説明

水性塗料用樹脂組成物

【構成】 (A)フェノール型ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級アミン化合物、および(C)フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個有するフェノール化合物を反応させて得られる第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)を主成分とする水性塗料用樹脂組成物。
【効果】 水分散性、浴安定性および顔料分散性等にすぐれており、カチオン電着塗料用として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水性塗料用樹脂組成物に関し、特に水分散性、浴安定性および顔料分散性などにすぐれた、カチオン電着塗料用樹脂組成物として有用な水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】カチオン電着塗料用基体樹脂として、たとえば、高分子量(数平均分子量約1000以上の)ジエポキシドに第2級アミン(例えば、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエチルアミンなど)を反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が一般的に用いられている。該樹脂はブロックポリイソシアネート化合物などと架橋反応硬化し、その塗膜は防食性にすぐれている。しかし、上記のアミン付加エポキシ樹脂は、カチオン性基として第3級アミノ基をもっているために、酸による部分中和では水分散性が不十分で、一方、全中和すると電着塗料浴のpHが下がりすぎ、設備の腐食能力が低下するという問題点がある。
【0003】ブロックポリイソシアネート化合物などの架橋剤は、基体樹脂中の第1級水酸基とすみやかに反応して架橋硬化することは広く認識されている。しかしながら、ビスフェノールA型のグリシジルエーテルを基本骨格とするカチオン電着塗料用基体樹脂に第1級水酸基を導入する有効な手段は、第2級アミンとして第2級のアルカノールアミンを使用することであるが、これを用いると前記のように水分散性が低下する。
【0004】また、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するポリエポキシド(エポキシ当量100〜1000)とポリフェノール(例えば、アルキレンジフェノール)との反応生成物もカチオン電着塗料用基体樹脂として試みられたが、該ポリエポキシドとポリフェノールとの反応中に高粘度化もしくはゲル化が生ずるので実用的でない。さらに、上記ポリエポキシドにアミン化合物を付加したものは塩基濃度が部分的に高くなり、耐食性を低下させるので好ましくない。
【0005】さらに、特定のポリエポキシドに第1級水酸基含有第1または2級アミンを反応させて得られるカチオン電着塗料用基体樹脂も知られており、このものは酸による部分中和での水分散性が優れているが、該ポリエポキシドは脂環式骨格を有しているため、水分散性を向上させるためにポリエポキシド濃度を高くすると、耐蝕性能を支配するベンゼン核濃度が必然的に低下する。
【0006】しかして、第2級アルカノールアミンを用いて第1級水酸基を導入し、かつ部分中和段階での水分散性および耐食性がすぐれたカチオン電着樹脂の開発が強く望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、合成反応中に高粘度化やゲル化などせず、しかも部分中和での水分散性や防食性などがすぐれた、特にカチオン電着塗料用基体樹脂として有用な水性塗料用樹脂組成物、および該組成物を用いたカチオン電着塗料に関する。
【0008】すなわち、本発明は、(A)下記一般式(I)
【0009】
【化3】


【0010】[式中、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし;R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;R4およびR6は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはグリシジルオキシフェニル基を表わし;R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてnは1〜38の整数である]で示されるフェノール型ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級アミン化合物、および(C)フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個有するフェノール化合物を反応させて得られる第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)を主成分とすることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物を提供するものである。
【0011】本発明はまた、上記第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)と、好ましくは(H−1)ブロックポリイソシアネート化合物、(H−2)ポリエポキシド化合物および(H−3)1分子中に2個以上の不飽和基を有する化合物から選ばれる硬化剤(H)との混合物を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料(V)を提供するものである。
【0012】本発明はさらに、上記第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)とを部分的反応させて得られる自己硬化性塗料用樹脂組成物(W);該自己硬化性塗料用樹脂組成物(W)を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料(X);上記第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)または自己硬化性塗料用樹脂組成物(W)と顔料(G)とを主成分とすることを特徴とする顔料分散ペースト(Y);並びに上記カチオン電着塗料(V)またはカチオン電着塗料(X)で塗装された製品を提供するものである。
【0013】以下、本発明の樹脂組成物、カチオン電着塗料および顔料ペーストについて具体的に説明する。
【0014】(A)成分: 下記一般式(I)で示されるフェノール型ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物。
【0015】
【化4】


【0016】[式中、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし;R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;R4およびR6は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはグリシジルオキシフェニル基を表わし;R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてnは1〜38の整数である]上記一般式(I)において、「アルキル基」は直鎖状もしくは分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル基などが挙げられる。また、「アリール基」は単環式または多環式のいずれであってもよく、例えば、フェニル、ナフチル基などが挙げられ、特にフェニル基が好適であり、さらに「アラルキル基」はアリール−置換アルキル基であって、例えば、ベンジル、フェネチル基などが包含され、中でもベンジル基が好ましい。
【0017】「ハロゲン原子」にはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が包含される。
【0018】さらに、R4及び/又はR6によって表わされうる「グリシジルオキシフェニル基を含有する有機基」は式
【0019】
【化5】


【0020】(ここで、Wは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす)で示される基を含有する有機基である。
【0021】しかして、前記一般式において、R1およびR2としては水素原子、メチル基、塩素原子および臭素原子が好適であり、特に水素原子、メチル基および臭素原子が好ましい。また、R3およびR5としては、メチル基、tert−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子が好ましく、中でもメチル基、tert−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好適である。さらに、R4およびR6は好ましくは水素原子であり、そしてnは好ましくは特に1〜8である。
【0022】(A)成分の数平均分子量は、蒸気圧浸透圧法による測定に基ずいて、一般に、約400〜約8000、特に600〜2000の範囲内にあることが好ましい。この数平均分子量によって数平均繰返し単位数(n+2)を求めることができる。また、(A)成分は、グリシジル基を1分子あたり3.5〜10個有していることが好ましく、かつ(A)成分のエポキシ当量は、約180〜約2000、特に200〜600の範囲内にあることが好ましい。
【0023】(A)成分は、例えば、下記一般式(III)
【0024】
【化6】


【0025】[式中、R1、R2およびR3は前記と同義である]で示される2官能性フェニル化合物(A−1)と、下記一般式(IV)
【0026】
【化7】R4−CHO (IV)
[式中、R4は前記と同義である]で示されるアルデヒド化合物(A−2)および/または下記一般式
【0027】
【化8】R4−CO−R6 (V)
[式中、R4およびR6は前記と同義である]で示されるケトン化合物(A−3)とを縮重合反応させることにより得られるフェノール型ノボラック樹脂(A−4)に、さらにエピハロヒドリン(A−5)を反応させて該フェノール型ノボラック樹脂(A−4)にグリシジルエーテル基を導入することにより製造することができる。
【0028】また、上記フェノール型ノボラック樹脂(A−4)を得るための反応中または反応後に、必要に応じて、下記一般式(VI)
【0029】
【化9】


