説明

水中探知装置

【課題】水底が検知されない場合であってもおおよその水深値を提示可能であり、ユーザの使い勝手を向上させることができる水中探知装置の提供。
【解決手段】水中から得た情報を表示部2に表示させることができる魚群探知機1は、水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信する送受波器4と、反射信号に基づいて水底Pを検知すると共に水深を算出する水底検出部26と、水底検出部26によって水底Pが検知されたか否か判定する水底検知判定部32と、水底検知判定部32によって水底検出部26が水底Pを検知していないと判断された場合に、水底検出部26による水深の算出値の前回値を水深値として表示部2に表示させるための水深表示画像生成部30、描画プロセッサ44およびビデオメモリ46とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中探知装置に関し、特に魚群探知に適用されると好適な水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中探知装置の一例として、超音波を探知信号として水中に送出すると共に、水中からの反射信号に基づいて魚群や水底の状態を表示部に可視化する魚群探知機が知られている。この種の魚群探知機では、一般に、水中からの反射信号の強度に応じて対象物である魚群や水底といった探知対象に色が割り当てられ、これらの探知対象は、表示部に識別し易い状態で表示される。この場合、超音波は、魚群のみならず水底の堆積層等においても反射するので、魚群探知機を用いて、水底に堆積したヘドロやその他の堆積物の堆積状況を調査することも可能である(例えば、特許文献1参照。)。また、水中探知装置としては、広いダイナミックレンジを有する受信部により水中からの反射信号を取得し、更に利得調整を実行することにより可視化範囲を調整可能なものも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−248082号公報
【特許文献2】特許第3234988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような従来の水中探知装置では、探知対象に合わせて感度や表示部の表示範囲が設定される。このため、感度や表示部の設定次第では、水底を良好に検知し得なくなることもある。また、水底は一様なものではなく、場所によって急峻に変化するものであり、急峻に変化している水底を良好に検知することは容易ではない。このように水底が良好に検知され得ない場合、従来の水中探知装置では、表示部の水深表示領域に、“XXXX”といった水底未検知を示す表示がなされたり、当該水底表示領域に何ら表示がなされず、空白のままとされたりしていた。しかしながら、表示部に水深値が何ら表示されないのでは、ユーザは、水中探知装置を用いているにも拘らず、水深がどの程度であるか把握し得ないことになってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、水底が検知されない場合であってもおおよその水深値を提示可能であり、ユーザの使い勝手を向上させることができる水中探知装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の水中探知装置は、水中から得た情報を表示部に表示させることができる水中探知装置において、水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信する送受信手段と、反射信号に基づいて水底を検知すると共に水深を算出する検出手段と、検出手段によって水底が検知されたか否か判定する判定手段と、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断された場合に、検出手段による水深の算出値の前回値を水深値として表示部に表示させることができる表示制御手段と、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断される回数をカウントするカウント手段と、表示部への水深値の表示態様を設定する設定手段と、を備える。表示制御手段は、カウント手段のカウント数が所定値以下の場合に、前回値を水深値として表示部に通常時の表示態様で表示させ、カウント手段のカウント数が所定値を上回った場合に、設定手段に水深値の表示態様が設定されていれば、前回値を水深値として表示部に通常時とは異なる表示態様で表示させる。
【0007】
この水中探知装置では、何らかの理由によって検出手段が水底を検知していないと判断された場合に、検出手段による算出値の前回値が水深値として表示部に表示される。これにより、実際には検出手段によって水底が検知されていない場合であっても、水中探知装置のユーザに対しておおよその水深値を提示することができるので、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【0008】
