説明

段積設備

【課題】 本発明は、段積設備において、育苗箱の積付姿勢ひいては移載精度を良好に維持しながら、作業能率向上を図ることを課題とする。
【解決手段】 育苗箱搬送コンベヤで搬送される育苗箱(C)に接触しながら該育苗箱(C)の搬送速度を徐々に減速して該育苗箱(C)を所定の位置で停止させる衝撃吸収ストッパ(356)と、前記所定の位置にある育苗箱(C)を下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置を設け、衝撃吸収ストッパ(356)が育苗箱(C)を所定の位置で停止させた後、前記所定の位置にある育苗箱(C)を段積装置が持ち上げ動作する間は、衝撃吸収ストッパ(356)を当該育苗箱(C)から退避させる強制退避装置(231)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段積設備に関する。
【背景技術】
【0002】
育苗箱搬送コンベヤで搬送される育苗箱を下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置と、該段積装置で段積された育苗箱を把持して横移動し所定の積付枚数に積付ける積付装置と、該積付装置で育苗箱が積付けられる受け台と、受け台上から積付装置で積付けられた育苗箱を持ち上げて載せる積付アームと、該積付アームを上下移動及び横移動させて台車の所定位置に移載する移載機構を設け、積付装置は、前記段積枚数に段積された育苗箱を上側に重ねて複数回積付けることにより、育苗箱を前記積付枚数に積付ける構成とし、横方向に可動して育苗箱を把持する可動アームを設けた段積設備が知られている。この段積設備は、育苗箱搬送コンベヤで搬送中の育苗箱を下方から持ち上げて段積する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4326352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、段積設備において、育苗箱の積付姿勢ひいては移載精度を良好に維持しながら、作業能率向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、育苗箱搬送コンベヤ(303)で搬送される育苗箱(C)に接触しながら該育苗箱(C)の搬送速度を徐々に減速して該育苗箱(C)を所定の位置で停止させる衝撃吸収ストッパ(356)と、前記所定の位置にある育苗箱(C)を下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置(317)を設け、衝撃吸収ストッパ(356)が育苗箱(C)を所定の位置で停止させた後、前記所定の位置にある育苗箱(C)を段積装置(317)が持ち上げ動作する間は、衝撃吸収ストッパ(356)を当該育苗箱(C)から退避させる強制退避装置(231)を設けた段積設備とした。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、衝撃吸収ストッパ(356)は、衝撃吸収用スプリング(229)により育苗箱(C)側に付勢され、強制退避装置(231)により衝撃吸収用スプリング(229)に抗して育苗箱(C)から退避する構成とした請求項1に記載の段積設備とした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によると、衝撃吸収ストッパ(356)が育苗箱(C)を所定の位置で停止させるので、育苗箱(C)内の土寄りを防止できると共に、衝撃吸収ストッパ(356)が離れた状態で育苗箱(C)を持ち上げるので、持ち上げ時に育苗箱(C)の位置ずれを防止でき、既に段積された育苗箱群に適正に嵌合させることができ、適正な段積姿勢を得ることができる。
【0008】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、衝撃吸収ストッパ(356)を、強制退避装置(231)により衝撃吸収用スプリング(229)に抗して育苗箱(C)から退避させるという簡単な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】播種施設のレイアウト図
【図2】播種設備の全体側面図
【図3】空育苗箱群搬送コンベヤ及び押出装置を示す平面図(a:空育苗箱群をストッパで受け止めた状態、b:空育苗箱群が空育苗箱群到達センサの位置に到達していない状態、c:空育苗箱群が空育苗箱群到達センサの位置に到達した状態)
【図4】土補給機を示す正面図
【図5】段積設備の平面図
【図6】段積設備の側面図
【図7】段積設備の正面図
【図8】衝撃吸収ストッパを示す側面図
【図9】偏心カム及び支持板を示す図(A:正面図、B:側面図)
【図10】突出部周辺を示す正面図
【図11】衝撃吸収シリンダ及び戻し用シリンダを示す図
【図12】積付アームに複数回に分けて積付ける状態を判りやすく示す斜視図
【図13】育苗箱を出芽台車に載置する状態を示す斜視図(A:奥側の載置位置への供給形態、B:手前側の載置位置への供給形態)
【図14】接木苗製造装置の要部を示す側面図
【図15】接木苗製造装置の要部を示す平面図
【図16】台木前処理部、穂木前処理部及び接着処理部を示す平面図
【図17】規制部材を示す平面図
【図18】規制部材を示す正面図
【図19】台木切断装置及び台木切断手順(番号順に動作)を示す側面図
【図20】穂木切断装置及び穂木切断手順(番号順に動作)を示す側面図
【図21】一部省略した取込部を示す平面図
【図22】接木苗製造装置の要部拡大による平面図
【図23】接木苗製造装置の要部拡大による側面図
【図24】把持ハンドの拡大側面図
【図25】上段と中段の把持状態のハンド機構平面図(a)(b)
【図26】カッタ機構の作動状態平面図(a)とそのB一B線断面図(b)
【図27】第一の持上げ具の動作平面図
【図28】第一の持上げ具の動作側面図
【図29】第一の持上げ具の起立動作の正面図
【図30】第一及び第二の持上げ具を示す平面図
【図31】異なる第二の持上げ具を示す平面図
【図32】中段ハンド機構のハンド先端部を示す平面図
【図33】穂木苗の取込動作の動作手順図
【図34】把持ハンドの準備状態(a)と把持状態(b)の動作平面図
【図35】苗分離具を示すハンド機構の平面図
【図36】移送行程における方向修正動作の平面図
【図37】整列保持手段の要部平面図
【図38】整列保持手段の要部側面図(a)とそのB一B線断面図(b)
【図39】整列保持手段の受渡し動作の前後を示す側面図(a)(b)
【図40】穂木苗の受渡し動作の動作手順図
【図41】第一の整列動作の前後の平面図(a)(b)
【図42】第二の整列動作の前後の平面図(a)(b)
【図43】主整列部材及び副整列部材の整列動作の前後の平面図(a)(b)
【図44】操作パネルを示す図
【図45】異なる副整列部材を示す側面図
【図46】異なる副整列部材を示す平面図
【図47】異なる副整列部材を示す平面図
【図48】異なるハンド機構のハンド先端部を示す平面図
【図49】固定支持板及び可動支持板を示す平面図
【図50】ブラシを示す平面図
【図51】ブラシを示す側面図
【図52】接木ロボット本体及び受渡保持機構を示す正面図
【図53】穂木搬送アーム及び台木搬送アームの把持ハンド機構を示す図(a:把持面積が小さい状態、b:把持面積が大きい状態)
【図54】押付装置を示す側面図
【図55】養生室を示す平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
図1は、播種施設の平面レイアウト図である。この播種育苗施設は、2階が育苗箱置場となっており、その育苗箱置場の育苗箱Cが1階の育苗箱供給装置301へ供給され、育苗箱供給装置301によって同じく1階に設置した播種設備302に1枚ずつ順次供給される。播種設備302は、育苗箱Cを一定方向に搬送する育苗箱搬送コンベヤ303に沿って、育苗箱に床土を入れて鎮圧・均平する床土供給装置304、水稲用の灌水装置305、床土の上に種籾を播種する播種装置306、覆土を施す覆土供給装置307、野菜用の灌水装置308が設けられている。尚、床土供給装置304の育苗箱搬送下手側部分には、育苗箱に供給された床土を均平する均平部309を備えている。尚、野菜の種子を播種するときには、野菜用の灌水装置308を作動させ、覆土供給装置307により覆土した後に灌水するようになっている。播種設備302によって播種等を施された育苗箱は、段積設備310によってパレット又は台車311の上に所定段数ずつ段積みされる。そして、段積みされた育苗箱を出芽室312に搬入して出芽させる。出芽室312で出芽させた段積状の育苗箱は育苗箱積替装置313で緑化台車346に棚積みされ、該緑化台車346ごと温度管理された緑化室200へ搬入して所定の大きさに苗が成育するまで育苗する。尚、前記出芽室312及び緑化室200は、それぞれ3室設けられている。
【0011】
2階の育苗箱置場では、空の育苗箱Cを所定枚数ずつ重ね合わせた空育苗箱群212を搬送する空育苗箱群搬送コンベヤ213を設けており、空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送終端位置で押出装置214により空育苗箱群213を昇降装置215内に押し込み、昇降装置215により空育苗箱群212を1階の育苗箱供給装置301へ供給する。空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送終端位置に空育苗箱群212が到達したことを検出する空育苗箱群到達センサ216を設けており、空育苗箱群到達センサ216による空育苗箱群212の検出に伴って、空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送を停止させると共に押出装置214の押出具217を作動させて空育苗箱群212を昇降装置215内に押し込む構成となっている。尚、空育苗箱群搬送コンベヤ213の終端にはストッパ218を設けており、搬送される空育苗箱群212は、先ず空育苗箱群到達センサ216の位置に到達するが、このときに未だストッパ218の位置に到達していない。空育苗箱群到達センサ216の検出から空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送停止までの制御の遅延時間により、実際に空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送停止がなされる前に、空育苗箱群212がストッパ218に到達して該ストッパ218で受け止められる構成となっている。従って、実際は、ストッパ218で所望の位置に保持された空育苗箱群212を、押出装置214が押し出すことになる。これにより、空育苗箱群212をストッパ218で受け止めてから押出装置214で押し出すまでのタイムラグを小さくすることができ、作業能率の向上を図っている。
【0012】
押出装置214の押出が完了して押出具217が押し出し前の元の状態に復帰し、空育苗箱群到達センサ216により空育苗箱群212を検出しないとき、空育苗箱群搬送コンベヤ213の搬送作動が再開する制御パターンを実行する制御装置となっている。この制御装置は、昇降装置215、育苗箱供給装置301、播種設備302又は段積設備310等の育苗箱搬送系統に異常(育苗箱Cの詰まり等)があると、異常発生箇所から育苗箱Cの搬送上手側の装置を緊急停止する。尚、作業者の手動操作により前記緊急停止を実行する構成としてもよい。空育苗箱群搬送コンベヤ213を前記緊急停止する場合、空育苗箱群到達センサ216が空育苗箱群212を検出しない状態であれば、制御の遅延時間を設けず即座に空育苗箱群搬送コンベヤ213を停止させるが、空育苗箱群到達センサ216が空育苗箱群212を検出する状態であると、制御の遅延時間により前述した通常時と同様に所定時間後に空育苗箱群搬送コンベヤ213を停止させる制御を行う。これにより、緊急停止時に、空育苗箱群到達センサ216が空育苗箱群212を検出するときは、空育苗箱群212がストッパ218の位置に必ず到達するため、異常を解消する等して作業を再開する場合に、空育苗箱群到達センサ216による空育苗箱群212の検出に基づいて、押出装置214が空育苗箱群212を押し出すときに、該空育苗箱群212はストッパ218に到達した適正な位置にあるので、空育苗箱群212が引っかかるような不具合を防止でき、空育苗箱群212の押出を適正に行うことができる。
【0013】
ところで、床土供給装置304へ土を補給する土補給機219を設けることができる。土補給機219は、混在する土塊を砕いて粒状土を得る砕土装置220と、砕土装置220で得られた粒状土に加水(水分供給)して混合する加水混合装置221を備えている。また、砕土装置220で処理された粒状土を加水混合装置221へ供給する第一土搬送装置222と、加水混合装置221で処理された粒状土を床土供給装置304へ供給する第二土搬送装置223を備えている。尚、第一土搬送装置222及び第二土搬送装置223は、複数のバケットにより次行程のタンク上方まで上昇搬送する構成となっている。砕土装置220は、タンク内部で回転する攪拌体により土を攪拌して砕く構成となっている。加水混合装置221は、水供給ノズルからタンク内の土に所定量の水を供給し、タンク内で回転する攪拌体により第一の所定時間土を攪拌して水分の均一化を図りながら加水処理する。そして、加水処理終了から第二の所定時間(例えば1分)後、タンク内に備える水分センサ224により加水処理した土の水分量を測定し、水分量が目標水分量(例えば土壌水分量PF=1.2kPa)に達していなければ、再度加水処理(例えば15秒程度)して第二の所定時間後に土の水分量を測定する。水分量が目標水分量に達するまで加水処理を繰り返す。水分量が目標水分量に達したならば、土を排出して第二土搬送装置223により床土供給装置304の床土タンクへ供給する。逆に、土の水分量が目標水分量を超過する場合は、加水混合装置221内のタンクに所定量の土を供給し、攪拌体により攪拌し、土の水分量の測定に基づいて目標水分量となるまで処理する。これにより、気温や湿度等の環境の変化に拘らず、所望の水分量の土を得ることができ、高精度で水分量を制御できる。尚、最初の加水処理における攪拌時間及び2回目以降の加水処理又は土混合における攪拌時間は、各々調節して設定できる構成となっている。
【0014】
尚、水分センサ224は、加水混合装置221のタンク内の底部に配置している。上述では攪拌体の回転により混合する形態について説明したが、内部に攪拌用の羽根を備えるドラム全体を回転させて混合する形態の場合は、ドラム内の攪拌用の羽根に水分センサ224を固着して取り付ければよい。