【0030】[式中、R7は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてR1およびR2は前記と同義である]で示される1官能性フェノール化合物(A−6)を末端封止剤として併用してもよい。
【0031】上記式(VI)における基R7の具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、エチレン基、プロピレン基、フェニル基、ベンジル基、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などがあげられ、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子であり、特にメチル基、t−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好ましい。
【0032】上記(A−1)成分のフェノール化合物に対して用いる「2官能性」なる語は、一般式(III)において、水酸基を基準に、オルト位および/またはパラ位に水素原子が2個直接結合していることを意味する。該水素原子は上記(A−2)および(A−3)成分中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してフェノール型ノボラック樹脂(A−4)を生成する。
【0033】また、(A−6)成分のフェノール化合物に対して用いる「1官能性」なる語は、一般式(IV)において、水酸基を基準に、オルト位またはパラ位に水素原子が1個直接結合していることを意味する。該水素原子は上記(A−2)または(A−3)成分中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してフェノール型ノボラック樹脂(A−4)の末端を形成する。
【0034】前記式(III)で示される2官能性フェノール化合物(A−1)としては、たとえば、フェノール、p−プロペニルフェノール、o−ベンジルフェノール、6−n−アミル−n−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−tert−ペンチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−クロルフェノール、p−クロルフェノール、4−クロル−3,5−キシレノール、o−アリルフェノール、ノニルフェノール、o−ブロムフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0035】また、式(IV)で示されるアルデヒド化合物(A−2)としては、たとえば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどがあげられる。また、アルデヒド化合物(A−2)としてm−(またはp−)ヒドロキシベンズアルデヒドを用い、(A−1)成分との反応後に、該ヒドロキシベンズアルデヒドをエピハロヒドリン(A−5)でグリシジルエーテル化してもよい。なお、上記ヒドロキシベンズアルデヒドのベンゼン核は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。
【0036】式(V)で示されるケトン化合物(A−3)としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどがあげられる。さらに、2−アセチルフェニル−2−ヒドロキシフェニルプロパンを用いると、式(I)の樹脂中にグリシジルオキシフェニル基を含有する有機基を導入することができる。すなわち、これにより式(I)における
【0037】
【化10】


の少なくとも一部は
【0038】
【化11】


【0039】とすることができる。
【0040】さらに、エピハロヒドリン(A−5)にはたとえば、エピクロルヒドリン、エピグロムヒドリンなどがあげられる。
【0041】上記(A−1)成分に(A−2)成分および/または(A−3)成分を縮重合反応させることによりフェノール型ノボラック樹脂(A−4)が得られる。この縮重合反応はそれ自体既知の通常のフェノール型ノボラック樹脂の製造方法に準じて行うことができる。具体的には、回分式または特開昭51−130498号公報などに記載の連続法などにより行なうことができる。たとえば、各成分を、前記式(I)における繰返し数(n)が1〜38の範囲内で、しかも数平均分子量およびエポキシ当量が前記した範囲内に包含されるような比率で配合し、かつ反応させることによって(A−4)成分が有得られる。この反応において、塩酸、燐酸および硫酸などの無機酸;パラトルエンスルホン酸およびしゅう酸などの有機酸;酢酸亜鉛などの金属塩などの触媒を使用することもできる。
【0042】(A−4)成分の製造において、必要に応じて、上記(A−1)成分と、(A−2)成分および/または(A−3)成分との縮重合反応中またはその後に、前記式(VI)で示される1官能性フェノール化合物(A−6)を末端封止剤として反応させることができる。
【0043】上記式(VI)で示される1官能性フェノール化合物(A−6)としては、具体的には、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、2,4−ジクロルフェノール、2,4−ジブロモフェノール、ジクロルキシレノール、ジブロモキシレノール、2,4,5−トリクロロフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノールなどが挙げられる。
【0044】(A−6)成分と、上記(A−1)成分、(A−2)成分および/または(A−3)成分との縮重合反応は上記と同様にして行なうことができる。(A−6)成分を併用して得られるノボラック型フェノール樹脂も(A−4)成分の範ちゅうに包含される。
【0045】(A)成分は、該(A−4)成分中のフェノール性水酸基に(A−5)成分を反応せしめて、グリシジルエーテル化することによって得られる。具体的には、例えば、該(A−4)成分を(A−5)成分で溶解し、この溶液にアルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に添加し、その反応系の水および未反応の(A−5)成分を蒸留除去することによって得られる。この蒸留した液から(A−5)成分を分離し再使用することができる。この反応は、例えば、ジオキサン、ジエトキシエタンなどのエーテル系溶剤の存在下で行なうことが好ましい。
【0046】(A)成分は、上記のごとくにして製造することができるが、市販されているものを使用してもよく、市販品として、たとえば、フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、DEN−438およびDEN−439[ダウケミカル日本(株)製、商品名]:クレゾール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、EPICRON N−695[大日本インキ(株)製、商品名]、ESCN−195XHH[住友化学(株)製、商品名]、EOCN−102S、EOCN−1020およびEOCN104S[日本化薬(株)製、商品名]:ブロム変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、BREN−S[日本化薬(株)製、商品名]:長鎖アルキル変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物として、ESMB−260[住友化学(株)製、商品名]などがあげられる。
【0047】(B)成分: 第1級水酸基を1分子中に少なくとも1個有する第1級もしくは第2級アミン化合物。
【0048】このものは、上記(A)成分と反応して、(A)成分に第1級水酸基と塩基性基とを導入するのに役立つ。
【0049】(B)成分のアミノ基と(A)成分の式(I)で示されるグリシジル基との反応によってカチオン性樹脂が生成し、このカチオン性樹脂中の第1級水酸基および塩基性基は、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応によって生成する前記のものと比べて、部分中和や高pHにおいても水分散性およびつきまわり性が著しく優れており、しかも形成される塗膜の硬化性や防食性などを低下することが全くない。
【0050】(B)成分としては次に例示する化合物があげられる。
【0051】(1)モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミンなどの第1級アルカノールアミン。
【0052】(2)N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−(またはiso)−プロパノールアミン、ジブタノールアミンなどの第2級アルカノールアミン。
【0053】(3)上記第1級アルカノールアミンとα,β−不飽和カルボニル化合物との付加物(第2級アルカノールアミン):例えば、モノエタノールアミンと、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとの付加物など。
【0054】(4)ヒドロキシエチルアミノエチルアミンのような第1、2級アルカノールアミン。
【0055】(5)ヒドロキシアミン、ヒドロキシエチルヒドラジンおよびヒドロキシブチルヒドラジンから選ばれる1種以上と、ケトン化合物、例えば、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトンなどとの縮合物(第2級アルカノールアミン)。
【0056】(6)一般式(VII)
【0057】
【化12】


