気体溶解装置および微細気泡生成装置
【課題】気体溶解装置において、気体と液体との接触面積を一定に維持する。
【解決手段】気体溶解装置3は、上側から下側に向かって順に第1ないし第5水平流路321〜325を有し、第1ないし第4水平流路321〜324には、堰止部32aが設けられる。第1水平流路321には混合ノズル31から気体と液体との混合流体が流入し、堰止部32aにより液体72が貯溜される。堰止部32aを越える液体72は下側の水平流路に流れ落ちる。液体72が気体に接しつつ流れることにより、気体が液体72に溶解した加圧液71が得られる。水平流路の断面は円形であるが、堰止部32aにより液体72の液面の高さが一定に維持され、気体と液体72との接触面積も一定に維持される。その結果、加圧液71の生産量を変化させても単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液を容易に得ることができる。
【解決手段】気体溶解装置3は、上側から下側に向かって順に第1ないし第5水平流路321〜325を有し、第1ないし第4水平流路321〜324には、堰止部32aが設けられる。第1水平流路321には混合ノズル31から気体と液体との混合流体が流入し、堰止部32aにより液体72が貯溜される。堰止部32aを越える液体72は下側の水平流路に流れ落ちる。液体72が気体に接しつつ流れることにより、気体が液体72に溶解した加圧液71が得られる。水平流路の断面は円形であるが、堰止部32aにより液体72の液面の高さが一定に維持され、気体と液体72との接触面積も一定に維持される。その結果、加圧液71の生産量を変化させても単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液を容易に得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置、および、これを用いた微細気泡生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気を水に加圧溶解させた加圧水の様々な機能が注目されており、また、この加圧水を利用して微細な気泡を含む水の様々な利用方法も研究されている。このような加圧水を生産する装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の気液加圧混合装置では、緩急を繰り返す勾配を有する管路が設けられ、この管路に加圧された気液混合流が注入される。これにより、効率のよい気体溶解(気液反応を含む。以下同様)が実現される。また、管路の途中に中間絞りを設け、中間絞りの前の流路と後の流路の加圧状態を測定することにより、圧力の非常事態を感知する技術も開示されている。
【0003】
特許文献2の気液溶解混合装置では、管路を流れる混合流体が、ベンチュリ管を有する再分配器を通過した後、端面に複数のノズル孔が設けられたノズル部から噴出される。再分配器では、液体と管路の上部に集まった気泡とが、ベンチュリ管の喉部にて加速される。当該液体と気泡とは、ノズル部のダクト内において混合された後、気泡が液体内に分布した状態で、複数のノズル孔から噴出される。ノズル孔は、ダクトに比べて小さいため、ノズル孔を通過する液体は加速されて静圧が低くなる。このため、液体中に溶解している気体が微小気泡として析出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−210147号公報
【特許文献2】特開平6−63371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、単位体積当たり所望の量の空気が水に溶け込んだ加圧水の生産では、設計通りの生産量を確保するために、装置内での空気と水との接触面積を一定に保つ必要がある。しかし、必要な生産量は常に一定とは限らず、また、装置毎に求められる生産量も異なる。その結果、設計が煩雑になるとともに、装置の製造コストの削減も容易ではない。
【0006】
特に、食品、薬品、半導体等の分野では、高いレベルの清潔度が求められるため、円形の配管の使用が求められる。しかし、このような配管をそのまま利用すると、生産量の変動により、気体と液体との接触面積が大きく変動する。そのため、生産量の変更可能な範囲が制限される。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置において、気体と液体との接触面積を一定に維持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記堰止部により前記第1流路内の前記液体が貯溜される空間の下部と、前記堰止部よりも下流側の空間とを連絡し、前記第1流路内に貯溜される前記液体の一部を前記下流側の空間へと導く連絡流路とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路の下部に固定されて前記下部を塞ぐ部位であり、前記連絡流路が、前記第1流路に沿って前記堰止部を貫通する貫通孔である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の気体溶解装置であって、前記連絡流路が、前記第1流路と前記第2流路とを別途連絡する微小流路である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路内において、液体が前記第2流路に向かう直前の位置に設けられる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記第1流路から流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記第1流路内の下部、かつ、前記第2流路の直前に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部とを備え、前記液体が前記堰止部を越えて前記第2流路に流れ込む。
【0013】
請求項6に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記堰止部の状態を、前記液体の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる堰止切替部とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路の下部に配置されて前記下部を閉塞する部位であり、前記堰止切替部が、前記堰止部を回転または昇降させる機構である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第1流路の伸びる方向に垂直な面による前記第1流路の内側面の断面が、円形である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第2流路において、加圧環境下にて前記液体が前記気体に接しつつ前記気体の下方にて流れ、前記第1流路における前記液体の流れる方向と前記第2流路における前記液体の流れる方向とが逆向きであり、前記気体溶解装置が、前記第2流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第2流路内に前記液体を貯溜させる他の堰止部をさらに備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第1流路よりも上方に位置する第3流路と、前記気体と前記液体とを混合して前記第3流路内に向けて噴出する混合ノズルとをさらに備え、前記第3流路内にて前記混合ノズルから噴出された後の混合流体が、加圧環境下にて、前記第1流路における前記液体の流れる方向とは反対方向に流れて前記第1流路へと流れ込む。
【0018】
請求項11に記載の発明は、微細気泡生成装置であって、請求項1ないし10のいずれかに記載の気体溶解装置と、前記気体溶解装置からの前記液体の送出路上に設けられ、前記気体溶解装置内の圧力を維持する絞り部とを備え、前記絞り部を通過して減圧されることにより、前記液体中に微細気泡が発生する。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の微細気泡生成装置であって、前記気体溶解装置と前記絞り部とを接続する接続配管と、前記接続配管に設けられて前記接続配管内の前記液体の圧力を調整する調整弁と、前記気体溶解装置内の圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサからの出力に基づいて前記調整弁を制御する弁制御部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、気体と液体との接触面積を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】微細気泡生成装置の断面図である。
【図2】混合ノズルの拡大断面図である。
【図3】溶解流路部の断面図である。
【図4】堰止部を示す図である。
【図5】液面高さと気液接触面積増加率との関係を示す図である。
【図6】微細気泡生成ノズルの拡大断面図である。
【図7】堰止部の他の例を示す図である。
【図8】調整弁の他の配置を示す図である。
【図9】溶解流路部の他の例を示す図である。
【図10】溶解流路部のさらに他の例を示す図である。
【図11】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【図12】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【図13】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る微細気泡生成装置1を示す断面図である。微細気泡生成装置1は、微細気泡生成ノズル2、気体溶解装置3および接続配管4を備える。接続配管4は、微細気泡生成ノズル2と気体溶解装置3とを接続する。気体溶解装置3は、気体を加圧溶解させた加圧液71を生成し、接続配管4を介して絞り部である微細気泡生成ノズル2に供給する。微細気泡生成ノズル2は、加圧液71を水槽91中の対象液92中に噴出することにより、対象液92中に上記気体の微細気泡を生成する。本実施の形態に係る微細気泡生成装置1では、水に空気を加圧溶解させた加圧液71を、水である対象液92中に噴出することにより、直径が1μm未満の空気の微細気泡(いわゆる、ナノバブル)を対象液92中に生成する。図1では、図の理解を容易にするために、対象液92等の流体に破線にて平行斜線を付す(以下の類似の図においても同様)。
【0023】
気体溶解装置3は、混合ノズル31および溶解流路部32を備える。気体溶解装置3では、図示省略のポンプにより混合ノズル31に圧送された液体(本実施の形態では、水)と、外部から吸引された気体(本実施の形態では、空気)とが、混合ノズル31により混合され、溶解流路部32内に向けて噴出される。溶解流路部32内は加圧されて大気よりも圧力が高い状態(以下、「加圧環境」という。)となっており(例えば、大気圧よりも50kPa以上高い状態)、混合ノズル31から噴出された液体と気体とが混合された混合流体72が、溶解流路部32内を加圧環境下にて流れる間に、気体が液体に加圧溶解して加圧液71が生成される。
【0024】
図2は、混合ノズル31を拡大して示す断面図である。混合ノズル31は、上述のポンプにより圧送された液体が流入する液体流入口311、気体が流入する気体流入口319、並びに、液体流入口311から流入した液体および気体流入口319から流入した気体が混合された混合流体72(図1参照)を噴出する混合流体噴出口312を備える。液体流入口311、気体流入口319および混合流体噴出口312はそれぞれ略円形である。
【0025】
液体流入口311から混合流体噴出口312に向かうノズル流路310の流路断面、および、気体流入口319からノズル流路310に向かう気体流路3191の流路断面も略円形である。流路断面とは、ノズル流路310や気体流路3191等の流路の中心軸に垂直な断面、すなわち、流路を流れる流体の流れに垂直な断面を意味する。また、以下の説明では、流路断面の面積を「流路面積」という。ノズル流路310は、流路面積が流路の中間部で小さくなるベンチュリ管状である。
