説明

機種判別装置

【目的】あるプリンタが、複数の機種の中の所定の一つであるかどうかを、たとえ外観がほぼ同一であっても容易に判定できる、機種判別装置の提供。
【構成】電子写真プリンタ1に機種情報の送信を要求する送信手段2と、機種情報送信要求に応答して電子写真プリンタ1から送られて来る機種情報を受信する受信手段3と、受信情報が所定のデータと一致するかどうかを判定する機種判定手段4と、前記機種判定手段4によって、前記機種情報が前記所定のデータと一致しない場合に警告する警告手段5とを有することを特徴とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は電子写真プリンタの組立ラインにおけるプリンタの性能試験の際に、試験に先立って被試験機が所定の機種であるかどうかを判別するための、機種判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、所謂電子写真法を利用した画像形成装置として、電子複写機やレーザビームプリンタなどの電子写真プリンタが知られている。電子写真法においては、まず一様に帯電させた感光ドラム表面を、画像情報に基づいて露光部で露光して潜像を形成し、現像部において潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する(現像)。次にこのトナー像を転写部で記録紙に転写後、定着部で定着させる。
【0003】
電子写真プリンタは、上記の各作用部の制御を行うエンジンコントローラボードと、作画機能を持つプリンタコントローラを有している。しかしながら、プリンタの組立ラインにおいては、プリンタの性能を試験するために、プリンタコントローラを用いず、試験装置をエンジンボードに接続して、試験に適した画像データを送ることにより、その性能を評価している。
【0004】
このエンジンコントローラボードには、前述の試験装置との通信を行うためのインターフェース回路が設けられている。このインターフェースを介して、印字指令・水平同期・垂直同期等の信号の通信、およびシリアル通信が、エンジンコントローラボードと試験装置との間で行われる。
【0005】
【考案が解決しようとする問題点】
実際に製品を生産する場合、同一のプリンタを使いながら、エンジンコントローラボードの部品の一部を変えて、いくつかの機種(バージョン)を作ることがある。この場合、テスト装置もその機種に対応したものを用いる必要がある。通常、一つの組立ラインでは同一のバージョンの機種を扱い、従って、一つの試験装置で順次組立ラインを流れて来るプリンタの試験を行っている。
【0006】
上記の複数の機種(バージョン)は何れも同一のエンジンコントローラボードの部品の一部を変えたものであるため、外観だけでどのバージョンかを判断することは極めて難しい。また、試験装置側とエンジンコントローラボード側で機種の設定が異なっている場合には、正しい試験結果を得ることが出来ない。即ち、ある特定の機種を前提として試験を行っているライン上に他の機種が紛れ込んでいた場合には、誤動作の原因が機種の違いであるにも拘らず、不良品と判定されてしまうという問題があった。また、逆に他の機種に対応した試験装置で試験を行った場合にも、正常なプリンタが不良品と判断されるという問題があった。
【0007】
【問題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、本考案の電子写真プリンタの機種判別装置は、図1に示すように、電子写真プリンタに機種情報の送信を要求するコマンドを送信するためのコマンド送信手段2と、前記コマンド送信手段によって送られたコマンドに応答して前記電子写真プリンタから送られて来る機種情報を受信するための情報受信手段3と、前記情報受信手段によって受信した機種情報が所定のデータと一致するかどうかを判定する機種判定手段4と、前記機種判定手段によって、前記機種情報が前記所定のデータと一致しないことを警告する警告手段5とを有することを特徴とする。
さらに、本考案の機種判別装置は、複数の異なる機種の電子写真プリンタに対応するデータの中から一つを設定するデータ設定手段8を有し、前記機種判定手段4が、前記機種情報と前記データ設定手段8によって設定されたデータとが一致するかどうかを判定する。
さらに、前記機種判別装置は、前記電子写真プリンタ1の性能を試験するための試験手段7を有し、前記機種判定手段4が、前記機種情報と前記データ設定手段8によって設定されたデータとが一致しないと判断した場合に、前記試験手段7の動作を禁止する禁止手段6を有する。
【0008】
【実施例】
以下、図に基づいて本考案の実施例を説明する。
図3は、あるエンジンコントローラボードから派生した4種類のバージョンを説明する図である。基本となるエンジンコントローラボードEは、その解像度の差からver1とver2に分かれる。更に、各解像度のボードは従来型の動作のAとその改良型のBに分けられ、ver1A、ver1B、ver2A、ver2Bの4種類のバージョンのエンジンコントローラボードが作られる。解像度の差及び動作モードの差は、それぞれ1本の抵抗を取り替えることによってつけられるものであり、目視では容易には区別ができないものである。
【0009】
図4は本考案の機種判別装置を組み込んだ試験装置としてのリモートコントローラ100の正面図である。リモートコントローラ100はケーブル80でエンジンコントローラボードに設けられたインターフェース回路を介してエンジンコントローラボードと接続され、メニューボタン20を押してLCD10に表示される試験項目を選択し、スタートボタン30を押すことにより、プリンタの試験が実行される。試験項目としては、印字のチェック・プリンタの各機構の動作チェック・光学系(レーザ)のパワー調整・定着器の温度制御テスト・紙送りテスト等がある。尚、このリモートコントローラ100では、解像度切り替えスイッチ40及び動作モード切り替えスイッチ50により、前記のエンジンコントローラボードの4つのバージョンの所望のものを選択できるようになっている。従って、実際の組立ライン上のプリンタの試験を行う場合には、予めライン上のプリンタのエンジンコントローラボードに対応したバージョンを選択しておき、試験を行うことになる。