【0058】[式中、nは1〜6の整数であり、R21は水酸基および/または重合性不飽和基を含有してもよい炭素数4〜36の炭化水素鎖を表わす]で示される1分子中に1級水酸基、2級アミノ基およびアミド基が併存するアミン化合物。
【0059】一般式(VII)で示されるアミン化合物は、例えばN−ヒドロキシアルキルアルキレンジアミンと炭素数5〜37のモノカルボン酸とを脱水縮合反応させることによって得られる。該ジアミンとしては、例えば、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルブチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルペンチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルヘキシレンジアミンなどの第1級水酸基を含有する第1、2ジアミンが好適であり、また、モノカルボン酸としては、例えば、椰子油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、あまに油脂肪酸および桐油脂肪酸などの混合脂肪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸などがあげられる。
【0060】上記式(VII)で示されるアミン化合物を得るための上記ジアミンとモノカルボン酸との反応は、通常、該両成分をほぼ等モル比で混合し、トルエンやメチルイソブチルケトンなどの有機溶剤を用いて規定量の反応生成水を除去することによって行なうことができ、減圧法などで残存有機溶剤を除去することによってアミン化合物が得られる。かくして得られるアミン化合物は、一般に、アミン価(2級アミン)が88〜350、特に120〜230の範囲内にあり、そして水酸基価(好ましくは1級水酸基)が44〜350、特に60〜230の範囲内にあることが好ましい。
【0061】(B)成分としての上記(1)〜(6)の中、(2)、(3)および(6)の第1級アルカノール第2級アミンが好ましい。特に、式(VII)で示されるアミン化合物(特にヒドロキシエチルアミノエチル脂肪酸アミド)とジエタノールアミンとを併用することが、塗面の平滑性および耐蝕性などを向上させる上で好ましい。該アミン化合物(特にヒドロキシエチルアミノエチル脂肪酸アミド)とジエタノールアミンとの比率は、該両成分の合計重量にもとずいて、前者を30〜80重量%、後者を70〜20重量%の割合で用いることが好ましい。
【0062】(C)成分: フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個有するフェノール化合物。
【0063】(C)成分としてのフェノール性水酸基を含有するフェノール化合物は下記式(VIII)で示される構造単位を少なくとも1個含有し、そして(C)成分の数平均分子量は通常94〜20000の範囲内にあることが好ましい。
【0064】
【化13】


【0065】[式中、R33およびR34は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わす]
かかる(C)成分としては、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノール化合物;フェノール、ノニルフェノール、α−またはβ−ナフトール、p−tert−オクチルフェノール、o−またはp−フェニルフェノールなどのモノフェノール化合物などがあげられる。
【0066】本発明において、(C)成分として下記一般式(II)
【0067】
【化14】


【0068】[式中、R31およびR32は同一もしくは相異なり各々炭素数1〜4のアルキル基を表わし;そしてR33〜R36は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わす]で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物を用いると、塗膜の防食性を一層向上させることができる。前記式(II)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する(C)成分の数平均分子量は、特に制限されないが、一般に500〜20000、特に800〜3000の範囲内にあることが好ましい、また、該(C)成分は、1分子あたり、式(II)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を0.3〜2個、特に0.5〜1.5個、さらに特に0.8〜1.2個含有することが好ましい。
【0069】上記式(II)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−メタン(ビスフェノールA)などのビスフェノール樹脂があげられる。
【0070】さらに式(II)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物(C成分)として、下記一般式(IX)で示される化合物もまた好適に使用することができる。
【0071】
【化15】


