説明

水質測定器およびそれに用いられる試料容器

【課題】 試料容器の厚みの均一性を確保するとともに、試料容器収容部に試料容器を収容する際に常に正確な位置決めが容易にできるようにし、併せて試料容器本体の表面が汚れたり濡れたりしないようにすることで、水質測定の誤差の発生を極力回避できて取り扱い性にも優れる水質測定器およびそれに用いられる試料容器を提供する。
【解決手段】 試料水を入れる試料容器本体111とこの試料容器本体111の開口部を塞ぐことが可能な試料容器蓋120とを有する試料容器110と、この試料容器110を着脱自在に嵌合させる試料容器収容部101を有する水質測定器本体100とを備え、試料容器110を試料容器収容部101に収容する場合に試料容器110を所定向きに位置決めして保持する係合機構(106、116)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の濁度や色度などの水質を測定するための水質測定器およびそれに用いられる試料容器に関し、特に、携帯が容易でコンパクトな水質測定器およびそれに用いられる試料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、水道水などの飲料水が飲用に適しているか否かを判定するため、水道法によって定期的な水質検査が義務付けられている。この水質検査の項目としては、例えば、大腸菌群、一般細菌、塩化物イオン、有機物等、pH値、臭気、味、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素、濁度、色度などが挙げられる。これらの検査項目のうち、濁度や色度については、試料容器(「セル」又は「バイアル瓶」とも言う)などに入れた試料水に所定波長の光を照射し、その透過光や散乱光などに基づいて光学的に測定を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
【0003】
また、濁度や色度などの水質測定が可能な携帯型の水質測定器も市販されている。図11は、そのような水質測定器の一例であり、(a)は水質測定器本体20を示し、(b)はそれに用いられる試料容器26を示している。図12は、この水質測定器本体20の試料容器収容部21に試料容器26が収容された状態を示している。
【0004】
図11(a)に示すように、水質測定器本体20は縦長の箱形状で、その正面上部に試料容器26の大部分が嵌合して収容される大きさの試料容器収容部21が設けられ、そのすぐ右下には試料容器26の収容時の位置合わせのための方向指示マーク25が設けられている。試料容器収容部21の下側には測定結果を表示するための液晶表示部22が配置され、さらにその下側には複数の操作ボタン23が配置されている。
【0005】
一方、試料容器26は、図11(b)に示すように、無色透明のガラス製で小型の丸い試料容器本体27と、黒色樹脂製でねじ込み式の試料容器蓋28とからなっている。試料容器本体27の側面には、試料容器26の収容時の位置合わせのための方向指示マーク29が印刷されている。
【0006】
水質測定を行うには、まず、試料容器26の試料容器蓋28を開けてから試料容器本体27の内部に試料水を入れ、試料容器蓋28を再び閉じる。次に、図12に示すように、試料水が入った試料容器26を水質測定器本体20の試料容器収容部21に差し込む。このとき、試料容器26の方向指示マーク29と、水質測定器本体20の方向指示マーク25とがちょうど対向するように正確な位置合わせを行う必要がある。試料容器26の底が試料容器収容部21の底に当たるまで押し込むことで、試料容器26は試料容器蓋28の上側の一部のみが試料容器収容部21から突出した状態となる。試料容器蓋28と試料容器収容部21の間の隙間は十分に狭いため、試料容器26内は外部から遮光され、外部からの光による測定誤差の発生が防止される。そして、操作ボタン23の操作によって測定を実行させることにより、測定結果が液晶表示部22に表示される。
【0007】
図13は、上述のような水質測定器の他の例であり、水質測定器本体30およびそれに用いられる試料容器36を示している。
【0008】
図13に示すように、この水質測定器本体30では、試料容器収容部31はスライド自在のカバー34の内部に設けられている。水質測定器本体30の上面のほぼ中央には、測定結果を表示するための液晶表示部32が配置され、さらにその下側には複数の操作ボタン33が配置されている。
【0009】