【0010】
図2はエンジンコントローラボード1とリモートコントローラ100の通信を説明する図である。エンジンコントローラボード1からリモートコントローラ100へはプリンタレディ信号・垂直同期信号・水平同期信号が送られ、リモートコントローラ100からエンジンコントローラボード1へは、プリント指令・画像信号が送られる。更に、シリアル通信回路を介して、エンジンコントローラボード1からリモートコントローラ100へ入力されるクロックパルスSCLKに同期して、リモートコントローラ100からエンジンコントローラボード1へ試験項目を知らせる8ビットのコマンド信号SINが送られ、同じく前記クロックパルスに同期して、エンジンコントローラボード1からリモートコントローラ100に、前記コマンド信号に応答してプリンタの状態を知らせるステータス信号
SOUTが入力される(図5参照)。
【0011】
上記のコマンド信号SINにより、機種(バージョン)情報要求コマンドがエンジンコントローラボード1に送られると、それに応答して、機種(バージョン)情報がステータス信号SOUTによりリモートコントローラ100に返されるようになっている。図5に示すように、ステータス信号はD0〜D7の8ビットにより構成され、この内のD1、D2を解像度を表すビット、D5、D6を動作モードを表すビットとしている(図6、図7参照)。すなわち、D1、D2、D5、D6の組合せにより前述の4つのバージョンver1A、ver1B、ver2A、ver2Bに対応しているものである。
【0012】
図8は、リモートコントローラ100の動作を表すフローチャートである。電源が投入されると、ステップS1(以下、単にS1、S2・・・・と示す)において、動作可能状態になったと判定されると、LED60が点灯してレディ状態となった事を示す。続いて、機種情報要求コマンドをエンジンコントローラボード1に送信し、ステータス信号を受信する(S2、S3)。このステータス信号
の4つのビットD1、D2、D5、D6が解像度切り替えスイッチ40及び動作モード切り替えスイッチ50により予め設定してある機種(バージョン)と一致する場合には、S4でYesと判定されS5に示される、プリンタ試験処理が実行される。機種が一致しなかった場合には、S4でNoと判定され、LED70が点灯し、ブザー90が鳴って、機種が不一致であることを知らせる(S6)。
機種が合致しない場合にはもはや試験を行う必要はないため、リモートコントローラ100は動作を停止する。
【0013】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、電子写真プリンタの性能試験を外部の試験装置等で行う場合、試験に先立って、プリンタの機種と試験装置の対応機種とが一致しているかどうかを知る事が出来る。従って、組立ライン等で性能試験を行うような場合、ラインに異なる機種が紛れ込んでいた場合・ライン上の機種と試験装置の対象機種が異なっていた場合のいずれにおいても、プリンタを不良品と誤判断する事なく、さらに機種が違っていることをオペレータに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の機種判別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本考案の機種判別装置を組み込んだリモートコントローラとプリンタの通信を説明するブロック図である。
【図3】あるエンジンコントローラボードから派生した4種類のバージョンを説明する図である。
【図4】本考案の機種判別装置を組み込んだ試験装置としてのリモートコントローラの正面図である。
【図5】機種判別装置とプリンタのシリアル通信を説明するタイミングチャートである。
【図6】解像度を表すビットD1、D2の組合せを示す図である。
【図7】動作モードを表すビットD5、D6の組合せを示す図である。
【図8】リモートコントローラ100の動作を表すフローチャートである。
【符号の説明】
1 プリンタ
10 LCD
100 リモートコントローラ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 (A)電子写真プリンタに機種情報の送信を要求するコマンドを送信するためのコマンド送信手段(B)前記コマンド送信手段によって送られたコマンドに応答して前記電子写真プリンタから送られて来る機種情報を受信するための情報受信手段(C)前記情報受信手段によって受信した機種情報が所定のデータと一致するかどうかを判定する機種判定手段(D)前記機種判定手段によって、前記機種情報が前記所定のデータと一致しないことを警告する警告手段とを有する、電子写真プリンタの機種判別装置。
【請求項2】 複数の異なる機種の電子写真プリンタに対応するデータの中から一つを設定するデータ設定手段を有し、前記機種判定手段が、前記機種情報と前記データ設定手段によって設定されたデータとが一致するかどうかを判定する、請求項1の機種判別装置。
【請求項3】 前記電子写真プリンタの性能を試験するための試験手段を有し、前記機種判定手段が、前記機種情報と前記データ設定手段によって設定されたデータとが一致しないと判断した場合に、前記試験手段の動作を禁止する禁止手段を有する、請求項2の機種判別装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】実開平5−2246
【公開日】平成5年(1993)1月14日
【考案の名称】機種判別装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−77245
【出願日】平成3年(1991)6月19日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)