説明

気密扉

【目的】 当接棒を間接的に作動させ、設置する上で仕様が限定されてしまうことのない気密扉を提供する。
【構成】 気密扉1は、2本のレール2,2つの懸吊装置3,引戸4,上部パッキン材5,側部パッキン材6,下部押付装置7及び下部気密装置8とからなる。
【効果】 引戸4が閉鎖位置に接近すると、下部気密装置8の押棒10が当接部材12で下方へ案内され、更に押棒10に連動して押出機構部14が押出パッキン材13を床9cに密着するため、押出パッキン材13を開口部9の床9aに押圧できる。従って、気密扉1を設置する上で、三方枠等を開口部9の前側に設けたものに仕様が限定されない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、建物の開口部等に開閉自在に設置される気密扉に関する。
【0002】
【従来の技術】従来例の気密扉として、特開平2−269286号公報に記載されたものがある。図4乃至図6に示すように、従来例の気密扉18は、開口部9の一側縁前方に突出して設けた三方枠19と、前記開口部9の上縁前方に配置した無目9b内に長手方向に並んで設けられ一端部2aが開口部9側へ折曲した2本のレール2と、該2本のレール2に別々に案内される2つの懸吊装置3と、該2つの懸吊装置3が前記2本のレール2の一端部2aにあるときに前記開口部9を閉鎖し他端部2bにあるときに前記開口部9を開放するように前記各懸吊装置3に上部を水平方向に回動自在に懸吊された引戸4と、該引戸4の前記開口部9側の上縁及び両側縁に沿って設けた上部パッキン材5及び側部パッキン材6と、前記開口部9の床9aに設けられ前記引戸4が開口部9を閉鎖したときに前記引戸4の下縁部を開口部9側へ押付ける下部押付装置7と、前記引戸4の下縁部に設けられ前記引戸4が開口部9を閉鎖したときに前記引戸4の下縁部と開口部9の床9aの間を気密状態に保持する下部気密装置20とを備えたものである。
【0003】前記懸吊装置3は、図7(a),(b) に示すように、ドアハンガー21の上部に取付軸22を介して設けられ、且つ、前記開口部9の反対側の一端にフランジ部23を形成されて前記レール2上を運行する戸車24と、該戸車24のフランジ部23を設けない側である開口部9側から前記レール2の側面に当接しながら回転する内側案内ローラ25と、前記ドアハンガー21に取付けられ内側案内ローラ25を支持する支持板26と、前記ドアハンガー21の高さ方向の略中央に取付けられ前記レール2の下面に当接しながら回転するガイドローラ27と、前記ドアハンガー21の水平部21aに貫通して取付けられ前記ドアハンガー21を水平方向に回転自在にさせる回転懸吊軸28とからなる。
【0004】前記回転懸吊軸28の上部には係止ブラケット29が形成され、該係止ブラケット29がベアリングブラケット30を介して前記ドアハンガー21の水平部21aに懸吊している。また、回転懸吊軸28の下部には板状の取付部31が形成され、図4によく表れているように、該取付部31が前記引戸4の上部にボルトcで固定されている。なお、前記引戸4は、前記無目9b内に設けられた駆動装置32により開閉駆動する。該駆動装置32は、モーター等の駆動源33と、この駆動源33によって回転駆動する駆動プーリ34と、従動プーリ35と、これらの両プーリ34,35に巻回され前記引戸4の上部に連結部材36を介して固定された駆動ベルト37とからなる。
【0005】前記下部押付装置7は、図5に示すように、前記下部フレーム枠4bの内部に設けた平面視くさび形の押付傾斜部37と、前記開口部9の床9aに設置した押付ローラ38とからなる。
【0006】前記下部気密装置20は、図8(a),(b) に示すように、前記引戸4の下縁部フレーム枠4b内に設けられ前記押出パッキン材13を出没自在に支持する溝形の支持部材15と、該支持部材15内に前記引戸4の戸幅方向である矢印A方向へ移動自在に挿入された動作杆39と、前記押出パッキン材13に中央部17aをピン40aを介して固定し一端17bを前記支持部材15の内部にピン40bを介して固定すると共に他端17cを前記動作杆39の後端にピン40cを介して固定した弓形の板ばね17とからなる。前記支持部材15は、前記引戸4の全幅に略等しい長手寸法を有し前記開口部9側に斜め下向きに開口している。