試料容器36は、上述の試料容器26とほぼ同様の構造をしており、無色透明のガラス製で小型の丸い試料容器本体37と、黒色樹脂製でねじ込み式の試料容器蓋38とからなっている。試料容器本体37の側面には、試料容器36の収容時の位置合わせのための方向指示マーク39が印刷されている。
【0010】
水質測定を行うには、まず、試料容器36の試料容器蓋38を開けてから試料容器本体37の内部に試料水を入れ、試料容器蓋38を再び閉じる。次に、水質測定器本体30のカバー34を開いて、試料水が入った試料容器36を試料容器収容部31にセットする。なお、試料容器収容部31の内径は試料容器36の外径よりも大きいため、試料容器36を試料容器収容部31のちょうど中央に置くとともに、試料容器36の方向指示マーク39と、水質測定器本体30の試料容器収容部31のすぐ左下に設けられている方向指示マーク35とがちょうど対向するように正確な位置合わせを行う必要がある。その後、カバー34を閉じると、試料容器36全体が外部から遮光され、外部からの光による測定誤差の発生が防止される。そして、操作ボタン33の操作によって測定を実行させることにより、測定結果が液晶表示部32に表示される。
【特許文献1】特開平7−294429号公報
【特許文献2】特開平8−54339号公報
【特許文献3】特開平8−68788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の従来技術のようなガラス製の試料容器では、ガラスの厚みの均一性が不十分なため、水質測定器本体に収容したときの向きによる測定誤差が発生していた。試料容器の側面には普通は適切な向きを示すマークなどが印刷されているので、水質測定器本体の試料容器収容部の近傍に設けられている対応マークなどと正確に対向させるようにして位置決めをすることは可能である。それでも、目分量であるために位置決めの精度には限界があった。また、試料容器の構造上、ねじ込み式の試料容器蓋を開閉する際には、試料容器本体を手などで保持せざるを得ない。このために、試料容器本体の表面が汚れたり濡れたりして、これも測定誤差の要因となる可能性があった。さらに、持ち運びのためには、水質測定器本体と試料容器とを分けて収納できるような大きめの専用ケースが必要であり、持ち運びにはあまり便利とは言えなかった。
【0012】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、試料容器の厚みの均一性を確保するとともに、試料容器収容部に試料容器を収容する際に常に正確な位置決めが容易にできるようにし、併せて、通常時は試料容器が水質測定器本体と一体化したままの状態で水質測定が行えるようにして、試料容器本体の表面が汚れたり濡れたりすることを回避して水質測定の誤差の発生を防止でき、持ち運びにもケースなどを必要とせずに取り扱い性にも優れ、必要に応じて試料容器を水質測定器本体から分離することもできて様々な測定状況に柔軟に対応可能な水質測定器およびそれに用いられる試料容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の水質測定器は、試料水を入れる試料容器本体とこの試料容器本体の開口部を塞ぐことが可能な試料容器蓋とを有する試料容器と、この試料容器を着脱自在に嵌合させる試料容器収容部を有する水質測定器本体とを備え、前記試料容器を前記試料容器収容部に収容する場合に前記試料容器を所定向きに位置決めして保持する係合機構が設けられていることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記水質測定器としては、例えば、濁度を測定する濁度計、色度を測定する色度計、あるいは濁度および色度を測定する濁色度計などが挙げられるが、これらに限るものではない。前記試料容器本体の材質は透明の樹脂であり、例えば、プラスチックが挙げられるが、これに限るものではない。前記試料容器本体をこのような樹脂製の成型品とすることにより、小型のガラス製の容器などと比較して、厚みの均一性を高めることができる。また、前記試料容器蓋の材質は柔軟性を有する樹脂であり、例えば、エラストマーが挙げられるが、これに限るものではない。
【0015】
また、前記係合機構として、例えば、前記試料容器収容部に係合部が設けられるとともに、この係合部と互いに係合する被係合部が前記試料容器に設けられていてもよい。前記試料容器本体は、円筒状で底が平らな試料容器下部と、この試料容器下部の上側につながる径のより大きな円筒状の試料容器上部とからなる2段構造に構成されており、この試料容器上部に前記被係合部が設けられていてもよい。
【0016】
