説明

水溶性(メタ)アクリレートの製造方法

【目的】幅広いpH域で使用可能であり、長期保存安定性に優れ、乳化剤を使用することなく水性化でき、揮発物を含まず、さらに硬化物が耐水性、耐溶剤性、基材への密着性及び耐摩耗性に優れる水溶性化合物の製造方法の提供。
【構成】nの値が2〜10であるn価の多価カルボン酸の1モルに対し、0.6n〜3.0nモルの下記式[1]で示されるエポキシ樹脂及び0.2n〜5.0nモルの(メタ)アクリル酸とを、前記多価カルボン酸のモル数にnを乗じた値と(メタ)アクリル酸のモル数の和が、前記エポキシ樹脂のモル数の1.6〜2.4倍の範囲内において反応させる水溶性(メタ)アクリレートの製造方法。
【化1】


(但し、式[1]において、R1 は他のオキシアルキレン基が付加されていても良いオキシエチレン基であって、これらの基の総数は1〜10である。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子線或いは紫外線等の活性エネルギー線の照射により、又は常温或いは加熱によって硬化可能な水溶性(メタ)アクリレートの製造方法、及び該製造方法により得られる(メタ)アクリレートからなる紫外線硬化型組成物に関する。本発明により得られる(メタ)アクリレートは、紙用艶ニス等のコーティング材、金属用或いは木工用等の塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、成形材料又はレジスト等の各種産業分野において有用である。尚、本明細書においては、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0002】
【従来の技術】近年、各種産業等で使用する有機溶剤や洗浄剤が大気中に放出されることにより、地球規模の大気汚染が進み、生物への影響が懸念されている。そのため塗料、インキ又は接着剤等の各種の用途に使用する化合物又は樹脂に水溶性乃至水分散性を与える試み、即ちの水性化の試みがなされている。化合物或いは樹脂の水性化手段としては、化合物或いは樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基を導入した後、これらを無機アルカリ或いは有機アミン等により中和することにより、水溶性を付与するか、又は水やアルコール等を含有する有機溶剤含有水溶液等の媒体中への懸濁性或いは乳化性を付与する方法、場合によってはさらに乳化剤を使用し、前記媒体中への懸濁性或いは乳化性を付与する方法がある。従って、これらの水性化化合物或いは樹脂は、限られたpH内(塩基性)のみでしか使用できなかったり、水溶液での長期の保存安定性が不十分であったり、又乳化剤を使用した場合には、乳化剤のブリードが懸念され、さらに中和に有機アミンを使用した場合には、乾燥時に有機アミンが揮発することによる臭気の問題があった。又、これらの化合物或いは樹脂は、得られる硬化物の耐水性、耐溶剤性、基材への密着性及び耐摩耗性が充分なものではなく、従ってこれらを各種塗料、インキ、接着剤等に使用する場合、実用上種々の問題を有するものであった。
【0003】
【発明が解決する課題】本発明者らは、幅広いpH域で使用可能であり、長期保存安定性に優れ、乳化剤を使用することなく水性化でき、有機アミン等の低分子量物の揮発といった問題を解決し、さらに硬化物が耐水性、耐溶剤性、基材への密着性及び耐摩耗性に優れる水溶性化合物の製造方法について鋭意検討を行ったのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、水系の(メタ)アクリレートについて鋭意検討した結果、多価カルボン酸、特定の構造を有するエポキシ樹脂及び(メタ)アクリル酸を特定の割合で反応させる方法によって、水に懸濁或いは乳化するのではなく完全に溶解するため、幅広いpH域で使用でき、水溶液で長期保存が可能であり、乳化剤も不要で、さらに有機アミン等による中和が不必要なため乾燥時に臭気が発生することもない水溶性(メタ)アクリレートを製造できることを見い出し本発明を完成した。本発明における第1発明は、nの値が2〜10であるn価の多価カルボン酸の1モルに対し、0.6n〜3.0nモルの下記式[1]で示されるエポキシ樹脂及び0.2n〜5.0nモルの(メタ)アクリル酸とを、前記多価カルボン酸のモル数にnを乗じた値と(メタ)アクリル酸のモル数の和が、前記エポキシ樹脂のモル数の1.6〜2.4倍の範囲内において反応させることを特徴とする、水溶性(メタ)アクリレートの製造方法であり、
【0005】
【化2】