また、表示制御手段は、前回値を水深値として表示部に表示させる際に、当該水深値を通常時とは異なる表示態様で表示部に表示させると好ましい。
【0009】
このような構成を採用すれば、検出手段が水底を検知していないと判断された場合に表示部に表示される水深値は正確な値ではないが概ね実態を反映しているものであることをユーザに対して教示することができる。
【0010】
更に、本発明による水中探知装置は、表示部における水深値の表示態様を設定するための設定手段を更に備えるとよく、この設定手段を介して、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断された場合に表示部に水深値が表示されないように設定可能であると好ましい。
【0011】
このような構成のもとでは、水中探知装置のユーザは、自らの希望により、水底が検知されなかった場合に上記前回値を水深値として表示部に表示させるか否か選択することができる。従って、この水中探知装置によれば、様々なユーザのニーズに応えてユーザの使い勝手を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明による水中探知装置は、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断される回数をカウントするカウント手段を更に備えるとよく、表示制御手段は、カウント手段のカウント数が所定値を上回った場合に、前回値を水深値として表示部に通常時とは異なる表示態様で表示させると好ましい。
【0013】
このように、判定手段が水底未検知と判断する回数が所定値を上回った際に、水深の算出値の前回値を水深値として表示部に通常時とは異なる表示態様で表示させることにより、感度等の設定等に起因した水底未検知状態と、瞬間的な検出エラー等による水底未検知状態とを区別することが可能となるので、水深値の表示の信頼性を向上させることができる。
【0014】
本発明による他の水中探知装置は、水中から得た情報を表示部に表示させることができる水中探知装置において、水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信する送受信手段と、反射信号に基づいて水底を検知すると共に水深を算出する検出手段と、検出手段によって水底が検知されたか否か判定する判定手段と、検出手段による水深の算出値を水深値として表示部に表示させることができる表示制御手段と、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断された場合に表示部に水深値が表示されないように設定するための設定手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
この水中探知装置では、設定手段を介して、判定手段によって検出手段が水底を検知していないと判断された場合に表示部に水深値が表示されないように設定することができる。従って、この水中探知装置のユーザは、自らの希望により、水底が検知されなかった場合に水深値を表示部に表示させるか否か選択することができる。この結果、この水中探知装置によれば、ユーザの使い勝手を向上させることができる。また、この水中探知装置では、水深値の表示が希望されれば、検出手段によって水底が検知されていなくてもユーザに対して何らかの手法により得られるおおよその水深値を提示することができる。
【0016】
本発明による水中探知方法は、水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信して得た情報を表示部に表示させる水中探知方法において、反射信号に基づいて水底を検知し得ない場合に、水深の算出値の前回値を水深値として表示部に通常時とは異なる表示態様で表示させるステップを含むものである。
【0017】
本発明による水中探知方法は、水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信して得た情報を表示部に表示させる水中探知方法において、反射信号に基づいて水底を検知し得ない場合に、表示部に水深値を表示させるか、表示部に水深値が表示されないようにするか選択させるステップを含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水底が検知されない場合であってもおおよその水深値を提示可能であり、ユーザの使い勝手を向上させることができる水中探知装置の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による水中探知装置の一例を示すブロック構成図である。
