説明

水系ジェットインク組成物

【課題】水系インク組成物中の有機溶剤量が多量であっても貯蔵安定性、連続吐出性が良く、受理層を必要せずさまざまな被塗物へハジキやにじみがなく、密着性、耐水性が良好である塗装物が得られ、また色の発現に優れている水系ジェットインク組成物を提供することである。
【解決手段】 ワニス、顔料分散液、有機溶剤及び水を含有した、20℃における粘度が30mPa・s以下、20℃における表面張力が21〜34mN/mである水系ジェットインク組成物において、
該顔料分散液は、顔料分散用ビーズの充填率が50〜75%のビーズミルで分散されており、
該有機溶剤は、下記式で示される化合物を1種類以上含む水系ジェットインク組成物。
O−(CH−CH(R)−O)n−H
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基で、Rは水素原子又はメチル基で、nは1〜3である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系ジェットインク組成物に関する。より詳しくは、水系インク中の有機溶剤量が多量であっても、貯蔵安定性に優れ、連続吐出性が良好で、ハジキやにじみがなく、さまざまな被塗物への密着が良好である塗装物が得られ、また色の発現に優れている水系ジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、溶媒及び水からなる水系インク組成物で、種々の溶媒を用いたインク組成物が多数提案されている。
【0003】
しかし、従来のインク組成物を用いて塗装物を作製した場合に、貯蔵安定性が悪く、不安定な噴射が生じ被塗物への密着が悪い塗装物が得られたり、またそのようなインク組成物を用いて塗装物を作製しても色の発現が必ずしも充分でなかったりすることがある。また、ハジキやにじみが生じず、良好な密着を発現するために被塗物によっては受理層を形成する必要があった。
【0004】
上記、不安定な噴射が生じる原因として、一般的に、組成物中の溶剤の選択によって微小液滴の乾燥が速くなり過ぎてしまい、噴射以前に乾燥が進むことにより吐出機に固着するためであり、これを防ぐために高沸点溶剤を添加する方法がとられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、水系インクに有機溶剤が多量に含むことにより、インクの貯蔵安定性が低下する問題があった。
【0005】
また、ハジキやにじみが生じる原因として、一般的に、被塗物との界面張力差の調整が不十分であることが知られており、表面調整剤を添加する方法がとられている。
【0006】
一方、特許文献2には、ハジキやにじみを改善する方法としてシリコーンアクリル樹脂を添加する方法がとられているが、水系の組成物について提供されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3050049号明細書
【特許文献2】特開平10−251573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のような課題を解決することであり、水系インク組成物中の有機溶剤量が多量であっても貯蔵安定性、連続吐出性が良く、受理層を必要せずさまざまな被塗物へハジキやにじみがなく、密着性や耐水性が良好である塗装物が得られ、また色の発現に優れている水系ジェットインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、組成物中の有機溶剤を特定し、顔料分散液の製造方法にビーズミルを用い、顔料分散用ビーズの充填率を特定の範囲内にあることによって、貯蔵安定性と連続吐出性を調整でき、更には塗膜性能が向上することを見出した。
【0010】
本発明に従って、ワニス、顔料分散液、有機溶剤及び水を含有した、20℃における粘度が30mPa・s以下、20℃における表面張力が21〜34mN/mである水系ジェットインク組成物において、
該顔料分散液は、顔料分散用ビーズの充填率が50〜75%のビーズミルで分散されており、
該有機溶剤は、下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上含むことを特徴とする水系ジェットインク組成物が提供される。
【0011】
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水系ジェットインク組成物を用いることにより、貯蔵安定性、連続吐出性が良く、ハジキやにじみのない、高光沢、耐水性が良好な品質上好ましい塗装物が得られ、また優れた色の発現が得られる。更に、本発明の水系ジェットインク組成物を用いることにより、受理層を必要せずに金属板及びその塗装物、窯業系塗装物、プラスチック類、紙、ガラス等のさまざまな被塗物にも塗装でき、良好な密着性、光沢が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の水系ジェットインク組成物について具体的に説明する。
【0014】
本発明のワニス、顔料分散液、有機溶剤、水を含有した、20℃における粘度が30mPa・s以下、20℃における表面張力が21〜34mN/mである水系ジェットインク組成物において、該顔料分散液は、顔料分散用ビーズの充填率が50〜75%のビーズミルで分散されており、該有機溶剤は、下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上含むことを特徴とするコーティング組成物が提供される。
【0015】
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。
【0016】
水系ジェットインク組成物の20℃における粘度が30mPa・sを超えると、水系ジェットインク組成物の塗布時に液滴の吐出不良が発生する。また、20℃における表面張力が21mN/m未満又は34mN/mを超えると塗布時に液滴の吐出不良が発生する。
【0017】