【0006】(但し、式[1]において、R1 は他のオキシアルキレン基が付加されていても良いオキシエチレン基であって、これらの基の総数は1〜10である。)第2発明は、上記製造方法によりにより得られる水溶性(メタ)アクリレート及び光ラジカル重合開始剤からなる紫外線硬化型組成物である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】○式[1]で示されるエポキシ樹脂本発明では、上記式[1]で示される2価のエポキシ樹脂(以下単にエポキシ樹脂という)を必須成分として使用する。エポキシ樹脂において、R1 はオキシエチレン基、又はオキシエチレン基とそれ以外のオキシアルキレン基からなる基であり、これらの基の総数は1〜10である。これらの基の総数が10を越える場合には、得られる(メタ)アクリレートの硬化物の耐水性、強度、耐磨耗性が低下する。オキシエチレン基に付加されても良いその他のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基、オキシブチレン基及びオキシヘキシレン基等が挙げられ、その付加の割合としては、30モル%以下が好ましい。30モル%を越える場合には、得られる化合物が不水溶性になる場合がある。エポキシ樹脂は、2種以上を併用することもできる。
【0008】○n価の多価カルボン酸本発明では、価数nが2〜10の多価カルボン酸を使用する。nが1のものは、得られる(メタ)アクリレートの硬化物が3次元構造を有しないため、硬化物の耐水性、耐溶剤性及び耐磨耗性に劣り、他方nが10を越えるものは、高粘度となり取扱いが困難となる。多価カルボン酸としては、炭素数4〜20の脂肪族又は芳香族多価カルボン酸を使用することが好ましい。脂肪族多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、クエン酸、リンゴ酸及びブタンテトラカルボン酸〔市販品としては、例えば新日本理化(株)製の商品名リカシッドBT−W等がある〕等が挙げられる芳香族多価カルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等が挙げられる。多価カルボン酸は、2種以上を併用することもできる。
【0009】○製造方法本発明は、上記のn価の多価カルボン酸1モルに対し、0.6n〜3.0nモルのエポキシ樹脂及び0.2n〜5.0nモルの(メタ)アクリル酸を反応させる。n価の多価カルボン酸1モルに対し、エポキシ樹脂が0.6nモルに満たない割合で反応させると、得られる生成物の粘度が高くなり、場合によってはゲル化してしまい、他方3.0nモルを越えて反応を行う場合には、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸が付加したジ(メタ)アクリレートの含有割合が大きくなるため、硬化物がもろくなったり、基材に対する硬化物の密着性が低下するという問題が生じる。又、本発明において、n価の多価カルボン酸のモル数にnを乗じた値と(メタ)アクリル酸のモル数の和、即ち総カルボキシル基数は、エポキシ樹脂のモル数の1.6〜2.4倍の範囲内でなければならない。総カルボキシル基数が、エポキシ樹脂のモル数の1.6倍に満たない場合には、生成物の粘度が高くなり、場合によってはゲル化することがあり、他方2.4倍を越える場合には、生成物中に未反応の(メタ)アクリル酸が残存するため、臭気や皮膚刺激性が問題となったり、基材への硬化物の密着性が低下する。
【0010】本発明の好ましい製造方法の一例としては、攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸及び反応を円滑に行うための触媒を仕込み、又は必要に応じて反応溶媒及び/或いは(メタ)アクリロイル基のラジカル重合を抑制するための重合防止剤を仕込み、所定時間加熱する方法がある。この場合、まず多価カルボン酸とエポキシ樹脂を反応させた後、(メタ)アクリル酸を添加して反応させることもできる。反応溶媒としては、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン化合物、並びにトルエン及びキシレン等の芳香族化合物等が挙げられる。触媒としては、トリエチルアミン及びN,N−ジメチルベンジルアミン等の3級アミン、ジメチルアミン塩酸塩等の1,2級アミン、テトラブチルアンモニウムブロミド等の各種4級アンモニウム塩、並びにトリフェニルホスフィン等の各種含リン化合物等が挙げられる。重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル及びフェノチアジン等が挙げられる。反応温度としては、60℃〜140℃が好ましい。反応温度が60℃に満たない場合は反応が遅くなることがあり、一方反応温度が140℃を越える場合は、反応系が不安定になることがあったり、不純物が生成したり、ゲル化する場合がある。
【0011】○使用方法本発明により得られる水溶性(メタ)アクリレートは、電子線或いは紫外線等の活性エネルギー線の照射により、又は室温或いは加熱により硬化させることができる。紫外線の照射により硬化させる場合は、(メタ)アクリレートに光ラジカル重合開始剤を配合する。又、室温或いは加熱により硬化させる場合には、熱重合開始剤を配合する。これらの配合は常法に従って行なえば良い。紫外線或いは電子線等の活性エネルギー線の照射方法及び加熱方法等については、ラジカル重合性化合物の硬化方法として一般的な方法及び条件を採用することができる。本発明により得られる水溶性(メタ)アクリレートの好ましい硬化方法は、紫外線の照射である。