【図2】図1の水中探知装置における魚群検出用の感度および表示対象レンジと底質検出用の感度および表示対象レンジとを説明するための模式図である。
【図3】図1の水中探知装置に含まれる表示部に水深値を表示させる手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の水中探知装置により水底が検知されている場合の表示部における表示状態を説明するための模式である。
【図5】図1の水中探知装置により水底が検知されていない場合の表示部における表示状態の一例を説明するための模式である。
【図6】図1の水中探知装置により水底が検知されていない場合の表示部における表示状態の他の例を説明するための模式である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明による水中探知装置の一例である魚群探知機を示すブロック構成図である。同図に示される魚群探知機1は、探知信号を水中に送出すると共に、水中からの反射信号に基づいて得た魚群や水底の状態を示す情報を表示部2に可視化するものである。魚群探知機1は、送受波器4と、送受波器4を駆動する送信部6と、送受波器4からの信号を増幅・検波する受信部8とを含む。なお、図1には、各1体の送受波器4、送信部6および受信部8が示されるが、魚群探知機1は、それぞれ複数の送受波器、送信部および受信部を含むものであってもよい。すなわち、探知信号としての超音波の周波数を高くすれば、音波の到達距離が短くなるが、物体の識別解像度は向上する。これに対して、超音波の周波数を低くすれば、物体の識別解像度は低下するが、音波の到達距離は長くなる。従って、探知対象魚種や操業水域の水深等に応じて、高周波、低周波双方の特長を生かすべく、水深探知装置1に対して、互いに異なる周波数に対応した送受波器、送信部および受信部の組が複数設けられてもよい。
【0022】
送受波器4は、電歪振動子、磁歪振動子等の振動子を含む音響電気変換器(トランスデューサ)であって、通常、魚群探知機1の適用対象である船舶等の船底に取り付けられる。送受波器4は、送信部6から供給された電気信号に基づいて探知信号としての超音波を水中に送出する。当該超音波は、魚群Fや水底Pと衝突してそれぞれ反射波となり、かかる反射波は、送受波器4により反射信号として受信される。そして、送受波器4は、受信した反射信号を電気信号に変換して受信部8に出力する。受信部8は、送受波器4からの電気信号を増幅・検波し、例えば対数増幅回路などにより信号に圧縮処理を施す。これにより、受信部8は、広範囲なダイナミックレンジを有することになる。
【0023】
図1に示されるように、送信部6は、中央処理装置(以下、「CPU」という)20に構築されたタイミング生成部22に接続されている。タイミング生成部22は、探知信号の送出を指示するための信号を送信部6に与えると共に、サンプリングクロック生成部10にサンプリング開始タイミングおよびサンプリング終了タイミングを示す信号を与える。また、受信部8は、A/D変換部12およびバッファメモリ14を介してCPU20に接続されている。A/D変換部12は、受信部8からの増幅された電気信号をサンプリングクロック生成部10により指定されたサンプリングタイミングでデジタル信号に変換し、デジタル信号に示される情報をバッファメモリ14に格納する。同時に、A/D変換部12は、当該デジタル信号を直接CPU20に対して供給する。なお、A/D変換部12によって生成されるデジタル信号は、反射信号の強度および探知信号を送信してからの到達時間とを情報として含むものである。
【0024】
ここで、音波は水中を伝搬する間に減衰してしまうものであり、その減衰量は、伝搬距離が長くなればなるほど大きくなる。従って、同一サイズの物体で反射した場合であっても反射部(音源)からの距離が長くなるほど反射波の強度は低下してしまう。このため、減衰の影響を抑えるべく、CPU20には、反射信号の到達時間に応じて受信部8における増幅率を変えるためのSTC(Sensitivity Time Control)信号生成部24が構築されている。このようなSTC処理を実行するために、タイミング生成部22は、STC信号生成部24にSTC起動タイミング信号を与える。STC信号生成部24は、ユーザによるSTC特性指示値を取得すると共に、タイミング生成部22により指定されたSTC起動タイミングでSTC信号を受信部8に与える。受信部8は、STC信号生成部24からのSTC信号に応じて、探知距離が短いほど増幅率を小さくし、探知距離が長いほど増幅率を大きくする。
【0025】