より具体的な構成としては、例えば、前記被係合部は、前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合に前記試料容器が前記試料容器収容部に当接する面に形成された少なくとも1つのガイド溝であり、前記係合部は、前記ガイド溝にそれぞれ対向する位置に形成された前記ガイド溝と同数の突起部であってもよい。さらに、前記ガイド溝は、前記試料容器を前記試料容器収容部に収容するときに前記突起部が前記ガイド溝内に侵入できるように前記試料容器の下方向に開いて形成されている第1区間と、この第1区間に隣接するとともに前記試料容器の下方向に対して徐々に遠ざかるように斜め方向に形成されている第2区間と、この第2区間に隣接するとともに前記試料容器の下方向と直交する方向に形成されておりその終端が閉じている第3区間とを有するようにしてもよい。
【0017】
この発明の水質測定器によれば、前記試料容器収容部に前記試料容器を収容する際に常に正確な位置決めが容易にできる。これにより、取り扱い性が向上するとともに、水質測定の誤差の発生を極力回避することができる。
【0018】
また、本発明の水質測定器において、前記試料容器を前記試料容器収容部に嵌合させる際に、前記試料容器の適切な向き以外では前記試料容器収容部に完全に嵌合させられないようにする誤嵌合防止機構が設けられていることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明の水質測定器によれば、記試料容器を前記試料容器収容部に嵌合させる際に、前記試料容器の適切な向き以外では完全に勘合させることができない。これにより、前記試料容器が誤った向きに勘合されて水質測定の誤差が発生することが防止される。
【0020】
また、本発明の水質測定器において、前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合でも、前記試料容器本体の前記開口部は前記試料容器収容部の外部に面していることを特徴としてもよい。さらに、本発明の水質測定器において、前記試料容器蓋は前記試料容器本体の前記開口部に開閉自在に連結されていることを特徴としてもよい。
【0021】
この発明の水質測定器によれば、前記試料容器が前記試料容器収容部に収容されたままでも前記試料容器蓋を開閉すれば試料水の出し入れが可能である。通常時は前記試料容器が前記水質測定器本体と一体化したままの状態で水質測定を行うようにすれば、前記試料容器本体の表面が汚れたり濡れたりすることが回避されるので、水質測定の誤差の発生も防止される。また、持ち運び時にもケースなどを特に必要としないので取り扱い性にも優れており、必要に応じて試料容器を水質測定器本体から分離することもできるので様々な測定状況に柔軟に対応可能である。
【0022】
また、本発明の水質測定器において、前記試料容器蓋は前記試料容器本体から脱着可能であることを特徴としてもよい。
【0023】
この発明の水質測定器によれば、試料容器の構成が簡単になり、部品点数が削減できる。これにより、材料費や組立費などのコストダウンが図れる。
【0024】
また、本発明の水質測定器において、前記試料容器を前記試料容器収容部に嵌合させる際の前記試料容器の適切な向きを示すマークが、前記試料容器本体および前記試料容器蓋のいずれにも設けられていることを特徴としてもよい。
【0025】
この発明の水質測定器によれば、前記試料容器蓋が開いているときでも、閉じているときでも、前記試料容器の適切な向きを容易に知ることができる。これにより、前記試料容器の取り扱い性などが向上する。
【0026】
また、本発明の水質測定器において、前記試料容器の開口部外周にローレット構造を有するグリップ部が形成されており、前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合でも、このグリップ部は前記試料容器収容部の外部に出ていることを特徴としてもよい。
【0027】
この発明の水質測定器によれば、このグリップ部によって前記試料容器を確実に保持することができる。これにより、前記試料容器に試料水を出し入れしたりするときにこのグリップ部で保持するようにすれば、前記試料容器の表面が不用意に汚れたり濡れたりすることを避けることができ、水質測定の誤差が発生することが極力防止される。また、前記試料容器を前記試料容器収容部に収容したり取り外したりするときも、少ない力で確実に操作することができるので、取り扱い性が向上する。
【0028】
