説明

次亜塩素酸系殺菌消毒剤、並びにその調製方法及び調製装置

【課題】次亜塩素酸ナトリウムを含む殺菌消毒剤であって、水溶性の酸性物質を添加せずとも優れた殺菌消毒作用を発揮でき、しかも調製時の塩素ガスの発生を極めて低減させ、安全に製造できる殺菌消毒剤、並びにその調製方法及び調製装置を提供する。
【解決手段】陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下に設定して、殺菌消毒剤を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸系殺菌消毒剤、並びにその調製方法及び調製装置に関する。より詳細には、水溶性のpH調製剤を添加せずとも殺菌消毒作用を増強させ、調製時の塩素ガスの発生を極めて低減し、優れた殺菌消毒作用を発揮できる、次亜塩素酸塩を含む殺菌消毒剤、並びにその製方法及び調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬分野、食品分野、一般家庭等の広範な分野で、殺菌消毒剤として次亜塩素酸又はその塩が使用されている。次亜塩素酸又はその塩の殺菌消毒作用は、水溶液中での次亜塩素酸(HClO)に依拠しており、次亜塩素酸イオン(ClO)には殺菌消毒作用が弱いとされている。一方、次亜塩素酸又はその塩を含む水溶液では、pHが高い程、次亜塩素酸イオン(ClO)形態の割合が上昇し、またpHが低い程、次亜塩素酸(HClO)形態の割合が上昇する(図1参照)。そこで、従来、次亜塩素酸又はその塩を使用した殺菌消毒剤は、液中のpHを低くすることによって、殺菌消毒作用を高めるように設計されている。例えば、水中に濃度50mg/リットル以上の塩素系殺菌剤と酸性剤とが溶解されたpH5.5〜7.5の水溶液からなる殺菌消毒剤が報告されている(特許文献1参照)。また、従来、次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸から選ばれる1種以上と、両性界面活性剤及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上と、pH調製剤とを含有する生鮮食品用殺菌洗浄剤組成物が報告されており、当該殺菌洗浄剤組成物でもpHを3〜8に設定するように推奨されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、従来の次亜塩素酸又はその塩を使用した殺菌消毒剤において、殺菌消毒作用を増強する術、即ち次亜塩素酸(HClO)形態の割合を高める手段は、いずれも水溶性の酸性物質をpH調製剤として配合するものに限られている。このように、pH調製剤を使用した場合には、調製時の系内のpHのばらつきが生じたり、経時的にpHが変動したりするため、混合装置等系内を均一にする手段が必要である。さらに、系内の一部で高濃度の酸と次亜塩素酸又はその塩が反応し、塩素ガスを発生させるリスクが高く、よって、塩素ガスによる健康被害や関連装置の腐食を防止するために、塩素ガスの回収及び排出といった種々の対策が必要となる。
【0004】
一方、pHを低下させるために添加された酸性物質は、殺菌消毒剤とともに水溶液中(殺菌消毒剤中)に存在していることから、次亜塩素酸が光や熱により分解されたあとも、その形体(構造)を維持したまま残留することとなり、最終的に環境に負荷(影響)を与えてしまう。つまり、環境汚染(破壊)という観点で問題になる。
【0005】
このような従来技術を背景として、簡易な装置で安全に使用でき、さらに環境汚染を招く恐れが低い、次亜塩素酸又はその塩を使用した殺菌消毒剤を開発することが強く切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−228316号公報
【特許文献2】特開2001−279294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、次亜塩素酸ナトリウムを含む殺菌消毒剤であって、水溶性の酸性物質を添加
せずとも優れた殺菌消毒作用を発揮でき、しかも調製時に塩素ガスを発生させるリスクを低減し、安全に製造できる殺菌消毒剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該殺菌消毒剤の調製装置、及び調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下に設定することによって、水溶性の酸性物質を添加せずとも優れた殺菌消毒作用を発揮でき、しかも調製時に塩素ガスを発生させるリスクを低減し、安全に殺菌消毒剤を調製できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からなり、該水溶液において有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が0.70以下であることを特徴とする、殺菌消毒剤。
項2. 用時のpHが3〜8である、項1に記載の殺菌消毒剤。
項3. 用時の有効塩素濃度が10〜1,000ppm(0.28〜28.21mM)である、項1又は2に記載の殺菌消毒剤。
項4. 陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にする工程を含む、殺菌消毒剤の調製方法。
