水栓
【課題】水栓使用時において、使用者に水栓の動的な美しさや品位を感じさせることができ、水栓使用に際して使用者に快適さを感じさせることのできる水栓を提供する。
【解決手段】給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓において、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしておく。
【解決手段】給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓において、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は駆動手段によって弁体を駆動し給水流量を制御する水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動手段にて弁体を駆動し、給水流量を制御する弁装置を備えた水栓は従来から広く用いられている。
この種水栓にあっては、従来、弁装置として電磁コイル(駆動手段)にてパイロット弁体としての可動鉄芯からなるプランジャ弁体を開閉することによって給水路上の弁体(主弁体)を開閉するようになしたものが一般に用いられているが、この場合、止水を行うべく電磁コイルに通電を行うとプランジャ弁体がほぼ瞬時に閉弁して給水路が閉じられ、その際にウォーターハンマーが発生するといった問題がある。
【0003】
そこで従来、かかるウォーターハンマーを防止するための様々な提案がなされている。
例えば下記特許文献1には、閉弁時にプランジャ弁体をゆっくりと除々に閉弁するようにして、このウォーターハンマーを防止するようになしたものが開示されている。
【0004】
ところで、水栓にあっては外観的な美しさが従来から求められており、これを満たすべく水栓設計に際しては外観的なデザインを美しくすることに多大な労力が費やされ、また細心の注意が払われてきた。
この水栓の外観的な美しさは、いわば静的な美しさと言え、これに対して動的な美しさ、例えば吐水時における吐水の美しさや止水時における止水の美しさといったものについては、従来全く考慮がされていないのが実情である。
【0005】
水栓の美しさや品位といったものは、水栓の外観的な美しさや品位とともに、吐水や止水の際の吐水流の姿や変化から受ける動的な美しさや品位も重要な要素であり、こうした点については従来研究ないし提案は全くされていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−332530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、水栓使用時において使用者に水栓の動的な美しさや品位を感じさせることができ、水栓使用に際して使用者に快適さを感じさせることのできる水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して請求項1のものは、給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓であって、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0009】
以上のように請求項1のものは、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの開弁速度よりもゆっくりと遅くしたものである。
シャワー吐水の場合、シャワー吐水口で大きな水の抵抗が発生し、この場合ストレート吐水と同じように弁体の開弁速度を遅くすると、当初から良好にシャワー吐水が行われず、吐水がボタ落ちしてしまって却って使用者に対し不快感を与えてしまう恐れがある。
しかるにこの請求項1によればこうした不都合の発生を回避することができ、ストレート吐水,シャワー吐水の何れの吐水を行う場合においても水栓使用者が快適に水栓を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である水栓を示した図である。
【図2】同実施形態における弁装置の構成を示した図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】同実施形態の水栓の作用を表した図である。
【図5】同実施形態の水栓の図4とは異なる作用を表した図である。
【図6】図2に示す弁装置の開弁及び閉弁の速度を表した参考例の図である。
【図7】吐水口からの吐水流の変化を表した図である。
【図8】図6とは異なったパターンで開弁及び閉弁する際の開弁速度,閉弁速度を表した参考例の図である。
【図9】図6及び図8とは異なったパターンで吐水を行う際の開弁速度を表した参考例の図である。
【図10】図6,図8,図9とは異なったパターンで開弁する際の開弁速度を表した実施形態の図である。
【図11】開弁速度と閉弁速度との各種の組合せのパターン例を示した図である。
【図12】鉛直下向き及び斜め下向きに吐水を行う際の説明図である。
【図13】弁装置の他の形態例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本実施形態の水栓を示したもので、図中1は水栓の吐水部で先端に吐水口2を有している。
吐水部1の基端部にはベースプレート3が設けられており、そこに吐止水用のスイッチ4が設けられている。
ここでスイッチ4は接触式のスイッチであっても良いし、また非接触式のスイッチであっても良い。
この水栓では、スイッチ4を1回操作すると吐水口2から吐水が行われ、また再びスイッチ4を操作するとそこで吐水が停止(止水)する。
【0012】
14は吐水口2に水を供給する給水路で、この給水路14上に弁装置12が設けられている。
5は弁装置12を作動制御するコントローラで、ボックス6を有している。
【0013】
図2に弁装置12の構成が具体的に示してある。
図2において、10は弁装置12のボデーで、給水路14上にダイヤフラム弁からなる主弁体(弁体)16が開閉可能に設けられている。
図2中14aは給水路14における主弁体16よりも上流側(1次側)の流入水路を、また14bは下流側(2次側)の流出水路をそれぞれ表している。
