説明

水処理設備の制御装置

【課題】複数の各系列の使用時間の均一化を図ることができ、各系列のろ布の交換を同時期に行える水処理設備の制御装置を提供することである。
【解決手段】起動順判定部32は、各系列のうち自己の系列のろ過器に工業用水が通水された通水時間が最も長いとき、通水時間が同じであるときは自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が最も長いとき、経過時間が同じであるときは予め定めた順序で自己の系列が起動すべき順番になったと判定し、起動すべき順序となったときは、ろ過水製造制御部35は自己の系列のろ過水の製造制御を定収時間になるまで行い、その後に、洗浄制御部37は自己の系列の通水時間をリセットして自己のろ過器19の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始し、他の系列に自己の通水時間及び洗浄後の経過時間を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水である工業用水を水処理して発電所で使用する所内用水や純水を得る水処理設備を制御する水処理設備の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所等の発電所では、工業用水が原水として供給され、工業用水を水処理設備で水処理して所内用水や純水を得るようにしている。例えば、ボイラに使用する水は純水を利用しており、純水は周辺地域から供給を受けた工業用水を水処理設備で純水に変換して使用する。
【0003】
水処理設備は、工業用水をろ過器でろ過して得られたろ過水をろ過水タンクに貯蔵し、ろ過水タンクに貯蔵されたろ過水を純水装置で純水にする系列で構成され、通常、2系列を有している。すなわち、使用している系列と予備の系列を有し、使用している系列に異常が生じた場合などに、予備の系列に切り替えて使用できるようにしている。また系列の切り替えは、異常がなくても定期的に切り替え各系列の点検や修理をしたり、一つの系列に使用が偏らないように各系列の使用時間の均一化も図っている。
【0004】
このように、2系列を交互に切り替えて利用することになるので、各系列の使用時間の均一化を容易に図ることができる。また、通水時間が所定時間に達したとき、もしくは通水量が所定量に達した時点で待機していた別系列に切り替えて、ろ過器のろ布の洗浄や純水装置の樹脂の再生工程に入るので、消耗材であるろ布や樹脂も均等に劣化し、定期的な交換インターバルを設定できる。なお、通水時間が所定時間になった系列は、ろ過器のろ布の洗浄や純水装置の樹脂の再生工程に入り、ろ布の洗浄後は通水時間はリセットされる。
【0005】
ここで、水処理装置として、ろ過用カートリッジの交換時期を、積算流量や通水時間、経過時間などにより総合的に判断でき、どのような使用環境においても適正な交換時期をユーザに提示することができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−248243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、2系列以上の系列を有した水処理設備では、各系列の使用時間の均一化が図れない場合がある。2系列の水処理設備の場合には、各系列の運転の優先順位の考え方がなく、運転中の系列の通水時間が所定時間に達したとき、もしくは通水量が所定量に達した時点で待機していた別系列に切り替えれば、容易に各系列の使用時間の均一化が図れたが、例えば、3系列の水処理設備の場合には、待機している系列が2系列のときは優先順位を決めておかないと、いずれかの系列に偏ってしまうおそれがある。
【0008】
3系列の水処理設備とするのは、将来の水使用量を勘案して多くの純水を得られるようにするためである。常時、2系列で運転し1系列は予備の系列である場合には、通水時間が所定時間になった系列は予備の系列に切り替えられるので、各系列の使用時間の均一化が図れる。
【0009】
現状では、水使用量がそれほど多くなく、3系列の水処理設備であっても、1系列の運転で純水の使用量を賄うこともあるので、1系列のみの運転で2系列が待機している状態がある。初期の設計では、水製造量が1系列の通水で賄える場合には、番号の若い順で系列を優先起動するようにしていた。従って、まず、No.1系列が優先的に起動し、No.1系列の通水時間が所定時間に達して停止すると、次にNo.2系列が起動する。そして、No.2系列の通水時間が所定時間に達して停止すると、停止中の系列はNo.1系列及びNo.3系列であるので、若番のNo.1系列が起動するロジックとなっていた。
【0010】
そのため、No.1系列とNo.2系列は優先的に通水されるため、ろ過器のろ布の消耗が進むがNo.3系列のろ布は消耗しない。このことから、No.3系列の消耗品であるろ布の交換インターバルの予測ができず、まだ交換する必要が無い段階でも交換される可能性があり、そうするとコストが嵩む。一方、ろ布の交換インターバルをNo.3系列の交換インターバルに合わせるとNo.1系列とNo.2のろ布の消耗が進み、ろ過水の水質が悪くなるなど性能に悪影響を及ぼす。
【0011】
本発明の目的は、複数の各系列の使用時間の均一化を図ることができ、各系列のろ布の交換を同時期に行える水処理設備の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る水処理設備の制御装置は、原水である工業用水をろ過して得られたろ過水をろ過水タンクに貯蔵するろ過器と、前記ろ過水タンクに貯蔵されたろ過水を純水にする純水装置とを有した系列を複数備えた水処理設備を制御する水処理設備の制御装置において、前記水処理設備の前記ろ過水を製造する工業用水処理装置を制御する前記系列毎に設けられた工業用水処理装置マスタは、自己の系列のろ過器に工業用水を通水した通水時間が他の系列の通水時間よりも長いとき、自己の系列の通水時間と他の系列の通水時間とが同じであるときは自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間よりも長いとき、自己の系列の前記経過時間と他の系列の前記経過時間とが同じであるときは、予め定めた順序で自己の系列が起動すべき順番になったと判定する起動順判定部と、前記起動順判定部で自己の系列が起動すべき順番になったと判定されたときは工業用水を自己の系列のろ過器に通水してろ過水の製造制御を開始するろ過水製造制御部と、前記ろ過水製造制御部により自己の系列のろ過水製造制御が開始されたときは自己の系列のろ過器に工業用水が通水される通水時間を演算する通水時間演算部と、前記ろ過器を洗浄制御する洗浄制御部と、自己の系列の起動後や洗浄後からの経過時間及び自己の系列の通水時間を他の系列の起動順判定部に送信する送信部とを備え、前記ろ過水製造制御部は、前記通水時間演算部で演算された自己の系列の通水時間が予め定めた定収時間となったときは自己の系列の運転を停止し、前記洗浄制御部は