説明

殺虫殺菌器具、及びこれの設置方法

【課題】雨水ますや貯留槽等で構成される水滞留部に設置しやすく、効率良く殺虫殺菌効果が波及し、該水滞留部内の円滑な水の流動を妨げない殺虫殺菌器具、及びこれの設置方法を提供する。
【解決手段】本発明の殺虫殺菌器具1Aは、水が滞留する雨水ます40内に配置される基部20Aと、該基部20Aの平面視略中央位置から上方に向けて突出し、かつ全部が平面視した際に該基部20Aの外縁よりも内側に設けられ、該雨水ます40内の水に浸かることにより殺虫殺菌機能を発揮する本体部30Aと、を備えている。該殺虫殺菌器具1Aは、雨水ます40のます本体41の底部における平面視略中央位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の殺虫殺菌に用いられる殺虫殺菌器具、及びこれの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨水ますや貯留槽等の水が滞留する水滞留部において、ボウフラや蚊の発生を防止しようとする構成は、いくつか提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0003】
特許文献1には、雨水ますの水が滞留する所要箇所に抗菌作用を有する銅部材または銅合金部材が設けられた構成が開示されている。また、特許文献2には、銅または銅合金製の管が収容された多孔を有する袋からなる殺虫殺菌装置が開示されている。さらに、特許文献3には、銅板に浮揚材を取り付けたボウフラ発生防止具が開示されている。また、特許文献4には、コンクリート製桝本体内部の排水貯留部内に銅イオン発生部材が設けられている蚊発生阻止用桝が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−154589号公報
【特許文献2】特開2001−69895号公報
【特許文献3】特開2008−38578号公報
【特許文献4】特開2009−46861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来構成は、次に示す問題点がある。例えば特許文献1に開示された構成は、銅部材または銅合金部材を雨水ますの内壁にガイド、フック、またはボルトを介して取り付ける必要があり、この取り付け作業が非常に面倒である。このため、銅部材の交換等に手間がかかり、メンテナンスが行いにくいという問題がある。さらに、雨水ますの内壁に銅部材等が取り付けられた状態においては、該雨水ますの内壁に凹凸が複雑かつ不規則に形成されることとなり、雨水ます内において円滑な水の流動を妨げるおそれもある。また、雨水ますの内壁に銅部材等を取り付ける構成であるため、銅部材等の殺虫殺菌効果を雨水ます内全域に波及させにくい。また、特許文献2に開示された構成は、雨水ますに流入する雨水に含まれる泥が多孔を有する袋内に堆積してしまい、該袋内の銅部材が泥に覆われて雨水ます内の水との接触が断たれ、殺虫殺菌機能が発揮されなくなるおそれがある。また、特許文献3に開示された構成は、雨水ます内の水深が浅すぎると、ボウフラ発生防止具が倒れて適切に浮遊しなくなり、場合によっては倒れた該ボウフラ発生防止具の上に砂泥等が堆積して水との接触が断たれ、殺虫殺菌効果が得られなくなるおそれがある。さらに、特許文献4に開示された構成も、雨水ますの内壁に対して銅イオン発生部材を取り付けなければならないため、取り付け作業が非常に面倒であり、該部材の交換に手間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来構成の問題を解消し、雨水ますや貯留槽等で構成される水滞留部に設置しやすく、殺虫殺菌効果が該水滞留部内において効率良く波及し、該水滞留部内の円滑な水の流動を妨げない殺虫殺菌器具、及びこれの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水の殺虫殺菌に用いられる殺虫殺菌器具であって、水が滞留する水滞留部内に配置される基部と、該基部の平面視略中央位置から上方に向けて突出し、かつ平面視した際に全部が該基部の外縁よりも内側に設けられ、該水滞留部内の水に接触することにより殺虫殺菌機能を発揮する本体部と、を備えていることを特徴とする殺虫殺菌器具である。