【0012】第2発明は、上記製造方法により得られる水溶性(メタ)アクリレート及び光ラジカル重合開始剤からなる紫外線硬化型組成物である。光ラジカル重合開始剤としては、水溶性又は親水性の光開始剤を使用することが好ましい。これらの具体例としては、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔ダロキュア2959、メルク(株)製〕2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン〔ダロキュア1173、メルク(株)製〕1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン〔イルガキュア184、チバガイギー(株)製〕、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアンモニウムクロリド〔カンタキュアBTC、シェル化学(株)製〕、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアンモニウム クロライド モノハイドレート〔カンタキュアBPQ、シェル化学(株)製〕、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアンモニウム クロライド、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−9−オン メトクロライド等が挙げられる。又、これら以外にも、通常溶剤系又は無溶剤系で用いられている、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール及び2,4−ジメチルチオキサントン等も使用することができる。光ラジカル重合開始剤は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて使用することもでき、市販品としては、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアンモニウム クロライド、及び2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−9−オン メトクロライドからなるカンタキュアQTX〔シェル化学(株)製〕等がある。光ラジカル重合開始剤の好ましい配合量は、組成物100重量部に対して、0.05〜10重量である。
【0013】第1発明により得られる(メタ)アクリレート又は第2発明の組成物は、そのまま無溶剤で使用することが、乾燥工程が不要となるため好ましい。又、必要に応じ、水或いは有機溶剤含有水溶液を用いて任意の割合で希釈し、所望の粘度に調整して使用することもできる。又、必要に応じて増粘剤、流動性調整剤、顔料、染料又はフィラー等の無機充填剤等を混合して使用することもできる。
【0014】第1発明により得られる(メタ)アクリレート又は第2発明の組成物には、必要に応じて他の水溶性(メタ)アクリレート化合物を配合するもできる。他の水溶性(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、N−アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。又、場合によっては、ポリビニルアルコール或いはガゼイン等の(メタ)アクリロイル基を有さない水溶性樹脂、又はアクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン等の非水溶性の樹脂と混合して用いることもできるし、又用途によっては適量の水溶性(メタ)アクリレートを配合することもできる。
【0015】第1発明により得られる(メタ)アクリレート及び第2発明の組成物は、塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、成形材料又はレジスト等として有用である。具体的には、金属用塗料として用いた場合には、その硬化物が溶剤や薬品に対する耐性に優れ、温度による金属の膨張や収縮に追随し、適度な弾性を有するため加工後の曲げに対しても強い。又、木工塗料に用いた場合は、その硬化物が溶剤や薬品に対する耐性に優れ、木材の親水部との密着性が良好であるため、木材の温度、湿度による膨張や収縮に追随する弾性を有する。さらに、紙用艶ニス等のコーティング剤として用いた場合には、硬化物に弾性があるため紙の曲げに対して耐性があり、密着性にも優れる。
【0016】
【作用】本発明により得られる(メタ)アクリレートは、特定の割合で親水性の(ポリ)エチレンオキシド部及び水酸基を有するため、任意の濃度で水溶液中で安定に存在することができるので、従来のように樹脂にカルボン酸基やスルホン酸基導入し、さらにこれらを無機アルカリ又は有機アミン等で中和することにより、樹脂に水溶性を付与する場合に生じる問題を発生することがない。又、本発明により得られる(メタ)アクリレートの硬化物は、3次元構造を有するため、耐水性、耐溶剤性及び耐磨耗性に優れるものとなる。
【0017】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。尚、得られた水溶性(メタ)アクリレートは、以下に方法により評価した。