、前記ろ過水製造制御部が自己の系列を運転停止したときは自己の系列の通水時間をリセットして前記ろ過器の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係る水処理設備の制御装置は、請求項1の発明において、前記工業用水の濁度を監視する原水濁度監視装置と、前記定収時間を設定変更するための設定値変更部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る水処理設備の制御装置は、請求項1または2の発明において、予め記憶した前記ろ過器のろ布の耐用時間から前記通水時間の積算値を減算して前記ろ過器のろ布の使用可能な残存時間を演算する残存時間演算部を設け、前記ろ過水製造制御部は、自己の系列の残存時間が他の系列の残存時間よりも長いときは、自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間より短くても、自己の系列を優先して起動することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明に係る水処理設備の制御装置は、請求項3の発明において、
前記原水の濁度と前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから各系列の前記ろ過器のろ布の耐用時間を演算する耐用時間予測演算部を設け、前記残存時間演算部は、前記耐用時間予測演算部で予測演算された前記ろ過器のろ布の耐用時間を用いて前記ろ過器のろ布の使用可能な残存時間を演算することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明に係る水処理設備の制御装置は、請求項1または2の発明において、前記原水の濁度と前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから各系列の前記ろ過器のろ布の耐用時間を演算する耐用時間予測演算部と、前記耐用時間予測演算部で演算された前記ろ過器のろ布の耐用時間に基づいて前記定収時間を変更する定収時間変更部とを設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明に係る水処理設備の制御装置は、請求項1の発明において、前記系列が起動される度に前記通水時間演算部で演算された通水時間を変数とした前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度カーブを作成する濁度カーブ作成部と、自己の系列の通水時間が前記濁度カーブ作成部で作成された濁度カーブでの予め定めた濁度になるまでの通水時間となったときは前記ろ過器の洗浄タイミングであると判定する洗浄タイミング判定部とを備え、前記ろ過水製造制御部は、前記通水時間演算部で演算された通水時間が予め定めた定収時間となったときに代えて、前記洗浄タイミング判定部で判定された洗浄タイミングとなったときに自己の系列の運転を停止し、 前記洗浄制御部は、前記ろ過水製造制御部が自己の系列を運転停止したときは自己の系列の通水時間をリセットして前記ろ過器の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、自己の系列を起動するとき、自己の系列の通水時間が他の系列の通水時間よりも長いとき、自己の系列の通水時間が他の系列の通水時間と同じであるときは自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間よりも長いとき、自己の系列の前記経過時間が他の系列の前記経過時間と同じであるときは、予め定めた順序で自己の系列を起動するので、3系列以上の場合であっても各系列の運転を均一化できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、工業用水の濁度に応じて定収時間を設定できるので、ろ過器のろ布の洗浄を工業用水の濁度に応じて行うことができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ろ布の耐用時間から通水時間の積算値を減算してろ布の使用可能な残存時間を演算し、自己の系列の残存時間が他の系列の残存時間よりも長いときは、自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間より短くても、自己の系列を優先して起動するので、各系列のろ布の交換時期を同一時期にできる。
【0021】
請求項4の発明によれば、ろ布の耐用時間を原水である工業用水の濁度とろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから演算するので、ろ布の耐用時間をより精度良く得ることができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、ろ布の耐用時間を原水である工業用水の濁度とろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから演算し、その演算したろ布の耐用時間に基づいて定収時間を変更するので、各系列のろ布の交換時期を同一時期にできる。
【0023】
請求項6の発明によれば、系列が起動される度にろ過水の濁度カーブを作成し、自己の系列の通水時間が濁度カーブでの予め定めた濁度になるまでの通水時間となったときはろ過器の洗浄タイミングであると判定し、その洗浄タイミングで系列を洗浄するので、ろ過水の濁度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図。
【図3】本発明の第1実施形態における各系列の起動順判定部による系列の起動制御内容の一例を示すタイムチャート。
【図4】本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの他の一例を示す構成図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図。
【図7】本発明の第3実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図。
【図10】本発明の第5実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図。
【図11】本発明の第5実施形態における濁度カーブ作成部で作成されるろ過水の濁度カーブの一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図である。水処理設備は、原水である工業用水を水処理して純水を得る設備である。周辺地域から供給を受けた工業用水は工業用水地下水槽11に貯蔵され、工業用水地下水槽11から3系列の水処理系列で純水に変換され、変換された純水は純水タンク12に貯蔵される。
【0026】
