歩行補助車
【課題】本発明は、一工程で容易かつ迅速に楽な姿勢で折り畳むことができ、しかも折り畳み状態で自立する歩行補助車を提供することを課題とする。
【解決手段】ハンドル杆32の支持基材37に配置された把持体38を該支持基材37ごと使用者が握持し、かつそのまま該支持基材37を持ち上げるようにして引き上げると、該把持体38が握持位置となると共に、該把持体38に接続されたワイヤー60を介して座部5裏面に配置された係合部本体61が後方寄りの解除位置となって該係合部本体61と左右一対の後脚部41の上端に差し渡された係合杆45との係合が解除され、さらに、ねじりコイルバネ44の付勢に従って前脚部31及び後脚部41が閉じる方向に相互回動して前輪7Aと後輪7Bとが接近すると共に、該座部5が跳ね上げられ、折り畳み状態が得られる。
【解決手段】ハンドル杆32の支持基材37に配置された把持体38を該支持基材37ごと使用者が握持し、かつそのまま該支持基材37を持ち上げるようにして引き上げると、該把持体38が握持位置となると共に、該把持体38に接続されたワイヤー60を介して座部5裏面に配置された係合部本体61が後方寄りの解除位置となって該係合部本体61と左右一対の後脚部41の上端に差し渡された係合杆45との係合が解除され、さらに、ねじりコイルバネ44の付勢に従って前脚部31及び後脚部41が閉じる方向に相互回動して前輪7Aと後輪7Bとが接近すると共に、該座部5が跳ね上げられ、折り畳み状態が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や身障者など足腰の弱い人が使用する歩行補助車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記歩行補助車は、車輪が取り付けられた脚部と、該脚部によって支持される座部と、該脚部から上方に延設されてなるハンドル部とを備えていることが一般的である。そして、使用者は該ハンドル部に掴まって歩行したり、該座部に腰を下ろして休憩したりして使用する。また、収納時や自動車に乗せる際などの運搬時にコンパクトとなるよう折り畳み可能としたものもある。
折り畳み可能とした歩行補助車としては、例えば、折り畳む際にストッパを内側に移動させ、折り畳み起動部材を前方へ回動させてから折り畳み起動部材を下方へ移動する構成が既に開示されている(特許文献1参照)。
また、操作部を前方に倒し、手もたれ若しくは座部の先端部をハンドル側に近接させて折り畳み状態が得られる構成も開示されている(特許文献2参照)。
さらに、座枠下のレバーを前方に引き座枠を跳ね上げる構造を有し、座枠のロック解除と折り畳みが連続している構成も開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−112301号公報
【特許文献2】特開2009−269495号公報
【特許文献3】特開2007−275417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の歩行補助車は、折り畳み作業の際に操作性が悪いという問題がある。例えば、特許文献1の構成は、ストッパを内側に移動させる工程と、折り畳み起動部材を前方へ回動させてから下方へ移動させる工程とを要する。また、特許文献2の構成は、操作部を前方に倒す工程と、手もたれ若しくは座部の先端部をハンドル側に近接させる工程とを要する。すなわち、いずれの構成とも、折り畳み時に少なくとも二工程を要するため、操作が煩雑で面倒である。
また、特許文献3の構成は、折り畳む際に使用者が屈んだ姿勢で操作しなければならず、高齢者や身障者は大変な苦痛を伴う。
【0005】
そこで、本発明は、一工程で容易かつ迅速に折り畳むことができ、しかも楽な姿勢で折り畳め、さらには折り畳み状態で自立する歩行補助車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、前輪が取り付けられた左右一対の前脚部と、後輪が取り付けられた左右一対の後脚部とが交差し、かつ該前脚部及び該後脚部が前後方向に相互回動可能に結合され、該前脚部及び該後脚部が閉じる方向に相互回動すると該前脚部及び該後脚部と連動して、該前脚部及び該後脚部に回動可能に取り付けられている座部が跳ね上げられる折り畳み可能な歩行補助車であって、該前脚部及び該後脚部を閉じる方向に付勢する付勢手段と、該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部を相互回動不能とするロック手段と、該ロック手段から離開した位置に設けられており、該ロック手段によって該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となっているロック状態を遠隔操作で解除するロック解除手段と、を備えたことを特徴とする歩行補助車である。
【0007】
上記構成にあって、該歩行補助車の使用状態とは、該座部の上面が略水平となって着座可能である状態をいう。一方、該歩行補助車の折り畳み状態とは、前脚部及び後脚部が閉じる方向に相互回動して前輪及び後輪が接近した状態をいう。そして、該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となったロック状態では、該座部が後脚部及び前脚部に対して回動しないから、歩行中あるいは着座中に座部が跳ね上がったり歩行補助車が不意に折り畳まれたりすることがなく安全である。また、該ロック状態は、ロック解除手段により遠隔操作で解除でき、該ロック状態が解除されると直ちに上記付勢手段に従って前脚部及び後脚部が閉じる方向に相互回動して座部が跳ね上げられ折り畳み状態となる。このため、該歩行補助車は一工程(ワンタッチ)で瞬時に折り畳み作業が完了する。
【0008】
上記ロック手段は、上記ロック手段は、上記座部裏に配置され、上記ロック解除手段は、上記前脚部から上方に向けて延設されたハンドル杆に配置され、かつ上記ロック手段とワイヤーを介して連繋していることが望ましい。
【0009】
上記構成は、座部裏にロック手段が配置されているため該ロック手段が目立たず、外観上見栄えが良いという利点がある。また、上記ロック解除手段と上記ロック手段とを連繋する手段としてワイヤーを用いたため、遠隔操作でロック解除するための機構が簡易な構造となっている。さらに、該ロック解除手段はハンドル杆に配置されているため、ロック解除時に使用者は腰を曲げて屈む必要がない。このため、例えば道路に段差があったときや、バスなどの交通機関を利用するときにも手間取らずに折り畳み作業を行える。
【0010】
また、上記付勢手段は、上記前脚部と上記後脚部との間に架設されたコイルバネであることが望ましい。
【0011】
上記構成とすると、付勢手段はコンパクトなものとなり、かつ大きな付勢力が得られる。
【0012】
