説明

樹脂組成物

【課題】誘電特性、熱膨張率を維持しながら、湿式粗化工程において絶縁層表面の算術平均粗さが小さく、その上に十分なピール強度を有するめっき導体層を形成することができる樹脂組成物を提供すること
【解決手段】エポキシ樹脂、リン原子を含有するフェノールエステル化合物、リン原子を含有するチオフェノールエステル化合物、リン原子を含有するN−ヒドロキシアミンエステル化合物、リン原子を含有する複素環ヒドロキシ基がエステル化された化合物、ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイル化物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド系のベンゾイル化物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するリン原子を含有する活性エステル硬化剤を含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらに当該樹脂組成物を含有する、接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められていた。
【0003】
これに対して様々な取組みがなされていた。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂を含む樹脂組成物が開示されていた。これらの組成物により形成される絶縁層が、誘電特性と耐熱性を両立しうることが記載されている。しかし、その性能は必ずしも満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−235165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、誘電正接、熱膨張率、難燃性を維持しながら、湿式粗化工程において絶縁層表面の算術平均粗さが小さく、その上に十分なピール強度を有するめっき導体層を形成することができる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂、特定の活性エステル硬化剤を含有する樹脂組成物において、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1](A)エポキシ樹脂及び(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
[2](B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が、カルボン酸化合物と、リン原子含有ヒドロキシ化合物との縮合反応によって得られることを特徴とする、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3](B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が、下記一般式(1)〜(3)からなる群より選択される1種以上で表されることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが挙げられ、置換基を有していてもよい。R は水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。2つのRは結合して環状を形成していても良い。nは1〜10を表す。)
【化2】

(式中、Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは 水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。nは1〜10を表す。)
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは置換されていても良いベンゾイル基を示す。nは1〜10を表す。)
[4]樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が1〜15質量%であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、樹脂組成物中のリン含有が0.05〜3質量%であることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]さらに、(C)無機充填材を含有することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]さらに、(E)硬化剤を含有することを特徴とする、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8](A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤及び(E)硬化剤の反応基の合計数との比が、1:0.2〜2であることを特徴とする、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理し、メッキして得られる導体層と絶縁層とのピール強度が0.36kgf/cm〜1.0kgf/cmであり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理した後の算術平均粗さが10nm〜200nmであり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した後の25℃から150℃までの平均熱膨張率が5ppm〜25ppmであることを特徴とする、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物が支持体上に層形成された接着フィルム。
[11]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物がシート状補強基材中に含浸されたプリプレグ。
[12]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された多層プリント配線板。
[13]上記[12]に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
エポキシ樹脂、特定の活性エステル樹脂を含有する樹脂組成物を用いることにより、誘電正接、熱膨張率、難燃性を維持しながら、湿式粗化工程において絶縁層表面の算術平均粗さが小さく、その上に十分なピール強度を有するめっき導体層を形成することができる樹脂組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)エポキシ樹脂及び(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0010】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明に使用するエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等、グリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0011】
これらの中でも、耐熱性向上、絶縁信頼性向上、金属箔との密着性向上の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「エピコート828EL」、「YL980」、「828US」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER806H」、「YL983U」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」、「EXA4032SS」)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」、「HP4710」)、ナフトール型エポキシ樹脂(東都化成(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、三菱化学(株)製「YX4000」、「YX4000H」、「YX4000HK」、「YL6121」)、アントラセン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX8800」)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7310」、「EXA−7311」、「EXA−7311L」、「EXA7311−G3」)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX711」、「EX721」、(株)プリンテック製「R540」)などが挙げられる。
【0012】
エポキシ樹脂は2種以上を併用してもよいが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有するのが好ましい。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂、および1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を含有する態様がより好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用する場合、樹脂組成物を接着フィルム形態で使用する場合に適度な可撓性を有する点や樹脂組成物の硬化物が適度な破断強度を有する点から、その配合割合(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は質量比で1:0.1〜2の範囲が好ましく、1:0.3〜1.8の範囲がより好ましく、1:0.6〜1.5の範囲が更に好ましい。
