説明

水栓装置

【課題】使用時に心地よい温度の水が吐出される水栓装置を提供する。
【解決手段】加熱部10で加熱された水の温度を検出する出口側温度センサ20と、加熱部10で加熱された水を吐出する吐出機能部30と、吐出機能部30への給水の水路を開閉する開閉機能部40と、所定の操作が行われたことを契機として水路の開閉を切り替える水路制御部51と、加熱部10を制御する加熱制御部52とを備え、開状態にある水路を閉状態とする操作が行われたときには、加熱制御部52によって加熱部10による加熱を停止し、その後所定の遅延時間が経過するまでの間、吐出機能部30からの吐出を継続してから水路制御部51によって水路が閉状態とされ、閉状態にある水路を開状態とする操作が行われたときには、加熱制御部52によって所定の予備時間が経過するまでの間、加熱部10を駆動させてから水路制御部51によって水路が開状態とされる水栓装置1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を加熱する加熱部(ヒータ)を備えた水栓装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、出湯停止時の湯温を検出し、この湯温に応じて水栓を閉状態とすることを遅延させる小型湯沸器が記載されている。これにより、出湯停止から再出湯までの時間が短い場合に、再出湯時に高温の水が吐出されるいわゆる後沸き現象が防止できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−123950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手洗いなどに用いられる加熱部(ヒータ)を備える水栓装置は、冷たすぎず熱すぎない心地よい温度の水を吐出することが求められる。しかし、この種の水栓装置では、使用再開時に低温水や高温水が吐出されて使用者が不快な思いをしてしまうことがあった。つまり、使用再開時に常に心地よい温度の水が吐出されるものではない。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、使用時に心地よい温度の水が吐出される水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる水栓装置は、水を加熱する加熱部と、前記加熱部で加熱された水を吐出する吐出機能部と、前記加熱部に繋がる水路を開閉する開閉機能部と、所定の操作が行われたことを契機として前記水路の開閉を切り替える水路制御部と、前記加熱部を制御する加熱制御部と、を備え、開状態にある前記水路を閉状態とする操作が行われたときには、前記加熱制御部によって前記加熱部による加熱を停止し、その後所定の遅延時間が経過するまでの間、前記吐出機能部からの吐出を継続してから前記水路制御部によって前記水路が閉状態とされ、閉状態にある前記水路を開状態とする操作が行われたときには、前記加熱制御部によって所定の予備時間が経過するまでの間、前記加熱部を駆動させてから前記水路制御部によって前記水路が開状態とされること要旨とする。
【0007】
この場合、前記遅延時間および前記予備時間の少なくともいずれか一方が、予め定められた一定時間であればよい。
【0008】
また、前記加熱部で加熱された水の温度を検出する出口側温度センサをさらに備え、前記遅延時間が、前記出口側温度センサによって検出される水の温度が所定温度以下であることが確認されるまでの時間であってもよい。
【0009】
また、前記加熱部で加熱された水の温度を検出する出口側温度センサおよび前記加熱部へ流れ込む水の温度を測定する入口側温度センサをさらに備え、前記予備時間が、前回水路が閉状態となってからの時間、前記入口側温度センサによって検出される水の温度、および、前記出口側温度センサによって検出される水の温度に基づいて設定されるものであればよい。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明にかかる水栓装置では、水路を閉状態とする操作が行われたときには、加熱部による加熱を停止し、遅延時間が経過するまでの間吐出が継続され、この遅延時間の間の吐出により、加熱部が冷却される。