説明

正極活物質及びその製造方法、並びに、これを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池

高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池に適用することにより充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上させることができる正極活物質およびその製造方法、また、それを用いたリチウム二次電池用正極、並びに、充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上した、また、高い上限電圧で使用しても優れた充放電サイクル性能を発揮できるリチウム二次電池を提供する。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在するものであり、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在し得るように該元素を付与する方法等により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、高性能なリチウム電池の正極に用いることのできる正極活物質及びその製造方法、並びに、これを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
リチウム二次電池に代表される非水系電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し高い電圧を取り出せることから、小型携帯端末や移動体通信装置等への電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、充放電に伴いリチウムイオンを放出・吸蔵しうる正極活物質を主要構成成分とする正極と、充放電に伴いリチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極と、リチウム塩及び非水溶媒からなる電解質とを備える。
現在、リチウム二次電池の正極活物質には、層状構造を有しLiMO(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル構造を有しLiM(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム遷移金属複合酸化物、LiMPO(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム遷移金属リン酸化合物等が知られている。なかでも、層状構造を有しLiMO(Mは遷移金属元素)で表される組成のリチウム遷移金属酸化物の一種であるLiCoOは高いエネルギー密度を有することから特に携帯通信機器用のリチウム二次電池用正極活物質材料として広く使用されている。
活物質の表面を異種元素で改質して性能を改善する試みが各種提案されている。特許文献1〜4には、活物質の表面をアルミニウムで被覆することで電子伝導度を向上させる方法が記載されている。しかしながら、この方法によれば確かに粒子表面の電子伝導性は向上するものの、正極場での電解質の酸化分解を抑制するには不十分であった。
また、特許文献5には、In、Mg、Al、Ba、Sr、Ca、Zn、Sn、Bi、Ce、Ybの金属導電層を母材粒子表面に形成した正極材料が記載されている。しかしながら、0価金属を表面に配置すると、サイクル性能が必ずしも良好なものとはならなかった。これは、充放電に伴う活物質粒子の膨張・収縮に対する金属導電層の追随が不充分であるためと推察される。さらに、金属導電層を表面に形成させるには、同文献の実施例記載のように還元雰囲気で処理を行う必要があり、このような雰囲気で処理を行うと、正極活物質からの酸素脱離等が起こり活物質の結晶構造の崩れが生じやすく、電池性能を低下させるといった問題点があった。また、特許文献6には、Li−Mn−Ni−Co系複合酸化物母材粒子の表面近傍に結晶構造を崩さない程度の微小量の異種元素(Al、Mg、Ca、Sr、Y、Yb)をドープすることにより、耐熱性や電子伝導性を上げる試みがなされている。しかし、これらの技術を用いても、活物質表面を修飾するには不十分であり、電池性能を充分に向上させることができなかった。なお、特許文献6には、これらのドープにより電池性能がどの程度向上するかについては開示されていない。
LiNiOのNiの一部を他のMnやCoで置換したリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えば、特許文献7参照)は、リチウムコバルト酸化物と同等の充放電容量と優れた充放電サイクル性能、保存性能を示すとともに充電末期の高温安定性もリチウムコバルト酸化物やリチウムニッケル酸化物に比べて向上することが明らかとなってきていることから、リチウムコバルト酸化物に代わる正極活物質として注目されている。
特許文献8には、リチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極と、炭素材料を含有する負極を用いたリチウムイオン二次電池において、前記リチウム遷移金属複合酸化物として、特定の組成の層状リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物等を使用し、且つ上限電圧4.15〜4.4Vで使用することが記載されているが、充放電サイクル性能のさらなる向上が望まれていた。
【特許文献1】特開平08−102332号公報
【特許文献2】特開平09−171813号公報
【特許文献3】特開2002−151077号公報
【特許文献4】特開2001−256979号公報
【特許文献5】特開2000−048820号公報
【特許文献6】特開2003−017052号公報
【特許文献7】特開2000−133262号公報
【特許文献8】特開2003−264006号公報
リチウム二次電池は、充電状態で長時間放置されると、放電性能等電池としての特性を悪化させるという問題があった。特に、充放電を多数回繰り返したリチウム二次電池においては上記の問題は特に顕著に認められた。この原因について本発明者らが解析したところ、特性が悪化したリチウム二次電池では、炭素材料を用いた負極の作動電位領域が上昇していることが見いだされた。このことから、本発明者らは、特性悪化の原因を次のように推察した。即ち、正極にかかる電位によって正極近傍の電解質が分解して炭酸根を主とする分解生成物が発生し、これが負極側に泳動することで負極表面に炭酸根を主とする被膜が生成し、負極インピーダンスを上昇させる。すると、実質的に負極電位が上昇することによって、負極の作動電位領域が高電位側にシフトし、これに伴い、正極の作動電位領域が高電位側にシフトする。このため、正極にはより高電位がかかることになり、上記現象がより加速され、より電池特性を悪化させる。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池に適用することにより充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上させることができる正極活物質およびその製造方法、また、それを用いたリチウム二次電池用正極、並びに、充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上したリチウム二次電池を提供することである。また、高い上限電圧で使用しても優れた充放電サイクル性能を発揮できるリチウム二次電池を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは、鋭意検討の結果、正極活物質の表面に周期律表の3族の元素を付着させることによって、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、これにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の技術的構成および作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その作用機構の正否は本発明を制限するものではない。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(16)の通りである。