【0072】[式中、qは0〜7の整数であり、R38は活性水素含有化合物の残基である]上記式(IX)におけるR38の前駆体である活性水素含有化合物としては、例えば、第2級アミンのようなアミン類;フェニルフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール類;脂肪酸などの有機酸;チオール類;アルキルアルコール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カービトールなどのアルコール類;無機酸;などがあげられる。このうち特に好ましいものは、ジアルカノールアミンなどの第1級水酸基を有する第2級アミン;前記式(VII)で示されるアミン化合物;ノニルフェノール、フェニルフェノール、フェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール類;ステアリン酸、オレイン酸、大豆油脂肪酸などの脂肪酸類;酢酸、ぎ酸、ヒドロキシ酢酸などの低級有機酸などである。
【0073】(C)成分には、上記式(IX)の両末端がR38または−OHのいずれか一方だけである化合物が混在してもよいが、1分子当りフェノール性水酸基含有官能基を0.5〜1.5個、特に0.8〜1.2個含有し、そして数平均分子量が500〜20000の範囲内にあることが好ましい。
【0074】前記式(II)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する(C)成分は、例えば、ビスフェノール型グリシジルエーテル、ビスフェノール型ジフェノールおよび活性水素含有化合物(例えば、第2級アルカノールアミンなど)を、必要に応じて触媒や溶剤の存在下で、30〜300℃、好適には70〜180℃の温度で反応させることによって得られる。また、この反応において、さらに例えば、ダイマージオール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールなどのポリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオール類;ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオール類;ポリカルボン酸類;ポリイソシアネート類;モノイソシアネート類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の不飽和化合物の酸化物;アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の水酸基を有する化合物のグリシジルエーテル;脂肪酸のような有機酸のグリシジルエステル;脂環式オキシラン含有化合物;等を併存させてもよい。更にδ−4−カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させてもさしつかえない。
【0075】カチオン樹脂(U):本発明の第1級水酸基を有するカチオン性樹脂(U)は上記(A)、(B)および(C)成分を反応させることによって得られる。この反応は、(A)成分に(B)および(C)成分を反応せしめることによって行なうことができ、例えば、(A)、(B)および(C)成分を同時に反応させる;(A)成分に(B)成分を反応させた後、(C)成分を反応させる;(A)成分に(C)成分を反応させた後、(B)成分を反応させる;などによって行なうことができ、それによってカチオン性樹脂(U)が得られる。
【0076】(A)成分と(B)成分との反応は、(A)成分のグリシジル基と(B)成分の第1級および/または第2級アミノ基との反応であって、第2級および/または第3級アミノ基が生成する。また、(A)成分と(C)成分との反応は、(A)成分のグリシジル基と(C)成分のフェノール性水酸基との反応であって、エーテル結合が生成する。このようにして得られるカチオン性樹脂(U)には、原則として、(A)成分が有していたグリシジル基が上記反応に消費され、グリシジル基は殆どもしくは全く残存ない。
【0077】これらの各成分の反応比率は目的に応じて任意に選択でき、たとえば、(A)成分のグリシジル基1モルあたり、(B)成分のアミノ基と(C)成分のフェノール性水酸基との合計モル数が、0.75〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルになるように反応させることが好ましい。該合計モル数が0.75モルより少なくなると生成物の粘度が高くなることがあり、また、1.5モルより多くなると未反応のアミン基多く残存して電着特性などに悪い影響を与えるおそれがある。また、(A)成分の含有率は、(A)、(B)および(C)成分の合計重量を基準にして、0.5〜75重量%、特に5〜50重量%の範囲内が適しており、0.5重量%より少なくなると水分散性が不十分となることがあり、逆に75重量%より多くなるとアミン価が高くなり塗膜の耐蝕性が低下することがある。また、(B)成分の使用量は、生成するカチオン性樹脂(U)の水酸基当量が250〜2000、好ましくは300〜700の範囲内になるようにすることが好ましい。水酸基当量が250より小さくなるとアミン価が高くなり塗膜の耐蝕性が低下することがあり、逆に2000より大きくなると硬化性が低下し塗膜の耐蝕性が低下するおそれがある。一方、(C)成分は、(A)成分1分子あたり、0.05〜1.5モル、特に0.2〜1.2モルの範囲内であるのが適している。(C)成分の量が0.05モルより少ないと水分散性が低下しやすく1.5モルより多くなると塗面の平滑性が低下することがある。
【0078】さらに、前記(A)、(B)及び(C)成分の反応における反応温度は、通常50〜300℃、特に70〜200℃の範囲内が好ましい。この反応は、アルコール系、ケトン系およびエーテル系などの有機溶剤の存在下で行うことができる。
【0079】得られるカチオン性樹脂(U)は、数平均分子量が一般に1000〜20000、特に1500〜10000の範囲内にあることが好ましい。
【0080】また、カチオン性樹脂(U)の製造にあたり、水酸基価およびアミン価を上記の範囲内に調整するために、(B)成分と共に以下に例示するその他のカチオン化剤(D)を使用することができる。該(D)成分は、上記反応の最初もしくは途中で使用することができ、または反応後に使用してもよい。
【0081】その他のカチオン化剤(D)としては、例えば、メチル、アミン、エチルアミン、n−又はiso−プロピルアミンなどの第1級アミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの第2級アミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンなどがあげられ、更にアンモニア、ヒドラジン、N−ヒドロキシエチルイミダゾリン化合物などとも併用することができる。
【0082】また、その他のカチオン化剤(D)として、前記(B)成分の(6)を作成するのに用いた1級水酸基含有第1、2級ジアミンを2級水酸基含有第1、2級ジアミンに置き換え1分子中に2級水酸基、2級アミノ基及びアミド基が併存するアミン化合物も使用することができる。
【0083】さらに、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N′−ジエチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミンなどの第3級アミンなども(D)成分として使用することができ、これらは酸で予めプロトン化し、エポキシ基と反応させて第4級塩にすることができる。
【0084】また、アミノ化合物以外に、ジエチルスルフイド、ジフェニルスルフイド、テトラメチレンスルフイド、チオジエタノールなどのスルフイド類とホウ酸、炭酸、有機モノカルボン酸などとの塩をエポキシ基と反応させて第3級スルホニウム塩として使用してもよい。
【0085】更に、トリエチルホスフイン、フェニルジメチルホスフイン、ジフェニルメチルホスフイン、トリフェニルホスフインなどのホスフイン類と上記の如き酸との塩をエポキシ基と反応させて、第4級ホスホニウム塩として併用することもできる。
【0086】なお、本発明では、(B)成分を用いてカチオン性基を導入することは必要であるが、(B)成分以外の上記他のカチオン化剤(D)の使用は任意である。
【0087】かくして得られる第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)はカチオン電着塗料用樹脂として使用することが好ましい。特に、該樹脂(U)は水分散性にすぐれているので、水分散性が不十分な有機物質や無機物質などに該樹脂(U)を配合してその水分散性を改良することができる。したがって、該樹脂(U)は、カチオン電着塗料の水分散性改良剤としても有用である。
【0088】カチオン電着塗料(V):本発明のカチオン電着塗料(V)は、前記の第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)との混合物を主成分とする水性塗料である。
【0089】硬化剤(H)としては、既知のカチオン電着塗料用硬化剤を使用することができるが、特に、例えば、以下に述べる(H−1)ブロックポリイソシアネート化合物、(H−2)ポリエポキシド化合物および(H−3)1分子中に2個以上の不飽和基を有する化合物などから選ばれるものが好ましい。
【0090】(H−1)ブロックポリイソシアネート化合物これは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物中の該イソシアネート基を水酸基などの活性水素含有ブロック剤でブロックしたものであって、特定の温度以上に加熱すると、このブロック剤が解離し遊離のイソシアネート基が再生し、これがカチオン性樹脂(U)の水酸基と反応して架橋硬化するのである。ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族系、芳香族系、芳香脂肪族系などのポリイソシアネート化合物を使用することができ、ブロック剤もそれ自体既知のものが適用できる。さらに具体的には、例えば、特公昭52−6306号公報、特開昭47−759公報などに記載されており、本発明ではこれらの引用をもって詳細な説明に代える。
【0091】(H−2)ポリエポキシド化合物(1)下記構造式(X)で示される特定のエポキシ基を含有する化合物。
【0092】
【化16】


【0093】(2)下記構造式(XI)で示される特定のエポキシ基を含有する化合物。
【0094】
【化17】


【0095】[式中、R51は水素又はメチル基を表わす]
上記(1)および(2)のポリエポキシド化合物に関しては、特開平2−255874号公報に詳しく説明されているので、それらの具体的説明は該公報の引用をもって本明細書での説明に代える。
【0096】(3)下記一般式(XII)で示されるフェノール型ノボラックグリシジルエーテル樹脂。
【0097】
【化18】


【0098】上記式(XII)において、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし;R4およびR6は同一もしくは相異なり各々水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わし;R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;R7は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし、そしてnは0〜38の整数である。また、一般式(XII)においてベンゼン環の一部もしくは全部はナフタレン環で置換されていてもよい。
【0099】上記式(XII)で示されるフェノール型ノボラックグリシジルエーテルは、前記式(I)で示されるフェノール型ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物(A成分)の製造に用いる(A−1)、(A−2)および(A−3)成分のうち、(A−1)成分としての一般式(III)におけるR3をR7(炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子)に代えた以外は、すべて(A)成分の製造法に準じて得ることができる。
【0100】(4)芳香環の炭素原子に直接結合している下記一般式(XIII)で示されるグリシジルアミノ基にもとずくグリシジル基を1分子中に2個以上有する化合物。
【0101】
【化19】