さらに、上記ロック手段は、上記座部の裏面に配設された支持体と、該支持体に位置変換可能に支持されている係合部本体と、上記左右一対の後脚部の上端部間に差し渡された係合杆と、からなり、該係合部本体は、該係合杆と係合する係合位置と、該係合杆から離開して該係合杆との係合が解除される解除位置と、の間で位置変換可能とされていると共に、上記ロック解除手段は、上記左右一対のハンドル杆間に差し渡された支持基材と、該支持基材に位置変換可能に支持され、かつ上記係合部本体と上記ワイヤーを介して接続されている把持体と、からなり、該把持体は、使用者によって握持されていない時の非握持位置と、使用者により該支持基材ごと握持された時の握持位置と、の間で位置変換可能とされており、該座部の上面が略水平となる該歩行補助車の使用状態にあっては、上記把持体が非握持位置であり、かつ上記係合部本体が係合位置で前脚部及び後脚部は相互回動不能となり、一方、該把持体が握持位置となると、上記ワイヤーを介して該係合部本体が連動し、該係合部本体が解除位置となり、使用者が、該歩行補助車が使用状態にある場合に上記把持体を握持しながら上記支持基材を上方に引き上げると、該把持体が握持位置となることにより上記係合部本体は解除位置となって上記付勢手段によって付勢された上記前脚部及び上記後脚部が閉じる方向に相互回動して上記前輪と上記後輪とが接近し、かつ上記座部が跳ね上げられて、折り畳み状態となる構成が望ましい。
【0013】
上記構成において、該歩行補助車を折り畳む場合は、片手で上記把持体を支持基材ごと握ってそのまま上方に引き上げる。そうすると、該係合部本体と該係合杆との係合は解除されると共に、前輪及び後輪と接地面との摩擦抵抗がなくなって上記付勢手段の付勢力によって前脚部と後脚部とが閉じる方向に相互回動し、さらに該前脚部及び該後脚部の相互回動に連動して該座部が跳ね上げられ、瞬時に折り畳み状態が得られる。このように、該歩行補助車を使用状態から折り畳み状態にするには、上記把持体を握りそのままこれを持ち上げるように引き上げるだけでよいため、一工程(ワンタッチ)で折り畳み作業が完了する。しかも該把持体及び該支持基材はハンドル杆に配置されて握りやすい高さ位置にあり、また、片手で操作できるので、もう片方の手は手すりなどに掴まることができ、使用者の転倒事故防止にもなる。なお、該歩行補助車が折り畳まれた際には、前輪と後輪とが前後方向に間隔をおいて並ぶように配置されるため、該歩行補助車を折り畳み状態のままで自立させることができ、収納時に大変便利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歩行補助車は、一工程で容易かつ迅速に、かつ楽な姿勢で折り畳むことができ、しかも折り畳み状態で自立するため、取り扱いが極めて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1〜図8は本発明の第一実施例の図、図9〜図11は本発明の第二実施例の図である。
【図1】使用状態の歩行補助車を示す外観斜視図
【図2】折り畳み状態の歩行補助車を示す外観斜視図
【図3】図2の部分拡大図
【図4】a)は把持体の表面を示す外観斜視図、b)は把持体の裏面を示す外観斜視図
【図5】支持基材における把持体の取り付け位置を示す部分分解斜視図
【図6】a)は非握持位置にある把持体を示す縦断面図、b)は握持位置にある把持体を示す縦断面図
【図7】係合部本体と支持体とを示す分解斜視図
【図8】a)は係合位置にある係合部本体を示す縦断面図、b)は解除位置にある係合部本体を示す縦断面図
【図9】a)は非握持位置にある把持体を示す部分斜視図、b)は握持位置にある把持体を示す部分斜視図
【図10】係合部本体と支持体とを示す分解斜視図
【図11】a)は係合位置にある係合部本体を示す縦断面図、b)は解除位置にある係合部本体を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一実施例>
以下、本発明の第一実施例を、添付図面に従って説明する。
本発明の折り畳み可能な歩行補助車1は、図1に示すように、金属製パイプからなるフレーム2を有し、さらに該フレーム2は、主フレーム3と副フレーム4とを具備している。
【0017】
上記主フレーム3は、前輪7A,7Aが左右首振り可能に取り付けられた左右一対の前脚部31,31と、該左右一対の前脚部31,31の上端部から上方へ延設された左右一対のハンドル杆32,32と、を備え、各ハンドル杆32の上端間にはハンドル33が差し渡されている。また、各前輪7Aには、公知の旋回ロック機構17がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
上記副フレーム4は、後輪7B,7Bがそれぞれ取り付けられた左右一対の後脚部41,41を有している。該後脚部41,41は、それぞれ上向き斜め前方に向くように配置されており、上記前脚部31,31と交差し、かつこの交差部分に設定された回動部35を介してそれぞれ相互回動可能に結合されている。
【0019】
また、左右一対のハンドル杆32,32の各上端部であって上記ハンドル33の前方位置にはブレーキハンドル34が前後動可能に取り付けられている。そして、該ブレーキハンドル34の両端に接続されたブレーキワイヤー18,18が上記後輪7B,7Bに当接する左右一対のブレーキ19,19に接続されている。そして、ブレーキハンドル34を手前に引くと、ブレーキ19,19が後輪7Bの外周面に当接し、該後輪7Bの転がりが阻止されてブレーキがかかる。
【0020】
また、図1,2に示すように、上記左右一対の前脚部31,31間には、上記回動部35より上側の位置に設定された枢着部36を介して座部5が回動自在に取り付けられている。さらに、図2,3に示すように、左右一対の後脚部41,41間において上記回動部35,35より上側の位置に差し渡された横杆42には、リンク部材43の一端が回動自在に取り付けられ、該リンク部材43の他端が上記座部5の後端部に回動自在に取り付けられている。
かかる構成にあって、該前脚部31と該後脚部41とが上記回動部35を中心にして相互回動すると、これに連動して該座部5も跳ね上がる方向又はこれと逆の下方に倒れる方向に回動する。例えば、前脚部31及び後脚部41が閉じる方向に相互回動すると座部5が跳ね上げられる。
【0021】
また、該前脚部31と、該後脚部41の横杆42と、の間には、ねじりコイルバネ(付勢手段)44が架設されており、該ねじりコイルバネ44によって該前脚部31と該後脚部41とが閉じる方向に常時付勢されている。このため、上記座部5が、該座部5の前端が上方へ回動する方向(すなわち座部5が跳ね上がる方向)へ常時付勢されている。
【0022】
次に、ロック解除手段21について説明する。
図1〜3に示すように、左右一対のハンドル杆32,32の上端部間であって上記ハンドル33の下方位置には、支持基材37が水平に差し渡されている。該支持基材37は、使用者が握りやすい外形・寸法からなる筒部材で構成されており(図6参照)、該支持基材37の前面部中央には使用者が握持することとなる把持体38が回動自在に取り付けられている。
【0023】
上記把持体38は、図4(a),(b)に示すように、少なくとも使用者の手のひら程度の大きさの横長板部材からなり、上縁部の左右両端から回動軸38A,38Aがそれぞれ外向きに差し出されている。また、該把持体38の略中央には該把持体38の板厚方向に貫通したワイヤー用挿通孔71が設けられている。さらに、該把持体38の上端部には、該把持体38の回動角度範囲を規制するための規制凸部40Aが設けられている。
