説明

歩行型作業車

【課題】歩行型作業車のエンジン始動に係る操作具について、操作がし易く、視認性が良いものを提供する。
【解決手段】左右に把持部31・31を備えたハンドル30を有する歩行型作業車において、エンジン始動に係る複数操作具を左右把持部31・31の間隔の中央部に配置するとともに、前記複数操作具が、スタートスイッチ33と、チョーク操作具34と、リコイル操作具35とにより構成され、スタートスイッチ33、チョーク操作具34、リコイル操作具35の順に上方から配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動に係る複数操作具を有する歩行型作業車の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン始動に係る操作具として歩行型作業車のエンジン付近にチョーク、リコイルが配置されたり、ハンドル部にスタートスイッチ等が配置されている構成は公知となっており、例えば特許文献1においてはエンジン側部にリコイルスタータの把手(グリップ)が設けられている。
また、特許文献2においてはエンジン上部近傍にリコイルスタータのグリップが設けられている。
【特許文献1】特許第3366060号公報
【特許文献2】特開平2−125963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、始動に要する「スタートスイッチ」、「チョーク」、「リコイル」が散逸して配置されていると、オペレータは始動時に「スタートスイッチ」、「チョーク」、「リコイル」を探しながら別々の位置で操作して、それぞれ操作毎に姿勢を変えなければならず、また、エンジン付近のスイッチ類はハンドルから遠く、身体的負担が大きい。さらに、近年では、農作業機械において、女性・高齢者・新規就農者等、つまりどんな人間に対しても、使いやすいものでなければならないという設計思想が重要視されている。つまり、管理機等の歩行型作業車についても、性能は充実させつつも、作業が楽・操作がし易い、という観点からの改良が更に望まれている。
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩行型作業車のエンジン始動に係る操作具について、操作がし易く、視認性が良いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業車において、エンジン始動に係る複数操作具を左右把持部の間隔の中央部に配置したものである。
【0006】
請求項2においては、前記複数操作具が、スタートスイッチとチョーク操作具であるものである。
【0007】
請求項3においては、前記複数操作具が、リコイル操作具とチョーク操作具であるものである。
【0008】
請求項4においては、前記複数操作具が、スタートスイッチとチョーク操作具とリコイル操作具であるものである。
【0009】
請求項5においては、前記複数操作具が、スタートスイッチ、チョーク操作具、リコイル操作具の順に上方から配置されているものである。
【0010】
請求項6においては、前記チョーク操作具を、親指より大とするとともに、チョーク操作具の周縁部を、周縁部内側とは異なる配色又は彩色としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、オペレータは姿勢を変えることなく、連続して操作が可能となる。また、右利きでも左利きでも同等に操作を行うことが可能であり、身体的負担が少なくなる。また、始動に係る操作具が集中して配置されているため、探す必要がなく、初心者や女性等でも容易に操作ができる。
【0013】
請求項2においては、オペレータは姿勢を変えることなく、連続して操作が可能となる。また、右利きでも左利きでも同等に操作を行うことが可能であり、身体的負担が少なくなる。
【0014】
請求項3においては、オペレータは姿勢を変えることなく、連続して操作が可能となる。また、右利きでも左利きでも同等に操作を行うことが可能であり、身体的負担が少なくなる。
【0015】
請求項4においては、オペレータは姿勢を変えることなく、連続して操作が可能となる。また、右利きでも左利きでも同等に操作を行うことが可能であり、身体的負担が少なくなる。
【0016】
請求項5においては、オペレータは上から順に操作を行うことで、誤操作等の間違いが生じることがなく、かつわかりやすい操作によりエンジン始動ができる。
【0017】
