説明

殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法

【課題】加熱に長時間を要することなく効果的な殺菌を行うことが可能な殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法によれば、外胴30及び外胴30に関与する各部に耐圧構造を施すことで、外胴30内部を100℃以上の高圧高温状態とすることが可能となる。これにより、医療用衣類等の被洗濯物に対し従来よりも効果的な殺菌を行うことができる。更に、殺菌を高圧高温蒸気を用いて行うことで洗浄水を長時間加熱する必要が無く、殺菌工程の時間短縮と省エネルギー化とを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療機関等から出される衣類、リネン類等の各種繊維製品を殺菌、洗濯するための殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、主に医療機関等から出される患者等が使用した布団やシーツ、枕などのリネン類や患者や医療従事者等が使用したタオル、衣類等の各種繊維製品(以後、医療用衣類と記載する。)の洗濯業務は、医療機関以外の専門施設(洗濯業者)に委託され行われていることが多い。医療機関が洗濯業者に委託可能な医療用衣類は、医療機関内で消毒が行われたものと感染症に感染する危険性の無い一般のものとであり、感染の危険性のあるものは原則として医療機関内で消毒を行ってから洗濯業者に引き渡すこととされている。この場合、洗濯業者は消毒後の医療用衣類や感染の危険性の無い一般の医療用衣類を医療機関から回収し、洗濯、乾燥した後に医療機関に納品すれば良い。しかしながら、感染の危険性の有る医療用衣類に関しても、感染の危険のある旨を表示した密閉性の容器に入れた上であれば、洗濯業者に洗濯業務を委託することが可能であり、この場合、洗濯業者が医療用衣類の消毒を行う必要がある。
【0003】
感染の危険性の有る医療用衣類の消毒は、蒸気、熱水、塩素剤、ガス等を用いた方法で行うこととされており、実際には熱水消毒(80℃10分)が多く用いられている。ここで、下記[特許文献1]では、90℃以上の先浄水で医療用衣類の殺菌及び洗浄を行う医療用繊維製品の洗浄方法及び該洗浄方法に用いる洗濯機に関する発明が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−279573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばセレウス菌などは芽胞の状態で100℃30分の加熱にも耐えうることが知られており、[特許文献1]に開示された発明等の殺菌方法では、洗浄水等を100℃以上にすることができず十分な殺菌が行えない可能性がある。また、[特許文献1]に開示された発明では、多量の先浄水を90℃以上にまで加熱する必要があり、加熱に長時間を要するという問題点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、加熱に長時間を要することなく効果的な殺菌を行うことが可能な殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)被洗濯物を出し入れする耐圧構造を備えた扉部20と、
当該扉部20を有するとともに耐圧構造を備えた外胴30と、
当該外胴30の内部に設置され前記扉部20側の面が開口し且つ周面に多孔34を備えさらに軸線方向を中心に回転する略円筒状の内胴32と、
当該内胴32を回転駆動させる駆動手段と、
前記外胴30内及び内胴32内に高圧高温蒸気を供給する耐圧構造の開閉器40bを備えた給蒸気配管40と、
前記外胴30内及び内胴32内の蒸気及び気体を排気する耐圧構造の開閉器42aを備えた排気口42と、
前記外胴30内及び内胴32内に洗浄水を給水する耐圧構造の開閉器44b1、44b2を備えた給水配管44と、