【0013】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物の硬化物の機械強度や耐水性を向上させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、エポキシ樹脂の含有量は3〜40質量%であるのが好ましく、5〜35質量%であるのがより好ましく、10〜30質量%であるのが更に好ましい。
【0014】
<(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤>
本発明に使用する(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤としては、リン原子を有しさえすれば特に限定されないが、例えば、リン原子を含有するフェノールエステル化合物、リン原子を含有するチオフェノールエステル化合物、リン原子を含有するN−ヒドロキシアミンエステル化合物、リン原子を含有する複素環ヒドロキシ基がエステル化された化合物、ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイル化物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド系のベンゾイル化物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。中でも、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましい。
【0015】
なかでも、リン原子を含有するカルボン酸化合物とリン原子を有するヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物、リン原子を含有するカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物、又は、カルボン酸化合物とリン原子を含有するヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物が好ましく用いられるが、特に耐熱性向上、算術平均粗さ低下、ピール強度向上という観点から、リン原子を含有するカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物、又は、カルボン酸化合物とリン原子を含有するヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物がより好ましく、製造安定性の観点から、カルボン酸化合物とリン原子含有ヒドロキシ化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物が更に好ましい。そして、カルボン酸化合物とリン原子を含有するフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られるリン原子を含有する活性エステル化合物が更に好ましい。そして、カルボン酸化合物とリン原子を含有するフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を持つリン原子を含有する活性エステル化合物が更に一層好ましく、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物とリン原子を含有するフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有するリン原子を含有する活性エステル化合物が殊更好ましい。また、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0016】
カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性向上の観点から安息香酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、安息香酸、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましく、安息香酸が更に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。また、いずれもリン原子を含有していても良い。
【0017】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド等が挙げられる。なかでも耐熱性向上、溶解性向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが好ましく、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドがより好ましく、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが更に好ましく、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが更に一層好ましく、α−ナフトール、β−ナフトール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが殊更好ましく、α−ナフトール、β−ナフトール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、ホスファゼン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが特に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。また、いずれもリン原子を含有していても良い。
【0018】
より具体的には下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記一般式(3)等が挙げられる。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド等が挙げられ、置換基を有していてもよい。R は水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。2つのRは結合して環状を形成していても良い。nは1〜10を表す。)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド等が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは 水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。nは1〜10を表す。)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは置換されていても良いベンゾイル基を示す。nは1〜10を表す。)
【0025】
特に、Rは、フェニル基、ナフチル基、アセチル基が好ましい。R1は、ホスファゼン骨格が好ましい。R2は、水素、ヒドロキシ基が好ましい。R4は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが好ましい。R5は、水素、ヒドロキシ基が好ましい。nは2〜9が好ましく、3〜8がより好ましい。
【0026】
更に具体的には、下記一般式(4)、下記一般式(5)で表すものが挙げられる。
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R、nは 上記と同様。)
【0029】
【化8】

【0030】
(式中のR、R、nは 上記と同様。)
【0031】
市販されているリン原子を含有する活性エステル硬化剤としては、ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイル化物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド系のベンゾイル化物等が挙げられる。具体的には、YLH1437(三菱化学(株)製、一般式(4)相当)、EXB9401−65BK(DIC(株)製、一般式(3)相当)が挙げられる。
【0032】
リン原子を含有する活性エステル硬化剤の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造することができるが、具体的には、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができ、カルボン酸化合物と、リン原子含有ヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることが、製造安定性の点で好適である。中でも、(a)カルボン酸化合物又はそのハライド、(b)ヒドロキシ化合物、(c)芳香族モノヒドロキシ化合物を、(a)のカルボキシル基又は酸ハライド基1モルに対して、(b)のフェノール性水酸基が0.05〜1モル、(c)が0〜0.95モルとなる割合で反応させて得られる構造を有するものが好ましい。
【0033】
(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤の含有量は、低算術平均粗さ、高ピール強度を発現できるという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1.5〜8質量%が更に好ましい。
【0034】
また、難燃性を発現するという観点から、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤を100質量%とした場合、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤中のリン含量は、2〜15質量%が好ましく、3〜13質量%がより好ましく、4〜11質量%が更に好ましい。また、樹脂組成物中のリン含有量は、難燃性を発現するという観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.05〜3質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理し、メッキして得られる導体層と絶縁層とのピール強度は、後述する<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0036】