【0008】
上記殺虫殺菌器具は、水滞留部である既存の雨水ますや貯留槽等に何等の加工を施す必要のない独立した簡易構造をなしており、特殊な工事を施すことなく簡単に設置可能である。このため、手間がかからず即時使用可能で実用的である。また、殺虫殺菌機能を有する本体部が前記基部の平面視略中央に配置され、しかも該本体部の全部が平面視した際に該基部の外縁よりも内側に設けられているため、仮に該殺虫殺菌器具が水滞留部内において水に押し流される等して該水滞留部内の壁際に押し出されたとしても、該水滞留部の内壁には該基部が接触するだけで、該本体部は該内壁に対して常に離間した状態となる。このため、該殺虫殺菌器具が水滞留部内に配置された状態において、常に該本体部は該水滞留部内の水に取り囲まれるため、該本体部と該水滞留部内の水との接触面積が常時十分に確保され、殺虫殺菌効果が該水滞留部内に広く波及しやすい。また、該本体部の周りにおいて円滑な水の流動も確保されやすく、さらには該水滞留部の内壁に殺虫殺菌用の部材等が別途取り付けられることがないため、該内壁に複雑で不規則な凹凸が形成されず、水の流動を阻害しない。さらにまた、該殺虫殺菌器具は、例えば作業者が上方に突出している前記本体部を掴むことで水滞留部内に配置したり、逆に該水滞留部から取り出したりすることができるため、該殺虫殺菌器具の定期的な点検や交換作業、あるいは該水滞留部の清掃作業等が非常に行いやすい。
【0009】
また、前記本体部は、前記基部に固定されており、少なくとも側壁に透水部が設けられ、内部には、水に接触することにより殺虫殺菌機能を発揮する水接触型固形殺虫殺菌剤が収容されている殺虫殺菌剤用容器部を有し、前記水滞留部内に配置された状態で、該水滞留部内の水が、該殺虫殺菌剤用容器部の該透水部を介して該殺虫殺菌剤用容器部内の該水接触型固形殺虫殺菌剤に接触する構成が望ましい。
【0010】
ここで、前記水接触型固形殺虫殺菌剤は、水に略全溶するまで殺虫殺菌効果が発揮される水溶性のものも、殺虫殺菌効果が失われても水に全溶せずに外形がほぼそのまま残る非水溶性のものも含まれるが、本構成は水溶性のものを適用した場合に特に有用である。すなわち、該殺虫殺菌剤用容器部内の水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤は、少なくとも水位より下方にある部分から水に溶解していくか、あるいは水に浮いた状態で溶解していく。そして、特に水接触型固形殺虫殺菌剤の下部が順次溶解していく場合、これに対応して該殺虫殺菌剤用容器部内の水接触型固形殺虫殺菌剤の上部は該水接触型固形殺虫殺菌剤の下部の溶解によって生じる隙間を埋めるように順次上から下降する。このため、本発明の殺虫殺菌器具にあっては、水接触型固形殺虫殺菌剤が適量だけ順次消費されることになり、殺虫殺菌効果が持続しやすく、また該水接触型固形殺虫殺菌剤の全量を無駄なく使い切ることが可能となる。
【0011】
さらに、前記水滞留部に、該水滞留部内の水を該水滞留部の外へ流出させる流出管が接続されている場合にあって、該水滞留部内に配置された状態で、前記本体部の上端が、該水滞留部における流出管接続口の管底より高い位置に設定されていることが望ましい。
【0012】
上記のように、少なくとも前記殺虫殺菌器具の本体部の高さが前記流出管接続口を基準にして上記位置に設定されていれば、該殺虫殺菌器具の本体部の上側が水面から露出しやすいため、例えば作業者が該本体部を容易に掴むことができ、該殺虫殺菌器具の取り出し作業、あるいは該殺虫殺菌器具の設置作業が容易となる。
【0013】
また、本発明は、上記の殺虫殺菌器具の設置方法であって、該殺虫殺菌器具を、前記水滞留部の内壁と前記本体部とが非接触となるように該水滞留部内に配置することを特徴とする殺虫殺菌器具の設置方法である。