また、CPU20には、上述のタイミング生成部22およびSTC信号生成部24に加えて、水底検出部26、探知画像生成部28、水深表示画像生成部30および水底検知判定部32が構築されている。これらのタイミング生成部22、STC信号生成部24、水底検出部26、探知画像生成部28、水深表示画像生成部30および水底検知判定部32は、CPU20にプログラムを実行させることにより構築される機能ブロックであるが、これらの機能ブロックの少なくとも一部がハードウエアにより構築され得ることはいうまでもない。そして、CPU20には、当該CPU20のワークエリアとして利用されるメインメモリ40、上記プログラムを格納するプログラムメモリ42、描画プロセッサ44、ビデオメモリ46および操作部50が接続されている。
【0026】
水底検出部26は、バッファメモリ14に格納されている反射信号の強度情報に基づいて水底Pを検知し、反射信号の到達時間情報から水底Pの深度すなわち水深を算出する。そして、水底検出部26は、水深の算出値を示す信号を水深表示画像生成部30および水底検知判定部32に与える。また、探知画像生成部28は、A/D変換部12からのデジタル信号に示される情報に基づいて反射信号の強度や探知対象の深度を算出する。
【0027】
本実施形態では、探知画像生成部28の処理に関連して、図2に示されるように、水底Pを境界として魚群検出用の感度および表示対象レンジと、底質検出用の感度および表示対象レンジとがユーザによって独立に設定可能とされている。ただし、「感度」は、例えば受信部8のダイナミックレンジすなわち測定可能な強度範囲のうちの可視化対象とされる強度範囲における最低強度であり、「表示対象レンジ」は、可視化する強度の幅である。この場合、実際に可視化される反射波の強度範囲は、感度および表示対象レンジという2つのパラメータにより定まり、例えば感度をS、表示対象レンジをTとすれば、可視化の対象となる強度範囲Xは、
S≦X≦(S+T)
となる。以下、感度および表示対象レンジで決まる探知対象すなわち可視化すべき反射信号の強度範囲を「可視化レンジ」と称し、特に、魚群検出用の可視化レンジを「魚群レンジ」といい、底質検出用の可視化レンジを「底質レンジ」という。なお、本実施形態の魚群探知機1においては、感度および表示対象レンジをユーザが自在に設定できるようになっていれば、魚群検出用と底質検出用とで感度および表示対象レンジが同一とされてもよい。
【0028】
図2からわかるように、探知画像生成部28は、水底Pより上方の対象物すなわち魚群等からの反射信号を魚群レンジで選別し、水底Pより下方の対象物すなわち堆積層等からの反射信号を底質レンジで選別して探知ラインを表示部に表示させるための情報を生成する。例えば、それぞれ異なる魚群からの第1魚群反射信号A1、第2魚群反射信号A2および第3魚群反射信号A3は、魚群レンジのもとで可視化対象が選別され、図2の例では、魚群レンジ内にある第2魚群反射信号A2および第3魚群反射信号A3が表示対象となる。また、堆積層からの第1水底反射信号B1ならびに第2水底反射信号B2は、底質レンジのもとで可視化対象が選別され、図2の例では、底質レンジ内にある第1水底反射信号B1および第2水底反射信号B2の双方が表示対象となる。
【0029】
そして、探知画像生成部28は、第2魚群反射信号A2および第3魚群反射信号A3の強度に応じて探知対象である魚群等に対して表示部2における表示色を割り当てる。同様に、探知画像生成部28は、第1水底反射信号B1および第2水底反射信号B2の強度に応じて探知対象である堆積物等にも表示部2における表示色を割り当てる。
【0030】
探知画像生成部28は、深度に応じた探知ラインの表示位置および強度に応じた探知ラインの表示色を決定すると共に、探知ライン用の情報を生成し、生成した探知ラインに関連する画像情報を描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納する。そして、描画プロセッサ44は、ビデオメモリ46に格納された情報に基づいて探知ラインを順番に表示部2に並べて表示させる。
【0031】
一方、水深表示画像生成部30は、水底検出部26からの信号等に基づいて、表示部2に水深値を予め定められた態様またはユーザにより指定された態様で表示させるための画像情報を生成し、生成した画像情報を描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納する。また、水底検知判定部32は、水底検出部26からの信号に示される水深の算出値と、ユーザによって設定された可視化レンジに応じて定まる閾値とを比較することにより、水底検出部26によって水底Pが検知されているか否か判定する。
【0032】