(1) リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在する正極活物質。
(2) 前記3族の元素がカルコゲン化合物として存在する、前記(1)記載の正極活物質。
(3) 前記3族の元素が含酸素化合物として存在する、前記(1)記載の正極活物質。
(4) 前記母材粒子は、LiCoOである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質。
(5) 前記母材粒子は、α−NaFeO型結晶構造を有し、組成式LiMnNiCo(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質。
(6) リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在し得るように該元素を付与する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(7) リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、前記母材粒子を含有しかつリチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが調整されている溶液と、周期律表の3族の元素を含有している「析出反応液」とを混合することにより、溶液中で前記母材粒子の上に前記3族の元素を含む化合物を析出させ、前記母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に前記3族の元素が存在し得るように該3族の元素を付与する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(8) 前記溶液は、リチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが11〜12に調整されている前記(7)記載の正極活物質の製造方法。
(9) 前記リチウムイオン含有アルカリ性調整剤は、水酸化リチウム水溶液である前記(7)記載の正極活物質の製造方法。
(10) 前記母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも1部の上に、前記3族の元素を含む化合物を析出させ、次いで熱処理する前記(6)記載の正極活物質の製造方法。
(11) 前記化合物の析出が溶液中で行なわれる前記(10)記載の正極活物質の製造方法。
(12) 前記母材粒子を熱処理を含む工程により製造し、前記3族の元素を含む化合物を析出させた後の熱処理を、前記母材粒子の製造における熱処理よりも低い温度で行う前記(10)記載の正極活物質の製造方法。
(13) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
(14) 前記(13)記載のリチウム二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る負極材料を用いた負極と、非水電解質とを有する、リチウム二次電池。
(15) 上限電圧4.3V以上で使用する前記(14)記載のリチウム二次電池。
(16) 前記負極は、炭素材料を含み、該負極が備える負極活物質が吸蔵しうるリチウムイオンの電気化学容量が、該電池を前記上限電圧で使用したときに正極が放出しうるリチウムイオンの電気化学容量の1.05倍以上1.50倍未満となるように負極活物質を備えていることを特徴とする前記(15)記載のリチウム二次電池。
前記(1)に係る正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在するもの、即ち、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子からなり、周期律表の3族の元素が、該母材粒子の表面に部分的に付着、または該母材粒子の表面全体を被覆するように存在するものである。なお、この場合、該母材粒子の表面への“3族の元素の付着”により、該付着箇所の母材粒子の表面には電解質が直接接触することが防止される。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池に適用することにより充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上させることができる正極活物質とすることができる。
これは、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の表面に存在する周期律表の3族の元素が、該母材粒子が電解質と直接接触させないようにすることにより、該正極活物質と電解質との反応を抑制しているためと考えられる。またこの際、周期律表の3族の元素でなければならない理由については必ずしも明らかではないが、本発明者らは、3族元素は特徴的なf電子軌道を有することから、正極場での3族元素化合物の存在状態が、電解液との反応を抑制する上で特徴を持つと推察している。
前記(2)に係る正極活物質は、前記3族の元素がカルコゲン化合物として存在するものであることを特徴としている。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池特性の悪化をより抑えたリチウム二次電池を作製可能な正極活物質とすることができる。
3族の元素は、0価の金属状態であるよりもカルコゲン化合物として存在することが好ましい。この理由については必ずしも明らかではないが、3族元素のカルコゲン化合物が有する形態が特徴的であることと関連があるのではないかと推察している。すなわち、母材粒子は充放電に伴って膨張収縮(体積変化)するが、このとき、母材粒子上の3族元素が0価金属であると、膨張収縮に対する追随が必ずしも充分でなく、充放電サイクルの繰り返しによって母材粒子から脱落する虞れがある。これに対し、3族元素がカルコゲン化合物である場合には、上記追随性が充分となることによるのではないかと推察している。
前記(3)に係る正極活物質は、前記3族の元素が含酸素化合物として存在するものであることを特徴としている。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池特性の悪化をさらに抑えたリチウム二次電池を作製可能な正極活物質とすることができる。
前記(4)に係る正極活物質は、前記母材粒子は、LiCoOであることを特徴としている。このような構成によれば、エネルギー密度が高く、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池特性の悪化を抑えたリチウム二次電池を作製可能な正極活物質とすることができる。
前記(5)に係る正極活物質は、前記母材粒子は、α−NaFeO型結晶構造を有し、組成式LiMnNiCo(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることを特徴としている。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応をさらに抑えることができ、電池特性の悪化をさらに抑え、充放電サイクル性能にも優れたリチウム二次電池を作製可能な正極活物質とすることができる。
