説明

歩行型作業車

【課題】ハンドル支柱を機体前方へ折り畳む事が可能な構造を有する歩行型作業車について、より安全で、運搬・格納のしやすいものを提供する。
【解決手段】歩行型作業車のハンドル支柱部に、支柱固定具14と、ハンドル支柱摺動部15と、回動機構となる回動可能な回動ヒンジ18と、折り畳み機構となる折り畳み可能な折り畳みヒンジ21と、を設け、ハンドル支柱11を折り畳む際、ハンドル支柱長軸線上で180度回動させた後、機体前方に回動させ固定することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機等の歩行型作業車におけるハンドル折り畳み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型作業車の運搬、格納等を簡易に行うことができるようにするため、歩行型作業車の機体後上方に向かって突出するハンドル支柱を、該支柱の中途部で前方に折り畳み可能にする構造は公知となっている(例えば特許文献1参照)。また、ハンドル支柱を折り畳んだ状態で機体を運搬する際に把持可能な補助ハンドルを設けた歩行型作業車が公知となっている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−82674号公報
【特許文献2】特開2004−97151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された歩行型作業車は、ハンドル支柱は機体後上方に向かって突出され、その把持部は握りやすいようにハンドル支柱の後部から機体後方に向かって曲折されている。このためハンドル支柱を前方に折り畳むと、該把持部が機体から上方に突出した状態となり、運搬、格納時に何かに接触したり、誤って引っ掛かったりする恐れがある。また、特許文献2に記載された歩行型作業車は、ハンドル支柱を折り畳んだ状態で運搬する際に把持可能な補助ハンドルを具備している。そのため、部品点数が増加し、構造が複雑化するという欠点がある。また、ハンドルを作業位置と折り畳み位置で固定するにはボルトを締め付ける等の操作が必要で煩雑であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ハンドル支柱後部の左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業車において、左右把持部をハンドル支柱の長軸線上で180度回動可能にする回動機構と、該ハンドル支柱の中途部で前方に折り畳み可能にする折り畳み機構と、作業状態と折り畳み状態に固定解除自在に構成する固定解除機構とを具備するものである。
【0006】
請求項2においては、前記ハンドル支柱を、ハンドル支柱基部と、該ハンドル支柱基部の後部で回動と折り畳みが可能に連結されたハンドル支柱回動部と、該ハンドル支柱基部と該ハンドル支柱回動部とに亘って摺動可能に構成されたハンドル支柱摺動部と、で構成したものである。
【0007】
請求項3においては、前記回動機構となる回動可能な回動ヒンジと、前記折り畳み機構となる折り畳み可能な折り畳みヒンジとを具備するハンドル曲折部を、前記ハンドル支柱の中途部に設けたものである。
【0008】
請求項4においては、上記ハンドル支柱回動部を前方に折り畳んだ状態において、該支柱回動部を水平に固定可能であるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1又は請求項2又は請求項3の如く構成することで、ハンドル支柱回動部をハンドル支柱の長軸線上で180度回動したのちに前方へ折り畳むことが可能となり、その状態において、ハンドル支柱の把持部は下方に曲折することになる。これにより、該把持部が機体上方へ突出することがなくなり、運搬や格納時に該把持部が何かに接触したり誤って引っ掛かることが無くなる。
【0011】
また、請求項4の如く構成することで、折り畳んだ状態で固定されたハンドル支柱回動部を持つことができ、運搬する際に把持可能な補助ハンドルを別途具備する必要が無くなる。これにより部品点数を減少させ、構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1、図2及び図3を用いて、本発明に係る歩行型作業機の一例である管理機の全体構成について説明する。