したがって、水路が閉状態となってから、再度開状態となるまでの時間が短い場合(連続使用がされた場合)であっても、高温の水が吐出されることはない。一方、水路を開状態とする操作が行われたときには、予備時間が経過するまでの間加熱部を駆動させてから水路が開状態とされるため、この予備時間が経過するまでの間に加熱部が予備加熱される。つまり、予備加熱された加熱部によって、使用再開直後に温かい水が吐出する。このように、本発明によれば、吐出機能を停止させたときには、残存した水が加熱部の余熱によって高温にならないように吐出を遅延させるため、内部に高温の水が残存してしまうことはないし、吐出機能を駆動させたときには、予め予熱された加熱部によって即座に水が温められるため、冷水が吐出することもない。すなわち、使用状態(前回使用時からの間隔)や外気温等の使用状況によらず、設定温度(心地よい温度)に近い温度の水を吐出する(吐出される水の温度変化が小さい)水栓装置となる。
【0011】
また、吐出される水の流量が一定である等、装置の機能が一定である場合等には、遅延時間や予備時間を予め定められた一定の時間とすることができ、装置構成が簡易なものとなる。
【0012】
一方、出口側温度センサによって検出される水の温度が所定温度以下であることが確認されるまでの時間を遅延時間として設定すれば、装置内部に高温水が残存してしまうこと(高温水が吐出してしまうこと)が防止される。
【0013】
また、水路が閉状態となってからの時間、入口側温度センサによって検出される水の温度、および、前出口側温度センサによって検出される水の温度に基づいて予備時間を設定すれば、予備加熱が不十分であったり、予備加熱が過剰となることが防止される。すなわち、予備加熱後に吐出される水の温度が、より設定温度(心地よい温度)に近いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる水栓装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる水栓装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例にかかる水栓装置の正面図である。
【図4】図3に示した水栓装置が備える加熱部の断面図である。
【図5】図3に示した水栓装置の連続使用時において遅延時間を種々変化させた場合の温度変化を測定した結果を示した(実験1の結果を示した)グラフである。
【図6】図3に示した水栓装置の連続使用時において遅延時間および予備時間を設定した場合(実験例)と、設定しなかった場合(比較例)の温度変化を測定した結果を示した(実験2の結果を示した)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1および図2を参照しつつ詳細に説明する。本発明の一実施形態にかかる水栓装置1は、加熱部10と、吐出機能部30と、開閉機能部40と、これらを制御する制御部50と、を備える。制御部50は、水路制御部51および加熱制御部52を有する。なお、本発明における「水」とは、種々の流体を総称していうものとする。すなわち、水以外の流体にも本発明は適用可能である。
【0016】
加熱部10は、所定の加熱空間内にヒータ11が配置されたものであり、いわゆる「瞬間加熱」を行うものである。「瞬間加熱」とは、定常状態において加熱部10によって加熱された流水がそのまま連続的に吐出されるものであり、装置内に一旦水が貯留される構成ではないものをいう。つまり、装置内に水が貯留されるタンクのようなものは存在しない。ヒータ11が配置された加熱空間には水入口と水出口が設けられている。水源から供給された水は、水入口から加熱部10の加熱空間内に流れ込み、ヒータ11によって加熱される。加熱された水は、水出口から連続的に流出していき、吐出機能部30より外部に連続的に吐出される。
【0017】
加熱部10で加熱された水の温度(吐出機能部30より吐出される直前の水の温度)は、出口側温度センサ20によって検出される。この水の温度が設定温度以下であれば、加熱制御部52は加熱部10(ヒータ11)を駆動させるかまたは出力を増加させる。一方、水の温度が設定温度以上であれば、加熱制御部52は加熱部10(ヒータ11)を停止するかまたは出力を減少させる。つまり、加熱制御部52は、出口側温度センサ20の値に基づいて、設定温度の水が吐出されるよう、フィードバック制御を行う。
