説明

水系アクリルウレタン樹脂組成物、及びこれを塗布・乾燥してなるコーティングフィルム

【課題】耐水性に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物、及び、防塵性に優れ、農業用フィルムとして好適なコーティングフィルムを提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂を20〜80質量%、及びアクリル樹脂を80〜20質量%含有する樹脂を含む水系アクリルウレタン樹脂組成物。前記ポリウレタン樹脂は下記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物を必須とする水系樹脂であること、前記アクリル樹脂が、(メタ)アクリル系モノマー(c)を重合した水系樹脂である。式(1)中のRは特定のアルキル基、Rは−N=C=O、又は特定の基を表す。一般式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系アクリルウレタン樹脂組成物、及び、これを合成樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に塗布・乾燥してなるコーティングフィルムに関し、詳しくは、特定のイソシアネート化合物を用いて形成された、成膜時の耐水性に優れた水系アクリルウレタン樹脂組成物、及び該組成物を塗布・乾燥してなる、防塵性に優れ、特に農業用フィルムに好適に用いることのできるコーティングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、接着性、非粘着性、及びゴム弾性を有する塗膜や成形品を形成することができるので、塗料、接着剤、バインダー、及びコーティング剤として広く用いられており、従来、対環境汚染、労働衛生等の安全性の観点から、特に水系ポリウレタン樹脂組成物が多用されている。しかしながら、水系ポリウレタン樹脂組成物は、溶剤系又は無溶剤系のものに比べ、形成した塗膜の物性が劣るため、特に耐水性の観点から改善が要望されている。
【0003】
一方、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の合成樹脂は、機械的強度、耐薬品性、及び耐候性等の物性に優れ、かつ比較的安価であるため、種々の用途に用いられており、例えば、これらの合成樹脂は、トンネル栽培、ハウス栽培等の農業用フィルム等に使用されている。しかしながら、これらの合成樹脂フィルムの場合には、配合されている可塑剤、防曇剤、及び安定剤等の添加剤が経時的にフィルム表面へブリードしてくるため、フィルム表面に塵埃が付着し易くなり、一年も経過すると光線透過率が著しく低下し、作物の栽培生育を阻害する等の欠点があった。そこで従来から、防塵性に優れた農業用フィルムの開発が望まれていた。
【0004】
農業用フィルムの防塵性等の性能改良を行う手段として、前記したような安価な合成樹脂フィルム表面に、アクリル系樹脂を塗布する方法(特許文献1〜4)、フッ素樹脂を塗布する方法(特許文献5〜8)、フッ素樹脂とアクリル系樹脂の混合物を塗布する方法(特許文献9〜11)、アクリルウレタン樹脂を塗布する方法(特許文献12及び13)等が既に開示されている。しかしながら、アクリル系樹脂を塗布しても、基材中の可塑剤等が成形品表面にブリードアウトすることを十分に防止することができず、フッ素樹脂を塗布したりフッ素樹脂とアクリル樹脂とを併用したりした場合には、基材樹脂と塗布層との接着性や製品コストの面等において満足できるものではなかった。また、アクリルウレタン樹脂を使用した場合には、基材樹脂と塗布層との接着性が良好で防塵性も改善されるものの、未だ、要求されている高い防塵性を達成するには至っていなかった。
【0005】
【特許文献1】特公昭46−29639号公報
【特許文献2】特公昭50−28117号公報
【特許文献3】特公昭50−31195号公報
【特許文献4】特公昭55−52052号公報
【特許文献5】特開昭56−86748号公報
【特許文献6】特開昭57−8155号公報
【特許文献7】特開昭57−12646号公報
【特許文献8】特開平03−51121号公報
【特許文献9】特開昭63−21143号公報
【特許文献10】特開昭46−65161号公報
【特許文献11】特公昭63−236号公報
【特許文献12】特開平07−298791号公報
【特許文献13】特開平10−16169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、かかる状況に鑑み種々検討を重ねた結果、特定のイソシアネート化合物を必須成分として使用し、形成させた水系アクリルウレタン樹脂組成物が顕著な塗膜耐水性を有すること、該水系アクリルウレタン樹脂組成物を合成樹脂の片面又は両面に塗布したコーティングフィルムが防塵性に優れ、農業用フィルムとして好適であることを見出し本発明に到達した。
したがって本発明の第1の目的は、塗膜の耐水性に優れた水系アクリルウレタン樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、防塵性に優れ、農業用フィルムとして好適なコーティングフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、ポリウレタン樹脂を20〜80質量%及びアクリル樹脂を80〜20質量%含有する樹脂を、固形分換算で2〜70質量%含有する水系アクリルウレタン樹脂組成物であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール成分(a)、下記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物を必須とするイソシアネート成分(b)、及び水を必須成分として得られた水系ポリウレタン樹脂であり、前記アクリル樹脂が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートの中から選ばれた少なくとも1種の不飽和モノマー(c)を重合させて得られた水系アクリル樹脂であると共に、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物の割合が、前記水系ポリウレタン樹脂固形分中における含有量で2〜35質量%であることを特徴とする水系アクリルウレタン樹脂組成物、及び、該水系アクリルウレタン樹脂組成物を合成樹脂フィルムの片面又は両面に塗布してなるコーティングフィルムである。
一般式(1)


但し、上式中のRは炭素原子数10〜30のアルキル基を表し、Rは−N=C=O、又は下記の基を表し、Aはジイソシアネート化合物から2個の−N=C=Oを除いた残基を表す;

【0008】
本発明においては、前記一般式(1)中のAが、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートから2個の−N=C=Oを除いた残基であることが好ましく、前記イソシアネート成分(b)が、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物と共に、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートを更に含有することが好ましい。また、必須成分として、更に、(d)成分としてイオン性基導入化合物、及び、(e)成分としてイオン性基中和剤を含有することが好ましく、コーティングフィルムに使用する前記合成樹脂フィルムが、塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、又は、ポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物に使用する前記(a)成分であるポリオールとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類及び結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類等が挙げられる。この(a)成分には、数平均分子量が200未満の低分子ポリオール類等を併用することができる。