ピール強度の上限値は、0.6kgf/cm以下が好ましく、0.7kgf/cm以下がより好ましく、0.8kgf/cm以下が更に好ましく、1.0kgf/cm以下が更に一層好ましい。ピール強度の下限値は、0.36kgf/cm以上が好ましく、0.38kgf/cm以上がより好ましく、0.40kgf/cm以上が更に好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理した後の算術平均粗さ(Ra値)は、後述する<粗化後の算術平均粗さ(Ra値)の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0038】
算術平均粗さ(Ra値)の上限値は、200nm以下が好ましく、180nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。算術平均粗さ(Ra値)の下限値は、50nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した後の25℃から150℃までの平均熱膨張率は、後述する<熱膨張率の測定及び評価>に記載の評価方法により把握することができる。
【0040】
平均熱膨張率の上限値は、25ppm以下が好ましく、23ppm以下がより好ましい。平均熱膨張率の下限値は、10ppm以上が更に一層好ましく、5ppm以上が殊更好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述する<誘電正接の測定及び評価>に記載の測定方法により把握することができる。
【0042】
本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接の上限値は、0.0055以下が好ましく、0.0050以下がより好ましい。本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接の下限値は、0.002以上が好ましく、0.0015以上がより好ましく、0.001以上が更に好ましい。
【0043】
<(C)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有させる事により、絶縁層の熱膨張率をさらに低下させることができる。無機充填材は特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。なかでも、シリカが好ましい。また、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等のシリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。また、シリカとしては球状のものが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
【0044】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、無機充填材の平均粒径の上限値は、絶縁層上へ微細配線形成を行うという観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.7μm以下が更に一層好ましく、0.5μm以下が殊更好ましく、0.4μm以下が特に好ましく、0.3μm以下がとりわけ好ましい。一方、無機充填材の平均粒径の下限値は、エポキシ樹脂組成物を樹脂組成物ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、0.07μm以上が殊更好ましく、0.1μm以上が特に好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500、750、950等を使用することができる。
【0045】
本発明における無機充填材は、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性を向上させたものが好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。具体的に表面処理剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤は耐湿性、分散性、硬化物の特性などに優れていて好ましい。
【0046】
無機充填材を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、樹脂組成物に要求される特性によっても異なるが、20〜85質量%であるのが好ましく、30〜80質量%がより好ましく、35〜75質量%が更に好ましい。無機充填材の含有量が少なすぎると、硬化物の熱膨張率が高くなる傾向にあり、含有量が大きすぎると硬化物が脆くなるという傾向やピール強度が低下する傾向にある。
【0047】
<(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含有させることにより、エポキシ樹脂と硬化剤を効率的に硬化させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0049】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、 1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明の樹脂組成物において、硬化促進剤(金属系硬化促進剤を除く)の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.01〜0.5質量%の範囲がより好ましい。0.005質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長く必要となる傾向にあり、1質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0053】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、コバルト 、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明の樹脂組成物において、金属系硬化促進剤の添加量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、金属系硬化触媒に基づく金属の含有量が25〜500ppmの範囲が好ましく、40〜200ppmの範囲がより好ましい。25ppm未満であると、低算術平均粗さの絶縁層表面への密着性に優れる導体層の形成が困難となる傾向にあり、500ppmを超えると、樹脂組成物の保存安定性、絶縁性が低下する傾向となる。
【0055】
<(E)硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、さらに硬化剤を含有させることにより、絶縁性や機械特性を向上させることができる。(E)硬化剤としては、特に限定されないが、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられ、誘電正接を低下させるという観点から、シアネートエステル系硬化剤、活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤としては、特に制限はないが、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤やノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が挙げられ、フェノールノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、トリアジン骨格含有ナフトール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。市販品としては、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂として、「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、「MEH7851−4H」(明和化成(株)製)、「GPH」(日本化薬(株)製)、ナフトールノボラック樹脂として、「NHN」、「CBN」(日本化薬(株)製)、ナフトールアラルキル型樹脂として、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN395」、「SN375」(東都化成(株)製)、フェノールノボラック樹脂として「TD2090」(DIC(株)製)、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂「LA3018」、「LA7052」、「LA7054」、「LA1356」(DIC(株)製)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0057】