本発明に使用する顔料分散用ビーズの直径は0.1〜1.0mmであることが好ましい。ビーズの材質は、ガラス、窒化硅素、アルミナ及びジルコニア等が挙げられるが、耐摩耗性、高分散性からジルコニアが好ましい。ビーズ径を0.1mmより小さくすると、効率良く衝突エネルギーを加えられず、分散が進み難くなる。一方、ビーズ径を1.0mmより大きくすると、ビーズと顔料との接触面積が小さくなり摩砕による粉砕能力が低下することになり易く、かつ、顔料への衝突エネルギーが過大となるため、顔料表面から顔料誘導体が脱離してしまい、分散安定性が低下するという現象が発生する恐れがある。以上より、分散ビーズの直径は、0.1〜1.0mmであり、ジルコニアビーズを使用することが好ましい。ビーズミル内に充填される顔料分散用ビーズの充填率は50〜75%であることが必須であり、好ましくは60〜70%である。充填率が50%未満の場合、ビーズと分散液スラリーの接触回数が減少し、分散効率が低下する。充填率が75%を超える場合、有機溶剤が水系ジェットインク組成物中30〜60質量%において、貯蔵安定性が低下する。
【0018】
次に、本発明に使用するビーズミルは、バッチ式、循環式いずれでも使用可能である。バッチ式としては、例えば、ボールミル、サンドグラインダー、アトライター、アジテータ及びペイントシェーカー等があり、いずれも使用可能である。また、循環式としては、縦型、横型いずれでもよく、例えば、アイメックス社製ビスコミルシリーズ、アシザワ社製スターミル、システムーZETA、シンマルエンタープライゼス社製ダイノミル、ドライスヴェルケ社製DCPパールミル、三菱重工社製ダイヤモンドファインミル、及び浅田鉄工社製ナノミル、ピコミル等があるが、いずれを使用してもよい。
【0019】
ビーズミル内の攪拌羽根は、ディスクタイプとピンタイプがあるが、いずれを使用してもよい。分散時における攪拌羽根の外周速は、衝突や摩砕による分散性、分散安定性の面から6m/sec〜12m/secの範囲が好ましい。攪拌羽根の外周速とは、攪拌の為に回転する攪拌羽根の、中心から最も遠い部分の周速をいう。この範囲内で、分散混合スラリーの粘度(固形分濃度)と使用するビーズ直径により、外周速を適宜選択するのが好ましく、特に好ましくは9m/sec〜11m/secの範囲を選択すると、更に分散性が良好な顔料分散体が得られる。
【0020】
分散時のスラリーにおける顔料と分散用樹脂を合わせた濃度(対全スラリー量)は、10質量%〜45質量%の範囲で分散することにより、分散性・保存性が良好な顔料分散体が得られる。固形分濃度を10質量%より小さくすると、分散機構はビーズとの衝撃による体積粉砕が主体となり顔料表面から顔料誘導体が脱離し易くなるし、また、生産効率からも好ましくない。45質量%より大きくすると、粘度が高くなり、分散機構はビーズと顔料との摩擦による混練りが主体となり、過大な動力と発熱が発生するため、生産安定性からも好ましくない。更に、分散性向上の点から、20質量%〜40質量%の範囲で分散するのが、より好ましい。
【0021】
分散時のスラリー温度は、0〜50℃の範囲で分散可能である。これは、0℃未満になると、顔料への吸着が阻害され易くなる。一方、50℃を超えると、顔料誘導体と分散用樹脂との吸着力が低下し、インク化後の保存安定性が低下する恐れがある。また、分散液が高温になるということは、ビーズの運動による分散エネルギーが分散に有効に使われず、大部分熱エネルギーに変換されていることを示しているため好ましくない。更に分散性向上の点から、10〜40℃の範囲で分散するのが、より好ましい。
【0022】
本発明の水系ジェットインク組成物に用いられる顔料分散液として特に制限はなく、通常のインク組成物に用いられている顔料の分散液であればいずれも使用することができる。例えば、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、42、53、55、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、166、168、180、181、184、185、213、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、101、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、60、64、80、
ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブラック1、7、26、27、28、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントグリーン7、36、
酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等の分散体を挙げることができる。
【0023】
顔料分散液の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、好ましくは水系ジェットインク組成物の5〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。一方で、顔料分散液は、平均粒子径(d50)が50〜300nmであることが好ましい。平均粒子径が300nmより大きくなると、顔料が沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する傾向がある。一方、平均粒子径が50nm未満となると着色力が不足し、再凝集もし易くなる。更に、顔料分散液の比重は1.4〜5.2であることが好ましい。比重が1.4未満ではインク組成物を吐出させた場合に直進性が得られ難くなるので好ましくない。一方、比重が5.2を超えると顔料が沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0024】
