説明

水質測定器および水質測定方法

【課題】浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった水質項目のうちで特に有効なBODなどの水質項目について連続的かつ詳細な測定を可能とするとともに、簡単な構成で低価格および小型化などを実現可能な水質測定器を提供する。
【解決手段】試料水の所定の水質項目を光学的に連続測定可能であってその測定結果を出力する光学的水質測定部2と、測定対象の種類に応じた演算パラメータの記憶および読み出しが可能な記憶部4と、光学的水質測定部2から出力される測定結果と、測定対象に応じて記憶部4から読み出された演算パラメータとに基づいて演算を行い、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を出力する演算部3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質測定器および水質測定方法に関し、特に、浄化槽の処理機能の評価などに好適な水質測定器および水質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な水環境を実現するため、下水道とともに浄化槽の普及が進んでいる。それに伴い、処理水の水質を高く維持しやすい浄化槽(例えば、特許文献1参照。)、保守点検の作業性を向上させた浄化槽(例えば、特許文献2参照。)、さらに、広域に散在する家庭用浄化槽の状況を常に監視するとともに家庭内敷設電話回線を利用して浄化槽の異常を自動的に通報するシステム及びその方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0003】
我が国では、浄化槽は浄化槽法によって、使用開始から6ヶ月経過後の2ヶ月の間に行う水質に関する検査(7条検査)およびその後の年1回の定期的な検査(11条検査)などが義務付けられている。これらの検査項目としては、設置場所において設置状態を観察するとともに浄化槽内部を目視することなどによる外観検査や、水質イオン濃度、汚泥沈殿率、溶存酸素量、透視度、塩素イオン濃度、残留塩素濃度、生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand:以下では「BOD」と記す)についての水質検査、さらに保守点検および清掃の記録並びに前回検査の記録等を参考とする書類検査がある。それ以外にも、定期的な保守点検や清掃などが必要である。
【0004】
通常、浄化槽の処理水はBODで性能が評価される。BODの測定には、一般に希釈法と呼ばれる方法が用いられるが、この方法は、試料を希釈水で希釈し、溶存酸素を飽和させた状態で、20℃で5日間放置した時の溶存酸素の消費量から求めるというものである。しかし、その測定には5日間という長時間を要する上、非常に複雑で高度な熟練技術などが必要とされるため、現場で行うことは困難である。また、BODの測定を簡易、迅速に、精度良く行うことを可能とするBODの測定方法及び測定装置も提案されているものの(例えば、特許文献4参照。)、この特許文献4が開示している測定装置には積分球が用いられるなど、構成が複雑で高価になると考えられる上、この測定方法についても複雑な工程が必要とされている。少なくとも、家庭用や小規模な浄化槽の保守点検などに用いるには好適とは言えない。
【0005】
そのため、このような浄化槽の保守点検では、処理水を採取してその透視度等からBODを予測したり処理機能を評価することが一般的に行われている。しかし、透視度は、処理方法や流入汚水の違いによる処理水中のSS(Suspended Solid:浮遊物質)粒子の違い、及び測定者や測定時の照度といった測定条件の影響により誤差を生じることがある。
【0006】
一方、SSはBOD値に大きく影響すると考えられ、浄化槽の処理機能を評価するのに有効な測定項目である。また、SSを測定するために透過光方式や散乱光方式などの光学的な測定方法を用いた測定機器も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。このようなSS測定機器は既に市販されており、例えば、浄化槽毎の流出水のSSを連続的に測定することも可能である。
【特許文献1】特開平9−29276号公報
【特許文献2】特開2000−185291号公報
【特許文献3】特開平9−75964号公報
【特許文献4】特開2004−156912号公報
【特許文献5】特開平11−83741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浄化槽の保守点検頻度は10人槽以下では4ヶ月に1回程度であり、下水道の常駐管理と比較すると、少ない保守点検結果から処理機能の変化を推測し、機器の調整をしなくてはならない。
【0008】
保守点検前後の水質変動を把握することができれば、より精度の高い保守点検が可能になるものと考えられる。一部の項目、例えば、濁りの程度やSSなどであれば、上述のように連続的な測定は可能である。しかし、その他の項目、特に浄化槽の処理水の性能評価の上でより重要なBODなどは、処理水の採取による測定方法にほぼ限られてしまうため、保守点検前後における水質変動の連続的で詳細な把握は容易ではない。
