説明

水洗式便器

【課題】便器洗浄装置を強固に取付けることができ、かつ小型化を図ることができる水洗式便器を提供する。
【解決手段】水洗式便器は、便器本体10、便器洗浄装置20及び固定プレート30を備えている。便器本体10は、便鉢部11と、便鉢部11の上端周縁に連続し、便鉢部11の後方に延びて形成された上面部12とを有している。便器洗浄装置20は、外部から洗浄水が流入し、便鉢部11へ洗浄水を流出可能である。固定プレート30は、前部が便鉢部11より後方の上面部12に載置され、後部が上面部12から後方にはみ出しており、後部12の上面に便器洗浄装置20が取り付けられた薄板状である。この固定プレート30の前部は、上面が平坦であり、便座装置63を載置可能であり、便座装置60を便器本体10に取付けることにより、固定プレート30の前部が便座装置60の後部と便器本体10の上面部12の後部との間に挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の水洗式便器が開示されている。この水洗式便器は、便器本体と便器洗浄装置とを備えている。便器本体は、便鉢部と、便鉢部の上端周縁に連続して形成され、便鉢部の後方に伸びる上面部とを有している。便器洗浄装置は、外部から洗浄水が流入し、便鉢部へ洗浄水を流出可能である。便器本体の上面部の左右後端部には固定孔が貫設されている。固定孔には固定プレートがボルト固定されている。固定プレートは、便器本体の後端部より後方にはみ出しており、そこに便器洗浄装置が取り付けられている。
【0003】
また、この水洗式便器の便器本体は、便鉢部より後方の上面部に所定間隔を有する一対の取付孔が貫設されている。この取付孔に便座を回動自在の保持した便座装置の下面から下方に延びる取付ボルトを挿入し、取付ボルトの下端からナットを締め付けることにより、便座装置を便器本体に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−152530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の水洗式便器では、固定プレートの前端部が便器本体の上面部の後端部にボルト固定されているのみであるため、便器洗浄装置の固定強度が不足するおそれがある。また、便器本体の上面部に固定孔と取付孔とを貫設し、便器洗浄装置と便座装置とを別々に取り付ける構造とされているため、便器本体の上面部の後部が前後方向に長くなる。このため、便器本体の小型化が困難である。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器洗浄装置を強固に取付けることができ、かつ小型化を図ることができる水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水洗式便器は、便鉢部と、便鉢部の上端周縁に連続し、便鉢部の後方に延びて形成された上面部とを有した便器本体と、
外部から洗浄水が流入し、前記便鉢部へ洗浄水を流出可能な便器洗浄装置と、
前部が前記便鉢部より後方の前記上面部に載置され、後部が上面部から後方にはみ出しており、後部の上面に前記便器洗浄装置が取り付けられた薄板状の固定プレートとを備え、
この固定プレートの前部は、上面が平坦であり、便座を回動自在に保持した便座装置を載置可能であり、便座装置を前記便器本体に取付けることにより、固定プレートの前部が便座装置の後部と便器本体の上面部の後部との間に挟持されることを特徴とする。
【0008】
この水洗式便器では、便座装置を便器本体に取り付けることにより、固定プレートの前部が便座装置の後部と便器本体の上面部の後部との間に挟持されるため、固定プレートを便器本体に強固に固定することができる。つまり、固定プレートに取り付けられた便器洗浄装置も便器本体に強固に取付けることができる。また、固定プレートの前部に便座装置を載置した状態で固定プレート及び便座装置を便器本体に取り付けることができるため、便器本体の上面部の後部の前後方向の長さが短いものに対しても便器洗浄装置を強固に取付けることができる。
【0009】
したがって、本発明の水洗式便器は、便器洗浄装置を強固に取付けることができ、かつ小型化を図ることができる。
【0010】
前記便器本体は、前記便鉢部より後方の上面部に貫設され、所定間隔を有して左右に配置された一対の取付孔を有し、前記固定プレートはこの取付孔に対応する位置に貫設された一対の固定孔を有し、前記固定孔及び前記取付孔に前記便座装置の下面から下方の延びる取付ボルトが上方から挿入され、取付ボルトの下端からナットを締め込むことにより、便座装置及び固定プレートが便器本体の上面部に取付けられ得る。この場合、便座装置及び便器洗浄装置が取付けられた固定プレートを容易に便器本体に取付けることができる。また、市販の便座装置もこの便器本体に取付けることができる。
