説明

毛髪用感触付与剤

【課題】塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘り、良好な使用感(指通りが良く滑らか)を持続的に発現し得る毛髪用感触付与剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):R1O−(PO)n−H (1)
(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、nはPOの平均付加モル数であり3.5〜4.5の数を示す)で表される化合物(1)を含有し、かつ該化合物(1)中、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物の含有量が3質量%以下である毛髪用感触付与剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用感触付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、環境(太陽光による紫外線や熱、乾燥)、日常のヘアーケア処理(洗髪やブラッシング、ドライヤーの熱付与)、又は化学的施術(カラーリング、パーマ等)によりダメージを受けている。そのため、摩擦が増大し、ぱさついた毛髪の表面をなめらかな感触に戻すため、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー、ヘアーシャンプー等様々な毛髪化粧料が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定構造のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、これ以外の界面活性剤と油性成分とを含有する毛髪用コンディショニング組成物が開示されている。かかる毛髪用コンディショニング組成物を用いると、仕上がり時に油っぽいべたつきがなく、毛髪に良好なまとまりと保湿感とを付与することができる。
【0004】
また、特許文献2には、特定構造のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有し、かつ原料のアルコール含量が少ないパーマネントウェーブ剤用又は染毛剤用毛髪処理剤組成物が開示されている。かかる毛髪処理剤組成物であれば、ヘアカラーやパーマ等の化学的処理した後の毛髪に良好なまとまりと優れた感触とを付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263331
【特許文献2】特開2011−93883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、いずれの文献に記載の組成物であっても、指通りが良く滑らかさを実感できる良好な使用感を、塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘って充分に発現させるには、依然としてさらなる改善を要する。
したがって、本発明の課題は、塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘り、良好な使用感(指通りが良く滑らか)を持続的に発現し得る毛髪用感触付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、POの付加モル数1の化合物の割合が低減された特定構造のポリオキシプロピレンアルキルエーテルを用いることにより、塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘って良好な使用感を充分に発揮することのできる毛髪用感触付与剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
1O−(PO)n−H (1)
(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、nはPOの平均付加モル数であり3.5〜4.5の数を示す)
で表される化合物(1)を含有し、かつ
該化合物(1)中、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物の含有量が3質量%以下である毛髪用感触付与剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、次の工程(I)及び(II):
(I)塩基性触媒の存在下にて、R1OH(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表されるアルコールに、プロピレンオキシドを付加させる工程、及び
(II)R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物を蒸留留去する工程
を含む、上記毛髪用感触付与剤の製造方法を提供するものである。
【0010】