【0014】
かかる構成とすることにより、前記殺虫殺菌器具の本体部周りを水滞留部内の水が自在に流動可能となるため、該水滞留部内の円滑な水の流れを阻害することがない。また、該本体部は該内壁に対して常に離間した状態となるため、該殺虫殺菌器具が水滞留部内に配置された状態において、常に該本体部は該水滞留部内の水に取り囲まれる。このため、該本体部と該水滞留部内の水との接触面積が常時十分に確保されることになり、殺虫殺菌効果が該水滞留部内に広く波及しやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の殺虫殺菌器具は、既存の雨水ますや貯留槽等で構成される水滞留部に対して独立した簡易構造をなし、該水滞留部に簡便に設置できるため非常に実用的である。また、該殺虫殺菌器具が水滞留部内に配置された状態で、該水滞留部内の円滑な水の流動を妨げることがなく、また殺虫殺菌効果が波及しやすい効果もある。また、上方に突出した本体部の上側を把持して、該殺虫殺菌器具を水滞留部内へ設置したり該水滞留部から取り出したりすることが容易にできる効果もある。さらに、本発明の殺虫殺菌器具の設置方法は、水滞留部内の円滑な水の流れを阻害することなく殺虫殺菌効果を効率良く発揮させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1にかかる殺虫殺菌器具を示す外観斜視図。
【図2】殺虫殺菌器具の分解斜視図。
【図3】殺虫殺菌器具を用いた殺虫殺菌システムを示す縦断面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】実施例2にかかる殺虫殺菌器具を示す縦断面図。
【図6】実施例3にかかる殺虫殺菌器具を示す縦断面図。
【図7】実施例4にかかる殺虫殺菌器具を示す部分斜視図。
【図8】実施例5にかかる殺虫殺菌器具を示す部分分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の殺虫殺菌器具等を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0018】
(実施例1)
図1,2に示すように、殺虫殺菌器具1Aは、基部20Aと、本体部30Aと、を備えている。図2に示すように、該基部20Aは、円盤状の板材からなり、さらにその平面視略中央位置には、有底筒状の固定部31が上方に向けて突出するように設けられている。さらに、該固定部31の外周には、該固定部31の外周方向に沿うネジ溝が形成されている。なお、該基部20Aの材料は特に限定されないが、1よりも比重が大きく水に沈む材料からなることが望ましい。
【0019】
また、図2に示すように、前記本体部30Aは、ゴム製のOリング32、円環状のパッキン33、さらに、上下方向に貫通した貫通孔34Aを有する固定具34、透明な樹脂材料からなる殺虫殺菌剤用容器部35、及びキャップ36を有している。ここで、該殺虫殺菌剤用容器部35は、前記基部20Aより細径で長尺状の円筒部材からなり、その側壁には横長スリットからなる透水部37が複数設けられている。また、該固定具34の内周面には、前記基部20Aの固定部31に螺着するネジ溝が形成されている。
【0020】
さらに、前記本体部30Aにおける前記Oリング32、前記パッキン33、及び前記キャップ36は、前記殺虫殺菌剤用容器部35の外周に装着可能な寸法に設定されている。また、前記固定具34の貫通孔34Aは、該殺虫殺菌剤用容器部35の下端部が挿通自在な寸法に設定されている。また、前記基部20Aの固定部31の内径は、該殺虫殺菌剤用容器部35の下端が挿入可能な寸法に設定されている。
【0021】
上記構成にあって、殺虫殺菌器具1Aは、以下のようにして組み立てられる。
