説明

機械式駐車装置

【課題】 省スペース化が図られて安全性が高く、かつ施工性、メンテナンス性及び拡張性に優れた機械式駐車装置を提供する。
【解決手段】 機械式駐車装置100は、建造物内に固定された基幹電力系統10から移動体のトレイ102側に無接点で電力伝送するために、送電側無接点電力伝送モジュール110と受電側無接点電力伝送モジュール120とを備えている。送電側無接点電力伝送モジュール110の送電カプラ115を、その送電面がYZ面(トレイ102の移動方向に平行な面)に略平行となるようにフレーム101等に固定し、受電側無接点電力伝送モジュール120の受電カプラ125を、その受電面がYZ面に略平行となるようにトレイ102上に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載された2次電池を駐車中に充電することが可能な機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部等では、駐車場の設置スペースを有効利用するために、複数の自動車を立体的に収納する立体駐車場などが多く設置されている。このような駐車場では、自動車を水平方向や垂直方向に移動させることができる機械式駐車装置が用いられている。従来のエンジン駆動の自動車を駐車させるための機械式駐車装置では、自動車を移動させるための手段を有していればよかった。
【0003】
一方、近年は排気ガス量を減らして環境保全に優れた電気自動車やプラグインハイブリッド車等が普及しつつある。このような自動車では走行に電動機を用いるため、車両には大容量の2次電池が搭載されている。大容量の2次電池の充電には長時間を要することから、駐車中に2次電池の充電を行えることが強く求められている。電気自動車やプラグインハイブリッド車の充電には、現在は標準化されたケーブル及びコネクタが用いられており、ケーブルの先端に取り付けられたコネクタを自動車側に備わった受電コネクタに接続して充電が行われる。
【0004】
機械式駐車装置においても、駐車中の自動車への充電機能を備えたものが知られている。例えば、特許文献1では、トロリー方式による充電機能を備えた機械式駐車装置が開示されている。車両を積載するパレットに電力供給端子(コンセント)が設けられており、これらがパレット及び積載中の車両とともに移動する。給電は、本体(躯体)側の給電線路から接点を介してトロリー方式で行われる。この接点は、ON/OFFの切り替えが可能となっており、パレットが所定の位置に停止したときにONとなるように構成されている。
【0005】
また、特許文献2に記載された機械式駐車装置では、車両に充電するための給電中継部がパレットに備えられているが、車両がパレットに乗り込む際に給電中継部が運転者に影響したり、パレットの外形から給電中継部が突出しないように、給電中継部が前後方向に起倒可能に構成されている。ここでは、給電中継部の設置スペースの効率化が図られている。
【0006】
一方、上記のような電力供給端子(コンセント)を用いずに、車両に無接点で給電する技術の開発も進められている。充電作業を意識せず行えるため電気自動車の利便性が大きく向上するものとして期待されている。例えば特許文献3では、車両の外部に設置された給電装置から車両底面に搭載された受電装置に非接触で給電する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−127302号公報
【特許文献2】特開2010−196338号公報
【特許文献3】特開2010−268665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載されている機械式駐車装置では、可動式のトレイ(パレット)に給電する方式としてトロリー方式が用いられているため、その施工が複雑で高コストになるといった問題がある。また、トレイの移動に伴って接点が摩耗するため、その交換等のメンテナンスが必要になる。さらに、将来特許文献3に記載のような技術を追加で導入しようとすると、トレイ上に高周波の給電装置を取り付ける必要があり、大規模な改修が必要となる。このように、トロリー方式では拡張性に乏しいといった問題がある。
【0009】
一方、特許文献3に開示されている無接点で給電する技術では、伝送距離の伸延や系の高効率化等の技術課題に加え、車両に受電装置が搭載され、外部の車両近傍に給電装置が設置されることから、乗車者や車両の近傍にいる人の安全性を十分に確保できるようにする必要がある。また、このような安全性確保を立証した上で標準化、或いは法制化などのプロセスを今後進めていく必要がある。そのため、普及までにさらに数年要すると考えられている。従って、車両への給電は、当面はケーブルとコネクタを用いて行われることになる。
【0010】
上記のような事情から、給電装置の省スペース化が図られ既存の設備への施工が容易であり、かつ部品交換等が不要なメンテナンス性に優れた機械式駐車装置が強く望まれている。また、車両への無接点給電等の将来技術を容易に導入できる高い拡張性も強く望まれている。
