説明

水系中のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法、及び、水系の微生物制御方法

【課題】イソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、イソチアゾリン系化合物の持つ広い抗菌スペクトルと云う機能を、常に、そして、安定的に発揮させるための、水系の微生物制御方法を提供する。
【解決手段】水系中のヨーネンポリマの濃度を所定濃度以上に維持すると共に、水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度が所定の濃度範囲となるように、イソチアゾリン系化合物を該水系に添加する水系の微生物制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系中のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法、及び、この方法を応用した水系の微生物制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソチアゾリン系化合物は抗菌スペクトルの広い殺菌剤として知られている。しかし、一部の粒状緑藻に対して殆ど効果を示さない。また、水系での分解が比較的早く、濃度を維持するのが困難あると云った問題があった。
【0003】
また、ヨーネンポリマは低毒性の殺菌剤であり、殺藻剤としても効果を発揮することが知られている。しかし、ヨーネンポリマ単独では効果が低く、高濃度の添加が必要であった。また、粒状緑藻に対しては十分な効果が得られないと云った問題があった。
【0004】
ここで、本発明者等はイソチアゾリン系化合物、および、ヨーネンポリマの両者の併用により得られる相乗効果に着目し、藻類抑制剤として提案している(特開2009−155220公報(特許文献1))。
【0005】
しかし、実際の冷却水系において、単にイソチアゾリン系化合物、および、ヨーネンポリマの両者を併用添加しただけでは、粒状緑藻の発生を抑えきれない場合があるばかりでなく、実験室レベルでは十分な抑制効果を発揮する細菌類に対しても、効果が不十分となる水系が存在することが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−155220公報
【特許文献2】特開平5−331002号公報
【特許文献3】特開平10−45514号公報
【特許文献4】特開平6−317522号公報
【特許文献5】特開平7−294522号公報
【特許文献6】特開2000−271564公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このようにイソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、イソチアゾリン系化合物の持つ広い抗菌スペクトルと云う機能を、常に、そして、安定的に発揮させるための、水系の微生物制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のように、イソチアゾリン系化合物、および、ヨーネンポリマの両者を併用添加していながら、粒状緑藻の発生を抑えきれなかった水系水を調査してみると、ヨーネンポリマは分解が遅く、添加した濃度を長期間維持していたのに対し、イソチアゾリン系化合物は分解が速く、そのために水系から失われていたことが判った。
【0009】
さらに、種々の検討を行った結果、イソチアゾリン系化合物は、水系での分解が非常に速く、イソチアゾリン系化合物を単独使用している水系では、イソチアゾリン系化合物の水系中の濃度を維持するのが極めて困難である点、水系中でヨーネンポリマと共存させるとイソチアゾリン系化合物の分解速度を遅くすることができ、その結果、イソチアゾリン系化合物の水系中の濃度を維持するのが比較的容易となる点、更には、イソチアゾリン系化合物、および、ヨーネンポリマの両者を併用添加していながら、粒状緑藻の発生を抑えきれなかった水系において、水系中にイソチアゾリン系化合物が残存するように、イソチアゾリン系化合物の添加方法を変更することで、粒状緑藻の発生を抑制可能である点を見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は請求項1に記載の通り、イソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、前記水系中のヨーネンポリマの濃度を所定濃度以上に維持することを特徴とするイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法である。
【0011】
また、本発明のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法は請求項2に記載の通り、請求項1に記載のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法において、前記水系中の前記ヨーネンポリマの濃度を1mg/L以上100mg/L以下に維持することを特徴とする。
【0012】
本発明の水系の微生物制御方法は請求項3に記載の通り、水系中のヨーネンポリマの濃度を所定濃度以上に維持すると共に、該水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度が所定の濃度範囲となるように、該イソチアゾリン系化合物を該水系に添加することを特徴とする水系の微生物制御方法である。
【0013】