【0015】
加水混合装置221により加水処理する場合は、播種設備302の育苗箱搬送コンベヤ303上の水稲用の灌水装置305及び野菜用の灌水装置308による灌水を行わないようにできる。これにより、水稲用の灌水装置305及び野菜用の灌水装置308の灌水による水分むらを防止することができる。特に、縦横に複数のセルを配置した野菜用のセルトレイを使用する場合は、水分むらが顕著になる傾向があるが、加水混合装置221による事前の加水処理により水分むらを防止できる。よって、育苗箱C又はセルトレイである育苗器の全域にわたって出芽を揃えることができて育苗の均一化を図ることができ、特に、接ぎ木用の苗として容易に使用できる。また、安定した育苗が行えるので、苗の出荷時期が変動しにくくなり、不良苗を取り除いて補植するようなことが少なくなり、播種量の削減が図れる。
【0016】
尚、上述では、土補給機219により床土供給装置304へ土を補給する場合について説明したが、土補給機219により覆土供給装置307へ土を補給する構成としてもよい。
【0017】
播種設備302の播種装置306の貯留する種籾の減少に伴って、種籾コンテナ314から自動的に播種装置306へ種籾を供給する種籾供給コンベア315を設けている。この播種育苗施設には浸種水槽316を複数個(5個)設けており、水を張った該浸種水槽316内へ種籾を収容した状態の種籾コンテナ314を沈めて浸種して種子の芽出しを促進した後、その種子を播種装置306へ供給するようになっている。浸種水槽316へ供給される水は電気分解により生成される電解水(消毒液)であり、この浸種行程において種子の消毒も行う。従って、浸種水槽316は、浸種設備並びに種子消毒設備を構成している。前記電解水として生成される強酸性水と強アルカリ水とは、所望の温度に維持するべく共通の緑化室200に設けた酸性水タンク201及びアルカリ水タンク202に貯留されている。浸種水槽316へ供給する水は、前記タンク201,202内の貯留量等に応じて強酸性水か強アルカリ水か適宜選択することができるが、複数個備える浸種水槽316ごとに強酸性水と強アルカリ水とを振り分けて供給し、浸種行程が終わると各浸種水槽316内の強酸性水と強アルカリ水とを混合させて中和し、中和された水を排水するのが理想的である。尚、この播種育苗施設には種籾コンテナ314ごと収容できる催芽設備204も備えており、種籾コンテナ314内で種子を催芽させることもできる。
【0018】
次に、段積設備310について説明する。この段積設備310は、育苗箱搬送コンベヤ313の終端部に配置され、該育苗箱搬送コンベヤ313で搬送される育苗箱Cを下方から持ち上げて段積する段積装置317と、該段積装置317で段積された育苗箱Cを把持して横移動し積付ける積付装置318と、該積付装置318で育苗箱Cが積付けられる積付アーム319と、該積付アーム319を上下移動及び横移動させて所定位置に移載する移載機構320とを備えている。
【0019】
育苗箱搬送コンベヤ303の搬送終端部には、搬送されてくる育苗箱Cを減速して停止させる衝撃吸収ストッパ356を設けている。衝撃吸収ストッパ356は、左右方向の回動支点軸225回りに回動する構成であり、育苗箱Cが接触するストッパ部226を先端部に備える主アーム227と、主アーム227と一体回転する副アーム228から構成されている。副アーム228には衝撃吸収用スプリング229を連結しており、衝撃吸収用スプリング229により副アーム228を上側に付勢して主アーム227を育苗箱C側に付勢し、搬送されてくる育苗箱Cがストッパ部226に衝突すると、衝撃吸収用スプリング229が伸長しながら育苗箱Cの搬送速度を徐々に減速して該育苗箱Cを所定の位置で停止させる構成となっている。これにより、育苗箱C内の培土の土寄りを防止しながら育苗箱Cの搬送を停止できる。
【0020】
また、副アーム228の回動支点軸225寄りの位置には突出板230を固着して設け、突出板230の上側には強制退避装置となる退避用シリンダ231を設けている。退避用シリンダ231のシリンダロッド231aが下方へ向けて突出することにより、シリンダロッド231aの下端で突出板230を下側へ押して副アーム228を下側へ回動させ、主アーム227を衝撃吸収用スプリング229に抗して育苗箱Cとは反対側へ回動させてストッパ部226を育苗箱Cから強制的に退避させる構成である。尚、退避用シリンダ231は、電力で作動する電動式であるが、空気圧により作動する空気圧式としてもよい。
【0021】
段積装置317は、育苗箱搬送コンベヤ303で搬送され衝撃吸収ストッパ356で受け止められた育苗箱Cの底面に接触して該育苗箱Cを持ち上げる偏心カム321と、該偏心カム321で持ち上げられた育苗箱Cの縁部を支える支持板322とを備えている。偏心カム321は、偏心した回動軸323で駆動する円板であり、持ち上げる育苗箱Cの前後左右に計4個設けられている。4個の偏心カム321は、同じ移送で駆動回転し、同時に育苗箱Cを持ち上げる。支持板322は、左右に2枚設けられ、スプリングで左右外側に付勢され、偏心カム321の回動軸323と一体回転する駆動カム324の駆動により、駆動カム324の突部324aに押されて育苗箱C側(左右内側)へ向けて移動する。従って、支持板322は、左右外側から育苗箱C側(左右内側)へ向けて移動して育苗箱Cの縁部の下方に突出する構成となっている。
【0022】
そして、偏心カム321の回転により該偏心カム321が育苗箱Cを持ち上げるべく該育苗箱Cに接触する直前のタイミングで、退避用シリンダ231のシリンダロッド231aを下方に突出させてストッパ部226を育苗箱Cから退避させる。このタイミングは、衝撃吸収ストッパ356により搬送されてきた育苗箱Cが完全に停止したタイミングでもある。その後、偏心カム321が回転して該偏心カム321の径が最大となる部分で該偏心カム321による最上昇位置へ育苗箱Cを持ち上げた直後に、退避用シリンダ231のシリンダロッド231aを上方に戻して衝撃吸収用スプリング229のスプリング力によりストッパ部226を育苗箱搬送コンベヤ303で搬送される育苗箱Cを受け止めるための位置(通常位置)に復帰させる。従って、持ち上げられる育苗箱Cに衝撃吸収ストッパ356が接触することがないので、持ち上げ時の育苗箱Cの位置ずれを防止でき、既に段積された育苗箱群に適正に嵌合させることができ、適正な段積姿勢を得ることができる。尚、上述では、ストッパ部226を通常位置へ復帰させるタイミングを、偏心カム321による最上昇位置へ育苗箱Cを持ち上げた直後としたが、偏心カム321の回転により持ち上げられる育苗箱Cが育苗箱搬送コンベヤ303で搬送される育苗箱Cの搬送位置よりも高い位置まで上昇したときに設定してもよい。
【0023】
積付装置318は、所定の段積枚数(10枚)に段積された育苗箱Cをまとめて把持して移動する構成であり、一対の可動アーム326で育苗箱Cを把持する。積付装置318は、積付アーム319上に、前記段積枚数(10枚)に段積された育苗箱Cを順に上側に重ねて複数回(計3回)繰り返して積付けることにより、育苗箱Cを所定の積付枚数(計30枚)に積付ける構成となっている。一対の可動アーム326は、育苗箱Cの長辺側となる側面に接触する構成であり、前後に2組設けられている。また、育苗箱Cの前後左右計4箇所に、育苗箱Cの長辺側となる側面に接触して育苗箱Cの位置を規制する規制板である規制具325を設けている。該規制具325は、前後方向において前後に2組設けられた可動アーム326の間に配置される。可動アーム326は、上下移動用モータ327により上下動し、横移動用モータ328により駆動する積付用ラック329を介して横移動し、空気圧アクチュエータ362により上部の前後方向の回動軸326a回りに横方向に回動する構成となっている。規制具325は、上下移動用モータ327、横移動用モータ328及び空気圧アクチュエータ362により、可動アーム326と共に上下動、横移動及び回動する構成となっている。更に、規制具325は、可動アーム326を介して取り付けた下動用空気圧シリンダ363により、下端が可動アーム326の先端よりも下位まで下動する構成となっている。尚、下動用空気圧シリンダ363により下動しない状態では、可動アーム326の下端よりも規制具325の下端が若干上位となる。
【0024】
可動アーム326の先端部には、把持する育苗箱Cを下方から支えるための育苗箱C側に突出する突出部364を設けている。該突出部364は、鉛直方向部分364aと水平方向部分364bからなる正面視L字型の板材で構成され、水平方向部分364bの上面(表面)が把持する育苗箱Cの底面に接する接触面となる。突出部364は、平面視でコの字型で上下に長いスライド部材365の下端に前記鉛直方向部分364aを介して締付ボルトにより固着されている。従って、締付ボルトを外して突出部364をスライド部材365から取り外すことができる。スライド部材365は、四角形状の挿通孔を有する上下に長いスライドガイド366に上下にスライド移動自在に挿通され、下部はスライドガイド366から露出している。尚、スライドガイド366が、可動アーム326の基部となる。スライドガイド366からの露出部分におけるスライド部材365の適宜位置には、スライド部材365の外周を囲むスライド部材側スプリング受け板365aを固着し、スライドガイド366の下部の適宜位置には、スライドガイド366の外周を囲むスライドガイド側スプリング受け板366aを固着し、スライド部材側スプリング受け板365aとスライドガイド側スプリング受け板366aの間でスライド部材365及びスライドガイド366の外周には、圧縮スプリングである突出部付勢具367を設けている。従って、突出部付勢具367により、スライド部材365すなわち突出部364はスライドガイド366に対して下側に付勢されている。よって、突出部364及びスライド部材365は、突出部付勢具367に抗して上動し得る。尚、スライドガイド366に設けた上下方向の案内孔に、スライド部材365の上部に設けたストッパ部分365bを挿入しており、スライド部材365が下限よりも下がらないように規制している。また、スライド部材365の前記露出部分には、上下に延びる側面接触用板365cを2本固着(溶接)している。この側面接触用板365cの端面が、可動アーム326で把持する育苗箱Cの側面に接する可動アーム326の側面の接触面となる。可動アーム326は、回動軸326aに沿って前後に移動調節できる構成となっており、側面接触用板365cの端面(可動アーム326の側面の育苗箱Cへの接触面)と突出部364(突出部364の育苗箱Cへの接触面)の位置を調節できる。
【0025】
可動アーム326及び規制具325は、先ず上下移動用モータ327により下動し、空気圧アクチュエータ362により内側に回動して段積された育苗箱Cを把持し、把持した育苗箱Cを上動して持ち上げる。また、横移動用モータ328により横移動して把持した育苗箱Cを積付アーム319上へ移動する。その後、育苗箱Cを積付けるべき位置より若干上位まで可動アーム326及び規制具325を下動する。その後、積付アーム319上に既に積付けた育苗箱Cがある場合、すなわち積付アーム319上に複数回(計3回)繰り返して積付けるうちの1回目以外(2回目と3回目)の積み付けをする場合は、下動用空気圧シリンダ363により、規制具325の下端が積付アーム319上に既に積付けた最上の育苗箱Cの高さとなるまで該規制具325を下動させ、規制具325が前記最上の育苗箱Cの側面に接触することにより該最上の育苗箱Cを適正な位置に規制する。尚、積付アーム319上に複数回(計3回)繰り返して積付けるうちの1回目の積み付けをする場合は、下動用空気圧シリンダ363は作動せず規制具325は通常の上動位置のままである。そして、可動アーム326及び規制具325を外側へ回動して育苗箱Cの把持を解除し、把持していた育苗箱Cを既に積付けた育苗箱C上に落下供給する。その後、上下移動用モータ327により可動アーム326及び規制具325が上動し、更に下動用空気圧シリンダ363により規制具325が上動し、可動アーム326及び規制具325が積付けられた育苗箱Cから上方に退避する。
【0026】
積付アーム319は、前後2本のアーム体319aと、該アーム体319aの先端部に各々設けた載せ板319bとを備え、左右移動用モータ392により駆動する移載用ラック329を介して左右移動し、下方に設けたパンタグラフ機構330により上下移動する。そして、積付装置318が3回に分けて上下に重ねて計30枚の育苗箱Cを積付アーム319に積付けると、左右移動用モータ392の駆動により積付アーム319が往行程の横移動をして待機する台車311内まで移動し、パンタグラフ機構330により積付アーム319が下動して育苗箱Cを台車311の桟状の載台311aへ移し、その後、左右移動モータ328の駆動により積付アーム319が復行程の横移動をして退避位置まで移動し、パンタグラフ機構330により退避位置から元の通常位置へ上動する。台車311は、前後左右計4箇所の載置位置に段積された育苗箱Cを載置する構成となっており、前記載置位置が積付アーム319に対向する位置にくるべく適宜移動する。従って、積付アーム319は、該積付アーム319の手前側の載置位置と奥側の載置位置とに育苗箱Cを積付ける。尚、台車311は、育苗箱搬送コンベヤ303に沿って並行に設けた台車走行レール331上を走行する構成となっている。
【0027】
積付アーム319は、前記奥側の載置位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを奥側の載置位置の載台上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台上へ移載する。復行程の横移動の途中で奥側の載置位置の育苗箱Cから外れ且つ台車311内の位置に到達したことを検出する横移動センサ332を、積付アーム319の移動経路に沿う位置に設けている。復行程の横移動の途中で横移動センサ332が上述の位置に到達したことを検出すると、横移動しながらパンタグラフ機構330により上動して通常位置へ戻る。また、手前側の載置位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを手前側の載置位置の載台上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台上へ移載し、復行程の横移動で退避位置Iへ移動する。
