説明

歯ブラシ及び無線一方向性データ転送方法

本発明は、送信機が1つの転送データセットを数回にわたって、時間的に順次複数の転送チャネルで送信し、受信機がデータセットをそれぞれ1つの転送チャネルで受信する、1つの送信機と1つの受信機との間の無線一方向性データ転送方法に関する。使用される転送チャネル数は、送信機がデータセットを反復転送する回数より小さく、使用される転送チャネルの順序が規定されている転送チャネルのシーケンスが用いられる。本発明はさらに、上記に説明された方法を実施するための1つの送信機を持つ歯ブラシと、1つの歯ブラシと独立した1つの補助装置とを含むシステムに関し、この際、歯ブラシ内部には送信機、補助装置内部には受信機が取り付けられている。この補助装置には、転送されたデータを表示するためのディスプレイ装置が装備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシ及び、1つの送信機と1つの受信機との間の無線一方向性データ転送方法に関する。この方法の好ましい用途は、小型電子機器、たとえば歯ブラシから外部ディスプレイ装置へのデータ転送である。
【背景技術】
【0002】
特許EP0892701B1から、1つの電動髭剃り装置と1つの外部装置とを有する髭剃りシステムが知られており、これらの装置の間で双方向性無線データ交換が可能である。この外部装置は情報の表示にも適す。
【0003】
特許DE10332324A1から、1つの送信機と1つの受信機との間で無線通信接続を介してデータ転送を行う方法が知られており、この場合、送信機は当該転送データを受信機の受信確認とは無関係に複数の異なる転送チャネルに送信し、その際受信機は、データが障害なく転送された1つの転送チャネルを通してデータを受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP0892701B1
【特許文献2】DE10332324A1
【0005】
たとえば、歯ブラシに内蔵された充電池の充電残量が表示されるディスプレイ装置付き歯ブラシが既に知られている。このディスプレイ装置は歯ブラシのグリップ部分に取り付けられているため、歯を磨いている間ユーザーには見えないか、読み取りにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、利便性を改善した歯ブラシと障害耐性に優れる、簡易な無線一方向データ転送方法を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、1つの歯ブラシと1つの独立した補助装置から構成されるシステムを提示する。このシステムでは、歯ブラシ内部に1つの送信機、外部補助装置に1つの受信機が取り付けられている。歯ブラシは送信機と接続されている1つのセンサーを有する。この送信機はセンサーから送り出されたデータの転送用に設計されている。このセンサーは、たとえば次のような歯ブラシの作動パラメータを感知する。すなわち、歯ブラシに内蔵されている充電池の充電残量及び/又は歯磨き経過時間及び/又はユーザーが歯を磨くときに歯ブラシを歯に押しつける圧力などである。この補助装置は、送信機から伝送されたデータを受信する受信機と受信データを表示するディスプレイ装置とを含む。
【0008】
本発明による方法は、1つの送信機と1つの受信機との間の無線一方向性データ転送のために考案されているため、この一方向性データ転送の際、送信機は転送されたデータが正しく完全に受信されたかについての情報を、受信機から受け取らない。この方法はさらに、同じ構造の複数の送信機と受信機とを同時に作動させる用途にも考案されているが、各回のデータ転送は特定一台の送信機と特定一台の受信機の間だけで行われることが好ましい。
【0009】
1つの送信機と1つの受信機との間の無線一方向性データ転送方法の場合、送信機は最初に転送されるデータセットを何回か時間的に前後して異なる転送チャネルに送るが、この際、使用される転送チャネル数は送信機が最初のデータセットを反復転送する回数より少なく設定されている。その後、送信機は後続データセットを同じ要領で送信することができる。このとき送信機が使用する転送チャネルの順序は、疑似ランダムシーケンスにより指定されるのが好ましい。すなわち、送信機は指定されたシーケンスにより規定された順序で、利用可能な転送チャネルを順に使用する。疑似ランダムシーケンスには、同じシーケンスを使用する多数の送信機が同時に同じチャネルを使用しない確率が高い、という有利な点がある。マイクロコントローラによる疑似ランダムシーケンスの生成は極めて多くの計算時間を必要とするので、疑似ランダムシーケンスは送信機に固定的にメモリーされるのが好ましい。受信機は常に、転送チャネルのうち1つだけにセットされていて、この転送チャネルに乗るデータセットを受信し、受信したデータセットの中から障害のないものだけを選択する。