【0026】
混合ノズル31は、液体流入口311から混合流体噴出口312に向かって順に連続して配置される導入部313、第1テーパ部314、喉部315、気体混合部316、第2テーパ部317および導出部318を備える。混合ノズル31は、また、内部に気体流路3191が設けられた気体供給部3192を備える。
【0027】
導入部313では、流路面積は、ノズル流路310の中心軸J1方向の各位置においてほぼ一定である。第1テーパ部314では、液体の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。喉部315では、流路面積はほぼ一定である。喉部315の流路面積は、ノズル流路310において最も小さい。なお、ノズル流路310では、喉部315において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部315と捉えられる。気体混合部316では、流路面積はほぼ一定であり、喉部315の流路面積よりも少し大きい。第2テーパ部317では、下流側に向かって流路面積が漸次増大する。導出部318では、流路面積はほぼ一定である。気体流路3191の流路面積もほぼ一定であり、気体流路3191は、ノズル流路310の気体混合部316に接続される。
【0028】
混合ノズル31では、液体流入口311からノズル流路310に流入した液体が、喉部315で加速されて静圧が低下し、喉部315および気体混合部316において、ノズル流路310内の圧力が大気圧よりも低くなる。これにより、気体流入口319から気体が吸引され、気体流路3191を通過して気体混合部316に流入し、液体と混合されて混合流体72(図1参照)が生成される。混合流体72は、第2テーパ部317および導出部318において減速されて静圧が増大し、混合流体噴出口312を介して溶解流路部32内に噴出される。
【0029】
図1に示すように、溶解流路部32は、上側から下側に向かって順に配列される第1水平流路321、第2水平流路322、第3水平流路323、第4水平流路324および第5水平流路325を備える。以下の説明では、第1水平流路321、第2水平流路322、第3水平流路323、第4水平流路324および第5水平流路325をまとめて指す場合、「水平流路321〜325」と呼ぶ。図3は、図1中の矢印A−Aの位置における水平流路321〜325の縦断面を示す図である。なお、本実施の形態における「流路」とは、正確には流路の空間を形成する「流路形成部」である。水平流路321〜325は、水平方向に延びる管路であり、水平流路321〜325の長手方向に垂直な断面は円形である。図1に示すように、水平流路321〜325は、アングル状に湾曲した接続流路320にて直列に接続される。水平流路および接続流路320の内面は、例えば、鏡面仕上げされている。
【0030】
第1水平流路321の上流側の端部(すなわち、図1中の左側の端部)には、混合ノズル31が取り付けられており、混合ノズル31から噴出された後の混合流体72は、加圧環境下にて図1中の右側に向かって流れる。本実施の形態では、混合ノズル31からの混合流体72は、第1水平流路321内の混合流体72の液面よりも上方にて噴出され、当該液面に直接衝突する。
【0031】
気体溶解装置3では、混合ノズル31の混合流体噴出口312の一部または全体が、第1水平流路321内の混合流体72の液面よりも下側に位置してもよい。これにより、上述と同様に、第1水平流路321内において、混合ノズル31から噴出された直後の混合流体72が、第1水平流路321内を流れる混合流体72に直接衝突する。
【0032】
第1水平流路321の下流側の端部の下部には、堰止部32aが設けられており、第1水平流路321内では堰止部32aが混合流体72の流れを妨げるにより、混合流体72が滞留するようにして貯溜される。図1および図3に示すように、混合流体72は、堰止部32aを越えるようにして溢れて、接続流路320内を落下して第2水平流路322の端部に流れ込む。なお、以下の説明では、第1ないし第5水平流路321〜325の下部を流れる流体は、必ずしも気液混合状態であるとは限らない。以下、これらの水平流路の下部を流れる流体を、単に、「液体72」と呼ぶ。
【0033】
第2水平流路322では、液体72が加圧環境下にて図1中の右側から左側へと流れる。第2水平流路322においても、下流側の端部の下部に堰止部32aが設けられており、第2水平流路321内では堰止部32aが液体72の流れを妨げることにより、液体72が滞留するようにして貯溜される。液体72は、堰止部32aを越えて溢れ、接続流路320内を落下して第3水平流路322の端部に流れ込む。
【0034】
第3水平流路323および第4水平流路324においても、同様に、堰止部32aが設けられ、液体72が貯溜される。このように、堰止部32aは、水平流路の下部に固定されて当該下部を塞ぐ部位である。第3および第4水平流路323,324の端部では、液体72が次の水平流路に向かって落下する。第3水平流路323では、液体72が加圧環境下にて図1中の左側から右側へと流れ、第4水平流路324では、液体72が加圧環境下にて右側から左側へと流れる。第1水平流路321〜第4水平流路324では、液体72は、気体に接しつつ気体の下方を流れる。
【0035】
第5水平流路325では、第1ないし第4水平流路321〜324とは異なり、堰止部32aは設けられない。第5水平流路325内には気体の層は存在しておらず、第5水平流路325内に充満する液体内において、第5水平流路325の上面近傍に気泡が僅かに存在する状態となっている。第5水平流路325では、第4水平流路324から流入した液体72が加圧環境下にて図1中の左側から右側へと流れる。第5水平流路325は、他の水平流路321〜324よりも長い。
【0036】
気体溶解装置3では、水平流路321〜325および接続流路320を、段階的に緩急を繰り返しつつ上から下に流れ落ちる(すなわち、水平方向への流れと下方向への流れとを交互に繰り返しつつ流れる)液体72に気体が徐々に加圧溶解する。第5水平流路325においては、液体中に溶解している気体の濃度は、加圧環境下における当該気体の(飽和)溶解度の60%〜90%にほぼ等しい。そして、液体に溶解しなかった余剰な気体が、第5水平流路325内において、視認可能な大きさの気泡として存在している。上下に隣接する水平流路における液体72の流れの方向が逆向きであることにより、気体溶解装置3の小型が実現される。
【0037】
図4は、水平流路の断面と共に堰止部32aを拡大して示す図である。堰止部32aは、上端61が水平かつ流路の伸びる方向に垂直な直線状であり、最下部に、水平流路に沿って堰止部32aを貫通する微小貫通孔62を有する。上端61の上側は、堰止部32aから溢れる液体72が流れる開口63である。溶解流路部32を製造する際には、まず、水平流路の断面と同じ大きさの円板に、微小貫通孔62および半円状の開口63を形成した板部材が準備される。そして、各水平流路321〜325と接続流路320との間に上記板部材を挟むようにして溶接が行われる。
【0038】
堰止部32aが設けられることにより、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の温度や粘度が変化しても、液面の高さ、すなわち、水位がおよそ一定に維持される。これにより、第1ないし第4水平流路321〜324において気体と液体72との接触面積がおよそ一定に維持される。その結果、設計時に加圧液71の生産能力を計算での予測することが容易となる。また、加圧液71の生産量を変化させても単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液71を容易に得ることができる。
【0039】
特に、気体溶解装置3に、食品や薬品等のように衛生的な清潔さ(いわゆる、サニタリー特性)が求められる場合や、半導体処理等に用いられる超純水等の高度なクリーン度が求められる場合、流路を形成する管の断面は、鏡面加工が容易な円形であることが好ましく、サニタリー仕様の円形の管は容易に入手することができる。流路断面が円形の場合、図5に示すように、液面が流路の中央から上下に離れるほど、液面の僅かな上下動により気液接触面積が大きく変動する。図5では、水平流路の半径の大きさを「1」と表現し、気液接触面積増加率の絶対値が大きいほど、液面高さ変動に対する気液接触面積の変化が大きいことを示している。堰止部32aが設けられない場合、加圧液71の生産量に依存して液面の高さが大きく変動する。したがって、水平流路の断面が円形である場合に、堰止部32aが設けられることが特に好ましい。液面の高さが、図5において、0.8〜1.2に維持されることが好ましい。また、堰止部32aにより気液接触面積が広く維持可能であることから、気体溶解装置3の小型化も実現される。
【0040】
さらに、流路断面が円形であることにより、流路の耐圧性能を向上することができる。これにより、管壁を薄くすることができる。なお、流路の内側面の断面が円形であれば、流路の外形は矩形等の他の形状であってもよい。
【0041】
堰止部32aは、第1ないし第4水平流路311〜314内において、下流側の接続流路320との間に、すなわち、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。その結果、加圧液71の生産能力を向上することができる。
【0042】
堰止部32aには、微小貫通孔62が設けられるため、加圧液71が生産される間、堰止部32aにて堰止められた液体72の一部は、微小貫通孔62から次の水平流路へと流れ出す。微小貫通孔62から流れ出す液体72の量は少なく、堰止部32aから液体72が溢れる状態は維持される。例えば、微小貫通孔62から流れ落ちる液体72の量は、堰止部32aを越える液体72の1/5以下、より好ましくは1/10以下である。一方、微小貫通孔62が設けられることにより、加圧液71の生産を停止した後に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側、すなわち、溶解流路部32の外部へと排出することができる。したがって、溶解流路部32にサニタリー特性が求められる場合に、溶解流路部32に微小貫通孔62が設けられることが特に好ましい。
【0043】
溶解流路部32は、第5水平流路325の下流側の上面から上方へと延びる余剰気体分離部326をさらに備え、余剰気体分離部326には液体72が充満している。余剰気体分離部326は、下部が2つの分かれてそれぞれ第5水平流路325に接続され、上部では1つに繋がっている。余剰気体分離部326の各管路も、断面は円形である。余剰気体分離部326の上端部は、絞り部327を介して大気開放されている。第5水平流路325を流れる液体72の気泡は、余剰気体分離部326内を上昇して余剰な液体72と共に放出される。余剰気体分離部326の下部が2つに分かれることにより、余剰気体の分離がより確実に行われる。なお、余剰気体分離部326の下部は、3つ以上に分かれていてもよいし、1つだけでもよい。
【0044】
このように、液体72から余剰な気体が分離されることにより、少なくとも容易に視認できる大きさの気泡を実質的に含まない加圧液71が生成され、第5水平流路325の下流側の端部(すなわち、図1中の右側の端部)に接続された接続配管4へと送出される。本実施の形態では、加圧液71には、大気圧下における気体の(飽和)溶解度の約2倍以上の気体が溶解している。溶解流路部32において水平流路321〜325および接続流路320を流れる液体72は、生成途上の加圧液71と捉えることもできる。
【0045】