各系列の水処理系列は、工業用水処理装置13、ろ過水装置14、純水装置15からなる。工業用水処理装置13は、工業用水汲上ポンプ16a〜16c、凝集反応槽17a〜17c、工業用水ろ過器入口調節弁18a〜18c、ろ過器19a〜19cからなり、ろ過水装置14は、ろ過器19a〜19cで得られたろ過水を貯蔵するろ過水地下水槽20、ろ過水汲上ポンプ21a〜21c、ろ過水タンク22からなり、純水装置15は、純水装置送水ポンプ23a〜23c、純水装置入口調節弁24a〜24c、樹脂塔25a、25b、25cからなる。
【0027】
いま、工業用水汲上ポンプ16a〜樹脂塔25aの系列をNo.1系列、工業用水汲上ポンプ16b〜樹脂塔25bの系列をNo.2系列、工業用水汲上ポンプ16c〜樹脂塔25cの系列をNo.3系列とする。
【0028】
工業用水汲上ポンプ16a〜16cは、工業用水地下水槽11からの工業用水を工業用水ろ過器入口調節弁18a〜18cを介して凝集反応槽17a〜17cに供給するものである。
【0029】
凝集反応槽17a〜17cは工業用水に含まれる有機物、無機物あるいは細菌やばい菌などを凝集剤の添加などで凝集し、ろ過器19a〜19cは凝集反応槽17a〜17cで凝集された凝集物をろ布で取り除き、ろ布でろ過されたろ過水をろ過水地下水槽20に貯蔵する。ろ過水汲上ポンプ21a〜21cは、ろ過水地下水槽20に貯蔵されたろ過水をろ過水タンク22に貯蔵する。
【0030】
ろ過水タンク22に貯蔵されたろ過水は、純水装置送水ポンプ23a〜23c及び純水装置入口調節弁24a〜24cを介して樹脂塔25a〜25cに導かれる。樹脂塔25a〜25cは、ろ過水タンク22に貯蔵されたろ過水を樹脂を通して純水にし純水タンク12に貯蔵する。純水タンクから12は、図示省略の純水送水ポンプにより純水を必要とするユニットに導かれる。
【0031】
水処理設備の各系列は、制御装置26により制御される。制御装置26は、No.1マスタ27a〜No.3マスタ27c、ろ過水地下水槽マスタ28を有する。そして、No.1マスタ27aはNo.1工業用水処理装置マスタ29a及びNo.1純水装置マスタ30aを有し、No.2マスタ27bはNo.2工業用水処理装置マスタ29b及びNo.2純水装置マスタ30bを有し、No.3マスタ27cはNo.3工業用水処理装置マスタ29c及びNo.3純水装置マスタ30cを有する。
【0032】
No.1マスタ27aのNo.1工業用水処理装置マスタ29aは、No.1系列の工業用水処理装置13の工業用水汲上ポンプ16aや工業用水ろ過器入口調節弁18aを操作してNo.1系列の工業用水処理装置13の制御を行うものである。No.1マスタ27aのNo.1純水装置マスタ30aは、No.1系列の純水装置15の純水装置送水ポンプ23aや純水装置入口調節弁24aを操作してNo.1系列の純水装置15の制御を行うものである。
【0033】
No.2マスタ27bのNo.2工業用水処理装置マスタ29bは、No.2系列の工業用水処理装置13の工業用水汲上ポンプ16bや工業用水ろ過器入口調節弁18bを操作してNo.2系列の工業用水処理装置13の制御を行うものである。No.2マスタ27bのNo.2純水装置マスタ30bは、No.2系列の純水装置15の純水装置送水ポンプ23bや純水装置入口調節弁24bを操作してNo.2系列の純水装置15の制御を行うものである。
【0034】
同様に、No.3マスタ27cのNo.3工業用水処理装置マスタ29cは、No.3系列の工業用水処理装置13の工業用水汲上ポンプ16cや工業用水ろ過器入口調節弁18cを操作してNo.3系列の工業用水処理装置13の制御を行うものである。No.3マスタ27cのNo.3純水装置マスタ30cは、No.3系列の純水装置15の純水装置送水ポンプ23cや純水装置入口調節弁24cを操作してNo.3系列の純水装置15の制御を行うものである。
【0035】
また、No.1マスタ27aのNo.1工業用水処理装置マスタ29a、No.2マスタ27bのNo.2工業用水処理装置マスタ29b、No.3マスタ27cのNo.3工業用水処理装置マスタ29cには、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水濁度が入力され、各系列の運転制御に利用される。例えば、ろ過水濁度が所定値以上となるとすべての系列を停止するようにしている。これは、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水濁度が所定値以上となったときは、ろ過器19a〜19cをいくら動かしても無駄であるとの考えによるものである。
【0036】
このろ過水濁度計31は、各系列のろ過器19a〜19cでろ過したろ過水を合流させた配管ラインに設けられている。従って、ろ過水濁度計31はろ過器19a〜19cのろ過水の濁度を個別に検出するのではなく、運転中の系列のろ過器19でろ過し合流したろ過水の濁度を検出することになる。
【0037】
ろ過水地下水槽マスタ28は、ろ過水地下水槽20からろ過水タンク22にろ過水を送水制御するものである。ろ過水地下水槽20の水位が送水開始水位以上となると、ろ過水汲上ポンプ21a〜21cを起動してろ過水タンクに送水し、ろ過水地下水槽20の水位が送水停止水位以下となると、ろ過水汲上ポンプ21a〜21cを停止してろ過水タンクへの送水を停止するものである。また、ろ過水タンク22の水位が所定水位以上となったときは、ろ過水汲上ポンプ21a〜21cを停止する。
【0038】
次に、水処理設備の各系列の起動指令は、上位装置から制御装置26のNo.1マスタ27a〜No.3マスタ27cのNo.1工業用水処理装置マスタ29a〜No.3工業用水処理装置マスタ29cに入力される。No.1マスタ27a〜No.3マスタ27cは、同一構成であるので、以下の説明では、No.1系列のNo.1マスタ27aの動作について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタ27aのNo.1工業用水処理装置マスタ29aの一例を示す構成図である。いま、上位装置からの起動指令はNo.1系列〜No.3系列のうちの1系列のみの起動指令であるとし、No.1系列〜No.3系列の起動順序はNo.1系列が1番目であるとする。
【0039】
図2に示すように、上位装置からの起動指令は、No.1の工業用水処理装置マスタ29aの起動順判定部32及び起動順判定時間記憶部34に入力される。起動順判定時間記憶部34は起動指令を入力すると、起動指令からの経過時間をカウントしその経過時間を記憶する。また、後述のろ過器19aを洗浄制御する洗浄制御部37の洗浄後からの経過時間をカウントし、その経過時間を記憶する。なお、起動指令からの経過時間は、ろ過水製造制御部35が自己の系列(No.1系列)のろ過水の製造制御を開始したときはリセットされる。
【0040】