【0011】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、省スペース化が図られて安全性が高く、かつ施工性、メンテナンス性及び拡張性に優れた機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の機械式駐車装置の第1の態様は、2次電池を搭載した自動車を積載して所定の格納場所まで移動させて収納する2以上のトレイと、前記可動するトレイを支持するフレームと、を備えて建造物の内部に設置される機械式駐車装置であって、前記フレーム、または前記建造物に設置され、前記建造物の内部に敷設された基幹電力系統から分電して所定の高周波周波数の高周波電力に変換する送電側周波数変換部を有する送電パワーユニットと、前記送電側周波数変換部から前記高周波電力を入力して無接点で送電する略平面状の送電カプラと、を具備する送電側無接点電力伝送モジュールと、前記トレイ側に設置され、前記送電カプラから前記高周波電力を無接点で受電する略平面状の受電カプラと、前記受電カプラで受電された電力を前記自動車に供給するための電力供給部を有する受電パワーユニットと、を具備する受電側無接点電力伝送モジュールと、を備え、前記送電カプラと前記受電カプラは、前記トレイが所定の格納場所で停止したときに所定の位置関係となるように設置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記受電パワーユニットは、前記受電カプラで受電された前記高周波電力を入力して整流または所定の低周波周波数に変換する受電側周波数変換部をさらに有することを特徴とする。
【0014】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記電力供給部は、一端が前記受電側周波数変換部に接続されたケーブルと、前記ケーブルの他端に接続された電力供給端子と、を有し、
前記電力供給端子が前記自動車に設けられた受電部に接続されると、前記受電側周波数変換部から前記電力供給部を介して前記2次電池に電力供給されることを特徴とする。
【0015】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記電力供給部は、前記受電側周波数変換部に設けられたコンセントであり、前記自動車に具備された受電用ケーブルの先端に取り付けられているプラグが前記コンセントに挿入されると、前記受電側周波数変換部から前記電力供給部を介して前記2次電池に電力供給されることを特徴とする。
【0016】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記電力供給部は、一端が前記受電カプラに接続されたケーブルと、前記ケーブルの他端に接続された対車両送電カプラと、を有し、前記対車両送電カプラは、前記受電カプラから前記ケーブルを介して受電した前記高周波電力を前記自動車に設けられた車両受電カプラに無接点で送電することを特徴とする。
【0017】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記電力供給部は、前記受電カプラから前記高周波電力を無接点で受電して中継する中継カプラと、前記中継カプラから無接点で受電する対車両送電カプラと、を有し、前記対車両送電カプラは、前記受電カプラから前記中継カプラを介して受電した前記高周波電力を前記自動車に設けられた車両受電カプラに無接点で送電することを特徴とする。
【0018】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記所定の位置関係は、前記送電カプラの送電面と前記受電カプラの受電面とが平行に対向する位置関係であることを特徴とする。
【0019】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記送電面と前記受電面のそれぞれの一辺の長さがともに長さLのとき、前記所定の位置関係は、さらに前記送電面と前記受電面との距離が前記長さL以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記所定の位置関係は、前記送電カプラの送電面と前記受電カプラの受電面とが所定の角度で対向する位置関係であることを特徴とする。
【0021】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記送電面と前記受電面のそれぞれの一辺の長さがともに長さLのとき、前記所定の位置関係は、さらに前記送電面の中心と前記受電面の中心との距離が前記長さL以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記所定の角度は、90°以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明の機械式駐車装置の他の態様は、前記送電カプラから前記受電カプラへの無接点電力伝送は、電界共鳴方式により行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、省スペース化が図られて安全性が高く、かつ施工性、メンテナンス性及び拡張性に優れた機械式駐車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る機械式駐車装置の構成を示す平面図及び側面図である。
