説明

水系防食剤及び防食方法

【課題】 冷却水系の装置内などで、高温部で伝熱阻害を起こすこともなく、塩化物イオンや硫酸イオンなどの腐食性陰イオン濃度が高い場合にも孔食を生じることがない、優れた効果も発揮する水系防食剤及び防食方法を提供する。
【解決手段】 一般式、R1 −NH2 、R12 −NH、R123 −N(R1 〜R3 の少なくとも1つは(CH2 CH2 O) X を含)で示される化合物を0.1〜10wt%含有し、さらに一般式、R4 −S−R5 (R4 、R5 は、炭素原子数が1〜20の範囲にあるアリル基もしくはアルキル基であって、R4 、R5 の少なくとも一方はカルボニル基、または、カルボキシル基を有する)で示される有機硫黄化合物を0.1wt%以上含有していることを特徴とし、この水系防食剤を20〜200mg/リットルの保持濃度で使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、循環式等、各種冷却水系において発生する配管、特に軟鋼製配管の腐0 を防止するための水系防食剤及び防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼産業、化学プラントにおいては、反応工程など各種の工程から生ずる高温のガスや液体等の冷却に、通常は冷媒として冷却水を広範囲に使用している。これら冷却処理は、多くの場合、冷却水の輸送を軟鋼製の管を用いて行ない、この冷却水の輸送路上に高温のガスや液体を降温する熱交換装置を配設することによりなされている。高温のガスや液体との熱交換で昇温した排冷却水は、冷却塔等の冷却装置で再冷却して、再び高温のガスや液体等の冷却に再循環使用されている。
【0003】上記冷却処理において、冷却水として使用する水には、通常カルシウムなどの硬度成分が溶存し、高温のガスや液体の冷却に際して水の一部が蒸発するため、これら硬度成分が濃縮されてカルシウム硬度が250mg/リットル(CaCO3250mg/リットル)以上になることもある。一般に、硬度成分を多量に含む水は金属を腐食させにくいため、冷却水を濃縮し、硬度成分の濃度を高めることで防食を図ることもなされている。このような系では、スケールの発生防止ため、ある種のポリマーを添加することのみで冷却水系の障害を防ぐことも可能である。
【0004】しかし、熱負荷が高い産業用冷却塔や冷却水の補給水中に、塩化物のイオン、硫酸イオン、シリカ、有機物などの腐食やスケール付着の原因となる物質が多く含まれる場合には、冷却水をあまり濃縮させることができない。このような冷却水系では、一般に硬度成分は200mg/リットル以下であり、金属特に軟鋼に対する腐食性が高くなる。このため、亜鉛等の金属塩や特定のリン化合物を含有する防食剤を冷却水に添加し、軟鋼製の板や管の内外面にリン酸カルシウムやリン酸亜鉛を主成分とする皮膜(沈殿皮膜という)を形成させることで防食を図ることもなされている。
【0005】また、リンや金属塩を含まない有機化合物のみからなる薬剤の添加も試みられているが、例えば、水中のカルシウム硬度がおよそ200mg/リットル(CaCO3200mg/リットル)以上の場合には、適用が困難であった。さらに、湖沼を富養化することがなく、配管等の腐食を効果的に抑止する有機硫黄化合物を有効成分とする水系防食剤も開発されているが、塩化物イオンや硫酸イオンなどの腐食性陰イオン濃度が高い場合には孔食を惹起する傾向にあり、必ずしも常時実用上充分な効果が得られないことから、なお検討を要する状況にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】冷却水系は、通常、冷却水と高温のガス体や液体との間の熱交換により、水の一部を蒸発させながら系を循環する。循環の反復により、水の一部蒸発を反復していくとき、濃縮によりカルシウムイオン濃度が相当に高くなる。そうした水はブローによって一部排出し、新たな冷却水を補給することになる。このブローに際して、一緒に混入していた高濃度のリン酸化合物や亜鉛化合物も排出され、これらの金属化合物が湖沼に大量に流れ込むことになる。亜鉛化合物の環境への排出には厳しい規制があり、容易な排出は認められていない。また、高濃度に燐を含んだ化合物が湖沼などに流れ込めば、富養化の原因にもなる。
【0007】斯様に、従来の冷却水系防食剤には、なお解決されなければならない課題が多く残されている。また、ポリリン酸やホスホン酸などのリン酸化合物は冷却装置の高温部にスケールとなって付着しやすい。リン酸化合物が配管等の高温部に付着すれば伝熱阻害の原因にもなるという問題もある。これらの現象は、亜鉛化合物にも共通し、スケールとなって装置内部に付着して伝熱効率を下げるという同様の問題がある。