前記(6)に係る正極活物質の製造方法は、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在し得るように該元素を付与するものである。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑え、電池特性の悪化が小さいリチウム二次電池を作製可能な正極活物質を製造することができる。
ところで、3族元素を付与した正極活物質をリチウム二次電池に用いると、3族元素を付与する前のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた場合に比べ、正極活物質の単位重量当たりの放電容量は低下する。ところが、本発明者らが3族元素を付与した正極活物質の製造方法について種々の条件において鋭意検討を行っていく中で、母材粒子上に3族元素を付与する工程の条件を特定のものとしたときに、実に驚くべきことに、前記放電容量の低下が抑制できることを見いだした。
ここに、前記(7)に係る正極活物質の製造方法は、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、前記母材粒子を含有しかつリチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが調整されている溶液と、周期律表の3族の元素を含有している「析出反応液」とを混合することにより、溶液中で前記母材粒子の上に前記3族の元素を含む化合物を析出させ、前記母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に前記3族の元素が存在し得るように該3族の元素を付与する正極活物質の製造方法である。
また、前記(8)に係る正極活物質の製造方法は、前記溶液は、リチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが11〜12に調整されていることを特徴としている。
また、前記(9)に係る正極活物質の製造方法は、前記リチウムイオン含有アルカリ性調整剤は、水酸化リチウム水溶液であることを特徴としている。
このような構成によれば、前記アルカリ性調整剤としてリチウムカチオンを含むものを用いることにより、母材粒子上への3族元素の付与を行うことによる正極活物質の放電容量の低下を効果的に抑制することができる。
なお、前記アルカリ性調整剤を、リチウムイオンを含有するものとすることにより、正極活物質の放電容量の低下を抑えることができる原因について、本発明者らは鋭意検討したところ、ナトリウムイオンを含有するアルカリ性調整剤を用いた場合は、母材表面への3族元素の付与工程の前後において、母材粒子の金属元素組成が変化していること、即ち、母材粒子を構成する元素のうち、Mn及びLiの含有量が低下する現象が認められた。一方、リチウムイオンを含有するアルカリ性調整剤を用いた場合は、前記Mn及びLiの比率が低下しないことがわかった。
このことから、リチウムイオンを含有するアルカリ性調整剤を用いることで正極活物質の放電容量の低下が抑えられるメカニズムについては、本発明者らは次のように推察している。即ち、母材表面への3族元素の付与工程において、母材粒子を含有する溶液中で母材粒子から結晶格子内のリチウム元素がイオン交換反応によって放出される可能性があるものと考えられる。そこで、pH調整を目的として添加するアルカリ性調整剤にリチウムイオンを含むものを用いることにより、上記イオン交換反応によるリチウム元素の脱離が抑制できたものと考えられる。従って、正極活物質としての放電容量の低下が抑制されたと考えられる。また、リチウムイオンを含有するアルカリ性調整剤を用いることで、母材を構成するMn元素の脱離についても抑えられる作用についてはなお不明な点が多いが、ナトリウムイオンを含有するアルカリ性調整剤を用いた場合にみられるMn元素の脱離は、イオン交換反応によるリチウム元素の前記脱離に伴って引き起こされる現象ではないかと推察される。
前記(10)に係る正極活物質の製造方法は、前記母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも1部の上に、前記3族の元素を含む化合物を析出させ、次いで熱処理することを特徴とするものである。
このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑え、電池特性の悪化が小さいリチウム二次電池を作製可能な正極活物質を好適に製造することができる。
前記(11)に係る正極活物質の製造方法は、前記化合物の析出が溶液中で行なわれることを特徴とするものである。
このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑え、電池特性の悪化が小さいリチウム二次電池を作製可能な正極活物質をより好適に製造することができる。ここで、前記溶液は水または水を溶解可能な有機化合物とすることができる。
前記(12)に係る正極活物質の製造方法は、前記母材粒子を熱処理を含む工程により製造し、前記3族の元素を含む化合物を析出させた後の熱処理を、前記母材粒子の製造における熱処理よりも低い温度で行うことを特徴とするものである。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑え、電池特性の悪化が小さいリチウム二次電池を作製可能な正極活物質をさらに好適に製造することができる。この理由については必ずしも明らかではないが、前記3族元素の母材への拡散が抑制されるため、母材粒子の表面の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在する構成が確実に実現されるのではないかと推察している。
前記(13)に係るリチウム二次電池用正極は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の正極活物質を含むことを特徴とするものである。このような構成によれば、充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上したリチウム二次電池を作製可能な正極とすることができる。
前記(14)に係るリチウム二次電池は、前記(8)記載のリチウム二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る負極材料を用いた負極と、非水系電解質とを有することを特徴とするものである。このような構成によれば、充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上したリチウム二次電池とすることができる。
前記(15)に係るリチウム二次電池は、上限電圧4.3V以上で使用するリチウム二次電池であることを特徴とするものである。このような構成によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができるので、上限電圧4.3V〜4.6Vといった通常よりも高い電圧に至って充電を行う充放電サイクルを繰り返しても、放電容量の低下を抑制することができる。