項5. 陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にする工程、及び当該工程で得られた水溶液を希釈する工程を含む、殺菌消毒剤の調製方法。
項6. 陽イオン交換体が、リン酸水素チタン、ナシコン型リン酸ジルコニウムの酸処理物、ネソ珪酸塩化合物の酸処理物、テクト珪酸塩化合物の酸処理物、ゼオライトの酸処理物、及び陽イオン交換樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である、項4又は5に記載の調製方法。
項7. ナトリウムイオンを捕捉した陽イオン交換体を、酸処理によって再生させて使用する、項4〜6のいずれかに記載の調製方法。
項8. 次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にするための陽イオン交換体を備えており、該陽イオン交換体が次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液と接触可能なように設置されていることを特徴とする、殺菌消毒剤の調製装置。
項9. 陽イオン交換体が保持された流路に、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液が通液されるように構成されている、項8に記載の装置。
項10. 次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を収容するための容器と、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を容器の外部に放出させるための放出口と、容器内の次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を放出口に送るための流路とを有し、該流路に陽イオン交換体を含む区画が設置されていることを特徴とする、項8又は9に記載の調製装置。
項11. 陽イオン交換体と接触した次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を希釈するための希釈手段を有する、項8〜10のいずれかに記載の調製装置。
項12. 調製した殺菌消毒剤を、揮散、噴霧又は散布する手段を有する項8〜11のいずれかに記載の調製装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の殺菌消毒剤によれば、水溶性の酸性物質を添加せずとも優れた殺菌消毒作用を発揮できる。また、本発明の殺菌消毒剤は、その殺菌消毒成分として次亜塩素酸ナトリウムのみから優れた殺菌消毒作用を発揮させることができるので、環境に対する負荷が少ないという利点もある。更に、本発明の殺菌消毒剤は、調製時に塩素ガスを発生させるリス
クが低く、安全性が高いことから健康被害や関連装置の腐食を払拭できる。
【0011】
また、従来、水道水の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使用されており、水道水の次亜塩素酸臭が問題となっているが、本発明の殺菌消毒剤は、殺菌消毒作用が優れており、従来の次亜塩素酸ナトリウムの使用量よりも低量で水道水を十分に殺菌消毒できるので、水道水の次亜塩素酸臭を低減させることも可能になる。
【0012】
また、本発明の殺菌消毒剤の調製方法によれば、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液から、安全且つ簡便に、殺菌消毒作用が向上した殺菌消毒剤を調製することが可能になる。また、本発明の殺菌消毒剤の調製方法において使用される陽イオン交換体は、使用後でも再生可能で、繰り返し使用することができるので、地球環境に優しく、エコロジーの点でも優れている。
【0013】
更に、本発明の殺菌消毒剤の調製装置によれば、殺菌消毒剤の製造工場で使用される装置のみならず、携帯可能で簡便に使用できる装置も提供できるので、原料(次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液)を入手さえすれば、用時に簡便に殺菌消毒剤を調製することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】次亜塩素酸又はその塩を含む水溶液におけるpHと、次亜塩素酸(HClO)形態の割合の関係を示す図である。
【図2】実施例2において、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比とpHの関係を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.殺菌消毒剤
本発明の殺菌消毒剤は、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からなり、ナトリウムイオンを除去することにより、該水溶液における有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が0.70以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の殺菌消毒剤は、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が上記範囲を充足することによって、優れた殺菌消毒作用を発揮することができる。より優れた殺菌消毒作用を発揮させるためには、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が、好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.1〜0.5、特に好ましくは0.2〜0.4が挙げられる。
