説明

水質改善用のフェンス

【課題】カーテンキャンパスを沈下させるための重錘を工夫することで、カーテンキャンパスの引き上げを容易とし、カーテン丈の調整を簡単に行うことができる。
【解決手段】フロート部2からカーテンキャンパス5と並列にチェーン吊り下げ用ワイヤー13が吊り下げられ、このチェーン吊り下げ用ワイヤー13の下端にメインの重錘チェーン4Aが吊り下げられ、カーテンキャンパス5の下部に、メインの重錘チェーン4Aより軽量のサブの重錘チェーン4Bが吊り下げられている。チェーン吊り下げ用ワイヤー13に、カーテンキャンパス5が、サブの重錘チェーン4Bのみと共にフロート部2付近まで引き上げ可能に、複数の、カーテン丈調整用リング10を介して係止されている。このリング10は、カーテンキャンパス5の、チェーン吊り下げ用ワイヤー13に対応する部位で上下方向において一定の間隔で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明には、水質改善用のフェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダム貯水池には水質改善用のフェンスが設置され、濁水の流入の防止を図っている。
【0003】
ところで、そのような水質改善用のフェンスのカーテン丈の調整は、カーテンキャンパスの下部にあらかじめ下端部を連結したロープの上端部を作業者が引き上げることでカーテンキャンパスを必要なカーテン丈だけ引き上げることで行っている。しかしながら、カーテンキャンパスを沈下させるためにカーテンキャンパスには下部に、カーテン沈下用の重錘が設けられており、その重錘が重いため、カーテンキャンパスを引き上げるのは重労働であり、カーテン丈の調整は困難な作業となっている。
【0004】
つまり、図4(a)〜(c)に示すように、フロート部101に設けられた係止具に上端部102aが結びつけられたカーテン丈調整用ロープ102の下端部102bが、カーテンキャンパス103の下部に設けられる沈下用の重錘104に連結され、カーテンキャンパス103を引き上げる際に、カーテン丈調整用ロープ102に重錘104の重量及びカーテンキャンパス103の重量が作用するので、そのカーテン丈の調整を行う作業者の負担が大きくなっている。
【0005】
例えば、河川等で水位が低下した後において一定量の増水による流水が発生し始める段階で、護岸面であった土などが乾燥することで流水が濁り、河床部に粗い粒子の流れが生じる場合があり、そのような場合には、少なくとも粗い粒子で埋まりやすいカーテンキャンパスの下部を水面付近まで浮上させる必要がある。
【0006】
ところで、そのような水質改善用のフェンスを開放するために、カーテンキャンパスの下部を水面付近まで浮上させるのに、エアーにより浮力調整可能なフロートを使用して行い得るようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−193454号公報号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1記載の技術では、フロートの浮力を調整するので、その調整のための機構が必要であり、また、調整が困難である。
【0009】
そこで、本発明は、カーテンキャンパスを沈下させるための重錘を工夫することで、カーテンキャンパスの引き上げを容易とし、カーテン丈の調整を簡単に行うことができる水質改善用のフェンスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、水に浮かべて設置されてほぼ一定の間隔ごとにフロートが連結されているフロート部の下側に、下部に沈下用重錘が取り付けられたカーテンキャンパスの上部が取付けられることにより水中に吊り下げられている水質改善用フェンスであって、前記フロート部から前記カーテンキャンパスと並列に重錘支持ワイヤーが吊り下げられ、前記沈下用重錘が、前記重錘支持ワイヤーに吊り下げられ前記重錘支持ワイヤーによって支持されるメインの重錘と、前記カーテンキャンパスの下部に吊り下げられ前記カーテンキャンパスによって支持されるサブの重錘とで構成され、前記重錘支持ワイヤーに、前記カーテンキャンパスが、前記サブの重錘のみと共に前記フロート部付近まで引き上げ可能に、係止部材を介して係止されていることを特徴とする。