【0018】
吐出機能部30は、加熱部10によって温められた水を吐出するいわゆる蛇口である。開閉機能部40は、加熱部10に繋がる水路を開閉するバルブであり、水路制御部51によって制御される。この開閉機能部40によって水路が閉状態とされると、装置内の水の流れは停止するから、吐出機能部30からの水の吐出も停止する。なお、開閉機能部40は、装置内の水の流れを制御することができるものであればよく、図1に示すように加熱部10の上流側にあってもよいし、下流側にあってもよい。この開閉機能部40およびそれを制御する水路制御部51の構成は特定のものに限定されるものではなく、種々の周知の構成が適用できる。例えば、装置外部(吐出機能部30の外部)に人の有無を検出するセンサを設けておき、人が存在することが検出された場合(センサに手をかざした場合)に水路を開状態とするセンサ式(電気式)のものが適用できる。すなわち、所定の操作(動作)が行われたことを契機として開閉機能部40により水路の開状態と閉状態が切り替えられるものであって、後述する予備加熱動作および吐出停止遅延動作が実現可能であるものであればよい。
【0019】
以上の構成を備える水栓装置1は、図2のフローチャートに示すように動作する。閉状態にある水路を開状態とする操作が行われたとき、すなわち、使用者が吐出機能部30から水を吐出させようとする操作を行ったとき(図2「S1」Yes)には、予備加熱動作が行われる。まず加熱制御部52が加熱部10(ヒータ11)を駆動させる(図2「S2」)。水路制御部51は、当該操作が行われた後(加熱部10が駆動した後)、所定の時間(以下、当該時間を「予備時間」と称する)が経過するまでの間は、水路を閉状態としたままにして吐出機能部30からの吐出を禁止する。予備時間経過後(図2「S3」Yes)、水路制御部51は、開閉機能部40を駆動させ水路を開状態として吐出機能部30からの吐出を開始する(図2「S4」)。
【0020】
このような制御を行うことにより、予備時間の間に加熱部10(ヒータ11)が予備加熱されるから、吐出機能部30による吐出開始直後(厳密には、加熱部10と吐出機能部30との間に残留していた水が吐出された直後)から設定温度に近い水が吐出されることになる。したがって、長時間冷水が吐出され続けるといったことがなくなり、使用者は吐出開始後すぐに心地よい温度の水を使用することができる。
【0021】
その状態で、使用者が吐出機能部30から水を吐出させていた状態から吐出を停止させる操作を行ったとき(図2「S5」Yes)には、吐出遅延動作が行われる。まず加熱制御部52が加熱部10による水の加熱を停止する(図2「S6」)。水路制御部51は、加熱停止後、所定の時間(以下、当該時間を「遅延時間」と称する)が経過するまでの間は、水路を開状態としたまま吐出機能部30からの吐出を継続させる。遅延時間経過後(図2「S7」Yes)、水路制御部51は、水路を閉状態として吐出機能部30からの吐出を停止する(図2「S8」)。
【0022】
このような制御を行うことにより、加熱制御部52によって停止された加熱部10(ヒータ11)が、遅延時間の間流れた加熱前の水(冷水)によって冷却される。よって、水路が閉状態となって吐出が停止された後、加熱部10の加熱空間内に留まった水が加熱部10(ヒータ11)によって高温になってしまうことが防止される。したがって、吐出を停止した後、吐出を再開するまでの時間が比較的短い場合(以下、このような使用を「連続使用」と称する。本実施形態では、吐出を停止した後、吐出を再開するまでの時間が5秒以下である場合を「連続使用」として想定している)に、高温の水が吐出されて使用者が不快な思いをすることがなくなる。
【0023】
このように、本実施形態にかかる水栓装置1によれば、連続使用された場合には高温水の吐出を防止でき、常に設定温度に近い水を吐出する温度の振れ幅が小さい水栓装置1とすることができる。
【0024】