水底検知判定部32は、図1に示されるように、水深表示画像生成部30に接続されており、その判定結果に応じた指令信号を水深表示画像生成部30に与える。また、水底検知判定部32は、水底検出部26によって水底Pが検知されたと判断すると、水底検出部26による水深の算出値をメインメモリ40の所定領域に水深値として格納する。一方、水底検知判定部32は、水底検出部26によって水底Pが検知されていないと判断すると、メインメモリ40の所定領域に格納されている水深値を前回値に保持する。更に、水底検知判定部32には、図1に示されるように、カウンタ36が接続されている。水底検知判定部32は、水底検出部26によって水底Pが検知されていないと判断すると、カウンタ36を「1」だけインクリメントする。
【0033】
そして、CPU20に接続された操作部50には、図1に示されるように、レンジ感度調整部52、表示態様設定部54およびSTC調整部56が含まれる。レンジ感度調整部52は、例えばノブ、スイッチ、ボリウム等の入力インターフェイスを含み、魚群検出用の感度および表示対象レンジと、底質検出用の感度および表示対象レンジとをユーザから受け付けて探知画像生成部28および水底検知判定部32に出力する。表示態様設定部54は、キーボードやマウスといった入力インターフェイスを含み、水深値の表示/非表示や水深値の表示態様の指定をユーザから受け付けて水深表示画像生成部30に出力する。また、STC調整部56は、STC特性指示値の指定をユーザから受け付けてSTC信号生成部24に出力する。
【0034】
さて、上述の魚群探知機1では、探知対象に合わせて感度、STCおよび表示対象レンジや表示部2の表示範囲等を設定することができるが、感度、STC等や表示部2の設定次第では、水底検出部26により水底Pが良好に検知されなくなることもある。また、水底Pは一様なものではなく、場所によって急峻に変化するものであり、急峻に変化している水底Pを良好に検知することは容易ではない。このように水底Pが良好に検知され得ない場合、従来の水中探知装置では、表示部の水深表示領域に、“XXXX”といった水底未検知を示す表示がなされたり、当該水底表示領域に何ら表示がなされず、空白のままとされたりしていた。
【0035】
しかしながら、表示部に水深値が何ら表示されないのでは、ユーザは、魚群探知機を用いているにも拘らず、水深がどの程度であるか把握し得ないことになってしまう。このため、本実施形態の魚群探知機1では、図3に示されるルーチンが実行され、水底検出部26により水底Pが検知されない場合であってもおおよその水深値をユーザに提示できるようになっている。ただし、従来の水中探知装置に慣れており、従前の表示態様を好むユーザにも配慮して、本実施形態の魚群探知機1では、上述の表示態様設定部54を介して、水底検出部26により水底Pが検知されない場合の水深値の表示態様をユーザが自在に設定できるようになっている。
【0036】
図3は、魚群探知機1の表示部2に水深値を表示させる手順を説明するためのフローチャートである。図3に示されるルーチンは、上述のCPU20等によって繰り返し実行されるものである。
【0037】
送受波器4から探知信号としての超音波が水中に送出されて魚群探知機1の作動が開始されると、CPU20とバッファメモリ14とには、反射信号の強度および探知信号を送信してからの到達時間といった情報が与えられるようになる。そして、水底検出部26は、バッファメモリ14に格納されている反射信号の強度情報に基づいて水底Pを検知し、反射信号の到達時間情報から水底Pの深度すなわち水深を算出する(S10)。水底検出部26は、水深の算出値を示す信号を水底検知判定部32に与え、水底検知判定部32は、水底検出部26からの信号に示される値と、ユーザによって設定された可視化レンジに応じて定まる閾値とを比較することにより、水底検出部26によって水底Pが検知されているか否か判定する(S12)。
【0038】
水底検知判定部32は、水底検出部26によって水底Pが検知されていると判断すると(S12におけるYes)、カウンタ36をリセットした上で(S13)、水底検出部26により算出された水深の今回値をメインメモリ40の所定領域に水深値Dとして格納する(S14)。更に、水底検知判定部32は、水深表示画像生成部30に対して、水底検出部26による水深の算出値を予め定められた通常時の態様で表示部2に表示させるための指令信号を与える。水底検知判定部32からの指令を受けた水深表示画像生成部30は、水底検出部26からの信号に基づいて、表示部2に水深値(今回値)を予め定められた通常時の態様で表示させるための画像情報を生成し、生成した水深値に関連する画像情報を描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納する。
【0039】
これにより、描画プロセッサ44によりビデオメモリ46内の画像情報が処理されると、表示部2の水深表示領域2aには、図4に示されるように、探知ラインLの位置に対応した水深値として、S10にて水底検出部26による水深の算出値すなわち今回値が予め定められた通常時の態様である例えば白色文字で表示されることになる(S16)。そして、S16の処理が実行されると、上述のS10以降の処理が繰り返し実行されることになる。なお、通常時の表示態様は、上述のものに限られず、任意に設定され得る。