起動順判定部32は、No.1系列〜No.3系列のうちの自己の系列(No.1系列)が起動の順番になったことを判定するものである。その起動の順番になったことの判定は、起動指令による起動すべき系列の数、自己の系列(No.1系列)のろ過器19aに工業用水が通水された通水時間、他の系列(No.2、3系列)のろ過器19b、19cに工業用水が通水された通水時間、自己の系列(No.1系列)の起動後または洗浄後からの経過時間、他の系列(No.1、2系列)の起動後または洗浄後からの経過時間に基づいて、自己の系列(No.1系列)が起動すべき順番になったか否かで判定する。
【0041】
すなわち、起動順判定部32は、自己の系列(No.1系列)のろ過器19aに工業用水が通水された通水時間を通水時間記憶部33から入力するとともに、自己の系列(No.1系列)の起動後または洗浄後からの経過時間を起動順判定時間記憶部34から入力する。
【0042】
また、他の系列(No.2系列、No.3系列)のNo.2工業用水処理装置マスタ29b、No.3工業用水処理装置マスタ29cから、ろ過器19b、19cに工業用水が通水された通水時間、No.2系列、No.3系列の起動後または洗浄後からの経過時間を入力する。さらに、他の系列が(No.2系列、No.3系列)運転中か停止中かの情報も入力する。
【0043】
そして、例えば、各系列(No.1系列〜No.3系列)のろ過器19a〜19cに工業用水が通水された通水時間が長い順で起動するようにする。起動指令が1系列のみのときは通水時間が最も長い系列が起動される。起動指令が2系列のときは、通水時間が最も長い系列及びその次に通水時間が長い系列が起動される。そして、通水時間が同じである場合には、各系列(No.1系列〜No.3系列)の起動後または洗浄後からの経過時間が長い順に起動するようにする。さらに、起動後または洗浄後からの経過時間も同じである場合には若番を起動するようにする。
【0044】
ろ過水製造制御部35は、起動順判定部32で自己の系列が起動すべき順番になったと判定されたときは、工業用水を自己の系列(No.1系列)のろ過器19aに通水してろ過水の製造制御を開始する。すなわち、No.1系列の工業用水処理装置13の工業用水汲上ポンプ16a及び工業用水ろ過器入口調節弁18aを操作して、No.1系列の工業用水処理装置13のろ過器19aに通水してろ過水の製造制御を行う。
【0045】
通水時間演算部36は、ろ過水製造制御部35により自己の系列(No.1系列)のろ過水製造制御が開始されたときは、自己の系列(No.1系列)のろ過器19aに工業用水が通水される通水時間を演算開始し、その通水時間を通水時間記憶部33に記憶する。
【0046】
ここで、ろ過水製造制御部35は、通水時間演算部36で演算され通水時間記憶部33に記憶された自己の系列(No.1系列)の通水時間と定収時間設定部38に予め設定された定収時間とを比較し、自己の系列(No.1系列)の通水時間が予め定めた定収時間となったときは、自己の系列(No.1系列)の運転を停止し、洗浄制御部37を起動して、ろ過器19aを洗浄制御を開始する。この場合、通水時間記憶部33に記憶された自己の系列(No.1系列)の通水時間をリセットする。また、洗浄制御部37は、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始し、記憶順判定時間記憶部34に記憶する。
【0047】
一方、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水の濁度は濁度判定部39に入力され、濁度判定部39は、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水の濁度が所定値以上となったか否かを判定し、その判定結果をろ過水製造制御部35に入力する。ろ過水製造制御部35は、濁度判定部39にて、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水の濁度が所定値以上となったと判定されたときは、自己の系列(No.1系列)の運転を停止する。この場合は、ろ過水製造制御部35は洗浄制御部37を起動しない。つまり、ろ過器19aの洗浄は行わない。これは、前述したように、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水濁度が所定値以上となったときは、ろ過器19a〜19cをいくら動かしても無駄であるとの考えによるものである。
【0048】
また、送信部40は、ろ過水製造制御部35の制御状態{自己の系列(No.1系列)が運転中か停止中かの状態}、起動順判定時間記憶部34に記憶された自己の系列(No.1系列)の起動後からの経過時間、洗浄後からの経過時間、及び通水時間記憶部33に記憶された自己の系列(No.1系列)の通水時間を、他の系列のNo.2工業用水処理装置マスタ29b、No.3工業用水処理装置マスタ29cに送信する。
【0049】
他の系列のNo.2工業用水処理装置マスタ29b、No.3工業用水処理装置マスタ29cでは、これら自己以外の他の系列の制御状態、起動後からの経過時間、洗浄後からの経過時間や通水時間を起動順判定部32で受信する。
【0050】
これにより、No.2工業用水処理装置マスタ29b、No.3工業用水処理装置マスタ29cでは、No.1系列が停止した場合、自己の系列が停止中であるときは、他の系列からの経過時間や通水時間に基づき、自己の系列の起動すべき順番になったことを起動順判定部32で判定し、自己の系列の起動すべき順番になったときは自己の系列を起動する。
【0051】
図3は各系列の起動順判定部32による系列の起動制御内容の一例を示すタイムチャートであり、図3(a)は一つの系列のみの運転の場合のタイムチャート、図3(b)は一つの系列で運転中に一旦すべての系列の運転を停止しその後に一つの系列の運転を行いさらに二つの系列の運転を行う場合のタイムチャートである。
【0052】
図3(a)に示すように、いま、時点t1で上位装置から一つの系列のみの起動指令があり、No.1系列〜No.3系列の起動順序はNo.1系列が1番目であるとする。
【0053】
時点t1より上位装置の指令による起動後の経過時間がカウント開始され、起動順判定時間記憶部34に記憶される。また、ろ過水製造制御部35により時点t1でNO.1系列の運転が開始され、通水時間演算部36によりNO.1系列の通水時間が演算され、通水時間記憶部33に記憶される。No.1系列は時点t1で、ろ過水製造制御部35により運転が開始されるので、起動後の経過時間はリセットされる。一方、No.2、3系列は時点t1では停止中であるので、起動後の経過時間Tb1、Tc1がカウント開始される。
【0054】
そして、NO.1系列の通水時間が時点t2で予め定めた定収時間TAとなると、ろ過水製造制御部35はNO.1系列を停止し、洗浄制御部37による洗浄工程に入る。この場合、時点t2でNO.1系列の通水時間は零リセットされる。
【0055】
時点t2でNO.1系列が停止したことに伴い、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動するにあたり、自己の系列(NO.1、2、3系列)の通水時間と他の系列の通水時間とを比較する。
【0056】