【0007】上述の従来例の気密扉18によれば、前記2つの懸吊装置3を前記各レール2の一端部2a側へ移動すると、前記2つの懸吊装置3の各戸車24が前記各レール2の直線部分を閉鎖方向へ回動移動する。このとき、前記戸車24は、前記フランジ部23によって内側方向への脱輪が防止され、内側案内ローラ25によって外側への脱輪が防止される。そして、前記各懸吊装置3がそれぞれ前記各レール2の一端部2aへ移動すると、これに伴って前記引戸4が閉鎖位置に接近すると共に前記開口部9にも接近する。一方、前記引戸4の下部フレーム枠4b内に設けた押付傾斜部37が、前記床9aに設置した押付ローラ38に当接することにより、前記引戸4の下縁部が開口部9側へ押圧される。
【0008】これによって、前記引戸4に設けた上部パッキン材5及び側部パッキン材6が前記開口部9の周壁9cに密着する。また、前記下部気密装置20の動作杆39の先端39aが前記三方枠19に当接し始めるので、動作杆39が前記支持部材15を奥方へ移動して前記板ばね17を圧縮する。このため板ばね17の撓みが大きくなるので、前記板ばね17の中央部17aが前記押出パッキン材13を斜め下方へ押出して、前記引戸4の下縁部と前記床9aの間を遮断する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記下部気密装置20の動作杆39を作動させるには、前記動作杆39を前記三方枠19に当接させなければならず、前記三方枠19を建物に設けることが必要であった。このため、上述したのような気密扉18を設置する上で、前記三方枠19を前記開口部9の前側に設けたものに仕様が限定されるという問題点がある。
【0010】この発明の目的は、当接棒を間接的に作動させ、気密扉を設置する上で仕様が限定されてしまうことのない気密扉を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の気密扉は、開口部の上縁前方に配置した無目内に長手方向に並んで設けられ一端部が開口部側へ折曲した2本のレールと、該2本のレールに別々に案内される2つの懸吊装置と、該2つの懸吊装置に両側部を水平方向に回動自在に懸吊され且つ2つの懸吊装置が2本のレールの一端部にあるときに開口部を閉鎖し他端部にあるときに開口部を開放する引戸と、該引戸の開口部側の上縁及び両側縁に沿って設けたパッキン材と、開口部の床に設けられ引戸が開口部を閉鎖したときに引戸の下縁部を開口部側へ押付ける下部押付装置と、引戸の下縁部に設けられ引戸が開口部を閉鎖したときに引戸の下縁部と開口部の床の間を気密状態に保持する下部気密装置とを備えた気密扉であって、下部気密装置が、引戸に上下動自在に支持された押棒と、該押棒を上方へ付勢する付勢手段と、無目内に設けられ押棒の上端に当接することにより付勢手段に抗して押棒を下方へ案内する傾斜面を有する当接部材と、引戸の戸幅全域に延び引戸の下縁部から下方へ出没自在に設けられた押出パッキン材と、押棒に連動して押出パッキン材を開口部の床に押圧する押出機構部とから構成されることを特徴とする気密扉。
【0012】請求項2記載の気密扉は、上記押出機構部を、引戸の下縁に沿って延び押出パッキン材を下方へ出没自在に支持する下向き溝形の支持部材と、該支持部材内にこの長手方向へ移動自在に挿入された動作杆と、押出パッキン材に中央部を当接し一端を支持部材の内部に固定すると共に他端を動作杆に固定した弓形の弾性体とから構成し、押棒の下端に形成した傾斜面を動作杆に上方から押圧することにより、動作杆を介して弾性体を圧縮するようにしたものである。
【0013】請求項3記載の気密扉は、上記当接部材を、レールの長手方向又は上下方向の少なくとも一方向へ位置調整できるようにしたものである。
【0014】
【作用】請求項1記載の気密扉によると、下部気密装置を、引戸に上下動自在に支持された押棒を、無目内に設けた当接部材の傾斜面により付勢手段に抗して下方へ案内するようにし、更に押棒が下方へ案内されることに連動して、引戸の下縁部から下方へ出没自在に設けられた押出パッキン材を、開口部の床に押圧する押出機構部とから構成しているので、引戸が閉鎖位置に接近すると、押出パッキン材により引戸の下縁部と開口部の床の間が遮断されることになる。
【0015】請求項2記載の気密扉によると、押棒が下方へ移動するときに、押棒の下端に形成した傾斜面で、動作杆を案内して弾性体を圧縮することにより、弾性体の中央部で押出パッキン材を支持部材から押出すようにしているので、動作杆を建物側に固定した三方枠等に当接する必要がなく、押出パッキン材を開口部の床に押圧することができる。構造が極めて簡単なため生産性に優れている。