まず、前記基部20Aの固定部31の上端に、前記Oリング32が配置される。また、前記殺虫殺菌剤用容器部35の下端部が固定具34の貫通孔34Aに挿入された上で、該下端部に前記パッキン33が装着される。そして、該殺虫殺菌剤用容器部35の下端部が前記基部20Aの固定部31内に挿入され、前記固定具34と前記基部20Aの固定部31とがOリング32及びパッキン33が介在した状態でネジ止めされ、該基部20Aに該殺虫殺菌剤用容器部35が起立状に固定される。また、該殺虫殺菌剤用容器部35内には、水溶性の水接触型固形殺虫殺菌剤Xが充填される。また、該殺虫殺菌剤用容器部35の上端開口にはキャップ36が装着される。なお、この状態で該殺虫殺菌器具1Aを平面視した場合、前記本体部30Aの全部は、前記基部20Aの外縁よりも内側に設けられている。
【0022】
前記水接触型固形殺虫殺菌剤Xは、ボウフラや蚊等の発生を防止する公知技術の殺虫殺菌剤が好適に用いられるが、水に略全溶するまで殺虫殺菌効果が発揮される水溶性のものであって、既に市販されている多数の粒の集合体である銀系無菌抗菌剤(例えば、商品名:ノバロン 東亞合成株式会社製)が特に望ましい。該水接触型固形殺虫殺菌剤Xは、固定部31に取り付けられた殺虫殺菌剤用容器部35の上端開口から投入されて該殺虫殺菌剤用容器部35内に充填されるようにしてもよいし、該水接触型固形殺虫殺菌剤Xが該固定部31内に置かれた後、キャップ36が既に取り付けられた殺虫殺菌剤用容器部35が該固定部31内に嵌入されることにより該殺虫殺菌剤用容器部35内に収容されるようにしてもよい。
【0023】
図3に示すように、上記殺虫殺菌器具1Aは、例えば既存の雨水ます(水滞留部)40内に設置される。
該雨水ます40は、雨水ます本体41と、該雨水ます本体41の上部に配置されるグレーチング42とで構成されている。また、該雨水ます40の側壁には、単一の流出管43、及び単一の流入管44が接続されている。
【0024】
そして、前記グレーチング42が外された上で前記殺虫殺菌器具1Aが該雨水ます本体41の上部開口を介して該雨水ます本体41の底部における平面視略中央位置に配置され、再度グレーチング42が適正に取り付けられることにより、該雨水ます40と、該雨水ます40内に配置された殺虫殺菌器具1Aと、からなる殺虫殺菌システム10が適切に構成される。この際、作業者は該殺虫殺菌器具1Aの本体部30Aの上側(キャップ36側)を掴んで該雨水ます40内に該殺虫殺菌器具1Aを設置すればよい。更に、該殺虫殺菌器具1Aを取り出す際も同様に本体部30Aの上側(キャップ36側)を掴めばよい。このため、作業者は該雨水ます本体41の底面にまで手を伸ばす必要がない。
【0025】
なお、前記殺虫殺菌システム10において、前記本体部30Aの上端は、該雨水ます40に接続された流出管43における流出管接続口43Aの管底より高い位置となるように設定される。ここで、該流出管43における流出管接続口43Aの管底とは、該流出管43において水が流れる内周面側の最も下の部分をいう。
【0026】
上記殺虫殺菌システム10にあって、雨水ます40内に水が滞留すると、前記殺虫殺菌器具1Aの本体部30Aが水に浸かり、該本体部30Aにおける殺虫殺菌剤用容器部35の透水部37を介して、該殺虫殺菌剤用容器部35内の水接触型固形殺虫殺菌剤Xが水に接触する。そして、該水接触型固形殺虫殺菌剤Xが水に溶解することで、該雨水ます40内の水に対して殺虫殺菌効果が波及する。
【0027】
図4に示すように、上記構成の殺虫殺菌器具1Aは、本体部30Aが前記基部20Aの平面視略中央位置に配置され、かつ該本体部30Aの全部が平面視した際に該基部20Aの外縁よりも内側に設けられているため、仮に該基部20Aが雨水ます40の内壁に接触した状態となっても、該本体部30Aは該内壁に対して間隔をおいて配置される。このように、雨水ます40内に殺虫殺菌器具1Aが配置された状態で常に前記本体部30Aが雨水ます40の内壁に対して非接触であると、該本体部30A周りを雨水ます40内の水が自在に流動可能となると共に、該雨水ます40の内壁には複雑で不規則な凹凸が形成されることがないため、雨水ます40内の円滑な水の流動が妨げられない。また、該本体部30Aの全周に亘って該雨水ます40内の水が取り囲むことになるため、該本体部30Aと該雨水ます40内の水との接触面積が十分に確保されることとなり、殺虫殺菌効果が該雨水ます40内の水に広く波及しやすい。