請求項6においては、チョーク操作具の周縁部と、周縁部の内側との間において色差の大きな配色等を行うことで、指で操作する場所(触って良い場所)を明確にするとともに、親指よりもチョーク操作具の周縁部が大きいことで、操作中も現在握っているスイッチの種類を確認することができる。つまり、操作間違いを未然に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は管理機を示す全体側面図、図2は同じく平面図、図3は同じく正面図、図4は同じく後面図、図5は管理機のハンドルを示す斜視図、図6は図1におけるX矢視図、図7は管理機を示す斜視図、図8はエンジン周辺部及び動力伝達部の配置構成を示す概略図である。
【0019】
図1、図2及び図8を用いて、歩行型作業車の一例である管理機の全体構成について説明する。
管理機1はエンジン台2上の前部(矢印方向を前方とする)にエンジンEを搭載し、該エンジンEの上部に燃料タンク3が載置されている。また、エンジンEの左右一側にはエンジンEを始動するためのリコイルスタータ4が具備されている。該リコイルスタータ4の後部にはキャブレター5を配設し、他側の側部にはマフラー6とエンジンEから動力を出力する出力軸15を突出し、該出力軸15より伝動ケース7内のVベルト(図示せず)を介してミッションケース8に動力を伝動して、後述する車軸10及び耕耘爪20を駆動する構造となっている。
【0020】
また、エンジン台2の下方に前記ミッションケース8を突設し、該ミッションケース8の下端に車軸10を軸支し、該車軸10の軸上に複数本の耕耘爪20・20・・・が植設されている。そして、前記車軸10の両端部には、ゲージホィール9が固設されている。また、前記耕耘爪20・20・・・の回動軌跡上方は、平面視略U字状である耕耘カバー21により覆われ、該耕耘カバー21は前記エンジン台2の周囲に取り付けられ、耕耘した土を巻き上げないようにしている。また、前記耕耘カバー21の先端にはバンパー22が固設されている。
【0021】
そして、図2及び図8に示すようにエンジン台2上に載置しているエンジンE、燃料タンク3、リコイルスタータ4、キャブレター5、マフラー6及び伝動ケース7等は、ボンネット25により覆われており、内部を保護して埃等の侵入もできるだけ防ぎ、騒音も小さくなるようにしている。
【0022】
また、ミッションケース8の中途部近傍からハンドルフレーム11が斜め後方に延出されており、該ハンドルフレーム11上端より斜め後方に平面視V字状であるハンドル30が延設されている。また、ハンドル30の後部には把持部であるグリップ31・31が設けられており、該グリップ31・31の一方(本実施例では、左側)の下方には、クラッチレバー32が配設されている。また、前記ハンドルフレーム11の中途部には、抵抗棒23を前後方向に回動可能に支持している。
【0023】
前記クラッチレバー32は、図示せぬクラッチワイヤーを介して伝導ケース7内のテンションアーム(図示せず)と連結されている。これにより、クラッチレバー32の「入」「切」操作でベルトテンションクラッチ(図示せず)がON・OFFされ、エンジンEからの動力をミッションケース8へ伝達したり、切断したりできるようにしている。
【0024】
また、図7に示すように前記ボンネット25の後部上面、すなわちオペレータに近い側に蓋部25aを設けており、図示しないが、該蓋部25aの下部に管理機1等の取扱説明書や工具等を収納することができる所定の大きさの収納スペースが設けられている。該蓋部25aの外径はボンネット25の外形形状に沿わせた形状として、閉じたときに一体的外観となるようにしている。該蓋部25aは着脱自在とすることで容易に収納物を取り出せるようにしている。また、前部に枢支部を設け、後部に凹部を設け把手とし、または、ボンネット25の後端部に凹部25bを設けて、手先を凹部25bに挿入して引っ掛けて上方に持ち上げることで開閉自在となっている。このように収納スペースを設けたことにより、管理機1のエンジン等の調子が悪くなった時に取扱説明書や工具等の小物をすぐに取り出せる。また、飲料用ペットボトル等快適に作業を行うのに必要なものも作業現場に持っていける。また、蓋部25aを取り付けることで機体の振動で収納スペースに入れている小物が飛び出すことを防止する。さらには、オペレータはハンドル30を外側から回り込まずに前方に手を伸ばすだけで蓋部25aを開閉し、収納されているものを取り出すことができる。
【0025】
次に、本発明に係る歩行型作業車のハンドルについて、図2、図5及び図6を用いて説明する。