【0028】
この退避位置Iに積付アーム319がある状態で、積付装置318が最初の計10枚の育苗箱Cを積付アーム319に直接積付ける。その後、積付装置318が2回目の積付を行う前に、積付アーム319が退避位置Iから通常位置Hへ上動する。従って、積付装置318が2回目及び3回目の積付を行うときは、積付アーム319は通常位置にある。
【0029】
積付装置318から積付アーム319に最初(1回目)に積付けるとき、段積された育苗箱Cを把持する把持位置Jよりも退避位置Iにある積付アーム319は下位の位置となる。従って、積付装置318の可動アーム326は、育苗箱Cを把持してから把持位置Jから若干浮上し、横移動して積付アーム319上へ移動し、前記退避位置Iまで下動し、可動アーム326を外側へ可動して育苗箱Cの把持を解除する。積付装置318から積付アーム319に2回目の育苗箱Cを積付けるとき、把持位置Jと積付アーム319上の1回目の育苗箱Cの上面とは略同じ高さとなる。従って、積付装置318の可動アーム326は、育苗箱Cを把持して把持位置Jから若干浮上し、横移動して積付アーム319上へ移動し、前記1回目の育苗箱Cの上面まで若干下動し、可動アーム326を外側へ可動して育苗箱Cの把持を解除する。積付装置318から積付アーム319に3回目の育苗箱Cを積付けるとき、把持位置Jよりも積付アーム319上の2回目の育苗箱Cの上面が高くなる。
【0030】
従って、積付装置318の可動アーム326は、育苗箱Cを把持して把持位置Jから前記2回目の育苗箱Cの上面よりも若干高い位置まで上動し、横移動して積付アーム319上へ移動し、前記2回目の育苗箱Cの上面まで若干下動し、可動アーム326を外側へ可動して育苗箱Cの把持を解除する。
【0031】
積付アーム319により育苗箱Cを移載する所定位置へ台車311を後方から押して搬送する搬送押出具368を、前後に設けている。尚、本段落を含め、台車311の搬送に関する説明は、台車311の搬送下手側を前側とし、台車311の搬送上手側を後側として説明する。前後の搬送押出具368は、各々搬送用モータ369の駆動が伝動チェーン等の伝動機構を介して伝動されることにより、前後方向に延びる前後各々の案内レール370に沿って前後に移動する。前側の搬送押出具368が台車311を前記所定位置へ搬送する構成となっており、前側の搬送押出具368により搬送される台車311に前側から接触して該台車311を前記所定位置へ保持する台車ストッパ371を、前後に設けている。すなわち、後側の台車ストッパ371により台車311が保持されるときは、台車311の前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置へ積付アーム319が育苗箱Cを積み付ける状態となり、前側の台車ストッパ371により台車311が保持されるときは、台車311の前後左右計4箇所の載置位置のうちの後側2箇所の載置位置へ積付アーム319が育苗箱Cを積み付ける状態となる。台車ストッパ371は、プレートに固着した取付ボルト371aの頭部に台車311の前端部が接触して台車311の位置を保持する構成であり、前記プレートが上下方向のストッパ回動軸371b回りに回動して前後に移動自在に構成され、ダンパーである台車付勢具371cにより台車311側となる後側へ回動付勢されている。前記取付ボルト371aの近くの前記プレート部分には、台車311が取付ボルト371aに接触したことを検出するための磁気式の近接スイッチである台車検出具371dを設けている。後側の搬送押出具368は、前側の搬送押出具368が台車311を育苗箱Cを移載する所定位置よりも前側にまで搬送して前記所定位置に台車311が存在しないとき、次の台車311を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送する。
【0032】
すなわち、後側の搬送押出具368が台車311を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送すると、前側の搬送押出具368が台車311を引き継いで搬送し、制御装置により後側の台車ストッパ371に台車311の前端が接触したことを台車検出具371dが検出してから所定時間後まで前側の搬送押出具368の搬送動作を継続してから該搬送動作を停止する。これにより、台車311が後側の台車ストッパ371を前側に押しながら移送され、ダンパーである台車付勢具371cが伸長して後側の台車ストッパ371が台車311を後側へ付勢する状態となり、従って、後側の台車ストッパ371と前側の搬送押出具368で台車311を加圧して挟んだ状態となり、台車311を所望の位置で確実に保持できる。そして、積付アーム319により前記所定位置への育苗箱Cの移載が終わると、前側の搬送押出具368で台車311を搬送する。すると、後側の台車ストッパ371が前側に回動しながら台車311の搬送経路から退避し、更に搬送していくと前側の台車ストッパ371に台車311の前端が到達する。制御装置により前側の台車ストッパ371に台車311の前端が接触したことを台車検出具371dが検出してから所定時間後まで前側の搬送押出具368の搬送動作を継続してから該搬送動作を停止する。これにより、台車311が前側の台車ストッパ371を前側に押しながら移送され、ダンパーである台車付勢具371cが伸長して前側の台車ストッパ371が台車311を後側へ付勢する状態となり、従って、前側の台車ストッパ371と前側の搬送押出具368で台車311を加圧して挟んだ状態となり、台車311を所望の位置で確実に保持できる。そして、積付アーム319により前記所定位置への育苗箱Cの移載が終わると、前側の搬送押出具368で台車311を前記所定位置から完全に抜け出すまで搬送する。すると、前側の搬送押出具368が台車311を育苗箱Cを移載する所定位置よりも前側にまで搬送して前記所定位置に台車311が存在しない状態となるから、後側の搬送押出具368が次の台車311を前後左右計4箇所の載置位置のうちの前側2箇所の載置位置が前記所定位置へ到達する直前まで搬送する。以下、上述した搬送行程を繰り返して、台車311を順次搬送していく。尚、搬送押出具368の作動における前記所定時間は、制御装置に入力される調節スイッチにより調節できる構成となっている。
【0033】
尚、前後の搬送押出具368は互いに干渉しないように上下位置を異ならせてあり、前後の案内レール370も互いに上下位置を異ならせてある。前後の案内レール370は、前後の搬送押出具368が引き継いで台車311を搬送できるよう、一部の前後方向における位置が重なり合う。台車ストッパ371は、搬送される台車311に押されて台車311の搬送経路から退避する構成であるが、搬送押出具368も同様に上下方向の押出具回動軸回りに前側へ回動可能に設けられ、台車搬送後の搬送押出具368が後側へ戻り動作するときに搬送経路上にある次の台車311に干渉することになるが、搬送押出具368が前側へ回動することで前記搬送経路から退避する構成となっている。
【0034】
以上により、この段積設備310は、育苗箱搬送コンベヤ303で搬送される育苗箱Cを下方から持ち上げて段積する段積装置317と、該段積装置317で段積された育苗箱Cを把持して横移動し積付ける積付装置318と、該積付装置318で育苗箱Cが積付けられる積付アーム319と、該積付アーム319を上下移動及び横移動させて所定位置に移載する移載機構320を設けている。よって、積付装置318で育苗箱Cを直接積付アーム319に積付けるので、移載精度を良好に維持しながら、作業能率向上が図れる。
【0035】
また、積付装置318は、段積された育苗箱Cを複数回に分けて上下に重ねて積付アーム319へ積付ける構成とし、前記複数回の積付は、段積された育苗箱Cを把持する把持位置Jよりも下位の位置へ積付ける形態と、把持位置Jよりも上位の位置へ積付ける形態とを有し、前記下位の位置へ積付ける形態では段積された育苗箱Cを把持位置Jから下降行程を介して積付け、前記上位の位置へ積付ける形態では段積された育苗箱Cを把持位置Jから上昇行程を介して積付ける構成としている。よって、下位の位置へ積付ける形態では段積された育苗箱Cを把持位置Jから下降行程を介して積付け、前記上位の位置へ積付ける形態では段積された育苗箱Cを把持位置Jから上昇行程を介して積付ける構成としたので、複数回の積付における積付位置の高さが把持位置Jの高さに極力近くなり、複数回の積付の移送経路を全体的に短縮化でき、作業能率向上が図れる。
【0036】
また、積付アーム319は、通常位置から往行程の横移動で段積された育苗箱Cを前記所定位置にある載台311a上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台311a上へ移載し、前記下動した状態のままの復行程の横移動で載台位置から退避位置Jへ退避する構成とし、積付装置318は、積付アーム319に最初に育苗箱Cを積付けるとき、前記退避位置Jにある積付アーム319に直接積付け、次の育苗箱Cを積付アーム319に積付ける前に、積付アーム319を通常位置Hへ上動する構成としている。よって、積付アーム319に最初に育苗箱Cを積付けるときは、退避位置Jにある積付アーム319に直接積付けるので、積付アーム319が退避位置Jから通常位置Hに上動するのを待たずして育苗箱Cを積付けることができ、作業能率の向上が図れる。尚、段積装置317が計10枚の育苗箱Cを段積して積付装置318が最初の育苗箱Cを積付アーム319に積付けるまでの所要時間は、積付アーム319が通常位置Hから育苗箱Cを台車311の手前側の載置位置に載置して退避位置Iに戻るまでの所要時間と略同等である。
【0037】
また、積付アーム319は、該積付アーム319の手前側と奥側の位置に育苗箱Cを積付ける構成とし、前記奥側の位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを前記所定位置にある載台311a上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台311a上へ移載し、復行程の横移動で上動しながら通常位置Hへ復帰し、前記手前側の位置に積付けるときは、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを前記所定位置にある載台311a上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台311a上へ移載し、復行程の横移動で退避位置Iへ移動し、退避位置Iから通常位置Hへ上動する構成としている。よって、奥側の位置に積付けるときは、積付アーム319が復行程の横移動で上動しながら通常位置Hへ復帰するので、積付アーム319の通常位置Hへの復帰を早めることができ、作業能率の向上が図れる。
【0038】
そして、段積設備310は、育苗箱搬送コンベヤ303で搬送される育苗箱Cを下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置317と、該段積装置317で段積された育苗箱Cを把持して横移動し所定の積付枚数に積付ける積付装置318と、該積付装置318で積付けられた育苗箱Cを載せる積付アーム319と、該積付アーム319を上下移動及び横移動させて所定位置に移載する移載機構320を設け、積付装置318は、前記段積枚数に段積された育苗箱Cを上側に重ねて複数回積付けることにより、育苗箱Cを前記積付枚数に積付ける構成とし、横方向に可動して育苗箱Cを把持する可動アーム326と、該可動アーム326と共に横方向に可動すると共に該可動アーム326の先端よりも下位まで下動することにより、既に積付けた育苗箱Cの側面と可動アーム326が把持する育苗箱Cの側面に接触して育苗箱Cの位置を規制する規制具325を設けている。
【0039】
よって、規制具325が下動することにより、既に積付けた育苗箱Cの側面と可動アーム326が把持する育苗箱Cの側面に接触して育苗箱Cの位置を規制するので、先に積付けた育苗箱Cとその上に積付ける育苗箱Cを揃えて育苗箱Cの積付姿勢を高精度で適正に維持でき、育苗箱Cの積付姿勢ひいては移載精度を良好に維持でき、積付けられた育苗箱Cの搬送速度を速くしても該育苗箱Cが崩れないようにでき、作業能率向上が図れる。特に、木箱等、上下で嵌り合わない育苗箱を積付けるとき、上下の育苗箱を高精度で適正に維持でき、作業能率向上が図れる。
【0040】
また、可動アーム326が育苗箱C側へ可動して段積された育苗箱Cを把持し、その後可動アーム326が育苗箱Cを把持した状態で上動すると共に横移動し、その後規制具325が下動して既に積付けた育苗箱Cの側面と可動アーム326が把持する育苗箱Cの側面に接触し、その後可動アーム326及び規制具325が下動して可動アーム326が把持する育苗箱Cを積付け、その後可動アーム326及び規制具325が育苗箱Cとは反対側へ可動し、その後可動アーム326及び規制具325が上動して積付けられた育苗箱Cから退避する構成としている。
【0041】
よって、可動アーム326が育苗箱Cを把持して横移動した後、規制具325が下動して既に積付けた育苗箱Cの側面と可動アーム326が把持する育苗箱Cの側面に接触するので、育苗箱Cを積付ける直前に規制具を下動させるため、下動させた規制具325が可動アーム326により育苗箱Cを把持するときや横移動するときに邪魔にならず、ひいては育苗箱Cの把持や横移動に伴う可動アーム326の移動経路の短縮化が図れ、作業能率向上が図れる。また、可動アーム326が把持する育苗箱Cを積付ける前に、規制具325が下動して既に積付けた育苗箱Cと可動アーム326が把持する育苗箱Cを揃えるので、積付ける育苗箱Cを円滑に揃えることができる。更に、可動アーム326が下動して把持する育苗箱Cを積付けるときも規制具325が育苗箱Cに作用し、育苗箱の積付姿勢を高精度で適正に維持できる。そして、規制具325は育苗箱Cとは反対側へ可動して育苗箱Cから退避するので、規制具325の退避動作で育苗箱Cの積付姿勢を悪化させるようなことが抑えられ、育苗箱Cの積付姿勢を高精度で適正に維持できる。
【0042】
また、積付装置318により段積された育苗箱Cを上側に重ねて複数回積付けるうちの1回目の積付け時には、規制具325が下動しない構成とした。
よって、1回目の積付け時には規制具325が下動しないので、規制具325が邪魔にならずに前記1回目の積付けを円滑に行え、作業能率向上が図れる。
【0043】