上記式(XIII)において、R61は水素原子またはグリシジル基を表わす。該(4)成分は、1分子中に芳香環とグリシジル基とを有し、該グリシジル基は式(XIII)で示されるグリシジルアミノ基によって導入され、しかも式(XIII)における上記窒素原子(N)は該芳香環の炭素原子に直接結合している。
【0102】該(4)成分は、一般に、アニリン誘導体にエピハロヒドリン(好ましくは、エピクロルヒドリン)を、アルカリ金属水酸化物水溶液など(触媒)の存在下で反応させることによって得ることができる。該アニリン誘導体は、ベンゼン環やナフタレン環の炭素原子にアミノ基(−NH2)が直接結合した化合物であり、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、p−エチルアニリン、p−クレシジン、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、o−アニシジン、p−アニシジン、ナフチルアミンなどのベンゼン環やナフタレン環の炭素原子にアミノ基(−NH2)が1個直接結合したモノアニリン誘導体;フェニレンジアミン、2,4−トルイレンジアミン、ジアミノベンズアニリド、ジアニシジン、ジアミノジフェニルエーテル、3,5−ジアミノクロロベンゼン、3、3′−ジメチルベンジジン、1,5−ナフチレンジアミンなどのベンゼン環やナフタレン環の炭素原子にアミノ基(−NH2)が2個直接結合したジアニリン誘導体;などがあげられる。
【0103】また、上記のモノアニリン誘導体およびジアニリン誘導体に、たとえば、塩酸、燐酸および硫酸などの無機酸;パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸;酢酸亜鉛などの金属塩などを触媒とし、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)やケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を反応させて、複数の芳香環がメチレン基などによって結合した重縮合体としたものも使用することができ、この重縮合は芳香環の繰返し単位が2〜40、とくに2〜20の範囲内にあることが好ましい。かかる重縮合の具体例として、ジアミノジフェニルメタン、3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3−ジエチル−4,4−ジアミノジフェニルメタンなどの重縮合があげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0104】(4)成分に関し、上記のごとく得られる(4)成分のグリシジル基の一部に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、ノニルフェノール、フェノールなどのフェノール類;ダイマー酸、ステアリン酸、オレイン酸、大豆油脂肪酸などの高級脂肪酸;酢酸、ぎ酸、ヒドロキシ酢酸などの有機酸;アルキルアルコール、セロソルブ、カービトールなどのアルコール類;などから選ばれる1種以上を反応させて変性させてもよい。このうちフェノール類および高級脂肪酸類が特に好ましい。この変性にあたって、硼ふっ化亜鉛やテトラメチルアンモニウムクロリドなどの触媒を用いることが好ましい。
【0105】本発明で用いうる(4)成分は、蒸気圧浸透法で測定した数平均分子量が約200〜8000、特に500〜5000の範囲内にあり、そしてエポキシ当量が100〜2000、特に100〜600の範囲内にあるが好ましい。かかる(4)成分として、市販品も使用可能であり、例えば、GAN[日本化薬(株)製、N,N−ジグリシジルアニリン]、GOT[日本化薬(株)製、N,N−ジグリシジル−O−トルイジン]、MY720[日本チバガイギー社製、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン]、MY722[日本チバガイギー社製、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン]などがあげられる。
【0106】(H−3)1分子中に2個以上の炭素−炭素不飽和基(好ましくはα,β−不飽和基)を有する化合物。
【0107】そのような化合物には下記(1)および(2)に示すものがあげられる。
【0108】(1)1分子あたり平均2個以上の下記一般式(XIV)で示される3−アルコキシアルキル−3−(メタ)アクリロイルウレイド基を有し、かつ数平均分子量が800〜50000である樹脂。
【0109】
【化20】


【0110】[上記式(XIV)において、R63は水素原子又はメチル基を表わし;R64は炭素数1〜4のアルキレン基を表わし;そしてR65は炭素数1〜10のアルキル基を表わす]
上記樹脂(1)の詳細は特開平2−279774号公報に記載されており、ここでは該公報の引用をもって、該樹脂の詳細な記述に代える。
【0111】(2)ポリイソシアネート化合物と該イソシアネート基反応性水素原子および下記構造式(XV)で示される官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとの反応により得られる遊離イソシアネート基を実質的に有しない、1分子中に、α,β−エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物、並びにポリイソシアネート化合物と該イソシアネート基反応性水素原子および下記構造式(XV)で示される官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとの反応により得られる遊離イソシアネートを有する化合物と1級、2級アミノ基及び/または水酸基を有する樹脂との反応によって得られる1分子中にα,β−エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物。
【0112】
【化21】


