説明

気泡シート

【課題】ポリエチレン系樹脂を単独で用いて製造された従来の気泡シートに比べて、気泡が破裂し難くなるとともに、気泡に封入された空気が抜け難い気泡シートを提供する。
【解決手段】中空状に膨出する多数の突起が成形されたキャップフィルムに、少なくとも前記突起の開口部を封止するバックフィルムを積層してなる気泡シートを製造するにあたり、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂として、ポリエチレン系樹脂60〜90重量部、ポリエステル系樹脂10〜40重量部、相溶化剤1〜10重量部を配合してなる樹脂組成物によりキャップフィルム及びバックフィルムを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した多数の気泡を有する気泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の突起が形成されたキャップフィルムに、突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートは、例えば、多数の吸引キャビティーが設けられた成形ロールの外周面に、溶融状態にある熱可塑性樹脂製のフィルム材を接触させて中空状に膨出する突起を真空成形した後に、成形された突起の開口部を封止するバックフィルムを積層するなどして製造することができる(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−216770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の気泡シートは、空気が封入された多数の気泡によって緩衝性を発揮するものであるため、封入された空気が気泡から抜け難くすることが求められる。特に、被包装品に気泡シートを巻き付けて、保管、搬送する際には、気泡が押し潰されたような状態となることが多いが、このような状態となっても気泡が破裂し難く、また、気泡に封入された空気が抜け難くなっていれば、長期にわたって緩衝性を発揮させることが可能になる。
【0006】
本発明者は、このような事情に鑑みて鋭意検討を重ねたところ、この種の気泡シートを製造するにあたり、材料樹脂として一般に用いられているポリエチレン系樹脂に、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂を適量配合することで、ポリエチレン系樹脂を単独で用いた場合に比べて、気泡が破裂し難くなるとともに、気泡に封入された空気が抜け難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る気泡シートは、中空状に膨出する多数の突起が成形されたキャップフィルムに、少なくとも前記突起の開口部を封止するバックフィルムを積層してなる気泡シートであって、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂として、前記ポリエチレン系樹脂60〜90重量部、ポリエステル系樹脂10〜40重量部、相溶化剤1〜10重量部を配合してなる樹脂組成物により、前記キャップフィルム及び前記バックフィルムを形成した構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリエチレン系樹脂を単独で用いて製造された従来の気泡シートに比べて、気泡が破裂し難くなるとともに、気泡に封入された空気が抜け難くなるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る気泡シートの製造工程の一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る気泡シートの実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る気泡シートの実施形態の変形例を示す概略斜視図である。
【図4】実施例1,2及び比較例1〜4について、圧縮クリープ特性の評価試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る気泡シートの製造工程の一例を示す説明図であり、図2は、本実施形態に係る気泡シートの概略を示す斜視図である。また、図3は、本実施形態に係る気泡シートの変形例の概略を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、気泡シート1を製造するには、まず、多数の吸引キャビティー41が設けられた成形ロール40の外周面に、溶融状態にある樹脂フィルム2bを接触させて中空状に膨出する多数の突起2aを真空成形し、これによってキャップフィルム2を形成する。特に図示しないが、吸引キャビティー41のそれぞれは真空ポンプにつながれており、吸引キャビティー41内を真空吸引することによって真空成形がなされるようになっている。
【0012】
真空成形によって突起2aが形成されたキャップフィルム2には、成形ロール40に密着した状態のまま、突起2aの開口側にバックフィルム3が積層される。このとき、バックフィルム3は、成形ロール40に密着するキャップフィルム2と押圧ロール50との間に溶融状態で供給され、熱融着によってキャップフィルム2と積層一体化される。
【0013】
これにより、突起2a内に空気が封入され、キャップフィルム2とバックフィルム3の積層界面に独立した多数の気泡が形成された気泡シート1が製造される。そして、気泡シート1は、剥離ロール60によって成形ロール40から剥離されて、図示しない巻き取りロールに巻き取られていく。
【0014】
このようにして製造される気泡シート1は、図2に示すように、キャップフィルム2とバックフィルム3とからなる二層構造とするほか、図3に示すように、突起2aの頂面側にライナーフィルム7を積層した三層構造とすることができる。さらに、特に図示しないが、例えば、図2に示す二層構造とした気泡シート1を複数積層したり、図2に示す二層構造の気泡シート1の突起2aの頂面側に、図3に示す三層構造とした気泡シート1を積層したりすることもでき、気泡シート1の具体的な層構成は、これらに限定されない。
【0015】
図1に示す例において、突起2aが真空成形されてキャップフィルム2となる樹脂フィルム2bは、図示しない押し出し機に取り付けられたフラットダイ21から、材料樹脂を押し出すことによって連続して供給されるようになっている。同様に、キャップフィルム2に形成された突起2aに空気を封入するバックフィルム3は、図示しない押し出し機に取り付けられたフラットダイ31から、材料樹脂を押し出すことによって連続して供給されるようになっている。
