説明

歯付ベルトの側面加工方法

【目的】 カットしたベルト側面に露出した心線をゴム本体から除去してベルト側面に凹部を形成して、心線のほつれや毛羽立ちをなくした歯付ベルトの側面加工方法を提供する。
【構成】 アラミド繊維コードからなる心線3を有する歯付ベルトを、駆動プーリ13と従動プーリ14に掛架して所定張力下で走行させるとともに、上記歯付ベルト1にプーリを当接させて該ベルトの微動を押さえるベルトの側面加工位置16を決定し、更に該ベルトの側面加工位置16にあるベルト側面6上の心線3を有する位置に少なくとの1つの研削ホイール17を当接し回転させることで心線3を掘り起こして研削し、ベルト側面に形成した凹部7をベルト側面全周にわたって連続的に設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯付ベルトの側面加工方法に係り、詳しくはベルトの製造時にカットされたベルト側面に露出しているアラミド繊維からなるコードを除去して、該コードの毛羽立ちやほつれ等が生じない歯付ベルトの側面加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アラミド繊維は、抗張力が大きくて伸び率が小さい。特に、耐屈曲性に優れているなどの特性から、高速で屈曲回数が多い同期伝動用ベルトのコード状心線として最近多量に用いられるようになってきた。この歯付ベルトは、螺旋状に巻かれたコードを有する円筒状加硫スリーブから個々のベルト群に切断されて製造されているが、カッターの位置により心線をベルト長手方向に切断する場合があり、このときには得られたベルト側面には切断された心線が露出し、このようなベルトを走行させると露出した心線はプーリとの摩擦、ベルト振動、心線自身の結束力が小さいことによって、ほつれあるいは毛羽立ち現象が生じた。
【0003】特に、アラミド繊維は単繊維の直径方向の結合力が極端に弱いことから、繊維がフィブリル化したり、分繊化する。このため、心線をゴムに埋設してこれらを強固に接着させても、カットしたベルト側面がプーリの両側面に接触したり、アイドラープーリに接触を繰り返すと心線の端末がほつれたり、アラミド繊維が分繊して心線がゴム中より次々に引き出され回転軸に巻き付きベルトの破損または1械の故障があった。
【0004】かかる欠点を解消する方法として、特公昭57−31015号公報には心線の露出部分を接着剤により固定化処理した歯付ベルトが開示されている。また、特公昭60−26700号公報には、心線となるアラミド繊維コードをポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アラビアゴム等の水溶液もしくはアクリル酸エステルの溶媒溶液に浸漬した後、乾燥させたコード処理方法が開示されている。更には、特開平2−17242号公報には、心線の両端部ベルト側面に露出させない伝動ベルトも開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ベルト側面に露出した心線をシアノ系、ウレタン系、エポキシ系接着剤で固定化した場合は剛い樹脂を用いるため、接着剤の浸透度合いによっては屈曲性を阻害する問題があり、また接着処理でコードの結束をよくした場合でも、アラミド繊維の性質である径方向の結合化の弱さからベルトを長時間使用すると、繊維がフィブリル化して接着剤の付着した表面はゴムに接着したままで、繊維内部が分離してほつれ現象が発生した。また、心線の両端部をベルト側面に露出されないベルトでは、設定されたベルト巾に対して心線の本数が減少し、そのためベルトの強度が低下する問題があった。
【0006】本発明は上述の如く各欠点を解消するものであり、アラミド繊維の接着処理方法、およびベルト側面の固定化ではなくカットしたベルト側面に露出した心線をゴム本体から除去してベルト側面に凹部を形成して、心線のほつれや毛羽立ちをなくした歯付ベルトの側面加工方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の特徴とする歯付ベルトの側面加工方法は、ベルト長手方向に一定ピッチをおいて複数の歯部を配置したベルト本体と、同方向に沿ってアラミド繊維コードからなる心線を埋設した背部とからなる歯付ベルトを、駆動プーリと従動プーリに掛架して所定張力下で走行させるとともに、上記歯付ベルトにプーリを当接させて該ベルトの微動を押さえるベルトの側面加工位置を決定し、更に該ベルトの側面加工位置にある心線を有する位置に少なくとの1つの研削ホイールを当接し回転させることで心線を掘り起こして研削し、少なくとも一方のベルト側面に形成した凹部をベルト側面全周にわたって連続的に設けた構成からなる。また、本発明の歯付ベルトの側面加工方法は、アラミド繊維コードをベルト側面に形成した凹部内に残存させる場合も含んでいる。更に、駆動プーリと従動プーリの少なくとも一方のプーリにフランジが設け、研削加工時のベルト幅方向の微動を押さえることができる。