【0011】
このようにすれば、カーテンキャンパスをカーテン丈を調整するために引き上げる際には、カーテンキャンパスにはサブの重錘の重量が作用するだけであるので、カーテンキャンパスの引き上げ作業を容易とし、作業者の負担を軽くして、カーテン丈の調整を簡単に行うことができる。
【0012】
この場合、請求項2に記載のように、前記係止部材は、前記カーテンキャンパスに設けられ前記重錘支持ワイヤーが挿通される環状あるいは筒状の金具で、前記重錘支持ワイヤーに対応する部位で上下方向において一定の間隔で設けられている構成とすることができる。
【0013】
このようにすれば、カーテンキャンパスの環状あるいは筒状の金具に重錘支持ワイヤーを挿通する構成とすることで、カーテンキャンパスが、前記サブの重錘のみと共に前記フロート部付近まで引き上げ可能になるようにすることができる。
【0014】
また、請求項3に記載のように、前記重錘支持ワイヤーが連結される前記フロート部は、前記重錘支持ワイヤーの上端部との間に、フラットプレートが設けられていることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、重錘支持ワイヤーを通じてメインの重錘の重量が作用するフロート部が、部分的に沈下するのを回避することができる。
【0016】
また、請求項4に記載のように、前記重錘支持ワイヤーに沿ってカーテン丈調整用ロープが配設され、前記ロープの下端が前記サブの重錘に、上端が前記フロート部の上部に連結されている構成とすることができる。
【0017】
このようにすれば、カーテン丈調整用ロープを用いて、カーテンキャンパスの引き上げを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のように構成したから、カーテンキャンパスを引き上げる際に、カーテンキャンパスにはサブの重錘の重量のみが作用するので、カーテンキャンパスの引き上げを容易とし、カーテン丈の調整を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る水質改善用のフェンスの一実施の形態を示し、(a)は平面図,(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図2】前記フェンスの他の実施の形態についての要部拡大正面図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれカーテンキャンパスを巻き上げる動作の説明図である。
【図4】(a)〜(c)は従来の水質改善用フェンスの、カーテンキャンパスを巻き上げる動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0021】
水質改善用のフェンス1は、図1(a)(b)(c)に示すように、水に浮かべて設置されているフロート部2の下側に幅広のメインベルト3を介して、下部に沈下用重錘4が取り付けられたカーテンキャンバス5の上部が取付けられることにより水中に吊り下げられている。つまり、フロート部2に対しカーテンキャンバス5が水中に吊り下げられている。フロート部2は、フロート覆布6の内部に、複数のフロート7がほぼ一定の間隔ごとに連結して設けられてなる。
【0022】
沈下用重錘3は、メインの重錘チェーン4Aと、それよりも軽量の、サブの重錘チェーン4Bとで構成されている。そして、両重錘チェーン4A,4Bは、上下方向(深さ方向)の位置が一致しないように、サブの重錘チェーン4Bが上方に位置するようにずれて配置されている。つまり、メインの重錘チェーン4Aの上方位置あるいは斜め上方位置において、キャンバス長手方向に沿って、サブの重錘チェーン4Bが略平行に配置されている。
【0023】
カーテンキャンバス5の上縁部及び下縁部の表裏面側にはキャンバス長手方向に沿って延びる幅広の第1の補強ベルト8A,8Aが設けられ、幅広の補強ベルト8B,8Bは、両側縁部の表裏面側にも設けられている。さらに、キャンバス長手方向において一定間隔でもって、上下方向に沿って延びる幅広の補強ベルト8Cが表裏面側に設けられている。
【0024】