【図5】電界共鳴方式により無接点電力伝送を行う回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施の形態における機械式駐車装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0027】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る機械式駐車装置を、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態の機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。本実施形態の機械式駐車装置100は、建造物の内部に設置されたフレーム101と、フレーム101に移動可能に支持されて自動車を積載するためのトレイ102とを備えている。
【0028】
フレーム101は、水平方向に配置されてトレイ102を移動可能に支持する水平部材と該水平部材を支持する垂直部材とを有しており、トレイ102の移動が可能となるように構成されている。水平部材の一部は、例えばトレイ102に取り付けられた車輪を移動させるためのレールであってよい。以下では、説明簡単のために、図1に示す機械式駐車装置100の下方に記載した座標系を用いるものとする。また一例として、本実施形態の機械式駐車装置100では、トレイ102がフレーム101の垂直方向であるZ方向と、水平方向であるY方向に移動するものとし、X方向には移動しないものとする。
【0029】
トレイ102は、積載した自動車50をY方向またはZ方向に移動させるのに用いられるものである。省スペース化を図るために、トレイ102は車両サイズとほぼ同程度の大きさに形成されており、余裕スペースはほとんど設けられていない。トレイ102は、自動車50を積載したのち所定の位置まで移動されて格納されるが、このトレイ102を格納するためのフレーム101の空間を、以下では格納領域という。図1では、1つのトレイ102に対する格納領域を破線で囲み、これを符号103で示している。格納領域103は、トレイ102を底面として、トレイ102と自動車50とを格納することができる領域である。
【0030】
機械式駐車装置100は、電気自動車やプラグインハイブリッド車等のような大容量の2次電池を搭載した自動車50がトレイ102に積載されたとき、自動車50の2次電池に電力供給して充電が行えるように構成されている。2次電池に供給される電力は、建造物に敷設された基幹電力系統10から受電する必要があるが、固定された基幹電力系統10から移動体のトレイ102側に電力を伝送させる手段が必要となる。本実施形態では、この電力伝送手段として、従来の接点方式(トロリー方式)に代えて、建造物側に送電モジュール、トレイ側に受電モジュールを搭載する無接点の電力伝送手段を用いている。
【0031】
自動車50を積載したトレイ102を格納する格納領域103には、その近傍に送電側無接点電力伝送モジュール110が設置されている。また、トレイ102の所定の位置に受電側無接点電力伝送モジュール120が設置されている。本実施形態の機械式駐車装置100は、無接点の電力伝送手段として、送電側無接点電力伝送モジュール110と受電側無接点電力伝送モジュール120とを備えている。送電側無接点電力伝送モジュール110は、トレイ102の移動の障害とならないように、格納領域103より外側のフレーム101または建造物の壁(図1に、符号20で示す。)等に固定されている。また、受電側無接点電力伝送モジュール120は、トレイ102上に設置され、トレイ102とともに移動する。
【0032】
送電側無接点電力伝送モジュール110は、送電パワーユニット111と送電カプラ115とを備えている。送電パワーユニット111は、建造物内に配索された基幹電力系統10に接続されて所定の周波数の高周波電力に変換する送電側周波数変換部112を有している。送電側周波数変換部112は、基幹電力系統10から例えば50Hz(または60Hz)の電力を受電し、これをkHzあるいはMHz単位の第1の高周波周波数に変換する。送電側周波数変換部112は広義のAC−ACコンバータである。送電カプラ115は、送電側周波数変換部112から第1の高周波周波数を有する高周波電力を入力し、これを無接点(非接触)で受電側無接点電力伝送モジュール120に伝送する。
【0033】
受電側無接点電力伝送モジュール120は、受電パワーユニット121と受電カプラ125とを備えている。受電パワーユニット121は、受電側周波数変換部123と積載している自動車50の2次電池に電力供給するための電力供給部122とを有している。受電カプラ125は、送電カプラ115から第1の高周波周波数の電力を無接点で受電し、これを受電側周波数変換部123に供給する。受電側周波数変換部123は、受電カプラ125から供給された第1の高周波周波数の電力を整流して直流に変換する。
【0034】