【0113】上記化合物(2)の具体的な説明は特公昭55−30753号公報に記載されているので、ここでは該公報の引用をもって詳細な記述に代える。
【0114】カチオン電着塗料(V)において、カチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)との混合比率は、目的に応じて任意に選択できるが、例えば、該両成分の合計重量にもとずいて、一般に(U)成分は30〜90%、特に50〜80%の範囲内、そして(H)成分は70〜10%、特に50〜20%の範囲内とするのが好ましい。
【0115】また、該塗料(V)において、カチオン性樹脂(U)の水分散化又は水溶化を容易ならしめるために、該樹脂(U)の塩基は基の一部もしくは全部を、ぎ酸、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸などの酸成分で中和しておくことが好ましい。
自己硬化性塗料用樹脂(W):この樹脂(W)はカチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)とを部分反応させることによって得られる。この自己硬化性樹脂(W)を主成分とするカチオン電着塗料(X)はさらに硬化剤を配合することなしに、このままで加熱により塗膜を架橋硬化することができる。
【0116】ここで用いられる硬化剤(H)の種類は特に制限されないが、部分反応が容易に行われる部分ブロックポリイソシアネート化合物が好ましい。しかして、自己硬化性塗料用樹脂(W)は、ポリイソシアネート化合物1分子中に存在する2個以上のイソシアネート基の1個を残して、それ以外の全てをブロック剤でブロックしてなる部分ブロックポリイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基を、カチオン性樹脂(U)に不活性有機溶媒中で40〜200℃の温度において遊離のイソシアネート基が殆どまたは全くなくなるまで反応させることによって得られる。部分ブロックポリイソシアネート化合物とカチオン性樹脂(U)との比率は、硬化性を考慮し目的に応じて任意に選択することができるが、例えば、カチオン性樹脂(U)に含まれる第1級、第2級アミノ基と水酸基との合計モル数に対する部分ブロックポリイソシアネート化合物のモル数の比が0.4〜1.50の範囲内となるようにするのが好ましい。
【0117】また、自己硬化性塗料用樹脂(W)は、カチオン性樹脂(U)に、α,β−不飽和二重結合を導入したものであってもよく、そのような樹脂(W)は、ポリイソシアネート化合物1分子中に存在する2個以上のイソシアネート基の1個を残して、それ以外の全てのイソシアネート基をα,β−不飽和二重結合と水酸基または第2級アミド基などの活性水素とを有する化合物(たとえば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドなど)と反応させてなる、1分子中にα,β−不飽和二重結合と1個のイソシアネート基とを有するモノイソシアネート化合物を、カチオン性樹脂(U)に含まれる第1級、第2級アミノ基および水酸基のいずれかもしくはすべてに反応させることによって得ることができる。この場合、α,β−不飽和二重結合の導入量は、該樹脂固形分中、α,β−不飽和二重結合当量が200〜2000の範囲内となるようにするのが特に好ましい。
【0118】カチオン電着塗料(X):このカチオン電着塗料(X)は自己硬化性塗料用樹脂(W)を前記酸性化合物でプロトン化したものを主成分とし、これを水に溶解もしくは分散することによって得られる。硬化剤(H)は不要であるが、必要に応じて配合しても差支えない。
【0119】本発明のカチオン電着塗料(V)および(X)は、カチオン性樹脂(U)、および自己硬化性塗料用樹脂(W)のいずれかを主成分としているが、さらに必要に応じて体質顔料、防食顔料、分散剤、はじき防止剤、硬化促進剤などを配合することができる。このうち、顔料は下記顔料分散ペースト(Y)を用いて配合することが好ましい。
【0120】顔料分散ペースト(Y):この顔料分散ペースト(Y)はカチオン性樹脂(U)および自己硬化性塗料用樹脂(W)から選ばれた1種以上と顔料(着色顔料、体質顔料、防食顔料など)とを水中で混合分散してなり、さらに必要に応じて可塑剤、湿潤剤、界面活性剤または消泡剤などを含有していてもよい。
【0121】これらの各成分の混合分散は、ボールミル、サンドミル、クロウルス(Crowles)溶解機、連続分散機などを用いて行なうことができ、顔料を所望のサイズに分散し、上記樹脂によって湿潤させることが好ましい。分散後、顔料の粒子サイズは、10ミクロン以下(ヘルマン・グラインド・ゲージの度数で約6〜8)であることが好ましい。この分散は水中で行うことが好ましい。この場合、前記酸性化合物で、カチオン性樹脂(U)、および自己硬化性塗料用樹脂(W)中の塩基性基の一部もしくは全部を中和しプロトン化し水分散液としておくことが好ましい。酸性化合物の添加量は、これらの樹脂の中和価がKOH(mg/g)換算で5〜200、特に10〜150の範囲内なるように調整することが好ましい。顔料分散ペースト(Y)の水性分液中の水含有率は特に制限されないが、通常約20〜80重量%の範囲内が好ましい。
【0122】顔料分散ペースト(Y)における上記顔料の種類には特に制限はなく、例えば、カーボンブラック、チタン白、鉛白、酸化鉛、ベンガラなどの着色顔料;酸化アンチモン、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミニウムシリカ、炭酸マグネシウム、マグネシウムシリカ、クレー、タルクのような体質顔料;クロム酸ストロンチウム、クロム酸鉛、塩基性クロム酸鉛、鉛丹、ケイ酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、リン酸鉛、塩基性リン酸鉛、トリポリリン酸鉛、ケイクロム酸鉛、黄鉛、シアナミド鉛、鉛酸カルシウム、亜酸化鉛、硫酸鉛などの防食顔料があげられる。これらの顔料と塗料用樹脂との比率は、通常、固形分重量比で2/1〜7/1の範囲内が好ましい。
【0123】以上に述べた如くして調製されるカチオン電着塗料は、適当な導電性基体(被塗物)にカチオン電着塗装し、その塗膜を例えば80〜250℃、好ましくは120〜160℃の温度で加熱硬化させることができる。
【0124】特に、本発明のカチオン電着塗料による電着塗膜を160℃以下の低温で十分に硬化させるには、鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、マンガン化合物、銅化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、クロム化合物、ニッケル化合物、スズ化合物などから選ばれる1種もしくは2種以上の触媒を添加することが有効である。これら金属化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナートなどのキレート化合物;β−ヒドロキシアミノ構造を有する化合物と酸化鉛(II)とのキレー化反応生成物;2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛、安息香酸鉛、酢酸鉛、乳酸鉛、ギ酸鉛、グリコール酸鉛、オクチル酸ジルコニウムなどのカルボキシレート;などが挙げられる。
【0125】上記金属化合物は、カチオン性樹脂の固形分に対する金属含有率が一般に10重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%となるような量で使用することができる。
【0126】本発明によって得られるカチオン電着塗料は、カチオン性樹脂中の水分散性を付与するカチオン性基が第3級アミノ基であっても、低中和での水分散性に優れているため、高pH、高つきまわり性が得られる。また、該カチオン性樹脂(U)には第1級水酸基を有する化合物を多量に反応させることができるため、種々の硬化形成において有用な官能基である第1級水酸基を該樹脂中に多数導入することができ、硬化性が向上し、陰極電着塗装用として好適な樹脂組成物を提供することができる。
【0127】本発明のカチオン電着塗料を用いて導電性基体上に電着塗膜を形成する方法は特に制限されるものではなく、通常のカチオン電着塗装条件を用いて行なうことができる。例えば、該電着塗料に、必要に応じ顔料、硬化触媒、その他の添加剤を配合し、浴濃度(固形分濃度)5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%及び浴pH5〜8、好ましくは5.5〜7の範囲内のカチオン電着浴を調製する。その際、被塗物をカソードとし、アノードとしてはステンレス又は炭素板を用いるのが好ましい。電着塗装条件は、とくに制限されるものではないが、一般的には、浴温:20〜30℃、電圧100〜400V、好ましくは200〜300V、電流密度:0.01〜3A/dm2、通電時間:1〜5分、極面積比(A/C):2/1〜1/2、極間距離:10〜100cm、撹拌状態で電着することが望ましい。
【0128】さらに、本発明のカチオン電着塗料は、カチオン性樹脂(U)および自己硬化性樹脂(W)を用いているため、水分散性、貯蔵安定性、浴安定性、耐食性、平滑性などがすぐれている。
【0129】本発明によって提供されるカチオン電着塗料は、カチオン性樹脂中の水分散性を付与するカチオン性基が第3級アミノ基であっても、低中和での水分散性に優れているため、高pH、高つきまわり性が得られる。また、該カチオン性基には第1級水酸基を有するものを多量に使用することができるため、種々の硬化形式において有用な官能基である第1級水酸基を多数導入でき、硬化性が向上し、陰極電着塗装用として好適な樹脂組成物を提供することができる。
【0130】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、「%」および「部」は特にことわらない限りいずれも重量基準である。
【0131】I.製造例1)アミン化合物(B)の製造(B−1):温度計、撹拌機、還流冷却器および水分離器を取り付けた反応容器に、ステアリン酸285部とヒドロキシエチルアミノエチルアミン104部およびトルエン80部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し必要に応じてトルエンを除去し温度を上げながら反応水18部を分離除去した後残存するトルエンを減圧除去しアミン価150、凝固点76℃のアミン化合物(B−1)を得た。
【0132】(B−2): (比較例用)
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備え付けたフラスコに、モノエタノールアミン39部を仕込み、60℃に保ちながら、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド100部を滴下し、60℃で5時間反応させ、アミン化合物(B−2)を得た。
【0133】(2)フェノール性化合物(C)の製造(C−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ジエタノールアミン105部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部およびエチレングリコールモノブチルエーテル330部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−1)を得た。
【0134】(C−2):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、フェニルフェノール170部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部、テトラメチルアンモニウムクロリド0.2およびエチレングリコールモノブチルエーテル346部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−2)を得た。
【0135】(C−3):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、オレイン酸280部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部、テトラメチルアンモニウムクロリド0.2部およびエチレングリコールモノブチルエーテル374部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−3)を得た。
【0136】(C−4):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、前記アミン化合物(B−1)370部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部およびエチレングリコールモノブチルエーテル397部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−4)を得た。前記一般式(IX)のqは約3である。
【0137】(3)硬化剤(H)の製造(H−1):トリレンジイソシアネート174部に、50℃で2時間かけて、エチレングリコールモノエチルエーテル268.5部を滴下し、更に80℃で3時間保温して80%の固形分の硬化剤(H−1)を得た。
【0138】(H−2):温度計、撹拌機、還流冷却器および滴下ロートを取り付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート222部とメチルイソブチルケトン83.4部とジブチルチンジラウレート0.1部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1部を仕込み、100℃ヒドロキシエチルアクリレート116部を滴下しNCO価112になるまで反応させて硬化剤(H−2)を得た。
【0139】(H−3):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、EPICLON N−695[大日本インキ(株)、エポキシ当量213、n=7]1917部、エチレングリコールモノブチルエーテル590部、ノニルフェノール440部およびテトラメチルアンモニウムクロリド0.2部を仕込み、エポキシ当量が350になるまで150℃で反応させて硬化剤(H−3)を得た。
【0140】(H−4):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、EPICLON N−695[大日本インキ(株)、エポキシ当量213、n=7]1917部、エチレングリコールモノブチルエーテル620部、トール油脂肪酸560部およびテトラメチルアンモニウムクロリド0.2部を仕込み、エポキシ当量が370になるまで150℃で反応させて硬化剤(H−4)を得た。
【0141】(H−5):EHPE−3150[エポキシ当量180、ダイセル化学工業(株)製]100部をとエチレングリコールモノブチルエーテル25部を100℃で加熱溶解し、固形分80%、エポキシ当量180の硬化剤(H−5)を得た。
【0142】(H−6):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、ESMB−260[住友化学(株)、エポキシ当量260]100部を、エチレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱溶解し、硬化剤(H−6)を得た。
【0143】(H−7):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、MY720[日本チバガイギー(株)、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン]100部およびエチレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱溶解し、不揮発分80%、エポキシ当量115の硬化剤(H−7)を得た。
【0144】(H−8):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、イソフォロンジイソシアネート666部、パラベンゾキノン11.4部およびジブチルスズジラウレート11.4部を仕込み、120℃に昇温保持しながら、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド471部を滴下、反応させNCO価が110になった時点でトリメチロールプロパン134部を添加し、120℃で反応させNCO価が0になった時点でエチレングリコールモノブチルエーテル295部を加え硬化剤(H−8)を得た。
【0145】II.実施例実施例1カチオン性樹脂(U−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、DEN−438[エポキシ当量180、ダウケミカル日本(株)製、A成分]1008部、エチレングリコールモノブチルエーテル506部を仕込み、溶解後、ジエタノールアミン(B成分)373部、フェノール化合物(C−1)1651部およびアミノ化合物(B−1)742部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し150℃で反応させ、エポキシ基残量が0になったことを確認して、カチオン性樹脂(U−1)を得た。このものの固形分含量率は80%、アミン価は94、1級水酸基当量は363および(A)成分含有率は30.1%である。
【0146】実施例2〜6カチオン性樹脂(U−2)〜(U−6)を含む樹脂組成物:撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、下記表1に示す(A)、(B)、(C)成分および溶剤を仕込み、混合撹拌しながら徐々に150℃で反応させ、エポキシ基残量が0になったことを確認して反応を終了し、カチオン性樹脂(U)を得た。
【0147】次いで、該カチオン性樹脂(U)の存在下で、下記表1に示すその他の成分を混合し、150℃で5時間反応させて、エポキシ基残量が0であることを確認してから反応をとめ、カチオン性樹脂(U)を含む組成物を得た。
【0148】
【表1】