微細気泡生成装置1は、調整弁51、圧力センサ52および弁制御部53をさらに備える。調整弁51は、接続配管4に設けられて接続配管4内の加圧液71の圧力を調整する比例制御弁である。もちろん、調整弁51は、リリーフ弁、通常のバルブ、固定絞り等の他の種類の弁であってもよい。圧力センサ52は、第1水平流路321の上方に配置され、溶解流路部32内の圧力を測定する。第1水平流路321の上方には、排気弁54も設けられる。微細気泡生成装置1では、圧力センサ52から出力された溶解流路部32内の圧力の測定値が、予め定められた所定の圧力(好ましくは、0.1MPa〜0.45MPa)となるように、弁制御部53により調整弁51が制御される。換言すれば、弁制御部53は、圧力センサ52からの出力に基づいて調整弁51を制御する。これにより、温度変化により液体72の粘度が変化しても、溶解流路部32内の圧力変化が低減される。接続配管4を通過した加圧液71は、微細気泡生成ノズル2に流入する。なお、調整弁51は手動で操作されるものでもよい。
【0046】
図6は、微細気泡生成ノズル2を拡大して示す断面図である。微細気泡生成ノズル2は、接続配管4から加圧液71が流入する加圧液流入口21、および、対象液92に向かって開口する加圧液噴出口22を備える。加圧液流入口21および加圧液噴出口22はそれぞれ略円形であり、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かうノズル流路20の流路断面も略円形である。
【0047】
微細気泡生成ノズル2は、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かって順に連続して配置される導入部23、テーパ部24および喉部25を備える。導入部23では、流路面積は、ノズル流路20の中心軸J2方向の各位置においてほぼ一定である。テーパ部24では、加圧液71の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。テーパ部24の内面は、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする略円錐面の一部である。当該中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αは、10°以上90°以下であることが好ましい。
【0048】
喉部25は、テーパ部24と加圧液噴出口22とを連絡する。喉部25の内面は略円筒面であり、喉部25では、流路面積はほぼ一定である。喉部25における流路断面の直径は、ノズル流路20において最も小さく、喉部25の流路面積は、ノズル流路20において最も小さい。喉部25の長さは、好ましくは、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下であり、より好ましくは、1.5倍以上2倍以下である。なお、ノズル流路20では、喉部25において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部25と捉えられる。
【0049】
微細気泡生成ノズル2は、また、喉部25に連続して設けられ、加圧液噴出口22の周囲を加圧液噴出口22から離間して囲む拡大部27、および、拡大部27の端部に設けられた拡大部開口28を備える。加圧液噴出口22と拡大部開口28との間の流路29は、加圧液噴出口22の外部に設けられた流路であり、以下、「外部流路29」という。外部流路29の流路断面および拡大部開口28は略円形であり、外部流路29の流路面積はほぼ一定である。外部流路29の直径は、喉部25の直径(すなわち、加圧液噴出口22の直径)よりも大きい。以下の説明では、拡大部27の内周面の加圧液噴出口22側のエッジと加圧液噴出口22のエッジとの間の円環状の面を、「噴出口端面221」という。
【0050】
本実施の形態では、ノズル流路20および外部流路29の中心軸J2と噴出口端面221との成す角度は約90°である。また、外部流路29の直径は10mm〜20mmであり、外部流路29の長さは、外部流路29の直径におよそ等しい。微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21とは反対側の端部に、凹部である外部流路29が形成され、当該凹部の底部に、当該底部よりも小さい開口である加圧液噴出口22が形成されている、と捉えられる。拡大部27では、加圧液噴出口22と水槽91内の対象液92との間における加圧液71の流路面積が拡大される。
【0051】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21からノズル流路20に流入した加圧液71が、テーパ部24において徐々に加速されつつ喉部25へと流れ、喉部25を通過して加圧液噴出口22から噴流として噴出される。喉部25における加圧液71の流速は、好ましくは秒速10m〜30mであり、本実施の形態では、秒速約20mである。微細気泡生成装置1では、気体溶解装置3からの加圧液71の送路上に設けられる微細気泡生成ノズル2(特に、喉部25)が絞り部として機能することにより、気体溶解装置3内の圧力が維持される。正確には、調整弁51と微細気泡生成ノズル2とにより、圧力が維持される。
【0052】
喉部25を通過して減圧されることにより、加圧液71中の気体が過飽和となって微細気泡として液中に析出する。微細気泡は、加圧液71と共に拡大部27の外部流路29を通過して、水槽91中の対象液92中へと拡散する。微細気泡生成ノズル2では、加圧液71が外部流路29を通過する間にも、微細気泡の析出が生じる。微細気泡生成ノズル2にて生成される微細気泡は、直径が1μm未満のいわゆるナノバブルである。なお、微細気泡生成ノズル2からの液体および微細気泡の噴出が停止されている場合、外部流路29は対象液92により満たされる。
【0053】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液71の流れる方向に向かって流路面積が漸次減少するテーパ部24、および、ノズル流路20において流路面積が最も小さい喉部25が設けられることにより、微細気泡、特に、直径が1μm未満の微細気泡(ナノバブル)を安定して大量に生成することができる。
【0054】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液噴出口22の周囲を囲む拡大部27が設けられることにより、水槽91内における対象液92の流れが、加圧液噴出口22から噴出された直後の加圧液71に対して影響を与えることを抑制することができる。これにより、加圧液噴出口22からの噴出直後の加圧液71においても、ナノバブルの析出が安定して行われるため、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。
【0055】
上述のように、微細気泡生成ノズル2では、テーパ部24の内面が、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする円錐面の一部であり、中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αが90°以下である。これにより、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。また、微細気泡生成ノズル2の導入部23および喉部25の直径を維持しつつ微細気泡生成ノズル2の長さを短くするという観点からは、テーパ部24の内面の成す角度αが10°以上であることが好ましい。
【0056】
微細気泡生成ノズル2では、喉部25の長さが、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下である。喉部25の長さが直径の1.1倍以上であることにより、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。例えば、喉部25の長さが直径の0.53倍である場合のナノバブルの生成密度は約5600万個であるのに対し、喉部25の長さが直径の1.57倍である場合のナノバブルの生成密度は約11000万個である。また、喉部25の長さが直径の10倍以下であることにより、喉部25において加圧液71に生じる抵抗が過剰に大きくなることを防止することができるとともに、喉部25の高精度な形成を容易とすることもできる。ナノバブルをより一層安定して大量に生成するという観点からは、喉部25の長さが直径の1.5倍以上2倍以下であることが、さらに好ましい。
【0057】
図1に示す微細気泡生成装置1では、微細気泡の生成を停止する際には、気体溶解装置3の混合ノズル31に液体を圧送するポンプの駆動が停止される。そして、当該ポンプから混合ノズル31への液体の流れが停止するまでの間に排気弁54が開放される。これにより、溶解流路部32内の加圧された気体が、排気弁54を介して外部へと放出される。その結果、溶解流路部32内の気体の膨張により液体が混合ノズル31およびポンプへと逆流することを防止することができる。また、接続配管4が溶解流路部32から外されることにより、既述のように、溶解流路部32内の液体72が堰止部32aの微小貫通孔62を通って外部へと流出する。
【0058】
図7は、堰止部32aの他の例を示す図である。図7の堰止部32aは、水平流路内に梁状の部材60を水平かつ流路の伸びる方向に垂直な方向に設けたものである。液体72は、部材60の上端61を越えて次の水平流路へと流れ落ちる。また、部材60の下端と水平流路の下部との間の隙間が、微小貫通孔62として機能する。図7の堰止部32aの作用および効果は、図4に示すものと同様である。
【0059】
図8は、接続配管4に設けられる調整弁51の他の好ましい配置を示す図である。微細気泡生成装置1では、調整弁51は、接続配管4上に直接設けられる。この場合も、上述と同様に、弁制御部53により、調整弁51が圧力センサ52からの出力に基づいて制御されることにより、溶解流路部32内の圧力が、予め定められた所定の圧力となる。微細気泡生成ノズル2は固定絞りであることから、調整弁51を設けることにより、気体溶解装置3での圧力変動の影響が微細気泡生成ノズル2に及ぶことが防止される。調整弁51での減圧は、全体の30%以下、すなわち、下流側の圧が上流側の圧の70%以上であることが望ましい。
【0060】
図9は、溶解流路部32の余剰気体分離部326以外の部位の他の例を示す図である。図9の溶解流路部32では、堰止部32aとして、図4に示すものから微小貫通孔62が省かれたものが設けられる。また、溶解流路部32では、微小貫通孔62に代えて、堰止部32aの上流側に上下に並ぶ水平流路を繋ぐバイパス流路32bが設けられる。すなわち、第1水平流路321の堰止部32aの上流側に、第1水平流路321と第2水平流路322とを上下に繋ぐバイパス流路32bが設けられ、第2水平流路322の堰止部32aの上流側に、第2水平流路322と第3水平流路323とを上下に繋ぐバイパス流路32bが設けられ、第3水平流路323と第4水平流路324との間、第4水平流路324と第5水平流路325との間にも同様にバイパス流路32bが設けられる。上下に並ぶ水平流路は、接続流路320にて連絡するが、バイパス流路32bは、これらの水平流路を別途連絡する微小流路である。微細気泡生成装置1および溶解流路部32の他の構造は、図1に示すものと同様である。
【0061】
図9の溶解流路部32においても、図1と同様に、堰止部32aが設けられることにより、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の液面の高さがおよそ一定に維持される。これにより、気体と液体との接触面積がおよそ一定に維持される。その結果、単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液71を容易に得ることができる。また、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に堰止部32aが設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。
【0062】