【0024】
一方、図5に示すように、上記支持基材37の前面部には、上記把持体38が収容可能な大きさの収容凹部37Aが設けられており、該収容凹部37A内における左右両端部には軸受け凹部39A,39Aがそれぞれ設けられている。また、該収容凹部37Aの底部中央には、ワイヤー用挿通孔37Bと、上記把持体38の規制凸部40Aと当接する規制凸部40Bとが配設されている。
【0025】
そして、図5,図6に示すように、該把持体38の回動軸38A,38Aが上記収容凹部37Aの軸受け凹部39A,39Aで軸受けされるように、該把持体38が該収容凹部37A内に配置されると共に、該回動軸38Aを覆うように軸留め部材39B,39Bが該軸受け凹部39A,39A内にビス止めされることによって、該把持体38が該支持基材37に対して回動自在に支持されている。
【0026】
また、図6に示すように、該把持体38には、公知のワイヤー60が接続されている。具体的には、該ワイヤー60は、ワイヤー本体60Aと該ワイヤー本体60Aを被覆するカバー体60Bとで構成され、該ワイヤー本体60Aの一端が該把持体38のワイヤー用挿通孔71と、該支持基材37のワイヤー用挿通孔37Bとに挿通されて該把持体38に接続されている。
【0027】
上記構成にあって、上記把持体38が使用者によって支持基材37ごと握持されていない場合は、後述する圧縮バネ75の付勢力によってワイヤー本体60Aが引っ張られており、また図6(a)に示すように、上記規制凸部40Aと上記規制凸部40Bとが当接し、該把持体38の下部がやや前方に突き出された非握持位置となる。一方、該把持体38が使用者によって該支持基材37ごと下から握持された場合は、図6(b)に示すように、該把持体38が回動軸38Aを中心にして下向きに回動し、該把持体38が上記支持基材37の収容凹部37A内に収まる握持位置となる。
なお、該把持体38が非握持位置から握持位置に位置変換すると上記ワイヤー60が該把持体38寄りに引き込まれることとなる。
【0028】
次に、ロック手段20について説明する。
図2,3に示すように、上記座部5の裏面には、上記把持体38と上記ワイヤー60を介して接続された係合部本体61と、該係合部本体61を支持する支持体62と、が配設されている。
【0029】
上記係合部本体61は、図7に示すように、ブロック体からなり、該係合部本体61の前端部には、係合凹面61Aが形成されている。該係合凹面61Aの形状は、左右一対の後脚部41,41間に差し渡された係合杆45(図2参照)の外形に対応した形状となっている。また、該係合部本体61において該係合凹面61Aの上部には、回動軸63が該係合部本体61の巾方向に沿って形成されている。また、該係合部本体61の上面には、圧縮バネ75(図8参照)が縦向きで挿入される圧縮バネ用凹部64が形成され、また該係合部本体61の後端部には上記ワイヤー60の他端が接続されるワイヤー固定部65が設けられている。
【0030】
一方、上記支持体62は、図7に示すように、前端部に開口部62Aが形成された箱型部材からなり、該支持体62の上縁部であって上記開口部62Aに臨む位置には、左右一対の軸受け凹部66,66が設けられている。また、該支持体62の後端部には、上記ワイヤー60が挿入されるワイヤー用挿入スリット62Bが形成されている。
【0031】
さらに、図8に示すように、上記座部5の裏面には、上記支持体62が取り付けられる取付凹部52が形成されている。さらに、該取付凹部52内には、上記係合部本体61に取り付けられた縦向きの圧縮バネ75の上端部が挿入される圧縮バネ用凹部54と、該係合部本体61の回動軸63が配置される軸受け凹部53とが形成されている。
【0032】
そして、図8に示すように、該係合部本体61の回動軸63が該支持体62の軸受け凹部66,66で軸受けされるように、該係合部本体61が該支持体62内に配置されると共に、該支持体62が上記座部5の取付凹部52内にビス止めされることによって、該係合部本体61と該支持体62とが該座部5に取り付けられている。かかる取り付け状態にあっては、該係合部本体61は、支持体62の開口部62Aから露出し、かつ回動軸63を中心にして回動自在に支持され、さらに上記圧縮バネ75によって前方に向けて常時付勢されている。
【0033】
また、該係合部本体61のワイヤー固定部65には、上記ワイヤー60におけるワイヤー本体60Aの他端が、支持体62のワイヤー用挿入スリット62Bを介して接続されている。
【0034】
上記構成にあって、上記把持体38が非握持位置と握持位置との間で位置変換すると、該把持体38の回動に連動して、上記係合部本体61が回動軸63を中心にして前後に回動する。具体的には、該把持体38が非握持位置にある場合、該係合部本体61は前方寄りに位置し(図8(a)参照)、一方、該把持体38が握持位置となると、上記圧縮バネ75の付勢力に抗して該係合部本体61は後方寄りに位置変換する(図8(b)参照)。
【0035】
さらに、上記係合部本体61と、上記係合杆45との係合・解除、及び該係合・解除に伴う座部5の跳ね上がり動作について、図8に従って詳述する。
【0036】
上記座部5の上面が略水平となる該歩行補助車1の使用状態にあっては、上記把持体38は非握持位置(図6(a)参照)にあり、かつ上記係合部本体61は前方寄りに位置(以下、係合位置という。)し、該係合部本体61の係合凹面61Aが上記係合杆45の側面に当接することにより該係合部本体61と該係合杆45とが係合している。また、該係合杆45は、座部5の裏面に左右方向に沿って形成されたガイド溝51内に配置される。
かかる状態では該後脚部41及び該前脚部31は展開状態において相互回動不能となってロック状態となる。このため、該座部5は後脚部41及び前脚部31に対して回動することはなく、歩行中あるいは着座中に座部5が跳ね上がったり歩行補助車1が不意に折り畳まれたりすることがなく安全である。
【0037】
これに対し、該把持体38が使用者によって下から該支持基材37ごと握持され、かつ使用者がそのまま該把持体38を支持基材37と共に持ち上げるようにして引き上げると、該把持体38が握持位置(図6(b)参照)となると共に、上記ワイヤー60を介して上記係合部本体61が後方寄りに位置(以下、解除位置という。)して、該係合部本体61が該係合杆45から離開して該係合部本体61と該係合杆45との係合が解除される。そうすると、上記ねじりコイルバネ44の付勢力に従って上記前脚部31及び上記後脚部41が閉じる方向に相互回動し、上記前輪7Aと上記後輪7Bとが接近する。さらに、該前脚部31及び該後脚部41の相互回動に連動して座部5が跳ね上げられ、図2に示すように前輪7Aと後輪7Bとが接近した折り畳み状態が得られる。このように、該歩行補助車1を使用状態から折り畳み状態にするには、上記把持体38を握りそのままこれを持ち上げるように引き上げるだけでよいため、屈むことなくかつ上記支持基材37を持ち替えることなく一工程(ワンタッチ)で瞬時に折り畳み作業が完了する。
