説明

機器の脚部構造

【課題】機器の脚部を支点に傾斜するように一部を持ち上げただけで、容易に設置面を滑らせて移動させることができ、かつ、安定した設置と利用を可能とさせる脚部構造を提供する。
【解決手段】平面状の設置面に配置して利用される機器の底部に前記設置面と接するように設けられた前脚部と、少なくとも第一の部材と第二の部材の二つから構成される後脚部とからなる脚部構造を採用し、前記後脚部側を支点に、前記前脚部側の前記機器の一端部を前記設置面から持ち上げると、前記設置面に配置している時に接していた後脚部の接地部の部材が前記第一の部材から前記第二の部材に接するように換わるように構成した。ここで、第二の部材は第一の部材より前記設置面に対して滑りやすい部材であることを特徴である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パーソナルコンピュータ等の各種機器の底部に設けた滑り止め機能を有する脚部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、滑り止め機能を有する脚部の構造については、脚部の機器設置面へ接触する部分に、滑り止めのゴム部材を貼り付けたもの、あるいは、組み込んだもの等が一般に知られている。
【0003】
一方、ユーザーには、機器移動時に機器を完全に持ち上げずに脚部を設置面上に滑らせることで、簡単に機器を移動させることができ、かつ、使用時には滑らないようにしっかり機器を設置面に設置できるようにしたいというユーザーニーズがある。
特許文献1には、このニーズに対応した技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、脚部に被せて使用する滑り止め面と滑り面を具備した滑り止めカバーに関するものである。詳細には、脚部が支える家具などに荷重が大きく掛かる時は滑り止め面が接地面に接触し、安定した設置を可能とさせ、荷重が小さい時は滑り面が接地面に接触し、滑らせて移動させやすくする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−79028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、椅子に人が座った場合は荷重が大きく、座っていない場合は荷重が小さいので、座っていない時に椅子を滑らせて移動し易くすることができる等の効果が例示されている。
【0006】
つまり、特許文献1に記載の技術では、設置時から移動時に、脚部が鉛直方向逆側(反重力側)にやや浮き上がった状態にならないと、移動を容易にすることができない。従って、特許文献1に記載の技術をノート型パーソナルコンピュータの脚部に応用した場合、該コンピュータを設置面からほぼ鉛直方向逆側(反重力側)に、ユーザーがやや持ち上げないと、滑らせるような移動が可能とならない。具体的には、前脚部2つと後脚部2つで安定設置した機器を、ユーザーが前脚部側を持ち上げて機器を斜めにした状態で、後脚部を設置面に滑らせて簡単に移動させるようなことを実現したくとも特許文献1に記載の技術では実現ができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、機器の脚部を支点に傾斜するように一部を持ち上げただけで、容易に設置面を滑らせて移動させることができ、かつ、安定した設置と利用を可能とさせる脚部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の脚部構造は、平面状の設置面に配置する機器であって配置した前記機器の前方にユーザーが対峙して利用する機器の底部に前記設置面と接するように設けられた前脚部と、少なくとも第一の部材と第二の部材の二つから構成される後脚部とからなる脚部構造であって、前記後脚部側を支点に、前記前脚部側の前記機器の一端部を前記設置面から持ち上げると、前記設置面に配置している時に接していた後脚部の接地部の部材が前記第一の部材から前記第二の部材に接するように換わり、第二の部材は第一の部材より前記設置面に対して滑りやすい部材であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の脚部構造は、第1の脚部構造に対して、前記前脚部側の前記機器の一端部を