本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、必要とする体質顔料を配合することも可能であり、これらの代表的なものとしては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、結晶シリカ、溶融シリカ、無定形シリカ、アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、タルク、マイカ、クレー、硅砂、硅酸塩、カオリン及びガラス等の無機物質の粉末、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリプロピエン樹脂等の有機物質の粉末又はビーズ等が挙げられる。体質顔料は、単独で又はこれらの2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0025】
顔料分散液には分散用樹脂として酸価が10〜40mgKOH/gであるポリウレタン樹脂を含むことが好ましく、特にはポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂が好ましい。酸価が10mgKOH/g未満あるいは40mgKOH/gを超えると、顔料分散体の安定性が悪くなり、凝集や吐出不良を起こす恐れがある。それ以外の樹脂として、通常のインク組成物に用いられている分散用樹脂のいずれも使用することができ、2種類以上の分散樹脂を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
分散用樹脂としては、例えば、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミド、ポリアリールアミン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等を水に溶解又は分散した状態のものを挙げることができる。
【0027】
本発明の水系ジェットインク組成物に用いられるワニスは、水に分散された平均粒子径(d50)が20〜130nmのウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子を含み、それら樹脂粒子の全質量が水系ジェットインク組成物中において1〜20質量%であることが好ましい。平均粒子径が20nm未満では塗膜の堅牢性が悪くなり易く、130nmを超えると貯蔵安定性が悪くなり易い。また、樹脂粒子の全質量が1質量%未満では密着不良となり易く、20質量%を超えると貯蔵安定性が悪くなり易い。
【0028】
ウレタン樹脂粒子としては特に制限はないが、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られるウレタン樹脂粒子であることが好ましい。ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させてブロック構造にすることでウレタン樹脂粒子の水への分散性安定性が向上する。
【0029】
ポリイソシアネート成分は、その化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等からなるポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0030】
これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及びノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
ポリオール成分は、その化合物中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオール化合物であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリルポリオール等が挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール又はポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を用いることができる。
【0033】
ポリエーテルポリオールには特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を用いることができる。
【0034】
ポリカーボネートポリオールにも特に制限はなく、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を用いることができる。
【0035】
アクリルポリオールにも特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルやこれらのε−カプロラクトン付加物等のアクリル系単量体を必須成分とするものを用いることができる。
【0036】
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのポリオール化合物の内、耐加水分解性及び耐候性の面から、好ましくは、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール又はポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等のポリカーボネートポリオールが用いられる。
【0037】
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコールや低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸、及びジメチロールプロパン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
アクリル樹脂粒子を構成するモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル(メタ)、アクリルアミド、マレインアミド、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、及びジアルキルフマレート等が挙げられる。これらの中でスチレン、メチルメタクリレート及び(メタ)アクリル酸を含むアクリル樹脂粒子が好ましい。
【0039】