堰止部32aの上流側には、バイパス流路32bが設けられるため、加圧液71が生産される間、堰止部32aにて堰止められた液体72の一部は、バイパス流路32bから次の水平流路へと流れ落ちる。バイパス流路32bから流れ落ちる液体72の量は少なく、堰止部32aから液体72が溢れる状態は維持される。バイパス流路32bを流れ落ちる液体72の量は、堰止部32aを越える液体72の1/5以下、より好ましくは1/10以下である。一方、バイパス流路32bが設けられることにより、図1の場合と同様に、加圧液71の生産を停止した後に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側へと流出させることができる。
【0063】
図1の堰止部32aが有する図4の微小貫通孔62、および、図9のバイパス流路32bは、いずれも、堰止部32aにより上流側の水平流路内の液体72が貯溜される空間の下部と、堰止部32aよりも下流側の空間とを連絡し、上流側の水平流路内に貯溜される液体72の一部を、堰止部32aよりも下流側の空間へと導く連絡流路として機能する。このような機能を有する連絡流路は、図4および図9に示す構造により容易に実現することができるが、連絡流路はこれらの構造には限定されない。例えば、堰止部32aにより貯溜される液体72を接続流路320へと導く連絡流路が設けられてもよい。また、バイパス流路32bは、堰止部32aから上流側に離れて設けられてもよい。
【0064】
図10は、溶解流路部32(余剰気体分離部326を除く。)のさらに他の例を示す図である。図10の溶解流路部32では、堰止部32aとして、略半円状の板部材が用いられる。堰止部32aは、図1の場合と同様に、水平流路321〜324の下部に配置されて当該下部を閉塞する部位である。また、この板部材は、水平流路から分離された別の部材として設けられる。堰止部32aの下方かつ水平流路の外部には、堰止部32aを上下方向を向く軸を中心として回転する堰止切替部32cが設けられる。微細気泡生成装置1および溶解流路部32の他の構造は、図1と同様である。
【0065】
図10の溶解流路部32では、堰止切替部32cにより、堰止部32aが流路の伸びる方向に垂直な姿勢となる場合、堰止部32aが液体72の流れを妨げて水平流路内に液体72が貯溜される。そして、堰止部32aを越えるようにして溢れる液体72が接続流路320を介して次の水平流路へと流れ落ちる。これにより、図1と同様に、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の液面の高さがおよそ一定に維持される。また、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に堰止部32aが設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。
【0066】
一方、堰止切替部32cにより、堰止部32aが流路の伸びる方向に平行な姿勢となる場合、液体72は堰止部32aにて妨げられることなく、次の水平流路へと流れ落ちる。このように、堰止切替部32cは、堰止部32aの状態を、液体72の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる。加圧液71を生産する際には、堰止部32aが液体72の流れを妨げる状態とされる。加圧液71の生産を停止した後、堰止部32aの状態を液体72の流れを妨げない状態とすることにより、図1の場合と同様に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側へと流出させることができる。
【0067】
堰止部32aの状態を切り替える機構は、堰止部32aの回転には限定されない。例えば、堰止切替部32cが、堰止部32aを昇降させてもよい。堰止切替部32cが堰止部32aを上昇させて堰止部32aの下部と水平流路の内底面との間に隙間を形成することにより、堰止部32aが液体72の流れを妨げない状態となる。さらには、堰止部32aが変形する部材により形成され、流れを妨げる状態と妨げない状態との間で変更されてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0069】
例えば、水平流路321〜325や接続流路320の断面は、円形ではなく矩形であってもよい。溶解流路部32では、5つの水平流路321〜325は、必ずしも上下方向に積層される必要はなく、各水平流路における混合流体の流れる方向が同じになるように、階段状に配置されてもよい。また、水平流路の数も5つには限定されず、様々に変更されてよい。ただし、混合ノズル31が取り付けられる流路から落下した液体(混合流体)が流れるもう1つの水平流路が設けられることにより、液体に加圧溶解する気体の量を増大させることができる。水平流路は、液体72を貯溜することができる程度に水平であればよく、完全に水平である必要はない。流路の幅も一定である必要はない。
【0070】
混合ノズル31以外の機構により混合流体が生成され、第1水平流路321に導入されてもよい。ただし、混合ノズル31を用いることにより、効率よく気体を液体に溶解させつつ気体溶解装置3を小型化することができる。余剰気体分離部326と第5水平流路325との接続数は、気体分離量に応じて増減してもよい。溶解流路部32では、混合ノズル31から供給される気体が、接続配管4に到達するまでに全て液体72に溶解するのであれば、余剰気体分離部326は省略されてもよい。
【0071】
堰止部32aは、必ずしも板状である必要はなく、液体72の流れを妨げることができるのであれば、例えば、ブロック状であってもよい。堰止部32aの形状も、図4や図7に示すように、上端61が水平なものには限定されず、液体72の液面の高さをおよそ一定にすることができるのであれば、様々に変形されてよい。例えば、図11に示す三角堰や図12に示す四角堰が用いられてもよい。図13は、堰止部32aのさらに他の例を示す図である。図13の堰止部32aは、上流側の面が、下流側に向かって漸次上方へと向かう緩やかな傾斜面となっており、これにより、堰止部32aと水平流路の下部との間に異物が溜まりにくくなっている。図13に示す堰止部32aにおいても、流路方向に貫通する微小な貫通孔が下部に設けられてもよい。さらに、堰止部32aは、必ずしも水平流路から液体72が落下する直前に設けられる必要はない。もちろん、気体と液体との接触面積を大きくするためには、堰止部32aは次の水平流路へと向かう直前の位置に設けられることが好ましく、具体的には、流路の水平な部分の端部から、水平な部分の長さの1/5以下の距離に設けられることが好ましい。
【0072】
混合ノズル31が使用される場合、溶解流路部32の第1水平流路321では液面が大きく波打つため、第1水平流路321では堰止部32aは設けられなくてもよい。
【0073】
接続配管4は分岐されて、複数の微細気泡生成ノズル2が対象液92中に配置されてもよい。また、微細気泡生成ノズル2は、複数の加圧液噴出口22を有するものであってもよい。微細気泡生成ノズル2の内部構造も、適宜変更されてよい。
【0074】
微細気泡生成装置1は、例えば、図8の調整弁51を設けて、微細気泡生成ノズル2を削除することで、直径が1μm以上1mm未満の微細気泡(いわゆる、マイクロバブル)の生成に利用されてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様に、マイクロバブルを安定して大量に生成することができる。
【0075】
気体溶解装置3は、微細気泡生成装置1以外の装置に用いられてもよい。この場合、例えば、微細気泡生成ノズル2が省略され、加圧液71が直接、様々な用途に利用される。また、気体溶解装置3は、様々な気体を様々な液体に加圧溶解させて加圧液を生成する装置として使用されてもよい。例えば、オゾンを水に溶解させる装置や、他の気体を液体に反応させる装置等の気液反応装置として使用されてもよい。図8に示す構成にて、調整弁51を通過した段階で加圧液71内に微細気泡が析出するように調整弁51が調整されてもよい。この場合、微細気泡生成ノズル2は省略されてもよい。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0077】
1 微細気泡生成装置
2 微細気泡生成ノズル(絞り部)
3 気体溶解装置
4 接続配管
31 混合ノズル
32a 堰止部
32b バイパス流路
32c 堰止切替部
51 調整弁
52 圧力センサ
53 弁制御部
62 微小貫通孔
72 液体(混合流体)
321〜324 水平流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置、および、これを用いた微細気泡生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気を水に加圧溶解させた加圧水の様々な機能が注目されており、また、この加圧水を利用して微細な気泡を含む水の様々な利用方法も研究されている。このような加圧水を生産する装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1の気液加圧混合装置では、緩急を繰り返す勾配を有する管路が設けられ、この管路に加圧された気液混合流が注入される。これにより、効率のよい気体溶解(気液反応を含む。以下同様)が実現される。また、管路の途中に中間絞りを設け、中間絞りの前の流路と後の流路の加圧状態を測定することにより、圧力の非常事態を感知する技術も開示されている。
【0003】
特許文献2の気液溶解混合装置では、管路を流れる混合流体が、ベンチュリ管を有する再分配器を通過した後、端面に複数のノズル孔が設けられたノズル部から噴出される。再分配器では、液体と管路の上部に集まった気泡とが、ベンチュリ管の喉部にて加速される。当該液体と気泡とは、ノズル部のダクト内において混合された後、気泡が液体内に分布した状態で、複数のノズル孔から噴出される。ノズル孔は、ダクトに比べて小さいため、ノズル孔を通過する液体は加速されて静圧が低くなる。このため、液体中に溶解している気体が微小気泡として析出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−210147号公報
【特許文献2】特開平6−63371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、単位体積当たり所望の量の空気が水に溶け込んだ加圧水の生産では、設計通りの生産量を確保するために、装置内での空気と水との接触面積を一定に保つ必要がある。しかし、必要な生産量は常に一定とは限らず、また、装置毎に求められる生産量も異なる。その結果、設計が煩雑になるとともに、装置の製造コストの削減も容易ではない。
【0006】
特に、食品、薬品、半導体等の分野では、高いレベルの清潔度が求められるため、円形の配管の使用が求められる。しかし、このような配管をそのまま利用すると、生産量の変動により、気体と液体との接触面積が大きく変動する。そのため、生産量の変更可能な範囲が制限される。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置において、気体と液体との接触面積を一定に維持することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記堰止部により前記第1流路内の前記液体が貯溜される空間の下部と、前記堰止部よりも下流側の空間とを連絡し、前記第1流路内に貯溜される前記液体の一部を前記下流側の空間へと導く連絡流路とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路の下部に固定されて前記下部を塞ぐ部位であり、前記連絡流路が、前記第1流路に沿って前記堰止部を貫通する貫通孔である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の気体溶解装置であって、前記連絡流路が、前記第1流路と前記第2流路とを別途連絡する微小流路である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路内において、液体が前記第2流路に向かう直前の位置に設けられる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記第1流路から流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記第1流路内の下部、かつ、前記第2流路の直前に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部とを備え、前記液体が前記堰止部を越えて前記第2流路に流れ込む。