【0008】
【作用】本発明の歯付ベルトの側面加工方法では、走行中の歯付ベルトをプーリを当接させて該ベルトの微動を押さえるベルトの側面加工位置を決定し、ベルトの側面加工位置にある心線に少なくとの1つの研削ホイールを当接し回転させることでアラミド繊維コードを掘り起こして研削し、凹部をベルト側面全周にわたって連続的に形成することによって、アラミド繊維コードをベルトの側面上から短時間にしかも確実に除去することができる。これによって、アラミド繊維コードの毛羽立ち、ほつれを取り除き、また歯付ベルトが走行中にプーリのフランジに当接してアラミド繊維コードがベルト本体から離脱し、回転軸に巻き付き、ベルトの寿命を短縮させるといった不具合もなくなる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の歯付ベルトの側面加工方法を図面により詳細に説明する。図1はベルトの側面を加工する前の歯付ベルトの要部斜視図であり、図において歯付ベルト1はベルト長手方向に沿って複数の歯部2とアラミド繊維コードからなる心線3を埋設した背部4とからなり、上記歯部2の表面にはカバー帆布5が貼着されている。ベルト側面6には、切断された心線3が局部的に露出している。
【0010】歯部2及び背部4には、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムの2重結合部分に80wt%以上の水素添加した水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴムと言い、H−NBRと表す)であり、耐熱劣化性の改良されたゴムである。
【0011】カバー帆布5は緯糸方向(ベルト長手方向)に伸縮性を有する平織物、綾織物、朱子織物等を使用することができる。なかでも、平織帆布の場合は緯糸と経糸とが上下に交互に交差積層されているため緯糸と経糸の波形状交差点が緯、経方向に連続して形成される。一方、綾織、朱子織り帆布を使用した場合には緯糸と経糸が夫々複数本おきに波形状に交差点を形成し、通常の平織帆布より波形状交差点が少なく、且つゴムが糸間のみならず交差点間まで充分浸透し、これをベルト波形部に使用した場合にはベルト屈曲性における経糸と緯糸の糸同志による直接接触を回避し、ベルトライフを向上することができるため好ましい。
【0012】また、上記心線3であるアラミド繊維コードでは、1〜3デニールのフィラメントを100〜3000本収束したトータル300〜3100デニールの原糸を、エポキシ化合物、イソシアネート化合物から選ばれた処理液によって予め接着処理する。これによってフィラメント群の集束性を高めてほつれ性が改善される。また、得られたフィラメント群は硬くリボン状になっているため、通常の撚糸を行うと撚りが不均一になって撚糸コードの強力が低下するとともに屈曲疲労性も悪くなる。続いて、上記撚糸はRFL処理後、ゴム糊でオーバーコート処理もしくはゴム糊のみで処理される。なお、このゴム糊による接着処理を必要ならば数回繰り返してもよい。前記心線3に用いるアラミド繊維は、分子構造の主鎖中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーメックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等である。このような歯付ベルトのベルト側面6には、切断された心線3が部分的に露出し、心線3自身の結束力が小さいことによって、毛羽立ち現象が生じている。
【0013】図2および図3は上記歯付ベルトの側面6を加工する方法を示したものであり、歯付ベルト1をフランジ15を有する駆動プーリ13と従動プーリ14に掛架して張力を付与して走行させる。ベルト張力は通常40〜100kgである。この両プーリ13、プーリ14の両側部に設けたフランジ15の間隔は、歯付ベルト1の幅に相当している。これと同時に、ベルト背面9及び腹面10に押えロール11と固定ロール12とを当接あるいは係合させてベルトの側面加工位置16を決定する。これによって、ベルトのたて振れ、ベルト幅方向の微動を阻止してベルトの位置決めを確実にすることができる。この場合、押えロール11の押圧は15〜30kgである。押えロール11と固定ロール12に歯付ベルト1の幅に相当するフランジを設けると、心線3を直線状に配置してベルトの側面加工を正確に、かつ連続して行なうことができる。