以上の構成を備える水栓装置1において、上記「遅延時間」や「予備時間」は、一定時間(固定時間)としてもよいし、使用環境等に応じて毎回変化させる時間(可変時間)としてもよい。加熱部10に流れる水の流量が一定である場合のように、吐出される水の温度に影響を与えるパラメータのいくつかが一定である加熱条件の変化が小さい場合には、一定時間としても吐出する水の温度の振れ幅を小さく抑えることができる。一方、加熱部10に流れる水の流量が変化する場合のように、吐出される水の温度に影響を与えるパラメータの多くが可変する加熱条件である場合には、次のように使用の度に変化する「可変遅延時間」や「可変予備時間」を設定するとよい。
【0025】
可変遅延時間は、出口側温度センサ20によって検出される水の温度が所定温度以下であることが確認されるまでの時間に設定するとよい。上述したように、遅延時間は、装置内に残留した水が加熱部10の余熱によって高温になってしまうことを防止するために設定される時間である。出口側温度センサ20によって検出された水の温度が所定温度以下に下がったということは、加熱部10の温度も当該温度または当該温度に近い温度まで低下したということであるから、装置内に残留した水が加熱部10の余熱によって高温になるまで加熱されてしまうことはない。ここで、「所定温度」は、装置内の水とヒータ11の接触面積等の条件に応じて適宜設定することができるが、人が不快に感じる水の温度の上限よりも低く設定することが好ましい。このように設定すれば、使用停止時における加熱部10の温度が当該設定温度以下になるため、使用を停止してから使用を再開するまでの時間がどれだけ短くとも当該設定温度以上の水が吐出されることがないからである。
【0026】
可変予備時間は、水路が閉状態となってからの時間、入口側温度センサ21によって検出される水の温度、および、出口側温度センサ20によって検出される水の温度に基づいて設定される時間とすればよい。この場合、水栓装置1は、加熱部10へ流れ込む水の温度を測定する入口側温度センサ21を具備する必要がある。水路が閉状態となってからの時間、すなわち前回の吐出が終了してからの時間が十分に長ければ(一定時間以上であれば)、装置内に残留した水は外気温と同じになっているということであるから、当該外気温(装置が外気を測定する温度計を有している場合にはその温度。温度計を有していない場合には予想される温度(例えば暦に基づく平均温度)等を用いればよい)から必要な予備加熱時間を算出する。一方、前回の吐出が終了してからの時間が上記一定時間以下であれば、装置内に残留した水が外気温と同じにはなっていないとみなし、入口側温度センサ21および出口側温度センサ20によって測定される温度、すなわち加熱部10の入口側と出口側における温度差から必要な予備加熱時間を算出する。また、水の流量を予備加熱時間を算出するパラメータとして導入してもよい。つまり、測定される水の流量が大きいほど、予備加熱時間を長くするような算出方法とすればよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を具体的な実施例を用いて説明する。図3および図4に示す水栓装置1aは、本発明にかかる水栓装置の一実施例である。なお、本発明は、以下の実施例にかかる水栓装置1aに限定されるものではない。
【0028】
水栓装置1aのケース90aの右下部に、加熱部10aが設置されている。加熱部10aは、通電により水を加熱できるヒータ11aを流体容器14a内に有する。このヒータ11aは図示されない水栓装置1aの制御部(加熱制御部)により制御される。流体容器14aには、水道等の水源から水が流入する水入口12aと温水が流出する水出口13aとが形成され、水源から供給された低温の水をヒータ11aにより加熱し、連続的に温水を外部に供給することができる。また、流体容器14aは排出栓16aにより開閉可能な排出口15aを備え、内部のメンテナンス時の利便性や、冬季の水の凍結による流体容器14aの破損防止等を目的として、流体容器14a内部の水を排出することができる。また、加熱部10aには、流体容器14a内部の温度を検知し、その温度が設定値を超えればヒータ11aへの通電を遮断する安全装置80a(温度ヒューズ、感温リードスイッチ、サーモスタット等が例示できる)が設けられている。
【0029】