【0010】
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の前記低分子ポリオールの他、ビスフェノールAやエチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0011】
前記ポリエステルポリオール類としては、後述する数平均分子量200未満の低分子ポリオール等のポリオールと、該ポリオールの化学量論量より少ない量の多価カルボン酸、又は、その、エステル、無水物、カルボン酸ハライド等のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応又はエステル交換反応によって得られるポリエステルポリオール;及び、前記ポリオールと、ラクトン類又はその加水分解開環反応によって得られるヒドロキシカルボン酸との、直接エステル化反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0012】
上記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0013】
前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、上述した多価カルボン酸の、無水物、或いはクロライド、ブロマイド等のカルボン酸ハライド;前記多価カルボン酸の、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル等が挙げられる。
【0014】
前記ラクトン類としては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0015】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオール類としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートと多価アルコールとの反応生成物に有機ジカルボン酸と反応させて得られた反応生成物等が挙げられる。
【0016】
また、前記結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類としては、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び/又はポリテトラメチレングリコール等のジオールと、ホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)若しくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物等が挙げられる。
【0017】
前記ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類の数平均分子量は、300〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましい。本発明においては、これらのポリオール類の中でも、特にポリカーボネートポリオール類を使用することが、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の湿熱下での密着性が良好となるので好ましい。
【0018】
前記数平均分子量が200未満の低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオールが挙げられる。
【0019】
本発明において(b)成分として使用される前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物のヌレート体(三量体)に、長鎖アルコール類を付加させて得ることができる。
【0020】
前記ヌレート体を形成し得るジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、(2,2,4)及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらの混合物が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を使用すること、特に、少なくとも1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが、原料入手容易性、及び合成作業性の観点から好ましい。
【0021】
ここで、前記ジイソシアネート化合物のヌレート体は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキサン等の不活性溶媒中、又はジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、アルキル基の炭素原子数7〜11(以下C7〜C11のように記すことがある)の混合アルキルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ヘキサノールベンジルフタレート等のフタル酸エステル、トリスクレジルホスフェート、トリスフェニルホスフェート等のリン酸エステル、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル若しくはC7〜C11の混合アルキルトリメリテート等のトリメリット酸エステル等の可塑剤中で、周知の触媒、例えば、三級アミン、四級アンモニウム化合物、マンニッヒ塩基、脂肪酸のアルカリ金属、アルコラート等を使用して、公知の方法で重合させて得ることができる。高揮発性の溶剤下で重合反応を行わせた場合には、適当な高沸点の溶剤、例えば可塑剤を用いて、最終的に溶剤置換処理を行うことが好ましい。
【0022】
また、前記ヌレート体に付加させる前記長鎖アルコール類としては、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖或いは分岐の炭素原子数10〜30のアルコールが挙げられる。これらの長鎖アルコール類の中でも、炭素原子数15〜25の長鎖アルコールを使用すること、特にn−オクタデカノールを使用することが、耐水性等に一層優れた、水系アクリルウレタン樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0023】
これらのヌレート体及び長鎖アルコール類を用いて前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ジイソシアネート化合物のヌレート体1モルに対し、長鎖アルコール類1〜2モルを、一括、又は段階的に加え、加熱反応させることによって容易に製造することができる。
【0024】
本発明で使用する一般式(1)で表されるイソシアネート化合物の配合量は、水系ポリウレタン樹脂固形分中における含有量で2〜35質量%であるが、3〜30質量%であることが好ましく、5〜25質量%であることがより好ましい。一般式(1)のイソシアネート化合物の含有量が2質量%未満では、樹脂塗膜の耐水性や、水系アクリルウレタン樹脂塗膜の防塵性等の効果が小さく、35質量%を超えると、ウレタンプレポリマーの水への分散性や、水系樹脂の保存安定性に劣る傾向がある。
【0025】
本発明の(b)成分として使用するイソシアネートは、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物単独でも良いが、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物とジイソシアネート化合物とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0026】