前記設置面から持ち上げると、前記第一の部材から前記第二の部材が接するように換わる際に、前記後脚部の接地状態の変移は、第一の部材のみが接している状態から、第一の部材と第二の部材が接している状態を経由して、第二の部材のみが接している状態になるように部材構成した後脚部であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の脚部構造は、第1の脚部構造または第2の脚部構造に対して、前記機器は情報処理装置で、前記第一の部材は軟質ゴムで、前記第二の部材は硬質ゴムあるいはプラスチックであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機器の脚部を支点に傾斜するように一部を持ち上げただけで、容易に設置面を滑らせて移動させることができ、かつ、安定した設置と利用を可能とさせる脚部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の情報処理装置の側面図と脚部の拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態の情報処理装置の移動時の状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施の形態の情報処理装置の底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明が利用される一例のノート型パーソナルコンピュータの側面図である。また、図1には、本発明の主要部分である脚部の拡大図も添えてある。
【0014】
ノート型パーソナルコンピュータ1は、接地面Xに設置されている。接地面Xは平面状で、机の机上面と考えて良い。ノート型パーソナルコンピュータ1は図1の右側部が後部で左側が前部である。ユーザーは前部側から上面側に配置されるディスプレイ部を開き、ディスプレイ部を視認できる状態にして、不図示のキーボード部を露出させて前部側からキー入力を行うことができる。この際にユーザーはノート型パーソナルコンピュータ1のキーボード部の前部側に配置された不図示のパームレスト等に腕を置きながらキー入力を行うことができる。
【0015】
ノート型パーソナルコンピュータ1は後脚部2と前脚部3を有している。後脚部2は、拡大断面図に示すように、軟質ゴム後脚21と硬質ゴム後脚23とで構成されている。前脚部3は、軟質ゴム前脚31で構成されている。さらに、ノート型パーソナルコンピュータ1は上側から荷重を受けると軟質ゴム後脚21と軟質ゴム前脚31が圧縮されてクッション性を確保するが、その効果をさらに高めるために、軟質ゴム部材の一部が入り込む逃げのスペースとして、後脚部2には、後脚ゴム吸収スペース22が、前脚部3には前脚ゴムスペース32が設けられている。
【0016】
詳細には、後脚ゴム吸収スペース22は、ノート型パーソナルコンピュータ1の底部筐体に軟質ゴム後脚21を嵌め込むように設けるための筐体の凹み部分の一部をさらに凹ませるように形成したものである。軟質ゴム後脚21をノート型パーソナルコンピュータ1に接着して、設置するのであれば、嵌め込みのための筐体の凹み部分は不要なので、その場合は接着面の一部を凹ませるように形成したものでも良い。また、接着と嵌め込みは併用しても良い。これは、前脚部も同様に考えて良い。
【0017】
軟質ゴム後脚21はクッション性があって滑りにくい材料であれば良く、硬質ゴム後脚23は、前者に比べ滑り易い材料あれば、ジュラコンなどのプラスチック材料を用いても良い。図1に示す前脚部の断面拡大図を見ると、後脚部に比較し、軟質ゴム前脚31の一部部材が前脚ゴム吸収スペース32に対して入り込んでいるのが分かる。これは、ノート型パーソナルコンピュータ1は、キー入力時に前部上側からユーザーの腕の荷重を受けるので、軟質ゴム前脚31の部材は、軟質ゴム後脚21の部材以上のクッション性を有す弾性体で構成されているからである。
【0018】
しかしながら、十分なクッション性と滑り止め効果を有す素材あるいは構造体をコスト的に前脚部と後脚部に採用できるのであれば、軟質ゴム前脚31と軟質ゴム後脚21は同様に構成しても良い。
【0019】