【0038】
なお、該歩行補助車1が折り畳まれた際には、前輪7Aと後輪7Bとが前後方向に間隔をおいて並ぶように配置されるため、該歩行補助車1を折り畳み状態のままで自立させることができる。また、使用者が上記把持体38及び支持基材37から手を離すと、把持体38は非握持位置に復帰する。
【0039】
折り畳み状態の該歩行補助車1を使用状態にする場合は、片手でハンドル33を持ち、他方の手で座部5を下向きに回動させて上から該座部5を押さえつけると、上記係合部本体61と係合杆45とが係合状態となる。仮に片手のみしか使えない状況のときは、上記ハンドル33を持ちつつ該歩行補助車1を後傾させて前輪7Aを浮かし、該ハンドル33を押さえつけて前脚部31、後脚部41及び座部5を回動させることにより使用状態とする。
【0040】
上記歩行補助車1にあって、把持体38と係合部本体61とを繋ぐワイヤー60には、該ワイヤーの張り具合を調節できる周知の調整具80が取り付けられている。したがって、該ワイヤー60の張り具合を調節することにより、使用者の握力に応じて該把持体38の操作性を調節することができる。なお、図6に示す把持体38は、上端部に回動軸が設定されている構成であるが、下端部に回動軸が設定された上下逆向きの構成としてもよい。
【0041】
<第二実施例>
図9,10に従って第二実施例を説明する。ただし、第一実施例と共通する点については、説明を簡略または省略する。
【0042】
図9に示すように、第二実施例における歩行補助車1の支持基材37の下端部には、上下動可能に把持体90が取り付けられている。該把持体90は、支持基材37に対して上下動する左右一対のスライド柱部91,91を備え、該スライド柱部91,91の上端間に差し渡された支持板92にワイヤー60の一端が接続されている。
【0043】
そして、図9(a)に示すように、該歩行補助車1の使用状態にあっては、該把持体90が該支持基材37に対して離間した非握持位置にあり、図9(b)に示すように、使用者が下から該支持基材37ごと把持体90を握持すると、該把持体90は該支持基材37の下面に接近する握持位置となる。
【0044】
一方、座部5の裏面には、図10に示すような係合部本体94と支持体95とが配設されている。さらに詳述すると、該係合部本体94は、矩形状の枠部材で構成され、該係合部本体94の前端部には係合上面94Aが形成され、後端部にはワイヤー挿入用スリット94Bが形成されている。
【0045】
また、該支持体95は、箱型部材で構成され、前端部に開口部95Aが形成され、後端部にからワイヤー挿入用スリット95Bが形成されている。
【0046】
そして、図11に示すように、該係合部本体94の係合上面94Aが支持体95の開口部95Aから突き出される位置で、該係合部本体94が該支持体95内に配置されると共に、該係合部本体94の前端部の内壁面と、該支持体95の略中央位置に固定されている留め部材94Cとの間に、圧縮バネ76が前後方向に配置されている。このとき、該係合部本体94は、支持体95に対して前後移動自在に支持されており、かつ圧縮状態で配置された上記圧縮バネ76によって前方に向けて常時付勢されている。
【0047】
上記構成にあって、把持体90が非握持位置にある場合、該係合部本体94は前方寄りに位置し(図11(a)参照)、係合上面94Aが係合杆45の下面に当接して係合杆45に対して係合する係合位置となる。一方、該把持体90が握持位置となると、上記圧縮バネ75の付勢力に抗して該係合部本体94は後方寄りに位置変換し、係合上面94Aが係合杆45と離開する解除位置となる。
【0048】
なお、上記第二実施例の構成は、上記第一実施例に比べて、係合部本体94と係合杆45との係合状態を解除するためのワイヤー60の引き込み量が少なくて済むという利点がある。一方、上記第一実施例は、把持体38が回動して位置変換する構成であるため、てこの原理を利用することができ、該把持体38の操作力が小さくて済むという利点がある。
ただし、本発明は、上記第一実施例、第二実施例に限定されることはなく、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、折り畳み可能な歩行補助車であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 歩行補助車
5 座部
7A 前輪
7B 後輪
20 ロック手段
21 ロック解除手段
31 前脚部
32 ハンドル杆
37 支持基材
38,90 把持体
41 後脚部
44 ねじりコイルバネ(付勢手段)
45 係合杆
60 ワイヤー
61,94 係合部本体
62,95 支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高齢者や身障者など足腰の弱い人が使用する歩行補助車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記歩行補助車は、車輪が取り付けられた脚部と、該脚部によって支持される座部と、該脚部から上方に延設されてなるハンドル部とを備えていることが一般的である。そして、使用者は該ハンドル部に掴まって歩行したり、該座部に腰を下ろして休憩したりして使用する。また、収納時や自動車に乗せる際などの運搬時にコンパクトとなるよう折り畳み可能としたものもある。
折り畳み可能とした歩行補助車としては、例えば、折り畳む際にストッパを内側に移動させ、折り畳み起動部材を前方へ回動させてから折り畳み起動部材を下方へ移動する構成が既に開示されている(特許文献1参照)。
また、操作部を前方に倒し、手もたれ若しくは座部の先端部をハンドル側に近接させて折り畳み状態が得られる構成も開示されている(特許文献2参照)。
さらに、座枠下のレバーを前方に引き座枠を跳ね上げる構造を有し、座枠のロック解除と折り畳みが連続している構成も開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−112301号公報
【特許文献2】特開2009−269495号公報
【特許文献3】特開2007−275417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の歩行補助車は、折り畳み作業の際に操作性が悪いという問題がある。例えば、特許文献1の構成は、ストッパを内側に移動させる工程と、折り畳み起動部材を前方へ回動させてから下方へ移動させる工程とを要する。また、特許文献2の構成は、操作部を前方に倒す工程と、手もたれ若しくは座部の先端部をハンドル側に近接させる工程とを要する。すなわち、いずれの構成とも、折り畳み時に少なくとも二工程を要するため、操作が煩雑で面倒である。
また、特許文献3の構成は、折り畳む際に使用者が屈んだ姿勢で操作しなければならず、高齢者や身障者は大変な苦痛を伴う。
【0005】