【0009】
上述の特許文献3には、浄化槽の状況を常に監視するシステムが提案されているものの、各水質項目について連続的に測定を行う機器の具体的で詳細な構成は開示されていない。BODについては特に言及もされていない。
【0010】
もっとも、浄化槽の保守点検項目の全てを何らかの自動測定装置により検知し、変動を把握することは、技術的に不可能というわけではない。しかし、そのような自動測定装置は大掛かりで高価なものとならざるを得ず、家庭用や小規模な浄化槽の保守点検などに利用することはあまり現実的ではなかった。
【0011】
従来技術のこのような課題に鑑み、本発明の目的は、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった水質項目のうちで特に有効なBODなどの水質項目について連続的かつ詳細な測定を可能とするとともに、簡単な構成で低価格および小型化などを実現可能な水質測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の水質測定器は、試料水の所定の水質項目を光学的に連続測定可能であってその測定結果を出力する光学的水質測定部と、測定対象の種類に応じた演算パラメータの記憶および読み出しが可能な記憶部と、前記光学的水質測定部から出力される測定結果と、測定対象に応じて前記記憶部から読み出された演算パラメータとに基づいて演算を行い、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を出力する演算部とを備えることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記所定の水質項目としては、例えば、試料水の濁りの程度が挙げられるが、定量的に測定できればよく、濁度のように基準が明確なものに限るわけではない。光学的な測定としては、例えば、近赤外線を用いる透過光方式または散乱光方式などが挙げられる。前記他の水質項目としては、例えば、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった生物化学的酸素要求量(BOD)が挙げられる。前記演算パラメータは、例えば、浄化槽の種類に応じたデータが挙げられ、より具体的には、例えば、浄化槽の種類毎に前記光学的水質測定部による測定結果と前記他の水質項目の実測値とから回帰分析によって求めた回帰係数である。
【0014】
この発明の水質測定器によれば、試料水の濁りの程度などの所定の水質項目を光学的に連続測定した結果から演算によって、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を求めることができる。これにより、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった生物化学的酸素要求量(BOD)などの連続的な測定が可能となる。保守点検前後の水質変動などを詳細に把握できることで、より精度の高い保守点検や妥当性評価が可能になり、浄化槽の各部調整もより適切に行えるようになる。また、長期間に亘る水質変動の記録も可能となるので、浄化槽の処理機能の計時変化を把握できたり、運転調整や清掃計画立案などにも貴重な情報となったりする。さらに、前記所定の水質項目の測定用の既存技術がほぼそのまま活用できるので、簡単な構成で低価格および小型化などを図ることが可能になる。
【0015】
あるいは、上記目的を達成するため、本発明の水質測定方法は、測定対象の種類に応じた演算パラメータが予め記憶された記憶部から実際の測定対象に対応する演算パラメータを読み出す演算パラメータ読み出し工程と、試料水の所定の水質項目を光学的に測定してその測定結果を出力する光学的水質測定工程と、この光学的水質測定工程で測定された測定結果と、前記演算パラメータ読み出し工程で読み出された演算パラメータとに基づいて、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を演算する演算工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
この発明の水質測定方法によれば、試料水の濁りの程度などの所定の水質項目を透過光方式または散乱光方式で連続的に測定した測定結果から演算によって、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を求めることができる。これにより、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった生物化学的酸素要求量(BOD)などの連続的な測定が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水質測定器によれば、試料水の濁りの程度などの所定の水質項目を透過光方式または散乱光方式で連続的に測定した測定結果から演算によって、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を求めることができる。これにより、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった生物化学的酸素要求量(BOD)などの連続的な測定が可能となる。保守点検前後の水質変動などを詳細に把握できることで、より精度の高い保守点検や妥当性評価が可能になり、浄化槽の各部調整もより適切に行えるようになる。また、長期間に亘る水質変動の記録も可能となるので、浄化槽の処理機能の計時変化を把握できたり、運転調整や清掃計画立案などにも貴重な情報となったりする。さらに、前記所定の水質項目の測定用の既存技術がそのまま活用できるので、簡単な構成で低価格および小型化などを図ることが可能になる。