【0008】本発明は、上記の諸事情に鑑み、湖沼を富養化することがなく、カルシウム硬度が200mg/リットル(CaCO3200mg/リットル)以下の低・中濃縮水による鋼管特に軟鋼管等の腐食を効果的に防止することができる水系防食剤であって、とりわけ冷却水系の装置内などで、高温部で伝熱阻害を起こすこともなく、塩0 物イオンや硫酸イオンなどの腐食性陰イオン濃度が高い場合にも孔食を生じることがない、優れた効果を発揮する水系防食剤及び防食方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は下記の構成によって達成される。
(1)化学式(I)
一般式、R1−NH2、R12−NH、R123−N(R1〜R3の内、少なくとも1つは(CH2CH2O) Xを含み、且つ、化合物中の炭素原子数が20〜30の範囲)で示される化合物を0.1〜10wt%含有し、さらに、化学式(II)
一般式、R4−S−R5(R4、R5は、炭素原子数が1〜20の範囲にあるアリール基もしくはアルキル基であって、R4、R5の少なくとも一方はカルボニル基、または、カルボキシル基を有する)で示される有機硫黄化合物を0.1wt%以上含有していることを特徴とする水系防食剤。
【0010】(2)化学式(I)
一般式、R1−NH2、R12−NH、R123−N(R1〜R3の内、少なくとも1つは(CH2CH2O) Xを含み、且つ、化合物中の炭素原子数が20〜30の範囲)で示される化合物の内、(CH2CH2O) XのXが3〜6であることを特徴とする前項(1)記載の水系防食剤。
【0011】(3)リン含有化合物をPO4換算で1wt%以下含むことを特徴とする前項(1)記載の水系防食剤。
(4)アゾール化合物を配合してあることを特徴とする前項(1)記載の水系防食剤。
(5)前項(1)記載の水系防食剤を20〜200mg/リットルの保持濃度で使用することを特徴とする水系防食方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。本発明は、水系防食剤と、この防食剤を用いる水系防食方法に関する。本発明の水系防食剤は、基本的には第一〜第三アミン(一般式、R1−NH2、R12−NH、R123−N)からなる化合物と有機硫黄化合物(一般式、R4−S−R5)とから構成され、両者の好ましい配合は、第一〜第三アミンからなる化合物が0.1〜10wt%、有機硫黄化合物が0.1wt%以上の範囲とされる。
【0013】上記、第一〜第三アミンからなる化合物の置換基(R1〜R3)の形態は、炭素原子数が20〜30の範囲であり、好ましくは、R1〜R3の少なくとも一つが(CH2CH2O)Xを含有し、そのうえ、(CH2CH2O)XのXが3〜6の範囲にあることがより好ましい。アミン化合物としては、例えば、高級アルキルアミン、高級アルケニルアミン等が好ましく挙げられ、以下の化合物が相当する。
【0014】高級アルキルアミンの例としては、テトラデシルアミンエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドは以下EOと略す)、ヘキサデシルアミンEO付加物、オクタデシルアミンEO付加物があり、また、高級アルケニルアミンの例として、オレイルアミンEO付加物、リノレイルアミンEO付加物がある。
【0015】さらに、これらの高級アルキルアミンEO付加物や高級アルケニルアミンEO付加物をそれぞれ単独で、または混合で含む油脂アミンEO付加物であってもよく、それらの例としては、ヤシ油アミンEO付加物、硬化牛脂アミンEO付加物、大豆油アミンEO付加物等が挙げられる。その上、これらのヤシ油アミンEO付加物、大豆油アミンEO付加物および硬化牛脂アミンEO付加物は、(CH2CH2O)基をそれぞれ3個〜6個有するので、本発明の水系防食剤を構成する一方の成分である第一〜第三アミンに相当し、有効に利用することができる。
【0016】次に、他方の構成要素である有機硫黄化合物(一般式、R4−S−R5)としては、置換基R4、R5は炭素原子数が1〜20のアリール基もしくはアルキル基であって、そのうえ、R4、R5の少なくとも一方が、カルボニル基またはカルボキシル基を有する構造の化合物が好ましく用いられる。このような構造の有機硫黄化合物としては、例えば、
【0017】
【化1】