ワニスとしては、ウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子をそれぞれ単独で使用することもできるが、この2種類の樹脂粒子を組み合わせて使用することもできる。また、通常のインク組成物に用いられている樹脂粒子を含んだものも使用することもできる。例えば、その樹脂粒子としてポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、又は酢酸ビニル共重合体等を微粒子化したものが挙げられる。
【0040】
本発明におけるワニス中の樹脂の酸価が5〜35mgKOH/gであることが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満あるいは35mgKOH/gを超えると、水系ジェットインク組成物中の顔料や樹脂粒子の分散安定性が悪くなる傾向があり、凝集や吐出不良を起こし易くなるため好ましくない。
【0041】
また更に、ワニス中の樹脂のガラス転移点(Tg)が30℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が30℃未満では塗膜の堅牢性が悪くなる傾向があるため好ましくない。
【0042】
また、上記有機溶剤としては、水系ジェットインク組成物中の有機溶剤比率として30〜60質量%含有することが好ましい。上記有機溶剤比率が30質量%未満では、水系ジェットインク組成物が被塗物上でハジキ易くなり、また60質量%を超えると水系ジェットインク組成物の貯蔵安定性が悪くなる恐れがある。本発明の有機溶剤中には、下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上含むことを必須である。
【0043】
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。
【0044】
前記一般式(1)で示される化合物は、水系ジェットインク組成物中に10〜40質量%含有することが好ましい。上記一般式(1)で示される化合物が10質量%未満では、基材への密着性が低下し、ハジキが発生し易くなる。また40質量%を超えると水系ジェットインク組成物の貯蔵安定性が悪くなる恐れがある。
【0045】
上記一般式(1)で示される化合物として、例えば、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル
等のエチレングリコールエーテル類及びRの置換基が異なる構造異性体等を挙げることができる。中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0046】
また、有機溶剤中にアルカンジオールを含むことがより好ましい。アルカンジオール化合物は水系ジェットインク組成物中に10〜40質量%含有することが好ましい。上記有機溶剤量が10質量%未満では、基材への密着性が低下し、ハジキが発生する。また40質量%を超えると水系ジェットインク組成物の貯蔵安定性が悪くなる。
【0047】
アルカンジオール化合物として、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール及び1,2−オクタンジオール等の炭素数が3〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。
【0048】
これ以外の有機溶剤としては、通常のインク組成物に用いられる溶剤が使用でき、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0049】
本発明の水系ジェットインク組成物は、水系であるので当然に水を含有する。水としてイオン交換水及び蒸留水等の純水、超純水を用いることができる。また、水系ジェットインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止するために、紫外線照射等により滅菌した水を用いることもできる。水を水系ジェットインク組成物の全量を基準にして10〜70質量%の量で配合することが好ましい。
【0050】
本発明の水系ジェットインク組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、アミン類等のpH調整剤、尿素及びその誘導体等のヒドロトロピー剤、防カビ・防腐剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、防錆剤、酸化防止剤又はアルカリ増粘タイプ・ウレタン会合タイプの増粘剤等を添加することも可能である。
【0051】
本発明の水系ジェットインク組成物は、種々のインクジェットプリンタに使用することができる。このようなインクジェットプリンタとして、例えば、荷電制御方式、インクオンデマンド方式によりインク組成物を噴出させる方式等を挙げることができる。
【0052】
本発明の水系ジェットインク組成物は、特にラージフォーマットを用いた大型インクジェットプリンタによる印刷、例えばサインディスプレイ等の屋外用物品に印刷することを目的としたインクジェットプリンタの印刷にも好適に適用できる。また、カラーグラフィック印字やビデオ録画の描画においてもコントラストが明瞭で、画像の再現性は著しく良好となる。
【0053】
インクジェット印刷した後の印刷面(インク組成物)は、常温〜数百℃で乾燥することにより乾燥被膜を形成する。なお、本発明で印刷の対象となる被塗物については、印刷面(インク組成物)を乾燥する条件下で変形もしくは変質しないものであれば特に制限されることはない。被塗物として塗装に適した大きさ、厚さ、形状であれば一般的な材料が使用でき、予め表面処理や塗装が行われていてもよい。例えば、インク組成物を吸収することがほとんど無い材質である、鉄板、アルミニウム板、ステンレス板又はこれらの塗装物、窯業系塗装板や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、塩化ビニル、アクリル及びポリエステル等の樹脂を主成分とする樹脂シートもしくはその成形体においては、良好な密着性ならびに光沢が得られ、また、インク組成物に対し吸収を有する紙や布にも滲むことなく塗布することができる。中でも塩化ビニル樹脂等のプラスチック基材が、インクの定着性等に優れるため好ましい。