【0018】
また、本発明の水質測定方法によれば、試料水の濁りの程度などの所定の水質項目を透過光方式または散乱光方式で連続的に測定した測定結果から演算によって、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を求めることができる。これにより、浄化槽の処理水の性能評価の上で重要でありながら従来技術では連続的な測定が困難であった生物化学的酸素要求量(BOD)などの連続的な測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
<SSおよびBOD測定用の水質センサー1の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るBOD測定用の水質センサー1の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、この水質センサー1は、試料水の濁りの程度を光学的に測定してその測定結果を出力する濁り測定部2と、各種の浄化槽に関する浄化槽データ5を含む様々なデータや情報の記憶および読み出しが可能な記憶回路4と、濁り測定部2および記憶回路4を制御するとともに濁り測定部2から出力される測定結果と記憶回路4から読み出される浄化槽データ5に基づいてBODの推定値を演算する制御・演算回路3とを備えている。また、制御・演算回路3は外部機器との通信によってBOD推定値の出力が可能であるとともに、外部機器からその制御の切り替えなどが可能となっている。なお、外部機器からの制御の切り替えによって、SSなどの他の推定値を演算させてそれを出力可能としてもよい。
【0022】
ここで、濁り測定部2は、例えば、既に市販されている透過光方式のSS測定計と同様に、近赤外線を投光する投光素子と、この投光素子からの光を直接受光する基準光受光素子と、前記投光素子からの近赤外線を測定対象である試料水中に照射する投光用光学系と、この投光用光学系から照射され試料水中を透過してきた近赤外線を集光する受光用光学系と、この受光用光学系によって集光された近赤外線を受光する受光素子とを有しており、これらによって試料水の濁りの程度を測定できる。また、このような光学式の測定方法を採用することで、連続的な測定を可能としている。なお、前記投光用光学系および前記受光用光学系それぞれの試料水に接する面は、試料水中の浮遊物などで汚れやすく測定に影響を与え得るため、自動洗浄用ワイパーなどを設けることが望ましい。
【0023】
制御・演算回路3としては、例えば、ワンチップマイコンなどが挙げられるが、これに限るものではない。記憶回路4としては、例えば、不揮発メモリなどが挙げられるが、これに限るものではない。演算回路3自体が不揮発メモリなどを有していれば、それを利用してもよい。なお、制御・演算回路3で行われる演算内容や浄化槽データ5についての詳細は後述する。
【0024】
<浄化槽10の概略構成>
図2は、水質センサー1の使用される例としての浄化槽10の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
この浄化槽10はいわゆる小型合併処理浄化槽タイプのものであり、図2に示すように、外部から流入管P1を通して流入する汚水中の固形物などを嫌気ろ床(プラスチック等のろ材を充填して形成したろ床)によって分離する嫌気ろ床槽11と、この嫌気ろ床槽11で処理された水が移送管P2を通して流入するとともに、残存している微細なSSや溶解性有機物質を微生物による生物吸着・酸化作用によって除去する二次処理槽12と、この二次処理槽12で処理された水が移送管P3を通して流入するとともに、次亜塩素酸カルシウム系や塩素化イソシアヌル酸系などの塩素剤で発生させた塩素を接触させることで消毒を行い、放流管P4を通して水を外部に放流する消毒槽13とを備えている。
【0026】
ここで、このような浄化槽10としては、例えば、流量調整型嫌気ろ床担体流動循環生物濾過方式(以後は「A型」と記す)、流量調整型担体流動接触ばっ気循環方式(以後は「B型」と記す)、流量調整型嫌気ろ床担体流動・生物濾過循環方式などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0027】
なお、この浄化槽10の処理水の性能評価のためには、嫌気ろ床槽11と二次処理槽12との間の移送管P2か、二次処理槽12と消毒槽13との間の移送管P3のいずれかか、あるいは移送管P2および移送管P3の両方で水質を測定することが考えられる。