【0011】
前記便器本体は、前記便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有し、前記上面部の後端面は便器排水路を形成する便器本体の後端外側面より前方に位置し得る。この場合、便器本体の上面部の後部が前後方向に短くなり、水洗式便器の小型化を図ることができる。
【0012】
前記便器本体は、前記上面部の後部の左右側部が下方に空間を有する庇状に形成されており、前記固定プレートの左右端部に連結され、上面部の後部の左右側部を前記固定プレートとの間で挟持する固定部材を有し得る。この場合、固定プレートの前部の上面に固定部材が突出することなく、便器洗浄装置が取り付けられた固定プレートを固定部材により便器本体に強固に取付けることができる。
【0013】
一端を前記固定プレートに連結させ、他端を前記便器本体の後部外側面に当接させて前記固定プレートを水平状態に保持する補強部材を有し得る。この場合、補強部材が固定プレートの後部を押し下げる力に対抗することができるため、便器洗浄装置を上方から押し下げる不慮の力がかかったとしても、便器洗浄装置を取付位置に保持することができる。
【0014】
前記便器洗浄装置は洗浄水を蓄圧状態で貯留する蓄圧装置を有し、この蓄圧装置は前記固定プレートの後部の下面に取り付けられ得る。この場合、蓄圧装置をデッドスペースである固定プレートの後部の下方に配置することができる。このため、水洗式便器の小型化を図ることができる。また、蓄圧装置に蓄圧状態で貯留された洗浄水を便器洗浄に利用することにより、便器洗浄を良好に行なうことができる。特に、洗浄水の給水圧力が低い場合でも、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0015】
前記便器本体の後部左右側面に取り付けられ、前記便器本体の上面から下方に延びて便器本体の後部を隠蔽する一対のカバーを備え、各カバーの上端部には内側に延び、前記便座装置と便器本体の上面部の後部との間に挿入される挿入片が形成され得る。この場合、カバーを容易に取付けることができる。また、便座装置と便器本体の上面部の後部との間の隙間がなくなるとともに、固定プレートの前部の上面と挿入片の上面とを面一にすることができるため、便座装置が左右にがたつくことがなく、取付状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の便器本体及び固定プレートを示す分解図である。
【図2】実施例1の便器洗浄装置の施工手順を示す斜視図である。
【図3】実施例1の固定プレートの取付状態を示す要部断面図である。
【図4】実施例1の便座装置の施工手順を示す斜視図である。
【図5】実施例1の水洗式便器の斜視図である。
【図6】実施例1の水洗式便器の要部側面図である。
【図7】実施例1のカバーの施工手順を示す斜視図である。
【図8】実施例1の水洗式便器の後部断面図である。
【図9】実施例1の水洗式便器を示す斜視図である。
【図10】実施例2の水洗式便器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の水洗式便器を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1の水洗式便器は、図1〜図9に示すように、便器本体10、便器洗浄装置20及び固定プレート30を備えている。また、便器本体10は、後部左右側面に取り付けられたカバー70L、70Rを備えている。
【0019】
便器本体10は、便鉢部11と、便鉢部11の上端周縁に連続して形成され、便鉢部11の後方に延びる上面部12とを有している。また、便器本体10は便鉢部11を包囲する台座部13を有している。
【0020】
便鉢部11より後方の上面部12には、図1に示すように、所定間隔を有して左右に配置された一対の取付孔14が貫設されている。便器本体10の前端からの各取付孔14の位置及び各取付孔14間の寸法は、JIS規格に定められたものである。上面部12の後部の左右側部12L、12Rは、下方に空間を有する庇状に形成されている。また、便器本体10の後部の左右下端には貫通孔17Aが形成された床固定部17が形成されている。
【0021】
