説明

樹脂組成物、該組成物を含有するビルドアップ用絶縁体、及び該組成物を用いたプリプレグ

【課題】ポリテトラフルオロエチレンフィラーが配合されても、樹脂の特性が損なわれず、優れた低誘電率性を有する樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記式(I)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤として特定式で表されるフェノール樹脂及びポリテトラフルオロエチレンフィラーを含有することを特徴とする樹脂組成物。但し、下記式中のnは0〜50の整数であり、Aは特定式群から選択される少なくとも一種の二価の基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関し、詳しくは、特定のエポキシ樹脂、特定のフェノール樹脂及び特定の粒径のポリテトラフルオロエチレンフィラーを含有し、樹脂本来の特性を損なわない上、低誘電率で耐熱性が高い樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、優れた電気的性能と接着力を有するため、電気・電子の分野に種々の用途がある。しかしながら、エポキシ樹脂は、硬化の際にエポキシ環が開環して水酸基が発生すると、誘電率が高くなるという問題点がある。
特に、材料の耐熱性を高くするためには、エポキシ当量が小さいエポキシ樹脂を用いて架橋構造を密にする必要があるが、それに伴い水酸基の発生も増加するために、誘電率が更に高くなる傾向にある。
【0003】
従って、誘電率が低いエポキシ樹脂組成物を製造するためには、水酸基等の極性基を少なくする必要があるので、エポキシ当量が大きいエポキシ樹脂を用いる必要があるが、そのような樹脂を用いると、架橋構造が疎になるために、耐熱性が低くなる傾向にある。
このように、エポキシ樹脂を用いた材料においては、耐熱性と低誘電率を共に満足する組成物を得ることは非常に困難である。
【0004】
一方、ポリテトラフルオロエチレンは誘電率が2.1であり、樹脂の中では極めて低い上、絶縁性、耐薬品性にも優れているので、絶縁材料として有用である。
【0005】
しかしながら、フレキシブルプリント配線板用のエポキシ樹脂組成物として、ビフェニル型エポキシ樹脂及びノボラック型フェノール樹脂を必須成分とする樹脂組成物(特許文献1、2)、及び、ビフェニル型エポキシ樹脂及びビフェニル型フェノール樹脂を必須成分とする樹脂組成物(特許文献3)が開示されているが、これらの文献にはポリテトラフルオロエチレンフィラーを組み合わせて使用することに関しては記載されていない。
このようにポリテトラフルオロエチレンは、接着性や、他の樹脂との相溶性が悪いために、樹脂組成物として活用することが困難であったため、未だこの分野で利用された例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−346256号公報
【特許文献2】特開2004−359849号公報
【特許文献3】特開2003−105059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の第1の目的は、ポリテトラフルオロエチレンフィラーが配合されても、樹脂の特性が損なわれない上、優れた低誘電率性及び耐熱性を有する樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、低誘電率性及び耐熱性に優れたビルドアップ用絶縁体を提供することにある。
本発明の第3の目的は、低誘電率性及び耐熱性に優れたプリプレグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の粒子径のポリテトラフルオロエチレンフィラーを用いて、特定のエポキシ樹脂及び特定のフェノール樹脂と配合して得られる樹脂組成物が上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、下記式(I)で表されるエポキシ樹脂、下記式(II)で表されるフェノール樹脂及びレーザー回折粒度分布測定法による平均粒径が0.01〜20μmであるポリテトラフルオロエチレンフィラーを含有することを特徴とする樹脂組成物、該樹脂組成物を含有するビルドアップ用絶縁材及びプリント基板用プリプレグである。


但し、上記式中のnは0〜50の整数、Aは下記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基であり、Yは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Y)で表される基である。

但し、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である。


但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。

但し、上式中のmは0〜400の整数、Aは前記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基であり、Zは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Z)で表わされる基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【0010】
前記エポキシ樹脂は、下記式(I-1)で表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。

但し、式中のnは0〜50の整数、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Yは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Y)で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【0011】
前記フェノール樹脂は、下記式(II-1)で表されるフェノール樹脂であることが好ましい。

但し、上式中のmは0〜400の整数、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Z)で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【0012】
また、前記樹脂組成物は、更に反応性難燃剤を含有してもよく、該反応性難燃剤は、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物であることが好ましい。