電力供給部122は電力供給端子122aを有し、電力供給端子122aがケーブル122bで受電側周波数変換部123に接続されている。自動車50がトレイ102に積載されたときに、電力供給端子122aが自動車50の受電部51に接続される。その後、トレイ102が所定の格納領域103に移動されると、受電カプラ125が送電カプラ115から受電し、受電側周波数変換部123で変換された電力が電力供給端子122aから自動車50の受電部51を経由して2次電池に供給され、該2次電池の充電が行われる。
【0035】
電力供給部122は、受電側周波数変換部123に設けられたコンセントであってもよい。自動車50が、充電用装置として2次電池に接続された受電用ケーブルと、該受電用ケーブルの先端に取り付けられたプラグとを有しているときは、プラグを受電側周波数変換部123に設けられたコンセントに接続することで、2次電池に電力を供給して充電することができる。さらに、電力供給部122として、電力供給端子122aと受電側周波数変換部123に設けられたコンセントの両方を備えたものであってもよい。
【0036】
なお上記では、受電側周波数変換部123が受電カプラ125から供給された第1の高周波周波数の電力を直流に変換するものとしたが、自動車側の充電手段が所定の低周波電力、例えば基幹電力系統10と同じ50Hz(または60Hz)の電力、を受電するように構成されている場合には、受電側周波数変換部123が第1の高周波周波数の電力を所定の低周波周波数に変換するものとする。
【0037】
本実施形態の機械式駐車装置100では、トレイ102の移動可能な方向を、図1に示すようにY方向及びZ方向としたとき、フレーム101等に固定される送電側無接点電力伝送モジュール110を、トレイ102の移動の障害とならないYZ面に配置する。また、無接点で高周波電力を伝送させる送電カプラ115と受電カプラ125とは、高周波電力を効率よく伝送させるために、送電カプラ115の送電面と受電カプラ125の受電面とが対向して略平行に配置されるのが好ましい。そのためには、受電カプラ125をトレイ102上に立設させて固定する必要があるが、受電カプラ125が自動車50の積載の障害にならないようにするとともに、その設置スペースをできるだけ小さくして省スペース化を図る必要がある。
【0038】
そこで、送電カプラ115を、その送電面がYZ面に平行な格納領域103の側面(図1において符号103aで示す)に近接して略平行になるようにフレーム101等に固定するとともに、受電カプラ125を、その受電面が格納領域103の側面103aと略平行になるようにトレイ102上に固定するのがよい。送電カプラ115及び受電カプラ125は、高周波電力を送受する面の寸法に比べて厚さの寸法が小さいことから、上記のように配置することで、その設置スペースを小さくすることができる。送電カプラ115と受電カプラ125との間の距離は、伝送方式によって適宜選択することができる。
【0039】
送電パワーユニット111及び受電パワーユニット121は、省スペース化を図って以下のように配置するのがよい。まず、送電パワーユニット111は、フレーム101または壁20(YZ面の壁が近傍にある場合)のいずれかのYZ面に、X方向の厚さが小さくなるように配置し、格納領域103内に突出しないようにする。また、受電パワーユニット121は、トレイ102の空きスペース、例えばトレイ102上の自動車50の車輪が通過しない位置等に配置し、格納領域103外に突出しないようにする。
【0040】
本実施形態の機械式駐車装置100は、固定された基幹電力系統10から移動体のトレイ102側に電力伝送する手段として、フレーム101等に固定された送電側無接点電力伝送モジュール110と、トレイ102に固定された受電側無接点電力伝送モジュール120とを備えており、これらを用いて無接点で電力伝送できるようにしている。交換頻度の高い接点等を不要とすることで、メンテナンスの頻度を大幅に低減、あるいはメンテナンスフリーとしている。また、送電カプラ115と受電カプラ125とを、トレイ102の移動可能な方向であるYZ面に平行に配置することにより、トレイ102の移動の障害とならないようにするとともに、設置に必要なスペースを小さくしている。
【0041】
送電パワーユニット111及び受電パワーユニット121の配置については、省スペース化を図るとともに、送電パワーユニット111をトレイ102の移動の障害にならないように配置し、受電パワーユニット121を自動車50の積載の障害とならないように配置すればよく、それ以外の制約がないことから施工が容易であり、新設や既存設備への導入も容易に行えて拡張性が高い。
【0042】
さらに、本実施形態の機械式駐車装置100は建造物の内部に設置され、送電側無接点電力伝送モジュール110と受電側無接点電力伝送モジュール120との間で高周波電力の伝送が行われるのは、人が立ち入ることのない格納領域103にトレイ102が移動された後である。そのため、高周波電力の伝送が人体に悪影響を与えることはなく、安全性の観点から新たな問題が生じるおそれはない。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る機械式駐車装置を、図2を用いて説明する。図2は、第2実施形態の機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。本実施形態の機械式駐車装置200は、無接点で受電する手段を備えた自動車60に対し、無接点で給電できるように構成されている。