上記ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、(2,2,4)及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらの混合物が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は、カルボジイミド変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。これらの中でも、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0027】
更に、(b)成分のイソシアネートとしては、必要に応じて、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物を併用することができる。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、及びこれらの混合物等、3官能以上のイソシアネート;これら3官能以上のイソシアネートの、カルボジイミド変性;イソシアヌレート変性;ビウレット変性等の変性物;これらを各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート;前記したジイソシアネート化合物のイソシアヌレート3量体、及び、ビウレット3量体等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する水系ポリウレタン樹脂は、前記(a)成分及び(b)成分を必須成分として用いたポリウレタンを、水に分散させたものである。該ポリウレタンの水分散方法は、特に限定されず、更にイオン性基導入化合物(d)及びイオン性基中和剤(e)を必須成分とする自己乳化法や、ポリウレタンの主鎖又は側鎖にポリエチレンオキシド単位を導入して水分散させる自己乳化法、反応性又は非反応性の乳化剤を使用する強制乳化法、或いは、これら自己乳化と強制乳化を組み合わせた乳化方法の何れであっても良い。
【0029】
上記イオン性基導入化合物(d)としては、アニオン性基を導入する化合物とカチオン性基を導入する化合物が挙げられる。アニオン性基を導入する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。カチオン性基を導入するものとしては、例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−ブチル−N,N−ジエタノールアミン等のN−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類が挙げられる。
【0030】
また、前記イオン性基導入化合物(d)の配合量は、前記(a)、(b)及び(d)成分からなるウレタンプレポリマー中の0〜30質量%の範囲となる量であることが好ましく、0〜20質量%となる量であることがより好ましく、特に、0〜10質量%となる量であることが好ましい。イオン性基導入成分の含有量が30質量%を超えると、ウレタン結合の凝集エネルギーが増加するのに伴ってウレタンプレポリマーの粘度が上昇し、水分散性が困難になる等の問題を生じる。
【0031】
本発明で使用する前記イオン性基中和剤成分(e)としては、アニオン性基の中和剤及びカチオン性基の中和剤がある。該アニオン性基の中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類;N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類;トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類の3級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられる。前記カチオン性基の中和剤としては、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸等の有機カルボン酸;パラトルエンスルホン酸、スルホン酸アルキル等の有機スルホン酸;塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸等の無機酸;エピハロヒドリン等のエポキシ化合物の他、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル等の4級化剤が挙げられる。
【0032】
前記イオン性基中和剤成分(e)の使用量は、イオン性基1当量に対して0.5〜2.0当量であることが好ましく、0.8〜1.5当量であることがより好ましい。このイオン性基中和剤の使用量の過不足が大きいと、水系アクリルウレタン樹脂組成物の保存安定性のみならず、水系アクリルウレタン樹脂膜の強度及び伸び等の機械物性や耐水性等の諸物性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明で使用する前記水系ポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されず、必要に応じて、反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒を用い、ポリオール成分(a)、一般式(1)で表されるイソシアネート化合物を必須としたイソシアネート成分(b)及び水を用いて、公知の方法によって適宜製造することができる。この場合、更にイオン性基導入化合物(d)及びイオン性基中和剤成分(e)を使用することが好ましく、必要に応じてポリウレタンの主鎖又は側鎖にポリエチレンオキシド単位を導入したり、乳化剤成分を配合したりすることができる。
また本発明においては、(1)ウレタンプレポリマーを合成してから、プレポリマー及び/又は水中にイオン性基中和剤を添加し、イオン性基中和剤成分及び/又は乳化剤成分を含む水中にプレポリマーを加えて分散させるプレポリマーミキシング法、(2)ウレタンプレポリマー中にイオン性基中和剤成分及び/又は乳化剤成分を含む水を加えて分散させる転相法等によって、水分散したウレタン樹脂を水中で鎖伸長剤成分を用いて鎖伸長させる方法の何れの方法を用いても良く、水分散方法等においても特に限定されることはない。
【0034】
上記した、反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒として好適なものとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、通常、ウレタンプレポリマー((a),(b)及び(d),(e)成分の合計量)100質量部に対して、3〜200質量部となるように用いられる。これらの溶媒として、沸点100℃以下の溶媒を使用する場合には、水系ポリウレタン樹脂を合成した後、その溶媒を減圧留去等によって除去することが好ましい。
【0035】
前記ポリウレタンの主鎖又は側鎖にポリエチレンオキシド単位を導入する化合物(以下ノニオン性基導入化合物ともいう)としては、前記低分子ポリオール類のエチレンオキシド重付加物又はエチレンオキシド/プロピレンオキシド共重付加物や、アンモニア及びメチルアミン、エチルアミン、アニリン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等の活性水素を2個以上有する低分子量アミン化合物のエチレンオキシド重付加物、又は、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重付加物;ジイソシアネート化合物のヌレート体(三量体)のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエステル等が挙げられる。
【0036】