また、上記のいずれかの水質測定器に用いられる試料容器も、本発明の範疇である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の水質測定器およびそれに用いられる試料容器によれば、試料容器収容部に試料容器を収容する際に常に正確な位置決めが容易にできる。これにより、取り扱い性が向上するとともに、水質測定の誤差の発生を極力回避することができる。
【0030】
なお、試料容器が試料容器収容部に収容された場合でも、試料容器本体の開口部が試料容器収容部の外部に面しており、試料容器蓋が試料容器本体の開口部に開閉自在に連結されていれば、通常時は試料容器が水質測定器本体と一体化したままの状態で水質測定を行うことができる。これにより、試料容器本体の表面が汚れたり濡れたりすることが避けられるので、水質測定の誤差の発生も回避される。また、持ち運び時にもケースなどを特に必要としないので取り扱い性にも優れており、必要に応じて試料容器を水質測定器本体から分離することもできるので様々な測定状況に柔軟に対応可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、水質測定の方法については従来技術と同様の方法を用いればよい。さらに、水質測定用の発光素子の発光を交流的に行ってそれに応じた受光出力のみを検出するようにしたり、あるいは、水質測定用の発光素子の発光時と非発光時との受光出力の差に基づいて検出を行うようにすれば、水質測定器の外部からの光が測定誤差の原因となることを回避できる。そこで以下では、本発明の特徴である水質測定器本体および試料容器の形状などを主として説明する。
【0032】
<水質測定器1の各部構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る水質測定器1の斜視図である。図2は、この水質測定器1の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図をそれぞれ示している。図3は、本実施形態の水質測定器本体100の斜視図である。図4は、この水質測定器本体100の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は(c)の内部機構を省略した4f−4f断面図をそれぞれ示している。
【0033】
これらの図に示すように、水質測定器1は、水質測定器本体100と、この水質測定器本体100から分離自在な試料容器110(詳細は後述)とから構成されている。
【0034】
水質測定器本体100は縦長の箱形状で手前が丸く、その正面上部には試料容器110を収容する試料容器収容部101が設けられている。この試料容器収容部101は、その外周部が短い円筒状に水質測定器本体100の表面から突出するように形成され、この突出部分の外壁面であって水質測定器本体100の真上方向の位置からやや離れた左右対称位置となる2ヶ所に試料容器110の逆挿入を防止するための逆挿入防止突起部107が形成されている。さらに、この突出部分外側近傍の真下の位置に、試料容器110が試料容器収容部101に収容された状態の位置を示す収容時位置指示マーク108が配置され、そのやや右よりの位置には、試料容器110を試料容器収容部101に挿入するときの目印を示す挿入時位置指示マーク109が配置されている。一方、試料容器収容部101の内部は浅い丸穴が形成され、その内壁面であって水質測定器本体100の真上方向の位置からやや左よりの位置に試料容器110を係合する係合用突起部106が形成されるとともに、この浅い丸穴の中心を挟んで対称の位置にも同様に係合用突起部106が形成されている。さらに、この浅い丸穴の底には、径のより小さい深い丸穴が形成されている。なお、試料容器収容部101は、後述する試料容器110にちょうど嵌合する形状である。
【0035】
試料容器収容部101の下側には測定結果を表示するための液晶表示部102が配置され、さらにその下側には、電源のON/OFFを行う電源ボタン103a、測定モードを切り替えるモード切替ボタン103b、校正を行う校正ボタン103c、および測定の実行を指示する測定ボタン103dがそれぞれ配置されている。
【0036】
水質測定器本体100の背面下部には、水質測定器本体100の内部に設けられている電池室(不図示)を覆う電池室蓋104が配置され、この電池室蓋104はその下端がネジ105によって固定されている。
【0037】
図5は、本実施形態の試料容器110の斜視図である。図6は、この試料容器110の構成を示す説明図である。図7は、本実施形態の試料容器本体111の6面図および断面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図、(g)は(c)の7g−7g断面図、(h)は(c)の7h−7h断面図をそれぞれ示している。図8は、本実施形態の試料容器蓋120の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図をそれぞれ示している