【0054】
本発明の水系ジェットインク組成物は、光沢塩化ビニルフィルムに適用されることが好ましく、高光沢性の優れた印字品質の印刷物が得られる。光沢塩化ビニルフィルムとしては、例えば、AVERY社製、リンテック社製及びマックタック社製等の市販の光沢塩化ビニルフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明する。なお、実施例及び比較例の記載について「部」及び「%」は質量基準に基づくものである。
【0056】
<ワニス1(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子1の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、ネオペンチルグリコール4.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール11.0部、ジメチロールプロピオン酸7.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン5.7部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0057】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水430.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散し分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し、更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂1の固形分35%、粘度45mPa・s、酸価=15mgKOH/g、平均粒子径(d50)=120nm、Tg=61℃の安定なワニス1を得た。
【0058】
<ワニス2(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子2の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、ネオペンチルグリコール1.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール8.0部、ジメチロールプロピオン酸14.0部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン10.5部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0059】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し、更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂2の固形分35%、粘度52mPa・s、酸価=28mgKOH/g、平均粒子径(d50)=41nm、Tg=60℃の安定なワニス2を得た。
【0060】
<ワニス3(ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール(平均分子量2000)105.0部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5部、プロピオン酸17.5部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン13.2部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0061】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水450.0部を徐々に加えてポリカーボネート基含有イソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し、更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基含有ポリウレタン樹脂3の固形分35%、粘度62mPa・s、酸価=35mgKOH/g、平均粒子径(d50)=39nm、Tg=62℃の安定なワニス3を得た。
【0062】
<ワニス4(非ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素導入管を付した四つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール16.4部、トリメチロールプロパン1.0部、1,4−シクロヘキサンジメタノール5.5部、プロピオン酸10.6部、ジブチル錫ジラウレート0.001部及びメチルエチルケトン110.0部を仕込み、均一に混合した後、ヘキサメチレンジイソシアネート部12.0部及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)82.0部を加え、70℃で6時間反応させて、カルボキシル基含有イソシアネート基末端プレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。前記溶液を40℃以下に冷却した後、トリエチルアミン8.0部を加え、40℃で30分間中和反応を行った。
【0063】
次に、中和を行なった溶液を30℃以下に冷却し、ディスパー羽根を用いて水270.0部を徐々に加えてイソシアネート基末端プレポリマー中和物を乳化分散せしめ分散液を得た。そして、ジエチレントリアミン1.35部を水20.0部に溶解したアミン水溶液を前記分散液に滴下し、更に50%ヒドラジン水溶液5.0部を加え、2時間反応させた後、30℃で減圧し脱溶剤を行い、ポリカーボネート基非含有ポリウレタン樹脂固形分35%、粘度61mPa・s、酸価=35mgKOH/g、平均粒子径(d50)=38nm、Tg=30℃の安定なワニス4を得た。