【0014】
主弁体16は、図3に示しているように硬質(ここでは樹脂製)の主弁本体18と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜20とからなっている。
この主弁体16は、主弁座22に対して図中上下方向に進退移動して給水路14を開閉し、また給水路14の開度を変化させる。
詳しくは、主弁座22への着座によって給水路14を遮断し、また主弁座22から図中上向きに離間することによって、給水路14を開放する。
また主弁座22からの離間量に応じて給水路14の開度を大小変化させ、給水路14を流れる水の流量を調節する。
【0015】
図2において、24はボデー10の一部を構成する蓋体で、その内側(図中下側)に且つ主弁体16の背後に背圧室26を形成している。
背圧室26は、内部の圧力を主弁体16に対して図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0016】
図3に示しているように主弁体16には、これを貫通して1次側の流入水路14aと背圧室26とを連通させる導入小孔28が設けられている。
この導入小孔28は、流入水路14aからの水を背圧室26に導いて背圧室26の圧力を増大させる。
【0017】
主弁体16にはまた、これを貫通して背圧室26と2次側の流出水路14bとを連通させる、水抜水路としての環状の水路幅が狭小なパイロット水路30が設けられている。
このパイロット水路30は、背圧室26内の水を流出水路14bに抜いて背圧室26の圧力を減少させる。
【0018】
図3に示しているように、主弁体16にはその中心部に軸心方向に貫通する貫通孔が設けられており、そこに操作軸32の先端側(図中上端側)の部分が挿通されている。
上記パイロット水路30は、この操作軸32の先端側の部分の外周面と貫通孔内周面との間に環状に形成される。
【0019】
図3に示しているように、操作軸32にはくびれ部34が設けられていて、その外周側に環状の凹所が形成されている。
操作軸32は、このくびれ部34よりも上側の部分がパイロット弁体36とされている。即ちこの実施形態ではパイロット弁体36が操作軸32に一体に構成されている。
【0020】
主弁体16には、貫通孔の内周面に沿って主弁体16の軸心周りに環状をなすパイロット弁座38が一体に設けられている。
このパイロット弁座38は、シール部としてのOリング40を保持している。
【0021】
上記操作軸32は、図2に示しているようにくびれ部34を除いてその全体が断面円形且つ外径が一様な棒状をなしており、その先端側の一部にて構成された上記パイロット弁体36が、パイロット弁座38に対し、主弁体16の軸心に沿って図中上下方向に進退移動可能に嵌合するようになっている。
【0022】
図3はパイロット弁体36の止水時の状態を表しており、このときパイロット弁体36はOリング40を介してパイロット弁座38に対し全周に亘って径方向に弾性接触し、パイロット弁座38との間を水密にシールした状態にある。
またこのとき、主弁体16は主弁座22に着座した状態にあって、給水路14は閉鎖された状態にある。
【0023】
図4,図5はパイロット弁体36の移動による給水路14の開閉制御の作用を表している。
この実施形態では、図2に示す止水状態から図4(I)に示しているようにパイロット弁体36が図中上向きに後退移動すると、パイロット弁体36とパイロット弁座38との間に隙間が生じ、背圧室26内の水がパイロット水路30を通じて流出水路14b側に抜け出して、背圧室26の圧力が減少する。
【0024】
そこで主弁体16が流入水路14aとの圧力差により図中上向きに後退移動し、そして図4(II)に示しているように流入水路14aの圧力と、背圧室26の圧力とがバランスする位置で主弁体16の後退移動が停止する。
この主弁体16の後退移動によって、主弁体16と主弁座22との間に隙間が生じ、流入水路14aから流出水路14bへと水が流入する。
【0025】
この状態からパイロット弁体36が更に図中上向きに後退移動させられると、背圧室26の圧力と流入水路14aとの圧力をバランスさせるようにして、主弁体16がパイロット弁体36の後退移動に追従して後退移動し、給水路14の開度を更に広くして給水路14を流れる水の流量を増大させる(図4(III)参照)。
【0026】
一方、パイロット弁体36が図5(I)に示しているように図中下向きに前進移動すると、パイロット弁体36とパイロット弁座38との間、詳しくはパイロット弁座38に保持されたOリング40との間の隙間が小さくなって、即ちパイロット水路30の開度が小さくなって、背圧室26から流出水路14bに抜ける水の量が少なくなり、背圧室26の圧力が増大する。
【0027】
このため、その増大した圧力により主弁体16が今度は図中下向きに前進移動して、背圧室26の圧力と流入水路14aとの圧力をバランスさせる位置で停止する。
このとき主弁体16と主弁座22との間の隙間は小さくなって、即ち給水路14の開度が小さくなって、給水路14を流れる水の流量が減少する(図5(II)参照)。
【0028】
そしてこの状態から更にパイロット弁体36が図中下向きに前進運動すると給水路14の開度が更に小さくなり、給水路14を流れる水の流量が更に減少する(図5(III)参照)。
【0029】
そして更にパイロット弁体36が図中下向きに前進運動して、パイロット弁座38に保持されたOリング40に弾性接触し、パイロット水路30を閉鎖した状態になると、ここにおいて主弁体16が閉弁状態(図2に示す状態)となって給水路14の連通が遮断され、水の流通が停止する。
【0030】
上記操作軸32は、図2に示しているように2次側の流出水路14bの側から主弁体16を貫通して設けられている。
ここで操作軸32は、図1に示しているように駆動手段としての駆動モータ(ここではステッピングモータ)50に作動的に連結され、かかる駆動モータ50の回転により、操作軸32が図中上下方向に進退駆動されるようになっている。
【0031】