上記ノニオン性基導入化合物の使用量は、ポリウレタン中におけるポリエチレンオキシド単位の含有量が1〜30質量%となる量であることが好ましく、3〜20質量%となる量であることがより好ましい。ポリウレタン中のポリエチレンオキシド単位の含有量が1質量%より少ないと、水性ポリウレタンの水分散安定性を向上させる効果が小さく、30質量%より大きいと、本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物から得られる塗膜等の耐水性が悪化する場合がある。
【0037】
前記乳化剤成分としては、例えば、通常のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤;第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤;更に、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤;等の、公知の界面活性剤を挙げることができる。
【0038】
上記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0039】
前記ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0040】
上記アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0041】
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたもの等が挙げられる。更に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物であってもブロック付加物であってもよい。
【0042】
前記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
【0043】
前記両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2‐アルキル‐N‐カルボキシメチル‐N‐ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型、β‐ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等が挙げられる。
【0044】
前記乳化剤成分の使用量は特に制限されるものではないが、水系アクリルウレタン樹脂組成物を塗布して得られる塗膜の強度及び伸び等の機械的物性、並びに塗膜耐水性等の観点から、ポリウレタン樹脂固形分の総量100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、0〜20質量部であることがより好ましい。30質量部を超えると前記した水系アクリルウレタン樹脂膜の物性が低下するおそれがある。
【0045】
前記鎖伸長剤成分としては、例えば、前記数平均分子量200未満の低分子量ポリオール化合物及び低分子ポリアミン化合物のような、通常用いられる鎖伸長剤の中から適宜選択して使用することができる。このような鎖伸長剤成分としては、例えば、前記した低分子ジオール類の他、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン等の低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類のポリアミン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジン類;及び水等が挙げられる。
【0046】
上記鎖伸長剤成分の使用量は、水系アクリルウレタン樹脂の塗膜物性等の観点から、鎖伸長反応前のウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の1当量に対する、鎖伸長剤のイソシアネート反応基の当量比が0.1〜1.0の範囲となる量であることが好ましい。
【0047】
本発明で使用する(c)成分の不飽和モノマーに係る(メタ)アクリレートは、特に限定されるものではないが、例えば、炭素原子数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリルアルキルエステル化合物である。該アルキルエステルのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、第三ブチル、ペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、メトキシエチル、エトキシエチル、ブトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ・3−クロロプロピル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、グリシジル又はテトラヒドロフルフリル等のアルキル基及び置換アルキル基が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、反応性、水分散性及び入手容易性等の観点から炭素原子数1〜8のアルキルエステルが好ましく、炭素原子数1〜4のアルキルエステルであることがより好ましい。
【0048】
また、本発明の前記不飽和モノマー(c)と共に他の不飽和モノマーを共重合させることもできる。これらの他の不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン及びブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等ハロゲン化脂肪族不飽和炭化水素、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等の芳香族不飽和炭化水素、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸又はこれらのエステル(エステルを構成するアルコール成分としては、前記した(メタ)アクリレートを構成するアルコール成分が例示される)、安息香酸ビニル及び酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド及びアクリロニトリル等の窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0049】
また、本発明で使用する(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレートの中から選ばれた不飽和モノマーの、全不飽和モノマー中における含有量は任意に設定することができるが、全不飽和モノマー中の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。30質量%未満では(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレートを用いたことによる効果が発現し難くなる。
【0050】
また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸を使用すると共に中和剤を使用することにより、アクリル系樹脂自体に水溶性を付与することもできる。上記中和剤としては、例えば、前述した水系ポリウレタン樹脂の場合に使用できるもの等が挙げられる。
【0051】
これらの不飽和モノマーは、反応当初に一括して仕込むことも、また、分割して、或いは連続的に仕込むことも可能であり、更に、必要に応じてメルカプタン類等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0052】
また、前記アクリル樹脂を製造するために使用される前記重合開始剤は、特に制限を受けず、通常のエマルジョン重合に用いられる水溶性開始剤ばかりでなく、油溶性開始剤も使用することができる。これらの重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル、第三ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及び過酸化ベンゾイル等が挙げられる。また、これらの重合開始剤と亜硫酸塩、スルホキシレートとの組み合わせからなる、いわゆるレドックス系触媒を使用することもできる。