前記(16)に係るリチウム二次電池は、負極が炭素材料を含み、該負極が備える負極活物質が吸蔵しうるリチウムイオンの電気化学容量が、該電池を前記上限電圧で使用したときに正極が放出しうるリチウムイオンの電気化学容量の1.05倍以上1.50倍未満となるように負極活物質を備えていることを特徴とするものである。このような構成によれば、上限電圧4.3V〜4.6Vといった通常よりも高い電圧に至って充電を行っても、負極にリチウム金属が析出すること等による電池性能の低下を抑え、優れた充放電サイクル性能を有するリチウム二次電池とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
〔正極活物質〕
本発明に係る正極活物質は、化学的活性に富む正極活物質と電解質との反応を低減する目的で、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素を存在させた活物質である。
ここで、周期律表の3族の元素とは、Sc、Y、ランタノイド元素のLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びアクチノイド元素を意味する。なかでも、Y、La、Ce、Gd、Ybにおいて優れた効果が確認されており、特にY、Gdが好ましく、Gdが最も好ましい。
3族の元素は、0価の金属状態であるよりもカルコゲン化合物であることが好ましい。この場合、電解質の分解を抑制する効果は、3族元素のカルコゲン化合物が有する形態が特徴的であることと関連があるのではないかと推察している。すなわち、母材粒子は充放電に伴って膨張収縮(体積変化)するが、このとき、母材粒子上の3族元素が0価金属であると、膨張収縮に対する追随が必ずしも充分でなく、充放電サイクルの繰り返しによって母材粒子から脱落する虞れがある。これに対し、3族元素がカルコゲン化合物である場合には、上記追随性を充分にすることができる。
さらに、母材粒子上に0価金属を存在させるためには、特許文献2にも記載されているように、不活性ガス等の還元雰囲気で熱処理を行う必要がある。ところが、還元雰囲気で熱処理を行うと、母材粒子を構成しているカルコゲン原子が熱処理の過程で脱落し易くなる。例えば、層状岩塩型結晶構造を有するLiMnNiCo組成で表される母材粒子の場合には、酸素原子が脱落して組成比の崩れを導き、その結果、正極活物質としての特性を著しく低下させる虞がある。これに対し、母材粒子上に存在させる3族元素がカルコゲン化合物である場合には、還元雰囲気で熱処理を行う必要がないのでこのような問題がない。この点においても、3族元素はカルコゲン化合物であることが好ましい。
3族元素のカルコゲン化合物としては、含イオウ化合物および含酸素化合物が好ましく、含酸素化合物であることが最も好ましい。
また、母材粒子としては、特に限定されないが、α−NaFeO構造を有するLiCoO、LiNiO、LiNiO構造のNiサイトの一部をMnで固溶置換したLi−Mn−Ni系複合酸化物やMn及びCoで固溶置換したLi−Mn−Ni−Co系複合酸化物を用いることが好ましい。
母材粒子が、層状岩塩型結晶構造を有するものであって、その組成がLiMnNiCo(a+b+c=1)で表されるものとすると、より好ましい。なかでも、a/b=1.0とすることが好ましい。このようにすることにより、得られる正極活物質が、正極上での電解質との反応を抑制するといった効果を充分に発揮させながらも、繰り返し充放電サイクル性能に特に優れたものとすることができる。この原因については必ずしも明らかではないが、a/b=1.0とすることにより、3族元素が母材粒子に対して強固に接合し、且つ、充放電に伴う母材粒子の膨張収縮に対する追随性に優れたものとすることができたためと推察している。現実的には、原料仕込み時の誤差等により、|a−b|≦0.03となる。
3族元素は、リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、付与されることが好ましい。この付与は、3族元素を含む溶液からの析出によってなされることが望ましい。
母材粒子への3族元素の付与を溶液からの析出によって行う方法につき、3族元素がGdである場合を例として以下に説明する。まず、母材粒子を反応容器に入れ、イオン交換水を加え、温度を40℃から50℃に保って撹拌する。この時点で液のpHを測っておくことが望ましい。次に、液のpHが11〜12の範囲になるよう、アルカリ性調整剤を添加する。ここで、液のpHが11未満であると、母材粒子からリチウムが脱離する虞があるので、液のpHは11〜12とすることが重要である。少なくとも、先に測った液のpHを下回らないようにすることが重要である。次に、析出反応液であるGd(NOの水溶液を加える。この間も、混合液のpHが11から12に保たれるよう、適宜リチウムイオン含有アルカリ性調整剤を添加する。これにより、母材表面にGdの水酸化物が付与される。撹拌後、正極活物質と液体を分離する。
アルカリ性調整剤は、該物質がアルカリ性を呈するものであれば特に限定されず、ナトリウムカチオンを含有するものや、リチウムカチオンを含有するもの等を用いることができる。なかでも、リチウムカチオンを含有するものを用いることが好ましい。例えば水酸化リチウムや炭酸リチウムを用いることができる。なかでも、水酸化リチウムを用いると、pHの値を上記11〜12の範囲に調整することが容易となる点、母材粒子がリチウム元素を含む化合物である場合に3族元素付与工程中に母材粒子からのリチウム成分の溶出を抑制できるため正極活物質の容量低下を抑えることができる点、さらに母材粒子がマンガン元素を含む化合物である場合に3族元素付与工程中に母材粒子からのマンガン成分の溶出を抑えることができるため母材粒子の組成変化を抑制することができる点で好ましい。前記アルカリ性調整剤は、水溶液として用いることが好ましい。
得られた正極活物質は、ろ過によって液体と分離した後洗浄することによって粒子表面の余分のアルカリ成分が除去される。このとき、洗浄はろ液のpHを確認しながら行うのがよい。母材粒子にイオン交換水を加えて撹拌した時点で液が示したpH値を下回らないように前記洗浄を行うことで、正極活物質からのリチウムの脱離を抑制することができる。次に、熱処理により水分を除去する。この熱処理条件は、3族元素化合物と母材との間で構成元素が相互拡散することを防ぐ観点から、母材の製造時に用いた焼成温度よりも低い温度でなされることが好ましい。なかでも、150〜700℃で熱処理することが望ましい。
3族元素の付着量(=(酸化物換算した3族元素の重量)/(母材の重量+酸化物換算した3族元素の重量)×100))は0.05重量%から4重量%であることが望ましい。付着量を0.05重量%以上とすることにより、電池のサイクル特性の改善効果を充分に発揮させることができ、付着量を4重量%以下とすることにより、電池の容量が低下する虞を低減できる。
母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に3族の元素が存在していることは、例えばEPMAやTEMによる分析で確認する方法もある。
正極活物質は、平均粒子サイズ50μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質は、電池の高出力特性を向上する目的で平均粒子サイズ10μm以下であることが望ましい。
上記の正極活物質は、例えば次のような処方でリチウム二次電池用正極に供することができる。
〔正極〕
本発明によって得られた正極活物質を用いたリチウム二次電池用正極(以下、単に正極とも称する)は、前記正極活物質を主要構成成分とするものであり、正極活物質を、導電剤および結着剤、さらに必要に応じてフィラーと混練する等の方法で正極合剤を作製し、この正極合剤を集電体としての箔やラス板等に塗布または圧着し、50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度乾燥することにより好適に作製される。正極活物質の正極に対する含有量は、通常、80重量%〜99重量%とされ、好ましくは、85重量%〜97重量%とされる。