【0028】
<SSやBODとSS測定値との関係>
図3は、市販されているSS測定計による計測値と実際のSS値との関係を示すグラフであり、(a)はA型浄化槽の例を示し、(b)はB型浄化槽の例を示す。ここで、このSS測定計は、試料水の濁りの程度を透過光方式で光学的に測定し、その測定結果に基づいてSSの計測値を算出するものである。またこれらのグラフでは、縦軸が実際のSS値で、横軸がSS測定計による計測値であり、測定毎の各データ(丸い点)の散布図に回帰分析で求めた線形近似式を重ねて表示している。
【0029】
A型浄化槽では、図3(a)に示すように、縦軸をy、横軸をxとすると(以下も同様)、yとxとの関係を示す線形近似式は、
y=1.25x
となり、このときの相関係数rは0.910と高い値を示した。
【0030】
B型浄化槽では、図3(b)に示すように、yとxとの関係を示す線形近似式は、
y=1.07x
となった。A型浄化槽の場合とは回帰係数は多少異なるものの、相関係数rは0.924とやはり高い値を示した。
【0031】
図4は、市販されているSS測定計による計測値と実際のBOD値との関係を示すグラフであり、(a)はA型浄化槽の例を示し、(b)はB型浄化槽の例を示す。なお、これらのグラフでは、縦軸が実際のBOD値で、横軸がSS測定計による計測値であり、測定毎の各データ(丸い点)の散布図に回帰分析で求めた線形近似式を重ねて表示している。
【0032】
A型浄化槽では、図4(a)に示すように、縦軸をy、横軸をxとすると、yとxとの関係を示す線形近似式は、
y=1.74x
となり、このときの相関係数rは0.837と高い値を示した。
【0033】
B型浄化槽では、図4(b)に示すように、yとxとの関係を示す線形近似式は、
y=1.30x
となった。A型浄化槽の場合とは回帰係数は異なるものの、相関係数rは0.781とやはり高い値を示した。
【0034】
<浄化槽データ5、制御・演算回路3で行われる演算内容>
図3や図4と同様の報告は過去にもなされているが、SS測定計による計測値と実際のSS値およびBOD値の相関がそれぞれ強いことと、このような関係に基づいて試料水の濁りの程度を透過光方式で光学的に測定した測定結果から実際のBOD値を推定することもある程度可能であることが改めて確認できた。
【0035】
しかしながら、浄化槽の処理方式によっては、SS測定計による計測値と実際のSS値との関係、あるいはSS測定計による計測値と実際のBOD値との関係において回帰係数がそれぞれ異なることも同時に明らかになった。回帰係数が異なる原因としては、過去の報告では、処理方式によって試料水中の固形物の性状(粒径など)が異なり、その透過特性が異なるためではないかと考えられている。
【0036】
そこで、浄化槽の処理方式や型式毎に異なるデータを予め実験などによって求め、試料水の濁りの程度と実際のBOD値との関係における回帰係数などの演算パラメータを計算し、その結果を上述の水質センサー1の記憶回路4に浄化槽データ5として記憶させておく。できれば、具体的な浄化槽毎(メーカー、型式など)に浄化槽データ5を記憶させておくことがより望ましい。これにより、水質測定を行っている浄化槽を制御・演算回路3が正しく認識できれば、その浄化槽に対応する演算パラメータを記憶回路4の浄化槽データ5から読み出し、濁り測定部2から出力される測定結果に対して上述のような線形近似式に従う簡単な演算を行うことにより、BODの推定値を得ることができる。同様にして、SSの推定値を得られるようにしておくことも可能である。
【0037】
図5は、本実施形態に係る水質センサー1の制御・演算回路3で行われる演算内容の概略を示すフローチャートである。
【0038】
まず、測定対象となる浄化槽が指定される(ステップS51)。具体的には、例えば、外部機器からの通信によって指定を行うようにしてもよいし、あるいは、水質センサー1にディップスイッチのような操作部材を設けてそれによって指定を行うようにしてもよい。ただし、これらの方法に限るものではない。
【0039】
次に、指定された浄化槽に対応する演算パラメータが記憶回路4の浄化槽データ5から読み出される(ステップS52)。
【0040】
次に、濁り測定部2による濁り測定が実行される(ステップS53)。
【0041】
次に、ステップS53で得られた濁り測定値とステップS52で読み出された演算パラメータからBOD推定値が演算される(ステップS54)。
【0042】
次に、ステップS54で演算されたBOD推定値が、外部機器との通信によって出力される(ステップS55)。
【0043】
次に、測定を続行するか否かの判定が行われ(ステップS56)、続行する場合はステップS53に戻り、続行しない場合は終了する。
【0044】