【0044】
自動車60は、その底部に無接点で受電するための車両受電カプラ61を備えている。車両受電カプラ61は、所定の高周波周波数(第2の高周波周波数とする)の電力を無接点で受電することができる。車両受電カプラ61で受電された電力は、自動車60に搭載された周波数変換部(図示せず)で整流され、これが2次電池に供給されることで2次電池の充電が行われる。
【0045】
機械式駐車装置200は、電力供給部222として、自動車60に設けられた車両受電カプラ61に無接点で送電するための対車両送電カプラ222aと、一端が対車両送電カプラ222aに接続されたケーブル222bと、を有している。対車両送電カプラ222aは、自動車60をトレイ102上に停車させたときに車両受電カプラ61と略対向するトレイ102上の位置に配置される。また、ケーブル222bは、トレイ102上の自動車60の移動の障害とならない位置に配索される。これにより、電力供給部222の設置スペースを小さくして省スペース化を図ることができる。
【0046】
受電カプラ125では第1の高周波周波数の高周波電力が受電され、対車両送電カプラ222aでは第2の高周波周波数の高周波電力が送電されることから、第1の高周波周波数を第2の高周波周波数に略等しくすることにより、周波数変換することなく受電カプラ125から対車両送電カプラ222aに高周波電力を伝送することができる。すなわち、受電パワーユニット221は、受電側周波数変換部123を備えず対車両送電カプラ222aとケーブル222bとを有する電力供給部222のみで構成され、ケーブル222bの他端を受電カプラ125に直接接続する中継器として構成することができる。受電側周波数変換部123を不要とすることで、受電パワーユニット221の構成をさらに簡素にして省スペース化を図ることができる。
【0047】
本実施形態の機械式駐車装置200は、自動車が今後無接点で受電する車両受電カプラ61を備えるようになった場合でも、トレイ102に対車両送電カプラ222aを設けてケーブル222bで受電カプラ125に接続するだけで、自動車60に無接点で電力を供給することが可能となり、自動車への無接点給電化に対応させて低コストで容易に機能拡張することができる。
【0048】
これに対し、従来の接点方式(トロリー方式)の機械式駐車装置では、車両受電カプラ61を備えた自動車60に無接点で給電できるようにするには、車両受電カプラ61に無接点で給電するための対車両送電カプラをトレイ上に新たに追加するのに加えて、接点方式で受電した低周波の電力を所定の高周波周波数の電力に変換するための周波数変換部もトレイ上に追加する必要がある。そのため、大きな設置スペースが必要となり追加が難しくなるおそれもある。本実施形態の機械式駐車装置200は、周波数変換部を不要とすることができることから、自動車の将来技術に対し高い拡張性及び親和性を有している。
【0049】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る機械式駐車装置を、図3を用いて説明する。図3は、第3実施形態の機械式駐車装置の構成を示す斜視図である。本実施形態の機械式駐車装置300は、一部が第2実施形態の機械式駐車装置200と異なるように構成されている。第2実施形態の機械式駐車装置200では、トレイ102上に設けられた受電カプラ125と対車両送電カプラ222aとの間がケーブル222bで接続されていた。これに対し本実施形態の機械式駐車装置300では、受電カプラ125から対車両送電カプラ222aへの電力伝送の手段として、ケーブル222bに代えて無接点による電力伝送の手段を用いるように構成されている。
【0050】
本実施形態の機械式駐車装置300では、受電カプラ125と対車両送電カプラ222aとの間に中継カプラ322bを1以上配置している。そして、受電カプラ125から中継カプラ322bに無接点で電力伝送し、該中継カプラ322bから次の中継カプラ322bまたは対車両送電カプラ222に無接点で電力伝送する構成としている。中継カプラ322bの設置数は、受電カプラ125から対車両送電カプラ222aまでの距離に応じて適宜調整することができる。
【0051】
本実施形態の機械式駐車装置300によれば、受電カプラ125と対車両送電カプラ222aとの間に中継カプラ322bを適宜配置することにより、ケーブルを用いることなく無接点による電力伝送のみで自動車に給電することが可能となる。本実施形態の機械式駐車装置300は、建造物の内部に設置されて人が立ち入ることはないことから、無接点による電力伝送のみで高周波電力を伝送させても人体に悪影響を与えることはない。