【0149】表1において、BREN-S : エポキシ当量285のブロム変性ノボラックフェノールポリグリシジルエーテル(日本化薬(株)製)
DEN-438 : エポキシ当量180のノボラックフェノールポリグリシジルエーテル(ダウケミカル日本(株)製)
EOCN-102S: エポキシ当量215のクレゾールノボラックフェノールポリグリシジルエーテル(日本化薬(株)製)
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル: エポキシ当量380実施例7カチオン性樹脂(U−7):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、DEN−438[エポキシ当量180、ダウケミカル日本(株)製、]1008部およびエチレングリコールモノブチルエーテル1045部を仕込み加熱溶解後、ジエタノールアミン378部、アミノ化合物(B−1)742部およびビスフェノールA2052部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0150】その後ジエタノールアミン630部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル4370部およびエチレングリコールモノブチルエーテル1250部を添加し、150℃で5時間反応させエポキシ基残量が0であることを確認し固形分80%、アミン価61、第1級水酸基当量510、A成分11%のカチオン性樹脂(U−7)を得た。
実施例8自己硬化性塗料用樹脂(W−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、DEN−438[エポキシ当量180、ダウケミカル日本(株)製、]1008部およびメチルイソブチルケトン931部を仕込み加熱溶解後ジエタノールアミン378部、アミノ化合物(B−1)742部およびビスフェノールA1596部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0151】その後ジエタノールアミン630部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル3610部およびメチルイソブチルケトン1060部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応させ80℃に冷却した。
【0152】次に、硬化剤(H−2)3803部を添加し80℃でNCO価が0になるまで反応させエチレングリコールモノブチルエーテルを2752部添加しメチルイソブチルケトン2752部を加熱減圧除去し固形分80%、アミン価51、第1級水酸基当量1223、A成分9%、α,β−不飽和2重結合当量1223の自己硬化性樹脂(W−1)を得た。
【0153】比較例1撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ジエタノールアミン21部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル950部、エポキシ当量340のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル340部およびビスフェノールA2052部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、120℃で反応させ、エポキシ当量が980であることを確認後、エチレングリコールモノブチルエーテル479部を添加し100℃に保ちならが、ジエタノールアミン158部及びアミノ化合物(B−2)43部を添加し、粘度上昇が止るまで反応させ、固形分80%、アミン価54、第1級水酸基当量518の比較用樹脂((1))を得た。(A成分無し)
比較例2撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、DEN−438[エポキシ当量180、ダウケミカル日本(株)製、]1008部およびエチレングリコールモノブチルエーテル399部を仕込み加熱溶解後ジエタノールアミン588部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0154】その後ジエタノールアミン630部、エポキシ当量380のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル1520部を、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル3040部、ビスフェノールA1596部およびエチレングリコールモノブチルエーテル1696.5部を添加し、150℃で5時間反応させエポキシ基残量が0であることを確認し、固形分80%、アミン価78、第1級水酸基当量361、A成分12%の比較用樹脂((2))を得た。(C成分使用せず)
実施例9顔料分散ペースト(Y−1):上記カチオン性樹脂(U−1)10部にチタン白(石原産業(株)製タイペックCR93)20部、カーボン(三菱化成(株)製、MA−7)2部、トリポリリン酸アルミ(帝国化工(株)製、Kホワイト84)4部、クレー(ジークライト化学(株)製、ジークライト)24部、酢酸0.4部および脱イオン水39.6部を加えて練り合わせた後、ガラスビーズ200部を加えてペイントシェーカーで分散し、粒ゲージでの粗粒子が10μ以下の固形分58%の顔料分散ペースト(Y−1)を得た。
【0155】実施例10〜18および比較例1〜2上記カチオン性樹脂に、硬化剤および中和剤を表2の配合によって加え、十分に撹拌しながら脱イオン水を加えて固形分30%のエマルションを得た。
【0156】表2に示す触媒と顔料分散ペースト(Y−1)75部とを予め混合し、これを、得られた上記エマルション333部に配合し、ついで脱イオン水を加え固形分含有率20%電着塗料を得た。
【0157】
【表2】
表 2 実施例 カチオン 脱イオン 樹脂 硬化剤 中和剤 触媒種 触媒量 10 U-1 62.5 H-4 62.5 蟻酸 1.2 207.1 オクテン酸鉛 2.6 11 U-2 93.7 H-3 31.3 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 12 U-3 75.0 H-3 50.0 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 13 U-4 69.0 H-8 56.0 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 14 U-5 93.7 H-5 31.3 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 15 U-6 81.0 H-6 44.0 蟻酸 1.2 207.1 オクテン酸亜鉛 2.6 16 U-6 100 H-7 25.0 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 17 U-7 75.0 H-4 50.0 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 18 W-1 125 ─ 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 比較例 1 ■ 93.7 H-5 31.3 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 2 ■ 93.7 H-5 31.3 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6実施例10〜18および比較例1〜2で得た電着浴を用いて、リン酸亜鉛処理板および無処理鋼板に、25℃の浴温で100Vから250Vまでの電圧で3分間電着し、150℃で30分間焼きつけて得られる塗板のうち硬化塗膜厚20μの塗板を選択し、塗膜性能試験に供した。試験結果は表3に示す。
【0158】
【表3】
表 3 安定性 粒径(μ) 実施例 初期 貯蔵後 pH 塗面平滑性 処理SST 実施例10 0.10 0.10 6.2 ○ 合格 〃 11 0.18 0.20 6.4 ○ 合格 〃 12 0.25 0.23 6.4 ○ 合格 〃 13 0.20 0.20 6.0 ○ 合格 〃 14 0.18 0.20 6.3 ○ 合格 〃 15 0.20 0.18 6.0 ○ 合格 〃 16 0.18 0.20 6.0 ○ 合格 〃 17 0.15 0.16 6.5 ○ 合格 〃 18 0.10 0.10 6.0 ○ 合格 比較例 1 0.25 0.6< 6.1 △ 不合格 〃 2 0.6< 沈殿 6.0 ○ 不合格試験方法安定性: 固形分含有率30%エマルションを30℃で15日間密閉貯蔵し、貯蔵前後のエマルション粒径の変化をコールター社、ナノサイザー N−4−を用いて測定した。粒径が0.3μ以下では水分散性がすぐれているといわれている。
【0159】pH: JIS K−0802−83に記載のpH自動計測器を用い、JISZ−8802−78に記載の測定法を用いて測定した。
【0160】塗面平滑性:前記した条件で塗装、焼付け硬化した塗膜面を目視で判断した。
SST耐ソルトスプレー性:前記した塗装条件で20μを得る電圧で試験塗料を塗装し、160℃で20分間焼付けた塗装板をJIS Z−2871の手法に従って試験し、塗膜のカット(線状切傷)部からのクリーク巾片側2.0mm以内及びカット部以外の塗膜のフクレが8F(ASTM)以下の時合格とした。試験時間は1000時間であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)下記一般式(I)
【化1】