図6は図1の水栓の動作の一例(参考例)を示しており、ここでは給水路14上に設けた主弁体16が、閉弁状態から開弁完了まで1〜1.5秒(T1秒)の長時間かけて開弁動作するように、駆動モータ50にてパイロット弁体36を開弁動作させる。
尚この実施形態では、開弁時にパイロット弁体36は同じ速度で図中上向きに前進移動し、主弁体16はこれに連動して同じ速度で閉弁状態から開弁完了状態まで開弁動作する。
閉弁に際しても主弁体16が1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと閉弁するように、駆動モータ50にてパイロット弁体36を閉弁動作させる。
【0032】
具体的には主弁体16が1〜1.5秒かけて開弁或いは閉弁するように、ステッピングモータからなる駆動モータ50に対しパルス供給して駆動モータ50を遅く動作させる。
【0033】
以上のようにこの例は、閉弁状態から開弁完了までを1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと主弁体16を開弁させるようになしたもので、この例の水栓にあっては、図7(A)に示すように吐水の最初では少ない流量であたかも糸を引くように吐水流が生じ、その後時間の経過とともに流量が増えて吐水流の太さが段々と太くなり、一定時間経過後の開弁完了状態で最大の吐水量に達し、吐水流の太さも最大の太さに達する(図7(B)参照)。
その際水栓使用者は、その変化がゆっくりと長い時間かけて行われるため、吐水の流量の変化や吐水流の太さの変化を自然に目で追跡することができ、吐水流の変化を感得することができる。
【0034】
またこの例によれば、吐水開始時に吐水口2から吐出された水が鉢部で水撥ねを生じて水栓使用者に不快感を与えるといったことも無く、また吐水流が小から大へと静かに滑らかに変化して行くのが水栓使用者に自然に目に入ることとなるため、吐水時に吐水口2から急激に一挙に且つ多量の吐水が乱暴に吐出されてしまうのと異なって、吐水の姿や変化を美しく或いは品位高く感じることができる。
そしてこのことによって、水栓使用者は快適に水栓を使用することができる。
【0035】
本例では、止水時にも主弁体16が1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと閉弁する。従ってこの止水時には、図7(B)に示す最大流量での吐水時から、水の流量が漸次減少するとともに、吐水流の太さが漸次細くなり、そして図7(A)に示す状態を経て最終的に止水に至る。
このため、止水時においても吐水の美しさないし品位を高めることができ、水栓使用者に快い感じを与えることができる。
【0036】
次に図8は他の参考例を示している。
この例では、主弁体16が閉弁状態から開弁完了状態(完全開状態)までT1(T1=1〜1.5秒)かけて同じ速度で開弁動作する一方、閉弁に際しては1秒よりも短い短時間T2で閉弁動作する。
尚この実施形態においても閉弁時において主弁体16は同じ速度で閉弁動作する。
尚閉弁に際して1秒よりも短い時間T2で主弁体16を閉弁動作させるべく、閉弁時には駆動モータ50に対して供給されるパルスの間隔が短くされる。
【0037】
このように本例は吐水時の主弁体16の開弁速度を止水時の閉弁速度よりもゆっくりと遅くしたもので、この例によれば、吐水の際の動きの変化から来る美しさないし品位を高くし得る一方で、閉弁開始から閉弁終了までの吐水の流量を少なくし得て節水を図ることができる。
【0038】
図9(A)は更に他の参考例を示している。
この例では、主弁体16が閉弁状態から開弁完了までをT3の長時間かけてゆっくりと開弁する。
ここでT3は、上記T1と同じ時間としておいても良いし或いはまたこれよりも長く(又は短く)しておくこともできる。
【0039】
この例では、開弁開始した後時間T4の間は主弁体16が最も遅くゆっくりと開弁し、その後に開弁速度を速めて全体としてT3の時間かけて開弁完了状態となる。
具体的にはこの例では、T4の時間帯において主弁体16の開弁速度は最も遅く、開弁後期即ちT6の時間帯において主弁体16の開弁速度が最も速くなり、それらの間の時間帯T5が、主弁体16の開弁速度が時間帯T4における開弁速度から時間帯T6における開弁速度への移行期間となる。
【0040】
この例においても、主弁体16の開弁速度を変化させるために駆動モータ50に供給するパルスの間隔を、時間帯T4と時間帯T5と時間帯T6とで変化させる。
即ち図9(B)に示しているように時間帯T4においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を大とし、また時間帯T5においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を中とし、更に時間帯T6においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を最も小とする。
そしてこのことによって、パイロット弁体36の前進の速度を異ならせ、主弁体16の開弁速度を閉弁状態から開弁完了までの間で変化させる。
【0041】
本例のものは、止水状態(閉弁状態)、つまり吐水ゼロの状態から吐水流の生じる吐水状態への変化を可及的に小さく且つ連続した変化とすることができ、吐水の際の美しさないし品位を効果的に高めることができる。
【0042】
図1に示す水栓においては、吐水口2からの吐水を一本の整流束として吐水するストレート吐水と、シャワー吐水とに切換可能となしてある。
図10は本発明の実施形態として、ストレート吐水とシャワー吐水とで、吐水時における主弁体16の開弁速度を異ならせた例である。
【0043】
この実施形態では、ストレート吐水の際には閉弁状態から開弁完了までT7時間かけて主弁体16を開弁させる。
一方シャワー吐水の際には、閉弁状態から開弁完了までの時間がT8となるように短時間で主弁体16を開弁させる。
尚この実施形態において、時間T7は1秒以上の長時間となしておくのが良く、また時間T8はこれよりも短い時間とする。
この場合において、T7は上記T1と同じとしておくことができ、或いはこれよりも長い時間又は短い時間となしておくこともできる。
【0044】