また、特に図示しないが、気泡シートを図3に示すような三層構造とする場合、ライナーフィルム7も同様に、押出機に取り付けられたフラットダイから材料樹脂を押し出して連続供給することによって、突起2aの頂面側に積層されるようにすることができる。
【0016】
本実施形態において、気泡シート1の製造に用いる材料樹脂としては、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂として、ポリエチレン系樹脂60〜90重量部、好ましくは60〜70重量部、ポリエステル系樹脂10〜40重量部、好ましくは25〜30重量部、相溶化剤1〜10重量部、好ましくは5〜10重量部を配合してなる樹脂組成物が用いられる。本実施形態にあっては、このような樹脂組成物を用いてキャップフィルム2とバックフィルム3を形成するが、キャップフィルム2の突起2aの頂面側にライナーフィルム7を積層した三層構造の気泡シートとする場合、ライナーフィルム7も同様の樹脂組成物によって形成するのが好ましい。
【0017】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE),直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE),エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタール酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸,ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸,ジフェノキシエタンジカルボン酸等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール,1,3−プロパンジオール,1,4−ブタンジオール,1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分とからなる熱可塑性ポリエステルなどが挙げられる。これらのなかでもテレフタール酸とエチレングリコールとの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが好ましく、特に、PETボトルなどを再生してなる再生ポリエチレンテレフタレートを用いるのが省資源化の観点から好ましい。
【0018】
相溶化剤としては、ポリエチレン系樹脂に対する親和性を有するエチレンの繰り返し単位を有するとともに、ポリエステル系樹脂の末端水酸基又は末端カルボキシル基と反応可能な官能基を有するものを用いることができる。このような相溶化剤としては、例えば、エチレンの単独重合体,エチレンとα−オレフィンの共重合体等に、カルボキシル基,ヒドロキシル基,エポキシ基,アミノ基等の官能基を導入したものが挙げられるが、これらの中でも、特に、α,β−不飽和カルボン酸によってエチレンとα−オレフィンの共重合体を酸変性した、カルボン酸変性エチレン・α−オレフィンの共重合体が好ましい。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン,1−ブテン,1−ペンテン,4−メチルー1−ペンテン,1−ヘキセン,1−オクテンなどが挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸,マレイン酸,無水マレイン酸などが挙げられる。
【0019】
ポリエチレン系樹脂に対するポリエステル系樹脂の配合量が上記範囲に満たないと、本発明の効果が十分に得られなくなってしまう。一方、ポリエステル系樹脂の配合量が上記範囲を超えてしまうと、圧縮強度や圧縮クリープ特性などの向上は期待できるものの、相溶化が困難になってしまう傾向がある。
【0020】
また、相溶化剤の配合量が上記範囲に満たないと、分散不良によりポリエチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との海島構造が得られにくくなってしまうおそれがある。相溶化剤の配合量を上記範囲とすることで、良好な海島構造を形成することができ、これによって、所望の圧縮強度や圧縮クリープ特性を得ることができる。一方、相溶化剤の配合量が上記範囲を超えてしまうと、相溶性のさらなる向上は認められ難く、コスト的に不利となる。
【0021】
本発明によれば、このような材料樹脂を用いることで、ポリエチレン系樹脂を単独で用いて製造された従来の気泡シートに比べて、気泡が破裂し難くなるとともに、気泡に封入された空気が抜け難くなるようにすることができる。
【実施例】
【0022】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂としてポリエチレン60重量部、ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート40重量部、相溶化剤としてカルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体7重量部をドライブレンドした材料樹脂を用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量68g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約1.10g/cmであり、バックフィルムの厚みは約24μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約53μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約19μmであった。
【0024】
[実施例2]
ポリエチレン系樹脂としてポリエチレン60重量部、ポリエステル系樹脂としてポリエチレンテレフタレート40重量部、相溶化剤としてカルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体7重量部をドライブレンドした材料樹脂を用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量94g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約1.10g/cmであり、バックフィルムの厚みは約41μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約90μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約27μmであった。