なお、本発明の毛髪用感触付与剤がもたらす、塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘る良好な使用感とは、毛髪表面の摩擦が低減され、からまることなく指通りを良くするため、根元から毛先までごわつかずに毛髪本来の柔らかさを保持した滑らかな感触を実感することができ、こうした感触を毛髪に塗布した時点から、すすいだ後だけでなく、ドライヤー等で乾燥させた後にも実感することのできる持続性の高い使用感を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪用感触付与剤によれば、塗布時からすすぎ時及び乾燥後に亘って、一貫して指通りが良く滑らかさを実感できる良好な使用感を充分に実感することができる。かかる毛髪用感触付与剤は、毛髪美容液、ブロー剤及びスタイリング剤のみならず、ヘアーシャンプー、ヘアーコンディショナー、ヘアートリートメント等の毛髪化粧料にも幅広く適用することができ、優れた仕上がり感をもたらすことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の毛髪用感触付与剤に含有される化合物は、下記一般式(1):
1O−(PO)n−H (1)
で表される(以下、「化合物(1)」とも称する)。一般式(1)において、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す。毛髪への塗布時からすすぎ時まででなく、タオルドライ時又は乾燥後に至るまで良好な柔らかさを付与する点から、R1は直鎖アルキル基であるのが好ましい。R1の炭素数が8であると、毛髪への均一な塗布性も良好となり、特にすすぎ時において指通りの良い滑らかな感触を実感できる優れた使用感を付与することができる。
【0013】
一般式(1)において、PO(プロピレンオキシ基)の平均付加モル数nは3.5〜4.5の数である。平均付加モル数nがこの範囲内の数であると、毛髪へ塗布時、洗い流し時、タオルドライ時及び乾燥時に亘り、持続的に良好な使用感を付与することができる。さらに塗布時とタオルドライ時において感触の向上を図る点から、3.8〜4.2の数が好ましい。
【0014】
一般式(1)で表わされる化合物(1)中、POの付加モル数1の化合物である、R1O−PO−Hで表される化合物の含有量は、3質量%以下である。R1O−PO−Hで表される化合物の含有量がかかる範囲内であると、毛髪へ塗布時、洗い流し時、タオルドライ時及び乾燥時に亘り、持続的に良好な感触を付与することができる。さらに良好な使用感の持続性を図る点から、R1O−PO−Hで表される化合物の含有量は、0.01〜3質量%であるのが好ましい。
なお、R1O−PO−Hで表される化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより内部標準物質(ドデカン)を用いて定量した値とする。
【0015】
一般式(1)中の平均付加モル数nは、平均の値であり、個々の分子の付加モル数には分布がある。これら付加モル数については、毛髪の滑らかな指通りの観点から、POの付加モル数の分布が特定の傾向を示すのがよい。具体的には、化合物(1)中、POの付加モル数3〜5である化合物全量の占める割合は、45〜65モル%であるのが好ましく、50〜60モル%であるのがさらに好ましい。
【0016】
また、毛髪の柔らかさと、指通りの良さとの両立の観点から、化合物(1)中、POの付加モル数4〜6である化合物全量の占める割合は、35〜55モル%であるのが好ましく、38〜48モル%であるのがさらに好ましい。
【0017】
さらに、指通りの良さ、及びべたつきの無いさらさら感の観点、並びに製造上の観点から、化合物(1)中、POの付加モル数2である化合物の占める割合は、8〜30モル%であるのが好ましく、10〜25モル%であるのがより好ましい。さらに、化合物(1)中、POの付加モル数3である化合物の占める割合は、10〜35モル%であるのが好ましく、15〜30モル%であるのがより好ましい。また、化合物(1)中、POの付加モル数4である化合物の占める割合は、10〜30モル%であるのが好ましく、15〜25モル%であるのがより好ましい。さらに、化合物(1)中、POの付加モル数5である化合物の占める割合は、5〜25モル%であるのが好ましく、10〜20モル%であるのがより好ましい。
【0018】
なお、指どおりが良く滑らかな感触の持続性の観点から、化合物(1)中、POの付加モル数1である上記R1O−PO−Hで表される化合物の占める割合は、6モル%以下であるのが好ましく、0.01〜5モル%であるのがより好ましい。
【0019】
平均付加モル数nの値は、1H-NMRにより求めることができる。POの付加モル数の分布は、後述するガスクロマトグラフィーにより求めることができる。
【0020】
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物は、塩基性触媒を用い、R1OH(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を示す。)で表されるアルコールにプロピレンオキシドを反応させた後、R1O−PO−Hで表わされる化合物を蒸留留去することにより得ることができる。上記反応時に付加させるPO(プロピレンオキシ基)の平均付加モル数は、前述のnの値であるのが好ましい。この際、ともにR1OH(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を示す。)で表されるアルコールを蒸留留去するのが好ましい。