【0013】
請求項6に記載の発明は、気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、前記堰止部の状態を、前記液体の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる堰止切替部とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の気体溶解装置であって、前記堰止部が、前記第1流路の下部に配置されて前記下部を閉塞する部位であり、前記堰止切替部が、前記堰止部を回転または昇降させる機構である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第1流路の伸びる方向に垂直な面による前記第1流路の内側面の断面が、円形である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第2流路において、加圧環境下にて前記液体が前記気体に接しつつ前記気体の下方にて流れ、前記第1流路における前記液体の流れる方向と前記第2流路における前記液体の流れる方向とが逆向きであり、前記気体溶解装置が、前記第2流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第2流路内に前記液体を貯溜させる他の堰止部をさらに備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の気体溶解装置であって、前記第1流路よりも上方に位置する第3流路と、前記気体と前記液体とを混合して前記第3流路内に向けて噴出する混合ノズルとをさらに備え、前記第3流路内にて前記混合ノズルから噴出された後の混合流体が、加圧環境下にて、前記第1流路における前記液体の流れる方向とは反対方向に流れて前記第1流路へと流れ込む。
【0018】
請求項11に記載の発明は、微細気泡生成装置であって、請求項1ないし10のいずれかに記載の気体溶解装置と、前記気体溶解装置からの前記液体の送出路上に設けられ、前記気体溶解装置内の圧力を維持する絞り部とを備え、前記絞り部を通過して減圧されることにより、前記液体中に微細気泡が発生する。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の微細気泡生成装置であって、前記気体溶解装置と前記絞り部とを接続する接続配管と、前記接続配管に設けられて前記接続配管内の前記液体の圧力を調整する調整弁と、前記気体溶解装置内の圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサからの出力に基づいて前記調整弁を制御する弁制御部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、気体と液体との接触面積を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】微細気泡生成装置の断面図である。
【図2】混合ノズルの拡大断面図である。
【図3】溶解流路部の断面図である。
【図4】堰止部を示す図である。
【図5】液面高さと気液接触面積増加率との関係を示す図である。
【図6】微細気泡生成ノズルの拡大断面図である。
【図7】堰止部の他の例を示す図である。
【図8】調整弁の他の配置を示す図である。
【図9】溶解流路部の他の例を示す図である。
【図10】溶解流路部のさらに他の例を示す図である。
【図11】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【図12】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【図13】堰止部のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る微細気泡生成装置1を示す断面図である。微細気泡生成装置1は、微細気泡生成ノズル2、気体溶解装置3および接続配管4を備える。接続配管4は、微細気泡生成ノズル2と気体溶解装置3とを接続する。気体溶解装置3は、気体を加圧溶解させた加圧液71を生成し、接続配管4を介して絞り部である微細気泡生成ノズル2に供給する。微細気泡生成ノズル2は、加圧液71を水槽91中の対象液92中に噴出することにより、対象液92中に上記気体の微細気泡を生成する。本実施の形態に係る微細気泡生成装置1では、水に空気を加圧溶解させた加圧液71を、水である対象液92中に噴出することにより、直径が1μm未満の空気の微細気泡(いわゆる、ナノバブル)を対象液92中に生成する。図1では、図の理解を容易にするために、対象液92等の流体に破線にて平行斜線を付す(以下の類似の図においても同様)。
【0023】
気体溶解装置3は、混合ノズル31および溶解流路部32を備える。気体溶解装置3では、図示省略のポンプにより混合ノズル31に圧送された液体(本実施の形態では、水)と、外部から吸引された気体(本実施の形態では、空気)とが、混合ノズル31により混合され、溶解流路部32内に向けて噴出される。溶解流路部32内は加圧されて大気よりも圧力が高い状態(以下、「加圧環境」という。)となっており(例えば、大気圧よりも50kPa以上高い状態)、混合ノズル31から噴出された液体と気体とが混合された混合流体72が、溶解流路部32内を加圧環境下にて流れる間に、気体が液体に加圧溶解して加圧液71が生成される。
【0024】
図2は、混合ノズル31を拡大して示す断面図である。混合ノズル31は、上述のポンプにより圧送された液体が流入する液体流入口311、気体が流入する気体流入口319、並びに、液体流入口311から流入した液体および気体流入口319から流入した気体が混合された混合流体72(図1参照)を噴出する混合流体噴出口312を備える。液体流入口311、気体流入口319および混合流体噴出口312はそれぞれ略円形である。
【0025】
液体流入口311から混合流体噴出口312に向かうノズル流路310の流路断面、および、気体流入口319からノズル流路310に向かう気体流路3191の流路断面も略円形である。流路断面とは、ノズル流路310や気体流路3191等の流路の中心軸に垂直な断面、すなわち、流路を流れる流体の流れに垂直な断面を意味する。また、以下の説明では、流路断面の面積を「流路面積」という。ノズル流路310は、流路面積が流路の中間部で小さくなるベンチュリ管状である。
【0026】
混合ノズル31は、液体流入口311から混合流体噴出口312に向かって順に連続して配置される導入部313、第1テーパ部314、喉部315、気体混合部316、第2テーパ部317および導出部318を備える。混合ノズル31は、また、内部に気体流路3191が設けられた気体供給部3192を備える。
【0027】
導入部313では、流路面積は、ノズル流路310の中心軸J1方向の各位置においてほぼ一定である。第1テーパ部314では、液体の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。喉部315では、流路面積はほぼ一定である。喉部315の流路面積は、ノズル流路310において最も小さい。なお、ノズル流路310では、喉部315において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部315と捉えられる。気体混合部316では、流路面積はほぼ一定であり、喉部315の流路面積よりも少し大きい。第2テーパ部317では、下流側に向かって流路面積が漸次増大する。導出部318では、流路面積はほぼ一定である。気体流路3191の流路面積もほぼ一定であり、気体流路3191は、ノズル流路310の気体混合部316に接続される。
【0028】
混合ノズル31では、液体流入口311からノズル流路310に流入した液体が、喉部315で加速されて静圧が低下し、喉部315および気体混合部316において、ノズル流路310内の圧力が大気圧よりも低くなる。これにより、気体流入口319から気体が吸引され、気体流路3191を通過して気体混合部316に流入し、液体と混合されて混合流体72(図1参照)が生成される。混合流体72は、第2テーパ部317および導出部318において減速されて静圧が増大し、混合流体噴出口312を介して溶解流路部32内に噴出される。
【0029】
図1に示すように、溶解流路部32は、上側から下側に向かって順に配列される第1水平流路321、第2水平流路322、第3水平流路323、第4水平流路324および第5水平流路325を備える。以下の説明では、第1水平流路321、第2水平流路322、第3水平流路323、第4水平流路324および第5水平流路325をまとめて指す場合、「水平流路321〜325」と呼ぶ。図3は、図1中の矢印A−Aの位置における水平流路321〜325の縦断面を示す図である。なお、本実施の形態における「流路」とは、正確には流路の空間を形成する「流路形成部」である。水平流路321〜325は、水平方向に延びる管路であり、水平流路321〜325の長手方向に垂直な断面は円形である。図1に示すように、水平流路321〜325は、アングル状に湾曲した接続流路320にて直列に接続される。水平流路および接続流路320の内面は、例えば、鏡面仕上げされている。
【0030】
第1水平流路321の上流側の端部(すなわち、図1中の左側の端部)には、混合ノズル31が取り付けられており、混合ノズル31から噴出された後の混合流体72は、加圧環境下にて図1中の右側に向かって流れる。本実施の形態では、混合ノズル31からの混合流体72は、第1水平流路321内の混合流体72の液面よりも上方にて噴出され、当該液面に直接衝突する。
【0031】
気体溶解装置3では、混合ノズル31の混合流体噴出口312の一部または全体が、第1水平流路321内の混合流体72の液面よりも下側に位置してもよい。これにより、上述と同様に、第1水平流路321内において、混合ノズル31から噴出された直後の混合流体72が、第1水平流路321内を流れる混合流体72に直接衝突する。
【0032】
第1水平流路321の下流側の端部の下部には、堰止部32aが設けられており、第1水平流路321内では堰止部32aが混合流体72の流れを妨げるにより、混合流体72が滞留するようにして貯溜される。図1および図3に示すように、混合流体72は、堰止部32aを越えるようにして溢れて、接続流路320内を落下して第2水平流路322の端部に流れ込む。なお、以下の説明では、第1ないし第5水平流路321〜325の下部を流れる流体は、必ずしも気液混合状態であるとは限らない。以下、これらの水平流路の下部を流れる流体を、単に、「液体72」と呼ぶ。
【0033】
第2水平流路322では、液体72が加圧環境下にて図1中の右側から左側へと流れる。第2水平流路322においても、下流側の端部の下部に堰止部32aが設けられており、第2水平流路321内では堰止部32aが液体72の流れを妨げることにより、液体72が滞留するようにして貯溜される。液体72は、堰止部32aを越えて溢れ、接続流路320内を落下して第3水平流路322の端部に流れ込む。
【0034】
第3水平流路323および第4水平流路324においても、同様に、堰止部32aが設けられ、液体72が貯溜される。このように、堰止部32aは、水平流路の下部に固定されて当該下部を塞ぐ部位である。第3および第4水平流路323,324の端部では、液体72が次の水平流路に向かって落下する。第3水平流路323では、液体72が加圧環境下にて図1中の左側から右側へと流れ、第4水平流路324では、液体72が加圧環境下にて右側から左側へと流れる。第1水平流路321〜第4水平流路324では、液体72は、気体に接しつつ気体の下方を流れる。
