説明

水栓用セラミツクデイスク

【目的】 摺接面からの水漏れを防ぎ、かつ固定ディスクに対する可動ディスクの摺動移動が良好なものとなる水栓用セラミックディスクの提供を目的とする。
【構成】 固定ディスク3の摺接面P3 は表面粗さ0.15μmRa以下に仕上げられており、一方、可動ディスク4の摺接面P4 は表面粗さ0.2〜0.4μmRaの範囲で、かつ0.05μmRa以下の部分が20〜40%程度存在するように仕上げられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、固定ディスクと可動ディスクからなる水栓用セラミックディスクの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】従来、シングルレバー式水栓等においては、水栓内に、固定された固定ディスクと、この固定ディスクに対し摺接する可動ディスクを備えているが、固定ディスクと可動ディスクの摺接面の表面粗さが粗く仕上げられていると水漏れが生じ、かといって逆に表面粗さが精密すぎると熱湯吐出時に固定ディスクに可動ディスクが密着してしまい、操作レバーを動かしても可動ディスクが摺動せず操作不能となってしまうという問題点があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、水漏れを生ずることなく、かつ固定ディスクに対し可動ディスクが良好に摺動できる水栓用セラミックディスクを提供せんことを目的とし、その要旨は、互いに摺接する摺接面を有し水栓内に内装される固定ディスクと可動ディスクからなる水栓用セラミックディスクであって、前記固定ディスクの摺接面は表面粗さ0.15μmRa以下に仕上げられているとともに、前記可動ディスクの摺接面は、表面粗さ0.2〜0.4μmRaの範囲でかつ0.05μmRa以下の部分が20〜40%程度存在するように仕上げられていることである。
【0004】
【作用】固定ディスクの摺接面は精密な0.15μmRa以下の表面粗さに仕上げられており、一方、可動ディスクの摺接面は0.2〜0.4μmRaの少し粗い仕上げとなっており、この仕上げ面には0.05μmRa以下の部分が20〜40%程度存在するように仕上げられており、水漏れが生ずることがない範囲で、しかも固定ディスクに対し可動ディスクが熱湯吐出時に密着することなく摺動できる表面粗さに設定されている。
【0005】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。先ず、図1において、シングルレバー式水栓を説明すると、洗面器1に固定される水栓本体2の内部には固定ディスク3が固定されており、この固定ディスク3上に可動ディスク4が摺接可能に設けられており、この可動ディスク4の上面には滑り板10が設けられ、可動ディスク4に形成された係入穴4a内にレバー軸5の作用軸6が係入されており、レバー軸5は支点7を中心として操作レバー8の操作により操作され、前記作用軸6が上下かつ左右に回動され可動ディスク4が摺動移動されるものとなっている。
【0006】図2は固定ディスク3と可動ディスク4の斜視構成図であり、前記固定ディスク3には一対の流入口3a,3bと流出口3cが穿設形成されており、上面側は仕上げ加工された摺接面P3 となっている。一方、可動ディスク4は固定ディスク3の摺接面P3 と接する摺接面P4 を下面側に有し、この下面側には凹み状に混合穴4bが形成されており、反対の上面側に前記係入穴4aが形成されている。又、可動ディスク4の混合穴4b内には消音用の金網9が装着されている。
【0007】前述した如く、操作レバー8を上下に揺動させ、また左右に回動操作することによりレバー軸5が回動され、作用軸6を介し可動ディスク4が固定ディスク3上を摺動移動するが、この可動ディスク4の移動により、可動ディスク4の混合穴4bが固定ディスク3の流入口3a,3bと流出口3cとに跨がって各流入口3a,3b及び流出口3cの開口面積を変化させ、これにより混合穴4b内に流入口3a,3bからそれぞれ流入される水と湯の量を調節して、流出口3cから流出される湯水を調節できるものとなっている。
【0008】前記固定ディスク3及び可動ディスク4はセラミック製であり、例えば1μmのアルミナ粒子90%に対しシリカ,カルシア,マグネシア,酸化硼素等を10%混入した素材を焼成して造形されたものであり、造形後に前記摺接面P3 及びP4 はダイヤモンド砥粒で磨かれて仕上げられたものである。