そこで、本発明は、一工程で容易かつ迅速に折り畳むことができ、しかも楽な姿勢で折り畳め、さらには折り畳み状態で自立する歩行補助車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、前輪が取り付けられた左右一対の前脚部と、後輪が取り付けられた左右一対の後脚部とが交差し、かつ該前脚部及び該後脚部が前後方向に相互回動可能に結合され、該前脚部及び該後脚部が閉じる方向に相互回動すると該前脚部及び該後脚部と連動して、該前脚部及び該後脚部に回動可能に取り付けられている座部が跳ね上げられる折り畳み可能な歩行補助車であって、該前脚部及び該後脚部を閉じる方向に付勢する付勢手段と、該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部を相互回動不能とするロック手段と、該ロック手段から離開した位置に設けられており、該ロック手段によって該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となっているロック状態を遠隔操作で解除するロック解除手段と、を備えたことを特徴とする歩行補助車である。
【0007】
上記構成にあって、該歩行補助車の使用状態とは、該座部の上面が略水平となって着座可能である状態をいう。一方、該歩行補助車の折り畳み状態とは、前脚部及び後脚部が閉じる方向に相互回動して前輪及び後輪が接近した状態をいう。そして、該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となったロック状態では、該座部が後脚部及び前脚部に対して回動しないから、歩行中あるいは着座中に座部が跳ね上がったり歩行補助車が不意に折り畳まれたりすることがなく安全である。また、該ロック状態は、ロック解除手段により遠隔操作で解除でき、該ロック状態が解除されると直ちに上記付勢手段に従って前脚部及び後脚部が閉じる方向に相互回動して座部が跳ね上げられ折り畳み状態となる。このため、該歩行補助車は一工程(ワンタッチ)で瞬時に折り畳み作業が完了する。
【0008】
上記ロック手段は、上記ロック手段は、上記座部裏に配置され、上記ロック解除手段は、上記前脚部から上方に向けて延設されたハンドル杆に配置され、かつ上記ロック手段とワイヤーを介して連繋していることが望ましい。
【0009】
上記構成は、座部裏にロック手段が配置されているため該ロック手段が目立たず、外観上見栄えが良いという利点がある。また、上記ロック解除手段と上記ロック手段とを連繋する手段としてワイヤーを用いたため、遠隔操作でロック解除するための機構が簡易な構造となっている。さらに、該ロック解除手段はハンドル杆に配置されているため、ロック解除時に使用者は腰を曲げて屈む必要がない。このため、例えば道路に段差があったときや、バスなどの交通機関を利用するときにも手間取らずに折り畳み作業を行える。
【0010】
また、上記付勢手段は、上記前脚部と上記後脚部との間に架設されたコイルバネであることが望ましい。
【0011】
上記構成とすると、付勢手段はコンパクトなものとなり、かつ大きな付勢力が得られる。
【0012】
さらに、上記ロック手段は、上記座部の裏面に配設された支持体と、該支持体に位置変換可能に支持されている係合部本体と、上記左右一対の後脚部の上端部間に差し渡された係合杆と、からなり、該係合部本体は、該係合杆と係合する係合位置と、該係合杆から離開して該係合杆との係合が解除される解除位置と、の間で位置変換可能とされていると共に、上記ロック解除手段は、上記左右一対のハンドル杆間に差し渡された支持基材と、該支持基材に位置変換可能に支持され、かつ上記係合部本体と上記ワイヤーを介して接続されている把持体と、からなり、該把持体は、使用者によって握持されていない時の非握持位置と、使用者により該支持基材ごと握持された時の握持位置と、の間で位置変換可能とされており、該座部の上面が略水平となる該歩行補助車の使用状態にあっては、上記把持体が非握持位置であり、かつ上記係合部本体が係合位置で前脚部及び後脚部は相互回動不能となり、一方、該把持体が握持位置となると、上記ワイヤーを介して該係合部本体が連動し、該係合部本体が解除位置となり、使用者が、該歩行補助車が使用状態にある場合に上記把持体を握持しながら上記支持基材を上方に引き上げると、該把持体が握持位置となることにより上記係合部本体は解除位置となって上記付勢手段によって付勢された上記前脚部及び上記後脚部が閉じる方向に相互回動して上記前輪と上記後輪とが接近し、かつ上記座部が跳ね上げられて、折り畳み状態となる構成が望ましい。
【0013】
上記構成において、該歩行補助車を折り畳む場合は、片手で上記把持体を支持基材ごと握ってそのまま上方に引き上げる。そうすると、該係合部本体と該係合杆との係合は解除されると共に、前輪及び後輪と接地面との摩擦抵抗がなくなって上記付勢手段の付勢力によって前脚部と後脚部とが閉じる方向に相互回動し、さらに該前脚部及び該後脚部の相互回動に連動して該座部が跳ね上げられ、瞬時に折り畳み状態が得られる。このように、該歩行補助車を使用状態から折り畳み状態にするには、上記把持体を握りそのままこれを持ち上げるように引き上げるだけでよいため、一工程(ワンタッチ)で折り畳み作業が完了する。しかも該把持体及び該支持基材はハンドル杆に配置されて握りやすい高さ位置にあり、また、片手で操作できるので、もう片方の手は手すりなどに掴まることができ、使用者の転倒事故防止にもなる。なお、該歩行補助車が折り畳まれた際には、前輪と後輪とが前後方向に間隔をおいて並ぶように配置されるため、該歩行補助車を折り畳み状態のままで自立させることができ、収納時に大変便利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歩行補助車は、一工程で容易かつ迅速に、かつ楽な姿勢で折り畳むことができ、しかも折り畳み状態で自立するため、取り扱いが極めて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1〜図8は本発明の第一実施例の図、図9〜図11は本発明の第二実施例の図である。
【図1】使用状態の歩行補助車を示す外観斜視図
【図2】折り畳み状態の歩行補助車を示す外観斜視図
【図3】図2の部分拡大図
【図4】a)は把持体の表面を示す外観斜視図、b)は把持体の裏面を示す外観斜視図
【図5】支持基材における把持体の取り付け位置を示す部分分解斜視図
【図6】a)は非握持位置にある把持体を示す縦断面図、b)は握持位置にある把持体を示す縦断面図
【図7】係合部本体と支持体とを示す分解斜視図
【図8】a)は係合位置にある係合部本体を示す縦断面図、b)は解除位置にある係合部本体を示す縦断面図
【図9】a)は非握持位置にある把持体を示す部分斜視図、b)は握持位置にある把持体を示す部分斜視図
【図10】係合部本体と支持体とを示す分解斜視図
【図11】a)は係合位置にある係合部本体を示す縦断面図、b)は解除位置にある係合部本体を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一実施例>
以下、本発明の第一実施例を、添付図面に従って説明する。
本発明の折り畳み可能な歩行補助車1は、図1に示すように、金属製パイプからなるフレーム2を有し、さらに該フレーム2は、主フレーム3と副フレーム4とを具備している。
【0017】