【0021】
塩基性触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等を用いることができる。なかでも、水酸化カリウムが好ましい。塩基性触媒の使用量は、上記R1OHで表されるアルコール中に、好ましくは0.1〜5mol%であり、より好ましくは0.1〜3mol%である。反応温度は、好ましくは80℃〜200℃であり、より好ましくは110℃〜160℃であり、反応圧力は、好ましくは0.1〜0.8MPaであり、より好ましくは0.1〜0.6MPaである。
【0022】
反応物は、そのまま蒸留留去に付すこともできるが、上述のようにR1OHで表されるアルコールにプロピレンオキシドを反応させた後、蒸留留去に付す前に、塩基性触媒を中和剤により中和する又は吸着剤で除去するのが好ましい。このようにすることで、化合物(1)中のR1O−PO−Hで表される化合物の含有量を容易に3質量%以下とすることができる。なかでも、中和剤を用いるのが好ましく、好ましい中和剤としてはヒドロキシカルボン酸、より好ましくは乳酸、マロン酸、グリセリン酸、グリコール酸、クエン酸及びリンゴ酸から選ばれる少なくとも1種、さらに好ましくは乳酸が挙げられる。
【0023】
1O−PO−Hの蒸留留去とは、R1O−PO−Hで表わされる化合物を蒸留若しくは水蒸気処理により留去するか、又は蒸留と水蒸気処理を組み合わせて留去することを意味する。また、水蒸気処理とは、反応組成物に水蒸気を吹き込み、水蒸気とともにR1O−PO−Hで表わされる化合物を系外へ留去することを意味する。好ましい留去条件は次の通りである。
温度:80〜200℃、好ましくは80〜150℃。
圧力:27kPa(200torr)以下、好ましくは6kPa(45torr)以下、より好ましくは経済性等の理由から0.01kPa(0.1torr)〜6kPa(45torr)。
水蒸気量:反応組成物100質量部に対して5質量部以上、好ましくは経済性等の理由から5〜20質量部。
【0024】
本発明の毛髪用感触付与剤は、これを単独で用いてもよく、また適宜その他の成分、例えば水、水溶性コラーゲン、コラーゲン誘導体に代表されるタンパク加水分解物、毛髪脂質類似成分、キレート剤、染料、酸化剤、アルカリ剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、香料、パール光沢剤、湿潤剤、スタイリング用ポリマー、アニオン性界面活性剤、化合物(1)以外の非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を含有して用いてもよい。また、保存安定性の観点から、ヒドロキシエチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、ポリアクリル酸系高分子等の増粘高分子を含有してもよく、シリコーン、エステル油、炭化水素類、グリセリド類、植物油、動物油、ラノリン誘導体、高級脂肪酸エステル類等の油性成分を含有してもよい。これら他の成分を配合する場合、常法により本発明の毛髪用感触付与剤及び各成分を混合して、必要に応じて加温下にて、撹拌し、分散状態にする又は可溶化すればよい。
【0025】
本発明の毛髪用感触付与剤は、例えば、ヘアートリートメント、毛髪美容液、ブロー剤、スタイリング剤、地肌用美容液、ヘアーパック等のほか、ヘアーシャンプー、ヘアーコンディショナー、着色剤(一時的に毛髪を着色するものであって、洗髪によって元の色に戻すことができるもの)、パーマネントウェーブ剤(縮毛矯正剤、リラクサーなども含む)や染毛剤(ヘアーブリーチ剤も含む)(酸化や還元処理など化学的な処理を毛髪に施し、毛髪の形状または色を長期間にわたって変化させるもの)として用いることができ、水で洗い流して用いるものであっても洗い流さないで用いるものであってもよい。水で洗い流して用いるものとしては、ヘアートリートメント、ヘアーパック、ヘアーシャンプー、ヘアーコンディショナー、パーマネントウェーブ剤、染毛剤が挙げられる。水で洗い流さないで用いるものとしては、ヘアーミスト、ヘアークリーム、ヘアーフォーム、ヘアーワックス、ブローローション、コンディショニングジェル、毛髪美容液、地肌美容液、洗い流さないタイプのヘアーコンディショナー/ヘアートリートメント(リーブオンコンディショナー/トリートメント)/ヘアーパック、カラーコスメ等の着色剤(頭髪全体または一部を一時的に着色する化粧料であって、洗髪によって元の色に戻すことができるもの)等が挙げられる。
【0026】
本発明の毛髪用感触付与剤は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ムース状、ワックス状等、種々の形態にて実施することができ、透明であっても半透明であってもよく、微粒子を均一に分散させ、懸濁させてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0028】
[製造例1]