但し、式中のR1、R2及びR3は水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子、S1及びS2は、直接結合、又は炭素原子数1〜4のアルキレン基若しくはアルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン−アルキレン−アリーレン基又はアリーレン−アルキリデン−アリーレン基である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、ポリテトラフルオロエチレンフィラーが配合されても、樹脂の特性が損なわれない上、誘電率が低いという性質を有する樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(I)で表されるエポキシ樹脂を含有する。

但し、上記式(I)中のnは0〜50の整数である。nが50を超えると粘度が高くなりすぎて、溶剤に溶解させるのが困難になる。
【0015】
上記式(I)中のAは下記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基である。

但し、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である。
また、Yは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Y)で表される基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
本発明の樹脂組成物に使用される前記式(I)で表わされるエポキシ樹脂は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0016】
特に、低誘電率の樹脂硬化物を得るためには、前記エポキシ樹脂としては、下記一般式(I-1)で表されるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。

上記式(I-1)中のn、X1〜X4及びYは、前述した通りである。
【0017】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記エポキシ樹脂に他のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
他のエポキシ樹脂の例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ビスフェノールF、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール又はビスフェノールAとエチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環式多塩基酸のグリシジルエステル類;グリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。
前記式(I)のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の使用量は、樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の0〜90質量%である。
【0018】
また、これらのエポキシ樹脂は、末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものでも、多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等の多価の活性水素化合物で高分子量化されたものでもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、下記一般式(II)で表されるフェノール樹脂を含有する。
フェノール樹脂は、樹脂組成物の硬化剤として使用される。

上記式(II)中のmは0〜400の整数である。mが400を超えると粘度が高くなりすぎて、溶剤に溶解させるのが困難になる。
上記式(II)中のAは前記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基である。
【0020】
上記式(II)中のZは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル、炭素原子数2〜10のアルケニル又は下記式(Z)で表わされる基である。

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
本発明の樹脂組成物に使用される前記式(II)で表わされるフェノール樹脂は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0021】
特に、低誘電率の樹脂硬化物を得るためには、下記一般式(II-1)で表されるフェノール樹脂を使用することが好ましい。

上記式(II-1)中のm、X1〜X4及びZは、前述した通りである。
【0022】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記フェノール樹脂に他のフェノール樹脂を組み合わせて使用してもよい。
他のフェノール樹脂の例としては、フェノール類とアルデヒド類より合成されるフェノール樹脂が挙げられる。該フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエン等が挙げられ、該アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが挙げられる。
前記式(II)のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の使用量は、樹脂組成物中の全フェノール樹脂の0〜90質量%である。
【0023】
本発明の樹脂組成物に含有されるポリテトラフルオロエチレンフィラーの、レーザー回折粒度分布測定法による平均粒径は、0.01〜20μmであることが必要であり、0.03〜10μmであることが好ましい。
平均粒子径が0.01μm未満では、樹脂に多量に配合する事が困難となり、20μmを超えると、薄膜フィルムの作製が困難となる。
【0024】
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリテトラフルオロエチレンフィラーの使用量は、用途に応じて適宜変えることができるが、全エポキシ樹脂100質量部に対し、全フェノール樹脂の使用量が5〜150質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることが特に好ましい。また、前記ポリテトラフルオロエチレンフィラーの使用量は、全エポキシ樹脂100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、8〜50質量部であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、更に反応性難燃剤が配合されていることが好ましく、使用することができる反応性難燃剤としては、例えば、下記の一般式(III)〜(V)で表されるリン系反応性難燃剤が挙げられる。

但し、式中のR1、R2及びR3は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子、S1及びS2は直接結合、炭素原子数1〜4のアルキレン基、アルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン−アルキレン−アリーレン基又はアリーレン−アルキリデン−アリーレン基である。
【0026】