[式中、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし;R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;R4およびR6は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはグリシジルオキシフェニル基を含有する有機基を表わし;R5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてnは1〜38の整数である]で示されるフェノール型ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級アミン化合物、および(C)フェノール性水酸基を1分子中に少なくとも1個有するフェノール化合物を反応させて得られる第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)を主成分とすることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
【請求項2】 グリシジルエーテル化物(A)が、エポキシ当量が160〜1000で、かつ1分子中にグリシジル基を平均3.5〜10個有するノボラック型フェノールのグリシジルエーテル樹脂である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項3】 フェノール化合物(C)を、グリシジルエーテル化物(A)1モルあたり0.05〜1.4の割合で付加させたものである請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項4】 フェノール化合物(C)が、下記一般式(II)
【化2】


[式中、R31およびR32は同一もしくは相異なり各々水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わし;そしてR33〜R36は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わす]で示されるフェノール性水酸基含有官能基を1分子あたり平均0.5〜1.5個含有し、かつ数平均分子量500〜20000である化合物である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項5】 請求項1記載の第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)との混合物を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料(V)。
【請求項6】 硬化剤(H)が、(H−1)ブロックポリイソシアネート化合物、(H−2)ポリエポキシド化合物及び(H−3)1分子中に2個以上の不飽和基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項5記載のカチオン電着塗料(V)。
【請求項7】 請求項1記載の第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)と硬化剤(H)とを部分的に反応させて得られる自己硬化性塗料用樹脂組成物(W)。
【請求項8】 請求項7記載の自己硬化性塗料用樹脂組成物(W)を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料(X)。
【請求項9】 請求項1記載の第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(U)または請求項7記載の自己硬化性塗料用樹脂組成物(W)と顔料(G)とを主成分とすることを特徴とする顔料分散ペースト(Y)。
【請求項10】 請求項6記載のカチオン電着塗料(V)または請求項8記載のカチオン電着塗料(X)で塗装された製品。

【公開番号】特開平5−295321
【公開日】平成5年(1993)11月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−129740
【出願日】平成4年(1992)4月24日
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)