そして、カーテンキャンバス5の上下方向の中間部分の表裏面側にも、同様に、キャンバス長手方向に沿って延びる幅狭の補強ベルト9Aが設けられている。また、キャンバス長手方向において一定間隔でもって、キャンバス上下方向に延びる補強ベルト8Cの一部の間にも、キャンバス上下方向に延びる幅狭の補強ベルト9Bが設けられている。そして、カーテンキャンバス5の下縁部に、サブの重錘チェーン4Bが設けられている。
【0025】
上下方向に沿って延びる幅広の各補強ベルト8Cの表面側には、複数のカーテン丈調整用リング10(環状あるいは筒状の金具)が上下方向に沿って一定間隔ごとに取り付けられている。
【0026】
カーテン丈調整用リング10が設けられる部分と並んでカーテン丈調整用ロープ11が配置されており、そのカーテン丈調整用ロープ11の下端がサブの重錘チェーン4Bに連結されている。このカーテン丈調整用ロープ11の上端は、フロート部2の上部に設けられたカーテン丈調整用ロープ固定フック12に縛り付けられている。そして、カーテン丈の調整時には、カーテン丈調整用ロープ11を引き上げてカーテンキャンバス5の下端部を上方に引き上げ、カーテン丈を所望の長さとした後、再びカーテン丈調整用ロープ11の上端部をロープ固定フック12に縛り付けることで、前記所望のカーテン丈に固定することができる。
【0027】
また、フロート部2には、メインの重錘チェーン4Aが、チェーン吊り下げ用ワイヤー13(重錘支持ワイヤー)を介して吊り下げられている。具体的には、補強ベルト8Cが設けられる位置に対応して上側の補強ベルト8Aにチェーン取付プレート14が取り付けられ、このチェーン取付プレート14に、チェーン吊り下げ用ワイヤー13の上端部を連結するためのチェーン取付シャックル15が設けられている。このチェーン吊り下げ用ワイヤー13の下端部には、メインの重錘チェーン4Aに連結されている。
【0028】
各チェーン吊り下げ用ワイヤー13の途中の部分は、カーテン丈調整用リング10に挿通されている。これによりカーテン丈調整用リング10を介して、カーテンキャンパス5がチェーン吊り下げ用ワイヤー13に拘束され、カーテンキャンパス5に直交する方向の流れに対してはメインの重錘チェーン4Aの重量がカーテンキャンバス5に作用することになる。
【0029】
よって、カーテンキャンパス5の下縁部には、軽量のサブの重錘チェーン4Bが設けられているだけであるが、カーテンキャンパス5に直交する方向の流れによってカーテンキャンパス5が大きく流されることはない。また、フェンス1に直交する方向に流れがあっても、チェーン吊り下げ用ワイヤー13に対しカーテン丈調整用リング10を介してカーテンキャンバス5が係止されているので、カーテンキャンバス5に直接設けられているサブの重錘チェーン4Bの重量が軽くても、カーテンキャンバス5のみが流されることがない。
【0030】
一方、カーテンキャンバス5を巻き上げてフェンス丈を短くする場合には、チェーン吊り下げ用ワイヤー13付近であってカーテン丈調整用リング10の外側に配置されているカーテン丈調整用ロープ11を引き上げることで、サブの重錘チェーン4Bと共にカーテンキャンバス5の下縁部が引き上げられることになる。このカーテン丈調整用ロープ11の下端部は、カーテンキャンバス5の下端(サブの重錘チェーン4B)に連結されているので、カーテン丈調整用ロープ11を引き上げることで、カーテン丈を調整することができる。この引き上げの際、カーテン丈調整用リング10が設けられている部分を基準としてカーテンキャンパス5が折り畳まれつつ引き上げられ、カーテン丈調整用リング10は積層状態となっていく(図3(a)〜(d)参照)。
【0031】
上記のように構成すれば、カーテン丈を短くするためにカーテン丈調整用ロープ11を用いて、カーテンキャンパス5を折り畳みながら引き上げる場合には、メインの重錘チェーン4Aはチェーン吊り下げ用ワイヤー13によって吊り下げられていることから、水中に残される。よって、カーテンキャンパス5と一緒に引き上げられるのはサブの重錘チェーン4Bだけであるので、引き上げに要する労力が大幅に軽減される。また、チェーン吊り下げ用ワイヤー13とカーテン丈調整用リング10の係合関係でカーテンキャンバス5は上下方向においてスムーズに案内される。
【0032】
なお、特許文献1記載の技術のようにエアーによりフロートの浮力を調整するものではないので、構造が簡単である。
【0033】