これらの図に示すように、試料容器110は、試料水を入れるための試料容器本体111と、この試料容器本体111に脱着可能であってその開口部に開閉自在に連結されている試料容器蓋120とから構成されている。ここで、試料容器本体111は全体が透明であり、例えばプラスチックなどの樹脂を材料とする成型品である。試料水を入れる部分の厚みは、測定誤差の要因とならないように十分均一にできている。試料容器蓋120の材料としては、例えばエラストマーなどの柔軟性を有する樹脂が挙げられるが、これに限るものではない。その色は、例えば黒色が挙げられるが、黒色に限るものではない。
【0038】
図6および図7(a)〜(h)に示すように、試料容器本体111は、深い円筒状で底が平らな試料容器下部112と、その試料容器下部112の上側につながる径がより大きな浅い円筒状の試料容器上部113とからなる2段構造となっている。
【0039】
この試料容器上部113の開口部の左右両側には、ローレット構造を有するグリップ部114がそれぞれ形成されている。試料容器110を保持する際にはこのグリップ部114を手で保持すればよいので、試料容器下部112には通常は手が触れたりしない。そのため、この試料容器下部112の外面が汚れたり濡れたりすることが防止されるので、水質測定時の誤差発生の要因となることが回避される。各グリップ部114に形成されている凹部117は、試料容器本体111からの試料水の排出を容易とするためのものである。また、試料容器110を水質測定器本体100に収容する際には、試料容器上部113の外周面とグリップ部114の裏面との隙間が、水質測定器本体100の試料容器収容部101の突出部と嵌合するようになっている。また、グリップ部114の裏面において、水質測定器本体100の逆挿入防止突起部107に対応する位置に逆挿入防止部119が形成されており、これにより逆挿入防止を図るとともに、試料容器110を収容する操作時にクリック感が生じるようにする。
【0040】
さらに、試料容器上部113の開口部の上側には、試料容器蓋120との連結のための2ヶ所の蓋連結用穴115aを有する蓋連結部115が形成され、下側に試料容器110を水質測定器本体100に収容する際の向きを示す方向指示マーク118が形成されている。
【0041】
また、試料容器上部113の外周部には、蓋連結部115のほぼ直下の位置と方向指示マーク118のほぼ直下の位置とに、水質測定器本体100の試料容器収容部101の内部に形成されている係合用突起部106と係合するためのガイド溝116がそれぞれ形成されている。なお、このガイド溝116については、後述する。
【0042】
図6および図8(a)〜(f)に示すように、試料容器蓋120は、その外周部の一方の側に試料容器本体111との脱着が可能な連結用突起121aを2ヶ所に有する連結部121と、この連結部121に隣接するとともに他の部分よりも肉薄で試料容器蓋120の開閉を容易とする折れ曲がり部122と、これらの反対側に試料容器蓋120を開く際に手を掛けるためのつまみ部123と、試料容器蓋120の裏面に試料容器本体111の開口部から試料水が漏れないように封止するために円筒状に突出している封止部125とを備えている。試料容器蓋120の外周部の他の部分は、試料容器本体111のグリップ部114のローレット構造と同様の形状に形成されており、試料容器蓋120が閉じられたときにグリップ部114と一体化する。
【0043】
試料容器蓋120の表面のつまみ部123の近傍には、試料容器110を水質測定器本体100に収容する際の向きを示す方向指示マーク124が形成されている。試料容器110の試料容器蓋120が閉じられているときは、試料容器本体111に形成されている方向指示マーク118は外からは見えなくなっているが、この方向指示マーク124によって試料容器110を水質測定器本体100に収容する際の正しい向きが容易にわかる。
【0044】
<試料容器110を水質測定器本体100に収容する操作手順>
図9は、本実施形態の試料容器110を水質測定器本体100の試料容器収容部101に収容する操作の説明図である。
【0045】