また、可動アーム326の先端部には把持する育苗箱Cを下方から支えるための突出部364を設け、該突出部364を可動アーム326の基部に対して上下に移動自在に支持し、突出部364を可動アーム326の基部に対して下側に付勢する突出部付勢具367を設けた。
【0044】
よって、可動アーム326の下動で育苗箱Cを積付けるとき、既に積付けた育苗箱Cに突出部364が接触しても該突出部364が突出部付勢具367に抗して上動するため、突出部364の損傷を防止すると共に、既に積付けた育苗箱Cの積付姿勢が悪化するようなことが抑えられ、育苗箱Cの積付姿勢を高精度で適正に維持できる。逆に言えば、可動アーム326の下動で把持する育苗箱Cを、既に積付けた育苗箱Cに近づけてから可動アーム326を育苗箱Cとは反対側へ可動して落下供給することができ、育苗箱Cの落差を小さくできるため、育苗箱Cの積付姿勢を高精度で適正に維持できる。特に、異なる種類の育苗で該育苗箱の上下の厚みの相違や、育苗箱に充填される培土の量や均平状態の相違等により、所定の段積枚数に段積された育苗箱C全体の高さや所定の積付枚数に積付けられた育苗箱C全体の高さが相違することで、既に積付けた育苗箱Cに突出部364が接触するのに対応できる。
【0045】
また、把持する育苗箱Cの側面に接する可動アーム326の側面の接触面を板材の端面で構成し、把持する育苗箱Cの底面に接する突出部364の接触面を板材の表面で構成し、可動アーム326の側面の前記接触面と突出部364の前記接触面の位置を調節可能に構成し、可動アーム326の側面の接触面に対して突出部364を着脱できる構成とした。
【0046】
よって、把持する育苗箱Cの側面に接する可動アーム326の側面の接触面を板材の端面で構成したので、前記接触面の育苗箱Cへの接触面積を小さくでき、前記接触面への土の付着を抑えることができる。また、可動アーム326の側面の前記接触面と突出部364の前記接触面の位置を調節可能に構成したので、育苗箱Cの種類に応じて、例えば育苗箱Cのリブの部分に可動アーム326の側面や突出部364が接触して育苗箱Cを不安定に支持するようなことを回避でき、育苗箱Cを安定的に支持できて育苗箱Cの積付姿勢を高精度で適正に維持できる。更に、突出部364の摩耗や苗箱の種類に応じて、突出部364を交換できる。
【0047】
また、積付アーム319は、通常位置Hから往行程の横移動で段積された育苗箱Cを前記所定位置にある台車311の載台311a上へ移動し、下動して段積された育苗箱Cを載台311a上へ移載し、前記下動した状態のままの復行程の横移動で載台位置から退避する構成とし、後方から押して前記所定位置へ台車311を搬送する搬送押出具368と、該搬送押出具368により搬送される台車311に前側から接触して該台車311を前記所定位置へ保持する台車ストッパ371を設け、該台車ストッパ371を前後に移動自在に設け、台車ストッパ371を台車側となる後側へ付勢する台車付勢具371cと、台車ストッパ371に台車311が接触したことを検出する台車検出具371dを設け、該台車検出具371dが台車ストッパ371に台車311が接触したことを検出してから所定時間後まで搬送押出具368を搬送作動させる構成とした。
【0048】
よって、所定位置で台車ストッパ371と搬送押出具368で圧力を与えながら台車311を挟んでずれないように確実に保持でき、積付アーム319により台車311の適正な位置に育苗箱Cを供給でき、育苗箱Cの移載精度を良好に維持でき、作業能率向上が図れる。
【0049】
そして、段積設備310は、育苗箱搬送コンベヤ303で搬送される育苗箱Cに接触しながら該育苗箱Cの搬送速度を徐々に減速して該育苗箱Cを所定の位置で停止させる衝撃吸収ストッパ356と、前記所定の位置にある育苗箱Cを下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置317を設け、衝撃吸収ストッパ356が育苗箱Cを所定の位置で停止させた後、前記所定の位置にある育苗箱Cを段積装置317が持ち上げ動作する間は、衝撃吸収ストッパ356を当該育苗箱Cから退避させる強制退避装置231を設けている。
【0050】
よって、衝撃吸収ストッパ356が育苗箱Cを所定の位置で停止させるので、育苗箱C内の土寄りを防止できると共に、衝撃吸収ストッパ356が離れた状態で育苗箱Cを持ち上げるので、持ち上げ時に育苗箱Cの位置ずれを防止でき、既に段積された育苗箱群に適正に嵌合させることができ、適正な段積姿勢を得ることができる。
【0051】
また、衝撃吸収ストッパ356は、衝撃吸収用スプリング229により育苗箱C側に付勢され、強制退避装置231により衝撃吸収用スプリング229に抗して育苗箱Cから退避する構成としている。
【0052】
よって、衝撃吸収ストッパ356を、強制退避装置231により衝撃吸収用スプリング229に抗して育苗箱Cから退避させるという簡単な構造となる。
播種育苗施設で育苗した野菜苗は、接木苗製造装置1で接木することもできる。接木苗製造装置1は、台木と穂木を接ぎ木する接木ロボット本体laを中心にその左側に台木取込部(取込部)、同右側に穂木取込部(取込部)2が配置され、接木ロボット本体laには、その前面の左右に台木取込部または穂木取込部2から台木、穂木としての苗をそれぞれ受ける台木前処理部(前処理部)3、穂木前処理部(前処理部)4、中央には、台木前処理部3または穂木前処理部4から受けた台木と穂木を接着する接着処理部7、この接着された接木苗を下方から送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成し、穂木取込部2の手前側には操作パネルlpを設けたものである。
【0053】
台木前処理部3は、空気圧で作動する台木側のロータリーアクチュエータ60の駆動により回転作動する台木搬送アーム61を備え、該台木搬送アーム61により台木取込部からの台木苗を把持し、台木搬送アーム61が90度回転して台木苗を切断位置62に搬送し、その後台木搬送アーム61が更に90度回転して台木苗を接合位置63に搬送する。切断位置で台木切断装置64により台木苗を切断し、双子葉の片葉を切り落とす。尚、切断装置64で切断して切り落とすはずの切除部分が搬送する苗に付着して搬送されることがあるが、切断位置62から接合位置63への搬送経路上には、前記切除部分を取り除く取除部となる樹脂製のブラシ65を設けると共に、台木搬送アーム61にはエアを吹き付けるエアノズル66を設け、切除部分を確実に落として、接木苗の接合を適正に行えるようにしている。尚、樹脂製のブラシ65の接触面は、苗の切断面に沿うように斜めになっている。
【0054】
穂木前処理部4は、空気圧で作動する穂木側のロータリーアクチュエータ67の駆動により回転作動する穂木搬送アーム68を備え、該穂木搬送アーム68により穂木取込部2からの穂木苗を把持し、穂木搬送アーム68が90度回転して穂木苗を切断位置69に搬送し、その後穂木搬送アーム68が更に90度回転して穂木苗を接合位置63に搬送する。切断位置69で穂木切断装置70により穂木苗を切断し、胚軸の下側部を切り落とす。尚、切断装置70で切断して切り落とすはずの切除部分が搬送する苗に付着して搬送されることがあるが、切断位置69から接合位置63への搬送経路上には、前記切除部分を取り除く取除部となる樹脂製のブラシ71とエアを吹き付けるエアノズル72を設け、切除部分を確実に落として、接木苗の接合を適正に行えるようにしている。尚、樹脂製のブラシ71の接触面は、苗の切断面に沿うように斜めになっている。
【0055】
接着処理部7は、接木苗の接合用のクリップ101を一つずつ繰り出すクリップフィーダ73と、台木苗及び穂木苗が接合位置63に到達した状態で該クリップフィーダ73で繰り出されるクリップ101を一つずつ供給して台木苗及び穂木苗を固定するクリップ供給装置74を備えている。尚、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が接合位置63に到達したとき、台木苗と穂木苗の各々の切断面が合致して苗を接合した状態となる。
【0056】
クリップ101は、左右一対の把持部102と左右一対の開閉部103とを備え、この把持部102と開閉部103とが左右各々で一体となった左右のクリップ片を構成し、左右のクリップ片が把持部102と開閉部103との間で互いに接触して回動支点を構成し、左右の開閉部103を閉じると左右の把持部102が開く構成となっている。左右の把持部102は、スプリング104により閉じる側に付勢されており、外力がない状態では閉じる構成となっている。
【0057】
クリップ供給装置74にはクリップ101の移送経路となるガイドレール105を備えており、クリップフィーダ73によるクリップ101の繰り出し作用によりガイドレール105内で把持部102が移送上手側となる姿勢で連続的にクリップ101が移送される。ガイドレール105の終端部は左右幅が狭くなっており、ガイドレール105の終端部へクリップ101が移送されると該クリップ101が左右の開閉部を閉じて左右の把持部102を開く。そして、ガイドレール105の終端からクリップ101を受け継ぐクリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107が開くことで左右の開閉部103を開いて左右の把持部102を閉じる構成となっている。また、ガイドレール105の終端部に設けたクリップ押出装置108により、接合位置63へ順次クリップ101を供給する構成である。
【0058】
ガイドレール105の延長上の位置には、規制部材109を配置している。この規制部材109は、透明で樹脂製の上下方向に沿うプレートで形成され、接合位置63においてクリップ開閉装置106で開閉するクリップ101の前端(把持部102の先端)が接触する位置に配置されている。従って、接合位置63に移送されるクリップ101は、左右の把持部102を開いた状態で前端が規制部材109に接触し、それ以上移送されないように規制される。規制部材109は、ロータリーアクチュエータからなる規制部材移動装置110により前後に回動する移動用アーム111の先端部に固着され、接合位置63のクリップ101に対向して接触する規制位置から、その下側で前側に移動して前記規制位置から退避する退避位置へ回動する構成となっている。
【0059】
従って、まず、退避位置にある規制部材109が、規制部材移動装置110により規制位置へ前側から移動する。台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68の伸張により台木苗及び穂木苗が左右から接合位置63へ供給され、苗を接合状態とする。このとき、規制部材109により苗を接合位置63の適正な位置へ案内される。尚、規制部材109の左右端部は、円弧状もしくはテーパ状に構成され、苗を引っ掛けずに円滑に案内し得る構成となっている。そして、クリップ押出装置108により接合位置63へクリップ101が左右の把持部102を開いた状態で供給されるが、該クリップ101は規制部材109に接触して適正な位置に位置決めされる。このクリップ101の開いた左右の把持部102の間の空間が把持領域となるが、この把持領域内に、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68により搬送された台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部が位置する。つまり、台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部は、左右の把持部102と規制部材109とで囲まれた空間内に位置する。その後、クリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107が開くことで左右の開閉部103を開いて左右の把持部102を閉じ、台木苗及び穂木苗をクリップ101で挟持して固定するが、このときも規制部材109が規制位置にありクリップ101の飛び出しが規制されているので、左右の把持部を閉じる動作でクリップ101の姿勢や位置が不適正となるのを防止している。しかも、把持部102における所望の位置で苗を挟持することができる。左右の把持部102を閉じた後、規制部材109は規制部材移動装置110により退避位置に移動する。その後、クリップ押出装置108によりクリップ101が押し出されて当該クリップ101ごと接木苗が接木苗送出部8へ放出され、該接木苗送出部8により接木苗をコンテナへ搬送する。規制部材109は、透明であるので、邪魔にならずに作業者が苗の接合状況を容易に視認することができ、各部の調整等が不適正で発生する不良な接木苗の多量発生を防止する。ひいては、台木前処理部3、穂木前処理部4及び接着処理部7の各部の調整作業が容易に行え、調整作業時間の短縮化が図れる。
【0060】
クリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107の下方には、接合位置63へ供給されるクリップ101を下側から支持する支持部材となる固定支持板121及び可動支持板122を設けている。固定支持板121は、ガイドレール105の延長上に配置され、接合位置63にある苗の胚軸の位置から左側にかけて設けられ、接合位置63から左右一方側となる台木前処理部側の部分を構成する。可動支持板122は、固定支持板121の前側(クリップ101の放出側)で接合位置63にある苗の胚軸の位置から右側にかけて設けられ、接合位置63から左右他方側となる穂木前処理部の部分を構成する。そして、固定支持板121の前端面121aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、固定支持板121は、前後方向において接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ101の移送上手側(後側)に位置し、固定支持板121の前端面121aが、接合位置63で接合される苗の胚軸にクリップ101の移送上手側で接する移送上手側の端面となる。また、可動支持板122の左端面122aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、可動支持板122は、接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ101の前後方向の移送下手側(前側)にまで至り、可動支持板122の左端面122aが、接合位置63で接合される苗の胚軸に穂木前処理部側で接する穂木前処理部側の端面となる。尚、可動支持板122は、固定支持板121の前端面121aよりも前側(クリップ101の放出側)へ台木苗の胚軸の軸径(3〜4mm)程度突出している。更に、可動支持板122は、長孔122bを介して左右位置調節可能に固定支持板121に取り付けられ、長孔122bに挿入する締結ボルト123を外せば取り外すこともできる。従って、可動支持板122の左右位置変更により可動支持板122の左端面122aの左右位置を変更できると共に、可動支持板122の取り外しにより可動支持板122の左端面122aを備えない状態に切替できる。