管理機1はエンジン台2上の前部(図中矢印方向Aを前方として、前後左右を規定する)にエンジンEを搭載し、該エンジンEの上部に燃料タンク3が載置されている。また、エンジンEの左右一側にはエンジンEを始動するためのリコイルスタータ4が具備されている。該リコイルスタータ4の後部にはキャブレター5を配設し、他側の側部にはマフラー6とエンジンEから動力を出力する出力軸10を突出し、該出力軸10より伝動ケース7内のVベルト(図示せず)を介してミッションケース8に動力を伝動して、後述する車軸42及び耕耘爪40を駆動する構造となっている。
【0014】
また、エンジン台2の下方に前記ミッションケース8を突設し、該ミッションケース8の下端に車軸42を軸支し、該車軸42の軸上に複数本の耕耘爪40・40・・・が植設されている。そして、前記車軸42の両端部には、ゲージホイール9が固設されている。また、前記耕耘爪40・40・・・の回動軌跡上方は、平面視略U字状である耕耘カバー41により覆われ、該耕耘カバー41は前記エンジン台2の周囲に取り付けられ、耕耘した土を巻き上げないようにしている。
【0015】
そして、図2及び図3に示すようにエンジン台2上に載置しているエンジンE、燃料タンク3、リコイルスタータ4、キャブレター5、マフラー6及び伝動ケース7等は、ボンネット45により覆われており、内部を保護して埃等の侵入もできるだけ防ぎ、騒音も小さくなるようにしている。
【0016】
また、ミッションケース8の中途部近傍からハンドル支柱11が斜め後方に延出されており、該ハンドル支柱11上端より斜め後方に平面視V字状であるハンドル30が延設されている。また、ハンドル30の後部には把持部であるグリップ31・31が設けられており、該グリップ31・31の一方(本実施例では、左側)の下方には、クラッチレバー32が配設されている。また、前記ハンドル支柱11の中途部には、抵抗棒43を前後方向に回動可能に枢支している。
【0017】
前記クラッチレバー32は、図示せぬクラッチワイヤーを介して伝導ケース7内のテンションアーム(図示せず)と連結されている。これにより、クラッチレバー32の「入」「切」操作でベルトテンションクラッチ(図示せず)がON・OFFされ、エンジンEからの動力をミッションケース8へ伝達したり、切断したりできるようにしている。
【0018】
次に、図4及び図5を用いて、本発明に係る歩行型作業機のハンドル支柱の構成について説明する。
【0019】
左右に把持部(グリップ)31を備えたハンドル30を有する歩行型作業車において、左右把持部31をハンドル支柱11の長軸線上で180度回動可能にする回動機構と、該支柱を中途部で前方に折り畳み可能にする折り畳み機構と、作業状態と折り畳み状態において該支柱を固定解除自在に構成する固定解除機構とを具備している。
つまり、図4に示すように、ハンドル支柱11は、主としてハンドル支柱基部12と、ハンドル支柱折曲部20と、ハンドル支柱回動部19と、ハンドル支柱摺動部15等を備えている。
【0020】
ハンドル支柱基部12の前端はミッションケース8に固設される。ハンドル支柱折曲部20は折り畳み機構となる折り畳みヒンジ21を具備し、ハンドル支柱基部12に対してハンドル支柱回動部19は折り畳みヒンジ21を介して前方へ折り畳み可能に枢設されている。つまり、折り畳みヒンジ21は左右方向の回転軸を備えて、ハンドル支柱回動部19を前方に回動可能としている。
【0021】
ハンドル支柱回動部19はその前端部に回動機構となる回動ヒンジ18を具備する。該回動ヒンジ18は、ハンドル支柱11の長軸線上で該長軸と直交する方向に回動可能な部材である。ハンドル支柱回動部19は、ハンドル支柱折曲部20を介してハンドル支柱基部12に枢設されており、ハンドル支柱回動部19はハンドル支柱11の長軸線上で回動可能である。つまり、ハンドル支柱回動部19は、回動ヒンジ18により、ハンドル支柱基部12(折り畳みヒンジ21)に対してハンドル支柱11の長軸線上で回動可能としている。
【0022】
固定解除機構はハンドル支柱摺動部15と、突起部材13・16に設ける孔13a・16aと、支柱固定具14等を備える。該ハンドル支柱摺動部15は中空の部材であり、その内周面は、ハンドル支柱基部12と、ハンドル支柱折曲部20と、ハンドル支柱回動部19と、の外周面に摺接されている。つまり、ハンドル支柱摺動部15の内周形状は、ハンドル支柱基部12の後部12aとハンドル支柱折曲部20とハンドル支柱回動部19のそれぞれの外周形状に合わせた形状として軸心方向に摺動可能に外嵌している。また、ハンドル支柱摺動部15は、ハンドル支柱基部12の後部からハンドル支柱回動部19の前部に亘るだけの十分な長軸方向長さを有している。
