説明

櫛付きキャップ

【課題】 本発明は、内容物の頭髪に対する塗布動作時に、頭髪と櫛歯片の間に発生する抵抗を低減することにより、きわめて良好な使用感と頭髪に対する安全性を得ることを目的とするものである。
【解決手段】 内容物Nを収納した容器体15に組み付けられる櫛付きキャップ1であって、櫛付きキャップ1の櫛歯片10同士の対向面を、多数の小突起12で構成される粗面化処理面11とし、小突起12間に吐出された内容物Nを粗面化処理面11に付着させて、吐出された内容物Nの液垂れさせることなく付着保持すると共に、頭髪Kに対するスムースな梳き動作と、斑のない塗布状態を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体に収納された白髪染めやヘアマニキュア等の内容物を、容器体から頭髪に直接塗布すべく構成した櫛付きキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器体にキャップとして組み付けられ、容器体の白髪染めやヘアマニキュア等の内容物を直接頭髪に塗布することができるようにした、櫛付きキャップを有する技術を示すものとして、特開2007−007009号公報に開示された技術が知られている。
【0003】
この従来技術は、櫛を構成する各櫛歯片による内容物の保持能力を高めるとともに、頭髪の毛先にも満遍なく塗布できるようにしたもので、櫛歯片の側面に、吐出口から櫛歯片の根本部にかけて凹凸面を設けたから、吐出された内容物が凹凸面によって保持され、凹凸面の突条の高さを、1.0〜2.0mm前後、溝幅を0.5〜1.0mm前後としたので、必要な保持力を得ることができ、また凹凸面により、余分な内容物を取り除くことができ、頭髪の根本から先端まで、満遍なく塗布することができる。特に、染毛剤の塗布に使用する場合には、染めむらがなく、染毛効果をあげることができる、と云うきわめて優れた作用効果を発揮するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−007009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、各櫛歯片の横方向に延びる突条と溝とからなる凹凸面が発揮する、頭髪に対する保持作用が、梳き動作時における頭髪と櫛歯片の間の抵抗感を高めるように働き、この抵抗感により、櫛の通り等の良好な使用感が得難くなっているとか、擦れにより頭髪表面を傷付ける恐れがあるのではないか、と云う疑いを感じることがある。このため、この種の櫛付きキャップにおける抵抗感を低減する、と云う要望が出ている。
【0006】
そこで、本発明は、上記した従来技術における要望を満たすべく創案されたもので、内容物の頭髪に対する塗布動作時に、頭髪と櫛歯片の間に発生する抵抗を低減することを技術的課題とし、もってきわめて良好な使用感と頭髪に対する安全性を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決する本発明の主たる構成は、
内容物を収納した容器体の口筒部に組み付けられる櫛付きキャップであること、
容器体への組み付き部分を形成するキャップ本体と、このキャップ本体の上端部に設けられ、複数の櫛歯片を並列に列設した櫛歯体とから構成されること、
櫛歯体は、隣り合った櫛歯片間に吐出された内容物を、梳き動作により頭髪に塗布する機能を有していること、
隣り合った櫛歯片同士の対向面を、多数の小突起が位置する祖面化処理面としたこと、
にある。
【0008】
櫛歯片間に吐出された内容物は、各櫛歯片の粗面化処理面に接触する。この粗面化処理面は、多数配置された小突起により形成されているので、きわめて大きな表面積を有しており、これにより内容物は粗面化処理面に対して強く付着する。このため、櫛歯片間に吐出された内容物は液垂れすることなく、櫛歯片間に安定して位置することになる。
【0009】
この状態から頭髪を梳くと、内容物が頭髪に塗布されるが、内容物の櫛歯片に対する付着力により、頭髪側に付着する内容物の量は制限された状態となり、これにより一度に多量の内容物が頭髪に塗布されて、塗布斑が生じる恐れがない。櫛歯片側に残存状態で付着している内容物は、引き続き行われる梳き動作により頭髪に塗布されるので、吐出された内容物は毛先まで満遍なく塗布されることになる。