【0061】
台木搬送アーム61による台木苗の切断位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の切断位置69への搬送作動は、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68がそれぞれの苗を共に把持するのに伴って同期して作動を開始するが、穂木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて穂木側のロータリーアクチュエータ67へのエア流量を少なくして穂木搬送アーム68の作動速度を台木搬送アーム61の作動速度よりも若干遅くして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングを台木搬送アーム61が切断位置62に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達したことを穂木側のローリングアクチュエータ67に設けた穂木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、台木切断装置64及び穂木切断装置70が切断動作を開始する。これにより、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が各々切断位置62,69に確実に到達した状態で各々の切断装置64,70を作動させることができ、適正に苗を切断することができると共に、台木側の切断位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、台木苗よりも軽い穂木苗をゆっくりと搬送させることにより、穂木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、穂木苗における切断位置が不適正になって接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。従来は、台木搬送アームと穂木搬送アームを同じ作動速度で作動させるようにしていたので、台木側と穂木側のエアホースの長さや屈曲度合や傷み具合の相違等により、台木搬送アームと穂木搬送アームの内の一方の作動速度が遅くなると、作動速度が速い側で切断位置に到達することを検出するようにしたとき、作動速度が遅い側が切断位置に到達する前に切断装置が作動して、苗の切断が不適正となるおそれがある。
【0062】
同様に、台木搬送アーム61による台木苗の接合位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の接合位置69への搬送作動は、台木切断装置64及び穂木切断装置70の切断動作の完了に伴って同期して作動を開始するが、台木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて台木側のロータリーアクチュエータ60へのエア流量を少なくして台木搬送アーム61の作動速度を穂木搬送アーム68の作動速度よりも若干遅くして、台木搬送アーム61が接合位置62に到達するタイミングを穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、台木搬送アーム61が切断位置62に到達したことを台木側のローリングアクチュエータ60に設けた台木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、クリップ供給装置74がクリップ供給動作を開始する。これにより、台木苗及び穂木苗が各々接合位置63に確実に到達した状態でクリップを供給することができ、台木苗と穂木苗を適正に固定することができて接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木側の接合位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、片葉切断した状態の台木苗をゆっくりと搬送させることにより、台木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。
【0063】
台木切断装置64は、切断刃75と、切断する側の子葉の葉柄を支える葉柄支え具76と、残す側の子葉を上側から押さえる子葉押さえ具77を備える。切断刃75と葉柄支え具76は、空気圧で作動する前後移動用シリンダ78により移動して、切断位置62にある台木苗に近づき、葉柄支え具76が葉柄に接触して保持する。尚、前後移動シリンダ78は台木苗側が高位となるよう傾斜しており、切断刃75と葉柄支え具76が下側寄りの位置から台木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。その後、空気圧で作動する子葉押さえ用ロータリーアクチュエータ79により子葉押さえ具77が下側に回動し、子葉押さえ具77の先端部に設けた子葉押さえローラ80により子葉を上側から押さえる。その状態で、空気圧で作動する切断用シリンダ81により斜め上方向に直線移動軌跡で切断刃75を移動させ、苗の胚軸及び片葉を切断して切り落とす。苗を切断すると、前後移動シリンダ78により切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避させ、その後、子葉押さえ具77を上側へ回動して元の位置に戻すと共に、切断用シリンダ81により切断刃75を斜め下方向に移動させて元の位置に戻す。
【0064】
よって、直線移動軌跡で苗を切断するので、切断面が平面状となり、接木苗の接合率の向上が図れると共に、残す側の子葉の付け根をできるだけ切除しないようにでき、接木苗の成育を良好に維持できる。従来は、切断刃を回転移動軌跡で移動させて苗を切断するので、切断面が曲面状となって接木苗の接合率向上を阻害し、残す側の子葉の付け根を抉り取るように切断して接木苗の成育を阻害するおそれがある。また、葉柄支え具76と子葉押さえ具77により適正な位置で苗を切断することができ、更に、切断用シリンダ81の取付角度を調節することにより、回転移動軌跡で苗を切断する構成と比較して切断角度を容易に調節できる。
【0065】
穂木切断装置70は、切断刃82と、切り落とす側(下側部)の胚軸を支える胚軸支え具83を備える。切断刃82と胚軸支え具83は、空気圧で作動する前後移動用シリンダ84により移動して、切断位置69にある穂木苗に近づき、胚軸支え具83が胚軸に接触して保持する。尚、前後移動シリンダ84は穂木苗側が高位となるよう傾斜しており、切断刃82と胚軸支え具83が下側寄りの位置から穂木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。尚、穂木苗に近づいた状態で、切断刃82は、子葉の裏側(下側)に位置する。そして、空気圧で作動する切断用シリンダ85により斜め下方向に直線移動軌跡で切断刃82を移動させ、苗の胚軸の下側部を切断して切り落とす。苗を切断すると、前後移動シリンダ84により切断刃82及び胚軸支え具83を穂木苗から退避させ、切断用シリンダ85により切断刃82を斜め上方向に移動させて元の位置に戻す。
【0066】
よって、直線移動軌跡で苗を切断するので、切断面が平面状となり、接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木苗に近づいた状態で、切断刃82は子葉の裏側(下側)に位置するので子葉を切除しないようにでき、接木苗の成育を良好に維持できる。従来は、切断刃を回転移動軌跡で移動させて苗を切断するので、切断面が曲面状となって接木苗の接合率向上を阻害し、子葉が大きくて垂れ下がるような苗では切断刃が子葉に接触して子葉を切除したり子葉に傷を付けるおそれがあり、接木苗の成育を阻害するおそれがある。また、胚軸支え具83により適正な位置で苗を切断することができ、更に、切断用シリンダ85の取付角度を調節することにより、回転移動軌跡で苗を切断する構成と比較して切断角度を容易に調節できる。しかも、穂木搬送ハンド68と胚軸支え具83の中間位置で切断刃82が苗を切断するので、苗の切断位置が安定する。
【0067】
尚、台木切断装置64の切断刃75と穂木切断装置70の切断刃82は、平面視で互いに接合位置63側ほど苗から離れるように斜めに配置され、切断する苗に対し前進角を有して移動して苗を切断する。これにより、苗の切断抵抗を抑えて苗の切断を円滑に行えると共に、接木苗を固定するクリップの把持部における先端側(接合位置における前側(切断位置側))から各々の苗を切断することになるので、切断時に苗の切断位置が位置ずれし易い切断終端がクリップの把持部における奥側(接合位置63における後側(切断位置62,69と反対側))となるが、クリップの把持部における奥側で苗の保持精度が高まるため、接木苗の接合率向上が図れる。
【0068】
尚、前記台木取込部及び穂木取込部は互いに左右対称で同様の構成であるので、以下は、穂木取込部2について説明する。
穂木取込側については、穂木取込部2は、接木ロボット本体laの側方で苗ポットに育成した多数の穂木苗(苗)Wを格子配列したセルトレイを順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wに対して進退機構12bにより進退動作可能に穂木苗Wを穂木として個々の把持しつつ胚軸をカットして把持動作する把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に横移動可能に支持する移送機構13と、その移送行程上に配した方向修正部材14等から構成する。また、穂木取込部2と穂木前処理部4との間の穂木受渡し位置(受渡し位置)Rには、穂木取込部2から移送された穂木苗Wを一時的に保持する受渡保持機構15を設ける。
【0069】
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体laの側方に沿って移送動作するべルトコンベヤ等により構成し、横一列の苗が取り出される度にセルトレイの配列ピッチで順次移送動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。移送機構13は、接木苗製造装置1の片側位置で搬入機構11を横断して受渡保持機構15までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能に構成し、セルトレイの横一列の苗において受渡保持機構15側から苗を取り出すべく、把持ハンド12が受渡保持機構15へ苗を供給した後に次に取り出す苗(苗があるセル)の左右位置に順次左右移動する構成となっている。この移送機構13による移送行程に干渉するように、棒状部材または回動抵抗を抑えた縦軸ローラによる方向修正部材14を下垂状に配置する。この方向修正部材14は、移送機構13の左右移送経路の終端の直前位置で、受渡保持機構15に対向する位置より若干搬入機構11側に配置されている。また、受渡保持機構15には、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを保持した際にその子葉展開方向を規制する整列部材16を設ける。これら受渡保持機構15と整列部材16とにより整列保持手段を形成する。
【0070】
次に、穂木取込部2の把持ハンド12について詳細に説明する。
把持ハンド12は、穂木苗Wの胚軸Aの上段部と中段部を把持する上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびその下方に開閉動作により穂木苗Wの胚軸Aの下段部を切断するカッタ機構23を三段重ねに進退機構12bにより一体に進退動作可能に配置し、その側方に独立して上下動作可能に持上げ具24を備えて構成する。また、把持した胚軸Aの近傍で子葉Lと干渉しうる位置に回り止め用の棒状のストッパ25をカッタ機構23から立設する。上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23からなる上下三段の各ハンドの上下間隔を調節可能に設けており、苗の胚軸の長さに応じて各ハンドの上下間隔を変更して、徒長苗や苗の品種に対応して苗を適正に把持できる構成としている。
【0071】
上段のハンド機構21は、左右の開閉アーム21a,21aの先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく左右方向の切欠Bを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成し、その隙間限度設定用の調節ボルト21bを設ける。中段のハンド機構22は、左右の開閉アーム22a,22aのその先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく前後方向の切欠Cを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成する。これら両ハンド機構21,22により、穂木苗の把持位置精度を確保しつつ、穂木苗がその胚軸線で回動可能に把持する。
【0072】
カッタ機構23は、左右の開閉アーム23a,23aの先端部に穂木苗の胚軸Aを切断する刃23bを形成し、かつ、切断後の胚軸Aの移動を拘束するように外周縁を高く形成する。刃23bは、左右の開閉アーム23a,23aのうち、接木ロボット本体laとは左右方向で反対側の開閉アーム23aに取り付けられている。接木ロボット本体la側の開閉アーム23aには、胚軸Aが開閉アーム23a,23aの基端側に入り込むのを規制する規制ガイド114を設けている。この規制ガイド114で胚軸Aを規制することにより、胚軸Aの位置ずれを防止して刃23bで円滑に切断できるようにしている。尚、規制ガイド114は、左右の開閉アーム23a,23a及び刃23bの上方に配置され、刃23b側へ胚軸Aが案内されるように刃23b側ほど開閉アーム23a,23aの基端側に位置する構成となっている。
【0073】
上記の両ハンド機構21,22とカッタ機構23は、穂木苗を穂木としてその根側を切断しつつその胚軸を回動可能に緩く把持する遊嵌把持機構を形成する。