【0035】
第5水平流路325では、第1ないし第4水平流路321〜324とは異なり、堰止部32aは設けられない。第5水平流路325内には気体の層は存在しておらず、第5水平流路325内に充満する液体内において、第5水平流路325の上面近傍に気泡が僅かに存在する状態となっている。第5水平流路325では、第4水平流路324から流入した液体72が加圧環境下にて図1中の左側から右側へと流れる。第5水平流路325は、他の水平流路321〜324よりも長い。
【0036】
気体溶解装置3では、水平流路321〜325および接続流路320を、段階的に緩急を繰り返しつつ上から下に流れ落ちる(すなわち、水平方向への流れと下方向への流れとを交互に繰り返しつつ流れる)液体72に気体が徐々に加圧溶解する。第5水平流路325においては、液体中に溶解している気体の濃度は、加圧環境下における当該気体の(飽和)溶解度の60%〜90%にほぼ等しい。そして、液体に溶解しなかった余剰な気体が、第5水平流路325内において、視認可能な大きさの気泡として存在している。上下に隣接する水平流路における液体72の流れの方向が逆向きであることにより、気体溶解装置3の小型が実現される。
【0037】
図4は、水平流路の断面と共に堰止部32aを拡大して示す図である。堰止部32aは、上端61が水平かつ流路の伸びる方向に垂直な直線状であり、最下部に、水平流路に沿って堰止部32aを貫通する微小貫通孔62を有する。上端61の上側は、堰止部32aから溢れる液体72が流れる開口63である。溶解流路部32を製造する際には、まず、水平流路の断面と同じ大きさの円板に、微小貫通孔62および半円状の開口63を形成した板部材が準備される。そして、各水平流路321〜325と接続流路320との間に上記板部材を挟むようにして溶接が行われる。
【0038】
堰止部32aが設けられることにより、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の温度や粘度が変化しても、液面の高さ、すなわち、水位がおよそ一定に維持される。これにより、第1ないし第4水平流路321〜324において気体と液体72との接触面積がおよそ一定に維持される。その結果、設計時に加圧液71の生産能力を計算での予測することが容易となる。また、加圧液71の生産量を変化させても単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液71を容易に得ることができる。
【0039】
特に、気体溶解装置3に、食品や薬品等のように衛生的な清潔さ(いわゆる、サニタリー特性)が求められる場合や、半導体処理等に用いられる超純水等の高度なクリーン度が求められる場合、流路を形成する管の断面は、鏡面加工が容易な円形であることが好ましく、サニタリー仕様の円形の管は容易に入手することができる。流路断面が円形の場合、図5に示すように、液面が流路の中央から上下に離れるほど、液面の僅かな上下動により気液接触面積が大きく変動する。図5では、水平流路の半径の大きさを「1」と表現し、気液接触面積増加率の絶対値が大きいほど、液面高さ変動に対する気液接触面積の変化が大きいことを示している。堰止部32aが設けられない場合、加圧液71の生産量に依存して液面の高さが大きく変動する。したがって、水平流路の断面が円形である場合に、堰止部32aが設けられることが特に好ましい。液面の高さが、図5において、0.8〜1.2に維持されることが好ましい。また、堰止部32aにより気液接触面積が広く維持可能であることから、気体溶解装置3の小型化も実現される。
【0040】
さらに、流路断面が円形であることにより、流路の耐圧性能を向上することができる。これにより、管壁を薄くすることができる。なお、流路の内側面の断面が円形であれば、流路の外形は矩形等の他の形状であってもよい。
【0041】
堰止部32aは、第1ないし第4水平流路311〜314内において、下流側の接続流路320との間に、すなわち、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。その結果、加圧液71の生産能力を向上することができる。
【0042】
堰止部32aには、微小貫通孔62が設けられるため、加圧液71が生産される間、堰止部32aにて堰止められた液体72の一部は、微小貫通孔62から次の水平流路へと流れ出す。微小貫通孔62から流れ出す液体72の量は少なく、堰止部32aから液体72が溢れる状態は維持される。例えば、微小貫通孔62から流れ落ちる液体72の量は、堰止部32aを越える液体72の1/5以下、より好ましくは1/10以下である。一方、微小貫通孔62が設けられることにより、加圧液71の生産を停止した後に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側、すなわち、溶解流路部32の外部へと排出することができる。したがって、溶解流路部32にサニタリー特性が求められる場合に、溶解流路部32に微小貫通孔62が設けられることが特に好ましい。
【0043】
溶解流路部32は、第5水平流路325の下流側の上面から上方へと延びる余剰気体分離部326をさらに備え、余剰気体分離部326には液体72が充満している。余剰気体分離部326は、下部が2つの分かれてそれぞれ第5水平流路325に接続され、上部では1つに繋がっている。余剰気体分離部326の各管路も、断面は円形である。余剰気体分離部326の上端部は、絞り部327を介して大気開放されている。第5水平流路325を流れる液体72の気泡は、余剰気体分離部326内を上昇して余剰な液体72と共に放出される。余剰気体分離部326の下部が2つに分かれることにより、余剰気体の分離がより確実に行われる。なお、余剰気体分離部326の下部は、3つ以上に分かれていてもよいし、1つだけでもよい。
【0044】
このように、液体72から余剰な気体が分離されることにより、少なくとも容易に視認できる大きさの気泡を実質的に含まない加圧液71が生成され、第5水平流路325の下流側の端部(すなわち、図1中の右側の端部)に接続された接続配管4へと送出される。本実施の形態では、加圧液71には、大気圧下における気体の(飽和)溶解度の約2倍以上の気体が溶解している。溶解流路部32において水平流路321〜325および接続流路320を流れる液体72は、生成途上の加圧液71と捉えることもできる。
【0045】
微細気泡生成装置1は、調整弁51、圧力センサ52および弁制御部53をさらに備える。調整弁51は、接続配管4に設けられて接続配管4内の加圧液71の圧力を調整する比例制御弁である。もちろん、調整弁51は、リリーフ弁、通常のバルブ、固定絞り等の他の種類の弁であってもよい。圧力センサ52は、第1水平流路321の上方に配置され、溶解流路部32内の圧力を測定する。第1水平流路321の上方には、排気弁54も設けられる。微細気泡生成装置1では、圧力センサ52から出力された溶解流路部32内の圧力の測定値が、予め定められた所定の圧力(好ましくは、0.1MPa〜0.45MPa)となるように、弁制御部53により調整弁51が制御される。換言すれば、弁制御部53は、圧力センサ52からの出力に基づいて調整弁51を制御する。これにより、温度変化により液体72の粘度が変化しても、溶解流路部32内の圧力変化が低減される。接続配管4を通過した加圧液71は、微細気泡生成ノズル2に流入する。なお、調整弁51は手動で操作されるものでもよい。
【0046】
図6は、微細気泡生成ノズル2を拡大して示す断面図である。微細気泡生成ノズル2は、接続配管4から加圧液71が流入する加圧液流入口21、および、対象液92に向かって開口する加圧液噴出口22を備える。加圧液流入口21および加圧液噴出口22はそれぞれ略円形であり、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かうノズル流路20の流路断面も略円形である。
【0047】
微細気泡生成ノズル2は、加圧液流入口21から加圧液噴出口22に向かって順に連続して配置される導入部23、テーパ部24および喉部25を備える。導入部23では、流路面積は、ノズル流路20の中心軸J2方向の各位置においてほぼ一定である。テーパ部24では、加圧液71の流れる方向に向かって(すなわち、下流側に向かって)流路面積が漸次減少する。テーパ部24の内面は、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする略円錐面の一部である。当該中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αは、10°以上90°以下であることが好ましい。
【0048】
喉部25は、テーパ部24と加圧液噴出口22とを連絡する。喉部25の内面は略円筒面であり、喉部25では、流路面積はほぼ一定である。喉部25における流路断面の直径は、ノズル流路20において最も小さく、喉部25の流路面積は、ノズル流路20において最も小さい。喉部25の長さは、好ましくは、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下であり、より好ましくは、1.5倍以上2倍以下である。なお、ノズル流路20では、喉部25において流路面積が僅かに変化する場合であっても、流路面積がおよそ最も小さい部分全体が喉部25と捉えられる。
【0049】
微細気泡生成ノズル2は、また、喉部25に連続して設けられ、加圧液噴出口22の周囲を加圧液噴出口22から離間して囲む拡大部27、および、拡大部27の端部に設けられた拡大部開口28を備える。加圧液噴出口22と拡大部開口28との間の流路29は、加圧液噴出口22の外部に設けられた流路であり、以下、「外部流路29」という。外部流路29の流路断面および拡大部開口28は略円形であり、外部流路29の流路面積はほぼ一定である。外部流路29の直径は、喉部25の直径(すなわち、加圧液噴出口22の直径)よりも大きい。以下の説明では、拡大部27の内周面の加圧液噴出口22側のエッジと加圧液噴出口22のエッジとの間の円環状の面を、「噴出口端面221」という。
【0050】
本実施の形態では、ノズル流路20および外部流路29の中心軸J2と噴出口端面221との成す角度は約90°である。また、外部流路29の直径は10mm〜20mmであり、外部流路29の長さは、外部流路29の直径におよそ等しい。微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21とは反対側の端部に、凹部である外部流路29が形成され、当該凹部の底部に、当該底部よりも小さい開口である加圧液噴出口22が形成されている、と捉えられる。拡大部27では、加圧液噴出口22と水槽91内の対象液92との間における加圧液71の流路面積が拡大される。
【0051】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液流入口21からノズル流路20に流入した加圧液71が、テーパ部24において徐々に加速されつつ喉部25へと流れ、喉部25を通過して加圧液噴出口22から噴流として噴出される。喉部25における加圧液71の流速は、好ましくは秒速10m〜30mであり、本実施の形態では、秒速約20mである。微細気泡生成装置1では、気体溶解装置3からの加圧液71の送路上に設けられる微細気泡生成ノズル2(特に、喉部25)が絞り部として機能することにより、気体溶解装置3内の圧力が維持される。正確には、調整弁51と微細気泡生成ノズル2とにより、圧力が維持される。
【0052】
喉部25を通過して減圧されることにより、加圧液71中の気体が過飽和となって微細気泡として液中に析出する。微細気泡は、加圧液71と共に拡大部27の外部流路29を通過して、水槽91中の対象液92中へと拡散する。微細気泡生成ノズル2では、加圧液71が外部流路29を通過する間にも、微細気泡の析出が生じる。微細気泡生成ノズル2にて生成される微細気泡は、直径が1μm未満のいわゆるナノバブルである。なお、微細気泡生成ノズル2からの液体および微細気泡の噴出が停止されている場合、外部流路29は対象液92により満たされる。