便器本体10は、図6に示すように、便鉢部11の下流側に連通する便器排水路15を有している。便器本体10の上面部12の後端面12Bは、便器排水路15を形成する便器本体10の後端外側面16より前方に位置している。このため、便器本体10の上面部12の後部が前後方向に短くなり、便器本体10の小型化が図られている。
【0022】
便器洗浄装置20は、弁ユニット22と、弁ユニット22の一部を収納する収納ケース21とを有している。弁ユニット22は電磁駆動式の開閉弁機構とストレーナ機構とを内蔵している。弁ユニット22は収納ケース21内から下方に突出している。収納ケース21の下方に突出した弁ユニット22に設けられた流入口22Aには、便器本体10が設置されたトイレ室に引き出された水道管に上流端が接続される給水配管Sの下流端が接続されている。また、弁ユニット22に設けられたリム用流出管23A及びジェット用流出管23Bは、後述する固定プレート30に取り付けられた接続部材18によって形成されたリム用流入口18A及びジェット用流入口18Bに夫々が挿入され、接続されている。
【0023】
収納ケース21の下面には、図2に示すように、下方に延びる一対のボルトB1が設けられている。収納ケース21の側面には洗浄ボタン24が設けられている。洗浄ボタン24が押されることにより、開閉弁機構が開弁され、便器洗浄装置20から洗浄水が流出し、便器本体10のリム通水路及びジェットノズルへ洗浄水が供給される。収納ケース21内には、開閉弁機構を制御する制御装置も収納されている。
【0024】
便器本体10の便鉢部11より後方の上面部12には、図1及び図2に示すようにステンレス製の薄板状の固定プレート30の前部が載置され、取付けられている。固定プレート30の前部は上面が平坦である。固定プレート30の前部には、便器本体10の上面部12に貫設された取付孔14に対応する位置に一対の第1固定孔31が貫設されている。
【0025】
また、固定プレート30の前部には、左右端部から連続して垂下した第1垂下片部32L、32Rが形成されている。第1垂下片部32L、32Rの下端には連続して水平方向に延びる水平面部33L、33Rが形成されている。さらに、水平面部33L、33Rの外側端から連続して垂下する爪部34L、34Rが形成されている。水平面部33L、33Rには螺子孔が貫設されている。
【0026】
便器本体10の上面部12から後方にはみ出した固定プレート30の後部には、便器洗浄装置20の各ボルトB1間と同じ間隔を有する第2固定孔35が貫設されている。この第2固定孔35に対して、便器洗浄装置20を固定プレート30の上方から下降させ、各ボルトB1を挿通させ、各ボルトB1の下端から第1ナットN1を締め付けることにより、便器洗浄装置20は固定プレート30の後部に取り付けられている。
【0027】
また、便器本体10の前方から見て左側に位置する固定プレート30の後部の端部には、上方に立設する立上げ片部37が形成されている。立上げ片部37の上端には連続して水平方向に延びる水平面部38が形成されている。水平面部38には、接続部材18が嵌め込まれる貫通孔38A、38Bが貫設されている。また、固定プレート30の後部の中央部には、2つの螺子孔を有する第2垂下片部36が形成されている。
【0028】
第1垂下片部32L、32Rに形成された水平面部33L、33Rには、固定部材40L、40Rが連結されている。固定部材40L、40Rは、水平面部33L、33Rの螺子孔を挿通した螺子C1がねじ込まれる結合片41と、結合片41の内側に連続して溝状に形成された連結部42と、連結部42の内側に連続して形成された挟持片部43とを有している。固定部材40L、40Rは、図3に示すように、螺子C1をねじ込み、上方に移動させる。これにより、上面部12の後部の左右側部12L、12Rの下面に挟持片部43の上面が当接し、上面部12の後部の左右側部12L、12Rを固定プレート30との間で強固に挟持している。このため、固定プレート30の前部の上面に固定部材40L、40Rが突出することなく、固定プレート30を便器本体10に強固に取付けることができる。
【0029】