また、本発明の水系の微生物制御方法は、請求項4に記載の通り、請求項3に記載の水系の微生物制御方法において、前記水系中の前記ヨーネンポリマの濃度を1mg/L以上100mg/L以下に維持し、かつ、該水系中の前記イソチアゾリン系化合物の前記所定の濃度範囲を0.1mg/L以上20mg/L以下とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の水系の微生物制御方法は、請求項5に記載の通り、請求項3または請求項4に記載の水系の微生物制御方法において、前記水系への補給水の水量に対して一定比率で、前記ヨーネンポリマを前記水系に添加することにより、該水系中の該ヨーネンポリマの濃度の維持を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の水系の微生物制御方法は、請求項6に記載の通り、請求項3または請求項4に記載の水系の微生物制御方法において、前記水系がブローを実施している水系であり、該ブローにおけるブロー水の水量に対して一定比率で、前記ヨーネンポリマを該水系に添加することにより、該水系中の該ヨーネンポリマの濃度の維持を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の水系の微生物制御方法は、請求項7に記載の通り、請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の水系の微生物制御方法において、前記水系中の前記イソチアゾリン系化合物の濃度を測定し、該イソチアゾリン系化合物の濃度の測定結果に基づいて、該イソチアゾリン系化合物の該水系への添加を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の水系の微生物制御方法は、請求項8に記載の通り、請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の水系の微生物制御方法において、前記ヨーネンポリマが、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法によれば、イソチアゾリン系化合物の分解を効果的に抑制することができ、このために、少量、低頻度の添加であっても、イソチアゾリン系化合物の濃度維持が容易となり、その結果、イソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、イソチアゾリン系化合物の持つ広い抗菌スペクトルと云う機能を、常に、そして、安定的に発揮させることが可能となる。
【0019】
また、本発明の水系の微生物制御方法は上記のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法を応用して、抗菌スペクトルの広いイソチアゾリン系化合物を水系中に常に存在させることで、該水系における細菌、真菌、藻類等、各種の微生物の増殖を効果的に抑制することができる。更に、本発明の水系の微生物制御方法は、水系中にイソチアゾリン系化合物とヨーネンポリマとを常に共存させることになるので、イソチアゾリン系化合物単独では効果を示さない一部の粒状緑藻に対しても有効であり、単にイソチアゾリン系化合物とヨーネンポリマとの両者を併用添加しただけでは、粒状緑藻の発生を抑えきれなかった水系においても、イソチアゾリン系化合物の濃度を維持することで、効果的に粒状緑藻の発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で用いるイソチアゾリン系化合物としては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられ、これらのうちの1種、あるいは、2種以上を選択して用いる。ここで、特に好ましいイソチアゾリン系化合物としては5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、および、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが挙げられる。
【0021】
一方、ヨーネンポリマは、低毒性の薬剤で、特開平5−331002号公報(特許文献2)、あるいは、特開平10−45514号公報(特許文献3)等により殺藻剤として用いられることが知られているが、単独ではいつくかの藻類、例えば粒状緑藻に対しては充分な抑制効果が得られない。本発明では、ヨーネンポリマはむしろ、水中で分解されやすいイソチアゾリン系化合物の分解を抑制させると云う、本発明者等により見出された機能の方が重要である。
【0022】
本発明で用いるヨーネンポリマとしては、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]、ポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)またはその塩などが挙げられ、これらのうち、1種、あるいは、2種以上選択して用いる。ここで、特に好ましいヨーネンポリマとしては、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]が挙げられる。
【0023】
ここで、水系で分解されやすいイソチアゾリン系化合物の分解を抑制させると云うヨーネンポリマの機能を有効に活用するためには、イソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、水系中のヨーネンポリマの濃度を常に所定濃度以上に維持することが必要となる。
【0024】
ここで、上記所定濃度としては、好ましくは1mg/Lであり、より好ましいヨーネンポリマの濃度は、1mg/L以上100mg/L以下である。この範囲よりも低いと本発明の効果が得られない恐れがあり、また、この範囲よりも高くても、添加濃度の向上に伴う効果の向上が少なく、また、ランニングコストが上昇するので好ましくない。
【0025】
ここで、前述のようにヨーネンポリマは水系で分解されにくいので、イソチアゾリン系化合物を添加している水系が冷却水系などの補給水が補給される水系や、ブローが実施される水系の場合には、その補給水量やブロー水量に対して一定比率で、ヨーネンポリマの添加を行うことにより、該水系中のヨーネンポリマの濃度を所定の濃度、例えば、1mg/L以上100mg/L以下に容易に維持することができる。
【0026】
本発明の水系の微生物制御方法において、イソチアゾリン系化合物は、添加されたイソチアゾリン系化合物が水系中で常に検出される濃度(通常0.1mg/Lが検出下限)となるように添加する必要がある。より好ましい濃度範囲は0.1mg/L以上20mg/L以下である。この範囲以下であると本発明の効果が得られない恐れがあり、また、この範囲を越えて添加しても、添加量の増加に伴う効果の向上は少なく、ランニングコストを上昇させる。