【0053】
上記重合開始剤の使用量は、不飽和モノマーの種類、濃度及び反応温度等によっても変化するが、好ましくは全不飽和モノマーに対して0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。これらの重合開始剤は、全量を一括して添加することができるだけでなく、分割して又は連続的に添加することもできる。
【0054】
前記不飽和モノマーを重合する際の反応温度は、使用する不飽和モノマーや重合開始剤の種類と量に応じて変化するが、0〜100℃であることが好ましい。
【0055】
また、前記アクリル樹脂を予め単独で製造(重合)する際に使用することができる乳化剤は特に限定されず、具体例としては、例えば、反応性乳化剤や、前述した水系ポリウレタン樹脂において使用できる乳化剤等が挙げられる。
【0056】
また、上記反応性乳化剤としては、分子内に前記不飽和モノマーと共重合し得る不飽和結合を有するものであれば、ノニオン系、アニオン系又はカチオン系であることを問わず使用することができる。
【0057】
上記反応性乳化剤は、分子内に、疎水性基、親水性基及び反応性基を各々少なくとも1個有する化合物である。前記疎水性基は脂肪族又は芳香族炭化水素基からなる基であり、親水性基はポリオキシアルキレンエーテル基に代表されるノニオン性基、スルホン酸塩、カルボン酸塩若しくは燐酸塩に代表されるアニオン性基又は第4級アンモニウム塩に代表されるカチオン性基を包含し、反応性基は、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、ビニルフェニル基、アリルフェニル基;(メタ)アクリル酸のエステル基又はアミド基;若しくは、マレイン酸等の不飽和二塩基酸の、エステル基又はアミド基を含有する基である。
【0058】
上記反応性乳化剤としては、例えば、特開昭62−22803号公報、同62−104802号公報、同62−104803号公報、同62−221431号公報、同62−221432号公報、同62−225237号公報、同62−244430号公報、同62−286528号公報、同62−289228号公報、同62−289229号公報、同63−12334号公報、同63−54930号公報、同63−77530号公報、同63−77531号公報、同63−77532号公報、同63−84624号公報、同63−84625号公報、同63−126535号公報、同63−126536号公報、同63−147530号公報、同63−319035号公報、特開平1−11630号公報、同1−22338号公報、同1−22627号公報、同1−22628号公報、同1−30632号公報、同1−34430号公報、同1−34431号公報、同1−34432号公報、同1−99638号公報、同1−99639号公報、同4−50204号公報、同4−53802号公報、同4−55401号公報に記載されたものが挙げられる。
【0059】
上記反応性乳化剤の具体例としては、例えば、1−(メタ)アリロキシ−2−ヒドロキシアルカン、1−(メタ)アリロキシ−3−アルキルフェノキシ-2−ヒドロキシアルカン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシアルカン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−アルキルフェノキシ-2−ヒドロキシアルカン、1−(メタ)アリロキシ−3−アルキロキシ-2−ヒドロキシアルカン、1−(メタ)アクリロイルオキシ−3−アルキロキシ-2−ヒドロキシアルカン、及び4−アルキル−2−(2−プロペニル)フェノールのアルキレンオキシド付加物、又はこれらの硫酸エステルアルカリ、燐酸エステルアルカリ、若しくはアンモニウム塩等が挙げられる。
【0060】
上記反応性乳化剤の使用量は、全不飽和モノマー中の0.1〜20質量%であることが好ましい。該使用量が0.1質量%未満であると乳化安定性が不十分となり、20質量%を超えると、得られる水系樹脂から形成される被膜の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0061】
本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂を含有するものであるが、その調整方法は特に制限されず、個別に製造した水系ポリウレタン樹脂と水系アクリル樹脂を混合する方法、或いは、水系ポリウレタン樹脂にアクリル系不飽和モノマー混合物及び乳化剤を加えて重合させる方法の、いずれの方法でも採用することができる。本発明においては、塗膜透明性等の諸性能が向上する等の観点から、水系ポリウレタン樹脂中で不飽和モノマーを重合する方法がより好ましい。
【0062】
本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物には、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂が質量比で20:80〜80:20となるように含有され、両者を合計した樹脂固形分が前固形分中の2〜70質量%、好ましくは5〜60質量%となるように含有される。ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂を合計した固形分が2質量%未満であると乾燥に長時間を要することとなり、該固形分が70質量%を超えると、粘度が高くなって取り扱いに不便となるばかりでなく、保存安定性が低下する。
【0063】
本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、通常用いられる各種添加剤を添加することができる。該添加剤の具体例としては、例えば、架橋剤、各種耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤)、基材に対する密着性を特に強固にするシランカップリング剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ等の無機質コロイドゾル、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、外部架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、ゲル化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機又は有機の充填剤、可塑剤、滑剤、フッ素系又はシロキサン系等の帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、ワックス類、防曇剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤、及び防錆剤等を挙げることができる。
【0064】
上前記架橋剤は、ウレタンプレポリマー合成時に内部架橋剤として配合することも、水系アクリルウレタン樹脂組成物に外部架橋剤として配合することもできる。
【0065】
前記内部架橋剤としては、例えば、メラミン、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミン等のメラミン化合物や、トリメチロールプロパン等の3つの水酸基を有する低分子ポリオール化合物等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも特にメラミンが、ウレタンプレポリマーの水分散性を阻害し難いので好ましい。
【0066】