【0023】
図4及び図5に示すように、ハンドル支柱基部12の後部12aの前部において、ハンドル支柱基部12の後下面には、板状の側面視略三角形状の突起部材13が一体的に設けられて下方に突出され、該突起部材13の中央部に開口された孔13aには、略コ字状に棒材を折り曲げて形成した支柱固定具14の一端部14bが枢設され、一端部14bの先端に抜け止め14cが形成されている。また、突起部材13と同一形状の突起部材16がハンドル支柱摺動部15の後下面にも一体的に設けられて下方に突出され、突起部材16の中央部には、孔13aと同様の大きさの孔16aが開口されている。
【0024】
なお、本発明の実施の一形態として、ハンドル支柱回動部19側に回動ヒンジ18を設けたが、ハンドル支柱折曲部20側に設けることも可能である。また、支柱固定具14は棒材で構成したが、プレートが構成し、突起部材13・16にピンを側方に突設する構成とすることも可能であり、支柱固定具14は突起部材16に係止する構成であってもよく、本発明は本実施例のものには限定されず、支柱固定具14によりハンドル支柱摺動部15の摺動と回動が制止される構成であれば良い。
【0025】
次に、以上のように構成されるハンドル支柱部の回動機構と折り畳み機構と固定解除機構について説明する。
【0026】
図1や図6(a)に示すように、管理機による農作業等の時には、ハンドル支柱摺動部15は、ハンドル支柱摺動部15の前部15aがハンドル支柱基部12の後部12aに嵌合する位置にあり、支柱固定具14の一端部14aを突起部材16に空けられた孔16aに挿通することでその位置に固定される。
【0027】
この時、ハンドル支柱摺動部15はハンドル支柱基部12とハンドル支柱回動部19に跨がって嵌合し、支柱固定具14により同一軸線上に固定される。そのため、回動ヒンジ18と折り畳みヒンジ21の回動は制止され、作業時に誤ってハンドル支柱11が回動することは無い。なお、回動ヒンジ18で回動できないように、ハンドル支柱摺動部15とハンドル支柱基部12の後部12aとハンドル支柱回動部19は多角形(五角形)のパイプで形成している。
【0028】
図6(b)に示すように、ハンドル支柱11を折り畳む場合、まず支柱固定具14の一端部14aを孔16aから抜脱する。これにより、ハンドル支柱摺動部15は摺動可能となるので、摺動部15をハンドル側に向かって摺動させる。ハンドル支柱摺動部15をハンドル支柱折曲部20に摺接しない位置までハンドル側に摺動させた時点で、回動ヒンジ18は回動可能となる。
【0029】
図4及び図6(b)に示すように、この位置で、ハンドル支柱摺動部15の上面に当接するストッパー17を、ハンドル支柱回動部19に設ける。これによって、ハンドル支柱摺動部15の摺動範囲を規制し、操作性を向上させることができる。
【0030】
この状態で、図6(c)に示すように、回動ヒンジ18によりハンドル支柱摺動部15及びハンドル支柱回動部19をハンドル支柱長軸線上で180度回転させる。
【0031】
なお、本実施例では、クラッチワイヤーや配線等がハンドル支柱11内を通る事を想定しているため、例えばハンドル支柱長軸線上での回動範囲を図6(b)に示す状態から左右180度以内に規制し、回動により前記ワイヤー等が損傷するのを防止するのが好ましい。
【0032】
次に、図6(d)に示すように、折り畳みヒンジ21の回転軸を中心にハンドル支柱回動部19を機体前方に向かって回動させる。この時、突起部材16の後下斜面16bとハンドル支柱基部12の前面12bとが当接する位置で回動は制止される。ハンドル支柱部は、この位置でハンドル支柱回動部19が略水平となり、この位置で支柱固定具14の一端部14aを突起部材16に開口された孔16aに挿通し、ハンドル支柱11を折り畳んだ状態で固定することができる。つまり、この折り畳んだ状態で、突起部材16に開口された孔16aと孔13aの間の距離は、支柱固定具14の一端部14aと他端部14bの間の距離と等しく、また、ハンドル支柱基部12とハンドル支柱回動部19を一直線上に伸ばした前記作業状態〔図6(a)〕における孔16aと孔13aの間の距離と等しくなるように構成されている。
【0033】
ハンドル支柱11を伸ばす手順は、上記手順の逆となる。
以上のように、ハンドル支柱11を作業位置と収納位置に回動して固定するときに、同じ孔16aと13aと支柱固定具14を使用して、ボルト等の締め付け操作することなく、支柱固定具14の抜き挿し操作だけで容易に固定することができる。
【0034】