但し、式中のR1は水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子である。
【0027】

但し、式中のR1は水素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基、又はハロゲン原子である。
【0028】
これらの反応性難燃剤の中でも、より誘電率を低くするためには、前記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物を使用することが好ましい。
また、前記反応性難燃剤の使用量は、全エポキシ樹脂100質量部に対して5〜100質量部であり、8〜50質量部であることが好ましい。
【0029】
更に、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記フェノール樹脂と共に、他のエポキシ樹脂硬化剤を併用してもよい。
他の硬化剤と組み合わせて使用することによって、得られる硬化性組成物の粘度や硬化特性、又は、硬化後の物性等を制御することができる。
本発明で使用できる他の硬化剤としては、潜在性硬化剤、酸無水物、ポリアミン化合物等が挙げられるが、特に、本発明の樹脂組成物を、取り扱いが容易な一液型の硬化性組成物とする観点から、潜在性硬化剤を使用することが好ましい。
【0030】
上記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミンアダクト、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミン等が挙げられる。
【0031】
前記酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。
【0032】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン、m-キシレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミン;m-フェニレンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、α,α-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香族ポリアミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ−6(2'-メチルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ−6(2'-ウンデシルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2'-エチル,4-メチルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2'-メチルイミダゾール(1'))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、前記イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類等のイミダゾール化合物;2-フェニル-4-ヒドロキシ-5-メチルトリアゾール等のトリアゾール化合物等が挙げられる。
【0033】
本発明には、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記ポリテトラフルオロエチレンフィラーに、他のフィラーを組み合わせて使用することができる。
他のフィラーの例としては、ガラスフィラー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、マイカ、タルク、カオリンクレー、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラーの他、各種有機フィラー、ガラス繊維、ワラストナイト、アルミナ繊維、セラミック繊維、各種ホイスカー等の繊維状フィラー等の、通常用いられているものを使用することができる。
【0034】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加物を加えることができる。
該添加物としては、例えば天然ワックス類、合成ワックス類および長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴムシリコンゴム等の応力緩和剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤、染料や顔料等の着色剤、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、イオン吸着剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、及び、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類やエステルエーテル類、芳香族系溶剤等の有機溶剤等が挙げられる。
【0035】
本発明のビルドアップ用絶縁体は、本発明の樹脂組成物を、基材フィルムに塗布した後、乾燥させて樹脂組成物を半硬化状態にすることにより得られる。
【0036】
本発明のプリント基板用プリプレグは、本発明の樹脂組成物を公知の方法により、ガラスクロス等の基材に塗布した後、乾燥させて樹脂組成物を半硬化状態にすることにより得られる。
また、本発明のプリプレグと銅箔を積層し、公知の方法により樹脂組成物が完全に硬化するように加熱及び加圧を行なうことによって、銅張積層基板が得られる。
プリプレグの枚数は、必要に応じて変えることができる。
以下、実施例を示して本発明の樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0037】
[実施例1〜6]
表1に示された配合比の樹脂組成物を、ビーズミルを用いて分散し、IPC規格1037番のガラスクロスに45μmになるように塗布し、130℃で10分間乾燥してプリプレグを作製した。
【表1】

【0038】
得られたプリプレグ1枚の両面に銅箔を重ねた後、真空プレス機を用いて圧力30kg/cm2、最終温度190℃で90分間加圧して硬化させ、積層板を得た。
得られた積層板の銅箔引きはがし強度を、JIS C6481に従って測定した。
【0039】
前記積層板の銅箔を、エッチング液を用いて全て除去した後、下記の方法により基板のガラス転移点、熱膨張係数、誘電率及び誘電正接を測定した。
<ガラス転移点(Tg)>
SII製DMS 6100を用いて、測定範囲30℃〜350℃(5℃/分で昇温)として測定し、tanδのピークをガラス転移点とした。
【0040】
<熱膨張係数(CTE)>
SII製TMA/SS 6100を用い、30℃〜300℃(10℃/分で昇温)の範囲でXY方向の測定を行い、40℃〜125℃の熱膨張係数をα1とした。
【0041】
<誘電率及び誘電正接>
アジレントテクノロジーズ社インピーダンス/マテリアルアナライザE4991Aを用いて、印加電圧500mV、周波数1GHzの条件で測定した。
【0042】
<燃焼試験>
銅箔を除去したパナソニック電工社R-1566、0.8mmの基板の上下に、前記プリプレグを積層し、更に銅箔で挟んだものを、真空プレス機を用いて圧力30kgf/cm2、190℃、90分の条件で加圧し、硬化させ、積層板を得た。
得られた積層板の銅箔をエッチング液を用いて全て除去し、UL-94に準じた条件で燃焼試験を実施した。
【0043】
[比較例]
表2に示された配合比の樹脂組成物について、実施例と同様に物性の試験を行なった。
【0044】
【表2】