【0010】
祖面化処理面は、多数の小突起を位置させて構成されているので、梳き動作時における各櫛歯片と頭髪の接触状態は、小突起の突出端部に対して頭髪が接触する状態、すなわち点接触状態となる。このため、各櫛歯片と頭髪の間の接触面積はきわめて小さくなり、これにより発生する頭髪に対する各櫛歯片の摩擦抵抗は十分に小さいものとなる。
【0011】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形した、ことを加えたものである。
【0012】
粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形したものにあっては、多数の小突起により形成される粗面化処理面の成形が簡単に達成できる。このシボ加工の実施は、櫛歯片の成形金型に対する実施でも、成形された櫛歯片の表面に対する実施でもよい。
【0013】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした、ことを加えたものである。
【0014】
粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面としたものにあっては、小突起の形状に関わりなく、頭髪と小突起の接触抵抗を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に、粗面化処理面の各小突起を、弾頭状に形成した、ことを加えたものである。
【0016】
粗面化処理面の各小突起を、弾頭状に形成したものにあっては、小突起の形状を統一することができるので、各小突起と頭髪の接触抵抗が略等しくなり、これにより頭髪と粗面化処理面の間に発生する接触抵抗を正確に予知することができると共に、その接触抵抗を粗面化処理面全域で等しくすることができる。なお、各小突起は弾頭状であるので、その突出端部は円滑な曲面となっており、このため頭髪と小突起の接触抵抗は小さい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、各櫛歯片間に吐出された内容物が、一度に多量の内容物が頭髪に塗布されて、塗布斑が生じる恐れがなく、櫛歯片側に残存状態で付着している内容物は、引き続き行われる梳き動作により頭髪に塗布されるので、吐出された内容物は毛先まで満遍なく塗布されることになり、頭髪全体に対する内容物の均等な塗布を安定的に得ることができる。
【0018】
また、祖面化処理面は、多数の小突起を位置させて構成されているので、頭髪に対する各櫛歯片の摩擦抵抗、すなわち頭髪と各櫛歯片の間の摩擦抵抗は十分に小さいものとなり、これにより「櫛通り」の良い円滑で好ましい梳き動作を得ることができると共に、梳き動作により頭髪を傷付けることがほとんどない。
【0019】
粗面化処理面を、シボ加工を使用して成形したものにあっては、粗面化処理面の成形が簡単に達成できると共に、このシボ加工の実施のタイミングを自由に設定できるので、極めて容易な実施を得ることができる。
【0020】
粗面化処理面の各小突起の突出端部を、角取りして円滑な曲面としたものにあっては、小突起の形状に関わりなく、頭髪と小突起の接触抵抗を小さくすることができるので、より円滑な梳き動作を得ることができると共に、頭髪をより安全に梳くことができる。
【0021】
粗面化処理面の各小突起を、弾頭状に形成したものにあっては、小突起の形状を統一することができるので、頭髪と粗面化処理面の間に発生する接触抵抗を正確に予知することができると共に、その接触抵抗を粗面化処理面全域で等しくすることができるので、頭髪と祖面化処理面の間の要求される摩擦抵抗程度を、要求通りに実現することが比較的簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、全体外観斜視図である。
【図2】図1の一実施形態例の内容物を吐出した状態時の、縦断面図である。
【図3】内容物と祖面化処理面の付着状態を示す、拡大断面図である。
【図4】梳き動作時の粗面化処理面に対する頭髪を示す、拡大説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態例を、図1〜図4を参照しながら説明する。
