樹脂粉末(F1)〜(F6)および市販のPVCを260℃に加熱した金型に接触させ熱溶融後、水冷し成形シートを作成し破断強度および伸び率(JIS K6301)を測定した。その結果を表1に示す。なお、樹脂粉末(F5)および(F6)は溶融せずシート物性を測定することができなかった。
【0057】
【表1】


【0058】物性測定例2実施例1〜4および比較例1、2で得た樹脂粉末(F1)〜(F6)および市販のPVCを260℃に加熱した金型に接触させるスラッシュ成形して各成形品を得た。これらの成形品裏面にウレタンフォームを発泡密着させた後、120℃の循風乾燥器内で500時間熱処理した。処理後成形品からウレタンフォームをとり除き、各成形品の破断伸び率(JIS K6301)の測定ならびに変色度合の観察を行った。その結果を表2に示す
【0059】
【表2】


なお、変色度合の判定基準は以下の通りである。(目視判定)
○:変色無し、△:僅かに変色、×:著しく変色
【0060】物性測定例3実施例1〜4および比較例1、2で得た樹脂粉末(F1)〜(F6)および市販のPVCをスラッシュ成形して各成形品を得た。これらの成形品裏面にウレタンフォームを発泡密着させた後、ブラックパネル温度83℃のカーボンアークフェードメーター内で400時間処理した。処理後成形品からウレタンフォームをとり除き、各成形品の伸び率(JIS K6301)の測定および変色度合のを観察を行った。その結果を第3表に示す
【0061】
【表3】


【0062】物性測定例4実施例1で得た樹脂粉末(F1)をポリエステル綿ブロード上に40g/m2の割合で散布し、135〜140℃で加熱し、基布上に固着させた。これを表地(ポリエステル/綿)に接着芯地プレス機[神戸電器(株)製]を用いて150℃×250g/cm2×30秒の条件で貼り合わせた。比較のためポリアミド粉末[「842P−48」、東レ(株)製]も同様な条件で作成し、剥離強度を測定した。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】


【0064】物性測定例5実施例2で得た樹脂粉末(F2)を180℃で50kg/cm2で加熱、圧縮しシートを作成した。比較のためにポリアミド粉末を使用した例も同様な条件で作成した。その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】


【0066】
【発明の効果】本発明の方法によって得られる樹脂粉末は以下の効果を有する。
1.従来のPVC系に比べ、耐光性、耐熱性に優れた成形物を得ることが出来る。
2.PVCのように多量の可塑剤を使用することなくソフト感を得ることができ、長時間使用しても、フォギングの発生および成形物表面への可塑剤の移行等の不具合の発生が無い。
3.衣料用接着剤に用いた場合、柔軟性、耐久性、耐洗濯性に優れている。
4.水中で容易に熱可塑性樹脂粉末を製造できるので、従来の製法に比べ低コストの熱可塑樹脂を実現できる。
上記効果を奏することから、本発明の方法により得られる樹脂粉末は自動車の内装材、衣料接着剤等の各種産業資材として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水および非水溶性分散安定剤(A)の存在下で、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B)と非水溶性鎖伸長剤(C)とを反応させることを特徴とする熱可塑性ウレタン樹脂粉末の製造方法。
【請求項2】 樹脂粉末の粒径が30〜300μmであり、メルトフローレート(g/10分、200℃)が70〜150である請求項1記載の方法。
【請求項3】 樹脂粉末中にエチレン性不飽和単量体(D)の重合体を含有する請求項1記載の方法。
【請求項4】 (D)が(A)および/または(B)および/または(C)に含有して重合されてなる請求項3記載の方法。
【請求項5】 (C)が反応性停止剤(E)を含有する請求項1〜4いずれか記載の方法。