なお、記憶回路4内に浄化槽データ5のための十分な領域を確保するとともに、浄化槽データ5の構成を後から拡張可能なデータ型式としてもよい。例えば、浄化槽のメーカーや型式に対応する識別情報と回帰係数などをセットにして記憶するようにして、記憶するセット数の上限は十分大きな数にしておく。そして、水質センサー1が出荷された後も、外部機器側からの通信によって浄化槽データ5の書き換えを可能としておけば、新しい浄化槽にも随時対応が可能となる。あるいは、記憶回路4内に浄化槽データ5のための最低限の領域のみを確保しておき、実際の測定対象となる浄化槽のデータのみを外部機器側から最初に書き込んで使用するような方式を採用してもよい。
【0045】
また、制御・演算回路3を外部からプログラムを書き換え可能なタイプのワンチップマイコンで構成しておけば、演算アルゴリズムも後から変更が可能になる。これにより、測定精度のさらなる向上なども実現可能となる。
【0046】
以上で説明した本実施形態の構成によれば、従来技術では大掛かりで高価な測定装置によらなければ連続的に測定できなかったBODを、簡単な構成による安価で小型化も可能な測定器で測定可能とする。大きさの面でも家庭用や小規模な浄化槽に組み込むことも可能となる。長期間に亘って測定データを記録するようにすれば、現在の浄化槽水質の変動傾向が把握でき、汚水の流入状況を推測することも可能である。また、保守点検作業者が処理機能を評価し、今後の運転調整や清掃の計画を立案するうえで重要な情報になる。
【0047】
さらに、量産化によってコストダウンが進めば、上述のような浄化槽に予め内蔵することも現実的となり、浄化槽全体の最適な制御を行って処理性能の向上と消費エネルギーの削減などを図ることも可能となる。
【0048】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るBOD測定用の水質センサーの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の水質センサーが使用される例としての浄化槽の概略構成を示すブロック図である。
【図3】市販されているSS測定計による計測値と実際のSS値との関係を示すグラフであり、(a)はA型浄化槽の例を示し、(b)はB型浄化槽の例を示す。
【図4】市販されているSS測定計による計測値と実際のBOD値との関係を示すグラフであり、(a)はA型浄化槽の例を示し、(b)はB型浄化槽の例を示す。
【図5】図1の水質センサーの制御・演算回路で行われる演算内容の概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 水質センサー
2 濁り測定部
3 制御・演算回路
4 記憶回路
5 浄化槽データ
10 浄化槽
11 嫌気ろ床槽
12 二次処理槽
13 消毒槽
P1 流入管
P2 移送管
P3 移送管
P4 放流管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料水の所定の水質項目を光学的に連続測定可能であってその測定結果を出力する光学的水質測定部と、
測定対象の種類に応じた演算パラメータの記憶および読み出しが可能な記憶部と、
前記光学的水質測定部から出力される測定結果と、測定対象に応じて前記記憶部から読み出された演算パラメータとに基づいて演算を行い、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を出力する演算部とを備えることを特徴とする水質測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の水質測定器において、
前記所定の水質項目は、濁りの程度であることを特徴とする水質測定器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水質測定器において、
前記他の水質項目は、生物化学的酸素要求量であることを特徴とする水質測定器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水質測定器において、
前記演算パラメータは、浄化槽の種類に応じたデータであることを特徴とする水質測定器。
【請求項5】
請求項4に記載の水質測定器において、
前記演算パラメータは、浄化槽の種類毎に前記光学的水質測定部による測定結果と前記他の水質項目の実測値とから回帰分析によって求めた回帰係数であることを特徴とする水質測定器。
【請求項6】
測定対象の種類に応じた演算パラメータが予め記憶された記憶部から実際の測定対象に対応する演算パラメータを読み出す演算パラメータ読み出し工程と、
試料水の所定の水質項目を光学的に測定してその測定結果を出力する光学的水質測定工程と、
この光学的水質測定工程で測定された測定結果と、前記演算パラメータ読み出し工程で読み出された演算パラメータとに基づいて、前記所定の水質項目と相関が強い他の水質項目の推定値を演算する演算工程とを備えることを特徴とする水質測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−125930(P2006−125930A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312495(P2004−312495)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】