【0028】
また、上記構成の殺虫殺菌器具1Aにおいては、水接触型固形殺虫殺菌剤Xが持続的、かつ効率的に使用される。すなわち、前記殺虫殺菌剤用容器部35内の水接触型固形殺虫殺菌剤Xは、水面下に配された下部から順に溶解し、これに対応して該水接触型固形殺虫殺菌剤Xの上部が前記下部の溶解によって生じる下方の隙間を埋めるように順次下降する。したがって、水接触型固形殺虫殺菌剤Xは適量だけ順次消費されることになり、殺虫殺菌効果が持続しやすく、また全部が水に対して易溶であるため、無駄が生じにくい。
【0029】
また、上記のように、殺虫殺菌器具1Aの本体部30Aの上端が流出管接続口43Aの管底より高い位置となるように設定されているから(図3参照)、該本体部30Aの上端が雨水ます40内において水面から露出しやすくなり、作業者が該本体部30Aを確実に掴むことができる。このため、作業者は該本体部30Aを掴むことで殺虫殺菌器具1Aを雨水ます40から容易に取り出したり、あるいは雨水ます40内へ容易に設置したりすることができる。したがって、定期的な点検や交換作業、あるいは該雨水ます40の清掃作業等が非常に行いやすい。なお、雨水ます40に接続された流出管43が複数の場合は、最も低い位置に配された流出管43における流出管接続口43Aの管底より該本体部30Aの上端が高い位置に設定されればよい。
【0030】
また、前記本体部30Aの殺虫殺菌剤用容器部35は、透明な樹脂材料で構成されるため、作業者は、収容された水接触型固形殺虫殺菌剤Xの残量等を容易に確認することができる。
【0031】
(実施例2)
以下、実施例2にかかる殺虫殺菌器具1Bについて説明するが、実施例1と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0032】
図5に示す殺虫殺菌器具1Bは、基部20Bの上面であって前記本体部30Aの周囲に、水を溜めておくことができる凹部21が形成されている。そして、該殺虫殺菌器具1Bの使用状態において、仮に雨水ます40内の水が減少してきた場合、該凹部21内に水が溜まることで該本体部30Aの周りに水が集中するため、該本体部30Aと水との接触をできるかぎり長く確保することができる。このため、殺虫殺菌効果の持続性が向上する。なお、該凹部21の底面は、図5に示す構成に限られず、本体部30Aに向けて下方傾斜する構成であってもよい。このような構成は、該凹部21内の水を該本体部30Aの周りにさらに集中させることができる。
【0033】
(実施例3)
以下、実施例3にかかる殺虫殺菌器具1Cについて説明するが、実施例1,2と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0034】
図6に示すように、殺虫殺菌器具1Cは、雨水ます40内での転倒を防止する転倒防止ストッパー部23を備えている。さらに詳述すると、雨水ます40内に流入する水の強さ、あるいは該雨水ます40の底部に堆積する泥Pの堆積状態によっては、該殺虫殺菌器具1Cが該雨水ます40内で傾いて転倒してしまうおそれがある。そこで本実施例の構成は、このような転倒を防止すべく、該転倒防止ストッパー部23が設けられている。該転倒防止ストッパー部23は、本体部30Aの中ほどに貫通状に固定された樹脂製の円盤部材で構成されている。さらに該円盤部材は、前記基部20Aと略同形状及び略同寸法となるように設定されている。かかる構成とすることにより、仮に雨水ます40の底面が傾斜して殺虫殺菌器具1Cが倒れかかったとしても、該転倒防止ストッパー部23が雨水ます40の内壁に接触することにより、該殺虫殺菌器具1Cの転倒を防ぐことが可能となる。このため、適切に殺虫殺菌器具1Cが雨水ます40内に配置される。なお、転倒防止ストッパー部23は、殺虫殺菌剤が練り込まれた樹脂からなる部材で構成されていたり、殺虫殺菌剤が入った袋が吊り下げられたりしていてもよく、殺虫殺菌機能が付与されてもよい。