シャワー吐水では吐水口において水の抵抗が発生し、この場合ストレート吐水と同じように主弁体16の開弁速度を遅くすると、当初から良好にシャワー吐水が行われず、吐水がボタ落ちしてしまって却って使用者に対し不快感を与えてしまう恐れがある。
しかるにこの実施形態によれば、こうした不都合の発生を回避することができ、ストレート吐水,シャワー吐水の何れの吐水を行う場合においても水栓使用者が快適に水栓を使用することができる。
【0045】
尚、ここでは同じ吐水口2からストレート吐水とシャワー吐水とを行う場合について述べたが、吐水口2とは別にシャワーヘッド等が設けられている場合において、吐水口2からのストレート吐水と、シャワーヘッドのシャワー吐水口からのシャワー吐水とを切り替えて行う場合においても事情は同様である。
【0046】
図1に示す水栓では、吐水時における主弁体16の開弁速度,止水時における主弁体16の閉弁速度を予め設定し且つその設定を固定状態となしておくことができるが、例えば図1に示しているように主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せを選択するための複数のディップスイッチ(選択手段)52-1,52-2,52-3,52-4を設けておき、それらディップスイッチ52-1〜52-4の何れかを操作することによって、主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンを水栓使用者が適宜に選択し得るようになしておくことができる。
【0047】
尚図1において、これらディップスイッチ52-1〜52-4はコントローラー5のボックス6内部に設けてあるが、これらディップスイッチ52-1〜52-4を他の箇所に設けておくこともできるし、或いはまた選択手段としてこれらディップスイッチ以外のスイッチ等を設けておくこともできる。
【0048】
図11は主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンの例を示している。
図中Aパターンは、吐水時における開弁速度をゆっくりとし、止水時における閉弁速度をゆっくりとした例で、またBパターンは吐水時における開弁速度をゆっくりとし、止水時における閉弁速度を早くした例である。
一方Cパターンは吐水時における開弁速度を早く、止水時における閉弁速度をゆっくりとした例で、Dパターンは吐水時における開弁速度を早く、また止水時における閉弁速度を早くした例である。
【0049】
ここで開弁ないし閉弁時間が早いとは1秒未満で開弁開始から開弁終了まで、或いは閉弁開始から閉弁終了までを行う場合であり、またゆっくりとは開弁開始から開弁終了まで、或いは閉弁開始から閉弁終了までを1秒以上の長時間かけて行う場合を意味する。
【0050】
このように主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンを適宜選択可能となしておけば、水栓使用者はその選択を行うことで、水栓使用者自身に最も適した或いは最も好ましい吐水ないし止水の動作を水栓に行わせることが可能となる。
【0051】
本実施形態では、図12(A)に示しているように吐水口2の向きを鉛直下向き、即ち吐水の方向を鉛直下向きとなしておくことができ、このようになした場合、吐水開始初期から後期まで一貫して吐水の向きを鉛直下向きに維持することができ、従って主弁体16の開度が小から大に、又は大から小に漸次変化することによって吐水の勢いが変化した場合においても、吐水の向きを常に一定の鉛直下向きに維持することができる。
従って吐水の流量が微流量であるときにも糸を引くような吐水の状態を発現することができ、また向きを同じに維持しながら吐水流の太さを連続的に太く或いは細く変化させることができて、吐水の美しさ或いは品位をより高くすることができる。
【0052】
一方、図12(B)に示しているように吐水口2の向きが鉛直下向きをなしておらず、斜め下向きをなしている場合には、主弁体16の開度に応じて、即ち吐水口2からの吐水の勢い及び吐水流量に応じて、吐水の向きは図中1点鎖線の矢印で示すように漸次変化して行く。
この場合、ステッピングモータからなる駆動モータ50によってパイロット弁36がステップ的に前進及び後退運動すると、吐水の方向も段階的に変化してしまい、吐水の美しさないし品位が損われる。
【0053】
このような場合には、駆動モータ50として例えばDCアナログモータを使うことによって吐水の流量変化、即ち吐水の向きの変化を連続的な変化となすことができる。
或いはまたステッピングモータからなる駆動モータ50を用いる場合においても減速ギアを使うなどして、吐水の向きを連続的ないし連続に近いものとなすことができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を参考例とともに詳述したがこれらはあくまで一例示である。
例えば図13に示しているように、パイロット弁体36を径方向に環状に突出する状態に設けて、かかるパイロット弁体36を主弁体16に設けた環状のパイロット弁座38に当接させ或いはこれから離間させる形式の弁装置12に対して本発明を適用することも可能である。
また上記例示した水栓は一例示を示したに過ぎないものであって、他の様々な形態ないし種類の水栓に対して本発明を適用することが可能であるし、更に上記実施形態ではパイロット式の弁装置を例示しているが、本発明はモータ等の駆動手段によって直接主弁体を開閉作動させる形式の弁装置を備えた水栓に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 吐水部
2 吐水口
12 弁装置
14 給水路
16 主弁体(弁体)
50 駆動モータ(駆動手段)
52-1,52-2,52-3,52-4 ディップスイッチ(選択手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は駆動手段によって弁体を駆動し給水流量を制御する水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動手段にて弁体を駆動し、給水流量を制御する弁装置を備えた水栓は従来から広く用いられている。