第2垂下片部36には、図1、図5及び図6に示すように、補強部材50が連結されている。補強部材50の一端には、第2垂下片部36に螺子止めされた連結片部51が形成されている。補強部材50の他端には、便器本体10の後部外側面に当接する当接部52が形成されている。連結片部51と当接部52とは連結棒53によって連結されている。連結棒53は、連結片部51に結合された棒状部材53Aと、棒状部材53Aが挿入される筒状部材53Bとから形成されている。棒状部材53Aの先端部には雄ネジが形成され、筒状部材53Bの内面には雌ネジが形成されている。このため、筒状部材53Bを回転させることにより、連結棒53は軸方向に伸縮可能であり、当接部52が便器本体10の後部外側面に当接するように調整されている。このため、補強部材50が固定プレート30の後部を押し下げる力に対抗することができるため、便器洗浄装置20を上方から押し下げる不慮の力がかかったとしても、便器洗浄装置20を取付位置に保持することができる。
【0030】
便器本体10に取り付けられた固定プレート30の前部は、上面が平坦であるため、図4に示すように、便器洗浄装置20とは別体の便座装置60を載置可能である。便座装置60は、局部洗浄装置等の機能装置を収納する便座ボックス61と便座ボックスに回動可能に軸支された便座62及び便蓋63とを有している。便座ボックス61の下面には下方に延び、所定間隔を有する一対の取付ボルトB2が設けられている。
【0031】
便座装置60を便器本体10の上方から下降させ、各取付ボルトB2を固定プレート30の第1固定孔31及び便器本体10の取付孔14に挿通させる。各取付ボルトB2の下端から第2ナットN2を締め付けることにより、便座装置60は便器本体10に取り付けられている。このように、便座装置60を容易に便器本体10に取付けることができる。また、便器本体10に取り付けられた固定プレート30の前部は上面が平坦であり、固定プレート30の第1固定孔31及び便器本体10の取付孔14は所定間隔を有して左右に配置されているため、市販の便座装置も便器本体10に取付けることができる。
【0032】
この際、固定プレート30の前部が便座装置60の後部(便座ボックス61の下面)と便器本体10の上面部12の後部との間に挟持される。このため、固定プレート30は便器本体10に強固に固定されている。つまり、固定プレート30に取り付けられた便器洗浄装置20も便器本体10に強固に取り付けられている。また、固定プレート30の前部に便座装置60を載置した状態で固定プレート30及び便座装置60を便器本体10に取り付けることができるため、便器本体10の上面部12の後部の前後方向の長さを短いものに対しても便器洗浄装置20を取り付けることができる。
【0033】
したがって、実施例1の水洗式便器は、便器洗浄装置を強固に取り付けることができ、かつ小型化を図ることができる。
【0034】
便器本体10の後部左右側面には、図7〜図9に示すように、便器本体10の上面から下方に延びて便器本体10の後部を隠蔽する一対のカバー70L、70Rが取り付けられている。各カバー70L、70Rの上端部には内側に延びる挿入片71L、71Rが形成されている。挿入片71L、71Rの外形状は、固定プレート30の前部の左右外周縁形状に沿った形状である。また、挿入片71L、71Rの厚さは、固定プレート30の厚さと等しく形成されている。このため、便器本体10に便座装置60が取付けられた後、挿入片71L、71Rを便座装置60と便器本体10の上面部12の後部との間に挿入させることができる。よって、カバー70L、70Rは容易に取り付けることができる。また、便座装置60と便器本体10の上面部12の後部との間の隙間がなくなるとともに、固定プレート30の前部の上面と挿入片71L、71Rの上面とが面一になるため、便座装置60が左右にがたつくことがなく、取付状態を安定させることができる。
【0035】
カバー70L、70Rの内側下部には結合部材73が設けられている。結合部材73は、カバー70L、70Rの内側面に接合されたブロック部材73Bと、ブロック部材73Bに嵌合される嵌着部材73Aとから構成されている。嵌着部材73Aは、弾性を有し、便器本体側に向けて開口するC字状に形成された嵌着部を有している。便器本体10の床固定部17には、貫通孔17Aを挿通し床面Fにねじ込まれたビスDの頭部を挿入した筒部材Pが上方に立設している。
【0036】
カバー70L、70Rは、上端部に形成された挿入片71L、71Rを便座装置60と便器本体10の上面部12の後部との間に挿入させた後、下部が便器本体10側に押し込まれる。これにより、嵌着部材73Aの嵌着部が筒部材Pに嵌合し、カバー70L、70Rは便器本体10の後部左右側面に取り付けられる。このように、カバー70L、70Rは便器本体10の後部左右側面に容易に取付けることができる。
【0037】
カバー70L、70Rの下端部には、切欠き部が設けられ、この切欠き部を閉鎖する閉鎖部材72L、72Rが取り付けられている。閉鎖部材72L、72Rは、一方を取り外し給水配管Sが挿通されている。