【0035】
(実施例4)
以下、実施例4にかかる殺虫殺菌器具1Dについて説明するが、実施例1〜3と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0036】
図7に示す殺虫殺菌器具1Dは、本体部30Aにおけるキャップ36の上端面に管理用表示部38が設けられている。さらに詳述すると、該管理用表示部38は、前記殺虫殺菌剤用容器部35内に収容される水接触型固形殺虫殺菌剤Xの製造年月日等が表示され、該キャップ36の上端面に貼り付けられるシールにより構成されている。かかる構成とすることにより、雨水ます40内の点検を行う作業者は、該管理用表示部38を該雨水ます40の上方より目視にて確認するだけで、該水接触型固形殺虫殺菌剤Xの交換時期等を容易に確認し、保守管理することが可能となる。なお、該管理用表示部38は、作業者が確認し易いところであれば本体部30Aに配置されていても基部20Aに配置されていてもよい。また、その他、該本体部30Aや該基部20Aに直接文字等が印刷されていたり、刻印されたりしていてもよい。
【0037】
(実施例5)
以下、実施例5にかかる殺虫殺菌器具1Eについて説明するが、実施例1〜4と共通する部分については説明を簡略又は省略し、また図中では同じ符号を付すこととする。
【0038】
図8に示すように、殺虫殺菌器具1Eは、基部20Cと、水と接触することにより殺虫殺菌効果を発揮する棒状の銅部材からなる本体部30Bと、で構成されている。さらに詳述すると、該基部20Cの平面視中央位置には、雌ネジが形成された第一係合部25が形成されている。一方、前記本体部30Bの下端には、前記第一係合部25と螺合可能な雄ネジが形成された第二係合部39が形成されている。そして、該第二係合部39と該第一係合部25とが螺着して係合することにより、該基部20C上に本体部30Bが起立状に固定される。そして、該殺虫殺菌器具1Eが雨水ます40内に配置されて該本体部30Bが該雨水ます40内の水と接触すると、該雨水ます40内の水に対して殺虫殺菌効果が発揮される。
【0039】
上述した殺虫殺菌器具1A〜1Eは、その他にも現場の状況に応じて適宜設計変更可能である。
【0040】
前記基部20A〜20Cの平面形状は、多角形状であっても楕円形状であってもよい。該基部20A〜20Cは、雨水ます40に接続された流出管43や流入管44から殺虫殺菌器具1A〜1Eが外部へ流出してしまうことを防止すべく、該流出管43や該流入管44の寸法形状より大きくなるように設定されることが望ましい。例えば、該基部20A〜20Cに、流出管43や流入管44の最大内径より長い部位を設けておき、該基部20A〜20Cが該流出管43や該流入管44の管端に引っ掛かりやすくしておく構成が提案される。また、該基部20A〜20Cの厚み(高さ)をできる限り薄く(小さく)した構成は、前記雨水ます40の貯水容量を過剰に小さくしてしまうことがない点で望ましい。
【0041】
また、本体部30A,30Bの外表面を適宜色分けすることによって、水接触型固形殺虫殺菌剤Xの消費期限等を作業者に視覚で知らせるようにしてもよい。また、殺虫殺菌剤Xは、上記実施例のように単体で用いられてもよいし、網状等の袋内に殺虫殺菌剤が収容されたものであってもよいし、殺虫殺菌剤が樹脂に練り込まれてなるものであってもよい。更に透水部37の寸法形状は、水が浸入可能であり、かつ殺虫殺菌剤用容器部35の強度が十分に確保できるものであれば特に限定されない。また、該殺虫殺菌剤用容器部35、及びキャップ36は、樹脂材料や銅などの殺虫殺菌機能を有する金属で構成することもできる。ただし、好ましくは樹脂材料であり、より好ましくは透明な樹脂材料である。また、該殺虫殺菌剤用容器部35は、多数の筒部材を入れ子式に接続したテレスコピック構造とし、該殺虫殺菌剤用容器部35を上下に伸縮させて本体部30Aの高さを変更自在としてもよい。
【0042】