【0014】続いて、駆動ドライブ原動機と研削加工原動機とをONにして歯付ベルト1が周速5〜20mm/分になるように設置し、一対の平板状の研削ホイール17を回転させ、また心線3の位置するピッチラインまで移動させて心線3に当接させ、歯付ベルト1を1〜3回程度連続して回転させて心線3を掘り起こして研削する。これによって、心線3は一部もしくは完全に除去され、凹部7がベルト全周にわたって連続的に形成される。その後、従動プーリ14を駆動プーリ13側へ移動して、歯付ベルト1の張力を開放し、歯付ベルト1を両プーリ13、14から取り出す。これらの工程は連続して行うことができる。
【0015】研削ホイール17の回転方向は、実施例では歯付ベルト1の走行方向と逆になっているが、同一方向でもよい。また、研削ホイール17の押圧力は最大20kgで、通常は5〜10kgである。一対の研削ホイール14はベルト幅方向に位置し、ベルト側面に相対向して配置され、それぞれ独立して作動する。上記研削ホイール17は、表面にダイヤモンドを電着した粒度#80〜#120のもの、あるいは高硬度WA砥材の砥石等であり、その先端形状は0.4〜1.0mm幅の丸形やフラットなものである。また、スリットを円周に一定間隔で設けてもよい。
【0016】得られた歯付ベルト1は、図5および図6に示すように、ベルト側面6に形成された凹部7がベルト全周にわたって連続的に形成される。この凹部7の深さは最大心線3の径に相当する。この深さを心線3の径より大きくすると、ベルト側面6がプーリのフランジに当接したとき変形しやすくなり、凹部7から亀裂が生じやすくなり、しかも内側にある心線3を研削して心線3の有効本数を減らすことになり、ベルト張力が低下する。尚、ベルト側面6に形成された凹部7内には、心線3が全く存在しない領域と研削された心線3が残存する領域とが共存している。歯付ベルト1を側面加工する場合、心線3の位置するピッチラインと歯底部とPLD値は、極めて安定しているため、正確に心線3を掘り起こして凹部7を形成することができる。
【0017】
【発明の効果】本発明の歯付ベルトの側面加工方法では、該ベルトの微動を押さえるベルトの側面加工位置で研削ホイールによってアラミド繊維コードを掘り起こして研削し、凹部をベルト側面全周にわたって連続的に形成することによって、アラミド繊維コードをベルトの側面上から短時間にしかも確実に除去することができる。これによって、アラミド繊維コードの毛羽立ち、ほつれを取り除き、また歯付ベルトが走行中にプーリのフランジに当接してアラミド繊維コードがベルト本体から離脱し、回転軸に巻き付きによって発生するベルトの破断、機械、設備の損傷など問題点は解消され、ベルトの心線にアラミド繊維を用いることによってもたらせる有効性が発揮され、また外観も良好になる。更に、駆動プーリと従動プーリの少なくとも一方のプーリにフランジを設けることによって、より一層ベルトの幅方向の微動を押さえることができ、ベルトの側面を正確に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯付ベルトの側面加工方法に使用する加工前の歯付ベルトの部分斜視図である。
【図2】本発明の歯付ベルトの側面加工方法に使用する研削機の概略平面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】本発明の歯付ベルトの側面加工方法の説明図である。
【図5】本発明の歯付ベルトの側面加工方法によって得られた歯付ベルトの要部斜視図である。
【図6】本発明の歯付ベルトの側面加工方法によって得られた歯付ベルトの他の要部斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
6 側面
7 凹部
11 押えロール
12 固定ロール
13 駆動プーリ
14 従動プーリ
15 フランジ
16 ベルトの側面加工位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベルト長手方向に一定ピッチをおいて複数の歯部を配置したベルト本体と、同方向に沿ってアラミド繊維コードからなる心線を埋設した背部とからなる歯付ベルトを、駆動プーリと従動プーリに掛架して所定張力下で走行させるとともに、上記歯付ベルトにプーリを当接させて該ベルトの微動を押さえるベルトの側面加工位置を決定し、更に該ベルトの側面加工位置にあるベルト側面上の心線を有する位置に少なくとの1つの研削ホイールを当接し回転させることで心線を掘り起こして研削し、少なくとも一方のベルト側面に形成した凹部をベルト側面全周にわたって連続的に設けたことを特徴とする歯付ベルトの側面加工方法。
【請求項2】 アラミド繊維コードをベルト側面に形成した凹部内に残存させる請求項1記載の歯付ベルトの側面加工方法。
【請求項3】 駆動プーリと従動プーリの少なくとも一方のプーリにフランジを設けた請求項1記載の歯付ベルトの側面加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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