【0027】
イソチアゾリン系化合物の添加方法としては、上記ヨーネンポリマと同様、水系の補給水量や、ブロー水量に対して一定比率で添加してもよいが、水系の運転条件や水系中に存在する微生物量等に応じてイソチアゾリン系化合物の分解速度は変化するので、この方法では薬品の添加量に無駄や不足が生じる恐れがある。
【0028】
このため、水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度を適宜測定し、その測定結果に基づいて、該水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度が所定の濃度範囲、例えば0.1〜20mg/Lの範囲となるように、該水系に対してイソチアゾリン系化合物を添加することが、本発明の効果が確実に得られるので好ましい。
【0029】
このように、ヨーネンポリマとイソチアゾリン系化合物を別々に添加するのが通常採られる方法であるが、ヨーネンポリマとイソチアゾリン系化合物を含む1液剤を水系の補給水量や、ブロー水量に対して一定比率で添加しておき、定期的あるいは不定期に水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度を測定し、イソチアゾリン系化合物の測定濃度に応じてイソチアゾリン系化合物の不足分を別途添加する方法を採ってもよい。
【0030】
水系中のイソチアゾリン系化合物濃度の測定は、通常、高速液体クロマトグラフ分析装置を用いて行う。ここで、本発明ではイソチアゾリン系化合物をヨーネンポリマと常に共存させるので、イソチアゾリン系化合物の分解速度は、イソチアゾリン系化合物を単独使用している水系と比較して、明らかに遅くなる。このため、イソチアゾリン系化合物の濃度測定に1〜2日を要しても、その測定結果に基づいてイソチアゾリン系化合物を水系に補充添加することにより、十分にイソチアゾリン系化合物の水系中の濃度を0.1〜20mg/Lの範囲に維持することが可能である。
【0031】
また、イソチアゾリン系化合物の迅速測定法として、発光スペクトルを測定する方法(特開平6−317522号公報(特許文献4))、モノクローナル抗体を利用する方法(特開平7−294522号公報(特許文献5))、遷移金属との化学発光反応を利用する方法(特開2000−271564公報(特許文献6))等、各種方法が提案されており、このような方法を用いることで、サンプル採取現場でのイソチアゾリン系化合物の濃度測定が可能となるので、よりきめ細やかなイソチアゾリン系化合物の添加量調整が可能となる。
【0032】
本発明の水系の微生物制御方法では、本発明の効果が損なわれない限り、例えば、アクリル酸系、マレイン酸系、メタクリル酸系、スルホン酸系、イタコン酸系、または、イソブチレン系の各重合体やこれらの共重合体、燐酸系重合体、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、あるいはこれらの水溶性塩などのスケール防止剤、あるいは、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド等のアルデヒド類、過酸化水素、ヒドラジン、塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム等)、臭素系殺菌剤及びヨウ素系殺菌剤、ジチオール系化合物、メチレンビスチオシアネート等のチオシアネート系化合物、ピリチオン系化合物、ビス型四級アンモニウム塩、ビス型四級アンモニウム塩以外の四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩等のポリマーでないカチオン系化合物などのスライム防止剤、更には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のアゾール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系化合物、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸等のアミノカルボン酸系化合物、グルコン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、酒石酸、フィチン酸、琥珀酸、乳酸等の有機カルボン酸など、各種の水処理用の薬剤を併用することができ、その場合も本発明に含まれる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の水系中のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法、及び、水系の微生物制御方法の実施例について具体的に説明する。
【0034】
<実施例1>
逆浸透膜装置を用いて5倍濃縮したつくば市水道水(冷却水系水を想定)を7つの2Lビーカーに2Lずつ分注し、それぞれに表1に示す薬剤を表1に示す濃度で添加し、ラップフィルムで蓋をした後、35℃に保ちながら60rpmで攪拌、30日間放置した。経時的にサンプリングを行い、カチオン系薬剤(POEDI、PHPDA、PHMB、および、塩化ベンザルコニウム。また、略号は表1参照。以下同)の残存濃度、CMIの残存濃度、ATP(アデノシン三リン酸)濃度、および、一般細菌数を調べた。結果を表2ないし表5に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
表2〜表5により、ヨーネンポリマであるポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]、ポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩との共存によりイソチアゾリン系化合物である5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの分解が抑制されていることが、微生物活性を示すアデノシン三リン酸の濃度や、一般細菌数は、ヨーネンポリマの濃度には殆ど影響を受けず、その増減が、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの残存濃度に依存していることが理解される。