本発明において、前記本体部30A,30Bは、該基部20A〜20Cの平面視略中央位置に配置されることとなるが、これは該本体部30A,30Bが該基部20A〜20Cにおける厳密な中心あるいは厳密な重心に配置される必要はないという主旨である。要は、雨水ます40内に配置された際に該本体部30A,30Bが該雨水ます40の内壁に接触せず、しかも該本体部30A,30Bの周りを水が取り囲んで雨水ます40内の水の流れを阻害しない程度であれば、該本体部30A,30Bが該基部20A〜20Cの中心や重心から多少ずれた位置に配置されていてもよい。また、該基部20A〜20Cと該本体部30A,30Bとの固定構造は、上記実施例に限定されることはなく、公知の技術に基づき様々に変更可能である。また、雨水ます40に接続された流出管43や流入管44から殺虫殺菌器具1A〜1Eが外部へ流出してしまうことを防止すべく、該本体部30A,30Bの高さは、流出管43や流入管44の最大内径より長くなるように設定されていることが望ましい。かかる構成とすることにより、該本体部30A,30Bが該流出管43や該流入管44の管端に引っ掛かりやすくなり、外部へ流出しにくくなる。
【0043】
また、殺虫殺菌器具1A〜1Eにおいて、本体部30A,30Bの上部と雨水ます40のグレーチング42とが、紐やロープ等の連結要素にて連結されていてもよい。かかる構成は、作業者が該連結要素を引き上げることで、雨水ます40内に配置された該殺虫殺菌器具1A〜1Eを雨水ます40から容易に取り出すことができる。また、該殺虫殺菌器具1A〜1Eは、水滞留部としての浸透槽内や貯留槽内等に配置されてもよく、水が滞留する可能性のあるあらゆる場所に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1A〜1E 殺虫殺菌器具
10 殺虫殺菌システム
20A〜20C 基部
30A,30B 本体部
35 殺虫殺菌剤用容器部
37 透水部
40 雨水ます(水滞留部)
43 流出管
43A 流出管接続口
X 水接触型固形殺虫殺菌剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の殺虫殺菌に用いられる殺虫殺菌器具であって、
水が滞留する水滞留部内に配置される基部と、
該基部の平面視略中央位置から上方に向けて突出し、かつ平面視した際に全部が該基部の外縁よりも内側に設けられ、該水滞留部内の水に接触することにより殺虫殺菌機能を発揮する本体部と、
を備えていることを特徴とする殺虫殺菌器具。
【請求項2】
前記本体部は、
前記基部に固定されており、少なくとも側壁に透水部が設けられ、内部には、水に接触することにより殺虫殺菌機能を発揮する水接触型固形殺虫殺菌剤が収容されている殺虫殺菌剤用容器部を有し、
前記水滞留部内に配置された状態で、該水滞留部内の水が、該殺虫殺菌剤用容器部の該透水部を介して該殺虫殺菌剤用容器部内の該水接触型固形殺虫殺菌剤に接触する
請求項1に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項3】
前記水滞留部に、該水滞留部内の水を該水滞留部の外へ流出させる流出管が接続されている場合にあって、
該水滞留部内に配置された状態で、前記本体部の上端が、該水滞留部における流出管接続口の管底より高い位置に設定されている
請求項1又は請求項2に記載の殺虫殺菌器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の殺虫殺菌器具の設置方法であって、
該殺虫殺菌器具を、前記水滞留部の内壁と前記本体部とが非接触となるように該水滞留部内に配置する
ことを特徴とする殺虫殺菌器具の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−64272(P2013−64272A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203574(P2011−203574)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】