【0017】
本発明の殺菌消毒剤は、用時(殺菌消毒対象物に適用される際)のpHとして、通常3〜8、好ましくは3.5〜8、更に好ましくは4〜7が挙げられる。
【0018】
本発明の殺菌消毒剤のpHは、有効塩素濃度や他の添加成分の有無等に影響されるが、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が低い程、pHは下がる傾向を示す。そのため、本発明の殺菌消毒剤が、次亜塩素酸ナトリウムと水のみを構成成分とする場合には、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が前述する範囲になる場合、そのpHも上記範囲を充足することになる。
【0019】
本発明の殺菌消毒剤の有効塩素濃度については、殺菌消毒の対象物の種類や殺菌消毒方法等に応じて適宜設定されるが、用時(殺菌消毒対象物に適用される際)の有効塩素濃度の一例として、10〜1000ppm(0.28〜28.21mM)、好ましくは10〜500ppm(0.28〜14.10mM)、更に好ましくは40〜100ppm(1.13〜2.82mM)が挙げられる。本発明の殺菌消毒剤は、上記有効塩素濃度を充足することによって、一層優れた殺菌消毒作用を備えることが可能になる。
【0020】
本発明の殺菌消毒剤は、次亜塩素酸ナトリウム及び水以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、殺菌消毒剤の用途に応じて、界面活性剤、漂白剤、pH調製剤、増粘剤、染料、緩衝剤、等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0021】
なお、本発明の殺菌消毒剤は、従来の殺菌消毒剤のように水溶性の酸性物質を添加せずとも次亜塩素酸ナトリウムの殺菌消毒作用を有効に発揮できる。それ故、本発明の殺菌消毒剤は、添加成分を極力減らすことができ、ひいては環境への負荷を低減できるという利点がある。かかる利点を鑑みれば、本発明の殺菌消毒剤の好適な一形態として、次亜塩素酸ナトリウム及び水以外の成分を含まないものが例示される。
【0022】
本発明の殺菌消毒剤は、希釈することなく、そのまま殺菌消毒の対象物や対象空間に適用できる形態(非濃縮タイプ)で提供されてもよく、また、用時に、水道水、精製水等の水等で希釈した後に、殺菌消毒の対象物や対象空間に適用できる形態(濃縮タイプ)で提供されてもよい。本発明の殺菌消毒剤を濃縮タイプとして提供する場合、その希釈倍率については、有効塩素濃度が前述する用時の濃度になるように適宜設定されていればよい。
【0023】
本発明の殺菌消毒剤は、細菌やウイルス等を殺菌消毒する目的で使用され、細菌やウイルス等が付着している、又は付着している畏れがある物や、細菌やウイルス等が存在している、又は存在している畏れがある空間や物に対して適用される。
【0024】
本発明の殺菌消毒剤の使用方法については、殺菌消毒の対象物や対象空間に適用される限り、特に制限されるものではないが、例えば、トリガー式噴出器やミストタイプの噴霧器を用いて対象物や対象空間に噴出又は噴霧する方法;超音波式の揮散装置(殺菌消毒剤を超音波振動によって細かく破砕して吹き出す装置)を用いて対象空間に揮散する方法);不織布や織布に含浸させて対象物に塗布する方法;対象物中に添加する方法等が例示される。
【0025】
本発明の殺菌消毒剤は、医薬分野、食品分野、畜産分野、一般家庭等の広範な分野で使用される。例えば、医療機関、食品工場、畜産等の施設や器具;食器、玩具、冷蔵庫、調理器具、便座、窓ガラス、洗面台、浴槽、床、壁等の一般家庭で使用される装置や器具;空間等の殺菌消毒に使用できる。更に、水道水、工業用水、下水等の水、プール、食品、人体・動物等の殺菌消毒に使用することもできる。
【0026】
2.殺菌消毒剤の調製方法
更に、本発明は、上記殺菌消毒剤の調製方法を提供する。具体的には、本発明の殺菌消毒剤の調製方法は、陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にする工程を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の調製方法において、原料として、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液(以下、原料液と表記することもある)を使用する。原料液に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの濃度については、目的物である殺菌消毒剤に備えさせるべき有効塩素濃度の範囲であればよい。
【0028】
また、原料液には、本発明の効果を妨げない範囲で、次亜塩素酸ナトリウムと水以外に、前述する他の添加剤が含まれていてもよいが、目的物である殺菌消毒剤の環境への負荷を低減させるという観点から、当該原料液の好適な一形態として、次亜塩素酸ナトリウム及び水以外の成分を含まないものが例示される。