なお、導電剤および結着剤、フィラー、集電体としては、当該技術分野において、自明のものを、自明の処方で用いることができる。
〔リチウム二次電池〕
上記正極を備えるリチウム二次電池(以下、単に”電池”ともいう)は、前記正極と、リチウム二次電池用負極(以下、単に”負極”ともいう)と、非水電解質とを具備し、一般的には、正極と負極との間に、非水電解質電池用セパレータが設けられる。非水電解質は、電解質塩が非水溶媒に含有されてなる形態を好適に例示できる。
非水電解質、負極、セパレータとしては、一般にリチウム電池等への使用が提案されている自明のものを、自明の処方で使用可能である。ここで、前記非水電解質としては、液状電解質(電解液)、ゲル電解質、(無機、有機)固体電解質などを適宜選択して使用可能である。
本発明において、負極活物質としては、リチウムを吸蔵・放出可能な炭素材料を用いることが好ましい。例えば、グラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等が挙げられる。炭素材料の中では、グラファイト(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛)が金属リチウムに極めて近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電を実現でき、電解質塩としてリチウム塩を採用した場合に自己放電を抑え、かつ充放電における不可逆容量を少なくできるので特に好ましい。
以下に、好適に用いることのできるグラファイトの物性値を示す。この物性値はエックス線回折等により分析可能である。
格子面間隔(d002) 0.333〜0.350nm
a軸方向の結晶子の大きさLa 20nm 以上
c軸方向の結晶子の大きさLc 20nm 以上
真密度 2.00〜2.25g/cm
また、グラファイトに、スズ酸化物、ケイ素酸化物等の金属酸化物、リン、ホウ素、アモルファスカーボン等を添加して改質を行うことも可能である。あらかじめ電気化学的に還元することによってリチウムが挿入されたグラファイト等も負極活物質として使用可能である。
本発明に係るリチウム二次電池は、非水電解質を、例えば、セパレータと正極と負極とを積層する前または積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがセパレータを介して積層して巻回された発電要素を備える電池においては、非水電解質は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
電池の外装体の材料としては、当該技術分野において、自明のものを、自明の処方で用いることができる。
リチウム二次電池を設計製造するにあたって、正極活物質及び負極活物質のOCVカーブを取得しておくことは当業者にとって常套手段である。間欠放電等により取得したOCVカーブにより、リチウムイオンの吸蔵量又は放出量(充放電深度)と、開回路電位との関係を知ることができる。これに基づき、正極と負極との容量バランスを考慮して電池が設計される。本発明に係るリチウムイオン電池においては、負極の容量が電池を上限電圧まで使用したときの正極容量の1.05倍以上1.50倍未満となるように設計することが好ましい。負極容量が正極容量の1.05倍より小さい場合は、充電時に正極から放出されるリチウムイオン量を負極が受けきれずに負極上でリチウムが析出する等の原因により、充放電サイクル性能を著しく低下させる原因となる。逆に負極容量が1.5倍以上の場合は、利用されない負極が増えるために単純に重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度が低下するばかりではなく、負極に炭素材料を用いた場合には、自己放電量が比較的大きいリチウムイオン吸蔵領域が使用されるため、電池の保存性能を低下させる原因となる。この観点から、負極容量は正極容量の1.05倍以上が好ましく、1.15倍以上がより好ましい。また、1.30倍以下が好ましく、1.20倍以下がより好ましい。
ここで、本発明に係る電池は、使用上限電圧を従来電池に比べて高いものとすることができるので、前記容量バランスの計算の根拠に用いる正極活物質の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)の値は、当該電池の使用上限電圧に応じた値を用いるべきであり、従来電池の計算根拠に用いた値をそのまま用いてはならないことはいうまでもない。具体的には、例えば使用電圧の上限が4.5Vである電池を設計する場合、電池電圧が4.5Vのときの負極電位が0.1Vであれば正極電位は4.6Vであるから、正極活物質の電位4.6Vに相当する放電容量の値を用いるべきであり、例えば使用電圧の上限が4.2Vの電池設計時に用いた正極活物質電位4.3Vに相当する放電容量の値をそのまま用いてはならない。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明電池1〜3及び比較電池1〜3の概略斜視図である。
なお、図中、1は発電要素、2は外装体、3Aは正極端子、3Bは負極端子、10は扁平形リチウム二次電池である。
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
(母材粒子の作製)
次のようにしてLiMn0.167Ni0.167Co0.667組成の母材粒子を作製した。ドラフトチューブを備えた5リットル密閉型反応槽に水を3.5リットル入れた。さらにpH=11.6±0.1となるよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を加えた。パドルタイプの攪拌羽根を備えた攪拌機を用いて1200rpmの回転速度で攪拌し、外部ヒーターにより反応槽内溶液温度を50℃に保った。また、前記反応槽内溶液にアルゴンガスを吹き込んで、溶液内の溶存酸素を除去した。
一方、原料溶液である遷移金属元素が溶解している水溶液を調整した。マンガン濃度が0.44mol/リットル、ニッケル濃度が0.44mol/リットル、コバルト濃度が0.879mol/リットル及びヒドラジン濃度が0.0020mol/リットルとなるように、硫酸マンガン・5水和物水溶液、硫酸ニッケル・6水和物水溶液、硫酸コバルト・7水和物水溶液及びヒドラジン1水和物水溶液を混合して得た。
該原料溶液を3.17ml/minの流量で前記反応槽に連続的に滴下した。これと同期して、12mol/リットルのアンモニア溶液を0.22ml/minの流量で滴下混合した。なお、滴下の開始以降、前記反応槽内溶液のpHが11.4±0.1と一定になるよう、32%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に投入した。また、前記反応槽内の溶液温度が50℃と一定になるよう断続的にヒーターで制御した。また、前記反応槽内が還元雰囲気となるよう、アルゴンガスを液中に直接吹き込んだ。また、反応槽内の溶液量が3.5リットルと常に一定量となるよう、フローポンプを使ってスラリーを系外に排出した。
前記滴下の開始から60時間経過後、そこから5時間の間に、前記滴下を継続しながら、反応晶析物であるNi−Mn−Co複合酸化物のスラリーを採取した。採取したスラリーを水洗、ろ過し、80℃で一晩乾燥させ、Ni−Mn−Co共沈前駆体の乾燥粉末を得た。