加熱部10aのヒータ11aは中空円筒形のセラミックヒータである。水に加熱部10aが接触する面積が大きいほど加熱効率が向上するので、中空円筒形セラミックヒータの内壁面および外壁面の両方に加熱部10aを有することが望ましい。流体容器14aは、ヒータ11aの円筒部の外径よりも大きい内径を有する略円筒形の容器である。ヒータ11aは流体容器14aの上端部に円筒部の中心軸が鉛直方向となるように取り付けられている。ヒータ11aの下端部は、流体容器14aの底面と接触しておらず、流体容器14aの底部において、水がヒータ11aの円筒部の内部から外部へと流通可能である。
【0030】
水入口12aは、ヒータ11aの上端の開口部である。水源から供給された水は、水入口12aを通ってヒータ11aの円筒体の内部に流入する。ヒータ11a上端の水入口12aから入った水は、ヒータ11aの円筒体内を下方向に流れ、ヒータ11a下端に至る。水は次にヒータ11aの外壁面と流体容器14aの外壁の間の空間を水出口13aに向かって流体容器14a底部から上方へと流れる。水はヒータ11aの内を上から下に流れる間も、ヒータ11aの外を下から上に流れる間もヒータ11aの壁面と接触して加熱されるので、ヒータ11aの全長が短くても、高い効率で水の加熱を行うことができる。
【0031】
加熱部10aは、円筒状ヒータ11aの中心軸が鉛直方向となるように設置され、水の流路が縦方向になっている。ケース90aの上端部には水供給口60aが設置されており、水源(水道)に接続され、水栓装置1a内部に水道水を供給する。水供給口60aから供給された水は、メインバルブ40aおよび水流検知部70aを通り、水入口12aから加熱部10a内に流れ込む。加熱部10aの水出口13aはケース90a上端の温水取出口61aに接続されている。
【0032】
温水取出口61aの下流は、水を吐出する手洗い器の蛇口30a(吐出機能部)に接続される。蛇口30aには、人感センサが設けられており、人が蛇口30aに手をかざしたこと(人の有無)を検知できるようになっている。また、装置内には、水の流れを開閉(蛇口30aからの吐出をON/OFF)するメインバルブ40a(開閉機能部)が設けられている。このメインバルブ40aは、水栓装置1aの制御部(水路制御部)によって制御される。また、図示しないが、加熱部10aの水入口12aの上流側には入口側温度センサが設けられ、水出口13aの下流側には出口側温度センサが設けられている。水流検知部70aは、加熱部10の空焚きを防止するため、加熱部10に向かって流れる水流の有無を検出する。例えば、羽根車式水流計等が適用できる。
【0033】
以上の構成を備える本発明の一実施例にかかる水栓装置1aを評価するため、以下の実験1および実験2を行った。なお、以下の実験は、流量(吐出量)1000ml/min、加熱部10a(ヒータ11a)出力1200W(電源電圧100V)、外気温20℃で行った。
【0034】
1)実験1
吐出を停止しようとする操作がなされた際に加熱部10aによる加熱が停止された後一定時間吐出を継続する吐出停止遅延動作についての評価を行った。具体的には、連続使用時(使用停止から使用再開までの時間=15秒)において、「遅延時間」を0秒,0.5秒,1.0秒,1.5秒,2.0秒,2.5秒、と変化させてその効果を調査した。なお、本実験では予備加熱動作を行わずに(「予備時間」を設定せずに)、吐出停止遅延動作のみを行った(「遅延時間」を設定した)場合の作用を評価した。本実験において水源から供給される水の温度は5℃であった。なお、使用再開時点は図5において時点Tsで示した。
【0035】
図5に示すように、遅延時間が0秒である場合、すなわち加熱停止後即座に吐出を停止させた場合、連続使用した際における使用再開時の水の温度が約23℃となった。ヒータ11aの余熱によって流体容器14a内に残留した水が加熱されたためだと推測される。一方、遅延時間を設定した場合、遅延時間が最も短い0.5秒である場合でも、使用再開時の水の温度が20℃強であり、停止時と再開時の吐出される水の温度差を抑制できるため、一時的な温度の上昇および低下が招く不快感を軽減できる。また、遅延時間が段々と長くなるに従い、使用再開時における水の温度の低下が大きくなることがわかった。具体的には、遅延時間が1.0秒,1.5秒,2.0秒,2.5秒であると、吐出の継続時間が長すぎて、加熱部10aを冷却しすぎてしまうおそれがあるため、本条件下においては「遅延時間」を0.5秒とすることが最適であることが明らかとなった。