【0009】前記固定ディスク3 の摺接面P3 は図5に示すような表面粗さに仕上げられており、図5においては2.5mmの測定幅内で測定したものであり、2μmのダイヤモンド砥粒で摺接面P3 は磨かれており、表面粗さ0.139μmRaに仕上げられている。このような仕上げ面では平滑部cがかなり広範囲に亘り形成されたものとなっている。尚、図において、bはボイド部であり、焼結時に生ずる穴である。
【0010】一方、可動ディスク4の摺接面P4 は図4に示すような表面粗さに仕上げられており、0.226μmRaの表面粗さとなっている。この図4の表面粗さでは約全体の20〜40%程度に平滑部cが形成されることとなり、この平滑部cは0.01μmRa程度の平滑な面となっている。この図4のものは、例えば5μmのダイヤモンド砥粒で磨いて形成される。
【0011】尚、図3に示すものは、9μmのダイヤモンド砥粒で磨いたものであり、表面粗さは0.314μmRaであり、この図3の表面粗さでは多数の連通溝部aが形成されたものとなり、この連通溝部aは固定ディスク3に対し可動ディスク4が摺動する時に水を通す作用をなし、この連通溝部aを通って水が摺接面P3 とP4 間から漏れ出してしまい、水漏れの原因となる。従って、図3に示すような連通溝部aが存在すると水漏れが生ずるため、この連通溝部aはなくする必要がある。尚、ボイド部bは孔状に形成されたものであるため、連通状ではなく水が外部に漏れることはなく、このボイド部bは存在しても水漏れは生じない。
【0012】従って、連通溝部aのない表面粗さで仕上げる必要があるが、図5に示す程度の表面粗さに摺接面P3 及びP4 を共に形成すると、平滑部cが多いため両摺面P3 ,P4 が密着してしまい、固定ディスク3に対する可動ディスク4の摺動移動が不能となってしまう。そこで、本例における摺接面P4 は、平滑部cが20%〜40%程度存在し全体が0.2〜0.4μmRaの範囲にある仕上げ面に形成して水漏れを防ぎ、かつ密着を防ぐようにしたものである。
【0013】
【発明の効果】本発明は、互いに摺接する摺接面を有し水栓内に内装される固定ディスクと可動ディスクからなる水栓用セラミックディスクであって、前記固定ディスクの摺接面は表面粗さ0.15μmRa以下に仕上げられているとともに、前記可動ディスクの摺接面は、表面粗さ0.2〜0.4μmRaの範囲でかつ0.05μmRa以下の部分が20〜40%程度存在するように仕上げられていることにより、固定ディスクの摺接面に対し可動ディスクの摺接面は熱湯吐出時に摺動移動が円滑に行える仕上げ面となっており、かつ水漏れの生じない程度の仕上げ面に形成されており、水漏れを防ぎ作動不良の生じない水栓用セラミックディスクとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シングルレバー式水栓の断面構成図である。
【図2】固定ディスクと可動ディスクの分解斜視図である。
【図3】可動ディスクの摺接面の従来の仕上げ粗さ線図である。
【図4】本発明の可動ディスクの摺接面の仕上げ粗さ線図である。
【図5】固定ディスクの摺接面の仕上げ粗さ線図である。
【符号の説明】
2 水栓本体
3 固定ディスク
3a,3b 流入口
3c 流出口
4 可動ディスク
4a 係入穴
4b 混合穴
5 レバー軸
6 作用軸
8 操作レバー
3 ,P4 摺接面
a 連通溝部
b ボイド部
c 平滑部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに摺接する摺接面を有し水栓内に内装される固定ディスクと可動ディスクからなる水栓用セラミックディスクであって、前記固定ディスクの摺接面は表面粗さ0.15μmRa以下に仕上げられているとともに、前記可動ディスクの摺接面は、表面粗さ0.2〜0.4μmRaの範囲でかつ0.05μmRa以下の部分が20〜40%程度存在するように仕上げられていることを特徴とする水栓用セラミックディスク。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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