【0052】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る機械式駐車装置を、図4、5を用いて以下に説明する。第1実施形態では、トレイ102の長手方向(積載される車両の前後方向となる)をX方向とし、トレイ102の移動可能な方向をY方向及びZ方向の2方向としたときを例に、機械式駐車装置100の各モジュールの配置例を説明した。しかしながら、トレイ102の移動可能な方向は、建造物の構造等によって変わることから、トレイの移動方向に対応して本発明の機械式駐車装置の配置位置を適切に選択することができる。機械式駐車装置の配置では、送電側無接点電力伝送モジュールをトレイの移動の障害とならない位置に配置すればよく、それに対応して受電側無接点電力伝送モジュールをトレイ上の送電側無接点電力伝送モジュールに近接する位置に配置することになる。
【0053】
また、送電側無接点電力伝送モジュールの送電カプラ及び受電側無接点電力伝送モジュールの受電カプラの設置位置は、無接点電力伝送を実現する伝送方式によっても異なってくる。そこで、本発明の第4の実施形態に係る機械式駐車装置では、送電カプラと受電カプラとの間の無接点電力伝送方式として電界共鳴方式を用いるものとする。電界共鳴方式とは、送電カプラと受電カプラにおける電力の伝送を、主として電界のカップリングにより行う方式である。電界共鳴方式により無接点電力伝送を行う回路図の一例を図5に示す。図5では、送電側が交流電源91、コイル92、及び送電電極93(93a、93b)で構成され、受電側が受電電極94(94a、94b)、コイル95、及び負荷96で構成されるものとしている。
【0054】
磁界共鳴方式では、電力伝送に用いる磁界をコイルで生成するため、カプラを薄くかつ軽量に形成することが難しい。これに対し、電界共鳴方式では、電力伝送に用いる電界を電極で生成するため、カプラを薄くかつ軽量に形成することが可能である。また、磁界共鳴方式のコイルの線材では電流密度が高くなり、高効率化のためには高導電率材料やリッツ線等の特殊な線材を用いる必要がある。これに対し、電界共鳴方式の電極では、電極に大きな電流が流れないため、高導電率の材料等を用いることなく、低コストで高効率化を達成できる。
【0055】
送電側において交流電源91により送電電極93を高周波で励振すると、送電電極93と受電電極94との間で電界結合による共鳴が生じる。これにより。受電電極94に電力が伝送され、負荷96に電力を供給することが可能となる。電界共鳴方式では、送電電極93及び受電電極94で形成される電界が等方的に広がることから、磁気共鳴方式等に比べて、送電電極93及び受電電極94の設置自由度が高く伝送効率も高い。このような利点により、送電電極を備える送電カプラや受電電極を備える受電カプラの低背化を図ることが可能となり、また高い伝送効率により低コスト化を図ることができる。
【0056】
電界共鳴方式では、送電カプラと受電カプラとの位置関係が、必ずしも平行に対向している必要がなく、各カプラの設置自由度が高くなるといった利点が得られる。すなわち、送電カプラと受電カプラとを平行に対向させて設置する場合だけでなく、送電カプラと受電カプラとが相対的に傾いた状態で設置しても高い伝送効率が得られる。あるいは、送電カプラに対し受電カプラを90°傾けて設置することも可能であり、この場合でも高い伝送効率が得られる。よって、例えば送電カプラを垂直に立設した場合には、受電カプラを水平に配置することができ、受電カプラの低背化が可能となる。第4の実施形態の機械式駐車装置では、無接点電力伝送方式として電界共鳴方式を用いることで、高い伝送効率を実現するとともに、送電カプラ及び受電カプラの設置自由度を高めている。
【0057】
本実施形態の機械式駐車装置400の構成を、図4を用いて説明する。同図に示す機械式駐車装置400の構成例では、トレイ402の移動方向をX方向とし、トレイ402を図面右から左方向に移動させて所定の格納領域に格納するものとする。以下では、説明簡単のため、トレイ402の左側を前方とし、右側を後方とする。図4は、トレイ402を所定の格納場所に停止させた状態において、送電側無接点電力伝送モジュールの送電カプラ415と受電側無接点電力伝送モジュールの受電カプラ425との位置関係の一例を示している。図4(a)〜(e)のいずれにおいても、上段にトレイ402の上方から見たときの平面図、下段にトレイ402の側方から見たときの側面図を示している。
【0058】
なお、送電側無接点電力伝送モジュールの送電カプラ415以外の送電パワーユニット及び送電側周波数変換部は、第1実施形態と同様に、建造物の壁面20あるいはフレーム101に適宜固定すればよい。また、受電側無接点電力伝送モジュールについても、受電カプラ425以外の受電パワーユニット、受電側周波数変換部等は、トレイ402に適宜設置することができる。
【0059】
図4(a)に示す機械式駐車装置400(400−1とする)は、送電カプラ415がトレイ402の移動方向前方のフレーム等に固定されている場合を示している。このとき、受電カプラ425は、第1実施形態と同様に、送電カプラ415と平行に対向するようにトレイ402の前方に設置することができる。
【0060】