ノート型パーソナルコンピュータ1が接地面Xに設置されている時は、後脚部2の軟質ゴム後脚21は、Y部分で接地面Xに接している。硬質ゴム後脚23は、接地面Xから浮き上がっているように構成する。硬質ゴム後脚23が軟質ゴム後脚21と同様に接地面Xに接する構造を採用しても良いが、その場合は、軟質ゴム後脚21の接地面Yより小さい領域で硬質ゴム後脚23は接しているようにすることが必要である。
【0020】
つまり、脚部により支えられる機器が水平設置されている時は、滑りにくくすることが必要なので、摩擦係数が高い素材が低い素材と比較して機器荷重を多く受けとめ、摩擦係数の高い素材の接地部面積が低い素材に対して大きくなるようにする必要がある。
【0021】
また、ノート型パーソナルコンピュータ1に代表されるような情報処理装置をユーザーが机に置いたり、リビングテーブルに置いたりと設置場所を変える度に、設置時の急な荷重を脚部は受けとめる必要があるので、それを緩和するために、設置時に接地面と接する脚部部分は弾性を有するようにするか、クッション性材料で構成されることが望ましい。キーボード利用時にユーザーから繰返しかかる荷重を和らげるように、前脚部は、特にクッション性を有す弾性体部材等で構成されることが望ましい。
【0022】
次に図2を参照し、本発明を実施するための最良の形態の脚部構造を有す機器の移動容易性について説明する。図2は、ノート型パーソナルコンピュータ1の前部をユーザーが少し持ち上げたイメージを示す側面図である。この際の後脚部2の拡大断面図も添えてある。
【0023】
ユーザーがノート型パーソナルコンピュータ1の前部を持ち上げると、前脚部3は接地面Xから離れ、後脚部2のみが接地面Xと接するようになる。この時、前部をユーザーが持ち上げていくと、それに応じて、後脚接地部Yは、徐々に接地面Xから離れ、そして硬質ゴム後脚23が接するように、後脚部2の接地面Xと接する部分が変化していく。ユーザーは前方を持って、後脚側を支点に前部を持ち上げるだけだが、実際には接地面Xと接するパーソナルコンピュータ1の荷重を受けとめる支点部分は、軟質ゴム後脚21から、軟質ゴム後脚21と硬質ゴム後脚23の両方が接した状態を経由し、硬質ゴム後脚23が接した状態に変化することになる。
【0024】
これはユーザーが持ち上げたり戻したりする時のパーソナルコンピュータ1などの精密な機器への衝撃を少しでも抑えることが望まれるために、支点移動を極力滑らかにするためである。しかしながら、前記に比べ衝撃抑制の必要性が低ければ、必ずしも軟質ゴム後脚21と硬質ゴム後脚23の両方が接した状態を経由し、支点移動させるような構造を取る必要は無い。
【0025】
このような構成をとることによって、滑りにくい脚部材料で安定設置していた機器を、ユーザーが機器の前部を少し持ち上げるだけで、容易に前方や後方に設置面を滑らすように移動させることができる。ノート型パーソナルコンピュータ1の利用形態を考慮すると特にこれは重要である。すなわち、ユーザーは机上で利用する時の最適な操作ポジションにノート型パーソナルコンピュータ1を引っ張り出したり、操作を終えた後、机上の収納位置に戻したりということを、ストレス無く少しだけ前方を持ち上げるだけで可能になるからである。軟質ゴムは硬質ゴムに比較し、滑りにくくグリップ力もあり装置の安定設置に寄与する。
【0026】
また、移動時に設置面を滑らせる時に接する部分を硬質ゴムあるいはプラスチック材料にすることで、滑りやすくし移動容易性を高めるだけで無く、ゴムが削られるのも防止することができる。硬質ゴムやプラスチック材料は、グリップ力は劣るものの軟質ゴムに比較し、削れにくい特性を有すからである。更なるメリットとしては、移動時のノイズ軽減にも寄与する。硬質ゴムやプラスチック材料は、グリップ力は劣るものの軟質ゴムに比較し、机上等を滑らせる時の滑りノイズが小さい特性を有すからである。
【0027】
最後に、図3を参照して、後脚部2と前脚部3の機器への配置関係を説明する。図3は、ノート型パーソナルコンピュータ1の底面図である。それぞれ前方に前脚部3が二つ、後方に後脚部2が均等に荷重を受けるように配置されている。ここでは丸型で計4個の脚構造を採用しているが、形状は適宜変更しても構わないし、個数も前方に一つ後方に一つの少なくとも二つでも構わない。二つの場合は、平面への安定設置性を確保する必要があるので、矩形状の脚部構造にして接触面を大きく取る必要がある。
【0028】