前記外胴30内及び内胴32内の洗浄水を排水する耐圧構造の開閉器48aを備えた排水弁48と、
を有することを特徴とする殺菌機能付洗濯機100を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)耐圧構造を備えた外胴30内に設置された内胴32の内部に被洗濯物を投入する工程と、
前記外胴30内及び内胴32内に高圧高温蒸気を供給して当該外胴30内及び内胴32内を高圧高温状態とし、当該高圧高温状態を所定時間維持しながら前記内胴32を回転させることで前記被洗濯物を殺菌する殺菌工程と、
常圧状態の前記外胴30内及び内胴32内に対して洗浄水を給排水するとともに前記内胴32を適宜回転させることで、前記被洗濯物の洗浄及び脱水を行う洗浄工程と、
を備えることを特徴とする殺菌洗浄方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る殺菌機能付洗濯機は、外胴及び外胴に関与する各部に耐圧構造を施すことで、外胴内部を100℃以上の高圧高温状態とすることが可能となる。
よって、本発明に係る殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法によれば、医療用衣類等の被洗濯物に対し従来よりも効果的な殺菌を行うことができる。また、殺菌を高圧高温蒸気を用いて行うことで、洗浄水を長時間加熱する必要が無く殺菌工程の時間短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1、図2は、本発明に係る殺菌機能付洗濯機の一実施の形態の外観図である。図3は、本発明に係る殺菌機能付洗濯機の外胴及び各配管を示す図である。尚、図1〜図3においては、本発明に直接関与しない制御系や伝送系等に関する記載及び説明は省略するものとする。
【0010】
図1(a)は本発明に係る一実施の形態の殺菌機能付洗濯機100の前面を、図1(b)は殺菌機能付洗濯機100の右側面を、図2(a)は殺菌機能付洗濯機100の左側面を、図2(b)は殺菌機能付洗濯機100の後面を、それぞれ示す図である。
【0011】
殺菌機能付洗濯機100の筐体10は、所定の強度を有する鋼材等のフレームとそれを覆う外装板と殺菌機能付洗濯機100に対するメンテナンス等を行うための開閉可能な扉やハッチ等で主に構成されている。筐体10に空気バネ等の緩衝部材を介して設置される外胴30は、外胴本体部30aと外胴本体部30aの前面に固定される前鏡板31と後述する扉本体22の内面とで構成される。そして、前鏡板31の所定の位置には略円形状の開口部を有している。外胴30の内部には前面が開口した略円筒状の内胴32が設置され、内胴32の開口部分と前鏡板31の開口部の位置とは略一致している。尚、内胴32の回転時(特に脱水動作時)には外胴30に大きな振動が生じるが、上記の緩衝部材は床等に伝わる外胴30の振動を緩和することができる。また、緩衝部材は外胴30の底面の四隅近傍にそれぞれ設けることが好ましい。
【0012】
前鏡板31の所定の位置にはヒンジ部26が設けられ、ヒンジ部26には扉フレーム24の一端が可動な状態で設置されるとともに、扉フレーム24には扉部20の扉本体22が固定されている。そして、ヒンジ部26により扉本体22が扉フレーム24とともに開閉することで、前鏡板31の開口部が開閉する。これにより、医療用衣類等の被洗濯物を前鏡板31の開口部を通して内胴32内に容易に出し入れすることができる。また、前鏡板31の所定の位置には扉本体22が閉じている状態のときに、扉本体22を扉フレーム24を介してロック状態とするためのロック機構24aが設置されている。
【0013】
尚、外胴30と扉部20とは所定の圧力に抗する耐圧構造を備えており、さらに扉本体22と前鏡板31の開口部との間にはパッキン等の封止部材が設置されている。そして、この封止部材とロック機構24aとによって前鏡板31の開口部を密閉し、外胴30内からの洗浄水の漏水を防止するとともに外胴30内を高圧高温状態とすることができる。尚、扉本体22には耐圧ガラス等による窓部22aを設け、内胴32内を目視可能としても良い。