得られたNi−Mn−Co共沈前駆体粉末を75μm未満に篩い分け、水酸化リチウム一水塩粉末をLi/(Ni+Mn+Co)=1.0となるように秤量し、遊星型混練器を用いて混合した。これをアルミナ製こう鉢に充てんし、電気炉を用いて、ドライエア流通下、100℃/hrの昇温速度で850℃まで昇温し、850℃の温度を15hr保持し、次いで、100℃/hrの冷却速度で200℃まで冷却し、その後放冷することにより焼成した。得られた粉体を75μm以下に篩い分けした。エックス線回折測定の結果、得られた粉末は空間群R3−mに帰属される単一相であることがわかった。ICP発光分光分析の結果、LiMn0.167Ni0.167Co0.667組成を確認した。このときのBET表面積は0.8m/gであり、平均粒径(D50)は9.8μmであった。
なお、空間群の表記について、本来「R3m」の数字「3」上にバー(横線)を付して表記すべきところ、本明細書内においては便宜上「R3−m」との表記をもって同一の意味を表すものとした。
(母材粒子表面への3族元素の付与)
上記によって得られた母材粒子50gを1リットル反応容器に入れ、そこに全量が500gとなるようイオン交換水を入れ、固形分比率10重量%の懸濁溶液を作製した。
一方、Gd(NO・4HO(3.85g)を100mlイオン交換水に溶解した水溶液(以下「析出反応液」ともいう)を作製した。ここで、析出反応液中のGd化合物の量(3族元素の量)は、母材粒子の重量との和に対してGd換算で1.5重量%に相当するようにして決定した。
前記懸濁溶液をパドル翼を備えた攪拌棒を用いて450rpmの回転速度で攪拌し、外部ヒータを用いて懸濁溶液の温度を40℃と一定になるよう制御した。ここで、懸濁溶液のpHは10.8であった。次に、アルカリ性調整剤として10重量%LiOH水溶液を投入することで、懸濁液のpHを11.0±0.1に調整した。
次に、前記懸濁溶液に前記析出反応液を3ml/minの速度で滴下した。滴下と同期して、懸濁溶液のpHが11.0±0.1と一定に保たれるよう、前記アルカリ性調整剤を断続的に投入した。析出反応液の全量を滴下完了後、懸濁溶液の温度を40℃に保持したまま、前記アルカリ性調整剤を投入することにより、懸濁溶液のpHを12.0±0.1まで増加させ、この状態で30分保持した。次に、懸濁液をろ過し、ろ液のpHが10.9に下がるまでイオン交換水で洗浄した。ろ過物を110℃で乾燥後、エアー流通下400℃で5時間熱処理した。得られた粉体を75μm未満に篩い分けした。
処理後の粉体のBET表面積と平均粒径(D50)の値は処理前母材粒子の値と一致した。エックス線光電子分光法(XPS)により、付与した3族元素の状態分析を行ったところ、143.8eV付近に4dスペクトル線が観測された。これは、別途市販のGdを用いて測定したスペクトル線と完全に一致した。このことから、付与された3族元素は酸化物の状態で存在していることが示唆された。次に、処理後の粉体の組成をICP発光分光分析によって求めたところ、3族元素化合物は、全母材重量に対してGd換算で0.6重量%付与されていることがわかった。また、母材の組成はLi1.01Mn0.167Ni0.167Co0.67であることがわかった。エックス線回折測定(XRD)の結果、Gdに基づく回折線は認められなかった。また、処理前の母材粒子と処理後の粉体との間に格子定数の変動が認められなかったことから、付与された3族元素は母材中にはドープされず、母材粒子の表面上に存在していると認められた。このようにして実施例3に係る正極活物質を作製した。
他の実施例及び比較例については表1に示した条件を変更したことを除いては上記実施例と同様にして母材粒子上への3族元素(比較例としてAlを含む)の付与を行った。即ち、母材粒子の組成がLi1.01Mn0.167Ni0.167Co0.67であるものに代えてLiCoを用いた場合について検討を行った。また、アルカリ性調整剤として10重量%のLiOH水溶液に代えて10重量%のNaOH水溶液を用いた場合について検討を行った。また、3族元素としてGdに代えてY、Zr、La、Ce、Ybを用いた場合について、また比較例として、Alを用いた場合について検討を行った。なお、Y、Zr、La、Ce、Ybを用いた場合においては、析出反応液を調整するためにイオン交換水に溶解する3族元素の塩は、いずれもそれぞれの元素の硝酸塩水和物を用い、Alを用いた場合においてはAl(NH)(SO・12HOを用いた。また、3族元素付与後の熱処理の温度について、400℃に代えて150℃、700℃又は800℃とした場合について検討を行った。また、析出反応液中の3族元素の濃度を変化させた場合について検討を行った。その結果、3族元素の付与を行った全ての実施例及び比較例において、付与された3族元素は酸化物の状態で存在していること、及び、付与された3族元素は母材中にはドープされず、母材粒子の表面上に存在していることが認められた。
(リチウム二次電池用正極の作製)
正極活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を重量比90:5:5の割合で混合し、分散媒としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散し、塗布液を調製した。なお、PVdFは固形分が溶解分散された液を用い、固形重量換算した。該塗布液を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体に塗布し、リチウム二次電池用正極を作製した。このリチウム二次電池用正極は定電圧印加試験に供した。
(定電圧印加試験)
正極活物質の、高電位における電解質との反応量を評価するため、定電圧印加試験を行った。この試験のために使用した電池は、厚さ40μmの金属リチウム箔を厚さ10μmの銅箔集電体に貼付したものを負極板とし、エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを70:30の体積比で混合した溶媒に1mol/lの濃度でLiPFを溶解したものを電解質として用い、ポリアクリレートで表面改質して電解質の保持性を向上したポリプロピレン製の微孔膜をセパレータとして用いた。
この電池の両端子間に、4.3Vの定電圧を最大100時間連続的に印加した。但し、一部の評価試験においては上記定電圧を4.4Vとした。この間、端子間に流れる電流値を記録すると共に、端子間に流れた電気量を回路に接続したクーロンメータを用いて経時的に積算記録した。正極活物質からのリチウムイオンの放出反応に伴う電気量が測定結果に含まれることを避けるため、該放出反応が収斂するまでの試験開始から50時間に至るまでの記録を評価しないこととし、定電圧の印加50時間後から100時間後までの積算電気量を1時間あたりの積算電気量に換算し、正極中の正極活物質重量で除した値をフロート積算電気量(μAh/g)とした。従って、このように求めたフロート積算電気量は正極活物質と電解質との副反応に伴うものであると考えられ、このフロート積算電気量の値が小さいものほど正極活物質と電解質との反応が少ないものであるといえる。
いくつかの実施例及び比較例について、正極活物質の作成処方及び定電圧印加試験条件、並びに、対応する定電圧印加試験の結果について、表1〜6に示す。






表1は、母材粒子として市販のLiCoOを用いた場合の実施例及び比較例である。3族元素を付与した実施例1,2においては、3族元素を付与していない比較例1に比べてフロート積算電気量の値が小さく、正極活物質と電解質との反応が抑制されていることがわかる。なかでも、母材粒子表面への3族元素の付与工程において使用するアルカリ性調整剤としてLiOH水溶液を用いた実施例1においては、アルカリ性調整剤としてNaOH水溶液を用いた実施例2に比べて、正極活物質と電解質との反応を抑制する効果が優れていることがわかる。