前記外部架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多官能性アジリジン化合物等が挙げられる。また、水系ポリウレタン樹脂がアニオン性である場合には、アニオン性基(具体的にはカルボキシル基又はスルホン酸基)と反応し得る化合物を架橋剤として使用することができる。
【0067】
上記アニオン性基と反応し得る化合物としては、例えば、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物及び亜鉛錯体等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、アニオン性基と反応しやすい、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、及びカルボジイミド系化合物を使用することが好ましい。
【0068】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第3−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第3オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0069】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)‐4,6‐ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5‐トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール‐1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特に、ニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0070】
前記酸化防止剤としては、リン系、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤が挙げられる。リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12アルキル乃至C15アルキルの混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール-2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0071】
前記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェロール等が挙げられる。
【0072】
前記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0073】
前記耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤)の使用量は、水系アクリルウレタン樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることがより好ましい。0.001質量部より少ないと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より多い場合には水分散安定性や塗膜物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0074】
これらの耐候剤を添加する方法としては、ウレタン原料のポリオールに添加する方法、ウレタンプレポリマーに添加する方法、ウレタン又はアクリル樹脂の水分散時における水相に添加する方法、水分散後に添加する方法の何れでもよいが、操作が容易であるという観点から、原料ポリオールに添加する方法及びウレタンプレポリマーに添加する方法が好ましい。
【0075】
本発明に使用されるコーティング前の合成樹脂フィルムを形成することのできる合成樹脂は、特に限定されるものではないが、本発明においては特に、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂等を好適に使用することができる。
【0076】
上記塩化ビニル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等、その重合方法によって特に限定されることはない。本発明においては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリテン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル三元共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、及び、それら相互のブレンド品、若しくは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、及びポリエステル等との、ブレンド品、ブロック共重合体又はグラフト共重合体等が挙げられる。
【0077】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度、低密度又は直鎖状低密度のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体等のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体、これらα−オレフィンと、共役ジエン又は非共役ジエン等の多不飽和化合物、アクリル酸、メタクリル酸、又は酢酸ビニル等との共重合体等が挙げられる。
【0078】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエーテルポリエステル等が挙げられる。
【0079】
前記合成樹脂からフィルムを形成する方法としては、通常の合成樹脂の加工方法が用いられ、例えば、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、ブロー成型、インフレーション成型、溶融流延法、加圧成型加工、ペースト加工又は粉体成型等の方法を好適に使用することができる。
【0080】
前記合成樹脂フィルムの膜厚は、好ましくは0.001〜1mm、更に好ましくは0.01〜0.5mmである。
【0081】
また、前記合成樹脂フィルムを形成する際には、通常の合成樹脂に用いられる添加剤、例えば、可塑剤、有機カルボン酸、フェノール類及び有機リン酸類の金属塩、有機錫化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、多価アルコール、リン系、フェノール系又は硫黄系等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライト化合物、過塩素酸塩類、その他の無機金属化合物、架橋剤、充填剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、顔料、加工助剤、防曇剤及び防霧剤等を使用することができる。
【0082】
前記合成樹脂フィルム上に本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物をコーティングする方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ドクターブレードコート法、カーテンロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロッドコート法等のコーティング法を挙げることができる。例えば、塩化ビニル系樹脂フィルムの片面又は両面に、本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物を、乾燥膜厚が好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.2〜5μmとなるように塗布して乾燥すれば良い。
【0083】