【0014】
また、筐体10の前面には、殺菌機能付洗濯機100の殺菌工程における殺菌時間、及び洗浄工程の洗浄時間、洗浄水の温度及び水量、すすぎ条件、脱水条件等を入力もしくは選択するための操作パネル12が設置され、操作パネル12には殺菌機能付洗濯機100の動作状態や警報、操作ガイド等を表示可能な表示部12aが設けられている。
【0015】
内胴32の周面は多孔34が形成されたメッシュ部材で構成されており、この多孔34を通して外胴30内に供給される洗浄水及び蒸気は自由に出入りすることが可能となる。これにより、外胴30内の環境と内胴32内の環境とを同等とすることができる。また、内胴32の後面の中心部分には、内胴32の軸線方向と略一致して回転軸36が設置され、回転軸36は外胴本体部30a後面(後鏡板)の貫通孔を通して外胴30の外部に伸びている。そして、この回転軸36は外胴本体部30aに固定された図示しない軸受けに回転可能に支持され、これにより内胴32は外胴30の内面と接触することなく保持される。また、外胴30の後方下部には駆動手段を構成するモータ38が設けられ、モータ38の回転駆動力は同じく駆動手段を構成する減速手段38aを介して回転軸36に所定のトルクで伝達される。これにより、内胴32は内胴32の軸線を中心に回転することができる。尚、回転軸36と外胴本体部30aの貫通孔との間はパッキン等の封止部材等によって密閉されており、外胴30内からの漏水を防止するとともに外胴30内を高圧高温状態とすることができる。
【0016】
さらに、外胴本体部30aの右側面には洗浄水に洗剤、柔軟剤、漂白剤、洗濯糊等の薬剤を投入するための薬剤投入手段14が設置されている。尚、薬剤投入手段14の投入口等もパッキン等の封止部材等による密閉が可能であり、外胴30内を高圧高温状態とすることができる。
【0017】
ここで、殺菌機能付洗濯機100の外胴30に接続されている各配管を図3を用いて説明する。尚、図3は殺菌機能付洗濯機100の外胴30と外胴30に接続される各配管を示す図である。
【0018】
先ず、外胴30には外胴30内及び内胴32内に高圧高温蒸気を供給するための耐圧構造の給蒸気配管40が接続されている。給蒸気配管40は蒸気配管接続口40cを介して外部給蒸気配管1と接続されており、外部給蒸気配管1は図示しないボイラー等の高圧高温蒸気生成手段と接続されている。そして、高圧高温蒸気生成手段で生成された高圧高温蒸気は、外部給蒸気配管1、蒸気配管接続口40c、給蒸気配管40a1、40a2、40a3、及び外胴本体部30aの下部に設けられた給蒸気口40dを通して外胴30内部に供給される。また、給蒸気配管40の経路上には耐圧構造を備えたバルブ等の開閉器40bが設置され、この開閉器40bを開閉することで外胴30への高圧高温蒸気の供給及び供給停止を行うことができる。尚、給蒸気口40dを外胴30下部に設けることで、給蒸気配管40から供給される高圧高温蒸気を用いて洗浄水の加熱を行うことができる。
【0019】
また、外胴30には外胴30内及び内胴32内に洗浄水を給水するための耐圧構造の給水配管44が接続されている。尚、本例においては、給水配管44の給水栓側を二つに分岐して一方を常温の水を供給する外部給水配管3aに、もう一方を所定の温度の温水を供給する外部給湯配管3bにそれぞれ接続する例を示している。この場合、外部給水配管3aに接続する給水配管44a1と、外部給湯配管3bに接続する給水配管44a2とのそれぞれに耐圧構造を備えた開閉器44b1、44b2が設けられる。そして、外部給水配管3a及び外部給湯配管3bから供給される水もしくは温水もしくはそれらの混合水は、給水配管44a3、44a4、44a5を通して外胴30上部に設けられた給水口44dから外胴30内部に洗浄水として供給される。また、給水配管44の所定の位置には給水配管44中の停留水等を排出するためのドレン排出口16が設置される。