上記主フレーム3は、前輪7A,7Aが左右首振り可能に取り付けられた左右一対の前脚部31,31と、該左右一対の前脚部31,31の上端部から上方へ延設された左右一対のハンドル杆32,32と、を備え、各ハンドル杆32の上端間にはハンドル33が差し渡されている。また、各前輪7Aには、公知の旋回ロック機構17がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
上記副フレーム4は、後輪7B,7Bがそれぞれ取り付けられた左右一対の後脚部41,41を有している。該後脚部41,41は、それぞれ上向き斜め前方に向くように配置されており、上記前脚部31,31と交差し、かつこの交差部分に設定された回動部35を介してそれぞれ相互回動可能に結合されている。
【0019】
また、左右一対のハンドル杆32,32の各上端部であって上記ハンドル33の前方位置にはブレーキハンドル34が前後動可能に取り付けられている。そして、該ブレーキハンドル34の両端に接続されたブレーキワイヤー18,18が上記後輪7B,7Bに当接する左右一対のブレーキ19,19に接続されている。そして、ブレーキハンドル34を手前に引くと、ブレーキ19,19が後輪7Bの外周面に当接し、該後輪7Bの転がりが阻止されてブレーキがかかる。
【0020】
また、図1,2に示すように、上記左右一対の前脚部31,31間には、上記回動部35より上側の位置に設定された枢着部36を介して座部5が回動自在に取り付けられている。さらに、図2,3に示すように、左右一対の後脚部41,41間において上記回動部35,35より上側の位置に差し渡された横杆42には、リンク部材43の一端が回動自在に取り付けられ、該リンク部材43の他端が上記座部5の後端部に回動自在に取り付けられている。
かかる構成にあって、該前脚部31と該後脚部41とが上記回動部35を中心にして相互回動すると、これに連動して該座部5も跳ね上がる方向又はこれと逆の下方に倒れる方向に回動する。例えば、前脚部31及び後脚部41が閉じる方向に相互回動すると座部5が跳ね上げられる。
【0021】
また、該前脚部31と、該後脚部41の横杆42と、の間には、ねじりコイルバネ(付勢手段)44が架設されており、該ねじりコイルバネ44によって該前脚部31と該後脚部41とが閉じる方向に常時付勢されている。このため、上記座部5が、該座部5の前端が上方へ回動する方向(すなわち座部5が跳ね上がる方向)へ常時付勢されている。
【0022】
次に、ロック解除手段21について説明する。
図1〜3に示すように、左右一対のハンドル杆32,32の上端部間であって上記ハンドル33の下方位置には、支持基材37が水平に差し渡されている。該支持基材37は、使用者が握りやすい外形・寸法からなる筒部材で構成されており(図6参照)、該支持基材37の前面部中央には使用者が握持することとなる把持体38が回動自在に取り付けられている。
【0023】
上記把持体38は、図4(a),(b)に示すように、少なくとも使用者の手のひら程度の大きさの横長板部材からなり、上縁部の左右両端から回動軸38A,38Aがそれぞれ外向きに差し出されている。また、該把持体38の略中央には該把持体38の板厚方向に貫通したワイヤー用挿通孔71が設けられている。さらに、該把持体38の上端部には、該把持体38の回動角度範囲を規制するための規制凸部40Aが設けられている。
【0024】
一方、図5に示すように、上記支持基材37の前面部には、上記把持体38が収容可能な大きさの収容凹部37Aが設けられており、該収容凹部37A内における左右両端部には軸受け凹部39A,39Aがそれぞれ設けられている。また、該収容凹部37Aの底部中央には、ワイヤー用挿通孔37Bと、上記把持体38の規制凸部40Aと当接する規制凸部40Bとが配設されている。
【0025】
そして、図5,図6に示すように、該把持体38の回動軸38A,38Aが上記収容凹部37Aの軸受け凹部39A,39Aで軸受けされるように、該把持体38が該収容凹部37A内に配置されると共に、該回動軸38Aを覆うように軸留め部材39B,39Bが該軸受け凹部39A,39A内にビス止めされることによって、該把持体38が該支持基材37に対して回動自在に支持されている。
【0026】
また、図6に示すように、該把持体38には、公知のワイヤー60が接続されている。具体的には、該ワイヤー60は、ワイヤー本体60Aと該ワイヤー本体60Aを被覆するカバー体60Bとで構成され、該ワイヤー本体60Aの一端が該把持体38のワイヤー用挿通孔71と、該支持基材37のワイヤー用挿通孔37Bとに挿通されて該把持体38に接続されている。
【0027】
上記構成にあって、上記把持体38が使用者によって支持基材37ごと握持されていない場合は、後述する圧縮バネ75の付勢力によってワイヤー本体60Aが引っ張られており、また図6(a)に示すように、上記規制凸部40Aと上記規制凸部40Bとが当接し、該把持体38の下部がやや前方に突き出された非握持位置となる。一方、該把持体38が使用者によって該支持基材37ごと下から握持された場合は、図6(b)に示すように、該把持体38が回動軸38Aを中心にして下向きに回動し、該把持体38が上記支持基材37の収容凹部37A内に収まる握持位置となる。
なお、該把持体38が非握持位置から握持位置に位置変換すると上記ワイヤー60が該把持体38寄りに引き込まれることとなる。
【0028】
次に、ロック手段20について説明する。
図2,3に示すように、上記座部5の裏面には、上記把持体38と上記ワイヤー60を介して接続された係合部本体61と、該係合部本体61を支持する支持体62と、が配設されている。
【0029】
上記係合部本体61は、図7に示すように、ブロック体からなり、該係合部本体61の前端部には、係合凹面61Aが形成されている。該係合凹面61Aの形状は、左右一対の後脚部41,41間に差し渡された係合杆45(図2参照)の外形に対応した形状となっている。また、該係合部本体61において該係合凹面61Aの上部には、回動軸63が該係合部本体61の巾方向に沿って形成されている。また、該係合部本体61の上面には、圧縮バネ75(図8参照)が縦向きで挿入される圧縮バネ用凹部64が形成され、また該係合部本体61の後端部には上記ワイヤー60の他端が接続されるワイヤー固定部65が設けられている。
【0030】
一方、上記支持体62は、図7に示すように、前端部に開口部62Aが形成された箱型部材からなり、該支持体62の上縁部であって上記開口部62Aに臨む位置には、左右一対の軸受け凹部66,66が設けられている。また、該支持体62の後端部には、上記ワイヤー60が挿入されるワイヤー用挿入スリット62Bが形成されている。
【0031】
さらに、図8に示すように、上記座部5の裏面には、上記支持体62が取り付けられる取付凹部52が形成されている。さらに、該取付凹部52内には、上記係合部本体61に取り付けられた縦向きの圧縮バネ75の上端部が挿入される圧縮バネ用凹部54と、該係合部本体61の回動軸63が配置される軸受け凹部53とが形成されている。
【0032】