【0029】
また、本発明の調製方法において使用される陽イオン交換体は、原料液に含まれるナトリウムイオンを水素イオンと置換できるものであればよく、具体的には、リン酸水素チタン、リン酸水素ジルコニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素アルミニウム及びリン酸水素鉄等の不溶性のリン酸水素塩化合物;リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム及びリン酸鉄等の不溶性のリン酸塩化合物;チタン、ジ
ルコニウム、アルミニウム、鉄、ケイ素、クロム、マンガン、ガリウム、スズ及びアンチモン等の酸化化合物、含水酸化化合物及び水酸化化合物;スポジュメン,ユークリプタイト等のイノ珪酸塩化合物、クリソライト,かんらん石等のネソ珪酸塩化合物、ペタライト,正長石,曹長石,沸石等のテクト珪酸塩化合物、及びゼオライト等の珪酸塩化合物の酸処理物;ピロリン酸鉄;ナシコン型リン酸ジルコニウムの酸処理物;陽イオン交換樹脂;及びこれら類似形態化合物等が例示される。
【0030】
これらの陽イオン交換体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらの中でも、リン酸水素チタン、ナシコン型リン酸ジルコニウムの酸処理物、上述の珪酸塩化合物の酸処理物、及び陽イオン交換樹脂が好ましく、とりわけリン酸水素チタンは、原料液からナトリウムを捕捉して、水素イオンと交換する能力に優れ、広いpH領域でその交換能を発揮することができ、より優れた殺菌消毒作用を備えさせることができることから、本発明の調製方法において好適に使用される。
【0032】
陽イオン交換体によって原料液からナトリウムイオンを除去するには、陽イオン交換体と原料液を接触させればよく、その方法については特に制限されるものではない。例えば、原料液中に陽イオン交換体を浸漬させる方法(以下、浸漬法と表記することもある)、陽イオン交換体が保持されている区画に原料液を通液する方法(以下、通液法と表記することもある)等が挙げられる。
【0033】
原料液中のナトリウム濃度に応じて、陽イオン交換体の使用量、接触時間及び通液速度を適宜設定すればよいが、上記浸漬法(非濃縮タイプ)では、例えば、原料液100ml当たり、陽イオン交換体を通常5〜1000mg、好ましくは8〜500mg、更に好ましくは15〜200mg浸漬させて、通常1〜60分、好ましくは1〜40分、更に好ましくは1〜20分、静置又は撹拌すればよい。
【0034】
また、上記通液法(非濃縮タイプ)では、特に総通過(処理)液量により陽イオン交換体の使用量は適宜選択する必要があるが、例えば、総通過原料液100ml当たり、陽イオン交換体が通常10mg〜10g、好ましくは30mg〜5g、更に好ましくは100mg〜2g保持されている区画に、流速1〜500ml/分、好ましくは2〜400ml/分、更に好ましくは5〜300ml/分の速度で通液すればよい。
【0035】
また、通液法において、ナトリウムイオンの除去率が低い場合には、通液後の溶液を、陽イオン交換体が保持されている区画に再度の通液を繰り返し行うことによって、ナトリウムイオンの除去率を高めることもできる。
【0036】
斯くして、原料液からナトリウムイオンを除去することによって、有効塩素とナトリウムイオンのモル比が前述する範囲を充足する殺菌消毒剤が調製される。
【0037】
ナトリウムイオンが除去された原料液において有効塩素とナトリウムイオンのモル比が前述する範囲になっていることは、有効塩素濃度とナトリウムイオンを測定することによって確認できる。
【0038】
また、ナトリウムイオンの濃度は導電率と比例関係にあるので、原料液として、次亜塩素酸ナトリウム及び水以外の成分を含まないものを使用する場合には、導電率を指標として、ナトリウムイオンが除去された原料液において有効塩素とナトリウムイオンのモル比が前述する範囲を満たしているかを確認することもできる。具体的には、有効塩素100ppm程度の非濃縮タイプの殺菌消毒剤を調製する場合には、ナトリウムイオンが除去さ
れた原料液の導電率が100〜200μS/cmである場合には、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が前述する範囲を満たしている殺菌消毒剤が調製できていると考えることができる。
【0039】
斯くして原料液からナトリウムイオンを除去することによって得られた水溶液は、必要に応じて、水等で希釈する工程(必要に応じて混合する工程を含む)に供した後に、殺菌消毒剤として提供することができる。また、必要に応じて濾過処理に供して、混入した固形分(陽イオン交換体の残渣)を除去した後に、殺菌消毒剤として提供してもよい。
【0040】
また、本発明の調製方法で使用された陽イオン交換体は、捕捉したナトリウムイオンを水素イオンと交換することにより再生させて、再度、本発明の調製方法に使用することができる。使用後の陽イオン交換体の再生は、例えば、酸を含む水溶液で処理する方法が挙げられる。使用後の陽イオン交換体の再生に使用される酸としては、酢酸、クエン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。また、使用後の陽イオン交換体の再生は、例えば上記有機酸又は無機酸を1〜100重量%好ましくは3〜30重量%含む水溶液中に、陽イオン交換体を浸漬させる方法、或いは当該水溶液を陽イオン交換体が保持されている領域に通液する方法等によって実施される。