この種水栓にあっては、従来、弁装置として電磁コイル(駆動手段)にてパイロット弁体としての可動鉄芯からなるプランジャ弁体を開閉することによって給水路上の弁体(主弁体)を開閉するようになしたものが一般に用いられているが、この場合、止水を行うべく電磁コイルに通電を行うとプランジャ弁体がほぼ瞬時に閉弁して給水路が閉じられ、その際にウォーターハンマーが発生するといった問題がある。
【0003】
そこで従来、かかるウォーターハンマーを防止するための様々な提案がなされている。
例えば下記特許文献1には、閉弁時にプランジャ弁体をゆっくりと除々に閉弁するようにして、このウォーターハンマーを防止するようになしたものが開示されている。
【0004】
ところで、水栓にあっては外観的な美しさが従来から求められており、これを満たすべく水栓設計に際しては外観的なデザインを美しくすることに多大な労力が費やされ、また細心の注意が払われてきた。
この水栓の外観的な美しさは、いわば静的な美しさと言え、これに対して動的な美しさ、例えば吐水時における吐水の美しさや止水時における止水の美しさといったものについては、従来全く考慮がされていないのが実情である。
【0005】
水栓の美しさや品位といったものは、水栓の外観的な美しさや品位とともに、吐水や止水の際の吐水流の姿や変化から受ける動的な美しさや品位も重要な要素であり、こうした点については従来研究ないし提案は全くされていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−332530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、水栓使用時において使用者に水栓の動的な美しさや品位を感じさせることができ、水栓使用に際して使用者に快適さを感じさせることのできる水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して請求項1のものは、給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓であって、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0009】
以上のように請求項1のものは、吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの開弁速度よりもゆっくりと遅くしたものである。
シャワー吐水の場合、シャワー吐水口で大きな水の抵抗が発生し、この場合ストレート吐水と同じように弁体の開弁速度を遅くすると、当初から良好にシャワー吐水が行われず、吐水がボタ落ちしてしまって却って使用者に対し不快感を与えてしまう恐れがある。
しかるにこの請求項1によればこうした不都合の発生を回避することができ、ストレート吐水,シャワー吐水の何れの吐水を行う場合においても水栓使用者が快適に水栓を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態である水栓を示した図である。
【図2】同実施形態における弁装置の構成を示した図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】同実施形態の水栓の作用を表した図である。
【図5】同実施形態の水栓の図4とは異なる作用を表した図である。
【図6】図2に示す弁装置の開弁及び閉弁の速度を表した参考例の図である。
【図7】吐水口からの吐水流の変化を表した図である。
【図8】図6とは異なったパターンで開弁及び閉弁する際の開弁速度,閉弁速度を表した参考例の図である。
【図9】図6及び図8とは異なったパターンで吐水を行う際の開弁速度を表した参考例の図である。
【図10】図6,図8,図9とは異なったパターンで開弁する際の開弁速度を表した実施形態の図である。
【図11】開弁速度と閉弁速度との各種の組合せのパターン例を示した図である。
【図12】鉛直下向き及び斜め下向きに吐水を行う際の説明図である。
【図13】弁装置の他の形態例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本実施形態の水栓を示したもので、図中1は水栓の吐水部で先端に吐水口2を有している。
吐水部1の基端部にはベースプレート3が設けられており、そこに吐止水用のスイッチ4が設けられている。
ここでスイッチ4は接触式のスイッチであっても良いし、また非接触式のスイッチであっても良い。
この水栓では、スイッチ4を1回操作すると吐水口2から吐水が行われ、また再びスイッチ4を操作するとそこで吐水が停止(止水)する。
【0012】
14は吐水口2に水を供給する給水路で、この給水路14上に弁装置12が設けられている。
5は弁装置12を作動制御するコントローラで、ボックス6を有している。
【0013】
図2に弁装置12の構成が具体的に示してある。
図2において、10は弁装置12のボデーで、給水路14上にダイヤフラム弁からなる主弁体(弁体)16が開閉可能に設けられている。
図2中14aは給水路14における主弁体16よりも上流側(1次側)の流入水路を、また14bは下流側(2次側)の流出水路をそれぞれ表している。
【0014】
主弁体16は、図3に示しているように硬質(ここでは樹脂製)の主弁本体18と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜20とからなっている。
この主弁体16は、主弁座22に対して図中上下方向に進退移動して給水路14を開閉し、また給水路14の開度を変化させる。
詳しくは、主弁座22への着座によって給水路14を遮断し、また主弁座22から図中上向きに離間することによって、給水路14を開放する。
また主弁座22からの離間量に応じて給水路14の開度を大小変化させ、給水路14を流れる水の流量を調節する。
【0015】
図2において、24はボデー10の一部を構成する蓋体で、その内側(図中下側)に且つ主弁体16の背後に背圧室26を形成している。