本発明による櫛付きキャップ1(以下、図1および図2参照)は、スクイズ性を有する胴部16の上端に口筒部17を立設して構成した容器体15に組み付けられるもので、容器体15の口筒部17に密に組み付くキャップ本体2と、このキャップ本体2の上端に起立姿勢で組み付けられる櫛歯体9とから構成されている。
【0024】
キャップ本体2は、容器体15の口筒部17に密に組み付く組み付き筒3の上端に、内鍔状の頂壁4を介して、上端に近づくに従って前後に扁平となる起立筒7を連設し、この起立筒7の上端を塞ぐ頂板8に櫛歯体9を設けており、頂壁4の下面には、口筒部17に密嵌入する短円筒状のシール筒片5と、口筒部17の上端面に密に弾接するシール条6とを設けることによって、キャップ本体2の口筒部17に対する組付きを密に達成する。
【0025】
櫛歯体9は、頂板8の上面に、複数の櫛歯片10を左右に並列に起立設し、両端を除く各櫛歯片10内に、櫛歯片10の上部から頂板8の下面にかけて、櫛歯片10の上部左右側面に吐出口14を開口した吐出路13を形成して構成されている。この櫛歯体9は、ベース板9a上に複数の櫛歯片10を左右に並列に起立設して、キャップ本体2とは別体に成形され、キャップ本体2の頂板8上面にベース板9aを載置させた構成で、キャップ本体2に組み付けられている。
【0026】
隣り合った各櫛歯片10の対向した側面は、多数の小突起12(図3および図4参照)を位置させた粗面化処理面11(図1参照)に成形されている。それゆえ、吐出口14から吐出された内容物Nは、吐出されるとすぐに粗面化処理面11に接触する(図2参照)ことになるが、この内容物Nは粗面化処理面11と大きな接触面積で接触することになるので、粗面化処理面11に対して強く付着することになり、これにより自重による垂れ落ちすることなく、安定して櫛歯片10間に位置する。
【0027】
このように、櫛歯片10間に吐出させた内容物Nを付着させた状態で頭髪Kを梳くと、櫛歯片10間から頭髪Kに内容物Nが付着移動するが、櫛歯片10に対する内容物Nの付着力により比較的多量の内容物Nが櫛歯片10側に残るので、頭髪Kの梳き動作を繰り返すことにより、頭髪Kに付着した内容物Nの、頭髪Kに対する引き伸ばし塗布作用と、櫛歯片10側に残存付着している内容物Nに頭髪Kへの塗布作用とを同時に行い、内容物Nを頭髪K全体に対して満遍なく塗布することができる。
【0028】
祖面化処理面11は、櫛歯片10を成形する射出成形金型の成形型面、もしくは成形された櫛歯片10の側面に、ブラスト加工、コロナ放電加工さらにはエッジング加工等のシボ加工を施すことにより成形する。
【0029】
この粗面化処理面11を構成する多数の小突起12は、少なくとも突出端部が角取りされて円滑な曲面となっており、これにより頭髪Kの梳き動作時に、各小突起12に押し付けられる頭髪Kが、この小突起12に引っ掛かり気味となることがないようにしている。特に、各小突起12を、弾頭状に成形した場合には、小突起12の外表面全体が円滑な曲面となるので、小突起12に対して頭髪Kが引っ掛かり気味となることは、略完全に発生しないものとすることができる。また、各小突起12を、弾頭状に成形した場合は、各小突起12の形状および大きさを統一することが容易であるので、多数の小突起12の単位面積当たりの分布を一定化し、これによって粗面化処理面11の単位面積あたりの頭髪Kに対する摩擦抵抗の定量化が容易となり、これにより梳き動作時における抵抗感を自由に設定することが可能となる。
【0030】
また、頭髪Kの太さは、大体50μm〜150μmの範囲であるので、粗面化処理面11における各小突起12の高さは50μm以下とするのが、小突起12に対する頭髪Kの引っ掛かりの発生を確実に生じさせない点では望ましい。しかしながら、梳き動作時における頭髪Kは、ある程度引っ張られた状態(図4参照)となっているので、小突起12に対して引っ掛かり難い状態となっており、小突起12の高さを150μm程度にしても、引っ掛かりを生じることはほとんどなく、特に内容物Nが付着している状態では、この内容物Nが潤滑作用を発揮するので、小突起12に対する頭髪Kの引っ掛かりが発生する恐れはない。
【0031】