【0010】
転送チャネルの規定シーケンスは、シーケンスの中で直接的に連続する2つの転送チャネルが相互に異なっており、さらに、シーケンスの長さがデータセットの反復送信回数より大きいことを特徴とするのが好ましい。さらに、このシーケンスは、各データセットが少なくとも1回は各転送チャネルを通るが、同じ転送チャネルには2回以内で送信されるという特徴をもつことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記に概略を説明した方法は、データ転送の際に比較的少ないコストで十分大きい障害耐性がある、という点で有利である。好ましくは転送チャネルが、データ転送に使用される周波数帯域以内で可能な限り均等配分されている異なる周波数を持つ。たとえば、1つの転送チャネルは周波数帯域の下側領域にあり、別の転送チャネルは中間領域にあり、3つめは周波数帯域の上側領域にある。データ転送に使用される転送チャネルは送信機と受信機に固定される。特定一台の送信機から送信されるデータだけを1つの受信機が受信するように、受信機の初期化時には対応する送信機の識別データを保存することができる。当然、1つの受信機が複数の送信機からデータを受信できるように準備することもできる。
【0012】
この受信機は、まず、決められた転送チャネルのうちの1つだけを監視する。対応する送信機から発信されたデータは少なくとも1回は各転送チャネルを通して送信されるので、データはこの1つの転送チャネルを通して障害無く受信されることが可能となる。しかし受信機が、該受信機では処理できないデータのみがこの転送チャネルで一定時間にわたり送信されることを検知すると、別の転送チャネルに切り替える。受信機がこの転送チャネルで障害の無いデータを受信できる場合、この受信機は一定時間にわたり障害の無いデータをそれ以上受信できなくなってから、次に設定されている転送チャネルに切り替えを行う。この際、次の転送チャネルは、最初の転送チャネルに戻ってもよい。できれば、受信機が他のどの転送チャネルでも障害の無い受信ができなかった場合に初めて、再び最初の転送チャネルを用いることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を図2に示した実施例を用いて説明する。すなわち、差し込みブラシ95の付いた握り部分35と、独立したディスプレイ装置30とを有する電動歯ブラシ90を用いる。この際、握り部分でセンサー37により検知されたデータは1個の送信機39により無線でディスプレイ装置30に転送される仕組みであり、これは図中矢印55によって示される。たとえば、握り部分では、ユーザーが歯磨きの際に歯に差し込みブラシを押しつけるときの押圧及び/又は歯磨き経過時間及び/又は握り部分に電動歯ブラシの電源供給用に内蔵された充電池の充電残量が検知される。図1に、適合する疑似ランダムシーケンスの一例を示す。
【0014】
次にデータ転送を説明する。最初に第1データセットが生成されるが、これには、たとえば識別情報、時間情報及び/又は現在の押圧及び/又は充電残量が含まれる。識別情報は随時使用される個々の電動歯ブラシの個別認識用であり、たとえば、機種記号とシリアル番号から構成することができる。同一構造の複数の歯ブラシが識別情報により区別されることにより、相互に障害を与えることなく、これらの歯ブラシを同時に稼働させることができる。このデータセットは送信機により複数回、たとえば6回、時間的に順次送信されるが、この際、複数の転送チャネル、たとえば4つの異なる送信周波数が使用される。従って、個々のデータセットが送信される反復回数は、使用される転送チャネル数より多い。個々の転送チャネルが利用される順序は、送信機内に保存された疑似ランダムシーケンスにより規定されている。次に、第2のデータセットが生成され、これには、たとえば同じ識別情報、第2の時間情報及び/又は第2の現在押圧及び/又は現在の充電残量が含まれる。第2のデータセットは、この例でも同様に順次6回送信され、この際、同様に4つの異なる転送チャネルが利用される。その次は、引き続き後続データセットが同様に転送される。疑似ランダムシーケンスは、たとえば36のエレメントを含んでおり、使用される転送チャネルの1つが各エレメントによって識別表示されている。この例における疑似ランダムシーケンスは、4つの転送チャネルのそれぞれ1つが6つの連続するエレメントから成る1つのブロックにおいて、少なくとも1回、最大2回利用され、この際、連続するエレメントは相互に異なり、転送チャネルの順序は6つのデータセットの転送後に繰り返されるという特徴を有している。図1には、第1のブロックが濃い色で示されている。