図9に示すように、試料容器110を水質測定器本体100に収容する際は、まず、試料容器蓋の方向指示マーク124の先を試料容器収容部101の真下よりもやや右寄りにある挿入時位置指示マーク109に合わせるようにして(このとき、試料容器本体111のガイド溝116と試料容器収容部101の係合用突起部106との位置が合う)、試料容器下部112を試料容器収容部101に挿入して押し込む。当たり位置まで押し込んだら、次に、試料容器蓋の方向指示マーク124の先が試料容器収容部101の真下にある収容時位置指示マーク108にちょうど対向する位置まで右向きに回転させる。これにより、試料容器110が適切な位置を向いた状態で試料容器収容部101に保持される。なお、試料容器110を水質測定器本体100から分離する際は、この逆の手順による。
【0046】
図10は、この試料容器110を水質測定器本体100の試料容器収容部101に収容する操作において、試料容器110のガイド溝116と試料容器収容部101の係合用突起部106の相対的な位置関係の変化を示す説明図であり、(a)は係合用突起部106がガイド溝116に侵入する前を、(b)は係合用突起部106がガイド溝116にまっすぐに侵入して当たり位置で一時停止したときを、(c)は係合用突起部106がガイド溝116の斜めの部分を移動した後を、(d)は係合用突起部106がガイド溝116の終端に達したときをそれぞれ示している。
【0047】
図10(a)〜(d)に示すように、ガイド溝116は、試料容器収容部101の係合用突起部106が侵入できるように、試料容器110の下方向に開いて形成されている第1区間116aと、この第1区間116aに隣接するとともに試料容器110の下方向に対して徐々に遠ざかるように斜め方向に形成されている第2区間116bと、この第2区間116bに隣接するとともに試料容器110の下方向と直交する方向に形成されておりその終端が閉じている第3区間116cとを有している。ガイド溝116の上下方向の幅は係合用突起部106の上下方向の長さとほぼ同じであり、ガイド溝116の上下方向に直交する方向の幅は係合用突起部106の上下方向と直交する方向の長さとほぼ同じである。また、ガイド溝116の第3区間においては、係合用突起部106はこのガイド溝116に沿った方向のみの相対的な移動が可能であり、これと異なる方向の移動は阻止される。
【0048】
試料容器110を水質測定器本体100に収容する際に、試料容器蓋の方向指示マーク124の先を試料容器収容部101の真下よりもやや右寄りにある挿入時位置指示マーク109に合わせたときの状態が、図10(a)に示すような位置関係となる。
【0049】
次に、試料容器110を試料容器収容部101に挿入して当たり位置まで押し込むと、係合用突起部106はガイド溝116の第1区間116a内を移動して、図10(b)に示すような位置関係に達する。
【0050】
続けて、試料容器110を試料容器収容部101に押し込んだままで右向きに回転させると、係合用突起部106はガイド溝116の第2区間116b内を移動して、図10(c)に示すような位置関係に達する。このとき、試料容器110の右回転に応じて、試料容器110は試料容器収容部101内の方向へも徐々に深く押し込まれていく。
【0051】
さらに、試料容器110を試料容器蓋の方向指示マーク124の先が試料容器収容部101の真下にある収容時位置指示マーク108にちょうど対向する位置まで右向きに回転させると、係合用突起部106はガイド溝116の第3区間116c内を移動して、図10(d)に示すような位置関係に達して停止する。
【0052】
このように、係合用突起部106が、ガイド溝116の第3区間116c内を移動してその終端で停止し、その状態で試料容器110が試料容器収容部101内に保持されるので、試料容器110は常に正確な向きとなる。これにより、測定誤差の発生を極力回避することができる。また、試料容器110が試料容器収容部101内に収容された状態で防水を兼ねるようにすることで、部品点数が削減される。
【0053】
<水質測定器1による水質測定方法>
通常時の水質測定は、試料容器110が試料容器収容部101内に収容されて水質測定器本体100と一体化した状態で行う。まず、試料容器蓋120を開けてから試料容器本体111の内部に試料水を入れ、試料容器蓋120を再び閉じる。この後、モード切替ボタン103bで測定モードを選択してから、測定ボタン103dを操作すれば、選択された測定モードに対応する水質測定が実行され、その結果が液晶表示部102に表示される。測定が終われば、試料容器蓋120を開けてから水質測定器1を傾けることにより、試料水を排出することができる。
【0054】
このような使用方法によれば、試料容器本体111は試料容器収容部101内に収容されたままなので、試料容器本体111の表面が汚れたり濡れたりすることが避けられ、水質測定の誤差の発生も回避される。また、水質測定器1の持ち運び時にもケースなどを特に必要としないので、取り扱い性にも優れている。