なお、図5に示すように、本発明の実施の一形態であるハンドル支柱部の構成においては、支柱固定具14の一端部14bの長さを、他端14aの長さよりも長くし、一端部14bの先端付近に抜け止め14cを設けた。これにより、支柱固定具14を左右一側方(本実施例では左側)へ引き出すことで、一端部14aを他の部材に引っ掛けること無く、支柱固定具14は一端部14bを軸として360度回動可能となる(図5に示す二点鎖線位置)。これにより、支柱固定具14の一端部14bを孔13aに挿通したままで、ハンドル支柱摺動部15の固定解除操作が可能となり、紛失防止効果がある。
【0035】
また、図7に示すように、ハンドル支柱部を折り畳む際にハンドル支柱回動部19をハンドル支柱長軸線上で180度回転させたことにより、ハンドル30、グリップ31、クラッチレバー32が機体下方に向かって曲折する形状となる。これにより、機体から上方に突出する部分が無くなるため、管理機1の運搬や格納時に何かに接触したり、誤って引っ掛かったりする恐れが無くなる。
【0036】
また、折り畳みヒンジ21の地上からの高さH1は、本体、本実施例ではエンジンEを覆うボンネット45の最上部の高さH2よりも高くなる(H1>H2)ように構成しているので、ハンドル支柱11を固定するときには、ボンネット45よりも高い位置で水平に固定することができる。よって、運搬時にはハンドル支柱回動部19を容易に把持し、管理機1を持ち上げることができる。これにより、ハンドル支柱を折り畳んだ状態で運搬する際に把持可能な補助ハンドルを別途設ける必要が無くなるため、部品点数を削減し、構造を簡略化させることが可能となる。
【0037】
さらに、ハンドル支柱11が水平に固定され、ハンドル30、グリップ31、クラッチレバー32が機体下方に向かって曲折することで、外観上のまとまりが良くなり、コンパクトとなり、ハンドル支柱部を折り畳んだ状態での管理機1の意匠性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】管理機を示す全体側面図。
【図2】エンジン周辺部及び動力伝達部の配置構成を示す側面概略図。
【図3】管理機を示す全体平面図。
【図4】管理機のハンドル支柱部を示す側面図。
【図5】同じく背面図。
【図6】(a)管理機のハンドル支柱部を伸ばして固定した様子を示す側面図、(b)管理機のハンドル支柱部の固定を解除した様子を示す側面図、(c)管理機のハンドル支柱部が回動した様子を示す側面図、(d)管理機のハンドル支柱部を折り畳んで固定した様子を示す側面図。
【図7】ハンドル支柱を折り畳んだ状態の管理機を示す側面図。
【符号の説明】
【0039】
1 管理機
11 ハンドル支柱(ハンドル支柱)
12 ハンドル支柱基部
14 支柱固定具
15 ハンドル支柱摺動部
17 ストッパー
18 回動ヒンジ
19 ハンドル支柱回動部
20 ハンドル支柱折曲部
21 折り畳みヒンジ
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル支柱後部の左右に把持部を備えたハンドルを有する歩行型作業車において、左右把持部をハンドル支柱の長軸線上で180度回動可能にする回動機構と、該ハンドル支柱の中途部で前方に折り畳み可能にする折り畳み機構と、作業状態と折り畳み状態に固定解除自在に構成する固定解除機構とを具備することを特徴とする歩行型作業車。
【請求項2】
前記ハンドル支柱を、ハンドル支柱基部と、該ハンドル支柱基部の後部で回動と折り畳みが可能に連結されたハンドル支柱回動部と、該ハンドル支柱基部と該ハンドル支柱回動部とに亘って摺動可能に構成されたハンドル支柱摺動部と、で構成したことを特徴とする請求項1に記載の歩行型作業車。
【請求項3】
前記回動機構となる回動可能な回動ヒンジと、前記折り畳み機構となる折り畳み可能な折り畳みヒンジとを具備するハンドル曲折部を、前記ハンドル支柱の中途部に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行型作業車。
【請求項4】
上記ハンドル支柱回動部を前方に折り畳んだ状態において、該支柱回動部を水平に固定可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の歩行型作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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