【0036】
2)実験2
吐出を停止しようとする操作がなされた際に加熱部10aによる加熱が停止された後一定時間吐出を継続する吐出停止遅延動作、および、吐出を再開しようとする操作がなされた際に吐出が再開される前に一定時間加熱部10a(ヒータ11a)を予備加熱する予備加熱動作、についての評価を行った。具体的には、連続使用時(使用停止から使用再開までの時間=15秒)において、上記実験1の結果に基づき「遅延時間」を0.5秒、「予備時間」を0.3秒に設定した場合(以下、実験例と称する)の効果を調査した。また、比較例として、「遅延時間」や「予備時間」を設定せずに同条件で連続使用した場合の温度変化を測定した。本実験において水源から供給される水の温度は20℃であった。なお、使用再開時点は図6において時点Tsで示した。
【0037】
図6に示すように、本実験例では、使用再開時の水の温度が著しく高くなるのが抑制されるとともに、使用再開時の水の温度が著しく低くなるのが抑制される。つまり、連続使用に際して水の温度の振れ幅が小さい。一方、比較例では、使用停止から使用再開にかけて水の温度の振れ幅が(本実験例に比べて)大きい。このように、「吐出停止遅延動作」と「予備加熱動作」の両方を行うことにより、吐出される水の温度の振れ幅を小さく抑えることができ、常に心地よい温度で使用可能な水栓装置となることが分かった。
【0038】
なお、上記実験は、使用停止から使用再開までの時間を15秒に設定して行ったが、本発明にかかる水栓装置は、使用停止から使用再開までの時間が15秒以下である連続使用であっても上記効果が奏されるように設定される。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 水栓装置
10 加熱部
20 出口温度側センサ
21 入口温度側センサ
30 吐出機能部
40 開閉機能部
51 水路制御部
52 加熱制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱する加熱部と、
前記加熱部で加熱された水を吐出する吐出機能部と、
前記加熱部に繋がる水路を開閉する開閉機能部と、
所定の操作が行われたことを契機として前記水路の開閉を切り替える水路制御部と、
前記加熱部を制御する加熱制御部と、を備え、
開状態にある前記水路を閉状態とする操作が行われたときには、前記加熱制御部によって前記加熱部による加熱を停止し、その後所定の遅延時間が経過するまでの間、前記吐出機能部からの吐出を継続してから前記水路制御部によって前記水路が閉状態とされ、
閉状態にある前記水路を開状態とする操作が行われたときには、前記加熱制御部によって所定の予備時間が経過するまでの間、前記加熱部を駆動させてから前記水路制御部によって前記水路が開状態とされることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記遅延時間および前記予備時間の少なくともいずれか一方が、予め定められた一定時間である請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記加熱部で加熱された水の温度を検出する出口側温度センサをさらに備え、
前記遅延時間が、前記出口側温度センサによって検出される水の温度が所定温度以下であることが確認されるまでの時間である請求項1または請求項2に記載の水栓装置。
【請求項4】
前記加熱部で加熱された水の温度を検出する出口側温度センサおよび前記加熱部へ流れ込む水の温度を測定する入口側温度センサをさらに備え、
前記予備時間が、前回水路が閉状態となってからの時間、前記入口側温度センサによって検出される水の温度、および、前記出口側温度センサによって検出される水の温度に基づいて設定される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104266(P2013−104266A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250438(P2011−250438)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】