【0041】
3.殺菌消毒剤の調製装置
更に、本発明は、上記殺菌消毒剤の調製装置を提供する。具体的には、本発明の殺菌消毒剤の調製装置は、原料液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にするための陽イオン交換体を備えており、該陽イオン交換体が次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液と接触可能なように設置されていることを特徴とする。
【0042】
本発明の調製装置において、陽イオン交換体は、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液と接触可能なように設置されていればよく、その具体的構造については特に制限されるものではない。例えば、浸漬法によって殺菌消毒剤を調製する装置であれば、原料液を収容するための容器内に陽イオン交換体が設置されていればよく、また通液法によって殺菌消毒剤を調製する装置であれば、原料液の通液が可能なように、陽イオン交換体を含む区画が設置されていればよい。
【0043】
通液法によって殺菌消毒剤を調製する装置において、陽イオン交換体を含む区画は、例えば、原料液の流路の壁面に陽イオン交換体が保持されているもの;原料液の流路に、陽イオン交換体を含むフィルターが設置されているもの;原料液の流路に、陽イオン交換体を含む相(カラム等)が設置されているもの等のいずれであってもよい。
【0044】
通液法によって殺菌消毒剤を調製する装置の具体的構造として、原料液を収容するための容器と、原料液を容器の外部に放出させるための放出口と、容器内の原料液を放出口に送るための流路とを有し、該流路に陽イオン交換体を含む区画が設置されている構造が例示される。かかる構造の装置としては、具体的には、トリガー式噴出容器やミストタイプの噴霧容器において、容器内の原料液を放出口に送るための流路に、陽イオン交換体を含む区画が設置されているものが例示される。
【0045】
また、本発明の調製装置は、調製された殺菌消毒剤をそのまま殺菌対象物や殺菌対象空間に、揮散、噴霧、散布、又は添加できるように、調製された殺菌消毒剤を揮散、噴霧、散布、又は添加するための手段を備えていてもよい。
【0046】
更に、本発明の調製装置は、原料液が陽イオン交換体と接触した後に、更に水等で希釈されるように希釈手段(必要に応じて、混合するための混合手段を有するものも含まれる
)を備えていてもよい。
【0047】
また、本発明の調製装置は、独立して存在する装置であってもよく、また他の機器に組み込まれて存在する装置であってもよい。例えば、本発明の調製装置を自動食器洗浄機に組み込むことにより、食器の洗浄と共に、殺菌消毒剤の調製と当該殺菌消毒剤を用いた食器の殺菌消毒も行うことが可能になる。また、本発明の調整装置を加湿器、消臭器又は空気清浄機に組み込むことにより、殺菌消毒剤の調製と当該殺菌消毒剤の揮散、噴霧又は分散を行うことができ、加湿、除臭又は空気清浄と共に、空間の除菌が可能となる。更に、本発明の調製装置を浄水場又は下水処理施設の殺菌工程に組み込むことにより、殺菌消毒剤の調製と当該殺菌消毒剤を用いた水道水や下水の殺菌消毒を行うことも可能になる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 浸漬法による殺菌消毒剤の調製
有効塩素濃度93.6ppm(2.64mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原料液)を調製し、この液300mlにリン酸水素チタン150mgを添加し、室温で30分間、撹拌した。その後、0.2μmメンブランフィルターにて濾過し、濾液(殺菌消毒剤)を回収した。
【0049】
原料液と最終的に製造された殺菌消毒剤について、pH、ナトリウムイオン濃度(mM)、及び有効塩素濃度(mM)を測定し、更に有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比を算出した。なお、ナトリウムイオン濃度及び有効塩素濃度の測定は、下記手順に従って行った。
【0050】
ナトリウムイオンの測定方法
上記で製造された殺菌消毒剤5mlを正確に量り、希硝酸1ml及び水を加えて正確に50mlとし、検液とした。別に、ナトリウム標準液(Na:100ppm)1、2.5、5mlをそれぞれ正確に量り、水を加えて正確に50mlとし、標準溶液とした。
【0051】
標準溶液及び検液につき、次の操作条件で、第15改正日本薬局方、一般試験法、2.物理的試験法、分光学的測定法、原子吸光光度法に記載の方法に行い、検量線(標準溶液2、5、10ppm)を用いてナトリウムイオン濃度(mM)を求めた。
<操作条件>
ランプ電流値 12.0mA
測定波長 330.2nm
スリット 0.4nm
原子化装置 標準バーナ
フレーム 空気−アセチレン
燃料ガス流量 2.2L/分
助燃ガス流量 15.0L/分
バーナ高さ 7.5mm
繰り返し回数 3回
【0052】
<ナトリウムイオン濃度の算出式>
ナトリウムイオン濃度(ppm)= 測定値(ppm)×10