【0018】3−アセチルチオ−2−メチルプロピオン酸、CH3CO−S−CH2CH(CH3)−COOH、3−アセチルチオ−2−メチルプロピオニルクロリド、CH3CO−S−CH2−CH(CH3)−CCl3、3−(オクタデシルチオ)プロピオンアミド、C1837−S−C24CONH2、などの化合物を挙げることができる。
【0019】さらに、上記のような第一〜第三アミン、有機硫黄化合物とともに、微量にはリン含有物質すなわちリン化合物を含むことがより好ましい。そのようなリン化合物、あるいはリン含有物質としては、例えばポリリン酸塩またはホスホン酸塩などを好ましく挙げることができる。また、リン含有物質あるいは燐化合物を含み、または含むことなく、銅金属用の防食剤として例えば、アゾール化合物を配合してあることが好ましい。そのようなアゾール化合物としては、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等を挙げることができる。
【0020】この他、通常用いられている防食剤が含む各種成分、例えば、亜鉛化合物やモリブデン化合物を本発明の目的を損なわない範囲で含有させることは妨げない。また、スルファミン酸やクエン酸などの有機酸を配合してもよい。ただし、亜鉛化合物は多くの問題を抱えている場合が少なくなく、大量に加えることは推奨されない。本発明の水系防食剤又は防食方法では、上記のような各種の成分を次のような割合で使用するとよい。すなわち、化学式(I)で示すことができる第一〜第三アミン化合物を防食剤の総重量中で0.1wt%以上含み、好ましくは10wt%以下含むのが望ましい。
【0021】配合比率が0.1wt%未満の場合には十分な防食効果を期待できないので好ましくない。10wt%を越える場合には薬剤の安定性が損なわれ、コスト高にもなるため、余り好ましくない場合がある。最も好ましいのは2〜10重量%である。この範囲にあると、防食効果と安定性がともに高くなって好ましい。リン含有物質を含める場合は、湖沼などの富養化を招かない程度、すなわちPO4換算で防食剤の総重量に対し1wt%を上限とするとよい。アゾール化合物は、10重量%以下が望ましい。
【0022】このような水系防食剤は、例えば、次のような方法で調製するとよい。すなわち、アミン類、好ましくはモルホリン、シクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、モノエタノールアミン等に、上記配合率の範囲内として、第一〜第三アミン化合物、有機硫黄化合物を添加して溶解した後純水を加え、さらにリン含有化合物、アゾール化合物をそれぞれ所定の範囲で添加する。
【0023】上記のようにして調合した防食剤は、例えば冷却水系において、20〜200mg/リットルの保持濃度になるように希釈して使用するとよい。更に具体的には、例えば次のような冷却水系の冷却装置で使用するとよい。図1は冷却水を管理する冷却装置の一例を示す概要図である。この冷却装置は、発熱反応などを行わせる図示外の化学反応槽などで発生する排熱を吸収する熱交換器1を有している。この熱交換器1には、冷却水を一時貯留する塔底水槽2から冷却管が延び、ポンプ3を挟んで冷媒流入口に通じている。
【0024】熱交換器1の冷媒流出口は、送風機4を有する冷却塔5に排冷却水管を介して通じている。この冷却塔5からは、再冷却された水が直下に配置した塔底水槽2に流下して一時貯留される。塔底水槽2には、ポンプを備えた注入管が薬注タンク6からまた別に延びてきている。
【0025】上記の防食剤は、予め薬注タンク6に水溶液の状態で投入する。この防食剤は、水系において通常20〜200mg/リットルの濃度範囲に希釈して使用するとよい。塔底水槽2における上記の防食剤の濃度が、冷却装置の防食に必要なだけの十分な濃度すなわち20mg/リットルを満たしていない場合は、薬注タンク6から防食剤を随時供給する。
【0026】上記のようにして、塔底水槽2→熱交換器1→冷却塔5→塔底水槽2の間に実質的に冷却水の循環系を形成する。送風機4を駆動させ、図示外の化学反応槽などから送られる排熱を熱交換器1で冷却水に吸収させる。冷却水を実質的に循環させる間に、特に熱交換器1における吸熱に際して生ずる水の一部蒸発により、循環水の防食剤の濃度上昇が生じた場合には、付設する給水管8より冷水を補給し、熱交換器1に供給する冷却水中の防食剤を好ましい濃度に返戻する。
【0027】また、冷却水の水質が悪化した場合あるいは冷却水量が多くなった場合には、前記冷却塔5に通じる排冷却水管から分岐するブロー管を通じ、その一部を放水し、給水管8から塔底水槽2に新たな水を補給し、必要により、薬注タンク6から防食剤を補充して、熱交換器1に供給する冷却水中の防食剤を好ましい濃度に保持する。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例により制限されるものではない。
実施例1冷却水の移送管の材質に相当する軟鋼の腐食試験行なうため、アクリル酸系ポリマー、ポリエチレングリコール、有機硫黄化合物およびモルホリンの配合濃度(wt%)を固定し、これに、オクタデシルアミン、ヤシ油アミンEO付加物((CH2CH2O)3含有)、硬化牛脂アミンEO付加物((CH2CH2O)8含有)、大豆油アミンEO付加物((CH2CH2O)5含有)のそれぞれのアミン化合物を、リン酸化合物および金属塩を含有しない有機化合物で構成された薬剤(試作0)に添加して、約2000時間静置し、沈殿の発生の有無を観察することにより、安定性の良否を試験した。
【0029】試験の結果は、表1に示すとおりで、大豆油アミンEO付加物含有物が最適で、次いでヤシ油アミンEO付加物、硬化牛脂アミンEO付加物が適となり、(CH2CH2O)を含まないオクタデシルアミンは不適となった。なお、硬化牛脂アミンEO付加物添加のものは、長期保存した場合に沈殿を生じ、長期安定性に欠けることが判明した。
【0030】
【表1】