時点t2においては、NO.1、2、3系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、上位装置の指令による起動後からの経過時間を比較する。時点t2においては、NO.1系列の上位装置の指令による起動後からの経過時間は、時点t1でリセットされていることから零であり、停止中のNO.2系列の起動後からの経過時間Tb1と、NO.3系列の起動後からの経過時間Tc1とが同じである。
【0057】
そこで、時点t2では、NO.2、3系列のいずれを起動するかは、予め定めた順序で起動することになる。例えば、若番の順序で起動する。NO.2系列とNO.3系列とではNO.2系列が若番となるのでNO.2系列を起動することになる。従って、NO.2系列のろ過水製造制御部35は、時点t2でNO.2系列のろ過水製造の制御を開始し、NO.2系列の通水時間演算部36によりNO.2系列の通水時間が演算される。この場合、時点t2でNO.1系列の通水時間は零リセットされる。
【0058】
次に、時点t3でNO.1系列の洗浄が完了すると、NO.1系列の洗浄後からの経過時間Ta1がカウントされ始める。そして、NO.2系列の通水時間が時点t4で予め定めた定収時間TBとなると、NO.2系列は停止し洗浄工程に入る。この場合、NO.2系列の通水時間は時点t4で零リセットされる。
【0059】
時点t4でNO.2系列が停止したことに伴い、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動するにあたり、自己の系列(NO.1、3系列)の通水時間と他の系列の通水時間とを比較する。
【0060】
時点t4においては、NO.1、2、3系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、上位装置の指令による起動後または洗浄後からの経過時間を比較する。
【0061】
NO.1系列の起動後からの経過時間は時点t1でリセットされていることから零であるが、NO.1系列は時点t3で洗浄が完了していることから洗浄後からの経過時間はTa1である。一方、NO.2系列の起動後からの経過時間は、時点t2でリセットされていることから零であり、NO.3系列の起動後からの経過時間はTc2であり、NO.3系列の起動後からの経過時間Tc2が最も長い。そこで、NO.3系列を起動することになる。
【0062】
従って、NO.3系列のろ過水製造制御部35は、時点t4でNO.3系列のろ過水製造の制御を開始し、NO.3系列の通水時間演算部36によりNO.3系列の通水時間が演算される。この場合、時点t4でNO.2系列の通水時間は零リセットされる。
【0063】
次に、時点t5でNO.2系列の洗浄が完了すると、NO.2系列の洗浄後からの経過時間Tb2がカウントされ始める。そして、NO.3系列の通水時間が時点t6で予め定めた定収時間TCとなると、NO.3系列は停止し洗浄工程に入る。この場合、NO.3系列の通水時間は時点t6で零リセットされる。
【0064】
時点t6でNO.3系列が停止したことに伴い、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動するにあたり、自己の系列(NO.1、2、3系列)の通水時間と他の系列の通水時間とを比較する。
【0065】
時点t6においては、NO.1、2、3系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、上位装置の指令による起動後または洗浄後からの経過時間を比較する。時点t6においては、NO.1系列の洗浄後からの経過時間はTa2であり、NO.2系列の洗浄後からの経過時間はTb2であり、NO.3系列の洗浄後からの経過時間は零である。NO.1系列の洗浄後からの経過時間Ta2が最も長いので、NO.1系列を起動することになる。
【0066】
従って、NO.1系列のろ過水製造制御部35は、時点t6でNO.1系列のろ過水製造の制御を開始し、NO.1系列の通水時間演算部36によりNO.1系列の通水時間が演算される。この場合、時点t6でNO.3系列の通水時間は零リセットされる。
【0067】
以下、同様に、三つの系列のいずれかを起動するときは、通水時間が長い系列を優先して起動し、通水時間が同じであるときは上位装置の指令による起動後または洗浄後からの経過時間が長い系列を優先して起動し、さらに、その経過時間も同じであるときは予め定めた順序で起動する。これにより、一つの系列のみの運転の場合は、NO.1系列、NO.2系列、NO.3系列は順番に起動されるので、運転時間の均一化が図れる。
【0068】
次に、図3(b)に示すように、いま、時点t1で上位装置から一つの系列の起動指令があり、No.1系列〜No.3系列の起動順序はNo.1系列が1番目であるとする。
【0069】
図3(a)の場合と同様に、時点t1でNO.1系列の運転が開始され、停止中のNO.2、3系列について、上位装置の指令による起動後の経過時間がカウントされ始める。そして、NO.1系列の通水時間が時点t2で予め定めた定収時間TAとなると、NO.1系列は停止し洗浄工程に入る。この場合、NO.1系列の通水時間は零リセットされる。
【0070】
時点t2でNO.1系列が停止したことに伴い、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動するにあたり、自己の系列(NO.1、2、3系列)の通水時間と他の系列の通水時間とを比較する。
【0071】
時点t2においては、NO.1、2、3系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、上位装置の指令による起動後または洗浄後からの経過時間を比較する。
【0072】
時点t2においては、NO.2系列の起動後からの経過時間は零であり、NO.2系列の起動後からの経過時間Tb1とNO.3系列の起動後からの経過時間Tc1とは同じである。
【0073】
そこで、時点t2では、NO.2、3系列のいずれを起動するかは、予め定めた順序で起動することになり、例えば、若番の順序で起動する。NO.2系列とNO.3系列とではNO.2系列が若番となるのでNO.2系列を起動する。
【0074】
次に、時点t3でNO.1系列の洗浄が完了すると、NO.1系列の洗浄後からの経過時間がカウントされ始める。そして、時点t4ですべての系列の運転が停止されたとする。例えば、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水濁度が所定値以上となったときは、すべての系列が停止される。また、ろ過水タンク22や純水タンク12の貯蔵水量が規定値以上となったときはすべての系列が停止される。
【0075】