ナトリウムイオン濃度(mM)= ナトリウムイオン濃度(ppm)÷22.99
有効塩素濃度の測定方法
上記で製造された殺菌消毒剤50mlを正確に量り、ヨウ化カリウム0.2g及び酢酸(1→40)10mlを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置し、遊離したヨウ素を0.01mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した(指示薬 デンプン試液)。別
に空試験を行い補正した。
【0053】
<有効塩素濃度の算出式>
下記換算式を使用して、有効塩素濃度を算出した。
【0054】
有効塩素濃度(ppm)=滴定量(ml)×f×0.3545÷0.05
有効塩素濃度(mM)=有効塩素濃度(ppm)÷35.45
f:0.01mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液1ml=0.3545mgCl
【0055】
得られた結果を表1に示す。この結果から明らかなように、原料液では、ナトリウムイオン濃度が2.07mMと高く、pHも9.68と高い値を示した。これに対して、リン酸水素チタンの処理によって得られた殺菌消毒剤では、ナトリウムイオン濃度の低下、即ち次亜塩素酸ナトリウム中のナトリウムイオンとリン酸水素チタン中の水素イオンとのイオン交換によりナトリウムイオンが低下し、これに伴って放出された水素イオンの増加により、pHも6.05と低くなっていた。
【0056】
以上の結果から、原料液をリン酸水素チタンで処理することによって、有効塩素に対するナトリウムイオンの割合が低下し、pHがアルカリ領域から酸性領域に変化したことから、次亜塩素酸(HClO)形態の割合が上昇した、つまり原料液よりも殺菌消毒作用が向上した殺菌消毒剤が得られていることが確認された。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例2 陽イオン交換体の使用量とナトリウムイオン濃度の関係(浸漬法) 有効塩素濃度57.3ppm(1.62mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原料液)を調製し、この液300mlに対して表2に示す添加量のリン酸水素チタンの添加量を添加し、室温で30分間、撹拌した。その後、0.2μmメンブランフィルターにて濾過し、濾液(殺菌消毒剤)を回収した。
【0059】
原料液と最終的に製造された殺菌消毒剤について、pH、ナトリウムイオン濃度(mM)、及び有効塩素濃度(mM)の測定を、上記実施例1と同様の方法で行い、更に導電率の測定並びに有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比を算出した。
【0060】
得られた結果を表2に示す。結果、リン酸水素チタンの添加量の増加に伴い、ナトリウムイオン濃度は低下し、さらにpHも低下していた。よって、リン酸水素チタンの用量依存的に次亜塩素酸ナトリウム中のナトリウムイオンとリン酸水素チタン中の水素イオンとのイオン交換がなされ、その結果、原料液よりも殺菌消毒作用が向上した殺菌消毒剤が得られていることが確認された。また、有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比とpHの関係について図2に示す。この結果からも、有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比が0.70以下であれば、有効塩素による殺菌消毒作用が十分に発揮できる程度に、pHが低下していることも明らかである。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例3 通液法による殺菌消毒剤の調製
有効塩素濃度が102.1ppm(2.88mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原料液)を調製した。また、別途、口径47mmのガラス管の底部に0.45μmのメンブランフィルターを設置し、これにリン酸水素チタン(700mg)を充填し、カラムを作成した。このカラムに、上記原料液2100mlを5ml/分の流速で通液を行い、カラムから流出した液を殺菌消毒剤として回収した。
【0063】
原料液と、カラムから各流出時点の殺菌消毒剤について、pH、ナトリウムイオン濃度(mM)、及び有効塩素濃度(mM)の測定を、上記実施例1と同様の方法で行い、更に有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比を算出した。
【0064】
得られた結果を表3に示す。実施例1同様、ナトリウムイオン、pH及び有効塩素に対するナトリウムイオンの割合の低下が確認され、通液法で調製された殺菌消毒剤でも、原料液に比べて、殺菌消毒作用が向上していることが確認された。
【0065】
【表3】

【0066】
実施例4 浸漬法によるリン酸水素チタンの再生利用の検討
有効塩素濃度が99.9ppm(2.82mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原料液)を調製した。次いで、得られた原料液100mlに、リン酸水素チタン40mgを添加し、室温で15分間撹拌して殺菌消毒剤を調製した(第1回目処理)。その後、リン酸水素チタンを取り出して、新しい原料液100mlを添加し、室温で15分間撹拌した(第2回目処理)。同様に、処理を繰り返し合計4回の処理を行った。次いで、陽イオン交