表2は、母材粒子としてLiCoOに代えてLiMn0.167Ni0.167Co0.667を用いたことを除いては表1の場合と同様とした場合の実施例及び比較例である。この場合においても、3族元素の付与により正極活物質と電解質との反応が抑制されていることがわかる。また、アルカリ性調整剤としてLiOH水溶液を用いた実施例3においては、アルカリ性調整剤としてNaOH水溶液を用いた実施例4に比べて、正極活物質と電解質との反応を抑制する効果が優れていることがわかる。さらに驚くべきことには、母材粒子としてLiCoOを用いた表1の場合は、3族元素を付与していない場合に比べて電解液との反応量が約40%抑制されているのに対し、母材粒子としてLiMn0.167Ni0.167Co0.667を用いた表2の場合には、電解液との反応量自体が小さいのみならず、3族元素を付与していない場合に比べて電解液との反応量が約70%も抑制されていることがわかる。このことから、3族元素を母材粒子に付与することによる電解液との反応抑制効果は、母材粒子としてα−NaFeO型結晶構造を有し、組成式LiMnNiCo(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を選択することにより、特に顕著に得られることがわかる。
表3は、付与する3族元素の種類を変えて同様の実験を行ったものである。なお、析出反応液中の付与元素量は実施例間で異なっているが、これは各元素についてフロート積算電気量が最小となる条件を選択した結果である。これらの結果より、3族元素の種類としては、特にY、Gdが好ましく、Gdが最も好ましい。一方、3族元素に代えてAlを用いた比較例3では、3族元素の付与を行っていない比較例2に比べて、フロート積算電気量が逆に増える結果となった。
表4は、3族元素としてYbを用い、付与量を一定とし、付与後の熱処理温度を変えて同様の実験を行ったものである。この結果より、3族元素付与後の熱処理温度は、150℃以上であればよいことがわかる。また、3族元素付与後の熱処理温度を800℃以下とすることで、本発明の効果を充分なものとすることができる。また、3族元素付与後の熱処理温度を800℃以下とすることで、3族元素化合物が母材粒子内にドープされることにより、あるいは3族元素化合物の過度の粒子成長等により、3族元素化合物による電解質との直接接触を抑制する効果が不充分となる虞を回避することができる。また、3族元素付与後の熱処理温度は700℃以下とするとより好ましいことがわかる。
表5は、3族元素としてYbを用い、付与後の熱処理温度を一定(400℃)とし、3族元素の付与量を変えて同様の実験を行ったものである。この結果より、3族元素の付与量を多くするほど、高電位における電解質との反応が抑制されていることがわかる。但し、3族元素の付与量が多すぎると電池性能が低下する傾向があるため、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。また、3族元素の付与量が0.1重量%以上であれば、充分な効果が得られることがわかる。
表6は、定電圧印加試験における電圧値をより高い4.4Vとして同様の実験を行ったものである。この結果から明らかなように、4.4Vにおいても、高電位における電解質との反応が大きく抑制されていることがわかる。
(OCVカーブの取得)
負極に炭素材料を用いたリチウム二次電池の作製に先立って、それぞれの電池に用いる正極活物質のOCVカーブを正確に求めた。前記リチウム二次電池用正極を作用極として用い、前記非水電解質を使用して3端子セルを組み立てた。対極及び作用極には金属リチウムを用いた。該3端子セルを用いて周知の方法で取得したOCVカーブから、前記参照極に対する作用極の電位が4.3V、4.5V及び4.7Vに相当するそれぞれの正極活物質の電気化学容量(mAh/g)を求めた。
(負極に炭素材料を用いたリチウム二次電池の作製)
正極活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を重量比90:5:5の割合で混合し、分散媒としてN−メチルピロリドンを加えて混練分散し、塗布液を調製した。なお、PVdFは固形分が溶解分散された液を用い、固形重量換算した。該塗布液を厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、トータル厚さ100μmに調整して正極シートを作製した。該正極シートを幅61mm長さ445mmの形状に裁断し、シートの末端の正極を除去し、厚さ100μm幅3mmのアルミニウム製正極端子3Aを超音波溶接により取り付け正極板とした。
負極活物質としての炭素材料(人造黒鉛、粒径6μm)、結着剤としてのスチレン−ブタジエンゴム及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を重量比97:2:1の割合で混合し、精製水を用いて混練し塗布液を得た。該塗布液を厚さ10μmの銅箔集電体の両面に塗布し、負極シートを作製した。前記負極シートを幅63mm長さ460mmの形状に裁断して、シートの末端の負極を除去し、厚さ100μm幅3mmのニッケル負極端子3Bを抵抗溶接により取り付け負極板とした。
ここで、正極シート及び負極シートの作製にあたり、集電体への塗布量は、各々の電池に応じて正極及び負極の単位面積当たりの電気化学容量が設計した値となるよう適宜調整した。
即ち、上限電圧4.2V用電池、上限電圧4.4V用電池、上限電圧4.6V用電池のそれぞれの電池において、正極の電気化学容量に対して、負極の電気化学容量が1.20倍となるように設計した。このためには、充電末状態における炭素負極電位を約0.1Vと設計することを考慮して、
上限電圧4.2V用電池に用いる正極の設計容量の計算根拠にはその電池に用いる正極活物質のOCVカーブから求めた電位4.3Vに対応する電気化学容量の値を用い、
上限電圧4.4V用電池に用いる正極の設計容量の計算根拠にはその電池に用いる正極活物質のOCVカーブから求めた電位4.5Vに対応する電気化学容量の値を用い、
上限電圧4.6V用電池に用いる正極の設計容量の計算根拠にはその電池に用いる正極活物質のOCVカーブから求めた電位4.7Vに対応する電気化学容量の値を用いた。
このようにして、それぞれの電池に用いる負極板の電気化学容量が、それぞれの正極の電気化学容量の1.20倍となるように調整した。
前記正極板及び負極板を150℃で12時間減圧乾燥を行った。ポリアクリレートで表面改質し、電解質の保持性を向上したポリプロピレン製の微孔膜をセパレータとし、負極板/セパレータ/正極板の順に積層し、扁平形状に捲回し、発電要素1を得た。外装体2として、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用い、前記正極端子3A及び負極端子3Bの開放端部が外部露出するように前記発電要素1を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止した。前記注液孔から前記非水電解質を注液後、真空状態で前記注液孔部分を熱封口し、第1図に示す設計容量800mAhの扁平形のリチウム二次電池10を作製した。
以上の作製処方に従って、前記実施例8で用いた正極活物質を正極に用いて作製した上限電圧4.2V用電池、上限電圧4.4V用電池及び上限電圧4.6V用電池をそれぞれ本発明電池1、本発明電池2及び本発明電池3とする。また、前記比較例2で用いた正極活物質を正極に用いて作製した上限電圧4.2V用電池、上限電圧4.4V用電池及び上限電圧4.6V用電池をそれぞれ比較電池1、比較電池2及び比較電池3とする。
(初期充放電試験)
作製した全てのリチウム二次電池について、温度20℃において初期充放電を10サイクル行った。充電条件は、充電電圧にそれぞれの電池の上限電圧の値を採用し、電流0.1ItA、15時間の定電流定電圧充電とした。放電条件は、電流0.1ItA、終止電圧3.0Vの定電流放電とした。10サイクル目の放電容量を「初期放電容量(mAh)」とした。