【0016】請求項3記載の気密扉によると、当接部材を、レールの長手方向又は上下方向の少なくとも一方向へ位置調整できるので、当接部材の傾斜面により案内される押棒の下方への移動量を任意に増減し、押出パッキン材の突出量を調節することができる。
【0017】
【実施例】この発明の一実施例の気密扉について説明する。従来例と同様の構成については同符号を付して詳細な説明を省略した。図1及び図2に示すように、該実施例に係る気密扉1は、2本のレール2,2つの懸吊装置3,引戸4,上部パッキン材5,側部パッキン材6,下部押付装置7及び下部気密装置8とを備えたものである。
【0018】前記下部気密装置8は、前記引戸4が閉鎖位置にあるときに引戸4の下縁部と開口部9の床9aの間を遮断して防音・気密を完全にする装置であって、前記引戸4の戸先側の横框部を構成するケース部材4a内に上下動自在に支持された押棒10と、該押棒10を上方へ付勢する付勢手段であるコイルばね11と、無目9b内に設けられ前記押棒10の上端部10aに当接することにより前記コイルばね11に抗して前記押棒10を下方へ案内する傾斜面12aを有する当接部材12と、前記押棒10が下方へ案内されるのに連動して押出パッキン材13を前記床9aに押圧する押出機構部14とから構成される。
【0019】前記押棒10は、前記ケース部材4aの上端面から上端部10aを突出し下端に傾斜面10bを形成している。前記当接部材12は、ボルト・ナットaで無目9b内に固定されたブラケット12bと、該ブラケット12bにボルト・ナットbを介して固定された2枚の側片12cと、該2枚の側片12cの間に傾斜姿勢で溶接された傾斜片12dとからなる。前記押出機構部14は、図2及び図3に示すように、前記押出パッキン材13を出没自在に支持する支持部材15と、該支持部材15内にこ長手方向であり前記引戸4の開閉方向でもある矢印A方向へ移動自在に挿入され先端16aを球形に成形した動作杆16と、弓形の板ばね17とからなる。
【0020】次に、気密扉1の動作について説明する。前記2つの懸吊装置3を各レール2に沿って移動することにより前記引戸4を閉鎖位置に接近すると、従来例と同様に前記引戸4が前記開口部9側へ押付けられ、前記引戸4に設けた上部パッキン材5及び側部パッキン材6が前記開口部9の周壁9cに密着する。一方、前記押棒10の上端部10aが前記当接部材12の傾斜面12aに当接し、前記押棒10が前記傾斜面12aに案内されて下方へ移動する。更に、前記押棒10の傾斜面10bが前記動作杆16の先端部16aを上方から押圧することになり、前記動作杆16が前記支持部材15の長手方向の奥方へ案内される。これによって、前記板ばね17の撓み量が大きくなるので、前記板ばね17の中央部17aにより前記押出パッキン材13が斜め下方へ押出され、前記引戸4の下縁部と前記床9aの間が遮断される。
【0021】以上に述べたように、前記引戸4が閉鎖位置に接近すると、前記押棒10が前記無目9b内に設けた当接部材12で下方へ案内され、更に前記押棒10に連動して押出機構部14が前記押出パッキン材13を前記床9cに密着することができるため、従来のように動作杆16を三方枠等に当接する必要がなく、前記押出パッキン材13を前記開口部9の床9aに押圧することができる。従って、気密扉1を設置する上で、三方枠等を開口部9の前側に設けたものに仕様が限定されることがない。
【0022】また、前記当接部材12を、前記ボルト・ナットbを緩めることにより、前記レール2の長手方向及び上下方向へ位置調整できるので、前記当接部材12の傾斜面12aにより案内される前記押棒10の下方への移動量を任意に増減し、前記押出パッキン材13の突出量を調節することができる。このため、取付け施工を行うに際して、前記引戸4の下縁部と床9aの間隔が所定寸法となるように高い精度が要求されることがない。
【0023】