換能がほぼ喪失された本リン酸水素チタン(4回処理済み)の全量を3%酢酸水溶液300mlに添加し、室温で15分間撹拌することにより、リン酸水素チタンの再生処理を行った。斯くして再生されたリン酸水素チタンを用いて、前記同様原料液100mlの処理を行い、再度消毒殺菌剤を調製した(再生後処理)。
【0067】
原料液と、第1〜3回目処理、再生前処理(第4回目処理)、及び再生後処理で得られた殺菌消毒剤について、pH、ナトリウムイオン濃度(mM)、及び有効塩素濃度(mM)の測定を、実施例1と同様の方法で行い、更に導電率の測定並びに有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比を算出した。
【0068】
得られた結果を表4に示す。この結果から、リン酸水素チタンは、使用後に陽イオン交換能が喪失されても、酸処理によって再生させることにより、再度陽イオン交換能を獲得でき、本発明の殺菌消毒剤の製造に繰り返し使用することができることが明らかとなった。
【0069】
【表4】

【0070】
実施例5 殺菌消毒剤の殺ウイルス及び殺菌試験
有効塩素濃度 42.8,61.1,102.0ppm(1.21,1.72,2.88mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(原料液)を調製し、この原料液300mlにリン酸水素チタン150mgを添加し、室温で30分間、撹拌した。その後、0.2μmメンブランフィルターにて濾過し、濾液(殺菌消毒剤)を回収した。
【0071】
また有効塩素濃度198.1ppm(5.59mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0072】
調製した殺菌消毒剤及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液について、pH、ナトリウムイオン濃度(mM)、及び有効塩素濃度(mM)の測定を、上記実施例1と同様の方法で行い、更に有効塩素濃度に対するナトリウムイオンのモル比を算出した。
【0073】
得られた結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
上記の4種の試料液を用い、以下の方法により殺ウイルス及び殺菌試験を行った。
【0076】
殺ウイルス試験
試料液500μlをエッペンチューブに分注し、37℃にて10分間インキュベートした後、3×10PFU/mlのウイルス液(Influenza Virus A/PR/8/34(H1N1))を5μl添加した。37℃で5又は10分間インキュベートした後、1%チオ硫酸ナトリウム溶液を等量添加し、さらに0.1重量% BSA(ウシ
血清アルブミン)−リン酸緩衝化生理食塩水(PBS;0.9重量%)を用いて1000倍に希釈した後、Plaque assayによりウイルス量を定量した。同様に、試料液の代わりに0.1重量% BSA(ウシ血清アルブミン)−リン酸緩衝化生理食塩水(
PBS;0.9重量%)を用いた試験を実施し、コントロールとした。結果を表6に示した。
【0077】
いずれの濃度の殺菌消毒剤も接触時間10分で完全にウイルスを失活させることができ、特に有効塩素濃度102.0ppmの原料液から調製した殺菌消毒剤では、通常の有効塩素濃度198.1ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同様に接触時間5分でウイルスを完全に失活させることができた。
【0078】
【表6】

【0079】
殺菌試験
Staphylococcus aureus COL(MRSA),Bacillus cereus T及びEscherichia coli O157を供試菌とし、以下の方法により殺菌試験を行った。
【0080】
トリプチケースソイブロス(Difco;TSB)を用い、35℃にて一夜培養した供
試菌を新鮮なTSBに接種し、さらに35℃にて3時間振盪培養した。集菌洗浄後、生理食塩水(0.85%)で2×10CFU/mlに希釈し、供試菌液とした。なお、Bacillus cereusTは35℃にて培養したものを70℃で30分熱処理後、生理食塩水で2×10CFU/mlとなるように希釈し、供試菌液とした。
【0081】
供試菌液10μlを試料液1mlに加え、25℃にてインキュベートし、所定の時間経過(1及び2分)後、1%チオ硫酸ナトリウムを含有する生理食塩水(塩化ナトリウム濃度0.85重量%)を等量加えて混合し、適宜希釈した後、トリプチケースソイ平板寒天培地に塗布、35℃にて24時間培養し、コロニー数をカウントした。同様に、試料液の代わりに生理食塩水を用いた試験を実施し、コントロールとした。
【0082】
結果を表7から9に示した。Bacillus cereus T及びEscherichia coli O157において、いずれの有効塩素濃度の殺菌消毒剤も、有効塩素濃度198.1ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液と同様に接触時間1分で殺菌することができた。
【0083】