活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル系硬化剤は1種又は2種以上を使用することができる。活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)としては、特開2004−277460号公報に開示されている活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。 市販されている活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が好ましく、なかでもジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとしてEXB9451、EXB9460、EXB9460S−65T、HPC−8000−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約149)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約200)、YLH1030(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約201)、YLH1048(ジャパンエポキシレジン(株)製、活性基当量約245)、等が挙げられ、中でもEXB9460Sがワニスの保存安定性、硬化物の熱膨張率の観点から好ましい。
【0058】
ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル系硬化剤(但し、リン原子を含有する活性エステル系硬化剤を除く)として、より具体的には下式(6)のものが挙げられる。
【0059】
【化9】

【0060】
(式中、Rはフェニル基、ナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。)
【0061】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、一方、kは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
【0062】
ベンゾオキサジン系硬化剤としては、特に制限はないが、具体例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
【0063】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜4500が好ましく、600〜3000がより好ましい。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されているシアネートエステル樹脂としては、下式(7)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、下式(8)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、下式(9)で表されるジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
【0064】
【化10】

[式(7)中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20)を示す。]
【0065】
【化11】

【0066】
【化12】

(式(9)中、nは平均値として0〜5の数を表す。)
【0067】
酸無水物系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸が共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0068】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物の硬化物の機械強度や耐水性を向上させるという観点から、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤及び(E)硬化剤の反応基の合計数との比が、1:0.2〜2が好ましく、1:0.3〜1.5がより好ましく、1:0.4〜1が更に好ましい。なお樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0069】
<(F)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物には、更に(F)熱可塑性樹脂を含有させる事により硬化物の機械強度を向上させることができ、更に接着フィルムの形態で使用する場合のフィルム成型能を向上させることもできる。このような熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましい。この範囲よりも小さいとフィルム成型能や機械強度向上の効果が十分発揮されない傾向にあり、この範囲よりも大きいとシアネートエステル樹脂およびナフトール型エポキシ樹脂との相溶性が十分でなく、硬化後の表面凹凸が大きくなり、高密度微細配線の形成が困難となる傾向にある。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物に、(F)熱可塑性樹脂を配合する場合には、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が少なすぎるとフィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮されない傾向にあり、多すぎると溶融粘度の上昇と、湿式粗化工程後の絶縁層表面の算術平均粗さが増大する傾向にある。
【0071】
<(G)ゴム粒子>
本発明の樹脂組成物は、更に(G)ゴム粒子を含有させる事により、メッキピール強度を向上させることができ、ドリル加工性の向上、誘電正接の低下、応力緩和効果を得ることもできる。本発明において使用され得るゴム粒子は、例えば、当該樹脂組成物のワニスを調製する際に使用する有機溶剤にも溶解せず、必須成分であるシアネートエステル樹脂やエポキシ樹脂などとも相溶しないものである。従って、該ゴム粒子は、本発明の樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在する。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。
【0072】
本発明で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子は2種以上を組み合わせて使用してもよい。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、IM−401、IM−401改1、IM−401改7−17(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
【0073】
配合するゴム粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜1μmの範囲であり、より好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。本発明で使用されるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(FPAR−1000;大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0074】
ゴム粒子の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは2〜5質量%である。
【0075】
<(H)難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、更に(H)難燃剤を含有させる事により、難燃性を付与することができる。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のTPPO、PPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、東都化成(株)製のFX289、FX305、TX0712等のリン含有エポキシ樹脂、東都化成(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルアミド化合物、大塚化学(株)社製のSPB100、SPE100、SPH−100、SPS−100、(株)伏見製薬所製のFP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0076】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物のような熱硬化性樹脂、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
【0077】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0078】
本発明の樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、多層プリント配線板の製造において、絶縁層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、メッキにより導体層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成する多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができ、ビルドアップ層を形成するための樹脂組成物(多層プリント配線板のビルドアップ層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0079】
<接着フィルム>
本発明の接着フィルムは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0080】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0081】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層が形成することができる。
【0082】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層は10〜100μmの厚さを有するのが好ましい。
【0083】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。また離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを使用してもよい。支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0084】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0085】
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって貯蔵することもできる。
【0086】
<接着フィルムを用いた多層プリント配線板>
次に、上記のようにして製造した接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0087】
まず、接着フィルムを、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0088】
上記ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて接着フィルム及び回路基板をプレヒートし、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。本発明の接着フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0089】
また、減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことも可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を通常1×10−2 MPa以下、好ましくは1×10−3 MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm2 の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2 の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0090】
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、熱硬化することにより回路基板に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜210℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0091】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離する。次いで必要により、回路基板上に形成された絶縁層に穴開けを行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけが最も一般的な方法である。
【0092】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキの場合は、絶縁層表面を、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことによって凸凹のアンカーを形成する。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50〜80℃で5〜20分間膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60℃〜80℃で10分〜30分間酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10重量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、30〜50℃で3〜10分間中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
【0093】
次いで、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせた方法で導体層を形成する。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0094】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物が繊維からなるシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。繊維からなるシート状補強基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることができる。
【0095】
ホットメルト法は、樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、該樹脂との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいは樹脂を、有機溶剤に溶解することなく、ダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。
【0096】
<プリプレグを用いた多層プリント配線板>
次に、上記のようにして製造したプリプレグを用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。回路基板に本発明のプリプレグを1枚あるいは必要により数枚重ね、離型フィルムを介して金属プレートで挟み、加圧・加熱条件下で真空プレス積層する。加圧・加熱条件は、好ましくは、圧力が5〜40kgf/cm(49×10〜392×10N/m)、温度が120〜200℃で20〜100分である。また接着フィルムと同様に、プリプレグを真空ラミネート法により回路基板にラミネートした後、加熱硬化することも可能である。その後、上記で記載した方法と同様にして、硬化したプリプレグ表面を粗化した後、導体層をメッキにより形成して多層プリント配線板を製造することができる。
【0097】
<半導体装置>
本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0098】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【0099】
「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップを多層プリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことであり、更に、以下のBBUL方法1)、BBUL方法2)の実装方法に大別される。
BBUL方法1)アンダーフィル剤を用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
BBUL方法2)接着フィルム又はプリプレグを用いて多層プリント配線板の凹部に半導体チップを実装する実装方法
【0100】
BBUL方法1)は、具体的には以下の工程を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面から導体層を除去したものを設け、レーザー、機械ドリルによって貫通孔を形成する。
工程2)多層プリント配線板の片面に粘着テープを貼り付けて、貫通孔の中に半導体チップの底面を粘着テープ上に固定するように配置する。このときの半導体チップは貫通孔の高さより低くすることが好ましい。
工程3)貫通孔と半導体チップの隙間にアンダーフィル剤を注入、充填することによって、半導体チップを貫通孔に固定する。
工程4)その後粘着テープを剥がして、半導体チップの底面を露出させる。
工程5)半導体チップの底面側に本発明の接着フィルム又はプリプレグをラミネートし、半導体チップを被覆する。
工程6)接着フィルム又はプリプレグを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面にあるボンディングパットを露出させ、上記で示した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線と接続する。必要に応じて更に接着フィルム又はプリプレグを積層してもよい。
【0101】
BBUL方法2)は、具体的には以下の工程を含む。
工程1)多層プリント配線板の両面の導体層上に、フォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工法でフォトレジスト膜の片面のみに開口部を形成する。
工程2)開口部に露出した導体層をエッチング液により除去し、絶縁層を露出させ、その後両面のレジスト膜を除去する。
工程3)レーザーやドリルを用いて、露出した絶縁層を全て除去して穴あけを行い、凹部を形成する。レーザーのエネルギーは、銅のレーザー吸収率を低くし、絶縁層のレーザー吸収率を高くするようにエネルギーが調整できるレーザーが好ましく、炭酸ガスレーザーがより好ましい。このようなレーザーを用いることで、レーザーは導体層の開口部の対面の導体層を貫通することがなく、絶縁層のみを除去することが可能となる。
工程4)半導体チップの底面を開口部側に向けて凹部に配置し、本発明の接着フィルム又はプリプレグを開口部の側から、ラミネートし、半導体チップを被覆して、半導体チップと凹部の隙間を埋め込む。このときの半導体チップは凹部の高さより低くすることが好ましい。
工程5)接着フィルム又はプリプレグを硬化後、レーザーによって穴あけし、半導体チップの底面のボンディングパットを露出させる。
工程6)上記で示した粗化処理、無電解メッキ、電解メッキを行うことで、配線を接続し、必要に応じて更に接着フィルム又はプリプレグを積層する。
【0102】