【0038】
次に、実施例1の水洗式便器の組付け工程及び施工手順を説明する。
【0039】
先ず、便器本体10に固定プレート30を取り付ける。つまり、図2及び図3に示すように、固定部材40L、40Rにより、上面部12の後部の左右側部12L、12Rを固定プレート30との間で挟持する。固定プレート30の前部の上面に固定部材40L、40Rが突出することなく、固定プレート30の前部の上面は平坦である。
【0040】
この状態で、図5に示すように、リム用流入口18Aはリム用配管25Aを介して便鉢部12の上部周縁部に形成されたリム通水路に連通される。また、ジェット用流入口18Bは、ジェット用配管25Bを介して便鉢部12の下部に取り付けられたジェットノズルに連通される。以上が便器本体10と固定プレート30との組付け工程である。
【0041】
次に、固定プレート30が組み付けられた便器本体10をトイレ室の床面Fに固定する。つまり、便器本体10の前側は台座部13内に設けられた図示しない固定機構により床面Fに固定する。便器本体10の後側は、図2に示すように、床固定部17の貫通孔17AにビスDを挿入し、床面Fにねじ込む。その後、ビスDの頭部に筒部材Pを挿入する。
【0042】
次に、便器洗浄装置20を固定プレート30の後部に取り付ける。つまり、第2固定孔35に対して、便器洗浄装置20を固定プレート30の上方から下降させ、各ボルトB1を挿通させ、各ボルトB1の下端から第1ナットN1を締め付ける。この際、便器洗浄装置20の弁ユニット22に設けられたリム用流出管23A及びジェット用流出管23Bは、接続部材18によって形成されたリム用流入口18A及びジェット用流入口18Bに夫々が挿入され、接続される。また、弁ユニット22に設けられた流入口22Aに接続された給水配管Sの上流端はトイレ室に引き出された水道管に接続される。
【0043】
次に、便座装置60を便器本体10に取り付ける。つまり、図4に示すように、便座装置60を便器本体10の上方から下降させ、各取付ボルトB2を固定プレート30の第1固定孔31及び便器本体10の取付孔14に挿通させ、各取付ボルトB2の下端から第2ナットN2を締め付ける。
【0044】
次に、カバー70L、70Rを便器本体10の後部左右側面に取付ける。つまり、図7〜図9に示すように、カバー70L、70Rの上端部に形成された挿入片71L、71Rを便座装置60と便器本体10の上面部12の後部との間に挿入させた後、カバー70L、70Rの下部を便器本体10側に押し込み、嵌着部材73Aの嵌着部を筒部材Pに嵌合させる。この際、給水配管Sを挿通させる側の閉鎖部材72L、72Rは取り外される。このようにして、水洗式便器はトイレ室に施工される。
【実施例2】
【0045】
実施例2の水洗式便器は、図10に示すように、便器洗浄装置20が洗浄水を蓄圧状態で貯留する蓄圧装置80を有している。他の構成については実施例1と同様であり、同一の構成は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0046】
この蓄圧装置80は、固定プレート30の後部の下面に取付けられている。このように、蓄圧装置80をデッドスペースである固定プレート30の後部の下方に配置することができるため、水洗式便器の小型化を図ることができる。
【0047】
蓄圧装置80は開閉弁機構の上流側の給水路を分岐した分岐路81に接続されている。蓄圧装置80にはバネ部材が内蔵されている。蓄圧装置80は、開閉弁機構が閉弁されている際、洗浄水がバネ部材の付勢力に抗し、分岐路81を介して流入し、蓄圧状態で貯留する。その後、開閉弁機構が開弁すると、蓄圧状態で貯留された洗浄水は蓄圧装置80から分岐路81を介して給水路に流出する。これにより、開閉弁機構を介して便器本体10のリム通水路及びジェットノズルへ洗浄水が供給される。このため、便器洗浄を良好に行うことができる。特に、洗浄水の給水圧力が低い場合でも、便器洗浄を良好に行うことができる。
【0048】
蓄圧装置80は、カバー70L、70Rを便器本体10の後部左右側面に取付ける前に固定プレート30の後部の下面に取付ける。また、水洗式便器をトイレ室に施工した後でも、蓄圧装置80を取り付ける側のカバー70Rを取り外すことにより、固定プレート30の後部の下面に取付けることができる。
【0049】
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1及び2では、開閉弁機構を内蔵する弁ユニットを有する便器洗浄装置を備えているが、洗浄水を貯留する洗浄タンクを固定プレートの上面に載置した便器洗浄装置であってもよい。