【0053】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液71の流れる方向に向かって流路面積が漸次減少するテーパ部24、および、ノズル流路20において流路面積が最も小さい喉部25が設けられることにより、微細気泡、特に、直径が1μm未満の微細気泡(ナノバブル)を安定して大量に生成することができる。
【0054】
微細気泡生成ノズル2では、加圧液噴出口22の周囲を囲む拡大部27が設けられることにより、水槽91内における対象液92の流れが、加圧液噴出口22から噴出された直後の加圧液71に対して影響を与えることを抑制することができる。これにより、加圧液噴出口22からの噴出直後の加圧液71においても、ナノバブルの析出が安定して行われるため、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。
【0055】
上述のように、微細気泡生成ノズル2では、テーパ部24の内面が、ノズル流路20の中心軸J2を中心とする円錐面の一部であり、中心軸J2を含む断面において、テーパ部24の内面の成す角度αが90°以下である。これにより、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。また、微細気泡生成ノズル2の導入部23および喉部25の直径を維持しつつ微細気泡生成ノズル2の長さを短くするという観点からは、テーパ部24の内面の成す角度αが10°以上であることが好ましい。
【0056】
微細気泡生成ノズル2では、喉部25の長さが、喉部25の直径の1.1倍以上10倍以下である。喉部25の長さが直径の1.1倍以上であることにより、ナノバブルをより安定して大量に生成することができる。例えば、喉部25の長さが直径の0.53倍である場合のナノバブルの生成密度は約5600万個であるのに対し、喉部25の長さが直径の1.57倍である場合のナノバブルの生成密度は約11000万個である。また、喉部25の長さが直径の10倍以下であることにより、喉部25において加圧液71に生じる抵抗が過剰に大きくなることを防止することができるとともに、喉部25の高精度な形成を容易とすることもできる。ナノバブルをより一層安定して大量に生成するという観点からは、喉部25の長さが直径の1.5倍以上2倍以下であることが、さらに好ましい。
【0057】
図1に示す微細気泡生成装置1では、微細気泡の生成を停止する際には、気体溶解装置3の混合ノズル31に液体を圧送するポンプの駆動が停止される。そして、当該ポンプから混合ノズル31への液体の流れが停止するまでの間に排気弁54が開放される。これにより、溶解流路部32内の加圧された気体が、排気弁54を介して外部へと放出される。その結果、溶解流路部32内の気体の膨張により液体が混合ノズル31およびポンプへと逆流することを防止することができる。また、接続配管4が溶解流路部32から外されることにより、既述のように、溶解流路部32内の液体72が堰止部32aの微小貫通孔62を通って外部へと流出する。
【0058】
図7は、堰止部32aの他の例を示す図である。図7の堰止部32aは、水平流路内に梁状の部材60を水平かつ流路の伸びる方向に垂直な方向に設けたものである。液体72は、部材60の上端61を越えて次の水平流路へと流れ落ちる。また、部材60の下端と水平流路の下部との間の隙間が、微小貫通孔62として機能する。図7の堰止部32aの作用および効果は、図4に示すものと同様である。
【0059】
図8は、接続配管4に設けられる調整弁51の他の好ましい配置を示す図である。微細気泡生成装置1では、調整弁51は、接続配管4上に直接設けられる。この場合も、上述と同様に、弁制御部53により、調整弁51が圧力センサ52からの出力に基づいて制御されることにより、溶解流路部32内の圧力が、予め定められた所定の圧力となる。微細気泡生成ノズル2は固定絞りであることから、調整弁51を設けることにより、気体溶解装置3での圧力変動の影響が微細気泡生成ノズル2に及ぶことが防止される。調整弁51での減圧は、全体の30%以下、すなわち、下流側の圧が上流側の圧の70%以上であることが望ましい。
【0060】
図9は、溶解流路部32の余剰気体分離部326以外の部位の他の例を示す図である。図9の溶解流路部32では、堰止部32aとして、図4に示すものから微小貫通孔62が省かれたものが設けられる。また、溶解流路部32では、微小貫通孔62に代えて、堰止部32aの上流側に上下に並ぶ水平流路を繋ぐバイパス流路32bが設けられる。すなわち、第1水平流路321の堰止部32aの上流側に、第1水平流路321と第2水平流路322とを上下に繋ぐバイパス流路32bが設けられ、第2水平流路322の堰止部32aの上流側に、第2水平流路322と第3水平流路323とを上下に繋ぐバイパス流路32bが設けられ、第3水平流路323と第4水平流路324との間、第4水平流路324と第5水平流路325との間にも同様にバイパス流路32bが設けられる。上下に並ぶ水平流路は、接続流路320にて連絡するが、バイパス流路32bは、これらの水平流路を別途連絡する微小流路である。微細気泡生成装置1および溶解流路部32の他の構造は、図1に示すものと同様である。
【0061】
図9の溶解流路部32においても、図1と同様に、堰止部32aが設けられることにより、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の液面の高さがおよそ一定に維持される。これにより、気体と液体との接触面積がおよそ一定に維持される。その結果、単位体積当たり所望の量の気体が溶解した加圧液71を容易に得ることができる。また、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に堰止部32aが設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。
【0062】
堰止部32aの上流側には、バイパス流路32bが設けられるため、加圧液71が生産される間、堰止部32aにて堰止められた液体72の一部は、バイパス流路32bから次の水平流路へと流れ落ちる。バイパス流路32bから流れ落ちる液体72の量は少なく、堰止部32aから液体72が溢れる状態は維持される。バイパス流路32bを流れ落ちる液体72の量は、堰止部32aを越える液体72の1/5以下、より好ましくは1/10以下である。一方、バイパス流路32bが設けられることにより、図1の場合と同様に、加圧液71の生産を停止した後に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側へと流出させることができる。
【0063】
図1の堰止部32aが有する図4の微小貫通孔62、および、図9のバイパス流路32bは、いずれも、堰止部32aにより上流側の水平流路内の液体72が貯溜される空間の下部と、堰止部32aよりも下流側の空間とを連絡し、上流側の水平流路内に貯溜される液体72の一部を、堰止部32aよりも下流側の空間へと導く連絡流路として機能する。このような機能を有する連絡流路は、図4および図9に示す構造により容易に実現することができるが、連絡流路はこれらの構造には限定されない。例えば、堰止部32aにより貯溜される液体72を接続流路320へと導く連絡流路が設けられてもよい。また、バイパス流路32bは、堰止部32aから上流側に離れて設けられてもよい。
【0064】
図10は、溶解流路部32(余剰気体分離部326を除く。)のさらに他の例を示す図である。図10の溶解流路部32では、堰止部32aとして、略半円状の板部材が用いられる。堰止部32aは、図1の場合と同様に、水平流路321〜324の下部に配置されて当該下部を閉塞する部位である。また、この板部材は、水平流路から分離された別の部材として設けられる。堰止部32aの下方かつ水平流路の外部には、堰止部32aを上下方向を向く軸を中心として回転する堰止切替部32cが設けられる。微細気泡生成装置1および溶解流路部32の他の構造は、図1と同様である。
【0065】
図10の溶解流路部32では、堰止切替部32cにより、堰止部32aが流路の伸びる方向に垂直な姿勢となる場合、堰止部32aが液体72の流れを妨げて水平流路内に液体72が貯溜される。そして、堰止部32aを越えるようにして溢れる液体72が接続流路320を介して次の水平流路へと流れ落ちる。これにより、図1と同様に、第1ないし第4水平流路321〜324では、液体72の液面の高さがおよそ一定に維持される。また、液体72が次の水平流路に向かう直前の位置に堰止部32aが設けられるため、各水平流路内において気体と液体との接触面積を大きくすることができる。
【0066】
一方、堰止切替部32cにより、堰止部32aが流路の伸びる方向に平行な姿勢となる場合、液体72は堰止部32aにて妨げられることなく、次の水平流路へと流れ落ちる。このように、堰止切替部32cは、堰止部32aの状態を、液体72の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる。加圧液71を生産する際には、堰止部32aが液体72の流れを妨げる状態とされる。加圧液71の生産を停止した後、堰止部32aの状態を液体72の流れを妨げない状態とすることにより、図1の場合と同様に、溶解流路部32内に残留する液体を自然に接続配管4側へと流出させることができる。
【0067】
堰止部32aの状態を切り替える機構は、堰止部32aの回転には限定されない。例えば、堰止切替部32cが、堰止部32aを昇降させてもよい。堰止切替部32cが堰止部32aを上昇させて堰止部32aの下部と水平流路の内底面との間に隙間を形成することにより、堰止部32aが液体72の流れを妨げない状態となる。さらには、堰止部32aが変形する部材により形成され、流れを妨げる状態と妨げない状態との間で変更されてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0069】
例えば、水平流路321〜325や接続流路320の断面は、円形ではなく矩形であってもよい。溶解流路部32では、5つの水平流路321〜325は、必ずしも上下方向に積層される必要はなく、各水平流路における混合流体の流れる方向が同じになるように、階段状に配置されてもよい。また、水平流路の数も5つには限定されず、様々に変更されてよい。ただし、混合ノズル31が取り付けられる流路から落下した液体(混合流体)が流れるもう1つの水平流路が設けられることにより、液体に加圧溶解する気体の量を増大させることができる。水平流路は、液体72を貯溜することができる程度に水平であればよく、完全に水平である必要はない。流路の幅も一定である必要はない。
【0070】
混合ノズル31以外の機構により混合流体が生成され、第1水平流路321に導入されてもよい。ただし、混合ノズル31を用いることにより、効率よく気体を液体に溶解させつつ気体溶解装置3を小型化することができる。余剰気体分離部326と第5水平流路325との接続数は、気体分離量に応じて増減してもよい。溶解流路部32では、混合ノズル31から供給される気体が、接続配管4に到達するまでに全て液体72に溶解するのであれば、余剰気体分離部326は省略されてもよい。
【0071】
堰止部32aは、必ずしも板状である必要はなく、液体72の流れを妨げることができるのであれば、例えば、ブロック状であってもよい。堰止部32aの形状も、図4や図7に示すように、上端61が水平なものには限定されず、液体72の液面の高さをおよそ一定にすることができるのであれば、様々に変形されてよい。例えば、図11に示す三角堰や図12に示す四角堰が用いられてもよい。図13は、堰止部32aのさらに他の例を示す図である。図13の堰止部32aは、上流側の面が、下流側に向かって漸次上方へと向かう緩やかな傾斜面となっており、これにより、堰止部32aと水平流路の下部との間に異物が溜まりにくくなっている。図13に示す堰止部32aにおいても、流路方向に貫通する微小な貫通孔が下部に設けられてもよい。さらに、堰止部32aは、必ずしも水平流路から液体72が落下する直前に設けられる必要はない。もちろん、気体と液体との接触面積を大きくするためには、堰止部32aは次の水平流路へと向かう直前の位置に設けられることが好ましく、具体的には、流路の水平な部分の端部から、水平な部分の長さの1/5以下の距離に設けられることが好ましい。