【0018】1)水溶性得られた水溶性(メタ)アクリレートと蒸留水を10:90、50:50又は90:10(重量比)の割合で攪拌した混合後静止し、目視で確認した。表1及び表2において○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:任意の割合で溶解△:濁る×:二層分離
【0019】2)臭気表1及び表2において○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:臭気無し△:わずかに臭う×:臭気有り
【0020】3)粘度25℃において、E型粘度計で測定した。
【0021】4)硬化性及び密着性得られた水溶性(メタ)アクリレート100部に対して、2重量部の割合で光開始剤のダロキュア2959〔メルクジャパン(株)製〕を添加混同した。得られた組成物を、ボンデライト鋼板に膜厚10μmで塗布し、80W/cm集光型高圧水銀灯を使用して、コンベアスピード10m/min の条件で、水銀灯下を繰り返し通過させることにより硬化させた。硬化性は、塗膜表面のタックが無くなるのに要するパス回数(通過回数)で評価した。密着性は、上記硬化物膜に、1mm間隔で碁盤目状の切り込みを入れ、JISK−5400に従い、クロスカット・セロテープ剥離試験を行った。表1及び表2において○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:100/100△:20〜99×:0〜19
【0022】5)耐溶剤性及び耐水性4)で得た塗膜を、メチルエチルケトンをしみこませた布又は水で湿らせた布でこすり、塗膜に異常が認められるまでの回数で評価した。表1及び表2において○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:50回以上でも以上が認められない△:10〜50回で異常が認められる×:10回以下で異常が認められる
【0023】○実施例1攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてコハク酸59.0g(0.5モル)、エポキシ樹脂として共栄社化学(株)製エポライト200E〔式[1]において、R1 は4個のエチレンオキサイド基を付加した基である〕を380.0g(1.0モル)及び反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド5.1gを仕込み、90℃で攪拌下2時間反応させた。反応混合物に、アクリル酸72.1g(1.0モル)及び重合防止剤としてハイドロキノン0.3gを仕込み、さらに110℃で攪拌下10時間反応させた。反応終了後の酸価は2であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0024】○実施例2攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてアジピン酸36.5g(0.25モル)、エポキシ樹脂としてエポライト200Eを196.8g(0.5モル)、アクリル酸36.0g(0.5モル)、反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド5.4g、重合防止剤としてハイドロキノン0.3g及び反応溶剤としてトルエン270gを仕込んだ後、攪拌下110℃で7時間反応させた。反応終了後、反応液を1mmHgの減圧下、60℃で1時間攪拌して、トルエンを留去した。反応終了後の酸価は1であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0025】○実施例3攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてコハク酸29.5g(0.25モル)、エポキシ樹脂として共栄社化学(株)製エポライト400E〔式[1]において、R1 は9個のエチレンオキサイド基を付加した基である〕を280.1g(0.5モル)、アクリル酸36.0g(0.5モル)、反応触媒としてトリフェニルホスフィン3.5g及び重合防止剤としてハイドロキノン0.2gを仕込んだ後、攪拌下100℃で9時間反応させた。反応終了後の酸価は1であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0026】○実施例4攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてクエン酸(無水)34.6g(0.18モル)、エポキシ樹脂として共栄社化学(株)製エポライト100E〔式[1]において、R1 は2個のエチレンオキサイド基を付加した基である〕を207.6g(0.67モル)及び反応触媒としてジメチルアミン塩酸塩3.0gを仕込み、攪拌下90℃で2時間反応させた。反応混合物に、アクリル酸57.9g(0.8モル)及び重合防止剤としてハイドロキノン0.3gを仕込み、さらに攪拌下100℃で9時間反応させた。反応終了後の酸価は2であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】


