説明

水田歩行負担軽減ゴム長靴

【課題】水田内農作業時の歩行困難、肉体負担を軽減するために、ゴム長靴を改良し水田の上を歩き易く肉体的負担の少ない水田用の長靴を提供する。
【解決手段】水田歩行を困難にしている最大要因のひとつであるゴム長靴と泥との間に発生する物理吸着状態からの離脱を容易にするために、かかとの急激に角度の変化する部位を、ふくらはぎ部から、かかと、靴底にかけて三角断面をした丸みを帯びた突起物と、沈下抑制壁を設けることにより、足を上げようとした際に瞬時に大気、及び水が靴底面へと流入するようにした水田用長靴。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田における農作業時の歩行を容易にするために、ゴム長靴の底面及び、かかと部分からふくらはぎ部を改良し、最も水田歩行を困難にしている要因のひとつである長靴と泥との間に発生する物理吸着状態からの離脱を容易に促すようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水田専用のゴム長靴は公用のものとして存在しているが、水田歩行を容易にするために、長靴と泥との間に発生する物理吸着状態からの離脱を容易に促すように改良したゴム長靴はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献1】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水田における農作業では、水を入れた状態の泥の中を歩行する機会が多い。当然ながら乾燥して引き締まった固い土壌の上を歩行するのとは全く状況が異なり、体重のかかったゴム長靴は水を大量に含んだ柔らかい土中へ奥深く沈み込んでしまう。そうなると、泥とゴム長靴の接している面には物理吸着が発生し、容易に土中から引き抜くことができなくなってしまう。この発生する物理吸着は避けられない現象であるが、この状態からの離脱をするために要求される力、体力こそが水田歩行を著しく困難なものにしている最大要因である。このため歩行時の作業者にかかる肉体的負担の大きいことはもとより、歩行時にバランスを崩し水田の上に転倒したり、ゴム長靴と泥が物理吸着した状態のまま、人の足が長靴から抜け出てしまいそのまま転倒するといった事態もしばしば発生する。このために従来からある水田用のゴム長靴は、泥と長靴との間に発生する物理吸着よりも、人の足と長靴との間に発生している物理吸着の方をより強くなるように作られているのが現状である。つまり、足から抜けてしまわないようにゴムの弾力できつく締め上げるようになっている。泥と長靴の間の物理吸着に打ち勝つためにあえて強制的な物理吸着力を意図的人為的に発生させて対抗しようという設計思想である。これでは、水田歩行時に要する負担軽減には全くつながらないし、むしろそれどころか、きつく締め上げられたゴム長靴によって足の血行にも悪く、肉体的負担は増加している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明にあっては、上記の課題を解決するため、ゴム長靴のふくらはぎ部から、かかと、長靴の底面にかけて物理吸着状態からの離脱を容易にするために、急激に角度のついている従来からのかかと部(9)を、断面形状が三角型の全体の丸みのあるR型突起(4)、及び沈下抑制壁(5)を設けることにより、大気や水が瞬時にして長靴底面と泥との狭間に流入できるように改良した。
【発明の効果】
【0006】
水田歩行時の歩行困難からくる肉体的負担を、R型突起部(4)、及び沈下抑制壁(5)をゴム長靴に設定し、ゴム長靴と泥との物理吸着状態からの離脱を容易にすることにより、負担軽減した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の後方から見た斜視図。
【図2】本発明の正面図。
【図3】本発明の背面図。
【図4】本発明の側面図。
【図5】本発明の底面図。
【図6】図4におけるa−a’の断面図。
【図7】従来の長靴の使用状態を示す断面図。
【図8】本発明の使用状態を示す断面図。
【図9】従来の長靴の使用状態を示す断面図。
【図10】本発明の使用状態を示す断面図。
【図11】本発明のかかと側からみた斜視図。
【図12】本発明の靴底方向から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照にしつつ詳細に説明すれば、図1は、本発明のゴム長靴をかかと側、やや斜め後方から見た斜視図である。全体の像を把握しやすく斜視図としてあるが、本発明の要であるR型突起部(4)の形状が把握しきれないので、図2に正面図、図3背面図、図4側面図、図5底面図、及び図6に断面図を記載した。R型突起部(4)は、図7に示すような、従来からの長靴にあるかかとの角部(9)、つまり急激に角度が変化している部位を無くし、長靴のふくらはぎ部から、かかと、靴底面にかけて丸みのついた形状、つまりR型突起物(4)を図10の断面図に示す如く設定することにより、歩行時の足を上げようとした際(図7,8,9,10における矢印Aの方向)に、ふくらはぎ部からかかと方向へ、更に靴底面まで、大気や水が瞬時に流入する(図9,10における矢印Cの流れ)ようになっている。このR型突起部(4)は、大気や水をさらに流入しやすくして、さらに物理吸着状態(図7,8における矢印Bの力)からの離脱の容易性を促進するために図4におけるa−a’でカットされた断面図が、図6に記載してあるように、R型突起部(4)の断面形状が、正面から見て逆三角形の形状をしている。この三角断面は、R型突起部(4)のどこの位置でカットしても三角形の形状をしている。これにより、物理吸着状態(図7,8における矢印B)からの離脱容易性は効果をさらに増し、水田上の歩行を容易にするのであるが、断面が逆三角形であるので、体重を乗せて足を踏み込んだ際には、泥の中にクサビを打ち込むような形態となり、泥の中に必要以上に深く沈みこんでしまう結果となってしまう。そこで、これを防ぐために、沈下抑制壁(5)を設けることにより、このクサビ効果を相殺しているのである。この沈下抑制壁(5)は、図5の下面図に記載してあるように、R型突起部(4)の周囲を取り囲むように設けてあり、さらに効果を生むように、この図の場合では2段構成としている。また、この沈下抑制壁(5)は、図4の側面図に示すように、ふくらはぎ部のあたりまで続いている。これによって、足を上げようとした際に大気や水が、ふくらはぎ部から、かかと、靴底面の方向に向かって導き易くするガイドの効果も生み出している。そしてさらにこの沈下抑制壁(5)は、図4の側面図に示すように、靴底面のちょうど大地と接する面は直線で構成されており、大地との安定した接触面を生み出すようになっている。もし、これが無くて、R型突起部(4)のみであると、大地との接触面が中央部のわずかな線接触でしかないので、やや固めの水田を歩行するときや、乾いた固いところを歩行するときには、不安定となり、人の足は前後左右に捻られてしまう状態となってしまう。これらをすべて補うものとして、沈下抑制壁(5)を設けている。この沈下抑制壁(5)と、R型突起部(4)の相互の形状関係をさらに把握しやすくするために、図11にかかと方向から見た斜視図と、図12に靴底面の方向から見た斜視図を記載した。
【符号の説明】
【0009】
1. 長靴外皮
2. つま先部
3. かかと部
4. R型突起部
5. 沈下抑制壁
6. 足の入る部分
7. 水
8. 泥
9. 従来のかかと

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田歩行時に大気と水を長靴の底面に流入し易くすることにより、ゴム長靴と泥との間に発生する物理吸着からの離脱を容易にし、水田歩行を容易にするため、長靴のふくらはぎ部からかかと、及び靴底面にかけて丸みを帯びた突起物を設けたことを特徴とする水田歩行負担軽減ゴム長靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−416(P2011−416A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165109(P2009−165109)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(505343480)
【Fターム(参考)】