一方、カーテン丈を長くするためにカーテンキャンパス5を沈める場合には、カーテンキャンパス5の下縁部にはサブの重錘チェーン4Bが設けられているので、それの重量により水中に無理なく、所定深さまで沈下させることができ、所望のカーテン丈とすることができる。この場合も、チェーン吊り下げ用ワイヤー13とカーテン丈調整用リング10との係合関係でカーテンキャンバス5は上下方向において、折りたたみを解除されながらスムーズに沈下していくことになる。
【0034】
前記実施の形態のほか、次のように変更して実施することも可能である。
【0035】
(i)チェーン吊り下げ用ワイヤー13(重錘支持ワイヤー)が連結されているフロート部2の部分には、図2に示すように、フラットプレート21(例えばFRP製の軽量の板材)を設けて、剛性を高めることができる。この部分には、チェーン吊り下げ用ワイヤー13を通じてメインの重錘チェーン3Aの荷重が作用して、フロート部2が下方に撓むおそれがあるので(図2の右側の鎖線参照)、フラットプレート21を設けることでそれを回避することができる。
【0036】
(ii)カーテン丈調整用リング10(環状あるいは筒状の金具)を用いてチェーン吊り下げ用ワイヤー13に対してカーテンキャンパス5が係止されているが、カーテンキャンパス5を引き上げ可能に係止できるのであれば、カーテン丈調整用リング10のような環状あるいは筒状の金具を用いる必要はなく、別の係止部材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 水質改善用のフェンス
2 フロート部
4 重錘
4A メインの重錘チェーン
4B サブの重錘チェーン
5 カーテンキャンパス
7 フロート
10 カーテン丈調整用リング(環状あるいは筒状の金具)
11 カーテン丈調整用ロープ
12 カーテン丈調整用ロープ固定フック
13 チェーン吊り下げ用ワイヤー(重錘支持ワイヤー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に浮かべて設置されてほぼ一定の間隔ごとにフロートが連結されているフロート部の下側に、下部に沈下用重錘が取り付けられたカーテンキャンパスの上部が取付けられることにより水中に吊り下げられている水質改善用フェンスであって、
前記フロート部から前記カーテンキャンパスと並列に重錘支持ワイヤーが吊り下げられ、
前記沈下用重錘が、前記重錘支持ワイヤーに吊り下げられ前記重錘支持ワイヤーによって支持されるメインの重錘と、前記カーテンキャンパスの下部に吊り下げられ前記カーテンキャンパスによって支持されるサブの重錘とで構成され、
前記重錘支持ワイヤーに、前記カーテンキャンパスが、前記サブの重錘のみと共に前記フロート部付近まで引き上げ可能に、係止部材を介して係止されていることを特徴とする水質改善用のフェンス。
【請求項2】
前記係止部材は、前記カーテンキャンパスに設けられ前記重錘支持ワイヤーが挿通される環状あるいは筒状の金具で、前記重錘支持ワイヤーに対応する部位で上下方向において一定の間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載の水質改善用のフェンス。
【請求項3】
前記重錘支持ワイヤーが連結される前記フロート部は、前記重錘支持ワイヤーの上端部との間に、フラットプレートが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水質改善用のフェンス。
【請求項4】
前記重錘支持ワイヤーに沿ってカーテン丈調整用ロープが配設され、前記ロープの下端が前記サブの重錘に、上端が前記フロート部の上部に連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の水質改善用のフェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−144956(P2012−144956A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6275(P2011−6275)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(593066634)海和テック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】