すべての系列が一旦停止した後の時点t5において水処理設備を起動するにあたって、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、停止中のNO.1、2、3系列の各々の通水時間を比較する。NO.2系列の通水時間は時点t2から時点t4までの通水時間Tb2である。一方、NO.1、3系列の通水時間はいずれも零で同じである。従って、通水時間の長いNO.2系列を時点t5で起動する。そして、NO.2系列の通水時間(Tb2+Tb3)が時点t6で予め定めた定収時間TBとなると、NO.2系列は停止し洗浄工程に入る。この場合、NO.2系列の通水時間は零リセットされる。
【0076】
No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動するにあたり、自己の系列(NO.1、3系列)の通水時間と他の系列の通水時間とを比較する。時点t6においては、NO.1、2、3系列の通水時間はいずれも零で同じであるので、次に、上位装置の指令による起動後または洗浄後からの起動時間とを比較する。
【0077】
時点t6においては、NO.1系列の洗浄後からの経過時間はTa1であり、NO.2系列の洗浄後からの経過時間は零であり、NO.3系列の洗浄後からの経過時間Tc2である。NO.3系列の洗浄後からの経過時間Tc2が最も長いので、NO.3系列を起動することになる。
【0078】
次に、時点t7でNO.2系列の洗浄が完了すると、NO.2系列の洗浄後からの経過時間がカウントされ始める。そして、時点t8で、一つの系列の運転からさらに二つの系列の運転を行う必要が生じたとすると、No.1、2、3系列の起動順判定部32は、自己の系列(NO.1、2、3系列)を起動する順序を判定することになるが、NO.3系列は運転を継続した状態であるので、No.1、2系列の起動順判定部32が自己の系列(NO.1、2系列)を起動する順序を判定することになる。
【0079】
No.1、2系列の起動順判定部32は、その際に、既に運転継続中のNO.3系列の通水時間を除外して、NO.1、2系列の通水時間を比較する。時点t8においては、NO.1、2系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、洗浄後からの経過時間を比較する。時点t8では、NO.1系列の洗浄後からの経過時間Ta2の方がNO.2系列の洗浄後からの経過時間Tb4より長いのでNO.1系列が起動される。
【0080】
そして、NO.3系列の通水時間が時点t9で予め定めた定収時間TCとなると、NO.3系列は停止し洗浄工程に入る。この場合、NO.3系列の通水時間は零リセットされる。
【0081】
No.1、2、3系列の起動順判定部32は、NO.3系列の停止に伴い、自己の系列(No.1、2、3系列)を起動する順序を判定することになるが、この場合は、NO.1系列は運転を継続した状態であるので、No.2、3系列の起動順判定部32が自己の系列(NO.1、2系列)を起動する順序を判定することになる。
【0082】
No.2、3系列の起動順判定部32は、その際に、既に運転継続中のNO.1系列の通水時間を除外して、NO.2、3系列の通水時間を比較する。時点t9においては、NO.2、3系列の通水時間は、いずれも零で同じであるので、次に、洗浄後からの経過時間を比較する。時点t9では、NO.2系列の洗浄後からの経過時間はTb5であり、NO.3系列の洗浄後からの経過時間は零であるので、NO.2系列の洗浄後からの経過時間Tb5の方がNO.3系列の洗浄後からの経過時間より長い。従って、NO.2系列を起動する。
【0083】
以下、同様に、停止中の系列を起動するときは、通水時間が長い系列を優先して起動し、通水時間が同じであるときは上位装置の指令による起動後または洗浄後からの経過時間が長い系列を優先して起動し、さらに、その経過時間も同じであるときは予め定めた順序で起動する。
【0084】
これにより、運転中の途中ですべての系列が停止した場合であっても、通水時間が定収時間となるまでの運転が行われ、また、一つの系列のみの運転の場合だけでなく二つの系列の運転の場合であっても、NO.1系列、NO.2系列、NO.3系列は順番に起動されるので、運転時間の均一化が図れる。従って、ろ過器19a〜19cのろ布の交換時期を同一時期にすることができるようになる。
【0085】
図4は、本発明の第1実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの他の一例を示す構成図である。この他の一例は、図2に示した一例に対し、制御装置26内には、ろ過器19a〜19cのろ布の使用可能な残存時間を演算する残存時間演算部41を設け、さらに、ろ布の使用可能な残存時間を予め記憶しておく耐用時間記憶部42、及び残存時間演算部41で演算したろ布の使用可能な残存時間を記憶する残存時間記憶部43を追加して設けたものである。
【0086】
耐用時間記憶部42には、ろ布の耐用時間が予め記憶されている。耐用時間記憶部42に記憶したろ布の耐用時間は、例えば、メーカ推奨値あるいは過去の実績値などである。残存時間演算部41は、耐用時間記憶部42に記憶したろ布の耐用時間から各系列の通水時間の積算値を減算してろ布の使用可能な残存時間を演算し、演算結果の残存時間を残存時間記憶部43に記憶する。
【0087】
起動順判定部32は、自己の系列の起動の順序を判定するにあたり、まず、自己の系列が停止中の系列のうち通水時間が最も長い系列であるかどうかを判定する。通水時間が同じであるときは、残存時間記憶部43に記憶されたろ布の使用可能な残存時間を参照し、残存時間が最も長い系列であるかどうかを判定する。そして、残存時間も同じであるときは、自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が最も長いかどうかを判定する。つまり、自己の系列の残存時間が他の系列の残存時間よりも長いときは、自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間より短くても、自己の系列を優先して起動する。
【0088】
これにより、ろ過水製造制御の途中で停止している系列を優先して起動できるとともに、各系列のろ布の交換時期を同一時期にできる。この場合、同じ系列が連続して起動されることを防止するために、残存時間が長い系列の起動は2回連続までは許容するが、3回連続となる場合は起動を阻止するようにしてもよい。これにより、各系列の運転が均一化される。また、残存時間記憶部43の内容を取り出し、図示省略の表示装置に表示出力できるようにすると、運転員は各系列のろ布の交換時期を容易に把握できる。
【0089】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図5は本発明の第2実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図、図6は本発明の第2実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図である。
【0090】