1−オクタノール(カルコール 0898、花王(株)製)2495.5g(19.01mol)、触媒として水酸化カリウム31.93g(オクチルアルコールの活性水素1個あたり0.03モル(3mol%))をオートクレーブに仕込み、110℃、13.3kPaで1時間かけて脱水後、125℃にてプロピレンオキシド4415.5g(オクチルアルコールの活性水素1個あたり4.0mol)を圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら付加反応を行った。プロピレンオキシド導入後125℃で3時間反応させ、反応終了後80℃まで冷却し、未反応のプロピレンオキシドを減圧下で除去した。
反応終了物に対して、90質量%乳酸水溶液57.0g(水酸化カリウムに対して1.0mol)を添加し、80℃にて30分間、撹拌混合を行って中和した。
【0029】
得られた反応組成物1599.9gを、容量3Lの四ツ口フラスコに仕込み、203.8g(反応組成物に対して12.7%)の水蒸気を130℃、4kPaの条件で連続添加することにより、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物を蒸留留去した。得られた成分(プロピレングリコールエーテル1)について、ガスクロマトグラフィーによるR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量、及びPOの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0030】
ガスクロマトグラフィーの条件

ガスクロマトグラフ : Agilent Technologies 6850 Network GC System
カラム : Frontier LAB ULTRA UA-1HT
温度条件 : 初期温度 60℃(2min)
昇温速度 10℃/min(350℃まで)
最終温度 350℃(10min)
サンプル量 : 1μL
注入口条件 : 注入モード スプリット法
注入口温度 300℃
キャリアガス : ヘリウム 流量 21.2mL/min
検出器 : FID
【0031】
1O−PO−Hの定量条件
試料に内部標準物質(ドデカン)を添加し、TMS化剤で前処理を行いガスクロマトグラフィーで得られた結果に対し、ドデカンに対するR1O−PO−Hの面積質量比の検量線から、試料中に対する質量百分率により求める。
【0032】
[製造例2]
プロピレンオキシドの導入量をオクチルアルコールの活性水素1個あたり3.5molにした以外は、製造例1と同様にして、表1に示すプロピレングリコールエーテル2を得た。次いで、表1に示すR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量となるように、水量を調整して水蒸気処理により、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物を蒸留留去した。結果について、POの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合とともに、表1及び表2に示す。
【0033】
[製造例3]
プロピレンオキシドの導入量をオクチルアルコールの活性水素1個あたり4.5molにした以外は、製造例1と同様にして、表1に示すプロピレングリコールエーテル3を得た。次いで、表1に示すR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量となるように、水量を調整して水蒸気処理により、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物を蒸留留去した。結果について、POの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合とともに、表1及び表2に示す。
【0034】
[製造例4]
プロピレンオキシドの導入量をオクチルアルコールの活性水素1個あたり4.0molにし、表1に示すR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量となるように、水量を調整して水蒸気処理を行ったこと以外は、製造例1と同様にして、表1に示すプロピレングリコールエーテル4を得た。結果について、POの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合とともに、表1及び表2に示す。
【0035】
[製造例5]
プロピレンオキシドの導入量をオクチルアルコールの活性水素1個あたり2.6molにし、表1に示すR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量となるように、水量を調整して水蒸気処理を行ったこと以外は、製造例1と同様にして、表1に示すプロピレングリコールエーテル5を得た。結果について、POの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合とともに、表1及び表2に示す。
【0036】
[製造例6]