【0028】○比較例1攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてコハク酸59.0g(0.5モル)、エポキシ樹脂としてエポライト400Eを本発明の範囲に満たない324.9g(0.58モル)、アクリル酸14.4g(0.2モル)、反応触媒としてトリエチルアミン2.1g及び重合防止剤としてハイドロキノン0.2gを仕込んだ後、攪拌下100℃で6時間反応させた。反応生成物は、半固体状であった。また、反応終了後の酸価は6であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0029】○比較例2攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてアジピン酸43.8g(0.3モル)、エポキシ樹脂としてエポライト400Eを本発明の範囲を大幅に越える1092.4g(6.5モル)、アクリル酸を本発明の範囲を大幅に越える237.8g(11.0モル)、反応触媒としてトリフェニルホスフィン13.7g及び重合防止剤としてハイドロキノン0.69gを仕込んだ後、攪拌下100℃で7時間反応させた。反応終了後の酸価は1であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0030】○比較例3攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてクエン酸(無水)34.6g(0.18モル)、エポキシ樹脂としてエポライト100Eを207.6g(0.67モル)及び反応触媒としてジメチルアミン塩酸塩3.0gを仕込み、攪拌下90℃で2時間反応させた。反応混合物にアクリル酸86.5g(1.2モル)及び重合防止剤としてハイドロキノン0.3gを仕込んだ後、さらに攪拌下100℃で15時間反応させた。反応終了後の酸価は24であった。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表2に示す。比較例3は、エポキシ樹脂に対する総カルボキシル基数が本発明の範囲を越える場合の例である。
【0031】○比較例4攪拌機、温度計を備えた反応器に、多価カルボン酸としてコハク酸59.0g(0.5モル)、エポキシ樹脂としてエポライト200Eを380.0g(1.0モル)及び反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド5.1gを仕込み、攪拌下90℃で2時間反応させた。反応混合物に、アクリル酸36.0g(0.5モル)及び重合防止剤としてのハイドロキノン0.3gを仕込み、さらに攪拌下100℃で反応させたが、反応2時間後ゲル化を起こした。得られた水溶性(メタ)アクリレートについて評価を行った。それらの結果を表2に示す。比較例4は、エポキシ樹脂に対する総カルボキシル基数が本発明の範囲に満たない場合の例である。
【0032】
【表2】


【0033】
【発明の効果】本発明によれば、得られる水溶性(メタ)アクリレートが完全に水に溶解するため、幅広いpH域で使用でき、長期保存が可能で、乳化剤を添加する必要もなく、さらに有機アミン等による中和が不必要なため乾燥時の臭気が発生することもなく、さらに使用に際しては必ずしも水により希釈しなくとも液状であるため扱いやすく、必要に応じて任意の割合で水により希釈することもできる。またその硬化物は、耐水性、耐溶剤性、基材への密着性及び耐摩耗性に優れるため、塗料、印刷インキ、接着剤、充填剤、成形材料又はレジスト等の各種産業分野において有用である。従って、本発明によって製造される(メタ)アクリレート及び本発明の組成物は、各種工業分野において優れた硬化性を有するため製造ラインの速度を速めることができ、又場合によっては水で希釈することにより任意の粘度に調製することができるため、種々の塗装装置により使用することができ、又使用後の装置の洗浄を水で行うことができるため、溶剤を使用した場合に比較して安全であり、その工業的価値はきわめて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】nの値が2〜10であるn価の多価カルボン酸の1モルに対し、0.6n〜3.0nモルの下記式[1]で示されるエポキシ樹脂及び0.2n〜5.0nモルの(メタ)アクリル酸とを、前記多価カルボン酸のモル数にnを乗じた値と(メタ)アクリル酸のモル数の和が、前記エポキシ樹脂のモル数の1.6〜2.4倍の範囲内において反応させることを特徴とする、水溶性(メタ)アクリレートの製造方法。
【化1】


(但し、式[1]において、R1 は他のオキシアルキレン基が付加されていても良いオキシエチレン基であって、これらの基の総数は1〜10である。)
【請求項2】請求項1記載の製造方法により得られる水溶性(メタ)アクリレート及び光ラジカル重合開始剤からなる紫外線硬化型組成物。

【公開番号】特開平8−3275
【公開日】平成8年(1996)1月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−159497
【出願日】平成6年(1994)6月17日
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)