(2)実施例1及び2では、便器本体はジェットノズルを有しているが、ジェットノズルを有さない便器本体であってもよい。この場合、便器洗浄装置から流出する洗浄水はリム通水路のみに供給される。
(3)実施例1及び2では、補強部材を有しているが、補強部材を有さなくてもよい。
(4)実施例1及び2では、カバーを備えているが、カバーを備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…便器本体
11…便鉢部
12…上面部
12B…後端面
12L、12R…左右側部
14…取付孔
15…便器排水路
16…後端外側面
20…便器洗浄装置
30…固定プレート
31…(第1)固定孔
40L、40R…固定部材
50…補強部材
60…便座装置
62…便座
70L、70R…カバー
71L、71R…挿入片
80…蓄圧装置
B2…取付ボルト
N2…(第2)ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、便鉢部の上端周縁に連続し、便鉢部の後方に延びて形成された上面部とを有する便器本体と、
外部から洗浄水が流入し、前記便鉢部へ洗浄水を流出可能な便器洗浄装置と、
前部が前記便鉢部より後方の前記上面部に載置され、後部が上面部から後方にはみ出しており、後部の上面に前記便器洗浄装置が取り付けられた薄板状の固定プレートとを備え、
この固定プレートの前部は、上面が平坦であり、便座を回動自在に保持した便座装置を載置可能であり、便座装置を前記便器本体に取付けることにより、固定プレートの前部が便座装置の後部と便器本体の上面部の後部との間に挟持されることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記便器本体は、前記便鉢部より後方の上面部に貫設され、所定間隔を有して左右に配置された一対の取付孔を有し、前記固定プレートはこの取付孔に対応する位置に貫設された一対の固定孔を有し、前記固定孔及び前記取付孔に前記便座装置の下面から下方の延びる取付ボルトが上方から挿入され、取付ボルトの下端からナットを締め込むことにより、便座装置及び固定プレートが便器本体の上面部に取付けられることを特徴とする請求項1記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記便器本体は、前記便鉢部の下流側に連通する便器排水路を有し、前記上面部の後端面は便器排水路を形成する便器本体の後端外側面より前方に位置していることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記便器本体は、前記上面部の後部の左右側部が下方に空間を有する庇状に形成されており、前記固定プレートの左右端部に連結され、上面部の後部の左右側部を前記固定プレートとの間で挟持する固定部材を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水洗式便器。
【請求項5】
一端を前記固定プレートに連結させ、他端を前記便器本体の後部外側面に当接させて前記固定プレートを水平状態に保持する補強部材を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記便器洗浄装置は洗浄水を蓄圧状態で貯留する蓄圧装置を有し、この蓄圧装置は前記固定プレートの後部の下面に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水洗式便器。
【請求項7】
前記便器本体の後部左右側面に取り付けられ、前記便器本体の上面から下方に延びて便器本体の後部を隠蔽する一対のカバーを備え、各カバーの上端部には内側に延び、前記便座装置と便器本体の上面部の後部との間に挿入される挿入片が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−275807(P2010−275807A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130862(P2009−130862)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【特許番号】特許第4515527号(P4515527)
【特許公報発行日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】