【0020】
また、外胴30下部の所定の位置には、耐圧構造の開閉器48aを備えた排水弁48が接続され、排水弁48の下方には殺菌機能付洗濯機100を設置する床に設けられた外部排水ピット5が位置している。そして、この排水弁48の開閉器48aが開動作することで、外胴30内の洗浄水を外部排水ピット5に排出することができる。
【0021】
さらにまた、外胴本体部30aの所定の位置には、外胴30内の蒸気又は気体を排出するための耐圧構造の開閉器42aを備えた排気口42が接続されている。尚、本例においては排気口42と外胴本体部30aとの間の配管を上下方向に分岐して、分岐した上方向の配管を排気口42とし、下方向の配管を外胴30内の洗浄水が規定の水位を超えた時に余剰な洗浄水を外部排水ピット5に排出するオーバーフロ配管18とした例を示している。この場合、開閉器42aは上記の分岐部と外胴本体部30aとの間に設置される。上記の排気口42はオーバーフロ配管18と別に設置しても良いし、オーバーフロ配管18が排気口42を兼ねるように構成しても良い。ただし、外胴30内を高圧高温状態に維持できるよう、各配管の所定の位置には耐圧構造の開閉器を設ける必要がある。尚、排気口42には所定の排気配管を接続し、外胴30内の高温蒸気を殺菌機能付洗濯機100の外部もしくは屋外に排出可能とすることが好ましい。また、排気口42の開閉器42aに所定の圧力以上になったときに自動的に開動作するものを用いれば、外胴30の内圧がなんらかの原因により過剰となった時に開閉器42aが保護装置として機能することとなる。さらにまた、保護装置としての開閉器42aの動作圧力を設定可能とすれば、外胴30内の高圧高温状態を供給される高圧高温蒸気以下の範囲で比較的自由に設定することができる。尚、保護装置として機能する開閉器は、開閉器42aとは別に外胴30の所定の位置に設けても良い。
【0022】
上記の外胴30、扉部20、各配管、各開閉器、及び各部の封止部材等は、2atm(200kPa)以上、好ましくは3atm(300kPa)程度の耐圧性を備えており、外胴30内を100℃以上の高温蒸気で満たすことが可能である。尚、一般的なバルブ等の開閉器は通常ある程度の耐圧性を備えているため、外胴30内の高圧高温状態に耐えうるものであれば市販の一般的なバルブ等を各開閉器として用いることができる。
【0023】
次に、殺菌機能付洗濯機100の動作と本発明に係る殺菌洗浄方法とを説明する。
【0024】
先ず、給水配管44の開閉器44b1、44b2と給蒸気配管40の開閉器40bとを閉じた状態でロック機構24aのロック状態を解除する。次に、扉本体22を扉フレーム24ごと開け、医療用衣類等の被洗濯物を前鏡板31の開口部を通して内胴32内に投入する。次に、扉本体22を扉フレーム24ごと閉じ、ロック機構24aをロック状態とする。次に、操作パネル12を操作して殺菌工程条件及び洗浄工程条件等を設定もしくは選択し、動作開始ボタン等を押下する。このとき、薬剤投入手段14の投入口は密閉された状態にある。
【0025】
動作開始ボタン等が押下され殺菌機能付洗濯機100に対する動作開始指示がされると、排水弁48の開閉器48aと排気口42の開閉器42aとが閉動作する。これにより外胴30内は完全に密閉された状態となる。次に、給蒸気配管40の開閉器40bが開動作する。これにより、外部給蒸気配管1からの高圧高温蒸気が給蒸気配管40を通して外胴30内部に供給される。前述のように、外胴30等は耐圧構造を有し且つ(給蒸気配管40の給蒸気口40dを除き)密閉された状態であるため、外胴30内部は外部給蒸気配管1から供給される高圧高温蒸気で満たされ、最終的に外部給蒸気配管1から供給される高圧高温蒸気と略同等の高圧高温状態もしくは上記の保護装置として機能する開閉器の上限圧力と略同等の高圧高温状態(約140kPa・105℃〜約280kPa・130℃、好ましくは147kPa・110℃程度)となる。そして、外胴30内に設置された内胴32内も多孔34の存在によって、外胴30内と同様の高圧高温状態となる。尚、排気口42の開閉器42aの閉動作を遅延させ、外胴30内を給蒸気配管40からの高圧高温蒸気で略飽和させた後に開閉器42aの閉動作を行うようにしても良い。