【0045】
上記表1及び2に示された化合物等は以下の通りである。
エポキシ樹脂1:NC-3000H(日本化薬(株)製ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂2:HP-7200((株)DIC製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂3:EP-4100E((株)ADEKA製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
フェノール樹脂1:MEH-7851H(明和化成(株)製ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂)
フェノール樹脂2:GDP-6115H(群栄化学工業(株)製ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂)
フェノール樹脂3:PSM-4326(群栄化学工業(株)製ノボラック型フェノール樹脂)
PTFEフィラー1:TFW-3000((株)セイシン企業製ポリテトラフルオロエチレンフィラー:平均粒子径3μm)
PTFEフィラー2:テフロン(登録商標)6C-J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー:平均粒子径400μm)
PPフィラー:PPW-5((株)セイシン企業製ポリプロピレンフィラー)
シリカ:SO-C2((株)アドマテックス製球状シリカ)
水酸化アルミニウム:C-301(住友化学(株)製水酸化アルミニウム)
反応性難燃剤−1:下記のリン酸アマイド化合物


反応性難燃剤−2:下記のリン系化合物


非反応性難燃剤:下記のリン酸エステル化合物


硬化剤:2-フェニル-4-ヒドロキシ-5-メチルトリアゾール
【0046】
各実施例及び比較例の試験結果を表3及び表4に示す。
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
表1及び2から明らかなように、ポリテトラフルオロエチレンフィラーを使用せずシリカフィラーを使用した場合(比較例1)、硬化剤として前記一般式(II)のフェノール樹脂以外のフェノール樹脂を使用した場合(比較例3)、前記一般式(I)のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を使用した場合(比較例2)には、何れも誘電率の上昇が確認されたのに対し、本発明の樹脂組成物の場合には、低誘電性に優れていることが確認された。
【0049】
また、ポリテトラフルオロエチレンフィラーに変えてポリプロピレンフィラーを配合した組成物(比較例4)は、130℃の乾燥時にポリプロピレンフィラーが融解し、電子材料として使用するには不適当であることが確認された。
また、粒径が20μmを超えるポリテトラフルオロエチレンをフィラーとして配合した樹脂組成物を使用した場合(比較例5)にも、積層不良が生じ、積層基板を製造することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の樹脂組成物は、ペースト、Bステージフィルム、樹脂付銅箔又はプリント基板用プリプレグ等の電子材料、特に高周波対応の多層基板、ビルドアップ用絶縁材料等に使用することができるので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるエポキシ樹脂、下記式(II)で表されるフェノール樹脂、及びレーザー回折粒度分布測定法による平均粒径が0.01〜20μmであるポリテトラフルオロエチレンフィラーを含有することを特徴とする樹脂組成物;

但し、上記式(I)中のnは0〜50の整数、Aは下記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基であり、Yは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Y)で表される基である;

但し、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である;

但し、上記式中のmは0〜400の整数、Aは前記群(A)から選択される少なくとも一種の二価の基であり、Zは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Z)で表わされる基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、下記式(I-1)で表されるエポキシ樹脂である、特請求項1に記載された樹脂組成物。

但し、式中のnは0〜50の整数、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Yは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Y)で表される基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【請求項3】
前記フェノール樹脂が、下記式(II-1)で表されるフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載された樹脂組成物。

但し、上式中のmは0〜400の整数、X〜X4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Zは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は下記式(Z)で表される基である;

但し、Tは直接結合、メチレン、エチリデン、プロピリデン、-O-、-S-又は-SO2-である。
【請求項4】
更に、反応性難燃剤を含有する、請求項1〜3の何れかに記載された樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性難燃剤が、下記一般式(III)で表されるリン酸アマイド化合物である、請求項4に記載された樹脂組成物;

但し式中のR1、R2及びR3は水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基若しくはシクロアルキル基又はハロゲン原子、S1及びS2は直接結合又は炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基であり、環Cは炭素原子数6〜18のアリーレン基、シクロアルキレン基、アリーレン−アルキレン−アリーレン基又はアリーレン−アルキリデン−アリーレン基である。
【請求項6】
更に、エポキシ樹脂用硬化触媒を含有する、請求項1〜5の何れかに記載された樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載された樹脂組成物を含有するビルドアップ用絶縁材。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載された樹脂組成物を含有するプリント基板用プリプレグ。

【公開番号】特開2013−79326(P2013−79326A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219996(P2011−219996)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】