1−オクタノール(カルコール 0898、花王(株)製)945.2g(7.20mol)、触媒として水酸化カリウム12.38g(オクチルアルコールの活性水素1個あたり0.03モル(3mol%))をオートクレーブに仕込み、110℃、13.3kPaで脱水後、125℃にてプロピレンオキシド2508.0g(オクチルアルコールの活性水素1個あたり6.0mol)を圧力0.1〜0.4MPaとなるように導入しながら付加反応を行った。プロピレンオキシド導入後125℃で3時間反応させ、反応終了後80℃まで冷却し、未反応のプロピレンオキシドを減圧下で除去した。
反応終了物に対して、90質量%乳酸水溶液23.27g(水酸化カリウムに対して1.0mol)を添加し、80℃にて30分間、撹拌混合を行って中和した。
【0037】
得られた反応組成物806.1gを、容量2Lの四ツ口フラスコに仕込み、80℃、6.7kPaの条件で5時間、1.3Nm3/hrの流量で窒素を流通させた。得られた成分(プロピレングリコールエーテル6)についてガスクロマトグラフィーによるR1O−PO−H(R1は炭素数8の直鎖アルキル基)で表わされる化合物(PO1モル付加物)の含有量を測定した。結果について、POの付加モル数が所定のものである化合物の占める割合とともに、表1及び表2に示す。
表1で得られたプロピレングリコールエーテルのPO平均付加モル数nは、1H−NMRにより求めた。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
表1及び表2に示す各プロピレングリコールエーテルを用い、毛髪への塗布時、すすぎ時、タオルドライ時及び乾燥後の仕上がり時の各過程における使用感(指通りの良い滑らかさ)について、下記に示すパネラーによるトレス評価にしたがって、評価した。評価結果も合わせて表3に示す。
【0041】
《トレス評価》
トレス評価の方法及び評価基準を以下に示す。
化学処理歴のない女子成人毛髪で、長さ約30cmの黒色の直毛を検体とし、これを40〜50℃のラウリル硫酸ナトリウム水溶液(2.5質量%)中に10分間浸漬して洗浄し、流水ですすいだ後風乾した。次いで、この毛髪検体約10gを均一な厚みになるように3cm幅に引き揃え、毛髪の長さが25cmになるようにしてその片端を3cm幅のプラスチック板に接着剤で固定したものを試験用毛髪トレスとした。
【0042】
かかる毛髪トレス10gにポリプロピレンアルキルエーテルを1g塗布し、十分なじませた。次いで、水温:40℃、流量:約125ml/secの水で、指を通しながら30秒間すすぎを行った。その後、毛髪サンプルをタオルで押さえ水が滴らない程度まで拭き、手グシでほぐしながらドライヤーをあて、毛髪を乾燥させて仕上がりとした。
【0043】
官能評価(指通りの良い滑らかさ、柔らかさ、均一な塗布性、べたつきの無いさらさら感、良好な感触の持続性)は、上記各工程(塗布時、すすぎ時、タオルドライ時、仕上がり時)ごとに、2人のパネラーが比較例2を基準:3として1〜5点の整数(大きい数値ほど良好な性能を示す)にて5段階で行い、その評価結果を平均して評点を求めた。
評価基準:
S;評点が4.5以上
A;評点が4.0以上4.5未満
B;評点が3.5以上4.0未満
C;評点が3.0以上3.5未満
D;評点が3.0未満
【0044】
【表3】

【0045】
表3の結果より、本発明の毛髪用感触付与剤を用いた実施例1〜3は、比較例1〜3に比して、塗布時当初からすすぎ時、タオルドライ時及び乾燥後の仕上がり時に至るまで、良好な使用感を持続的に実感できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
1O−(PO)n−H (1)
(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、nはPOの平均付加モル数であり3.5〜4.5の数を示す)
で表される化合物(1)を含有し、かつ
該化合物(1)中、R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物の含有量が3質量%以下である毛髪用感触付与剤。
【請求項2】
次の工程(I)及び(II):
(I)塩基性触媒の存在下にて、R1OH(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表されるアルコールに、プロピレンオキシドを付加させる工程、及び
(II)R1O−PO−H(式中、R1は炭素数8の直鎖アルキル基またはアルケニル基を示す)で表わされる化合物を蒸留留去する工程
を含む、請求項1に記載の毛髪用感触付与剤の製造方法。
【請求項3】
工程(II)における蒸留留去する工程が、蒸留と水蒸気処理とを組み合わせて行う工程である、請求項2に記載の毛髪用感触付与剤の製造方法。
【請求項4】
工程(I)を経た後、工程(II)を経る前に、塩基性触媒を中和剤により中和する又は吸着剤で除去する、請求項2又は3に記載の毛髪用感触付与剤の製造方法。

【公開番号】特開2013−87100(P2013−87100A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230266(P2011−230266)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】