本発明の水系アクリルウレタン樹脂組成物の用途としては、塗料、接着剤、表面改質剤、有機粉体及び/又は無機粉体のバインダー及び成形体等が挙げられる。具体的には、ガラス、スレート又はコンクリート等の無機系構造材用の塗料、農業フィルム用コーティング剤、木材用塗料、鋼板用塗料、感熱紙用コーティング剤、インクジェット紙用コーティング剤、印刷インク用のバインダー、電子材料部品用コーティング剤等が挙げられる。本発明の水分散型ポリウレタン組成物は、これらの用途の中でも、特に、農業フィルム用コーティング剤、鋼板用、ガラス用又は木材用の塗料、及び、紙、繊維又は電子材料部品のコーティング剤として好適に用いることができ、特に農業フィルム用コーティング剤として好適である。
【0084】
また、本発明に係るコーティングフィルムの用途は特に限定されるものではないが、ハウス、トンネル及びマルチ等の農業用フィルム(いわゆる農ビ、農ポリ、農サクビ、農PO、硬質フィルム等)に、特に好適に使用することができる。
【0085】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例及び比較例における部は、特に断りのないかぎり質量部を表す。
【0086】
[製造例−1]
<一般式(1)イソシアネート化合物の溶液NOD−1の合成>
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(193g/NCO当量)579g(NCO当量:3.0)、ステアリルアルコール(n−オクタデカノール)270g(OH当量:1.0)及びN−メチル−2−ピロリドン849gを反応フラスコに仕込み、窒素気流下で115〜120℃にて2時間反応させ、NCO%が5.0%となったことを確認して、一般式(1)のイソシアネート化合物の溶液であるNOD−1を得た。
【0087】
<水系アクリルウレタン樹脂組成物PAU−1の合成>
<ウレタンプレポリマー製造工程>
ポリオール(a)成分として、アジピン酸及びネオペンチルグリコールから得られた数平均分子量1000のポリエステルジオール((株)ADEKA製、製品名Y9−10)49g(0.049モル)及びトリメチロールプロパン5.2g(0.038モル)、イソシアネート成分(b)として、前記イソシアネート化合物の溶液NOD−1を56g(0.033モル)及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)87g(0.33モル)、イオン性基導入化合物(d)としてジメチロールプロピオン酸17.9g(0.134モル)、及び溶媒としてN−メチル−ピロリドン64gを反応フラスコに仕込み、窒素気流下の100〜120℃で2.5〜3.0時間反応させ、NCO%が3.8%となったことを確認した。50〜60℃に冷却した後、イオン性基中和剤(e)としてトリエチルアミン16.2g(0.14モル)を添加し、50〜60℃で30分反応させ、ウレタンプレポリマーPP−1を得た。
【0088】
<ラテックス化及びウレタン高分子量化工程>
不飽和モノマー成分(c)として、メタクリル酸メチル162g(1.62モル)、アクリル酸ブチル25g(0.19モル)及びメタクリル酸2.5g(0.029モル)を添加し、ウレタンプレポリマー/アクリルモノマー混合物を得た。
次いで、水519g中に消泡剤((株)ADEKA製、B1016)0.3gを添加し、上記ウレタンプレポリマー/アクリルモノマー混合物441gを加えて水溶液を調製し、20〜40℃で15分間攪拌を行った後、鎖伸長剤としてエチレンジアミン/水(1/3)混合液16.0g(0.067モル)を滴下し、20〜40℃で10分間攪拌した。更に鎖伸長剤としてアジピン酸ジヒドラジド/水(1/3)混合液11.6g(0.017モル)を添加し、20〜40℃でNCO基消失まで(1〜2時間)攪拌を継続し、水系ポリウレタン/アクリルモノマー混合物を得た。
【0089】
<アクリル重合工程>
得られた水系ポリウレタン/アクリルモノマー混合物に、過硫酸カリウム3質量%水溶液10.3g(0.0013モル)を添加し、50〜60℃でアクリルの重合反応を2時間行わせ、水系アクリルウレタン樹脂組成物PAU−1を得た。
【0090】
[製造例−2及び−3]
<水系アクリルウレタン樹脂組成物PAU−2及びPAU−3の合成>
後記表1に記載した配合に基づき、前記PAU−1と同様の製造条件で製造した。
【0091】
[比較製造例−1]
<水系ポリウレタン樹脂PUD−1の合成>
前記製造例−1において使用した不飽和モノマー(c)を配合しなかったこと以外は、製造例−1と同様にして水系ポリウレタン樹脂PUD−1を得た。
【0092】
[比較製造例−2〜5]
<水系アクリルウレタン樹脂PAU−4〜PAU−7の合成>
下記表1に記載した配合に基づき、前記製造例−1と同様にして水系アクリルウレタン樹脂PAU−4〜PAU−7の製造を行った。但し、PAU−7については、ウレタンプレポリマーの水分散性が劣り、水系樹脂を得ることができなかった。
【0093】
【表1】

*1:Y9−10:ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール/アジピン酸Mw1000)
*2:PTG−1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコールMw1000((株)保土ヶ谷化学製)
*3:C1090:ポリカーボネートジオールMw1000((株)クラレ製)
*4:TMP:トリメチロールプロパン
*5:NOD−1:ヘキサメチレンジイソシアネート三量体/ステアリルアルコール反応物
*6:H12MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
*7:IPDI:イソホロンジイソシアネート
*8:MMA:メタクリル酸メチル
*9:BA:アクリル酸ブチル
*10:MA:メタクリル酸
*11:DMPA:ジメチロールプロピオン酸
*12:TEA:トリエチルアミン
*13:NMP:N−メチル−2−ピロリドン
*13:UPP/AC混合物:ウレタンプレポリマー/アクリルモノマー混合物
*14:EDA/水:エチレンジアミン/水(1/3)混合液
*15:ADH/水:アジピン酸ジヒドラジド/水(1/3)混合液
*16:KPS/水:過硫酸カリウム3wt%水溶液
*17:NCOeq:ウレタンプレポリマー/アクリルモノマー混合物のイソシアネート当量
【0094】
[実施例1−1〜1−3及び比較例1−1、1−2]
<耐水性評価>
<塗膜フィルムの作製>
ガラス板上に、既に製造した表2に記載した水系アクリルポリウレタン樹脂又は水系ポリウレタン樹脂を、乾燥状態で厚さ100μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、室温で24時間乾燥した後、更に120℃で2時間乾燥させて塗膜フィルムを得た。
【0095】
<塗膜フィルムの耐水性評価>
上記で得られた水系アクリルウレタン樹脂又は水系ポリウレタン樹脂の塗膜フィルムを25℃の水に1週間浸した後、白化した程度を目視によって観察し、以下の基準で耐水性を評価した。
<評価基準>
◎:全く白化せず
○:殆ど白化せず
△:僅かに白化が見られる
×:かなり白化がみられる
【0096】
【表2】

【0097】
[実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−5]
<防塵性及び接着性評価>
<塩化ビニル樹脂フィルムの作製>
塩化ビニル樹脂(重合度1300)100質量部、ジオクチルフタレート50質量部、トリクレジルホスフェート5質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2質量部、ソルビタンモノパルミテート1.5質量部、メチレンビスステアリン酸アミド0.5質量部、ハイドロタルサイト0.5質量部、ステアリン酸亜鉛0.5質量部、ステアリルリン酸バリウム0.5質量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1質量部及びテトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−
ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート0.1質量部を配合し、180℃でカレンダー加工して、0.1mm厚の塩化ビニル樹脂フィルムを作製した。
【0098】
[コーティングフィルムの作製]
<塩化ビニル樹脂>
前記で得られた塩化ビニル樹脂フィルムの片面に、下記表3に記載した前記製造例で得られた水系樹脂組成物を、130メッシュのグラビアコーターを用いて塗布し、厚さ2μmの塗膜を設けてコーティングフィルムを得た。
【0099】
<防塵性評価>
前記で得られたコーティングフィルムの塗布面を表にして屋外(埼玉県浦和市)に露し、暴露前と暴露12か月後のフィルムにつき、下記の基準に基づいて、目視によって防塵性を評価した。
(防塵性評価基準)
◎:殆ど塵埃が付着していない
○:僅かに塵埃が付着している
△:塵埃が多少付着している
×:塵埃が著しく付着している
【0100】
<耐屈曲性評価>
前記で得られたコーティングフィルムにつき、180°屈曲を10回行った後に、下記評価基準に基づいて耐屈曲性を目視評価した。
(耐屈曲性評価基準)
○:割れ及び剥がれがない
△:僅かなクラックが生じる
×:割れ、剥がれが生じる
[実施例3]
【0101】
<ポリエチレンフィルムの作製>
低密度ポリエチレン(密度0.923g/cm,MFR=2.0)100質量部、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.2質量部及びメチレンビスアマイド0.2質量部を配合し、インフレーション加工法により0.1mm厚のフィルムを得た。
【0102】
<コーティングフィルムの作製>
<ポリエチレンフィルム>
前記で得られたポリエチレンフィルムの片面に、前記製造例で得られた水系アクリルウレタン樹脂組成物(PAU−1)を、130メッシュのグラビアコーターにより塗布し、厚さ2μmの塗膜を形成した。
【0103】
前記で得られたコーティングフィルムを用いて実施例2と同様の試験を行った。結果を下記表3に示す。
[実施例4]
【0104】
<ポリエステルフィルムの作製>
ポリエチレンテレフタレート100質量部及びトリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト0.2質量部を配合し、溶融押出法により0.1mm厚のフィルムを作製した。
【0105】
<コーティングフィルムの作製>
<ポリエステルフィルム>
前記で得られたポリエステルフィルムの片面に、前記製造例で得られた水系アクリルウレタン樹脂組成物(PAU−1)を、130メッシュのグラビアコーターにより塗布し、厚さ2μmの塗膜を形成した。
【0106】
前記で得られたコーティングフィルムを用いて実施例2と同様の試験を行った。結果を下記表3に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
表2の結果から明らかなように、本発明で使用する特定のイソシアネート化合物の配合量が少ない比較例1−2の場合には耐水性が劣り、また、比較例1−1のようにアクリル樹脂を複合していないウレタン樹脂単独系でも耐水性が劣るのに対し、特定のイソシアネートを特定量配合した本発明のアクリルウレタン樹脂組成物の場合のみ耐水性が良好なことが分かる。従って、本発明のアクリルウレタン樹脂組成物は、耐水性の優れた塗料・コーティング剤として有用である。
【0109】
また、表3の結果から明らかなように、アクリル樹脂を全く複合しない比較例2−1及び複合量の少ない比較例2−3の場合では防塵性が劣り、アクリル樹脂を複合させた場合でも、本発明の特定のイソシアネート化合物を配合していない比較例2−2の場合にも防塵性が劣る結果となっている。更に、アクリル樹脂の配合量の多い比較例2−4の場合には、防塵性に優れているものの耐屈曲性に劣り、本発明で得られる良好な防塵性及び耐屈曲性が得られないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のアクリルウレタン樹脂組成物は、耐水性に優れ、塗料やコーティング剤として有用であり、また、本発明のアクリルウレタン樹脂組成物を塗布した本発明のコーティングフィルムは、防塵性及び耐屈曲性に優れ、特に農業用フィルム等の用途に好適であるので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂を20〜80質量%及びアクリル樹脂を80〜20質量%含有する樹脂を、固形分換算で2〜70質量%含有する水系アクリルウレタン樹脂組成物であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール成分(a)、下記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物を必須とするイソシアネート成分(b)、及び水を必須成分として得られた水系ポリウレタン樹脂であり、前記アクリル樹脂が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートの中から選ばれた少なくとも1種の不飽和モノマー(c)を重合させて得られた水系アクリル樹脂であると共に、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物の割合が、前記水系ポリウレタン樹脂固形分中における含有量で、2〜35質量%であることを特徴とする水系アクリルウレタン樹脂組成物;


但し、上式中のRは炭素原子数10〜30のアルキル基を表し、Rは−N=C=O、又は下記の基を表し、Aはジイソシアネート化合物から2個の−N=C=Oを除いた残基を表す;

【請求項2】
前記一般式(1)中のAが、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートから2個の−N=C=Oを除いた残基である、請求項1に記載された水系アクリルウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート成分(b)が、前記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物と共に、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートを更に含有する、請求項1又は2に記載された水系アクリルウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
必須成分として、更に、(d)成分としてイオン性基導入化合物、及び、(e)成分としてイオン性基中和剤を含有する、請求項1〜3の何れかに記載された水系アクリルウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
合成樹脂フィルムの片面又は両面に、前記請求項1〜4の何れかに記載された水系アクリルウレタン樹脂組成物を塗布・乾燥してなることを特徴とするコーティングフィルム。
【請求項6】
前記合成樹脂フィルムが、塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、又は、ポリエステル系樹脂フィルムである、請求項5に記載されたコーティングフィルム。
【請求項7】
製品フィルムが農業用フィルムとして使用される、請求項5又は6に記載されたコーティングフィルム。

【公開番号】特開2013−35895(P2013−35895A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170867(P2011−170867)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】