半導体チップの実装方法の中でも、半導体装置の小型化、伝送損失の軽減という観点や、半田を使用しないため半導体チップにその熱履歴が掛からず、さらに半田と樹脂とのひずみを将来的に生じ得ないという観点から、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法が好ましく、BBUL方法1)、BBUL方法2)がより好ましく、BBUL方法2)が更に好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0105】
<ピール強度及び算術平均粗さ(Ra値)測定用サンプルの調製>
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)の両面をメック(株)製CZ8100にて1umエッチングして銅表面の粗化処理をおこなった。
【0106】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。
【0107】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムを100℃、30分続けて180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化し、PETフィルムを剥離して絶縁層を形成した。
【0108】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントP(グリオキザール、硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬した。80℃で30分乾燥後、この粗化処理後の絶縁層表面について、算術平均粗さ(Ra値)の測定を行った。
【0109】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
絶縁層表面に回路を形成するために、内層回路基板を、PdClを含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、35±5μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて60分間行った。この回路基板についてメッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定を行った。
【0110】
<メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定及び評価>
回路基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0111】
<粗化後の算術平均粗さ(Ra値)の測定及び評価>
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値を求めた。そして、10点の平均値を求めることにより測定した。
【0112】
<平均熱膨張率の測定及び評価>
実施例及び比較例において得られた接着フィルムを200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、PETフィルムを剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均熱膨張率(ppm)を算出した。
【0113】
<誘電正接の測定及び評価>
実施例及び比較例において得られた接着フィルムを200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製HP8362B装置を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0114】
<難燃性の評価>
実施例及び比較例で作成した接着フィルム40μmを、基板厚み0.2mmの銅張積層板(日立化成(株)製「679−FG」)の銅箔をエッチング除去した基材の両面に、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaでプレスすることにより行った。支持体のPETフィルム剥離後、再度接着フィルム40μmを同条件で両面にラミネートした。その後、PETフィルムを剥離し200℃で90分熱硬化させ、難燃試験用サンプルを得た。幅12.7mm、長さ127mmに切り出し、切り出した面を研磨機(Struers製、RotoPol−22)で研磨した。以上5個のサンプルを一組とし、UL94垂直難燃試験に従って、難燃試験を実施した。10秒間接炎後の燃え残りサンプルが5個ともある場合を「○」とし、10秒間接炎後の燃え残りサンプルがない場合は「×」とした。
【0115】
<実施例1>
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「EXA−4032SS」)6質量部と、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱化学(株)製「YX4000HK」)12質量部、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬(株)製「NC3000H」)9質量部をメチルエチルケトン(MEK)4質量部、ソルベントナフサ25質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%、不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部、さらに活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)45量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液5質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)160質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。
次に、かかる樹脂組成物ワニスをアルキド系離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、以下PETフィルムと略す)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜110℃(平均95℃)で5分間乾燥した(樹脂組成物層中の残留溶媒量:約2質量%)。次いで、樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の接着フィルムを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
【0116】
<実施例2>
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「EXA−4032SS」)8質量部と、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱化学(株)製「YX4000HK」)10質量部、変性ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量約330、新日鐵化学(株)製「ESN−475V」)9質量部をメチルエチルケトン(MEK)4質量部、ソルベントナフサ25質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%の不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部、さらに活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)42量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5質量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液5質量部、ゴム粒子としてスタフィロイド(ガンツ化成(株)製、IM−401)2質量部を、ソルベントナフサ8質量部に12時間室温で静置膨潤しておいたもの、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)150質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。 次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0117】
<実施例3>
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「EXA−4032SS」)8質量部と、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱化学(株)製「YX4000HK」)10質量部、変性ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量約330、新日鐵化学(株)製「ESN−475V」)9質量部をメチルエチルケトン(MEK)4質量部、ソルベントナフサ25質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%の不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部、さらにビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)30質量部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約124、不揮発分80質量%のMEK溶液)5質量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5質量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液0.7質量部、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成(株)製)の1質量%のMEK溶液4.5質量部、ゴム粒子としてスタフィロイド(ガンツ化成(株)製、IM−401)2質量部を、ソルベントナフサ8質量部に12時間室温で静置膨潤しておいたもの、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)150質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0118】