【0041】
<実施例2>
保有水量10m3、冷凍能力1000RT、補給水には水道水を使用し、5倍濃縮で濃縮管理をしている茨城県下のある工場の冷却水系において、以下の検討を行なった。
【0042】
当初、CMIを補給水に対して0.2mg/Lの濃度で連続的に添加していたが、一週間で上部水槽が粒状緑藻で覆われてしまうため、上部水槽の手清掃を月2回行っていた。このとき、冷却水中のCMI濃度は0.1mg/L未満(検出下限未満)であり、一般細菌数は1.5×106個/mLであった。
【0043】
次いで、上部水槽を手清掃した後、補給水に対してCMIを0.2mg/L、POEDIを2mg/Lの濃度で連続的に添加する処理に変更(条件変更(1))したが、1ヶ月後に粒状緑藻の発生が認められた。この期間の冷却水中のPOEDI濃度は9〜11mg/L、CMI濃度は、条件変更(1)の2週間後では0.1mg/L、1ヶ月後では0.1mg/L未満であった。また、一般細菌数は条件変更(1)の2週間後では8.3×103個/mL、1ヶ月後では2.3×106個/mLであった。
【0044】
そこで、上記処理に加えて、2週間に一度、保有水量に対してCMIを10mg/Lの濃度で添加する処理を行った(条件変更(2))。条件変更前に発生していた粒状緑藻は条件変更(2)の1週間後には白色化し、以後3ヶ月間に亘って粒状緑藻は発生しなかった。条件変更(2)後の期間、冷却水中のPOEDI濃度は7〜12mg/L、CMI濃度は、2週間に1度の添加直前の測定で、0.2〜1.5mg/Lであった。また、一般細菌数は、102〜103個/mLレベルが維持された。
【0045】
3ヵ月後、CMIの添加はそのままで、POEDIの添加のみ中止(条件変更(3))したところ、条件変更(3)の1ヶ月後には粒状緑藻が発生した。このときのPOEDIの濃度は1mg/L未満、CMI濃度は、2週間に1度の添加直前の測定で、0.1mg/L未満、一般細菌数は2.1×106個/mLであった。
【0046】
そこで、2週間に一度のCMIの添加を中止すると共に、POEDIの添加を再開し、補給水に対してCMIを0.5mg/L、POEDIを1mg/Lの濃度で連続的に添加する処理にしたところ(条件変更(4))、発生していた粒状緑藻は2週間後には白色化し、その後、粒状緑藻の発生はなかった。この期間、POEDIの濃度は4〜6mg/L、CMI濃度は0.1〜0.3mg/L、一般細菌数は102〜103個/mLレベルを推移した。
【0047】
以上の結果から、ヨーネンポリマを所定濃度以上の濃度に維持している水系において、イソチアゾリン系化合物を検出下限以上の濃度となるように添加することで、微生物の効果的な抑制が可能となることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソチアゾリン系化合物を添加して微生物制御を行っている水系において、前記水系中のヨーネンポリマの濃度を所定濃度以上に維持することを特徴とするイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法。
【請求項2】
前記水系中の前記ヨーネンポリマの濃度を1mg/L以上100mg/L以下に維持することを特徴とする請求項1に記載のイソチアゾリン系化合物の分解抑制方法。
【請求項3】
水系中のヨーネンポリマの濃度を所定濃度以上に維持すると共に、該水系中のイソチアゾリン系化合物の濃度が所定の濃度範囲となるように、該イソチアゾリン系化合物を該水系に添加することを特徴とする水系の微生物制御方法。
【請求項4】
前記水系中の前記ヨーネンポリマの濃度を1mg/L以上100mg/L以下に維持し、かつ、該水系中の前記イソチアゾリン系化合物の前記所定の濃度範囲を0.1mg/L以上20mg/L以下とすることを特徴とする請求項3に記載の水系の微生物制御方法。
【請求項5】
前記水系への補給水の水量に対して一定比率で、前記ヨーネンポリマを前記水系に添加することにより、該水系中の該ヨーネンポリマの濃度の維持を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の水系の微生物制御方法。
【請求項6】
前記水系がブローを実施している水系であり、該ブローにおけるブロー水の水量に対して一定比率で、前記ヨーネンポリマを該水系に添加することにより、該水系中の該ヨーネンポリマの濃度の維持を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の水系の微生物制御方法。
【請求項7】
前記水系中の前記イソチアゾリン系化合物の濃度を測定し、該イソチアゾリン系化合物の濃度の測定結果に基づいて、該イソチアゾリン系化合物の該水系への添加を行うことを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の水系の微生物制御方法。
【請求項8】
前記ヨーネンポリマが、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロライド]であることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の水系の微生物制御方法。
【請求項9】
前記イソチアゾリン系化合物が、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、および、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の水系の微生物制御方法。

【公開番号】特開2011−212522(P2011−212522A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80822(P2010−80822)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)
【Fターム(参考)】