前記持上げ具24は、第一の持上げ具41と第二の持上げ具42とを備えて構成される。前記第一の持上げ具41は、穂木苗Wの根元位置まで前下がりに傾斜するとともに、受渡保持機構15側すなわち苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動してくる側となる同穂木苗Wの側方から背後に達するように先端部41tを屈曲したロッドにより形成される。先端部41tとその基部に屈曲して延びる側部41sを略直角に設定することにより、持上げ具41の上行動作により倒れた胚軸Aを起立することができる。持上げ具41の支持部41bは、穂木苗に対する位置関係に合わせて前後位置と高さ位置を調節可能に構成する。
【0074】
また、苗Wに対して前記第一の持上げ具41と左右反対側に第二の持上げ具42を設けている。この第二の持上げ具42は、受渡保持機構15とは反対側で苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動する側となる苗の側方に位置するべく屈曲したロッドにより形成され、前後移動シリンダ43により進退動作可能に設けられている。苗の側方に位置する第二の持上げ具42の先端部42aは、前記第一の持上げ具41の先端部41tと同様に水平で、第一の持上げ具41の先端部41tより若干高位で且つ前後移動シリンダ43により突出させた状態で平面視で交差するように設けられている。従って、第一の持上げ具41の上行動作で第二の持上げ具42が共に上動し、苗の左右両側方及び後方の三方から苗を持ち上げて直立させることができ、把持ハンド12による穂木苗の把持を適正に行える。特に、セルのピッチが狭いセルトレイにおいて、第二の持上げ具42により把持ハンド12が左右移動した側の隣接苗側に苗が傾いたまま把持ハンド12で把持して移送するようなことを防止でき、苗が隣接苗と絡んだまま把持ハンド12で移送されて苗の把持姿勢が不適正になるようなことを防止できる。また、一方の持上げ具41の上下動機構で他方の持上げ具42も上下動させる構成としたので、この上下動機構の簡素化が図れる。また、第二の持上げ具42を平面視で中途部が把持ハンド12側(隣接苗から離れる側)に突出するように屈曲させた構成としているので、該第二の持上げ具42に干渉しないように把持ハンド12の開閉量を所定に維持できると共に、第二の持上げ具42が隣接苗と干渉しにくくなり、苗取り出しの円滑化が図れる。尚、第二の持上げ具42は、平面視で斜めの部分を設けて構成してもよい。
【0075】
上記の持上げ具24では三方から苗を持ち上げる構成であるので、残りの一方側(把持ハンド12側)に倒れる苗を直立させることはできない。そこで、搬入機構11のセルトレイ上には、該セルトレイの左右幅にわたる倒れ規制具44を設けている。この倒れ規制具44は、セル内の培土を荒らしたり搬入機構11によるセルトレイの搬送抵抗になったりしないように回転自在のローラで構成され、把持ハンド12で取り出す苗の把持ハンド12側で適確に作用するようにセルの上方に位置する。
【0076】
また、把持ハンド12の両ハンド機構21,22に各々において、左右一対の開閉アーム21a,22aのうち受渡保持機構15側(右側)に位置する一方の開閉アーム21a,22aには、受渡保持機構15と左右反対側(左側、他方の開閉アーム21a,22a側)に延びる苗分離具45を固着して設けている。この苗分離具45は、棒材で構成され、左右方向(左側)に延びる基部45aと該基部45aから前側に屈曲して延びる先端部45bとを備え、開閉アーム21a,22aより若干上位に配置されている。苗分離具45の先端部45bは、一対の開閉アーム21a,22aが開いた状態では、前記他方の開閉アーム21a,22aの上方に位置し、略前後真直方向で若干把持方向内側に向かって延び左右の開閉アーム21a,22aの角度に対して把持方向内側に向く角度となる。一方、一対の開閉アーム21a,22aが閉じた状態では、他方の開閉アーム21a,22aより把持方向外側(左側)に位置し、先端へいくほど把持方向外側となる外向きの角度となる。従って、セルトレイの苗を把持するべく進退機構12bにより把持ハンド12が前進するときは、一対の開閉アーム21a,22aが開き、苗分離具45の先端部45bは把持しようとする苗に干渉しないように当該苗と隣接苗との間に挿入される。そして、一対の開閉アーム21a,22aを閉じると、苗分離具45の先端部45bは隣接苗側(左側)に回動して移動し、把持する苗と隣接苗とを離して苗の絡みを解くようになっている。
【0077】
上記構成の把持ハンド12による穂木苗の取込動作は、動作手順図に従って行う。
まず、後退位置で上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23を閉状態に準備(S1)した上で、接木苗製造装置1の外側方向への移送機構13の横移動により、搬入機構11上の穂木苗Wの側方から第一の持上げ具41の先端部41tを穂木苗Wの背面位置に挿し入れ、その後前後移動シリンダ43を伸長し第二の持上げ具42を前側に突出させて平面視で先端部が苗の側方に位置させると共に第一の持上げ具41の先端部41tと交差させ、第一の持上げ具41及び第二の持上げ具42の上行動作(S2)により穂木苗Wの倒れを修正する。従って、把持ハンド12は、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23が閉状態で横移動するので、横移動の際にセルトレイの苗に干渉しにくく、また横移動で取り出す苗とは別の苗を懐に収めてしまうようなことを防止でき、苗の取出不良を防止できる。上段のハンド機構21と中段のハンド機構22は、前記横移動の上手側を曲面状に形成しており、横移動で苗と干渉しにくいように且つ苗を傷めないようにしている。尚、持上げ具24は、上行動作(S2)前において、カッタ機構23の略同じ高さに位置する。これにより、カッタ機構23をセルの上面に近づけることができて該カッタ機構23が苗の根元を切断でき、冬期に育苗されるような胚軸が短い苗でもハンド機構21,22で苗を適正に取り出すことができる。
【0078】
尚、第一の持上げ具41の先端部41tと側部41sの交差部(屈曲部)から、先端部41tの延長線上で先端部41tとは左右反対側に延びる延長部41uを設けることができる。延長部41uにより、把持ハンド12で取り出す苗の位置に対して、セルトレイの搬送下手側の次列で且つ受渡保持機構15側の一つ分隣の隣接位置にある隣接苗が、把持ハンド12側に倒れ込むことを防止でき、把持ハンド12が隣接苗を一緒に把持してしまう苗の把持ミスの発生を防止できる。延長部41uは、前後方向の回動支点軸により上下に回動自在に取り付けられ、自重により下向きとなった状態から移送機構13の横移動でセルトレイ上に載って支えられて左右方向に向き、隣接苗の倒れ込みを規制する。そして、移送機構13の横移動で受渡保持機構15と対向する位置に来たときには、支えがないため自重により下向きになり、受渡保持機構15の構造物や穂木搬送アーム68又は台木搬送アーム61との干渉を防止する構成としている。
【0079】
次いで、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を開いて前進(S3)した上で両ハンド機構21,22を閉じる(S4)ことによりハンド機構21,22の先端の切欠B、Cに穂木苗Wの胚軸Aが遊嵌保持され、その後にカッタ機構23を閉じる(S5)ことにより、胚軸Aの下段部が切断されて穂木苗Wは回動可能に同カッタ機構23により下端が支持される。ここで、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を後退(S6)した上で接木苗製造装置1の中心方向に横移動(S7)することにより、搬入機構11から穂木苗を個別に取込むことができる。尚、S6におけるハンド機構21,22およびカッタ機構23の後退距離すなわち進退機構12bによる進退作動ストロークは、S6の行程によりセルトレイから取り出すべく把持する苗が隣接苗と完全に干渉しない長さに設定されている。
【0080】
尚、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22の間、中段のハンド機構22とカッタ機構23の間には、各々苗ガイド112を設けている。この苗ガイド112は、苗ガイド用シリンダ113により、ハンド機構21,22およびカッタ機構23の前進に先立って前進し、これから取り出そうとする穂木苗Wが直立姿勢となるよう修正し、苗の取出し不良を防止するものである。苗ガイド112は、ハンド機構21,22およびカッタ機構23の後退と同時に後退する。
【0081】
また、移送機構13による移送行程においては、穂木苗を把持した把持ハンド12が把持位置Bから受渡し位置Cまで横移動する際に、その移送行程に干渉するように配置した方向修正部材14の近傍を通過することにより、穂木苗Wの子葉展開方向が移送方向に対して大きく傾斜していると子葉が方向修正部材14と干渉することにより子葉展開方向が略移送方向に揃うように穂木苗が回動される。このとき、穂木苗が過大に回動されても、受渡保持機構15と対向する位置に設けた山形で平板状に構成される整列部材となる副整列部材46に苗の子葉が当たってその回動範囲が規制される。この副整列部材46は、上下位置を調節可能に設けられ、移送機構13で移送されてくる苗の胚軸Aや子葉が直接当たることで苗の姿勢又は子葉展開方向がかえって不適正にならないようにでき、苗の大きさや種類に応じて位置調節できる。
【0082】
前記移送機構13は、コンプレッサからの空気圧により摺動するエアシリンダにより把持ハンド12を横移動させる構成であり、前記シリンダに備えるストロークセンサにより把持ハンド12が搬入機構11及び該搬入機構11上のセルトレイの上方から離れて方向修正部材14の直前位置まで到達したことを検出すると、シリンダへ供給するエアの流量が少なく制御されて移送速度が減速され、移送終端部での移送速度が低速となる構成となっている。この移送速度が減速される位置は、取り出す苗(苗があるセル)の左右位置となる移送始端位置に拘らず同じ位置に設定されている。尚、把持ハンド12が次の苗を把持するべく受渡保持機構15の受渡し位置から搬入機構11上のセルトレイ側へ移動する戻り行程では、通常の速い移送速度で把持ハンド12が横移動する。持上げ具24は、移送機構13の移送速度が移送終端部で減速されるまでの間、持上げ状態に上昇したままであり、苗の移送で他の苗と干渉する等して該苗の姿勢が悪化するようなことを防止している。尚、移送機構13の移送速度が減速するのと同時にカッタ機構23より下位に下降し、苗受渡し行程において邪魔にならないようにしている。
【0083】
尚、把持ハンド12が苗を取り出して上昇した状態で異常停止やオペレータによる中断操作等の停止状態となった後、リセット操作をすると、把持ハンド12が移送機構13により元の原点位置である受渡し位置Rに戻ろうとするが、把持ハンド12が上昇している状態であるので受渡し保持機構15に干渉することになってしまう。そこで、把持ハンド12が下降位置にあることを検出するセンサを設けており、リセット操作をしたときに、該センサにより把持ハンド12が下降位置にあることを検出したときのみ、移送機構13により把持ハンド12を受渡し位置Rに横移動させる構成となっている。
【0084】
次に、受渡し位置Rに構成される受渡保持機構15と整列部材とによる整列保持手段について説明する。
受渡保持機構15は把持ハンド12の進出位置で穂木苗を受けるべく、進出動作する把持ハンド12に対向して配置される。その構成は、受けた穂木苗の胚軸Aの上段部を把持する上段ハンド機構31と、その下方で胚軸Aの中段部を把持する中段ハンド機構32と、両ハンド機構31、32の中間高さ位置で胚軸Aの過大な進入を規制するストッパ33と、これらを一体に高さ位置を調節する昇降機構34とを受渡し位置Rに備える。
【0085】
前記中段ハンド機構32は、下動シリンダ(下動機構)により苗を把持した状態で下降動作する構成となっている。これにより、把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に当接するまで下側へ引き下げ、苗の上下位置が所定位置となるように位置決めする。尚、上段ハンド機構31の把持力は中段ハンド機構32の把持力より小さく設定されており、中段ハンド機構32で苗の胚軸Aを引き下げるとき、胚軸Aが上段ハンド機構31内を滑って引き下げられる。また、中段ハンド機構32の下動途中で苗の子葉展開基部が上段ハンド機構31に当接して所定位置で支持された後の中段ハンド機構32の下動端までの下動では、苗が所定位置に保持されたままで苗の胚軸Aが中段ハンド機構32内を滑るようになっている。中段ハンド機構32の把持面は、一対のハンド32aの各々に前後2個の弾性体(スポンジ)47を固着して構成され、前記弾性体(スポンジ)47により苗の胚軸A位置を中心とする4方向から苗の胚軸Aを押圧して把持する構成となっている。この弾性体(スポンジ)47により、中段ハンド機構32の把持力を大きく設定できると共に、太い胚軸Aでは把持面の面積が大きくなり細い胚軸Aでは把持面の面積が小さくなるため、苗の大きさ(胚軸Aの太さ)に応じて中段ハンド機構32の把持力が設定され、該中段ハンド機構32による苗の引き下げを適正に行える。
【0086】
受渡保持機構15の上方で穂木苗の子葉を受ける位置に整列部材となる主整列部材16を配置する。主整列部材16は、双葉状の子葉展開方向を規制する平板状の部材であり、その中心位置に上下に延びる突条によるガイド部35を形成する。このガイド部35は受けた穂木苗の子葉を左右に振り分けるために、断面形状が山形でその表面を平滑に低摩擦に形成する。
【0087】
上記構成の整列保持手段における受渡し動作は、把持ハンド12の進出動作によって受渡保持機構15に穂木苗Wを渡す際に、穂木苗Wの子葉L,Lが主整列部材16に押し付けられるとともに、ガイド部35により子葉L,Lが左右に振り分けられて子葉展開軸線が主整列部材16に沿うように整列される。
【0088】
上記受渡し動作を詳細に説明すると、搬入機構11から穂木苗を取込み、その胚軸を把持した把持ハンド12を受渡保持機構15の正面に位置を合わせた後、まず、カッタ機構23を含めて把持ハンド12を閉じた状態、すなわち、胚軸Aの下端をカッタ機構23上に受けつつ中段のハンド機構22の把持を緩めた状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S11)ことにより主整列部材16を介して子葉展開方向が整列される。