そして、図8に示すように、該係合部本体61の回動軸63が該支持体62の軸受け凹部66,66で軸受けされるように、該係合部本体61が該支持体62内に配置されると共に、該支持体62が上記座部5の取付凹部52内にビス止めされることによって、該係合部本体61と該支持体62とが該座部5に取り付けられている。かかる取り付け状態にあっては、該係合部本体61は、支持体62の開口部62Aから露出し、かつ回動軸63を中心にして回動自在に支持され、さらに上記圧縮バネ75によって前方に向けて常時付勢されている。
【0033】
また、該係合部本体61のワイヤー固定部65には、上記ワイヤー60におけるワイヤー本体60Aの他端が、支持体62のワイヤー用挿入スリット62Bを介して接続されている。
【0034】
上記構成にあって、上記把持体38が非握持位置と握持位置との間で位置変換すると、該把持体38の回動に連動して、上記係合部本体61が回動軸63を中心にして前後に回動する。具体的には、該把持体38が非握持位置にある場合、該係合部本体61は前方寄りに位置し(図8(a)参照)、一方、該把持体38が握持位置となると、上記圧縮バネ75の付勢力に抗して該係合部本体61は後方寄りに位置変換する(図8(b)参照)。
【0035】
さらに、上記係合部本体61と、上記係合杆45との係合・解除、及び該係合・解除に伴う座部5の跳ね上がり動作について、図8に従って詳述する。
【0036】
上記座部5の上面が略水平となる該歩行補助車1の使用状態にあっては、上記把持体38は非握持位置(図6(a)参照)にあり、かつ上記係合部本体61は前方寄りに位置(以下、係合位置という。)し、該係合部本体61の係合凹面61Aが上記係合杆45の側面に当接することにより該係合部本体61と該係合杆45とが係合している。また、該係合杆45は、座部5の裏面に左右方向に沿って形成されたガイド溝51内に配置される。
かかる状態では該後脚部41及び該前脚部31は展開状態において相互回動不能となってロック状態となる。このため、該座部5は後脚部41及び前脚部31に対して回動することはなく、歩行中あるいは着座中に座部5が跳ね上がったり歩行補助車1が不意に折り畳まれたりすることがなく安全である。
【0037】
これに対し、該把持体38が使用者によって下から該支持基材37ごと握持され、かつ使用者がそのまま該把持体38を支持基材37と共に持ち上げるようにして引き上げると、該把持体38が握持位置(図6(b)参照)となると共に、上記ワイヤー60を介して上記係合部本体61が後方寄りに位置(以下、解除位置という。)して、該係合部本体61が該係合杆45から離開して該係合部本体61と該係合杆45との係合が解除される。そうすると、上記ねじりコイルバネ44の付勢力に従って上記前脚部31及び上記後脚部41が閉じる方向に相互回動し、上記前輪7Aと上記後輪7Bとが接近する。さらに、該前脚部31及び該後脚部41の相互回動に連動して座部5が跳ね上げられ、図2に示すように前輪7Aと後輪7Bとが接近した折り畳み状態が得られる。このように、該歩行補助車1を使用状態から折り畳み状態にするには、上記把持体38を握りそのままこれを持ち上げるように引き上げるだけでよいため、屈むことなくかつ上記支持基材37を持ち替えることなく一工程(ワンタッチ)で瞬時に折り畳み作業が完了する。
【0038】
なお、該歩行補助車1が折り畳まれた際には、前輪7Aと後輪7Bとが前後方向に間隔をおいて並ぶように配置されるため、該歩行補助車1を折り畳み状態のままで自立させることができる。また、使用者が上記把持体38及び支持基材37から手を離すと、把持体38は非握持位置に復帰する。
【0039】
折り畳み状態の該歩行補助車1を使用状態にする場合は、片手でハンドル33を持ち、他方の手で座部5を下向きに回動させて上から該座部5を押さえつけると、上記係合部本体61と係合杆45とが係合状態となる。仮に片手のみしか使えない状況のときは、上記ハンドル33を持ちつつ該歩行補助車1を後傾させて前輪7Aを浮かし、該ハンドル33を押さえつけて前脚部31、後脚部41及び座部5を回動させることにより使用状態とする。
【0040】
上記歩行補助車1にあって、把持体38と係合部本体61とを繋ぐワイヤー60には、該ワイヤーの張り具合を調節できる周知の調整具80が取り付けられている。したがって、該ワイヤー60の張り具合を調節することにより、使用者の握力に応じて該把持体38の操作性を調節することができる。なお、図6に示す把持体38は、上端部に回動軸が設定されている構成であるが、下端部に回動軸が設定された上下逆向きの構成としてもよい。
【0041】
<第二実施例>
図9,10に従って第二実施例を説明する。ただし、第一実施例と共通する点については、説明を簡略または省略する。
【0042】
図9に示すように、第二実施例における歩行補助車1の支持基材37の下端部には、上下動可能に把持体90が取り付けられている。該把持体90は、支持基材37に対して上下動する左右一対のスライド柱部91,91を備え、該スライド柱部91,91の上端間に差し渡された支持板92にワイヤー60の一端が接続されている。
【0043】
そして、図9(a)に示すように、該歩行補助車1の使用状態にあっては、該把持体90が該支持基材37に対して離間した非握持位置にあり、図9(b)に示すように、使用者が下から該支持基材37ごと把持体90を握持すると、該把持体90は該支持基材37の下面に接近する握持位置となる。
【0044】
一方、座部5の裏面には、図10に示すような係合部本体94と支持体95とが配設されている。さらに詳述すると、該係合部本体94は、矩形状の枠部材で構成され、該係合部本体94の前端部には係合上面94Aが形成され、後端部にはワイヤー挿入用スリット94Bが形成されている。
【0045】
また、該支持体95は、箱型部材で構成され、前端部に開口部95Aが形成され、後端部にからワイヤー挿入用スリット95Bが形成されている。
【0046】
そして、図11に示すように、該係合部本体94の係合上面94Aが支持体95の開口部95Aから突き出される位置で、該係合部本体94が該支持体95内に配置されると共に、該係合部本体94の前端部の内壁面と、該支持体95の略中央位置に固定されている留め部材94Cとの間に、圧縮バネ76が前後方向に配置されている。このとき、該係合部本体94は、支持体95に対して前後移動自在に支持されており、かつ圧縮状態で配置された上記圧縮バネ76によって前方に向けて常時付勢されている。
【0047】
上記構成にあって、把持体90が非握持位置にある場合、該係合部本体94は前方寄りに位置し(図11(a)参照)、係合上面94Aが係合杆45の下面に当接して係合杆45に対して係合する係合位置となる。一方、該把持体90が握持位置となると、上記圧縮バネ75の付勢力に抗して該係合部本体94は後方寄りに位置変換し、係合上面94Aが係合杆45と離開する解除位置となる。
【0048】
なお、上記第二実施例の構成は、上記第一実施例に比べて、係合部本体94と係合杆45との係合状態を解除するためのワイヤー60の引き込み量が少なくて済むという利点がある。一方、上記第一実施例は、把持体38が回動して位置変換する構成であるため、てこの原理を利用することができ、該把持体38の操作力が小さくて済むという利点がある。