【0064】
<ワニス5(アクリル樹脂粒子の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水60部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.6部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.2部を加えた後、アクリル酸ブチル7.0部、アクリル酸0.8部、スチレン24.0部、メタクリル酸メチル48.2部を混合したものを滴下し、その後、水60部を加え、アンモニア水でpH=9になるように調製した。固形分(NV)=41%、平均粒子径(d50)=75nm、Tg=81℃、酸価=8mgKOH/g、の良好なワニス5を得た。
【0065】
<ワニス6(アクリル樹脂粒子の水分散体)の合成>
攪拌機、還流冷却管及び温度計を付した四つ口フラスコに水60部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩0.6部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル2部を加え70℃に加熱し、過硫酸カリウム0.2部を加えた後、アクリル酸ブチル26.8部、アクリル酸0.8部、スチレン24.0部、メタクリル酸メチル28.4部を混合したものを滴下し、その後、水60部を加え、アンモニア水でpH=9になるように調製した。固形分(NV)=41%、平均粒子径(d50)=70nm、Tg=30℃、酸価=8mgKOH/g、の良好なワニス6を得た。
【0066】
<顔料分散液K−1〜K−5、W−1、Y−1、M−1、C−1及びF−1>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、上記ワニス1〜3で得られたポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子1〜3の水分散体、消泡剤、溶剤及びイオン交換水を配合し、0.5mm径ジルコニアビーズを充填率60%に充填した分散機(浅田鉄工製:ナノミル)を用いて、20時間分散して水性顔料分散液K−1〜K−5、W−1、Y−1、M−1、C−1及びF−1を得た。
【0067】
<顔料分散液K−6>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体、消泡剤、溶剤及びイオン交換水を配合し、0.5mm径ジルコニアビーズを充填率55%に充填した分散機(浅田鉄工製:ナノミル)を用いて、20時間分散して水性顔料分散液K−6を得た。
【0068】
<顔料分散液K−7>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体、消泡剤、溶剤及びイオン交換水を配合し、0.5mm径ジルコニアビーズを充填率70%に充填した分散機(浅田鉄工製:ナノミル)を用いて、20時間分散して水性顔料分散液K−7を得た。
【0069】
<顔料分散液K−8>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、上記ワニス3で得られたポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体、消泡剤、溶剤及びイオン交換水を、0.5mm径ジルコニアビーズを充填率48%に充填した分散機(浅田鉄工製:ナノミル)を用いて、20時間分散して水性顔料分散液K−8を得た。
【0070】
<顔料分散液K−9>
表1に示す通り、顔料、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、上記ワニス3で得られたポリカーボネート基含有ウレタン樹脂粒子3の水分散体、消泡剤、溶剤及びイオン交換水を、0.5mm径ジルコニアビーズを充填率78%に充填した分散機(浅田鉄工製:ナノミル)を用いて、20時間分散して水性顔料分散液K−9を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
顔料として、下記のものを用いた:
カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック550、エボニックデグサ社製)
二酸化チタン(商品名:TR92、ハンツマン社製)、
酸化鉄(商品名:FR03、堺化学社製)
銅フタロシアニン(商品名:イルガライトブルー8700、チバ社製)、
ルナイエロー(商品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX、クラリアントジャパン社製)、
ジメチルキナクリドン(商品名:スーパーマゼンタRG、DIC社製)。
消泡剤として、シリコーン系消泡剤(商品名:SNデフォーマー1312、サンノプコ(株)製)を用いた。
【0073】
<平均粒子径>
インク組成物の顔料の平均粒子径(d50)をMicrotrac社製 粒度分布測定器UPAを用いて測定した。
【0074】
(実施例1〜29及び比較例1〜6)
表2〜4に示す通り、上記で得られた顔料分散液、ワニス、表面調整剤(商品名:TSF4446、モメンティブ社製)、溶剤及びイオン交換水を配合し、マグネチックスターラーにて30分間攪拌し、各種水系ジェットインク組成物を得た。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
<粘度>
20℃における水系ジェットインク組成物の粘度をTAインスツルメンツ社製 レオメーター ARESを用いて測定した。
【0079】
<表面張力>
20℃における水系ジェットインク組成物の表面張力を協和界面科学社製 自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定した。
【0080】
<ワニスの酸価測定>
ワニスの酸価は、JIS−K−5601−2−1に準じて測定した。
【0081】
<塗装装置>