【0031】実施例2実施例1の安定性試験で最適となった大豆油アミンEO付加物を含有する薬剤(試作2)のアミン含有量を変化させ、軟鋼板のテストピース(30mm×50mm×1mm)による腐食試験を行なった。同時に、大豆油アミンEO付加物単独、薬剤無添加の試水についても併行して試験した。試験は、工業用水腐食性試験法(JIS−K0100)に準拠した質量減法で行なった。
【0032】試験液は、試水(純水にNaHCO3、NaClを加えてpH8.0、総硬度(CaCO3換算)120mg/リットル、塩素イオン濃度50、75、100、300、500mg/リットルに調整)に、表1の「試作2」において、大豆油アミンEO付加物の配合(wt%)が、0、0.1、0.25、0.5、5.0、10.0となるように調整した薬剤を、それぞれ100mg/リットル−試水となるように添加して調製した。
【0033】上記試験液中に、非腐食性円盤に固定した前記テストピースを垂下して、一定速度で10日間撹拌下で浸漬を継続した(ジャーテスター)。浸漬終了後テストピースを取り出し、除錆して重量を測定し、浸漬前後の重量差から腐食速度を求め、また、孔食数、孔食深さをそれぞれ測定した。また、比較のため、上記腐食試験に併行して、大豆油アミン単独添加の試験液および試水(無添加)による腐食試験も行なった。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】