【0089】
次いで、カッタ機構23を開く(S12)ことにより把持ハンド12のハンド機構21に子葉L,Lを受けて穂木苗Wの高さ位置を合わせる。この状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S13)ことにより、主整列部材16に子葉が当たって子葉展開方向が整列される。
【0090】
上記のように進退機構12bの進退動作で把持ハンド12が往復すると、把持ハンド12の進出位置の主整列部材16と合わせて把持ハンド12側となる後退位置にも同様の副整列部材46を対向配置しているので、把持ハンド12の1往復につき苗の子葉が整列部材に2回接当することになり、進退動作により能率の良い整列動作が可能となる。尚、前記進退機構12bには、進退用シリンダと、把持ハンド12で把持された苗が主整列部材16に当たる位置に前記進退用シリンダが伸長したことを検出する伸長位置センサと、把持ハンド12で把持された苗が副整列部材46に当たる位置すなわち移送機構13で苗を移送するとき等の通常位置に前記進退用シリンダが収縮したことを検出する収縮位置センサとを備えている。従って、前記伸長位置センサと収縮位置センサとが交互に検出するべく進退用シリンダの伸縮作動を繰り返すことにより、把持ハンド12が往復作動する。
【0091】
尚、図面では、副整列部材46を所望の子葉の整列方向と同一方向としたものについて示したが、前記整列方向に対して方向修正部材14で修正する前の子葉方向側に若干斜めに構成してもよい。これにより、主整列部材16に子葉を当てて整列させる前に、副整列部材46により段階的に所望の子葉方向に近づけることができ、無理に子葉の向きを修正しようとすることにより苗が損傷するようなことを防止でき、子葉の向きの修正を円滑に且つ安定しておこなうことができる。また、副整列部材46のガイド部35を無くしてもよい。これにより、苗が横移動して前記ガイド部35に当たることにより損傷するようなことを防止できると共に、苗の横移動で平板状の副整列部材46にならって子葉の向きを円滑に修正することができる。
【0092】
整列動作の後、把持ハンド12を受渡保持機構15まで進出(S14)した上でカッタ機構23を閉じる(S15)ことにより、胚軸Aが所定位置で切断されて長さが揃えられる。この時、胚軸Aの曲がりがあっても、両ハンド機構31、32の中間高さ位置のストッパ33が胚軸Aの過大な進入を規制することから、胚軸Aを確実に切断することができる。
【0093】
胚軸Aの切断の後にカッタ機構23を開くとともに穂木苗Wを受けた受渡保持機構15の両ハンド機構31、32を閉じ(S16)、次いで、把持ハンド12の上下のハンド機構21,22を開くとともに受側の受渡保持機構15の中段ハンド機構32の下動により苗を引き下げて所定の保持高さに合わせ(S17)、その後、把持ハンド12を後退(S18)する。
【0094】
このようにして受渡しの終了後に、把持ハンド12を搬入機構11側に戻すことにより、次の穂木苗についての取込みが可能となる。この一連の動作の繰返しにより、搬入機構11から穂木苗を順次取込んで接木ロボット本体1aにより接木処理することができる。尚、苗受渡し行程において、持上げ具24は、苗の受け渡しの邪魔にならないようにカッタ機構23より下位に下降している。
【0095】
きゅうりやメロン等、穂木の子葉の向きを進退機構12bの進退方向に向けるとき(前述とは子葉の向きが90度異なるとき)は、主整列部材16を90度回動させて移動する。このとき、主整列部材16が受渡保持機構15の苗の保持位置よりも外側(右側)に位置すると、作業者が人手で受渡保持機構15へ苗を供給するときに、主整列部材16が邪魔になって苗を視認しにくくなり、穂木の子葉の向きが適正であるか否か確認しにくくなる。そこで、主整列部材16を透明又は半透明に構成し、苗を視認できる構成とすることができる。又は、主整列部材16を受渡保持機構15の苗の保持位置よりも内側(左側)に位置させ、苗を視認できる構成とすることもできる。これにより、苗の視認が容易に行え、穂きの子葉の向きの確認が容易になるので、作業能率の向上が図れる。
【0096】
受渡保持機構15には、ハンド機構31,32の把持位置に供給された苗を検出する苗検出センサ124と、苗を受渡保持機構15へ供給する位置から退避した通常位置にある把持ハンド12を検出する把持ハンド検出センサ125を設けている。苗検出センサ124は、上段ハンド機構31と中段ハンド機構32の間に配置され、側方から把持位置に供給された苗の胚軸を検出する光電式のセンサである。把持ハンド検出センサ125は、上方から把持ハンド12を検出する光電式のセンサである。
【0097】
また、受渡保持機構15の直ぐ上側には、ハンド機構31,32が苗の胚軸を把持するのに連動して点灯する報知装置となる把持完了ランプ126と、ハンド機構31,32による苗の把持を解除するための把持解除操作具となる把持解除スイッチ127を設けている。
【0098】
そして、台木取込部又は穂木取込部を使用して受渡保持機構15へ苗を自動的に供給する全自動接木作業をするときには、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ124が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ125が把持ハンド12を検出し且つ把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。また、台木取込部又は穂木取込部を使用せず、人手により受渡保持機構15へ苗を供給する半自動接木作業をするときには、受渡保持機構(15)の周辺を検出するべく把持ハンド検出センサ125の向きを変更調節すると共に、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ124が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ125が何も検出せず(作業者の手を検出せず)且つ把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。この全自動接木作業と半自動接木作業の切替は、モードスイッチ49の操作に連動して切り替えられる。尚、全自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ125の検出性能を高分解能の高精度で検出する状態に切り替えて定位置にある把持ハンド12を正確に検出し、半自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ125の検出性能を低分解能の広範囲で検出する状態に切り替えて周辺に作業者の手がないことを判断する構成としている。この把持ハンド検出センサ125の検出性能の切替は、制御装置内に設けた増幅装置により行う。
【0099】
尚、把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されると、操作された側のハンド機構31,32の把持を解除すると共に台木前処理部3及び穂木前処理部4による苗の搬送を中止する。
【0100】
ところで、苗取込部2の作動を制御する操作パネル1pには、苗取込部2の電源の入切を行う電源スイッチ48と、作動モードを設定するモードスイッチ49と、搬入機構11で搬入するセルトレイの種類を設定するトレイ選択スイッチ50と、作動を開始させるスタートスイッチ51と、作動を停止させるストップスイッチ52と、各作動部を初期状態に復帰させるリセットスイッチ53と、セルトレイ上の苗位置及びセルトレイの苗列の数を任意に設定できる設定変更部54とを設けている。前記モードスイッチ49は、前記スタートスイッチ51の操作での作動域を選択する作動域選択手段であり、ストップスイッチ52を操作するまで連続的に順次苗を前処理部3へ供給するべく作動する自動位置と、1株の苗を前処理部3へ供給するまで作動するか又は接木ロボット本体laのみを作動する手動位置と、前記S1〜S7並びにS11〜S18の各作動行程ごとに作動するステップ位置とに切替操作できる。前記トレイ選択スイッチ50は、把持ハンド12が苗を取り出す左右方向の位置及び搬入機構11の搬送ピッチを切り替えて設定する設定切替手段であり、72穴セルトレイ用の72穴位置と、128穴セルトレイ用の128穴位置と、前記設定変更部54により任意に設定する手動設定位置(MS)とに切替操作できる。尚、前記72穴セルトレイとはセルが縦12列、横6列設けられたセルトレイであり、前記128穴セルトレイとはセルが縦16列、横8列設けられたセルトレイである。従って、これらのセルトレイの種類によってセルの配列ピッチが異なるため、各セルトレイに応じて前記トレイ選択スイッチ50により切り替える構成となっている。把持ハンド12はセルトレイの横一列の苗を受渡保持機構15側から順次取り出すが、この苗取出回数を操作パネル1p内の制御装置でカウントし、トレイ選択スイッチ50の設定に基づく横一列の回数になると、搬入機構11によりセルトレイを搬送する。これにより、横一列の苗を全て取り出したことを判断するために、把持ハンド12が取り出す苗の左右位置を確認するべく、制御装置(PLC)から移送機構13のエアシリンダへ左右位置の確認命令出力を行って該エアシリンダからの入力で判断するのに比較して、制御のスピードが向上し、作業能率の向上が図れる。
【0101】
また、接木ロボット本体laには、該接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2からなる接木苗製造装置1の全体を一括で制御する制御装置を備える制御パネル55を設けている。この制御パネル55に、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2の作動の入切を行える切替スイッチ等の作動切替手段を設けている。この作動切替手段により、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2のうち、全部を作動させたり一部を作動させたりすることができ、様々な作業形態で接木苗製造作業が行える。例えば、胚軸長が短い場合に苗接合のための切断位置の精度を要する台木を人手で台木前処理部3へ精度良く供給したいとき、接木ロボット本体la及び穂木取込部2を作動させて台木取込部の作動を停止させることができる。あるいは、苗をセルトレイで育苗しなかった場合にその苗の取込部2を停止させて人手で苗供給したり、苗の接合を人手で行いたいときに取込部2を作動させて接木ロボット本体laの作動を停止させたりできる。尚、台木、穂木共に人手で供給したいときは、接木ロボット本体laのみを作動させればよい。
【0102】
この接木苗製造装置1において、各苗を1株づつ供給する苗供給装置となる取込部2は、受けた苗の根側を切断しつつ苗の胚軸を回動可能に緩く保持可能な把持ハンド12による遊嵌保持機構と、この遊嵌保持機構を支持して横方向に移送動作する移送機構13と、この移送機構13における移送終端部で苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材14及び副整列部材46とを設け、前記移送機構13は、移送終端部での移送速度が低速となるよう前記方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で移送速度が減速される構成としている。
【0103】
従って、前記遊嵌把持機構は、双葉状の展開子葉を有する苗を受けると、これを穂木または台木としてその根側を切断しつつ胚軸を回動可能に緩く把持し、この苗は遊嵌把持機構を支持する移送機構13により移送されるが、この移送速度は方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で減速されて移送行程の終端部で低速となり、該移送行程の終端部で方向修正部材14及び副整列部材46が苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向が移送方向に揃えられ、この方向規制された苗が前処理部3,4と接着処理部7とにより台木または穂木と接着されて接木苗が製造される。
【0104】
尚、副整列部材46を、移送機構13の移送方向(左右方向)へ向く平面状の板材で構成してもよい。このとき、移送機構13の移送終端部に移送された苗の胚軸からの距離lが苗の子葉の長さaより短くて子葉の幅bの2分の1と同等かそれより長くなるように副整列部材46の位置を設定すると、前後方向に向く子葉のみが副整列部材46に当たって子葉の向きを所望の左右方向へ向く状態に修正できる。尚、この副整列部材46の平面状の板材を移送機構13の移送上手側(左側)ほど苗から離れる側(後側)となるように若干斜めに配置すると、移送機構13で移送される苗が副整列部材46の端部にひっかかるようなことを防止でき、苗を円滑に移送することができる。
【0105】
尚、上述では苗の子葉展開方向を精度良く揃えるためにローラで構成される方向修正部材14と板材で構成される副整列部材46とを共に設けた構成としたが、何れか一方のみを設けて苗の子葉展開方向を変更する構成としてもよい。尚、副整列部材46のみを設けた場合は、該副整列部材46が苗の子葉と干渉してその子葉展開方向を移送方向に合わせる方向修正部材となる。
【0106】
また、上述では主整列部材16と副整列部材46とを対向して複数設けた構成としたが、例えば主整列部材16のみを設ける等、一方の整列部材を設けた構成としてもよい。このとき、把持ハンド12の1往復につき苗の子葉が整列部材16に半分の1回しか接当しないので、把持ハンド12を2倍の4往復作動させて苗の子葉が整列部材16に4回接当させる構成とすればよい。このように把持ハンド12を進退機構12bにより複数回往復作動させる際、伸長位置センサが検出するまで進退用シリンダを伸長させて苗を整列部材16へ接当させるが、戻り行程では、収縮位置センサが検出する手前で進退用シリンダの収縮作動を停止させるべく、タイマにより所定時間だけ進退用シリンダを作動させて停止し、再度進退用シリンダを伸長させて2回目以降の苗の整列部材16への接当を行わせる構成とすることができる。これにより、進退用シリンダの収縮作動及び再度苗を整列部材16に当てるべく進退用シリンダを伸長させる伸長作動において、これらの作動距離並びに作動時間を短縮することができ、所定回数の苗の整列動作に対してこの整列行程の時間短縮が図れ、苗供給作業ひいては接木苗製造作業の作業能率向上が図れる。