【0055】
なお、測定状況によっては、試料容器110を水質測定器本体100から分離させた状態で試料容器110の試料容器蓋120を開けてから試料容器本体111の内部に試料水を入れ、試料容器蓋120を再び閉じた後に試料水が入った試料容器110を上述のように試料容器収容部101内に収容してから水質測定を実行してもよい。
【0056】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る水質測定器の斜視図である。
【図2】図1の水質測定器の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図をそれぞれ示している。
【図3】本実施形態の水質測定器本体の斜視図である。
【図4】本実施形態の水質測定器本体の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図、(f)は(c)の内部機構を省略した4f−4f断面図をそれぞれ示している。
【図5】本実施形態の試料容器の斜視図である。
【図6】本実施形態の試料容器の構成を示す説明図である。
【図7】本実施形態の試料容器本体の6面図および断面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図、(g)は(c)の7g−7g断面図、(h)は(c)の7h−7h断面図をそれぞれ示している。
【図8】本実施形態の試料容器蓋の6面図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図をそれぞれ示している。
【図9】本実施形態の試料容器を水質測定器本体の試料容器収容部に収容する操作の説明図である。
【図10】本実施形態の試料容器を水質測定器本体の試料容器収容部に収容する操作において、試料容器のガイド溝と試料容器収容部の係合用突起部の相対的な位置関係の変化を示す説明図であり、(a)は係合用突起部がガイド溝に侵入する前を、(b)は係合用突起部がガイド溝にまっすぐに侵入して当たり位置で一時停止したときを、(c)は係合用突起部がガイド溝の斜めの部分を移動した後を、(d)は係合用突起部がガイド溝の終端に達したときをそれぞれ示している。
【図11】従来技術による携帯型の水質測定器の一例であり、(a)は水質測定器本体を示し、(b)はそれに用いられる試料容器を示している。
【図12】図11の水質測定器本体の試料容器収容部に試料容器が収容された状態を示している。
【図13】従来技術による携帯型の水質測定器の他の例であり、水質測定器本体およびそれに用いられる試料容器を示している。
【符号の説明】
【0058】
1 水質測定器
100 水質測定器本体
101 試料容器収容部
102 液晶表示部
103a 電源ボタン
103b モード切替ボタン
103c 校正ボタン
103d 測定ボタン
104 電池室蓋
105 ネジ
106 係合用突起部
107 逆挿入防止突起部
108 収容時位置指示マーク
109 挿入時位置指示マーク
110 試料容器
111 試料容器本体
112 試料容器下部
113 試料容器上部
114 グリップ部
115 蓋連結部
115a 蓋連結用穴
116 ガイド溝
116a 第1区間
116b 第2区間
116c 第3区間
117 凹部
118 方向指示マーク
119 逆挿入防止部
120 試料容器蓋
121 連結部
121a 連結用突起
122 折れ曲がり部
122 つまみ部
124 方向指示マーク
125 封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水を入れる試料容器本体とこの試料容器本体の開口部を塞ぐことが可能な試料容器蓋とを有する試料容器と、
この試料容器を着脱自在に嵌合させる試料容器収容部を有する水質測定器本体とを備え、
前記試料容器を前記試料容器収容部に収容する場合に前記試料容器を所定向きに位置決めして保持する係合機構が設けられていることを特徴とする水質測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の水質測定器において、
前記係合機構として、前記試料容器収容部に係合部が設けられるとともに、この係合部と互いに係合する被係合部が前記試料容器に設けられていることを特徴とする水質測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の水質測定器において、