【0040】
一方、S12にて、水底検出部26によって水底Pが検知されていないと判断すると(S12におけるNo)、水底検知判定部32は、メインメモリ40の所定領域に格納されている水深値Dを前回値に保持する(S18)。更に、水底検知判定部32は、カウンタ36を「1」だけインクリメントすると共に(S20)、カウンタ36のカウント値が予め定められている値Xを上回っているか否か判定する(S22)。なお、値Xは正の整数であり、本実施形態では、X=8とされている。
【0041】
S22にて、カウンタ36のカウント値が値Xを上回っていないと判断すると(S22におけるNo)、水底検知判定部32は、水深表示画像生成部30に対して、メインメモリ40に格納されている水深値Dすなわち水底検出部26による水深の算出値の前回値を上述の通常時の態様で表示部2に表示させるための指令信号を与える。水底検知判定部32からの指令を受けた水深表示画像生成部30は、メインメモリ40から水深値D(前回値)を読み出し、表示部2に水深値Dを上述の通常時の態様で表示させるための画像情報を生成する。水深表示画像生成部30により生成された水深値に関連する画像情報は、描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納される。
【0042】
これにより、描画プロセッサ44によってビデオメモリ46内の画像情報が処理されると、表示部2の水深表示領域2aには、探知ラインLの位置に対応した水深値として、水底検出部26による水深の算出値の前回値が通常時の態様である例えば白色文字で表示されることになる(S24)。S24の処理が実行されると、上述のS10以降の処理が繰り返し実行されることになる。
【0043】
このように、魚群探知機1では、何らかの理由によって水底検出部26が水底Pを検知し得なかったと判断された場合に、水底検出部26による水深の算出値の前回値が水深値として表示部2の水深表示領域2aに表示される。この結果、魚群探知機1によれば、実際には水底検出部26によって水底Pが検知されていない場合であっても、ユーザにおおよその水深値を提示して、その使い勝手を向上させることができる。
【0044】
また、S22にて、カウンタ36のカウント値が値Xを上回っていると判断すると(S22におけるYes)、水底検知判定部32は、水深表示画像生成部30に対して、メインメモリ40に格納されている水深値Dすなわち水底検出部26による水深の算出値の前回値をユーザによって指定された態様で表示部2に表示させるための指令信号を与える。この場合、水底検知判定部32からの指令を受けた水深表示画像生成部30は、まず、水底検出部26によって水底Pが検知されなかった場合に表示部2に水深値を表示させるようにユーザにより設定されているか否か判定する(S26)。
【0045】
S26にて、水底検出部26によって水底Pが検知されなかった場合に表示部2に水深値を表示させるようにユーザにより設定されていると判断した場合(S26におけるYes)、水底検知判定部32は、水深表示画像生成部30に対して、メインメモリ40に格納されている水深値Dすなわち水底検出部26による水深の算出値の前回値をユーザにより指定された態様で表示させるための指令信号を与える。水底検知判定部32からの指令を受けた水深表示画像生成部30は、メインメモリ40から水深値D(前回値)を読み出し、表示部2に水深値(前回値)をユーザにより指定された態様で表示させるための画像情報を生成する。水深表示画像生成部30によって生成された水深値に関連する画像情報は、描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納される。ここで、本実施形態では、水底未検知時の水深値の表示態様として、水深値を着色表示させる態様と、水深値を点滅表示させる態様との何れかをユーザが表示態様設定部54を介して選択できるようになっている。
【0046】
これにより、描画プロセッサ44によってビデオメモリ46内の画像情報が処理されると、表示部2の水深表示領域2aには、図5に示されるように、探知ラインLの位置に対応した水深値として、水底検出部26による水深の算出値の前回値が例えば水底未検出時の一表示態様である着色文字(例えば、赤色文字)で表示されることになる(S28)。そして、S28の処理が実行されると、上述のS10以降の処理が繰り返し実行されることになる。
【0047】