前記ハンドル30は、図2に示すように平面視略V字状であり、図6に示すようにオペレータから見て(X矢視方向から見て)略M字状に形成されている。特に本実施例では、オペレータから手の届く範囲の部分をハンドル30とし、言い換えれば、ハンドル30はオペレータの手の届く範囲の大きさに形成され、該ハンドル30とミッションケース8を連結する部分をハンドルフレーム11とし、該ハンドル30とハンドルフレーム11は着脱可能としている。該ハンドル30の左右には把持部となるグリップ31・31を備えており、該左右のグリップ31・31の間の略中央部付近にエンジン始動に係る複数の操作具を備えており、上方から順にスタートスイッチ33、チョーク操作具34、リコイルスタータ4のリコイル操作具であるスタータグリップ35を配置している。つまり、ハンドル30の左右中心上の後部面、言い換えれば、V字状に二股に分かれる基部の後部面上に、上方(前方)から下方(後方)へ順にスタートスイッチ33、チョーク操作具34、リコイルスタータ4の操作具であるスタータグリップ35を配置している。
【0026】
前記スタートスイッチ33は、図示せぬ配線を介してエンジンEの点火回路に接続されており、スタートスイッチ33の左右の回動により、点火回路の接続・遮断を行い、エンジンEの始動準備および停止を行うことができる。
【0027】
前記チョーク操作具34は、キャブレター5への空気供給量を調節するものであり、具体的に説明すると、燃料タンク3からキャブレター5に供給される燃料は、キャブレター5に供給される空気と混合されて、混合気となって吸気通路(図示せず)を介してエンジンEに供給される。また、ハンドルフレーム11及びハンドル30内に配線されているチョーク用ケーブル(図示せず)の他端が、チョーク操作具34の一端に連結されており、チョーク操作具34を操作することにより、チョーク用ケーブルの一端とキャブレター5との間に設けられたチョークレバーが移動して、キャブレター5の空気吸入口に設けられたチョークバルブ(図示せず)が回動して、混合気の燃料濃度を調節する。この混合気の調節方法は、チョーク操作具34をオペレータが引っ張ることにより前記チョークバルブが閉作動し、空気吸入口からキャブレターへの空気供給量を減少させて、燃料の濃度を高くしてエンジン始動が行い易くなるようになっている。エンジン始動後は、チョーク操作具34をもとにもどす。
【0028】
そして、チョーク操作具34は、チョーク操作時にチョーク操作具34の指で押える部分の大きさが平均的な親指の指先より大きくなるように形成されている。また、図6に示すようにチョーク操作具の周縁部と、周縁部の内側との間において色差の大きな配色又は彩色(本実施例では周縁部を黄色、周縁部内側を黒色)を行うことで、チョーク操作具34を明確に認識できる視認性の良いものとしている。
【0029】
また、スタータグリップ35は、ハンドルフレーム11及びハンドル30内に配線されている図示せぬリコイルロープを介して前記リコイルスタータ4に接続されている。このリコイルスタータ4は、エンジンEのクランク軸に連結されており、スタータグリップ35を引っ張ることによりクランク軸を回転させてエンジンEを始動させる。
前記スタートスイッチ33と点火回路を接続する配線、チョーク用ケーブル、リコイルロープ、及びクラッチワイヤとアクセルワイヤはハンドルフレーム11内を通し、外部から保護し、断線や引っ掛かりを防止している。
【0030】
このような構成により、オペレータは管理機1のエンジン始動を行う場合、エンジン始動に係る操作具のうち、まずハンドル30中央部の上段に配置されているスタートスイッチ33を回動して点火回路をONにする。続いて、使用時の気温が低い等によりエンジンがかかりにくい場合、すなわち、チョークバルブを操作する必要が生じた場合に、中段に配置されているチョーク操作具34を引っ張りキャブレター5への空気供給量を減少させて、燃料の濃度を高くする。そうして下段に配置されているリコイルスタータ4のスタータグリップ35を斜め後方に引っ張りエンジンを始動する。そして、チョーク操作具34をもとの位置にもどすのである。
また、エンジンEを停止する場合は、前記スタートスイッチ33をOFFにする。
【0031】
このように、左右に把持部であるグリップ31・31を備えたハンドル30を有する管理機1において、エンジン始動に係る複数操作具を左右のグリップ31・31の間隔の中央部に配置したことにより、オペレータは姿勢を変えることなく、連続して操作が可能となる。また、右利きでも左利きでも同等に操作を行うことが可能であり、身体的負担が少ない。つまり、スタータグリップ35は右後方または左後方に引っ張って始動しても、リコイルロープには大きな力(摩擦等)がかかることがなく、左右略均等に引っ張り力を与えることができる。