一方、Staphylococcus aureus COL(MRSA)においては、有効塩素濃度198.1ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液では接触時間1分で完全に殺菌できなったのに対し、有効塩素濃度102.0ppmの原料液から調製した殺菌消毒剤では完全に殺菌されており、従来の次亜塩素酸ナトリウム水溶液よりも強い殺菌力を有していることが確認できた。
【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
実施例6 塩素ガス発生量
有効塩素濃度100ppm(2.82mM)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し、この液300mlを300mlの三角フラスコに入れ、リン酸水素チタン100mg又は希塩酸0.14mlをそれぞれ添加し、直ちに栓をした後、三角フラスコを上下に4回転倒させて混和し、15分間静置した。
【0088】
15分間静置後、三角フラスコ上部(空隙部:63.4ml)の塩素ガス濃度及びこれら水溶液のpHを測定した。なお、塩素ガス濃度の測定はGASTEC社 No.8Laのガス検知管を用いて測定した。
【0089】
得られた結果を表10に示す。この結果から明らかなように、リン酸水素チタンを添加した液は希塩酸を添加した液に比べて、塩素ガス発生量が顕著に少ないものであった。よって、本発明による殺菌消毒剤の調製方法は、殺菌消毒作用を高める手段として従来の方法よりも安全なものであり、人への健康被害や関連装置等への腐食を大きく低減できるものであることが確認できた。
【0090】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からなり、該水溶液において有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比が0.70以下であることを特徴とする、殺菌消毒剤。
【請求項2】
用時のpHが3〜8である、請求項1に記載の殺菌消毒剤。
【請求項3】
用時の有効塩素濃度が10〜1,000ppm(0.28〜28.21mM)である、請求項1又は2に記載の殺菌消毒剤。
【請求項4】
陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にする工程を含む、殺菌消毒剤の調製方法。
【請求項5】
陽イオン交換体によって、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にする工程、及び当該工程で得られた水溶液を希釈する工程を含む、殺菌消毒剤の調製方法。
【請求項6】
陽イオン交換体が、リン酸水素チタン、ナシコン型リン酸ジルコニウムの酸処理物、ネソ珪酸塩化合物の酸処理物、テクト珪酸塩化合物の酸処理物、ゼオライトの酸処理物、及び陽イオン交換樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項4又は5に記載の調製方法。
【請求項7】
ナトリウムイオンを捕捉した陽イオン交換体を、酸処理によって再生させて使用する、請求項4〜6のいずれかに記載の調製方法。
【請求項8】
次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液からナトリウムイオンを除去して、有効塩素に対するナトリウムイオンのモル比を0.70以下にするための陽イオン交換体を備えており、該陽イオン交換体が次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液と接触可能なように設置されていることを特徴とする、殺菌消毒剤の調製装置。
【請求項9】
陽イオン交換体が保持された流路に、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液が通液されるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を収容するための容器と、次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を容器の外部に放出させるための放出口と、容器内の次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を放出口に送るための流路とを有し、該流路に陽イオン交換体を含む区画が設置されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の調製装置。
【請求項11】
陽イオン交換体と接触した次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液を希釈するための希釈手段を有する、請求項8〜10のいずれかに記載の調製装置。
【請求項12】
調製した殺菌消毒剤を、揮散、噴霧又は散布する手段を有する請求項8〜11のいずれかに記載の調製装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−173858(P2011−173858A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59918(P2010−59918)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】