この第2実施形態は、図1及び図2に示した第1実施形態に対し、原水である工業用水の濁度を検出する原水濁度計44で検出された工業用水の濁度を監視する原水濁度監視装置45と、制御装置26の定収時間設定部38に設定された各系列の定収時間を設定変更するための設定値変更部46とを追加して設けたものである。図1及び図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0091】
工業用水の濁度は季節や天候によって変動するので、原水濁度監視装置45により原水濁度計44で検出された工業用水の濁度を監視する。例えば、台風や大雨のときや降雨量の少ない時期には、工業用水の濁度が大きくなるので、ろ布は早めに洗浄することが望ましい。
【0092】
そこで、運転員は原水濁度監視装置45により工業用水の濁度を監視し、工業用水の濁度が大きくなったときは、設定値変更部46により制御装置26の定収時間設定部38に設定された各系列の定収時間を設定変更する。
【0093】
このように、ろ布の洗浄までの定収時間を手入力で変更できるので、工業用水の濁度の変動に応じて、ろ布の洗浄を適切に行うことができる。これにより、ろ布の消耗の早い系列は短時間で洗浄に切り替えるように運用できるので、ろ布の消耗が均等になるように各系列の運転を調整できる。
【0094】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。図7は本発明の第3実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図、図8は本発明の第3実施形態に係る水処理設備の制御装置を3系列の水処理設備に適用した一例を示す系統構成図である。
【0095】
この第3実施形態は、図1及び図4に示した第1実施形態に対し、工業用水の濁度を検出する原水濁度計44で検出された工業用水の濁度を制御装置26に入力し、制御装置26には、原水である工業用水の濁度とろ過器19a〜19cでろ過して得られたろ過水の濁度とから各系列のろ過器19a〜19cのろ布の耐用時間を予測演算する耐用時間予測演算部47を追加して設けたものである。図1及び図4と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0096】
原水濁度計44で検出された工業用水の濁度と、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水の濁度とは、図8に示すように、制御装置26の各々のマスタ27の耐用時間予測演算部47に入力される。耐用時間予測演算部47は、工業用水の濁度とろ過水の濁度とから、起動順判定部32により運転中の系列のろ過器19a〜19cのろ布の消耗度合いを予測演算する。そして、予測演算されたろ布の消耗度合いからろ布の耐用時間を予測演算する。例えば、工業用水の濁度とろ過水濁度との濁度差が大きい場合には、ろ布の消耗度合いが大きくなるので耐用時間は短くなる。逆に、工業用水の濁度とろ過水濁度との濁度差が小さい場合には、ろ布の消耗度合いが小さくなるので耐用時間は長くなる。耐用時間予測演算部47で予測演算された耐用時間は、耐用時間記憶部42に記憶される。
【0097】
残存時間演算部41は、耐用時間予測演算部47で予測演算され耐用時間記憶部42に記憶されたろ布の耐用時間を用いて、ろ過器19a〜19cのろ布の使用可能な残存時間を演算し残存時間記憶部43に記憶する。前述したように、図示省略の表示装置に、残存時間記憶部43の内容を表示出力できるようにすると、運転員は各系列のろ布の交換時期を容易に把握できる。
【0098】
このように、工業用水の濁度とろ過水の濁度とからろ布の耐用時間を予測演算するので、原水である工業用水の状態に合わせて、より適切なろ布の耐用時間を得ることができる。メーカ推奨のろ布の耐用時間は、安全を見込んで設定されている場合が多いので、耐用時間に達しても交換が必要な状態に達しているとは限らない場合が多く、早めの交換が行われる場合が多かったが、第3実施形態では交換時期を適切にできる。
【0099】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。図9は本発明の第4実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図である。この第4実施形態は、図8に示した第3実施形態に対し、残存時間演算部41及び残存時間記憶部43に代えて、耐用時間予測演算部47で演算され耐用時間記憶部42に記憶されたろ布の耐用時間に基づいて定収時間を変更する定収時間変更部48を追加して設けたものである。図8と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0100】
耐用時間予測演算部47は、図8に示した第3実施形態の場合と同様に、原水である工業用水の濁度とろ過水の濁度とから各系列のろ布の耐用時間を演算する。定収時間変更部48は、耐用時間予測演算部47で演算され耐用時間記憶部42に記憶されたろ布の耐用時間に基づいて、ろ布の耐用時間に見合った定収時間を演算する。例えば、ろ布の耐用時間が長い系列については長い定収時間を演算し、ろ布の耐用時間が短い系列については短い定収時間を演算する。そして、定収時間変更部48は、演算した定収時間を定収時間設定部38に設定する。
【0101】
これにより、各系列の運転インターバルは各系列のろ布の耐用時間に応じて自動的に変更されるので、各系列のろ布の交換時期が同一時期にできる。
【0102】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。図10は本発明の第5実施形態に係る水処理設備の制御装置におけるNo.1マスタのNo.1工業用水処理装置マスタの一例を示す構成図である。この第5実施形態は、図2に示した第1実施形態に対し、定収時間設定部38に代えて、系列が起動される度に通水時間演算部36で演算された通水時間を変数としたろ過水の濁度カーブを作成し濁度カーブ記憶部49に記憶する濁度カーブ作成部50と、通水時間演算部36で演算された自己の系列の通水時間が、濁度カーブ作成部50で作成された濁度カーブでの予め定めた濁度になるまでの通水時間となったときは、ろ過器19の洗浄タイミングであると判定する洗浄タイミング判定部51とを設け、ろ過水製造制御部35は、洗浄タイミング判定部51で判定された洗浄タイミングとなったときに、自己の系列の運転を停止する。洗浄制御部37は、ろ過水製造制御部35が自己の系列を運転停止したときは、自己の系列の通水時間をリセットしてろ過器19の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始するようにしたものである。図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0103】