前記試料容器本体は、円筒状で底が平らな試料容器下部と、この試料容器下部の上側につながる径のより大きな円筒状の試料容器上部とからなる2段構造に構成されており、
この試料容器上部に前記被係合部が設けられていることを特徴とする水質測定器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水質測定器において、
前記被係合部は、前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合に前記試料容器が前記試料容器収容部に当接する面に形成された少なくとも1つのガイド溝であり、
前記係合部は、前記ガイド溝にそれぞれ対向する位置に形成された前記ガイド溝と同数の突起部であることを特徴とする水質測定器。
【請求項5】
請求項4に記載の水質測定器において、
前記ガイド溝は、前記試料容器を前記試料容器収容部に収容するときに前記突起部が前記ガイド溝内に侵入できるように前記試料容器の下方向に開いて形成されている第1区間と、この第1区間に隣接するとともに前記試料容器の下方向に対して徐々に遠ざかるように斜め方向に形成されている第2区間と、この第2区間に隣接するとともに前記試料容器の下方向と直交する方向に形成されておりその終端が閉じている第3区間とを有することを特徴とする水質測定器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記試料容器を前記試料容器収容部に嵌合させる際に、前記試料容器の適切な向き以外では前記試料容器収容部に完全に嵌合させられないようにする誤嵌合防止機構が設けられていることを特徴とする水質測定器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合でも、前記試料容器本体の前記開口部は前記試料容器収容部の外部に面していることを特徴とする水質測定器。
【請求項8】
請求項7に記載の水質測定器において、
前記試料容器蓋は前記試料容器本体の前記開口部に開閉自在に連結されていることを特徴とする水質測定器。
【請求項9】
請求項8記載の水質測定器において、
前記試料容器蓋は前記試料容器本体から脱着可能であることを特徴とする水質測定器。
【請求項10】
請求項8または9に記載の水質測定器において、
前記試料容器を前記試料容器収容部に嵌合させる際の前記試料容器の適切な向きを示すマークが、前記試料容器本体および前記試料容器蓋のいずれにも設けられていることを特徴とする水質測定器。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記試料容器の開口部外周にローレット構造を有するグリップ部が形成されており、
前記試料容器が前記試料容器収容部に収容された場合でも、このグリップ部は前記試料容器収容部の外部に出ていることを特徴とする水質測定器。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記試料容器本体の材質は透明の樹脂であることを特徴とする水質測定器。
【請求項13】
請求項12記載の水質測定器において、
前記試料容器本体の材質は透明のプラスチックであることを特徴とする水質測定器。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記試料容器蓋の材質は柔軟性を有する樹脂であることを特徴とする水質測定器。
【請求項15】
請求項14記載の水質測定器において、
前記試料容器蓋の材質はエラストマーであることを特徴とする水質測定器。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記水質測定器は、濁度を測定する濁度計であることを特徴とする水質測定器。
【請求項17】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記水質測定器は、色度を測定する色度計であることを特徴とする水質測定器。
【請求項18】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記水質測定器は、濁度および色度を測定する濁色度計であることを特徴とする水質測定器。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1項に記載の水質測定器に用いられる試料容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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