例えば、図3の前脚部3の二つを繋げたような矩形型前脚部と、後脚部2の二つを繋げた矩形型後脚部とで構成することも可能である。
【0029】
後脚部2の軟質ゴム後脚21と硬質ゴム後脚23の関係は、底面側から見ると、移動時に機器を傾けた時に接する硬質ゴム後脚23の接触する一部分を残し、軟質ゴム後脚21で包み込まれるように構成されていることが分かる。これは、移動時の滑りやすさを確保するために、接地部は硬質ゴム後脚23の一部部材が接触する必要があるが、その場合であってもクッション性は確保できたほうが良いためである。すなわち、よりクッション性を有す軟質ゴム後脚21の部材で硬質ゴム後脚23を包み込むことで、両者の良い特性を活かすことができるからである。
【0030】
特に重要な点は、図2の後脚部2の断面拡大図で示すように、硬質ゴム後脚23の接地面Xとの接地部に荷重がかかる際に、機器の荷重が軟質ゴム後脚21を通じて硬質ゴム脚23の接地部にかかるように、軟質ゴム後脚21の部材で硬質ゴム後脚23を包み込むような構成をとることである。
【0031】
以上のように、機器の脚部を支点に傾斜するように一部を持ち上げただけで、容易に設置面を滑らせて移動させることができ、かつ、安定した設置と利用を可能とさせる脚部構造を提供することができる。そして、前記効果を実現しつつ、移動時の機器への衝撃抑制やノイズや脚部の部材の削れカスの低減にも効果のある脚部構造の提供も可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ノート型パーソナルコンピュータ
2 後脚部
3 前脚部
21 軟質ゴム後脚
22 後脚ゴム吸収スペース
23 硬質ゴム後脚
31 軟質ゴム前脚
32 前脚ゴム吸収スペース
X 接地面
Y 後脚接地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の設置面に配置する機器であって配置した前記機器の前方にユーザーが対峙して利用する機器の底部に前記設置面と接するように設けられた前脚部と、少なくとも第一の部材と第二の部材の二つから構成される後脚部とからなる脚部構造であって、
前記後脚部側を支点に、前記前脚部側の前記機器の一端部を前記設置面から持ち上げると、前記設置面に配置している時に接していた後脚部の接地部の部材が前記第一の部材から前記第二の部材に接するように換わり、第二の部材は第一の部材より前記設置面に対して滑りやすい部材であることを特徴とする機器の脚部構造。
【請求項2】
前記前脚部側の前記機器の一端部を前記設置面から持ち上げると、前記第一の部材から前記第二の部材が接するように換わる際に、前記後脚部の接地状態の変移は、第一の部材のみが接している状態から、第一の部材と第二の部材が接している状態を経由して、第二の部材のみが接している状態になるように部材構成した後脚部であることを特徴とする請求項1に記載の脚部構造。
【請求項3】
前記機器は情報処理装置で、前記第一の部材は軟質ゴムで、前記第二の部材は硬質ゴムあるいはプラスチックであることを特徴とする請求項1または2に記載の脚部構造。
【請求項4】
前記前脚部は、前記第一の部材と同等もしくはそれ以上の滑り止め効果のあるクッション性を有す軟質の弾性体部材と、前記弾性体部材の吸収スペースとからなり、
前記情報処理装置の前記前脚部側の前記機器の一端部に、操作者によって前記情報処理装置が操作される際にさらなる荷重がかかる時には、前記弾性体部材の一部が前記吸収スペースにさらに入り込むことを特徴とする請求項1乃至3に記載の脚部構造。
【請求項5】
前記後脚部は、前記第一の部材の吸収スペースを有し、後脚部への荷重に応じて前記第一の部材の一部が前記第一の部材の吸収スペースに入り込み、
さらに、前記第一の部材は、前記第二の部材が接地面に接する部分を除いて、前記第二の部材を略包み込むように構成されることを特徴とする請求項1乃至4に記載の脚部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−71298(P2011−71298A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220822(P2009−220822)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】