ただし、本発明は、上記第一実施例、第二実施例に限定されることはなく、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、折り畳み可能な歩行補助車であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 歩行補助車
5 座部
7A 前輪
7B 後輪
20 ロック手段
21 ロック解除手段
31 前脚部
32 ハンドル杆
37 支持基材
38,90 把持体
41 後脚部
44 ねじりコイルバネ(付勢手段)
45 係合杆
60 ワイヤー
61,94 係合部本体
62,95 支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪が取り付けられた左右一対の前脚部と、後輪が取り付けられた左右一対の後脚部とが交差し、かつ該前脚部及び該後脚部が前後方向に相互回動可能に結合され、該前脚部及び該後脚部が閉じる方向に相互回動すると該前脚部及び該後脚部と連動して、該前脚部及び該後脚部に回動可能に取り付けられている座部が跳ね上げられる折り畳み可能な歩行補助車であって、
該前脚部及び該後脚部を閉じる方向に付勢する付勢手段と、
該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部を相互回動不能とするロック手段と、
該ロック手段から離開した位置に設けられており、該ロック手段によって該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となっているロック状態を遠隔操作で解除するロック解除手段と、
を備えたことを特徴とする歩行補助車。
【請求項2】
上記ロック手段は、上記座部裏に配置され、
上記ロック解除手段は、上記前脚部から上方に向けて延設されたハンドル杆に配置され、かつ上記ロック手段とワイヤーを介して連繋している
請求項1に記載の歩行補助車。
【請求項3】
上記付勢手段は、上記前脚部と上記後脚部との間に架設されたコイルバネである
請求項1又は請求項2に記載の歩行補助車。
【請求項4】
上記ロック手段は、
上記座部の裏面に配設された支持体と、
該支持体に位置変換可能に支持されている係合部本体と、
上記左右一対の後脚部の上端部間に差し渡された係合杆と、
からなり、
該係合部本体は、該係合杆と係合する係合位置と、該係合杆から離開して該係合杆との係合が解除される解除位置と、の間で位置変換可能とされていると共に、
上記ロック解除手段は、
上記左右一対のハンドル杆間に差し渡された支持基材と、
該支持基材に位置変換可能に支持され、かつ上記係合部本体と上記ワイヤーを介して接続されている把持体と、
からなり、
該把持体は、使用者によって握持されていない時の非握持位置と、使用者により該支持基材ごと握持された時の握持位置と、の間で位置変換可能とされており、
該座部の上面が略水平となる該歩行補助車の使用状態にあっては、上記把持体が非握持位置であり、かつ上記係合部本体が係合位置で前脚部及び後脚部は相互回動不能となり、一方、該把持体が握持位置となると、上記ワイヤーを介して該係合部本体が連動し、該係合部本体が解除位置となり、
使用者が、該歩行補助車が使用状態にある場合に上記把持体を握持しながら上記支持基材を上方に引き上げると、該把持体が握持位置となることにより上記係合部本体は解除位置となって上記付勢手段によって付勢された上記前脚部及び上記後脚部が閉じる方向に相互回動して上記前輪と上記後輪とが接近し、かつ上記座部が跳ね上げられて、折り畳み状態となる
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の歩行補助車。
【請求項1】
前輪が取り付けられた左右一対の前脚部と、後輪が取り付けられた左右一対の後脚部とが交差し、かつ該前脚部及び該後脚部が前後方向に相互回動可能に結合され、該前脚部及び該後脚部が閉じる方向に相互回動すると該前脚部及び該後脚部と連動して、該前脚部及び該後脚部に回動可能に取り付けられている座部が跳ね上げられる折り畳み可能な歩行補助車であって、
該前脚部及び該後脚部を閉じる方向に付勢する付勢手段と、
該歩行補助車が使用可能な展開状態において該前脚部及び該後脚部を相互回動不能とするロック手段と、
該ロック手段から離開した位置に設けられており、該ロック手段によって該前脚部及び該後脚部が相互回動不能となっているロック状態を遠隔操作で解除するロック解除手段と、
を備えたことを特徴とする歩行補助車。
【請求項2】
上記ロック手段は、上記座部裏に配置され、
上記ロック解除手段は、上記前脚部から上方に向けて延設されたハンドル杆に配置され、かつ上記ロック手段とワイヤーを介して連繋している
請求項1に記載の歩行補助車。
【請求項3】
上記付勢手段は、上記前脚部と上記後脚部との間に架設されたコイルバネである
請求項1又は請求項2に記載の歩行補助車。
【請求項4】
上記ロック手段は、
上記座部の裏面に配設された支持体と、
該支持体に位置変換可能に支持されている係合部本体と、
上記左右一対の後脚部の上端部間に差し渡された係合杆と、
からなり、
該係合部本体は、該係合杆と係合する係合位置と、該係合杆から離開して該係合杆との係合が解除される解除位置と、の間で位置変換可能とされていると共に、
上記ロック解除手段は、
上記左右一対のハンドル杆間に差し渡された支持基材と、
該支持基材に位置変換可能に支持され、かつ上記係合部本体と上記ワイヤーを介して接続されている把持体と、
からなり、
該把持体は、使用者によって握持されていない時の非握持位置と、使用者により該支持基材ごと握持された時の握持位置と、の間で位置変換可能とされており、
該座部の上面が略水平となる該歩行補助車の使用状態にあっては、上記把持体が非握持位置であり、かつ上記係合部本体が係合位置で前脚部及び後脚部は相互回動不能となり、一方、該把持体が握持位置となると、上記ワイヤーを介して該係合部本体が連動し、該係合部本体が解除位置となり、
使用者が、該歩行補助車が使用状態にある場合に上記把持体を握持しながら上記支持基材を上方に引き上げると、該把持体が握持位置となることにより上記係合部本体は解除位置となって上記付勢手段によって付勢された上記前脚部及び上記後脚部が閉じる方向に相互回動して上記前輪と上記後輪とが接近し、かつ上記座部が跳ね上げられて、折り畳み状態となる
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の歩行補助車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−130569(P2012−130569A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286312(P2010−286312)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
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