水系ジェットインク組成物の各被塗物(塩化ビニル、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム、ステンレス、窯業建材、紙、ポリエチレンテレフタレート、ガラス)への塗装は、武藤工業社製 ラミレスPJ−1304NXを用いた。
【0082】
<ノズル詰まり性>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し、塗装の最中にヘッドを15分間その場で放置させ、その後、再度塗装を開始した際に、インク組成物が吐出されていないノズル数をカウントし、下記の基準で評価した。
◎:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の1以下、
○:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の1超過60分の2以下、
×:15分間放置後、所定の位置に吐出できないノズル数が、全ノズル数の60分の2より多い。
【0083】
<連続吐出性>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を1m×4mの塗装を行い、飛行曲がり及び抜けの本数に基づいて下記基準で評価した。
◎:飛行曲がり及び抜けなし、
○:飛行曲がり及び抜けの合計本数が1〜3本、
△:飛行曲がり及び抜けの合計本数が4〜6本、
×:飛行曲がり及び抜けの合計本数が7本以上。
【0084】
<貯蔵安定性>
50℃で28日間静置保管し、目視にて下記基準で評価した。
◎:変化なし、
○:僅かに浮遊物あり、
×:沈殿・分離を生じる。
【0085】
<ハジキ>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し、塗装直後の塗装面を目視にて下記基準で評価した。
◎:インク組成物にハジキがない、
○:僅かにインク組成物にハジキがあるが、実用上問題ないレベル、
×:インク組成物にハジキがある。
【0086】
<にじみ>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し、塗装直後の塗装面を目視にて下記基準で評価した。
◎:インク組成物ににじみがない、
○:僅かにインク組成物ににじみがあるが、実用上問題ないレベル、
×:インク組成物ににじみがある。
【0087】
<密着性>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し十分乾燥した後、その塗膜部分に幅24mmのセロテープ(登録商標、NICHIBAN製)を密着させた後にテープを剥がし、剥離部分の状態を目視にて下記基準で評価した。
◎:剥離なし、
○:僅かに剥離の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:剥離あり。
【0088】
<耐水性>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し十分乾燥した後、イオン交換水をしみ込ませたガーゼで塗面を10回擦り、塗面の外観を目視で評価した。
◎:擦り傷の痕跡なし、
○:僅かに擦り傷の痕跡あるが実用上問題ないレベル、
×:擦り傷の痕跡あり。
【0089】
<光沢>
表2〜表4に記載の被塗物表面に水系ジェットインク組成物を塗装し十分乾燥した塗面の光沢を日本電色工業社製 光沢計VG 2000を用いて測定した。
◎:光沢あり、
○:僅かに光沢が劣るが実用上問題ないレベル、
×:光沢なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワニス、顔料分散液、有機溶剤及び水を含有した、20℃における粘度が30mPa・s以下、20℃における表面張力が21〜34mN/mである水系ジェットインク組成物において、
該顔料分散液は、顔料分散用ビーズの充填率が50〜75%のビーズミルで分散されており、
該有機溶剤は、下記一般式(1)で示される化合物を1種類以上含む
O−(CH−CH(R)−O)n−H・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、nは1〜3の整数である。)
ことを特徴とする水系ジェットインク組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)で示される化合物が、水系ジェットインク組成物中に10〜40質量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の水系ジェットインク組成物。
【請求項3】
前記ワニス中には水に分散された平均粒子径(d50)が20〜130nmのウレタン樹脂粒子もしくはアクリル樹脂粒子を含み、それら樹脂粒子の全質量がコーティング組成物中1〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水系ジェットインク組成物。
【請求項4】
前記顔料分散液は、平均粒子径(d50)が50〜300nmであり、かつ、酸価が10〜40mgKOH/gであるウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水系ジェットインク組成物。
【請求項5】
前記ワニスの樹脂は、ガラス転移点(Tg)が30℃以上であり、かつ、酸価が5〜35mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水系ジェットインク組成物。
【請求項6】
前記有機溶剤中にアルカンジオールを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水系ジェットインク組成物。

【公開番号】特開2013−76020(P2013−76020A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217640(P2011−217640)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】