このように、魚群探知機1では、カウンタ36のカウント数、すなわち、水底未検知と判断される回数が値Xを上回った際に、水深の算出値の前回値が水深値として表示部2の水深表示領域2aに通常時とは異なる表示態様で表示される。この結果、魚群探知機1によれば、ユーザに対しておおよその水深値を提示すると共に、表示部2に表示される水深値は正確な値ではないが概ね実態を反映しているものであることをユーザに対して教示することが可能となり、ユーザの使い勝手を向上させることができる。また、水底未検知と判断される回数が値Xを上回った際に、表示部2における水深値の表示態様を通常時とは異ならせることにより、感度等の設定等に起因した水底未検知状態と、瞬間的な検出エラー等による水底未検知状態とを区別することが可能となるので、水深値の表示の信頼性を向上させることができる。
【0048】
これに対して、S26にて、水底検出部26によって水底Pが検知されなかった場合に表示部2に水深値を表示させないようにユーザにより設定されていると判断した場合(S26におけるNo)、水底検知判定部32は、水深表示画像生成部30に対して、表示部2に水深値Dが表示されないようにするための指令信号を与える。水底検知判定部32からの指令を受けた水深表示画像生成部30は、ユーザの選択に応じて表示部2に水深値Dが表示されないように画像情報を生成し、画像情報を描画プロセッサ44を介してビデオメモリ46に格納する。本実施形態では、水底未検知時に水深値を表示させない場合、水深表示領域2aに「XXXX」あるいは「?」といった記号または文字を表示させる態様と、水深表示領域2aに文字等を何ら表示させない態様との何れかをユーザが表示態様設定部54から選択できるようになっている。
【0049】
これにより、描画プロセッサ44によってビデオメモリ46内の画像情報が処理されると、表示部2の水深表示領域2aには、探知ラインLの位置に対応した水深値が表示されず、水深表示領域2aは、図6に示されるように例えば空白のままとされる(S30)。そして、S30の処理が実行されると、上述のS10以降の処理が繰り返し実行されることになる。
【0050】
このように、魚群探知機1のユーザは、自らの希望により、水底Pが検知されなかった場合に水底検出部26による水深の算出値の前回値を水深値として表示部2に表示させるか否か選択することができる。従って、魚群探知機1によれば、従前の表示態様を好むユーザを含む様々なユーザのニーズに応えてユーザの使い勝手を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 魚群探知機(水中探知装置)、2 表示部、2a 水深表示領域、4 送受波器、6 送信部、8 受信部、10 サンプリングクロック生成部、12 A/D変換部、14 バッファメモリ、20 中央処理装置(CPU)、22 タイミング生成部、24 STC信号生成部、26 水底検出部、28 探知画像生成部、30 水深表示画像生成部、32 水底検知判定部、36 カウンタ、40 メインメモリ、42 プログラムメモリ、44 描画プロセッサ、46 ビデオメモリ、50 操作部、52 レンジ感度調整部、54 表示態様設定部、56 STC調整部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中から得た情報を表示部に表示させることができる水中探知装置において、
水中に探知信号を送出すると共に水中からの反射信号を受信する送受信手段と、
前記反射信号に基づいて水底を検知すると共に水深を算出する検出手段と、
前記検出手段によって水底が検知されたか否か判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記検出手段が水底を検知していないと判断された場合に、前記検出手段による水深の算出値の前回値を水深値として前記表示部に表示させることができる表示制御手段と、
前記判定手段によって前記検出手段が水底を検知していないと判断される回数をカウントするカウント手段と、
前記表示部への水深値の表示態様を設定する設定手段と、を備え、
前記表示制御手段は、
前記カウント手段のカウント数が所定値以下の場合に、前記前回値を水深値として前記表示部に通常時の表示態様で表示させ、
前記カウント手段のカウント数が前記所定値を上回った場合に、前記設定手段に水深値の表示態様が設定されていれば、前記前回値を水深値として前記表示部に通常時とは異なる表示態様で表示させることを特徴とする水中探知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−47961(P2011−47961A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271460(P2010−271460)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2005−32593(P2005−32593)の分割
【原出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】