【発明の効果】請求項1記載の気密扉によると、下部気密装置を、引戸に上下動自在に支持された押棒を、無目内に設けた当接部材の傾斜面により付勢手段に抗して下方へ案内するようにし、更に押棒が下方へ案内されることに連動して、引戸の下縁部から下方へ出没自在に設けられた押出パッキン材を開口部の床に押圧する押出機構部とから構成しているので、引戸が閉鎖位置に接近すると押出パッキン材により引戸の下縁部と開口部の床の間を遮断できる。従って、従来例のように動作杆を建物側に固定した三方枠等に当接する必要がなく、気密扉を設置する上で、三方枠19を開口部の前側に設けたものに仕様が限定されることがない。
【0024】請求項2記載の気密扉によると、押棒が下方へ移動するときに、押棒の下端に形成した傾斜面で、動作杆を案内して弾性体を圧縮することにより、弾性体の中央部で押出パッキン材を支持部材から押出すようにしているので、動作杆を建物側に固定した三方枠等に当接する必要がなく、押出パッキン材を開口部の床に押圧することができる。従って、従来例のように動作杆を建物側に固定した三方枠等に当接する必要がなく、気密扉を設置する上で、三方枠19を開口部の前側に設けたものに仕様が限定されることがない。更に、構造が極めて簡単なため生産性に優れている。
【0025】請求項3記載の気密扉によると、当接部材を、レールの長手方向又は上下方向の少なくとも一方向へ位置調整できるので、当接部材の傾斜面により案内される押棒の下方への移動量を任意に増減し、押出パッキン材の突出量を調節することができる。このため、取付け施工を行うに際して、引戸の下縁部と開口部の床の間隔が所定寸法となるように高い施工精度が要求されることがない。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の気密扉の正面図。
【図2】この発明の一実施例の気密扉の縦断面図。
【図3】この発明の一実施例の気密扉の下部気密装置を示す平面図。
【図4】従来例の気密扉の正面図。
【図5】従来例の気密扉の縦断面図。
【図6】従来例の気密扉のレール及び懸吊装置を平面視した動作説明図。
【図7】(a) は従来例の気密扉の懸吊装置の断面図、(b) はその正面図。
【図8】(a) は従来例の気密扉の下部気密装置を示す平面図、(b) はその要部を示す断面図。
【符号の説明】
1 気密扉
2 レール
3 懸吊装置
4 引戸
5 上部パッキン材
6 側部パッキン材
7 下部押付装置
8 下部気密装置
9 開口部
10 押棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口部の上縁前方に配置した無目内に長手方向に並んで設けられ一端部が前記開口部側へ折曲した2本のレールと、該2本のレールに別々に案内される2つの懸吊装置と、該2つの懸吊装置に両側部を水平方向に回動自在に懸吊され且つ2つの懸吊装置が前記2本のレールの一端部にあるときに前記開口部を閉鎖し他端部にあるときに前記開口部を開放する引戸と、該引戸の前記開口部側の上縁及び両側縁に沿って設けたパッキン材と、前記開口部の床に設けられ前記引戸が前記開口部を閉鎖したときに前記引戸の下縁部を前記開口部側へ押付ける下部押付装置と、前記引戸の下縁部に設けられ前記引戸が前記開口部を閉鎖したときに前記引戸の下縁部と前記開口部の床の間を気密状態に保持する下部気密装置とを備えた気密扉であって、前記下部気密装置が、前記引戸に上下動自在に支持された押棒と、該押棒を上方へ付勢する付勢手段と、前記無目内に設けられ前記押棒の上端に当接することにより前記付勢手段に抗して前記押棒を下方へ案内する傾斜面を有する当接部材と、前記引戸の戸幅全域に延び前記引戸の下縁部から下方へ出没自在に設けられた押出パッキン材と、前記押棒に連動して前記押出パッキン材を前記開口部の床に押圧する押出機構部とから構成されることを特徴とする気密扉。
【請求項2】 前記押出機構部を、前記引戸の下縁に沿って延び前記押出パッキン材を下方へ出没自在に支持する下向き溝形の支持部材と、該支持部材内に前記この長手方向へ移動自在に挿入された動作杆と、前記押出パッキン材に中央部を当接し一端を前記支持部材の内部に固定すると共に他端を前記動作杆に固定した弓形の弾性体とから構成し、前記押棒の下端に形成した傾斜面を前記動作杆に上方から押圧することにより、前記動作杆を介して前記弾性体を圧縮するようにした請求項1記載の気密扉。
【請求項3】 前記当接部材を、前記レールの長手方向又は上下方向の少なくとも一方向へ位置調整できるようにした請求項1又は2記載の気密扉。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate