説明

水性流からオキシアニオンを除去するために希土類を用いる方法

【課題】膨大な量の飲料水、井戸水及び工業用水から多くの異なった種々の毒性金属を経済的且つ効果的に除去可能であり、また、これらの水性流から、種々の放射性物質を単独又は非放射性毒性金属と一緒に除去することができるそれらの技術を提供する。
【解決手段】5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、83、及び92からなる群から選択された原子番号を有する元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含有する水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の支持されていない希土類化合物を含む収着剤と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを除去し、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物に比較して減少した水性流体を生成させることを含む、オキシアニオン除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に水性流から重金属及びそれらの放射性同位元素のオキシアニオンのような毒性物質を除去するための方法及び装置に関し、特に地下水、廃水、及び飲料水からそのような毒性物質を希土類化合物を用いて除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毒性金属及びそれらの放射性同位元素は、原子力プラントにより発生したもの、毒性金属含有殺虫剤の過去の農業的使用を含めた地球化学的反応、工業的廃棄物の廃棄、及び他の源から極めて頻繁に地下水へ混入される。放射性物質と毒性金属との併合物は、屡々採掘場近くの流出水中に見出されている。環境規制は、それらの毒性物質を極めて低いレベルまで除去することを屡々要求している。
【0003】
従来、水性系から金属を除去するために種々の技術が用いられてきた。そのような技術の例には、アルミナ及び活性炭のような高表面積材料への吸着、陰イオン交換樹脂によるイオン交換、凝集剤を用いた共沈、及び電気透析が含まれる。しかし、金属を除去するための殆どの技術は、複数のこれらの金属及び(又は)それらの放射性同位元素を除去するためには一般的には効果的ではない。更に、大量の都市水供給で重金属を除去して飲料水を生成させるために用いられてきた技術は、空き地の必要性及び危険な化学物質を使用する必要性のため、住宅地用としては一般に実施できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、膨大な量の飲料水、井戸水、及び工業用水から多くの異なった種々の毒性金属を経済的且つ効果的に除去する新しい技術が必要である。更に、これらの水性流から、種々の放射性物質を、単独又は非放射性毒性金属と一緒に除去することができるそれらの技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、今度、水及び他の水性供給原料から、通常一価及び(又は)多価オキシアニオンの形態になっている毒性金属及び(又は)放射性元素を、そのような汚染物を含む前記水性供給物を希土類化合物又は希土類化合物の混合物で処理することにより効率的及び効果的に除去することができることが判明した。本発明の一つの態様により、汚染された水性供給物を、酸化ランタン、二酸化セリウム、又はそれらの混合物のような希土類化合物又はそのような化合物の混合物を含む固体収着剤と接触させ、それらの汚染物の濃度が減少した水性液体を生成させる。固体収着剤は、本質的に純粋な希土類化合物又はそのような化合物の混合物からなっていてもよいが、希土類又は希土類の混合物は、通常粒状固体上に支持されているか、又はそれらと混合されている。収着剤中の希土類化合物は、水性供給物中の金属、放射性同位元素、又は他の毒性元素のオキシアニオンと反応して、不溶性物質を形成し、それらが不溶性収着剤粒子に吸着、吸収、又はそれらの両方により固定され、それにより実質的に精製された水性流を与える結果になる。
【0006】
収着剤が、希土類化合物(一種又は複数種)を支持するか、又はそれらと混合される粒状固体を含むならば、それらの粒状固体は、通常希土類に対するイオン交換容量がむしろ小さく、通常20ミリ当量/100g未満であるが、必ずしもそうである必要はない。粒状固体は、アルミナ、珪藻土、多孔質重合体材料、耐火性酸化物、又は耐火性非酸化物にすることができる。粒状固体は、特に、もし希土類に対するイオン交換容量が20ミリ当量/100g未満であるならば、粘土にすることもできる。
【0007】
本発明の別の態様として、汚染物オキシアニオンを含む水性供給物を、固体希土類収着剤の代わりに一種類以上の可溶性希土類化合物の水溶液で処理する。希土類水溶液を水性供給物中に注入し、そこでその可溶性希土類化合物が汚染物オキシアニオンと反応して供給物からそれらを沈澱させ、それによりそれら汚染物の濃度が減少した水性液体を生成する。
【0008】
本発明の方法の好ましい態様として、ビスマス、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、アンチモン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含有する水性液体を、二酸化セリウム、又は二酸化セリウムと酸化ランタンとの組合せを粒状アルミナ又は珪藻土に支持させたものを含む収着剤と接触させる。それら希土類はオキシアニオンと反応して不溶性化合物を形成し、それらが粒状収着剤上に収着され、それにより汚染物オキシアニオンが欠乏した水性流出物を生ずる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な記述
本発明の方法は、飲料水及び地下水から、通常汚染元素の一価及び(又は)多価オキシアニオンの形態なっている種々の金属及び(又は)放射線物質を除去することを主に考慮に入れているが、この方法は、望ましくない量のそれら汚染物を含有するどのような水性液体供給物でもそれらを処理するのに用いることができることは分かるであろう。そのような液体供給物の例には、就中、井戸水、地表水、例えば、川、湖、池、及び湿地からの水、農業用水、工業処理からの廃水、及び地熱流体が含まれる。
【0010】
本発明の方法により効果的に処理される水性供給物は、汚染物元素のオキシアニオンの形態で多数の汚染物金属、メタロイド、及び(又は)放射線同位元素の一種類以上を含んでいてもよい。供給物中に見出すことができる金属又はメタロイド汚染物の例には、5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、及び83の原子番号を有する元素のオキシアニオンが含まれる。これらの元素には、硼素、アルミニウム、珪素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、インジウム、錫、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、鉛、及びビスマスが含まれる。92の原子番号を有するウランは、供給物中に存在することがある放射性汚染物の例である。本発明の目的から、オキシアニオンには、酸素を、一種類以上の他の元素と組合せて含有するどのような陰イオンでも含まれる。
【0011】
本発明の方法の一つの好ましい態様として、上で論じたオキシアニオンの一種類以上で汚染された水性供給物を、その供給物中の水が液体状態になっているような温度及び圧力、通常周囲条件で収着容器中へ入口から通過させる。もし供給物が粒状固体で汚染されているならば、通常、それを収着容器中へ送る前にそれら固体を除去するために処理する。粒状固体を除去するのに、濾過、遠心分離、及びハイドロサイクロンのような、どのような固・液分離法でも用いることができる。通常収着容器には、収着剤の充填床が入っており、それを通って汚染供給物が下方へ流れる。しかし、もし望ましいならば、収着剤の膨張又は流動床を通って上方へ通すことができる。
【0012】
収着容器中で、水性供給物を、一種類以上の希土類化合物を含む固体収着剤と接触させる。通常、収着剤はランタン化合物、好ましくは酸化ランタン、セリウム化合物、好ましくは二酸化セリウム、又は酸化セリウム水和物、又はランタン化合物とセリウム化合物との混合物を含んでいるのが好ましい。しかし、収着剤は、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウム、及びスカンジウムの化合物を含めた他の希土類の化合物を含んでいてもよい。これらの希土類の酸化物が通常好ましいが、希土類珪酸塩を除き、水和希土類酸化物、希土類炭酸塩、希土類燐酸塩、希土類フッ化物、等を含めた他の水不溶性希土類化合物を用いることができる。
【0013】
固体収着剤は、本質的に、希土類化合物又はそのような化合物の混合物からなっていてもよく、或はそれは、粒状固体と混合されているか、又は粒状固体基体に支持された希土類化合物(一種又は複数種)を含んでいてもよい。前に言及したように、もし希土類化合物(一種又は複数種)が、粒状固体と混合されているか、又はその上に支持されているならば、それらの固体は、希土類化合物(一種又は複数種)に対し、20ミリ当量/100g未満の陽イオン交換容量を持つであろう。粒状固体は水不溶性でもあろうが、約5〜1,000m/g、通常約80〜800m/gの比表面積、及び約2〜約1,200μ、通常約20〜約1,000μの粒径を有する。そのような固体の例には、アルミナ、シリカ、及びチタニアのような金属酸化物;窒化チタン、窒化珪素、及び炭化珪素のような耐火性非酸化物;珪藻土;ムライト;巨大網状組織ビーズのような多孔質重合体材料;多孔質炭素;及び繊維状材料;が含まれる。希土類化合物(一種又は複数種)は、アルミナ又は珪藻土と混合されているか、又はその上に支持されているのが通常好ましい。
【0014】
或る種類の粘土も、粒状固体として用いることができ、希土類化合物(一種又は複数種)に対し、20ミリ当量/100g未満の陽イオン交換容量を有する粘土が好ましい。そのような粘土の例には、クロライト、ハロイサイト、及びカオリンが含まれる。粘土が希土類化合物(一種又は複数種)のための基体として用いられ、それらの化合物の水に対する溶解度が低いならば、粘土への顕著なイオン交換は存在しない。従って、その粘土は厳密に担体として働く。
【0015】
収着容器中で、水性供給物は、収着剤を含む水不溶性粒状固体とスラリーにするか又は収着剤粒子の固定床又は膨張床に通す。もし収着剤が粒状固体と混合された希土類化合物(一種又は複数種)を含むならば、その混合物は、通常酸化物として計算して約5.0〜95重量%の希土類化合物(一種又は複数種)を含む。混合物は、酸化物として計算して好ましくは約10〜50重量%、一層好ましくは約20〜30重量%の希土類化合物(一種又は複数種)を含むであろう。
【0016】
希土類化合物(一種又は複数種)が、収着容器中で粒状固体と混合された状態又はそれに支持された状態で存在するか否かには無関係に、収着容器中のそれら固体は、直径が約2〜1,2000μの範囲にあるのが典型的であろう。希土類化合物(一種又は複数種)及び粒状固体が固定床として収着容器中に存在する場合、床を通る水性供給物の流れが均一に分布されるように、それら粒子が球状であるのが通常好ましい。しかし、もし望ましいならば、それら粒子は、押出し物の形態を含めた他の形態をとっていてもよい。
【0017】
収着容器を水性供給物が通過する時、その水性供給物中のオキシアニオンが、希土類化合物の表面にあるLa+3及びCe+4のような希土類陽イオンと接触し、反応し、不溶性希土類オキシアニオン化合物を形成し、それが収着容器中、希土類化合物、及びもし存在するならば粒状固体の上に吸着及び(又は)吸収されたままになる。そのような反応の例は、次の式によって例示される:
Ce+4(CeO)+オキシアニオン−4 → Ceオキシアニオン↓
La+3(La)+オキシアニオン−3 → Laオキシアニオン↓
【0018】
水性供給物中に見出されることがある一般的オキシアニオンの例には、CrO−2、WO−2、MoO−2、SbO−1、MnO−2、UO−2、及びVO−3が含まれる。これらのオキシアニオンから収着容器中で形成される対応する不溶性ランタン及びセリウムオキシアニオン化合物には、就中、クロム酸ランタン[La(CrO)]、クロム酸セリウム[Ce(CrO)]、タングステン酸ランタン[La(WO)]、タングステン酸セリウム[Ce(WO)]、モリブデン酸ランタン[La(MoO)]、モリブデン酸セリウム[Ce(MoO)]、アンチモン酸ランタン[La(SbO)]、アンチモン酸セリウム[Ce(SbO)]、マンガン酸ランタン[La(MnO)]、ウラン酸ランタン[La(UO)]、ウラン酸セリウム[Ce(UO)]、及びバナジン酸ランタン[LaVO]が含まれる。
【0019】
ある場合には、汚染された水性供給物が金属を、それらのオキシアニオンを形成しにくくする酸化状態で含むことがあり、その場合、本発明に従ってそれら金属を水から除去することができる。例えば、発癌性物質ではない+3酸化状態のクロムは、水から除去しにくく、EPAにより発癌性物質として挙げられている+6酸化状態のクロムのオキシアニオンへ転化する傾向がある。酸化状態が+4のセリウム及びプラセオジム、Ce+4及びPr+4は、非常に強い酸化剤であり、それらは+3酸化状態のクロムを、水中で主にCrO−2及び(又は)Cr−2オキシアニオンとして存在する+6酸化状態のクロムへ酸化することができる。そのような酸化反応中、Ce+4及びPr+4陽イオンは、Ce+3及びPr+3陽イオンへ還元され、それらが今度はクロムオキシアニオンと容易に反応し、不溶性沈澱物を形成する。従って、或る場合には、収着剤中に、CeO及びPrOのように、+4の酸化状態の希土類元素を含む希土類化合物を使用することが有利なこともある。
【0020】
収着容器は、通常約1℃〜約100℃の温度、好ましくは周囲温度に維持される。収着剤が収着容器中の固定床又は充填床として存在する場合、沈澱した希土類オキシアニオン化合物は、収着剤の固体粒子により収着されるか、さもなくばそれら固体粒子に伴われているであろう。そのため、収着容器を出る水性流体は、本質的に固体を含まず、非常に僅かな量のオキシアニオンしか含まないであろう。もし収着剤が収着容器中で水性供給物とスラリーにされるならば、容器からの流出物は、通常、容器中で形成された不溶性希土類オキシアニオン化合物を含めた粒状収着剤粒子を、オキシアニオン欠乏液体から分離するように処理する。分離は液体から粒子を除去することができるどのような型の装置でも行なうことができるが、典型的には、濾過システムが用いられる。
【0021】
本発明の方法の好ましい態様として、収着容器としてカートリッジ、フィルター、又は媒体カラムの入った精製装置を用いて、汚染物オキシアニオンを含有する住宅用飲料水を処理する。処理装置は、希土類収着剤の入った濾過装置を有する独立した入れ物、又は台所の流しの下に嵌まるように設計したカートリッジ型の装置にすることができる。これらの装置は、家庭又は事業所に入る水がフィルター又はカートリッジを通過した後に流し台の蛇口に入るように設置する。濾過装置及びカートリッジ型装置は、極めて簡単であり、飲料水の供給源の方へ取付けた入り口(inlet)と、通常固定床の形態をした希土類収着剤の入ったフィルター又はカートリッジと、そのフィルター又はカートリッジを出るオキシアニオン欠乏飲料水を蛇口へ送るように流しの蛇口と連通した出口(outlet)とを有する。別法として、カートリッジ型装置又は濾過装置は、蛇口を出た水がそのカートリッジ型装置又は濾過装置を通った後に消費されるように、蛇口に取付けられるように設計することができる。
【0022】
フィルター又はカートリッジの中では、一種類以上の汚染金属又は元素のオキシアニオンが収着剤中の希土類陽イオンと反応し、その結果生じた希土類オキシアニオン化合物が固定床の固体に収着される。カートリッジ型装置又は濾過装置の一つの中の固定床が希土類オキシアニオン化合物で飽和したならば、そのカートリッジ又はフィルターを同じか又は同様な設計の新しいカートリッジ又はフィルターと交換する。次に、その使用済みカートリッジ又はフィルターを、法的に認可されたやり方で廃棄する。
【0023】
前に述べたように、本発明の別の態様として、汚染された水性供給物を、希土類化合物を含む固体収着剤の代わりに、一種類以上の水溶性希土類化合物の溶液で処理する。本発明のこの態様では、希土類化合物の溶液をその水性供給物に注入し、希土類化合物が汚染物オキシアニオンと反応し、それらを不溶性希土類オキシアニオン化合物の形で沈澱させるようにする。水性供給物中のオキシアニオンが合理的な時間内で沈澱するように、充分な希土類化合物を用いる。通常、水性供給物に添加される溶液中の希土類化合物の濃度は、水性供給物中のオキシアニオンの濃度と同様である。用いることができる水溶性希土類の例には、希土類塩化物、希土類硝酸塩、希土類アンモニウム硝酸塩、及び希土類硫酸塩が含まれ、好ましくはランタン及びセリウムの塩化物、硝酸塩、アンモニウム硝酸塩、及び硫酸塩である。
【0024】
本発明の性質及び目的を、次の例により更に例示する。それら例は、特許請求の範囲により規定される本発明を単に例示する目的で与えられており、本発明を限定するものではない。それらの例は、オキシアニオンの形態の種々の元素を、二酸化セリウム、酸化ランタン、及びそれらの混合物を用いて水から除去することができることを示している。
【0025】
例1〜3
試薬級二クロム酸カリウムを蒸留水に溶解することにより、Crとして計算して1.0ppmwのクロムを含む試験溶液を調製した。この溶液は、オキシアニオンの形のCr+6を含有し、他の金属オキシアニオンは含んでいなかった。0.5gの酸化ランタン(La)と、0.5gの二酸化セリウム(CeO)との混合物を、ガラス容器中で100mlの試験溶液でスラリーにした。得られたスラリーをテフロン(登録商標)被覆磁気撹拌棒で15分間撹拌した。撹拌後、ワットマン(Whatman)#41濾紙を通して濾過することにより水と固体とを分離し、誘導結合プラズマ原子放射分光光度計を用いてクロムについて分析した。この手順を二回繰り返したが、酸化ランタンと二酸化セリウムとの混合物を100mlの試験溶液でスラリーにする代わりに、夫々の1.0gを用いた。それら3つの試験の結果を、下の表1に記載する。
【0026】
【表1】

【0027】
上記から分かるように、酸化ランタン、二酸化セリウム、及びそれらの等混合物は、試験溶液からクロムを98%超除去するのに有効であった。
【0028】
例4〜6
例1〜3の手順を繰り返した。但し、クロム試験溶液の代わりに、Sbとして計算して1.0ppmwのアンチモンを含む試験溶液を用いた。アンチモン試験溶液は、100ppmwのアンチモンと共に、As、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Li、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Se、Sr、Ti、Tl、V、及びZnを夫々100ppmw含有する公認標準溶液を蒸留水で希釈することにより調製した。これらの試験結果も表1に記載してあり、二種類の希土類化合物が、単独でも或は混合物としてでも、試験溶液から90%以上のアンチモンを除去するのに有効であったことを示している。
【0029】
例7〜9
例1〜3の手順を繰り返した。但し、クロム試験溶液の代わりに、Moとして計算して1.0ppmwのモリブデンを含む試験溶液を用いた。モリブデン試験溶液は、100ppmwのモリブデンと共に、As、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Li、Mg、Mn、Ni、Pb、Sb、Se、Sr、Ti、Tl、V、及びZnを夫々100ppmw含有する公認標準溶液を蒸留水で希釈することにより調製した。これらの試験結果も表1に記載してあり、酸化ランタン、二酸化セリウム、及びそれらの等重量混合物が、試験溶液から99%超のモリブデンを除去するのに有効であったことを示している。
【0030】
例10〜12
例1〜3の手順を繰り返した。但し、クロム試験溶液の代わりに、Vとして計算して1.0ppmwのバナジウムを含む試験溶液を用いた。バナジウム試験溶液は、100ppmwのバナジウムと共に、As、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Fe、Li、Mg、Mn、Mo、Ni、Pb、Sb、Se、Sr、Ti、Tl、及びZnを夫々100ppmw含有する公認標準溶液を蒸留水で希釈することにより調製した。これらの試験結果も表1に記載してあり、酸化ランタン、及び酸化ランタンと二酸化セリウムとの等重量混合物が、試験溶液から98%超のバナジウムを除去するのに有効であったが、二酸化セリウムは約88%のバナジウムを除去したことを示している。
【0031】
例13〜15
例1〜3の手順を繰り返した。但し、クロム試験溶液の代わりに、Uとして計算して2.0ppmwのウランを含む試験溶液を用いた。ウラン試験溶液は、1,000ppmwのウランを含有する公認標準溶液を蒸留水で希釈することにより調製した。この溶液は他の金属は含んでいなかった。それらの試験結果は表1に記載してあり、例10〜12の場合と同様に、酸化ランタン、及び酸化ランタンと二酸化セリウムとの等重量混合物は、試験溶液からウランを大部分除去するのに有効であったことを示している。しかし、それらの例の場合と同様に、二酸化セリウムは約75%のウランを除去する程度にしか効果的でなかった。
【0032】
例16〜18
例1〜3の手順を繰り返した。但し、クロム試験溶液の代わりに、Wとして計算して1.0ppmwのタングステンを含む試験溶液を用いた。タングステン試験溶液は、1,000ppmwのタングステンを含有する公認標準溶液を蒸留水で希釈することにより調製した。その溶液は他の金属は含んでいなかった。それらの試験結果は表1に記載してあり、酸化ランタン、二酸化セリウム、及び酸化ランタンと二酸化セリウムとの等重量混合物は、試験溶液からタングステンを95%以上の除去するのに同等に有効であったことを示している。
【0033】
本発明を、幾つかの態様に関連して記述してきたが、上記記述を参照して多くの変化、修正、及び変更が当業者には明らかになるであろうことは明白である。従って、添付の特許請求の範囲及びその本質内に入るそのような変化、修正、及び変更は、全て本発明に包含されるものである。
【0034】
本願に係る発明の諸態様は、以下のようにまとめられる。
[1].5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、83、及び92からなる群から選択された原子番号を有する元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含有する水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の希土類化合物を含む収着剤と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを除去し、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物に比較して減少した水性流体を生成させることを含み、然も、前記希土類化合物(一種又は複数種)が、20ミリ当量/100gより大きな前記希土類化合物(一種又は複数種)に対する陽イオン交換容量を有する粒状固体上には支持されていない、オキシアニオン除去方法。
[2].収着剤がランタン化合物を含む、上記[1]項に記載の方法。
[3].収着剤がセリウム化合物を含む、上記[1]項に記載の方法。
[4].収着剤が希土類化合物の混合物を含む、上記[1]項に記載の方法。
[5].希土類化合物の混合物が、ランタン化合物とセリウム化合物とを含む、上記[4]項に記載の方法。
[6].希土類化合物の混合物が、プラセオジム化合物とセリウム化合物とを含む、上記[4]項に記載の方法。
[7].供給物が、ビスマス、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、アンチモン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[1]項に記載の方法。
[8].供給物が、CrO−2、Cr−2、WO−2、MO−2、SbO−1、MnO−2、UO−2、及びVO−3からなる群から選択された一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[7]項に記載の方法。
[9].セリウム化合物が、二酸化セリウムを含む、上記[3]項に記載の方法。
[10].収着剤が、希土類化合物又は希土類化合物の混合物から本質的になる、上記[1]項に記載の方法。
[11].収着剤が、20ミリ当量/100gより小さな陽イオン交換容量を有する粒状固体上に支持された一種類以上の希土類化合物を含む、上記[7]項に記載の方法。
[12].収着剤が、20ミリ当量/100gより小さな陽イオン交換容量を有する粒状固体と混合された一種類以上の希土類化合物を含む、上記[7]項に記載の方法。
[13].20ミリ当量/100gより小さな陽イオン交換容量を有する粒状固体が、
アルミナ、珪藻土、多孔質重合体材料、耐火性酸化物、及び非酸化物耐火物からなる群から選択される、上記[11]項に記載の方法。
[14].20ミリ当量/100gより小さな陽イオン交換容量を有する粒状固体が、
アルミナ、珪藻土、多孔質重合体材料、耐火性酸化物、及び非酸化物耐火物からなる群から選択される、上記[12]項に記載の方法。
[15].粒状固体が、陽イオン交換容量を本質的にもたない、上記[11]項に記載の方法。
[16].粒状固体が、陽イオン交換容量を本質的にもたない、上記[12]項に記載の方法。
[17].収着剤が、アルミナ又は珪藻土と混合されるか、又はそれらに支持された二酸化セリウムを含む、上記[7]項に記載の方法。
[18].収着剤が、アルミナ又は珪藻土と混合されるか、又はそれらに支持された酸化ランタンを含む、上記[7]項に記載の方法。
[19].水性供給物が、地下水、地表水、飲料水、工業廃水、農業用水、池水、川水、湿地水、及び地熱水からなる群から選択される、上記[7]項に記載の方法。
[20].供給物が、クロム、モリブデン、バナジウム、ウラン、タングステン、及びアンチモンからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[2]項に記載の方法。
[21].供給物が、クロム、モリブデン、バナジウム、ウラン、タングステン、及びアンチモンからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[3]項に記載の方法。
[22].供給物が、ビスマス、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[7]項に記載の方法。
[23].ビスマス、マンガン、モリブデン、アンチモン、鉛、ウラン、及びハフニウムからなる群から選択された元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含む水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の希土類化合物を含む収着剤と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを除去し、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物と比較して減少した水性流体を生成させることを含む、オキシアニオン除去方法。
[24].水性供給物が、モリブデン、ウラン、及びアンチモンからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含み、収着剤が二酸化セリウムを含む、上記[23]項に記載の方法。
[25].水性供給物が、モリブデン、ウラン、及びアンチモンからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含み、収着剤が酸化ランタンを含む、上記[23]項に記載の方法。
[26].水性供給物が、ビスマス、マンガン、モリブデン、アンチモン、ウラン、及びハフニウムからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[23]項に記載の方法。
[27].水性供給物が、マンガン、モリブデン、ウラン、及びハフニウムからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[26]項記載の方法。
[28].5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、83、及び92からなる群から選択された原子番号を有する元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含有する水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の可溶性希土類化合物の水溶液と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを沈澱させ、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物と比較して減少した水性流体を生成させることを含む、オキシアニオン除去方法。
[29].水性溶液が、希土類塩化物、希土類硝酸塩、希土類アンモニウム硝酸塩、及び希土類硫酸塩からなる群から選択された一種類以上の希土類化合物を含む、上記[28]項に記載の方法。
[30].希土類化合物(一種又は複数種)が、セリウム化合物及びランタン化合物からなる群から選択される、上記[29]項に記載の方法。
[31].供給物が、ビスマス、バナジウム、クロム、マンガン、モリブデン、アンチモン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含む、上記[28]項に記載の方法。
[32].5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、83、及び92からなる群から選択された原子番号を有する元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含有する水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の希土類化合物を含む収着剤と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを除去し、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物と比較して減少した水性流体を生成させることを含む、オキシアニオン除去方法。
[33].飲料水からオキシアニオンを除去する装置であって、
(a) 前記飲料水の源と連通した入り口;
(b) 20ミリ当量/100gより小さな陽イオン交換容量を有する粒状固体に支持されるか、又はそれらと混合された一種類以上の希土類化合物を含む収着剤の入った容器で、入り口部分及び出口部分を有し、前記入り口部分が前記入り口と連通している容器;及び
(c) 前記容器の前記出口部分と連通した出口;
を含む、オキシアニオン除去装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5、13、14、22〜25、31、32、40〜42、44、45、49〜52、72〜75、77、78、82、83、及び92からなる群から選択された原子番号を有する元素のオキシアニオンを、一種類以上の前記オキシアニオンを含有する水性供給物から除去する方法であって、一種類以上の支持されていない希土類化合物を含む収着剤と前記水性供給物とを接触させ、前記供給物から一種類以上の前記オキシアニオンを除去し、それにより前記オキシアニオンの濃度が前記供給物に比較して減少した水性流体を生成させることを含む、オキシアニオン除去方法。
【請求項2】
前記収着剤が、酸化ランタン、酸化セリウム水和物及び二酸化セリウムの一つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給物が、ビスマス、クロム、バナジウム、マンガン、モリブデン、アンチモン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含み、前記一種類以上の希土類化合物における希土類が、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウム、及びスカンジウムからなる群から選択され、前記収着剤が、本質的に前記一種類以上の希土類化合物からなり、然も、この収着剤が、複数の希土類化合物の混合物を含み、そして、前記一種類以上の希土類化合物が、水不溶性の希土類酸化物、水和希土類酸化物、希土類炭酸塩、希土類燐酸塩、希土類塩化物、希土類硝酸塩、希土類アンモニウム硝酸塩、希土類硫酸塩、又は希土類フッ化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一種類以上の希土類化合物が、前記水性供給物に可溶であり、そして
前記一種類以上の希土類化合物を前記オキシアニオンと反応させ、前記水性供給物に不溶な希土類オキシアニオン化合物の形態でオキシアニオンを沈殿させることを含み、
前記水性溶液が、希土類塩化物、希土類硝酸塩、希土類アンモニウム硝酸塩、及び希土類硫酸塩からなる群から選択された一種類以上の希土類化合物を含み、前記一種類以上の希土類化合物が、セリウム化合物及びランタン化合物からなる群から選択され、前記供給物が、ビスマス、バナジウム、マンガン、モリブデン、アンチモン、タングステン、鉛、ハフニウム、及びウランからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水性供給物が、モリブデン、ウラン、及びアンチモンからなる群から選択された元素の一種類以上のオキシアニオンを含み、然も、前記一種類以上の可溶性希土類化合物が、Ce+3、Pr+3、及びそれらの混合物からなる群から選択された第1の希土類、並びに、Ce+4、Pr+4、及びそれらの混合物からなる群から選択された第2の希土類の混合物を含む、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2013−59763(P2013−59763A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−232996(P2012−232996)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【分割の表示】特願2008−535522(P2008−535522)の分割
【原出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(511085356)モリコープ ミネラルズ、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】