<実施例4>
ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬(株)製「NC3000H」)20質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187、三菱化学(株)製「828US」)20質量部をメチルエチルケトン(MEK)10質量部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、リン含有活性エステル硬化剤(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド系;DIC(株)製、EXB9401−65BK、活性基当量約274、P含量3wt%の不揮発分65質量%のMIBK溶液)20質量部、さらに活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)30質量部、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂(DIC(株)製「LA3018−50P」、フェノール当量約151、不揮発分50質量%の2―メトキシプロパノール溶液)5質量部、硬化促進剤として4−ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液3質量部、及び球形シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」をアミノシランで表面処理したもの、平均粒子径0.5μm)220質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、熱硬化性樹脂組成物のワニスを作製した。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0119】
<比較例1>
実施例1において、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%の不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部を、ホスファゼン系フェノール樹脂(フェノール当量250、大塚化学(株)製「SPH−100」、P含量12wt%、不揮発分60質量%のMEK溶液)6.5質量部に変更する以外は全く同様にして樹脂組成物ワニスを作製した。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0120】
<比較例2>
実施例3において、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%の不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部を添加せず、ホスファゼン系難燃剤(大塚化学(株)製「SPS−100」、活性基非含有、P含量13wt%)4質量部をエポキシ樹脂と共に加熱溶解させて使用する以外は全く同様にして樹脂組成物ワニスを作製した。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0121】
<比較例3>
実施例1において、リン含有活性エステル硬化剤(ホスファゼン系フェノール樹脂のベンゾイルエステル化物;三菱化学(株)製YLH1437、エステル化率約83%、活性基当量約332、P含量9wt%の不揮発分60質量%のMEK溶液)9質量部を使用せず、活性エステル硬化剤(DIC(株)製「EXB9460S−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)45質量部を50質量部と増量して使用する以外は全く同様にして樹脂組成物ワニスを作製した。次に、かかる樹脂組成物ワニスを使用し、実施例1と全く同様にして接着フィルムを得た。
【0122】
結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
表1の結果から、実施例1〜4の樹脂組成物は、低算術平均粗さでピール強度が十分な値が得られ、誘電正接が低く難燃性も優れていることが分かる。一方、リン原子を含有する活性エステル硬化剤を添加していない比較例3では難燃性が得られなかった。また、比較例1のようなフェノール性水酸基を有するリン含有難燃剤(ホスファゼン系フェノール樹脂)では、算術平均粗さが大きくなりピール強度も低下してしまった。さらに、比較例2のように非架橋タイプのホスファゼン系難燃剤を使用した場合は、算術平均粗さが大きくなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
誘電特性、熱膨張率を維持しながら、湿式粗化工程において絶縁層表面の算術平均粗さが小さく、その上に十分なピール強度を有するめっき導体層を形成することができる樹脂組成物を提供できるようになった。更にそれを用いた接着フィルム、プリプレグ、多層プリント配線板、半導体装置を提供できるようになった。更にこれらを搭載した、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂及び(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が、カルボン酸化合物と、リン原子含有ヒドロキシ化合物との縮合反応から得ることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が、下記一般式(1)〜(3)からなる群より選択される1種以上で表されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが挙げられ、置換基を有していてもよい。R は水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。2つのRは結合して環状を形成していても良い。nは1〜10を表す。)
【化2】

(式中、Rはリン原子を含有するアルキル基、リン原子を含有するアルケニル基、リン原子を含有するアラルキル基、リン原子を含有するアリール基、ホスファゼン骨格、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシドが挙げられ、置換基を有していてもよい。Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは 水素、ヒドロキシ基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。nは1〜10を表す。)
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基が挙げられ、置換基を有していてもよい。Rは置換されていても良いベンゾイル基を示す。nは1〜10を表す。)
【請求項4】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤が1〜15質量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物中の不揮発分を100質量%とした場合、樹脂組成物中のリン含有量が0.05〜3質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(C)無機充填材を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(E)硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、(B)リン原子を含有する活性エステル硬化剤及び(E)硬化剤の反応基の合計数との比が、1:0.2〜2であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理し、メッキして得られる導体層と絶縁層とのピール強度が0.36kgf/cm〜1.0kgf/cmであり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理した後の算術平均粗さが10nm〜200nmであり、樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した後の25℃から150℃までの平均熱膨張率が5ppm〜25ppmであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物が支持体上に層形成された接着フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物がシート状補強基材中に含浸されたプリプレグ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により絶縁層が形成された多層プリント配線板。
【請求項13】
請求項12に記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする、半導体装置。

【公開番号】特開2012−251133(P2012−251133A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97640(P2012−97640)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】