【0015】
受信機は、その都度、1つの転送チャネルにだけ同調するよう調整されている。電力消費を最小限にするため、受信機はこの転送チャネルで自機宛てのデータが送信されたかを確定するのに必要な間だけオンになる。転送チャネルで自機宛てのデータが送信されたことが確定すると、受信機は一定時間にわたり自機宛てのデータをそれ以上受信しなくなるまでオンの状態を保ち続ける。データが自機宛てであるかの判定は、送信機により一緒に伝送される初期化時に保存された識別情報を参照して、受信機が行う。
【0016】
この受信機は、該受信機では処理できないデータのみを一定時間にわたり受信した場合に初めて、別の転送チャネルに切り替える。データが処理可能か否かの判定は、周知の方法、たとえば同期化パターンの検出及びチェックサムプロセスなどによって行うことができる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの送信機と1つの受信機との間の無線一方向性データ転送方法において、
前記送信機が、1つの転送データセットを数回にわたり、時間的に順次複数の転送チャネルで送信し、前記受信機が、前記データセットをそれぞれ1つの転送チャネルだけで受信し、
使用される前記転送チャネル数は、前記送信機が前記データセットを反復転送する回数より小さくなっており、
使用される前記転送チャネルの順序が規定されている転送チャネルのシーケンスが用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
直接前後して使用される前記転送チャネルが相互に異なり、
前記転送チャネルの前記シーケンスが、前記データセットの反復送信回数より大きい転送チャネル数を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各前記データセットが、それぞれの前記転送チャネルで少なくとも1回、しかし同一の前記転送チャネルでは最大2回まで送信されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シーケンスが、前記送信機に保存されている疑似ランダムシーケンスであることを特徴とする、これまでの請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
前記受信機が、1つの転送チャネルだけに同調するよう調整され、
前記受信機が、該受信機では処理できないデータを一定時間にわたり受信した場合に、別の転送チャネルに切り替えることを特徴とする、これまでの請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から4までの1つに記載の方法を実施するための送信機を有する歯ブラシ。
【請求項7】
前記送信機と接続されている1つのセンサーを有し、
前記送信機が前記センサーにより送り出されるデータの転送用に設計されていることを特徴とする、請求項6に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
1つの歯ブラシと1つの独立した補助装置とを有するシステムであって、
前記歯ブラシから前記補助装置への無線一方向性データ転送を行うために、前記歯ブラシ内部に1つの送信機が取り付けられ、前記補助装置内部には1つの受信機が取り付けられているシステム。
【請求項9】
前記歯ブラシが1つのセンサーを有し、
前記センサーが前記送信機と接続され、
前記センサーから送り出されたデータを転送するために前記送信機が設計されていることを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記補助装置が、前記送信機により転送されたデータを表示するための1つのディスプレイ装置を有していることを特徴とする、請求項8又は9に記載のシステム。

【公表番号】特表2010−525640(P2010−525640A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503414(P2010−503414)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003122
【国際公開番号】WO2008/131874
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(591027846)ブラウン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Braun GmbH
【Fターム(参考)】