さらに、上記したように、梳き動作時の頭髪Kの引っ掛かりを考慮すると、小突起12の高さは50μm以下とするのが望ましいのであるが、あまり小さくすると、内容物Nの粘度によっては、内容物Nの粗面化処理面11への接触付着(図3参照)が、粗面化処理面11と内容物Nとの間に気泡が形成されて、必ずしも十分には得られない場合を生じることが考えられるので、この各小突起12の高さの設定は、内容物Nの粘度を考慮して設定するようにする。
【0032】
頭髪Kに対する内容物Nの塗布は、まず容器体15を倒立姿勢に保持して胴部16をスクイズ変形させて、内容物Nを櫛歯片10間に吐出させ、吐出させた内容物Nを粗面化処理面11に付着させる。次いで、胴部16を「柄」として持って、櫛歯体9により頭髪Kに対して梳き動作を行う。この梳き動作は、同じ頭髪K箇所の根元から髪先までに対して数回に分けて行い、これにより内容物Nの頭髪Kに対する塗布を満遍なく達成する。
【0033】
この一回に吐出した内容物Nの塗布動作が完了したならば、新たな内容物Nを櫛歯片10間に吐出させ、新たな頭髪K箇所に同じ梳き動作を施して、内容物Nの塗布を行う。以下、この操作の繰り返しにより頭髪K全体、もしくは所望する頭髪K部分に対する内容物Nの塗布を達成する。
【0034】
なお、本発明は上記した実施形態例に限定されるものではなく、例えば櫛歯体9を縦櫛状ではなく横櫛状に構成してもよく、また櫛歯体9をキャップ本体2と一体に成形する構成としてもよく、そして多数の小突起の配置は、ランダムまたは規則的のいずれであっても良く、さらにはデラミボトル構造の容器体15に組み付けることも可能であり、またさらに内容物は粘稠性を有するものや、泡状となるものとすることも可能である。同様に、容器体15はスクイズ性を有するものに限ることはなく、エアゾール容器やポンプ機能を組み付けた容器の使用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明の櫛付きキャップは,きわめて良好な「櫛通り」の良さを発揮できる状態で、櫛歯片間に吐出させた内容物を、液垂れさせることなく安定して保持できるものであり、白髪染めやヘアマニキュア等の内容物の頭髪への塗布容器に取り付けられる櫛付きキャップとして幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0036】
1 ;櫛付きキャップ
2 ;キャップ本体
3 ;組み付き筒
4 ;頂壁
5 ;シール筒片
6 ;シール条
7 ;起立筒
8 ;頂板
9 ;櫛歯体
9a;ベース板
10;櫛歯片
11;粗面化処理面
12;小突起
13;吐出路
14;吐出口
15;容器体
16;胴部
17;口筒部
K ;頭髪
N ;内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物(N)を収納した容器体(15)の口筒部(17)に組付けられる櫛付きキャップ(1)であって、前記容器体(15)への組み付き部分を形成するキャップ本体(2)と、該キャップ本体(2)の上端部に設けられ、複数の櫛歯片(10)を並列に列設した櫛歯体(9)とから構成され、該櫛歯体(9)は、隣り合った櫛歯片(10)間に吐出された内容物(N)を、梳き動作により頭髪(K)に塗布する機能を有し、隣り合った前記櫛歯片(10)同士の対向面を、多数の小突起(12)が位置する祖面化処理面(11)としたことを特徴とする櫛付きキャップ。
【請求項2】
粗面化処理面(11)を、シボ加工を使用して成形した請求項1に記載の櫛付きキャップ。
【請求項3】
粗面化処理面(11)の各小突起(12)の突出端部を、角取りして円滑な曲面とした請求項1または2に記載の櫛付きキャップ。
【請求項4】
粗面化処理面(11)の各小突起(12)を、弾頭状に形成した請求項1または2に記載の櫛付きキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111352(P2013−111352A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261685(P2011−261685)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)