また、図4(b)に示す機械式駐車装置400(400−2とする)は、送電カプラ415がトレイ402の移動方向と平行な側面のフレーム等に固定される場合を示している。送電カプラ415をトレイ402の移動の妨げとならないようにトレイ402の移動方向と平行なフレーム等に固定することができる場合には、受電カプラ425は、トレイ402が所定の格納場所で停止したときに送電カプラ415と平行に対向するように、トレイ402の側辺に設置することができる。
【0061】
本実施形態の機械式駐車装置400では、無接点電力伝送方式として電界共鳴方式を用いていることから、送電カプラ415と受電カプラ425とを必ずしも平行に対向させる必要はない。そこで、送電カプラ415と受電カプラ425とを相互に直交するように設置した構成例を、図4(c)〜(e)に示す。
【0062】
図4(c)に示す機械式駐車装置400(400−3とする)は、図4(a)の場合と同様に、送電カプラ415がトレイ402の移動方向前方のフレーム等に固定され、受電カプラ425がトレイ402の前方に設置されている。ただし、送電カプラ415が第1実施形態と同様に垂直に立設されているのに対し、図4(c)では受電カプラ425が水平方向にトレイ402上に設置されている。これにより、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面とが直交するように配置されている。
【0063】
電界共鳴方式による無接点電力伝送では、送電カプラ415から受電カプラ425に高い伝送効率で電力伝送するために、送電カプラ415と受電カプラ425との間の距離が所定の条件を満たすように配置する必要がある。送電カプラ415の送電面及び受電カプラ425の受電面のそれぞれの一辺の長さをともにLとしたときには、高い伝送効率を実現するための条件は以下のようになる。まず、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面とが図4(a)のように平行に対向しているときは、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面との間の距離をL以下となるように配置するのがよい。
【0064】
また、図4(c)に示すように、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面とが直交するように配置されているときは、送電カプラ415の送電面の中心と受電カプラ425の受電面の中心との距離がL以下となるように配置するのがよい。これにより、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面とが直交するように配置されていても、送電カプラ415から受電カプラ425に高い伝送効率で電力伝送することができる。
【0065】
図4(d)に示す機械式駐車装置400(400−4とする)は、図4(b)の場合と同様に、送電カプラ415がトレイ402の移動方向と平行な側面のフレーム等に固定され、受電カプラ425がトレイ402の側辺に設置されている。ただし、ここでも送電カプラ415が垂直に立設されているのに対し、受電カプラ425が水平方向にトレイ402上に設置されている。これにより、送電カプラ415の送電面と受電カプラ425の受電面とが直交している。送電カプラ415の送電面の中心と受電カプラ425の受電面の中心との距離がL以下となるように配置することで、送電カプラ415から受電カプラ425に高い伝送効率で電力伝送することができる。
【0066】
さらに図4(e)に示す機械式駐車装置400(400−5とする)は、図4(d)に示す機械式駐車装置400−4の構成と同様に、送電カプラ415がトレイ402の移動方向と平行な側面のフレーム等に固定され、受電カプラ425がトレイ402の側辺に設置されており、さらに受電カプラ425が水平方向にトレイ402上に設置されている。両者の構成の相違は、機械式駐車装置400−4の構成では受電カプラ425がトレイ402の前方に設置されているのに対し、機械式駐車装置400−5の構成では受電カプラ425がトレイ402の後方に設置されている。このように、送電カプラ415をトレイ402の移動方向と平行な側面のフレーム等に固定し、受電カプラ425をトレイ402の側辺に設置する場合には、トレイ402の長手方向の比較的広い範囲で受電カプラ425の設置場所を選択することが可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る機械式駐車装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における機械式駐車装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 基幹電力系統
20 壁面
50、60 自動車
51 受電部
61 車両受電カプラ
100、200、300、400 機械式駐車装置
101 フレーム
102、402 トレイ
103 格納領域
110 送電側無接点電力伝送モジュール
111 送電パワーユニット
112 送電側周波数変換部
115、415 送電カプラ
120 受電側無接点電力伝送モジュール
121、221 受電パワーユニット
122、222 電力供給部
122a 電力供給端子
122b ケーブル
123 受電側周波数変換部
125、425 受電カプラ