【0025】
[比較例1]
材料樹脂にポリエチレンを単独で用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量54.7g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約0.925g/cmであり、バックフィルムの厚みは約10μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約45μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約12μmであった。
【0026】
[比較例2]
材料樹脂にポリエチレンを単独で用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量75.9g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約0.925g/cmであり、バックフィルムの厚みは約28μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約42μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約10μmであった。
【0027】
[比較例3]
材料樹脂にポリエチレンを単独で用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量76.6g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約0.925g/cmであり、バックフィルムの厚みは約23μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約78μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約22μmであった。
【0028】
[比較例4]
材料樹脂にポリエチレンを単独で用いて、図1に示す装置により、ラインスピード40m/分で、図2に示す二層構成の気泡シートを目付け量54g/mとなるように製造した。
製造された気泡シートの比重は約0.925g/cmであり、バックフィルムの厚みは約14μm、キャップフィルムの突起非形成部の厚みは約51μm、キャップフィルムの突起頂面の厚みは約15μmであった。
【0029】
[評価]
実施例1,2及び比較例1〜4で製造された気泡シートについて、次の評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
[圧縮強度]
製造された気泡シートから気泡1粒を切り出したものを試験片とし、この試験片に荷重を加えて気泡の高さが0.2mmとなったときの荷重を圧縮強度とした。
【0031】
[引張強度]
JIS K7161に準拠して、縦横100×50mmの試験片を用意し、その押し出し方向(MD:Machine Direction)及び押し出し方向に直交する方向(TD:Transverse Direction)のそれぞれについて引張強度(引張強さ)を測定した。
【0032】
[引張伸度]
JIS K7161に準拠して、縦横100×50mmの試験片を用意し、その押し出し方向及び押し出し方向に直交する方向のそれぞれについて引張伸度(破壊伸び)を測定した。
【0033】
[圧縮クリープ]
JIS Z0235の圧縮クリープ試験に準拠して、縦横150×150mmの試験片について、指定時間経過時の圧縮クリープひずみを測定した。この圧縮クリープひずみについては、試験片の試験開始前の厚さを100としたときに、これに対する所定時間経過時の荷重下の試験片の厚さを残存率(%)として、かかる残存率を縦軸にとり、経過日数を横軸にとったグラフを図4に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
以上の評価試験から、実施例1,2の気泡シートは、従来の気泡シートと同様にポリエチレンを単独で用いた比較例1〜4に比べて、圧縮強度や圧縮クリープ特性が格段に向上していることがわかる。
このように、本発明の気泡シートは、他の諸物性を著しく損なうことなく、ポリエチレン系樹脂を単独で用いて製造された従来の気泡シートに比べて、圧縮強度や圧縮クリープ特性が格段に向上している。このため、被包装品に巻き付けて、保管、搬送する際に気泡が押し潰されたような状態となったとしても、気泡が破裂し難くなるとともに、気泡に封入された空気が抜け難くなり、長期にわたって緩衝性を発揮させることができる。
【0036】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の気泡シートは、気泡に封入された空気が抜け難く、長期にわたって緩衝性を発揮させることができ気泡シートとして種々の用途に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 気泡シート
2 キャップフィルム
2a 突起
3 バックフィルム
7 ライナーフィルム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に膨出する多数の突起が成形されたキャップフィルムに、少なくとも前記突起の開口部を封止するバックフィルムを積層してなる気泡シートであって、
ポリエチレン系樹脂をベース樹脂として、前記ポリエチレン系樹脂60〜90重量部、ポリエステル系樹脂10〜40重量部、相溶化剤1〜10重量部を配合してなる樹脂組成物により、前記キャップフィルム及び前記バックフィルムを形成したことを特徴とする気泡シート。
【請求項2】
前記相溶化剤が、前記ポリエチレン系樹脂に対する親和性を有するエチレンの繰り返し単位を有するとともに、前記ポリエステル系樹脂の末端水酸基又は末端カルボキシル基と反応可能な官能基を有する請求項1に記載の気泡シート。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−78871(P2013−78871A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218926(P2011−218926)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】