背圧室26は、内部の圧力を主弁体16に対して図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0016】
図3に示しているように主弁体16には、これを貫通して1次側の流入水路14aと背圧室26とを連通させる導入小孔28が設けられている。
この導入小孔28は、流入水路14aからの水を背圧室26に導いて背圧室26の圧力を増大させる。
【0017】
主弁体16にはまた、これを貫通して背圧室26と2次側の流出水路14bとを連通させる、水抜水路としての環状の水路幅が狭小なパイロット水路30が設けられている。
このパイロット水路30は、背圧室26内の水を流出水路14bに抜いて背圧室26の圧力を減少させる。
【0018】
図3に示しているように、主弁体16にはその中心部に軸心方向に貫通する貫通孔が設けられており、そこに操作軸32の先端側(図中上端側)の部分が挿通されている。
上記パイロット水路30は、この操作軸32の先端側の部分の外周面と貫通孔内周面との間に環状に形成される。
【0019】
図3に示しているように、操作軸32にはくびれ部34が設けられていて、その外周側に環状の凹所が形成されている。
操作軸32は、このくびれ部34よりも上側の部分がパイロット弁体36とされている。即ちこの実施形態ではパイロット弁体36が操作軸32に一体に構成されている。
【0020】
主弁体16には、貫通孔の内周面に沿って主弁体16の軸心周りに環状をなすパイロット弁座38が一体に設けられている。
このパイロット弁座38は、シール部としてのOリング40を保持している。
【0021】
上記操作軸32は、図2に示しているようにくびれ部34を除いてその全体が断面円形且つ外径が一様な棒状をなしており、その先端側の一部にて構成された上記パイロット弁体36が、パイロット弁座38に対し、主弁体16の軸心に沿って図中上下方向に進退移動可能に嵌合するようになっている。
【0022】
図3はパイロット弁体36の止水時の状態を表しており、このときパイロット弁体36はOリング40を介してパイロット弁座38に対し全周に亘って径方向に弾性接触し、パイロット弁座38との間を水密にシールした状態にある。
またこのとき、主弁体16は主弁座22に着座した状態にあって、給水路14は閉鎖された状態にある。
【0023】
図4,図5はパイロット弁体36の移動による給水路14の開閉制御の作用を表している。
この実施形態では、図2に示す止水状態から図4(I)に示しているようにパイロット弁体36が図中上向きに後退移動すると、パイロット弁体36とパイロット弁座38との間に隙間が生じ、背圧室26内の水がパイロット水路30を通じて流出水路14b側に抜け出して、背圧室26の圧力が減少する。
【0024】
そこで主弁体16が流入水路14aとの圧力差により図中上向きに後退移動し、そして図4(II)に示しているように流入水路14aの圧力と、背圧室26の圧力とがバランスする位置で主弁体16の後退移動が停止する。
この主弁体16の後退移動によって、主弁体16と主弁座22との間に隙間が生じ、流入水路14aから流出水路14bへと水が流入する。
【0025】
この状態からパイロット弁体36が更に図中上向きに後退移動させられると、背圧室26の圧力と流入水路14aとの圧力をバランスさせるようにして、主弁体16がパイロット弁体36の後退移動に追従して後退移動し、給水路14の開度を更に広くして給水路14を流れる水の流量を増大させる(図4(III)参照)。
【0026】
一方、パイロット弁体36が図5(I)に示しているように図中下向きに前進移動すると、パイロット弁体36とパイロット弁座38との間、詳しくはパイロット弁座38に保持されたOリング40との間の隙間が小さくなって、即ちパイロット水路30の開度が小さくなって、背圧室26から流出水路14bに抜ける水の量が少なくなり、背圧室26の圧力が増大する。
【0027】
このため、その増大した圧力により主弁体16が今度は図中下向きに前進移動して、背圧室26の圧力と流入水路14aとの圧力をバランスさせる位置で停止する。
このとき主弁体16と主弁座22との間の隙間は小さくなって、即ち給水路14の開度が小さくなって、給水路14を流れる水の流量が減少する(図5(II)参照)。
【0028】
そしてこの状態から更にパイロット弁体36が図中下向きに前進運動すると給水路14の開度が更に小さくなり、給水路14を流れる水の流量が更に減少する(図5(III)参照)。
【0029】
そして更にパイロット弁体36が図中下向きに前進運動して、パイロット弁座38に保持されたOリング40に弾性接触し、パイロット水路30を閉鎖した状態になると、ここにおいて主弁体16が閉弁状態(図2に示す状態)となって給水路14の連通が遮断され、水の流通が停止する。
【0030】
上記操作軸32は、図2に示しているように2次側の流出水路14bの側から主弁体16を貫通して設けられている。
ここで操作軸32は、図1に示しているように駆動手段としての駆動モータ(ここではステッピングモータ)50に作動的に連結され、かかる駆動モータ50の回転により、操作軸32が図中上下方向に進退駆動されるようになっている。
【0031】
図6は図1の水栓の動作の一例(参考例)を示しており、ここでは給水路14上に設けた主弁体16が、閉弁状態から開弁完了まで1〜1.5秒(T1秒)の長時間かけて開弁動作するように、駆動モータ50にてパイロット弁体36を開弁動作させる。
尚この実施形態では、開弁時にパイロット弁体36は同じ速度で図中上向きに前進移動し、主弁体16はこれに連動して同じ速度で閉弁状態から開弁完了状態まで開弁動作する。
閉弁に際しても主弁体16が1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと閉弁するように、駆動モータ50にてパイロット弁体36を閉弁動作させる。
【0032】
具体的には主弁体16が1〜1.5秒かけて開弁或いは閉弁するように、ステッピングモータからなる駆動モータ50に対しパルス供給して駆動モータ50を遅く動作させる。
【0033】