【0072】
混合ノズル31が使用される場合、溶解流路部32の第1水平流路321では液面が大きく波打つため、第1水平流路321では堰止部32aは設けられなくてもよい。
【0073】
接続配管4は分岐されて、複数の微細気泡生成ノズル2が対象液92中に配置されてもよい。また、微細気泡生成ノズル2は、複数の加圧液噴出口22を有するものであってもよい。微細気泡生成ノズル2の内部構造も、適宜変更されてよい。
【0074】
微細気泡生成装置1は、例えば、図8の調整弁51を設けて、微細気泡生成ノズル2を削除することで、直径が1μm以上1mm未満の微細気泡(いわゆる、マイクロバブル)の生成に利用されてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様に、マイクロバブルを安定して大量に生成することができる。
【0075】
気体溶解装置3は、微細気泡生成装置1以外の装置に用いられてもよい。この場合、例えば、微細気泡生成ノズル2が省略され、加圧液71が直接、様々な用途に利用される。また、気体溶解装置3は、様々な気体を様々な液体に加圧溶解させて加圧液を生成する装置として使用されてもよい。例えば、オゾンを水に溶解させる装置や、他の気体を液体に反応させる装置等の気液反応装置として使用されてもよい。図8に示す構成にて、調整弁51を通過した段階で加圧液71内に微細気泡が析出するように調整弁51が調整されてもよい。この場合、微細気泡生成ノズル2は省略されてもよい。
【0076】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0077】
1 微細気泡生成装置
2 微細気泡生成ノズル(絞り部)
3 気体溶解装置
4 接続配管
31 混合ノズル
32a 堰止部
32b バイパス流路
32c 堰止切替部
51 調整弁
52 圧力センサ
53 弁制御部
62 微小貫通孔
72 液体(混合流体)
321〜324 水平流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記堰止部により前記第1流路内の前記液体が貯溜される空間の下部と、前記堰止部よりも下流側の空間とを連絡し、前記第1流路内に貯溜される前記液体の一部を前記下流側の空間へと導く連絡流路と、
を備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路の下部に固定されて前記下部を塞ぐ部位であり、
前記連絡流路が、前記第1流路に沿って前記堰止部を貫通する貫通孔であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気体溶解装置であって、
前記連絡流路が、前記第1流路と前記第2流路とを別途連絡する微小流路であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路内において、液体が前記第2流路に向かう直前の位置に設けられることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項5】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記第1流路から流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記第1流路内の下部、かつ、前記第2流路の直前に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
を備え、
前記液体が前記堰止部を越えて前記第2流路に流れ込むことを特徴とする気体溶解装置。
【請求項6】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記堰止部の状態を、前記液体の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる堰止切替部と、
を備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項7】
請求項6に記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路の下部に配置されて前記下部を閉塞する部位であり、
前記堰止切替部が、前記堰止部を回転または昇降させる機構であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第1流路の伸びる方向に垂直な面による前記第1流路の内側面の断面が、円形であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第2流路において、加圧環境下にて前記液体が前記気体に接しつつ前記気体の下方にて流れ、
前記第1流路における前記液体の流れる方向と前記第2流路における前記液体の流れる方向とが逆向きであり、
前記気体溶解装置が、前記第2流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第2流路内に前記液体を貯溜させる他の堰止部をさらに備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第1流路よりも上方に位置する第3流路と、
前記気体と前記液体とを混合して前記第3流路内に向けて噴出する混合ノズルと、
をさらに備え、
前記第3流路内にて前記混合ノズルから噴出された後の混合流体が、加圧環境下にて、前記第1流路における前記液体の流れる方向とは反対方向に流れて前記第1流路へと流れ込むことを特徴とする気体溶解装置。
【請求項11】
微細気泡生成装置であって、
請求項1ないし10のいずれかに記載の気体溶解装置と、
前記気体溶解装置からの前記液体の送出路上に設けられ、前記気体溶解装置内の圧力を維持する絞り部と、
を備え、
前記絞り部を通過して減圧されることにより、前記液体中に微細気泡が発生することを特徴とする微細気泡生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の微細気泡生成装置であって、
前記気体溶解装置と前記絞り部とを接続する接続配管と、
前記接続配管に設けられて前記接続配管内の前記液体の圧力を調整する調整弁と、
前記気体溶解装置内の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサからの出力に基づいて前記調整弁を制御する弁制御部と、
をさらに備えることを特徴とする微細気泡生成装置。
【請求項1】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記堰止部により前記第1流路内の前記液体が貯溜される空間の下部と、前記堰止部よりも下流側の空間とを連絡し、前記第1流路内に貯溜される前記液体の一部を前記下流側の空間へと導く連絡流路と、
を備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路の下部に固定されて前記下部を塞ぐ部位であり、
前記連絡流路が、前記第1流路に沿って前記堰止部を貫通する貫通孔であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気体溶解装置であって、
前記連絡流路が、前記第1流路と前記第2流路とを別途連絡する微小流路であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路内において、液体が前記第2流路に向かう直前の位置に設けられることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項5】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記第1流路から流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記第1流路内の下部、かつ、前記第2流路の直前に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
を備え、
前記液体が前記堰止部を越えて前記第2流路に流れ込むことを特徴とする気体溶解装置。
【請求項6】
気体を液体に加圧溶解させる気体溶解装置であって、
加圧環境下にて液体が気体に接しつつ前記気体の下方にて流れる第1流路と、
前記第1流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第1流路内に前記液体を貯溜させる堰止部と、
前記第1流路よりも下方に位置し、前記堰止部を越えて流れ込む前記液体が加圧環境下にて流れる第2流路と、
前記堰止部の状態を、前記液体の流れを妨げる状態と流れを妨げない状態との間にて変化させる堰止切替部と、
を備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項7】
請求項6に記載の気体溶解装置であって、
前記堰止部が、前記第1流路の下部に配置されて前記下部を閉塞する部位であり、
前記堰止切替部が、前記堰止部を回転または昇降させる機構であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第1流路の伸びる方向に垂直な面による前記第1流路の内側面の断面が、円形であることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第2流路において、加圧環境下にて前記液体が前記気体に接しつつ前記気体の下方にて流れ、
前記第1流路における前記液体の流れる方向と前記第2流路における前記液体の流れる方向とが逆向きであり、
前記気体溶解装置が、前記第2流路内の下部に設けられ、前記液体の流れを妨げることにより前記第2流路内に前記液体を貯溜させる他の堰止部をさらに備えることを特徴とする気体溶解装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の気体溶解装置であって、
前記第1流路よりも上方に位置する第3流路と、
前記気体と前記液体とを混合して前記第3流路内に向けて噴出する混合ノズルと、
をさらに備え、
前記第3流路内にて前記混合ノズルから噴出された後の混合流体が、加圧環境下にて、前記第1流路における前記液体の流れる方向とは反対方向に流れて前記第1流路へと流れ込むことを特徴とする気体溶解装置。
【請求項11】
微細気泡生成装置であって、
請求項1ないし10のいずれかに記載の気体溶解装置と、
前記気体溶解装置からの前記液体の送出路上に設けられ、前記気体溶解装置内の圧力を維持する絞り部と、
を備え、
前記絞り部を通過して減圧されることにより、前記液体中に微細気泡が発生することを特徴とする微細気泡生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の微細気泡生成装置であって、
前記気体溶解装置と前記絞り部とを接続する接続配管と、
前記接続配管に設けられて前記接続配管内の前記液体の圧力を調整する調整弁と、
前記気体溶解装置内の圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサからの出力に基づいて前記調整弁を制御する弁制御部と、
をさらに備えることを特徴とする微細気泡生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−39497(P2013−39497A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175884(P2011−175884)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】
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