【0026】
そして、上記の高圧高温状態を所定時間(10分〜30分程度が好ましい。)維持することで、被洗濯物に付着した細菌、病原菌等を殺菌する。この際、駆動手段を動作させ、内胴32を連続的もしくは断続的に回転させることで被洗濯物を攪拌し、殺菌効率を向上させることが好ましい。以上が本発明に係る殺菌洗浄方法の殺菌工程に相当する。
【0027】
次に、殺菌機能付洗濯機100は給蒸気配管40の開閉器40bを閉動作させるとともに排気口42の開閉器42aを開動作させる。これにより、外胴30内は常圧となる。次に、給水配管44の開閉器44b1、44b2の一方もしくは双方を開動作させ、給水配管44を通して外部給水配管3aから供給される水もしくは外部給湯配管3bから供給される温水もしくはそれらの混合水を洗浄水として外胴30内に給水する。このとき薬剤投入手段14は、薬剤投入手段14内に予め蓄えられている所定の薬剤を直接もしくは給水中の洗浄水を介して外胴30内に投入する。そして、外胴30内に所定量の洗浄水が給水されると、殺菌機能付洗濯機100は給水配管44の開閉器44b1、44b2を閉動作させる。このとき、内胴32内には洗浄水が多孔34を通して流入し、内胴32内の被洗濯物は洗浄水中に没した状態となる。
【0028】
次に、殺菌機能付洗濯機100は駆動手段を動作させ、内胴32を連続的もしくは断続的に回転させる。これにより、殺菌後の被洗濯物の洗浄が行われる。尚、この洗浄動作中に給蒸気配管40の開閉器40bを開動作させ、供給される高圧高温蒸気により外胴30内の洗浄水に対する加熱もしくは保温を行っても良い。また、何らかの原因で外胴30内の洗浄水量が過剰となりオーバーフロ配管18の設置位置(本例では排気口42の分岐前の配管の設置位置)の水位を超えると、余剰な洗浄水はオーバーフロ配管18を通して外部排水ピット5に排水される。
【0029】
上記の洗浄動作が所定の時間行われると、殺菌機能付洗濯機100は駆動手段を停止するとともに排水弁48の開閉器48aを開動作させる。これにより、外胴30内の洗浄水は排水弁48を通して外部排水ピット5に排水され適切に処理される。尚、排水される洗浄水は殺菌後の被洗濯物を洗浄したものであるから、排水された洗浄水により感染症等に罹患することは無い。
【0030】
次に、殺菌機能付洗濯機100は、排水弁48の開閉器48aを閉動作させるとともに給水配管44の開閉器44b1、44b2の一方もしくは双方を再度開動作させ、水もしくは温水もしくはそれらの混合水をすすぎ用の洗浄水として外胴30内に給水する。そして、外胴30内に所定量のすすぎ用の洗浄水が給水されると、給水配管44の開閉器44b1、44b2を閉動作させるとともに駆動手段を動作させ、内胴32を連続的もしくは断続的に回転させる。これにより、洗浄後の被洗濯物に対するすすぎが行われる。
【0031】
上記のすすぎ動作が所定の時間行われると、殺菌機能付洗濯機100は駆動手段を停止するとともに排水弁48の開閉器48aを開動作させる。これにより、外胴30内のすすぎ用の洗浄水は外部排水ピット5に排水され適切に処理される。尚、上記のすすぎ動作は複数回行っても良い。
【0032】
次に、殺菌機能付洗濯機100は駆動手段を高速で動作させ、内胴32を高速回転させる。この回転動作の遠心力により被洗濯物の過剰な水分は多孔34を通して外胴30に排出され、被洗濯物に対する脱水が行われる。尚、外胴30に排出された余剰な水分は、排水弁48を通して外部排水ピット5に排水される。以上が、本発明に係る殺菌洗浄方法の洗浄工程に相当する。
【0033】