【0032】
また、スタートスイッチ33、チョーク操作具34、リコイル操作具であるスタータグリップ35の順に上方から配置されていることにより、オペレータは上から順に操作を行うことで、誤操作等の間違いが生じることがなく、かつわかりやすい操作によりエンジン始動ができる。また、スタータグリップ35が最も下側に配置されるので、引っ張った時にハンドル30等に引っかかることがなく、力も入れ易い構成となっている。
【0033】
また、前記チョーク操作具34を、親指より大とするとともに、チョーク操作具34の周縁部を、周縁部内側とは異なる配色又は彩色としたことにより、指で操作する場所(触って良い場所)を明確にするとともに、親指よりもチョーク操作具34の周縁部が大きいことで、操作中も現在握っているスイッチの種類を確認することができる。つまり、操作間違いを未然に防止できる。
【0034】
なお、本実施例においては、ハンドル30の中央部にスタートスイッチ33、チョーク操作具34及びスタータグリップ35を設ける構成としているが、特に限定するものではなく、スタートスイッチとチョーク操作具とをハンドル30の中央部に配置し、スタータグリップ35をハンドルフレーム11やボンネット25後部等に配置する場合や、スタータグリップ35とチョーク操作具とをハンドル30の中央部に配置し、スタートスイッチ33をグリップ31やハンドルフレーム11等に配置する構成としてもかまわない。
また、本実施例においては、スタートスイッチ33、チョーク操作具34及びスタータグリップ35をハンドル30の中央部に縦(上下)方向一列に配置する構成としたが、特に限定するものではなく、本発明の効果を得るためにはハンドル30中央部にエンジン始動に係る操作具が集中配置されていればよく、例えばハンドル30中央部に左側から順に、スタートスイッチ、チョーク操作具、スタータグリップ35と左右方向に一列に配置することも可能であり、さらには上段にスタートスイッチを配置して、下段左にチョーク操作具、下段右にスタータグリップを配置する等三角形状に配置する構成としてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】管理機を示す全体側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく正面図。
【図4】同じく後面図。
【図5】管理機のハンドルを示す斜視図。
【図6】図1におけるX矢視図。
【図7】管理機を示す斜視図。
【図8】エンジン周辺部及び動力伝達部の配置構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0036】
1 管理機
30 ハンドル
31 グリップ
33 スタートスイッチ
34 チョーク操作具
35 スタータグリップ
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業車において、エンジン始動に係る複数操作具を左右把持部の間隔の中央部に配置したことを特徴とする歩行型作業車。
【請求項2】
前記複数操作具が、スタートスイッチとチョーク操作具であることを特徴とする請求項1に記載の歩行型作業車。
【請求項3】
前記複数操作具が、リコイル操作具とチョーク操作具であることを特徴とする請求項1に記載の歩行型作業車。
【請求項4】
前記複数操作具が、スタートスイッチとチョーク操作具とリコイル操作具であることを特徴とする請求項1に記載の歩行型作業車。
【請求項5】
前記複数操作具が、スタートスイッチ、チョーク操作具、リコイル操作具の順に上方から配置されていることを特徴とする請求項4に記載の歩行型作業車。
【請求項6】
前記チョーク操作具を、親指より大とするとともに、チョーク操作具の周縁部を、周縁部内側とは異なる配色又は彩色としたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の歩行型作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−273487(P2008−273487A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122885(P2007−122885)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)