濁度カーブ作成部50は、ろ過水濁度計31で検出されたろ過水濁度及び通水時間演算部36で演算された通水時間を入力し、系列が起動される度に通水時間演算部36で演算された通水時間を変数としたろ過水の濁度カーブを作成する。図11は、濁度カーブ作成部50で作成されるろ過水の濁度カーブの一例を示すグラフである。ろ布が新しい場合には、ろ過水濁度カーブS1に示すように、ろ過水濁度が予め定めた濁度D0になる時点t1までの通水時間が長い。ろ布の使用回数が増えると、徐々に、ろ過水濁度カーブS2、S3に示すように、ろ過水濁度が予め定めた濁度D0になる時点t2、t3までの通水時間が短くなる。
【0104】
洗浄タイミング判定部41は、濁度カーブ作成部50で得られた濁度カーブSが予め定めた濁度D0を超えたとき、ろ過器19a〜19cの洗浄タイミングであると判定する。洗浄制御部37は、洗浄タイミング判定部51で判定された洗浄タイミングで系列を洗浄する。従って、ろ布が使用により消耗したとしても、ろ過水濁度を予め定めた濁度D0以下に保持できる。また、濁度カーブ記憶部49に記憶されたろ過水濁度カーブSを図示省略の表示装置に表示できるようにすると、運転員は各系列のろ布の交換時期を容易に把握できる。
【符号の説明】
【0105】
11…工業用水地下水槽、12…純水タンク、13…工業用水処理装置、14…ろ過水装置、15…純水装置、16…工業用水汲上ポンプ、17…凝集反応槽、18…工業用水ろ過器入口調節弁、19…ろ過器、20…ろ過水地下水槽、21…ろ過水汲上ポンプ、22…ろ過水タンク、23…純水装置送水ポンプ、24…純水装置入口調節弁、25…樹脂塔、26…制御装置、27…マスタ、28…ろ過水地下水槽マスタ、29…工業用水処理装置マスタ、30…純水装置マスタ、31…濁度計、32…起動順判定部、33…通水時間記憶部、34…起動順判定時間記憶部、35…ろ過水製造制御部、36…通水時間演算部、37…洗浄制御部、38…定収時間設定部、39…濁度判定部、40…送信部、41…残存時間演算部、42…耐用時間記憶部、43…残存時間記憶部、44…原水濁度計、45…原水濁度監視装置、46…設定値変更部、47…耐用時間予測演算部、48…定収時間変更部、49…濁度カーブ記憶部、50…濁度カーブ作成部、51…洗浄タイミング判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水である工業用水をろ過して得られたろ過水をろ過水タンクに貯蔵するろ過器と、前記ろ過水タンクに貯蔵されたろ過水を純水にする純水装置とを有した系列を複数備えた水処理設備を制御する水処理設備の制御装置において、
前記水処理設備の前記ろ過水を製造する工業用水処理装置を制御する前記系列毎に設けられた工業用水処理装置マスタは、
自己の系列のろ過器に工業用水を通水した通水時間が他の系列の通水時間よりも長いとき、
自己の系列の通水時間と他の系列の通水時間とが同じであるときは自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間よりも長いとき、
自己の系列の前記経過時間と他の系列の前記経過時間とが同じであるときは、予め定めた順序で自己の系列が起動すべき順番になったと判定する起動順判定部と、
前記起動順判定部で自己の系列が起動すべき順番になったと判定されたときは工業用水を自己の系列のろ過器に通水してろ過水の製造制御を開始するろ過水製造制御部と、
前記ろ過水製造制御部により自己の系列のろ過水製造制御が開始されたときは自己の系列のろ過器に工業用水が通水される通水時間を演算する通水時間演算部と、
前記ろ過器を洗浄制御する洗浄制御部と、
自己の系列の起動後や洗浄後からの経過時間及び自己の系列の通水時間を他の系列の起動順判定部に送信する送信部とを備え、
前記ろ過水製造制御部は、前記通水時間演算部で演算された自己の系列の通水時間が予め定めた定収時間となったときは自己の系列の運転を停止し、
前記洗浄制御部は、前記ろ過水製造制御部が自己の系列を運転停止したときは自己の系列の通水時間をリセットして前記ろ過器の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始することを特徴とする水処理設備の制御装置。
【請求項2】
前記工業用水の濁度を監視する原水濁度監視装置と、前記定収時間を設定変更するための設定値変更部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の水処理設備の制御装置。
【請求項3】
予め記憶した前記ろ過器のろ布の耐用時間から前記通水時間の積算値を減算して前記ろ過器のろ布の使用可能な残存時間を演算する残存時間演算部を設け、前記ろ過水製造制御部は、自己の系列の残存時間が他の系列の残存時間よりも長いときは、自己の系列の起動後または洗浄後からの経過時間が他の系列の経過時間より短くても、自己の系列を優先して起動することを特徴とする請求項1または2記載の水処理設備の制御装置。
【請求項4】
前記原水の濁度と前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから各系列の前記ろ過器のろ布の耐用時間を演算する耐用時間予測演算部を設け、前記残存時間演算部は、前記耐用時間予測演算部で予測演算された前記ろ過器のろ布の耐用時間を用いて前記ろ過器のろ布の使用可能な残存時間を演算することを特徴とする請求項3記載の水処理設備の制御装置。
【請求項5】
前記原水の濁度と前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度とから各系列の前記ろ過器のろ布の耐用時間を演算する耐用時間予測演算部と、前記耐用時間予測演算部で演算された前記ろ過器のろ布の耐用時間に基づいて前記定収時間を変更する定収時間変更部とを設けたことを特徴とする請求項1または2記載の水処理設備の制御装置。
【請求項6】
前記系列が起動される度に前記通水時間演算部で演算された通水時間を変数とした前記ろ過器でろ過して得られたろ過水の濁度カーブを作成する濁度カーブ作成部と、自己の系列の通水時間が前記濁度カーブ作成部で作成された濁度カーブでの予め定めた濁度になるまでの通水時間となったときは前記ろ過器の洗浄タイミングであると判定する洗浄タイミング判定部とを備え、
前記ろ過水製造制御部は、前記通水時間演算部で演算された通水時間が予め定めた定収時間となったときに代えて、前記洗浄タイミング判定部で判定された洗浄タイミングとなったときに自己の系列の運転を停止し、
前記洗浄制御部は、前記ろ過水製造制御部が自己の系列を運転停止したときは自己の系列の通水時間をリセットして前記ろ過器の洗浄制御を開始し、洗浄が完了すると洗浄後の経過時間を新たにカウント開始することを特徴とする請求項1記載の水処理設備の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−66848(P2013−66848A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207486(P2011−207486)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】