【0035】塩素イオン濃度50〜75mg/リットル範囲の試験液にあっては、大豆油アミンEO付加物(化学式(I)のアミンに相当する;以下同じ)の添加、無添加による腐食速度の大きな違いが認められず、何れも実用可能なレベル10mg/dm2 /day(以下、mddと略記) 以下にあり、孔食数、孔食深さにおいても十分に低い数値を示し、実用に絶え得ると判断される。一方、塩素イオン濃度100、300、500mg/リットル範囲の試験液にあっては、大豆油アミンEO付加物の添加濃度が0.5%のとき、この塩素イオン濃度に対応して、[腐食速度(mmd),孔食数(個/cm2 ),孔食深さ(mm)]が、それぞれ[4,0.05,0.007]、[5.82,0.06,0.013],および[8.73,0.06,0.017]といずれも各試験群の中で最小値を示し、最も防食効果が高いことが確認された。一方、大豆油アミンEO付加物単独の場合には、上記試験範囲の塩素イオン濃度においては、いずれも実用レベルには至らなかった。
【0036】実施例3実施例1で用いた薬剤(試作2)の構成成分にさらに加えて、リン化合物としてヘキサメタリン酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウムを、またアゾール化合物としてトリルトリアゾール、ベンゾトリアゾールを用い、大豆油アミンEO付加物を半量(0.5wt%)とした試作薬剤(試作5〜8)を調製(表3)し、実施例1,2と同様に安定性と軟鋼板の腐食試験を行なった。さらに、この試験に併行して銅板の腐食試験も行なった。軟鋼板の腐食試験の結果を表4に,銅板の腐食試験の結果を表5に示す。
【0037】
【表3】


【0038】
【表4】


【0039】
【表5】


【0040】表4に記載する結果から、リン化合物、またはアゾール化合物を添加したときの軟鋼腐食速度は、無添加のときに比べ低い値であり、この2種の化合物のいずれかの添加による防食効果の向上が確認された。一方、銅に対する防食性については、リン化合物とアゾール化合物との間に歴然とした相違があり、、アゾール化合物に顕著な抑制効果のあることが認められた。
【0041】
【発明の効果】本発明によるときには、防食剤を化学式(I)で示されるアミン化合物と、化学式(II)で示される有機硫黄化合物を有効成分として構成したことにより、この防食剤を冷却水中に存在させるときには、両化合物の相乗効果により、塩素イオン濃度が100〜500mg/リットルの高レベルにある冷却水と常時接触している冷却水系等の環境にある鋼材、例えば軟鋼材で造られた配管の腐食、孔食を効果的に阻止することができる。また、本発明の防食剤には、環境に排出が困難な亜鉛等の金属他を含有しないので、上記の冷却水系にある循環水の余剰により、部分排出があっても、環境を破壊することはないので、取り扱いも容易となり、常時安定した冷却水系を形成することができ、極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷却水を管理する冷却装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 熱交換器
2 塔底水槽
3 ポンプ
4 送風機
5 冷却塔
6 薬注タンク
7 ブロー管
8 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 化学式(I)
一般式、R1−NH2、R12−NH、R123−N(R1〜R3の内、少なくとも1つは(CH2CH2O) Xを含み、且つ、化合物中の炭素原子数が20〜30の範囲)で示される化合物を0.1〜10wt%含有し、さらに、化学式(II)
一般式、R4−S−R5(R4、R5は、炭素原子数が1〜20の範囲にあるアリール基もしくはアルキル基であって、R4、R5の少なくとも一方はカルボニル基、または、カルボキシル基を有する)で示される有機硫黄化合物を0.1wt%以上含有していることを特徴とする水系防食剤。
【請求項2】 化学式(I)
一般式、R1−NH2、R12−NH、R123−N(R1〜R3の内、少なくとも1つは(CH2CH2O) Xを含み、且つ、化合物中の炭素原子数が20〜30の範囲)で示される化合物の内、(CH2CH2O) XのXが3〜6であることを特徴とする請求項1記載の水系防食剤。
【請求項3】 リン含有化合物をPO4換算で1wt%以下含むことを特徴とする請求項1記載の水系防食剤。
【請求項4】 アゾール化合物を配合してあることを特徴とする請求項1記載の水系防食剤。
【請求項5】 請求項1に記載する水系防食剤を20〜200mg/リットルの保持濃度で使用することを特徴とする水系防食方法。

【図1】
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【公開番号】特開2000−80484(P2000−80484A)
【公開日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−158701
【出願日】平成11年6月4日(1999.6.4)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)