以上のようにこの例は、閉弁状態から開弁完了までを1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと主弁体16を開弁させるようになしたもので、この例の水栓にあっては、図7(A)に示すように吐水の最初では少ない流量であたかも糸を引くように吐水流が生じ、その後時間の経過とともに流量が増えて吐水流の太さが段々と太くなり、一定時間経過後の開弁完了状態で最大の吐水量に達し、吐水流の太さも最大の太さに達する(図7(B)参照)。
その際水栓使用者は、その変化がゆっくりと長い時間かけて行われるため、吐水の流量の変化や吐水流の太さの変化を自然に目で追跡することができ、吐水流の変化を感得することができる。
【0034】
またこの例によれば、吐水開始時に吐水口2から吐出された水が鉢部で水撥ねを生じて水栓使用者に不快感を与えるといったことも無く、また吐水流が小から大へと静かに滑らかに変化して行くのが水栓使用者に自然に目に入ることとなるため、吐水時に吐水口2から急激に一挙に且つ多量の吐水が乱暴に吐出されてしまうのと異なって、吐水の姿や変化を美しく或いは品位高く感じることができる。
そしてこのことによって、水栓使用者は快適に水栓を使用することができる。
【0035】
本例では、止水時にも主弁体16が1〜1.5秒の長時間かけてゆっくりと閉弁する。従ってこの止水時には、図7(B)に示す最大流量での吐水時から、水の流量が漸次減少するとともに、吐水流の太さが漸次細くなり、そして図7(A)に示す状態を経て最終的に止水に至る。
このため、止水時においても吐水の美しさないし品位を高めることができ、水栓使用者に快い感じを与えることができる。
【0036】
次に図8は他の参考例を示している。
この例では、主弁体16が閉弁状態から開弁完了状態(完全開状態)までT1(T1=1〜1.5秒)かけて同じ速度で開弁動作する一方、閉弁に際しては1秒よりも短い短時間T2で閉弁動作する。
尚この実施形態においても閉弁時において主弁体16は同じ速度で閉弁動作する。
尚閉弁に際して1秒よりも短い時間T2で主弁体16を閉弁動作させるべく、閉弁時には駆動モータ50に対して供給されるパルスの間隔が短くされる。
【0037】
このように本例は吐水時の主弁体16の開弁速度を止水時の閉弁速度よりもゆっくりと遅くしたもので、この例によれば、吐水の際の動きの変化から来る美しさないし品位を高くし得る一方で、閉弁開始から閉弁終了までの吐水の流量を少なくし得て節水を図ることができる。
【0038】
図9(A)は更に他の参考例を示している。
この例では、主弁体16が閉弁状態から開弁完了までをT3の長時間かけてゆっくりと開弁する。
ここでT3は、上記T1と同じ時間としておいても良いし或いはまたこれよりも長く(又は短く)しておくこともできる。
【0039】
この例では、開弁開始した後時間T4の間は主弁体16が最も遅くゆっくりと開弁し、その後に開弁速度を速めて全体としてT3の時間かけて開弁完了状態となる。
具体的にはこの例では、T4の時間帯において主弁体16の開弁速度は最も遅く、開弁後期即ちT6の時間帯において主弁体16の開弁速度が最も速くなり、それらの間の時間帯T5が、主弁体16の開弁速度が時間帯T4における開弁速度から時間帯T6における開弁速度への移行期間となる。
【0040】
この例においても、主弁体16の開弁速度を変化させるために駆動モータ50に供給するパルスの間隔を、時間帯T4と時間帯T5と時間帯T6とで変化させる。
即ち図9(B)に示しているように時間帯T4においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を大とし、また時間帯T5においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を中とし、更に時間帯T6においては駆動モータ50に供給するパルスの間隔を最も小とする。
そしてこのことによって、パイロット弁体36の前進の速度を異ならせ、主弁体16の開弁速度を閉弁状態から開弁完了までの間で変化させる。
【0041】
本例のものは、止水状態(閉弁状態)、つまり吐水ゼロの状態から吐水流の生じる吐水状態への変化を可及的に小さく且つ連続した変化とすることができ、吐水の際の美しさないし品位を効果的に高めることができる。
【0042】
図1に示す水栓においては、吐水口2からの吐水を一本の整流束として吐水するストレート吐水と、シャワー吐水とに切換可能となしてある。
図10は本発明の実施形態として、ストレート吐水とシャワー吐水とで、吐水時における主弁体16の開弁速度を異ならせた例である。
【0043】
この実施形態では、ストレート吐水の際には閉弁状態から開弁完了までT7時間かけて主弁体16を開弁させる。
一方シャワー吐水の際には、閉弁状態から開弁完了までの時間がT8となるように短時間で主弁体16を開弁させる。
尚この実施形態において、時間T7は1秒以上の長時間となしておくのが良く、また時間T8はこれよりも短い時間とする。
この場合において、T7は上記T1と同じとしておくことができ、或いはこれよりも長い時間又は短い時間となしておくこともできる。
【0044】
シャワー吐水では吐水口において水の抵抗が発生し、この場合ストレート吐水と同じように主弁体16の開弁速度を遅くすると、当初から良好にシャワー吐水が行われず、吐水がボタ落ちしてしまって却って使用者に対し不快感を与えてしまう恐れがある。
しかるにこの実施形態によれば、こうした不都合の発生を回避することができ、ストレート吐水,シャワー吐水の何れの吐水を行う場合においても水栓使用者が快適に水栓を使用することができる。
【0045】
尚、ここでは同じ吐水口2からストレート吐水とシャワー吐水とを行う場合について述べたが、吐水口2とは別にシャワーヘッド等が設けられている場合において、吐水口2からのストレート吐水と、シャワーヘッドのシャワー吐水口からのシャワー吐水とを切り替えて行う場合においても事情は同様である。
【0046】