(充放電サイクル試験)
続いて、充放電サイクル試験を行った。ここで、充電条件は、充電電圧としてそれぞれの電池の上限電圧の値を採用し、電流1ItA、1.5時間の定電流定電圧充電とした。放電条件は、電流1ItA、終止電圧3.0Vの定電流放電とした。この充放電サイクルを100回繰り返した後の充電後の電池に対し、電流0.2ItA、終止電圧3.0Vの定電流放電を行い、放電容量を記録した。このときの放電容量の、それぞれの電池の初期放電容量に対する百分率を「容量維持率(%)」とした。
(定電圧印加試験)
本発明電池Cと比較電池Fとを別途用意し、上記初期充放電試験を行った後、4.6Vの電圧を2週間(336時間)連続的に印加した。その後、電流0.2ItA、終止電圧3.0Vの定電流放電を行った。このときに得られた放電容量の、それぞれの電池の初期放電容量に対する百分率を「連続充電後容量維持率(%)」とした。
以上の結果を表7及び表8に示す。


上記結果より、本発明の効果は明らかである。例えば上限電圧4.6V用電池である本発明電池3と比較電池3とを比較すると、母材粒子をそのまま正極活物質として用いた比較電池3では、300サイクル後の放電容量が定格容量の半分以下にまで低下しているのに対し、母材粒子上に3族元素が存在している正極活物質を用いた本発明電池3では、定格容量の9割近い放電容量が維持されている。このように、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に周期律表の3族の元素が存在する正極活物質を用いることにより、端子間電圧4.6Vという高い充電電圧で充放電サイクルを繰り返しても容量低下が小さく、高いエネルギー密度が確保できる。これは、母材粒子上に3族元素が存在している正極活物質を用いることにより、正極が高い電位に耐えうるものとなるためと考えられる。上記した定電圧印加試験の結果はこれを裏付けている。
上記電池試験に用いた正極活物質に付与されている3族元素はYbであるが、Ybに代えてGdを付与した正極活物質を用いた電池についても現在試験中である。現在までのところ、上記した定電圧印加試験の結果を反映して、上記本発明電池1〜3を上回る優れた電池性能が示されている。
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上記した実施の形態若しくは実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば、高電位においても正極と電解質との副反応を抑えることができ、電池に適用することにより充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上させることができる正極活物質及びその製造方法を提供できる。また、これを用いた正極を提供できる。また、充電状態で保存しても電池性能を損なうことなく充放電サイクル性能も向上されたリチウム二次電池を提供できる。また、通常よりも使用上限電圧を高く設計し、充放電サイクル性能にも優れたリチウム二次電池を提供できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在する正極活物質。
【請求項2】
前記3族の元素がカルコゲン化合物として存在する、請求の範囲第1項記載の正極活物質。
【請求項3】
前記3族の元素が含酸素化合物として存在する、請求の範囲第1項記載の正極活物質。
【請求項4】
前記母材粒子は、LiCoOである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の正極活物質。
【請求項5】
前記母材粒子は、α−NaFeO型結晶構造を有し、組成式LiMnNiCo(但し、0≦x≦1.3、a+b+c=1、|a−b|≦0.03、0≦c<1、1.7≦d≦2.3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の正極活物質。
【請求項6】
リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に、周期律表の3族の元素が存在し得るように該元素を付与する、請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
【請求項7】
リチウムを含有しかつリチウムイオンを吸蔵および放出し得る母材粒子を製造した後に、前記母材粒子を含有しかつリチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが調整されている溶液と、周期律表の3族の元素を含有している「析出反応液」とを混合することにより、溶液中で前記母材粒子の上に前記3族の元素を含む化合物を析出させ、前記母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも一部の上に前記3族の元素が存在し得るように該3族の元素を付与する請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記溶液は、リチウムイオン含有アルカリ性調整剤の添加によりpHが11〜12に調整されている請求の範囲第7項記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記リチウムイオン含有アルカリ性調整剤は、水酸化リチウム水溶液である請求の範囲第7項記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記母材粒子を製造した後に、該母材粒子の電解質と接触し得る部分の少なくとも1部の上に、前記3族の元素を含む化合物を析出させ、次いで熱処理する請求の範囲第6項記載の正極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記化合物の析出が溶液中で行なわれる請求の範囲第10項記載の正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記母材粒子を熱処理を含む工程により製造し、前記3族の元素を含む化合物を析出させた後の熱処理を、前記母材粒子の製造における熱処理よりも低い温度で行う請求の範囲第10項記載の正極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極。
【請求項14】
請求の範囲第13項記載のリチウム二次電池用正極と、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る負極材料を用いた負極と、非水電解質とを有する、リチウム二次電池。
【請求項15】
上限電圧4.3V以上で使用する請求の範囲第14項記載のリチウム二次電池。
【請求項16】
前記負極は、炭素材料を含み、該負極が備える負極活物質が吸蔵しうるリチウムイオンの電気化学容量が、該電池を前記上限電圧で使用したときに正極が放出しうるリチウムイオンの電気化学容量の1.05倍以上1.50倍未満となるように負極活物質を備えていることを特徴とする請求の範囲第15項記載のリチウム二次電池。

【国際公開番号】WO2005/008812
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511871(P2005−511871)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010260
【国際出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】