222a 対車両送電カプラ
222b ケーブル
322b 中継カプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池を搭載した自動車を積載して所定の格納場所まで移動させて収納する2以上のトレイと、前記可動するトレイを支持するフレームと、を備えて建造物の内部に設置される機械式駐車装置であって、
前記フレーム、または前記建造物に設置され、前記建造物の内部に敷設された基幹電力系統から分電して所定の高周波周波数の高周波電力に変換する送電側周波数変換部を有する送電パワーユニットと、前記送電側周波数変換部から前記高周波電力を入力して無接点で送電する略平面状の送電カプラと、を具備する送電側無接点電力伝送モジュールと、
前記トレイ側に設置され、前記送電カプラから前記高周波電力を無接点で受電する略平面状の受電カプラと、前記受電カプラで受電された電力を前記自動車に供給するための電力供給部を有する受電パワーユニットと、を具備する受電側無接点電力伝送モジュールと、を備え、
前記送電カプラと前記受電カプラは、前記トレイが所定の格納場所で停止したときに所定の位置関係となるように設置されている
ことを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記受電パワーユニットは、前記受電カプラで受電された前記高周波電力を入力して整流または所定の低周波周波数に変換する受電側周波数変換部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記電力供給部は、一端が前記受電側周波数変換部に接続されたケーブルと、前記ケーブルの他端に接続された電力供給端子と、を有し、
前記電力供給端子が前記自動車に設けられた受電部に接続されると、前記受電側周波数変換部から前記電力供給部を介して前記2次電池に電力供給される
ことを特徴とする請求項2に記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
前記電力供給部は、前記受電側周波数変換部に設けられたコンセントであり、
前記自動車に具備された受電用ケーブルの先端に取り付けられているプラグが前記コンセントに挿入されると、前記受電側周波数変換部から前記電力供給部を介して前記2次電池に電力供給される
ことを特徴とする請求項2に記載の機械式駐車装置。
【請求項5】
前記電力供給部は、一端が前記受電カプラに接続されたケーブルと、前記ケーブルの他端に接続された対車両送電カプラと、を有し、
前記対車両送電カプラは、前記受電カプラから前記ケーブルを介して受電した前記高周波電力を前記自動車に設けられた車両受電カプラに無接点で送電する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項6】
前記電力供給部は、前記受電カプラから前記高周波電力を無接点で受電して中継する中継カプラと、前記中継カプラから無接点で受電する対車両送電カプラと、を有し、
前記対車両送電カプラは、前記受電カプラから前記中継カプラを介して受電した前記高周波電力を前記自動車に設けられた車両受電カプラに無接点で送電する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項7】
前記所定の位置関係は、前記送電カプラの送電面と前記受電カプラの受電面とが平行に対向する位置関係である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項8】
前記送電面と前記受電面のそれぞれの一辺の長さがともに長さLのとき、
前記所定の位置関係は、さらに前記送電面と前記受電面との距離が前記長さL以下である
ことを特徴とする請求項7に記載の機械式駐車装置。
【請求項9】
前記所定の位置関係は、前記送電カプラの送電面と前記受電カプラの受電面とが所定の角度で対向する位置関係である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。
【請求項10】
前記送電面と前記受電面のそれぞれの一辺の長さがともに長さLのとき、
前記所定の位置関係は、さらに前記送電面の中心と前記受電面の中心との距離が前記長さL以下である
ことを特徴とする請求項9に記載の機械式駐車装置。
【請求項11】
前記所定の角度は、90°以下である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の機械式駐車装置。
【請求項12】
前記送電カプラから前記受電カプラへの無接点電力伝送は、電界共鳴方式により行われる
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の機械式駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76316(P2013−76316A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203295(P2012−203295)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】