図1に示す水栓では、吐水時における主弁体16の開弁速度,止水時における主弁体16の閉弁速度を予め設定し且つその設定を固定状態となしておくことができるが、例えば図1に示しているように主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せを選択するための複数のディップスイッチ(選択手段)52-1,52-2,52-3,52-4を設けておき、それらディップスイッチ52-1〜52-4の何れかを操作することによって、主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンを水栓使用者が適宜に選択し得るようになしておくことができる。
【0047】
尚図1において、これらディップスイッチ52-1〜52-4はコントローラー5のボックス6内部に設けてあるが、これらディップスイッチ52-1〜52-4を他の箇所に設けておくこともできるし、或いはまた選択手段としてこれらディップスイッチ以外のスイッチ等を設けておくこともできる。
【0048】
図11は主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンの例を示している。
図中Aパターンは、吐水時における開弁速度をゆっくりとし、止水時における閉弁速度をゆっくりとした例で、またBパターンは吐水時における開弁速度をゆっくりとし、止水時における閉弁速度を早くした例である。
一方Cパターンは吐水時における開弁速度を早く、止水時における閉弁速度をゆっくりとした例で、Dパターンは吐水時における開弁速度を早く、また止水時における閉弁速度を早くした例である。
【0049】
ここで開弁ないし閉弁時間が早いとは1秒未満で開弁開始から開弁終了まで、或いは閉弁開始から閉弁終了までを行う場合であり、またゆっくりとは開弁開始から開弁終了まで、或いは閉弁開始から閉弁終了までを1秒以上の長時間かけて行う場合を意味する。
【0050】
このように主弁体16の開弁速度と閉弁速度との組合せのパターンを適宜選択可能となしておけば、水栓使用者はその選択を行うことで、水栓使用者自身に最も適した或いは最も好ましい吐水ないし止水の動作を水栓に行わせることが可能となる。
【0051】
本実施形態では、図12(A)に示しているように吐水口2の向きを鉛直下向き、即ち吐水の方向を鉛直下向きとなしておくことができ、このようになした場合、吐水開始初期から後期まで一貫して吐水の向きを鉛直下向きに維持することができ、従って主弁体16の開度が小から大に、又は大から小に漸次変化することによって吐水の勢いが変化した場合においても、吐水の向きを常に一定の鉛直下向きに維持することができる。
従って吐水の流量が微流量であるときにも糸を引くような吐水の状態を発現することができ、また向きを同じに維持しながら吐水流の太さを連続的に太く或いは細く変化させることができて、吐水の美しさ或いは品位をより高くすることができる。
【0052】
一方、図12(B)に示しているように吐水口2の向きが鉛直下向きをなしておらず、斜め下向きをなしている場合には、主弁体16の開度に応じて、即ち吐水口2からの吐水の勢い及び吐水流量に応じて、吐水の向きは図中1点鎖線の矢印で示すように漸次変化して行く。
この場合、ステッピングモータからなる駆動モータ50によってパイロット弁36がステップ的に前進及び後退運動すると、吐水の方向も段階的に変化してしまい、吐水の美しさないし品位が損われる。
【0053】
このような場合には、駆動モータ50として例えばDCアナログモータを使うことによって吐水の流量変化、即ち吐水の向きの変化を連続的な変化となすことができる。
或いはまたステッピングモータからなる駆動モータ50を用いる場合においても減速ギアを使うなどして、吐水の向きを連続的ないし連続に近いものとなすことができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を参考例とともに詳述したがこれらはあくまで一例示である。
例えば図13に示しているように、パイロット弁体36を径方向に環状に突出する状態に設けて、かかるパイロット弁体36を主弁体16に設けた環状のパイロット弁座38に当接させ或いはこれから離間させる形式の弁装置12に対して本発明を適用することも可能である。
また上記例示した水栓は一例示を示したに過ぎないものであって、他の様々な形態ないし種類の水栓に対して本発明を適用することが可能であるし、更に上記実施形態ではパイロット式の弁装置を例示しているが、本発明はモータ等の駆動手段によって直接主弁体を開閉作動させる形式の弁装置を備えた水栓に適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 吐水部
2 吐水口
12 弁装置
14 給水路
16 主弁体(弁体)
50 駆動モータ(駆動手段)
52-1,52-2,52-3,52-4 ディップスイッチ(選択手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓であって、
吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしてあることを特徴とする水栓。
【請求項1】
給水路上に設けた弁体を駆動手段により間接に若しくは直接に駆動して給水流量を制御する弁装置を備えた水栓であって、
吐水口からストレート吐水を行うときの弁体の開弁速度を、シャワー吐水を行うときの弁体の開弁速度よりも遅くしてあることを特徴とする水栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−12541(P2011−12541A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185678(P2010−185678)
【出願日】平成22年8月21日(2010.8.21)
【分割の表示】特願2006−174376(P2006−174376)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月21日(2010.8.21)
【分割の表示】特願2006−174376(P2006−174376)の分割
【原出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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