尚、上記の例では殺菌工程後に洗浄工程を行う例を示したが、洗浄工程後に殺菌工程を行うようにしても良い。上記の例のように殺菌工程を先に行う場合では、殺菌工程時の高温状態によって被洗濯物に付着した血液や蛋白質成分が固化し除去し難い状態となるが、洗浄工程を先に行えば血液や蛋白質成分を容易に洗浄・除去することができる。ただしこの場合には、外部排水ピット5に排水された洗浄水に対して薬剤等による消毒を行う必要がある。
【0034】
上記のようにして殺菌工程及び洗浄工程が終了すると、殺菌機能付洗濯機100は被洗濯物の殺菌及び洗浄が終了したことを報知し待機状態となる。
【0035】
次に、被洗濯物の投入時と同様の操作を行って扉部20を開け、脱水後の被洗濯物を取り出す。取り出された被洗濯物は衣類乾燥設備等で乾燥処理される。尚、殺菌機能付洗濯機100に衣類乾燥手段を設け、殺菌工程、洗浄工程後に連続して被洗濯物に対する乾燥処理を行えるようにしても良い。
【0036】
以上のように、本発明に係る殺菌機能付洗濯機及び殺菌洗浄方法によれば、外胴30及び外胴30に関与する各部に耐圧構造を施すことで、外胴30内部を100℃以上の高圧高温状態とすることが可能となる。これにより、医療用衣類等の被洗濯物に対し従来よりも効果的な殺菌を行うことができる。また、セレウス菌等の耐熱性の病原菌に対しても十分な殺菌を行うことができる。更に、殺菌を高圧高温蒸気を用いて行うことで洗浄水を長時間加熱する必要が無く、殺菌工程の時間短縮と省エネルギー化とを図ることができる。尚、本発明は、洗濯業者のみならず医療機関、福祉施設、研究機関等でも使用することができる他、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る殺菌機能付洗濯機の一実施の形態の前面及び右側面を示す外観図である。
【図2】本発明に係る殺菌機能付洗濯機の一実施の形態の左側面及び後面を示す外観図である。
【図3】本発明に係る殺菌機能付洗濯機の外胴及び各配管を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
20 扉部
30 外胴
32 内胴
34 多孔
40 給蒸気配管
42 排気口
44 給水配管
48 排水弁
40b、42a、44b1、44b2、48a 開閉器
100 殺菌機能付洗濯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗濯物を出し入れする耐圧構造を備えた扉部と、
当該扉部を有するとともに耐圧構造を備えた外胴と、
当該外胴の内部に設置され前記扉部側の面が開口し且つ周面に多孔を備えさらに軸線方向を中心に回転する略円筒状の内胴と、
当該内胴を回転駆動させる駆動手段と、
前記外胴内及び内胴内に高圧高温蒸気を供給する耐圧構造の開閉器を備えた給蒸気配管と、
前記外胴内及び内胴内の蒸気及び気体を排気する耐圧構造の開閉器を備えた排気口と、
前記外胴内及び内胴内に洗浄水を給水する耐圧構造の開閉器を備えた給水配管と、
前記外胴内及び内胴内の洗浄水を排水する耐圧構造の開閉器を備えた排水弁と、
を有することを特徴とする殺菌機能付洗濯機。
【請求項2】
耐圧構造を備えた外胴内に設置された内胴の内部に被洗濯物を投入する工程と、
前記外胴内及び内胴内に高圧高温蒸気を供給して当該外胴内及び内胴内を高圧高温状態とし、当該高圧高温状態を所定時間維持しながら前記内胴を回転させることで前記被洗濯物を殺菌する殺菌工程と、
常圧状態の前記外胴内及び内胴内に対して洗浄水を給排水するとともに前記内胴を適宜回転させることで、前記被洗濯物の洗浄及び脱水を行う洗浄工程と、
を備えることを特徴とする殺菌洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−285203(P2009−285203A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141582(P2008−141582)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(592176055)株式会社アサヒ製作所 (7)
【Fターム(参考)】