【0107】
把持ハンド12のハンド機構21,22における左右一方の開閉アーム21a,22aのみの把持面を、該開閉アーム21a,22aが閉じた状態で平面視で斜めになるように設定してもよい。これにより、断面が楕円形状である胚軸Aを把持するとき、該楕円形状の長軸が前後方向に向くように胚軸Aの向きが修正され、該楕円形状の短軸方向に広がる子葉を左右方向に向けることができる。従って、この把持ハンド12が、苗の子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材の一種となる。また、左右一対の開閉アーム21a,22aを閉じた後、該左右一対の開閉アーム21a,22aを互いに前後逆方向に摺動させて苗の胚軸Aの回転を促し、断面の楕円形状の長軸が前後方向に向くように胚軸Aの向きを修正することも考えられる。この場合は、胚軸Aがスムーズに回転できるように、左右一対の開閉アーム21a,22aの把持面を前後方向に向く平面とすることが望ましい。
【0108】
尚、台木側及び穂木側のうち、一方は把持ハンド12で受渡保持機構15へ苗を自動供給し、他方は人手により受渡保持機構15へ苗を供給するときは、一方で把持ハンド検出センサ125が把持ハンド12を検出し、且つ他方で把持ハンド検出センサ125が何も検出しないことを条件に、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成とすればよい。
【0109】
また、把持ハンド検出センサ125に代えて受渡保持機構15の苗を上方から検出する苗検出センサを設け、全自動接木作業では苗検出センサが苗を検出したことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、半自動接木作業では苗検出センサが作業者の手を検出しないことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成としてもよい。このときも、苗検出センサの検出性能を切り替える構成とすればよい。
【0110】
この発明の実施の形態は取除部として樹脂製のブラシ65,71について説明したが、取除部としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の弾性のある樹脂材で構成してもよい。この樹脂材によれば、ブラシ65,71よりも洗浄が容易になり、洗浄により苗の病害発生を予防できる。また、苗の切断位置の調整や苗の生育状況あるいは種類等に対応して、取除部(樹脂製のブラシ65,71)の位置を上下及び前後に調節できる構成とすればよい。
【0111】
ところで、苗取込部2には、搬入機構11上のセルトレイの苗の子葉の展開角度を判断するためのカメラ130を設けている。このカメラ130による撮影で、セルトレイの複数のセルの個々の苗の子葉の展開角度を判断し、子葉の展開角度が所定以下である苗を把持ハンド12により取り出さないよう制御する構成となっている。これにより、子葉の展開角度が小さく適正でない苗を使用することにより、接木が良好に行えずに不良な接木苗を発生させることを防止し、接木の成功率が向上する。
【0112】
穂木搬送アーム68及び台木搬送アーム61の先端部で苗を把持する把持ハンド機構において、把持ハンド部分131の先端側部分と基端側部分で上下方向の厚みを異ならせ、把持ハンド部分131を伸長させる伸長シリンダ部分に位置調整用の座金132を入れ、受渡保持機構15から苗の胚軸を把持するときの把持ハンド部分131の伸長量を異ならせることにより、把持ハンド部分131の胚軸の把持位置を異ならせて把持位置の把持ハンド部分131の上下方向の厚みを異ならせる。具体的には、把持ハンド部分131において、先端側部分の上下方向の厚みを基端側部分の上下方向の厚みより大きく形成する。そして、伸長シリンダ部分において把持ハンド部分131の伸長を規制する側に座金132を入れると、把持ハンド部分131の伸長が制限されるので、受渡保持機構15の所定位置にある苗の胚軸は、把持ハンド部分131の上下方向の厚みが大きい先端側部分で把持される。逆に、伸長シリンダ部分において把持ハンド部分131の収縮を規制する側に座金132を入れると、把持ハンド部分131の伸長が制限されないので、受渡保持機構15の所定位置にある苗の胚軸は、把持ハンド部分131の上下方向の厚みが小さい基端側部分で把持される。これにより、苗の種類によって把持ハンド部分131で胚軸を把持する把持面積を簡単に変更することができ、胚軸の損傷の防止及び把持の確実化を図ることができ、苗適応性が向上する。
【0113】
穂木側の受渡保持機構15において、中段ハンド機構32により苗の子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで下側へ引き下げ、苗の上下位置が所定位置となるように位置決めするが、更に苗の上下位置の適正化を図るべく、苗を上方から下方へ向けて押し付ける押付装置133を設けることができる。この押付装置133は、下部が半球状の押し具134と、押し具134を昇降させる押付シリンダ135を備える。尚、押し具134は、苗を傷めないようにゴム製であり、弾性体となっている。逆に言えば、押し具134を弾性体にすることで苗が傷みにくくなるため、押し具134の作動速度を高めて作業能率の向上が図れる。そして、把持ハンド12から受渡保持機構15へ穂木苗が供給されると、押付シリンダ135の作動により押し具134が下降して子葉展開基部の上方から苗を下方に押し付ける。この状態で、中段ハンド機構32により苗を下側へ引き下げ、苗の子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで確実に引き下げることができる。その後、押し具134による苗の押付は、穂木搬送アーム68の把持ハンド機構が苗を把持するまで継続され、穂木搬送アーム68が苗を搬送する前に押し具134が上昇して苗の押付が解除される構成となっている。これにより、撓んだ子葉が受渡保持機構15の保持板等の構造物に接触することにより苗の胚軸が上昇しようとするのを、押し具134で確実に規制でき、製造される接木苗の胚軸長を適正にでき、適正な接木作業が行える。尚、受渡保持機構15へ作業者が苗を直接供給する場合より、穂木苗取込部2から受渡保持機構15へ自動的に苗を供給する場合に、押し具134が早いタイミングで下降する構成とすれば、自動苗供給であっても苗の上下位置の規制を適正に且つ確実に行える。
【0114】
また、接着処理部7の上方に、台木苗の子葉に文字等をマークするマーキング装置を設けることができる。このマーキング装置は、制御パネル55で入力した子葉に文字を彫り込んでマークする構成であり、穂木の種類、台木の種類、接木した日等の接木情報を任意にマークできる構成である。これにより、台木苗の子葉が枯れるまでは、台木苗及び穂木苗の品種や栽培条件並びに品種の組み合わせの多様化に応じて接木後に接木情報を適切に判断でき、仕様の異なる接木苗を誤って出荷することを防止できる。また、従来のような、接木苗の管理のために苗の品種を変える度に接木苗を保管するセルトレイを交換する手間を省くことができ、同一のセルトレイで異なる種類の接木苗を保管できる。
【0115】
尚、接着処理部7のクリップ供給装置74の上方に、クリップ101に文字等をマークするマーキング装置を設けてもよい。これによれば、接木苗からクリップ101を外すまで接木情報を判断できると共に、クリップ101が使用済みであるか未使用であるかの判別を行える。尚、上述では文字を彫り込んでマークする形態について説明したが、インクを付着させてマークする形態であってもよい。何れの形態であってもマークするプリンタヘッドは、メンテナンスのために簡易的に取り外せる構成とすればよい。
【0116】
また、穂木搬送アーム68の先端部で苗を把持する把持ハンド機構、台木搬送アーム61の先端部で苗を把持する把持ハンド機構、苗取込部2の把持ハンド12並びに受渡保持機構15の上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32等の接木苗製造装置1におけるハンド機構の把持力は、事前に適正把持力を検出して設定する把持力設定装置により設定できる。把持力設定装置は、苗の胚軸を把持する検出用把持アームを備え、検出用把持アームの把持面に貼付した歪ゲージにより把持力を検出する構成となっている。試供の苗を検出用把持アームで把持させることにより、苗の胚軸の硬軟を判断し、この硬軟判断に基づいて接木苗製造装置1におけるハンド機構の把持力を設定する。苗の胚軸の硬軟を判断は、先ず胚軸に軽く触れる程度の第一の設定把持力に到達するまで検出用把持アームが閉じ、それからしっかり把持できる程度の第二の設定把持力に到達するまで検出用把持アームが閉じる。このとき、第一の設定把持力のときの検出用把持アームの閉じ量と、第二の設定把持力のときの検出用把持アームの閉じ量の差に応じて、差が大きいほど胚軸が軟弱であると判断して所望の把持力を第一の設定把持力に近づく側に設定し、差が小さいほど胚軸が強固であると判断して所望の把持力を第二の設定把持力に近づく側に設定する。前記所望の把持力となるよう、接木苗製造装置1の空気圧調節バルブによりハンド機構の把持力を調節する。尚、この把持力の調節は、把持力設定装置の所望の把持力の設定に基づいて、自動的に接木苗製造装置1のハンド機構の把持力を調節する制御装置により行ってもよい。これにより、接木苗製造装置1において苗の胚軸を傷めるようなことが抑えられ、接木の接合精度の向上が図れる。尚、上述では把持力設定装置により把持力を検出することについて説明したが、この設定装置により、胚軸の径や厚みや面積等を検出あるいは判断する構成としてもよい。
【0117】
接木苗製造装置1で接木された接木苗は、室内が湿度90%程度の高湿度に維持された養生室にて養生される。養生室内の湿度制御は、通常は養生室内の湿度センサにより所望の湿度になるよう加湿装置で加湿するセンサ制御を行うが、湿度センサの検出に基づき所定の湿度を超過する状態が設定される切替判断時間以上続く飽和状態になると、設定時間おきに加湿装置を作動させるタイマ制御に切り替わる。そして、タイマ制御のときに、湿度センサの検出に基づき所定の湿度を超過しない状態が設定される復帰判断時間以上続く非飽和状態になると、センサ制御に復帰する。そのセンサ制御に復帰した後、所定時間以内に再度飽和状態になると、タイマ制御に切り替わると共に、タイマ制御からセンサ制御へ復帰する復帰判断時間を長く補正する。これにより、タイマ制御からセンサ制御へ復帰するので、養生室内の湿度が低くなった場合にセンサ制御により素早く高湿度に維持でき、苗の養生を良好に行える。また、タイマ制御からセンサ制御に復帰した後、すぐにセンサ制御からタイマ制御ヘ切り替わるようなときは、復帰判断時間を長くすることによりタイマ制御からセンサ制御に簡単に復帰しないようにし、タイマ制御とセンサ制御の無闇な切替により湿度が不安定になるようなことを防止でき、苗の養生を良好に行える。従来は、特許第3823829号公報のように、センサ制御からタイマ制御ヘ切り替わった後は、タイマ制御からセンサ制御へ復帰しない構成であるので、タイマ制御において養生室内が所定の湿度未満に低下することがないように、タイマ制御における加湿装置の運転時間を長めにしなければならず、その分運転のランニングコストを要する。
【0118】
また、上述の構成において、湿度センサへ送風して湿度センサを乾燥させるファン(乾燥機構)を設け、タイマ制御時にファンを作動させて湿度センサの結露を防止することができる。これにより、センサ制御への復帰を促し、センサ制御により加湿制御の適正化が図れると共に、タイマ制御による加湿装置の運転のランニングコストの増加を抑えることができる。
【0119】
また、養生室136内において、植物の光合成を活性化させるべく炭酸ガスを供給する炭酸ガス施肥装置137と、作業者が通行するための通路部分138に人がいることを感知する人感知センサ139を設けている。人感知センサ139は、発光部139aが発光する光を作業者が遮ることにより受光部139bで受光できないことに基づいて作業者を感知する構成であり、平面視で一対の発光部139aと受光部139bを対角上に配置している。そして、人感知センサ139により作業者を感知したときは、強制遮断弁を閉じて炭酸ガス施肥装置137による炭酸ガスの供給を規制する制御装置を設けている。これにより、作業者が、養生室136内で作業中に高濃度の炭酸ガスを吸引することにより健康を害したり意識を失ったりするトラブルを防止することができる。尚、炭酸ガス施肥装置137は、所定時間おきに炭酸ガスを供給する構成や、養生室136内に設けた炭酸ガス濃度センサの検出に基づいて所望の濃度にするべく炭酸ガスの供給を制御する構成とすることができる。尚、上述の構成は、養生室136に限らず、完全閉鎖型の植物工場等においても利用できる。
【符号の説明】
【0120】
229:衝撃吸収用スプリング、231:退避用シリンダ、303:育苗箱搬送コンベヤ、310:段積設備、317:段積装置、356:衝撃吸収ストッパ、C:育苗箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗箱搬送コンベヤ(303)で搬送される育苗箱(C)に接触しながら該育苗箱(C)の搬送速度を徐々に減速して該育苗箱(C)を所定の位置で停止させる衝撃吸収ストッパ(356)と、前記所定の位置にある育苗箱(C)を下方から持ち上げて所定の段積枚数に段積する段積装置(317)を設け、衝撃吸収ストッパ(356)が育苗箱(C)を所定の位置で停止させた後、前記所定の位置にある育苗箱(C)を段積装置(317)が持ち上げ動作する間は、衝撃吸収ストッパ(356)を当該育苗箱(C)から退避させる強制退避装置(231)を設けた段積設備。
【請求項2】
衝撃吸収ストッパ(356)は、衝撃吸収用スプリング(229)により育苗箱(C)側に付勢され、強制退避装置(231)により衝撃吸収用スプリング(229)に抗して育苗箱(C)から退避する構成とした請求項1に記載の段積設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公開番号】特開2013−111040(P2013−111040A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261761(P2011−261761)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】