説明

水陸両用車用の推進システム

水上を滑走することのできる図1に係る水陸両用車(10)は、原動機(20)と、動力伝達手段(30)と、水上推進手段(40)と、陸上推進手段(50)とを備えた推進システムを有する。車(10)は水上モードまたは陸上モードで作動可能である。陸上および水上で共通制御装置が使用される。操舵制御走行は各モードで同一とすることができる。動力は、水上モード時には水上推進手段に、陸上モード時には水上推進手段と陸上推進手段の両方に伝達される。陸上および水上推進手段の間の動力伝達比率は、陸上モード時に変動することができる。推進制御手段(60)は電子処理手段および/または電気的、機械的、油圧式、もしくは電子機械的作動装置、またはそれらのいずれかの組合せとすることができる。原動機(20)は内燃機関、電気モータ、燃料電池、ハイブリッドエンジン、またはそれらのいずれかの組合せとすることができる。伝達手段は機械的、電気的、または油圧式とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進システムに関し、特に、水陸両用車用の推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
当業界で周知の専用の陸上車および水上の場合、動力発生、伝達、およびその制御のために使用される装置は充分に開発されている。しかし、水陸両用車には、これに関してきわめて独特な問題および考慮すべき事項がある。水上および陸上推進手段の両方を使用し、水上および陸上モードの両方で車の制御および性能を最適化し、かつ水上モードと陸上モードとの間の移行およびその逆の移行に応じる必要がある。これは矛盾する要件を呈し、専用の先行技術システムは水陸両用車の要件にうまく適さず、既知の専用システムを単純に合体することによって水上および陸上性能の両方を最適化することは不可能である。
【0003】
過去において、水陸両用車の設計者は彼らの努力を水上または陸上性能のいずれかを最適化することに集中させた。この集中の結果、満足な陸上性能をもたらすために水上性能が犠牲にされるか、その逆のいずれかであった。対照的に、本願の出願人は、最適化された陸上および水上性能を有する水陸両用車を設計することを選んだ。この目的のために、出願人は本発明に係る推進システムに到達するにあたって、従来の考え方は取らなかった。
【0004】
特に、出願人は、水陸両用車が水上モードで作動するときには、動力を発生して水上推進手段のみに伝えるが、陸上モード(該モードは入水および出水、つまり両モードの切替えを含む)で作動するときには 水上および陸上推進手段の両方に(均等に、または選択的可変比率で)伝える推進システムを持つことが望ましいことに気付いた。車が入水するやいなや水上推進(一般的にジェット推力)および陸上推進(一般的に車輪の回転)の両方が車に動力を供給するために利用できるので、これは、入水が迅速かつ制御可能に達成されることを確実にする。さらに、入水時および出水時の両方で、水上操舵(一般的にジェット駆動操舵ノズルによる)および路上操舵(一般的に操舵前輪による)の両方が、車を操舵するために利用可能である。
【0005】
入水後に水上駆動を意識して選択しなければならない先行技術の水陸両用車では、水上推進および操舵の利用可能性を達成するのに遅延が生じ、入水時の制御の不確実性を導くことがあり得る。これは、車の操作者が予想外のまたは強い水流、風の影響、水面下の障害物、および/または他の海上交通に対処することを難しくするおそれがある。
【0006】
同様に、水から陸への移動時に、出水する前に水上推進を停止しなければならない場合、車両を前方に駆動するために、陸上推進、一般的に路上用車輪の回転しか利用可能できず、水上操舵は無い。これは運転者の制御をひどく制限し、また結果的に低速前進となる。水上操舵の利用可能性は、例えば流れの速い川または海岸の浅瀬の斜路に接近するときに、特に重要である。水上推進器またはジェットは、操舵前輪の効果がほとんど無いときに、車の位置を川の浅瀬の固定点に対して維持することのできるベクトル化推力を、水中で送り出すために有利に利用することができる。
【0007】
滑走水陸両用車は、水上におけるそれらの高い速度のため、排水車(displacement vehicle)よりかなり高い魅力を有する。しかし、効果的に滑走するには、船首が水から上に起き上がり、かつ船尾が水中に沈むことを確実にするために、それらは後方重量偏位をもたなければならない。斜路に接触する最初の車輪が出水する動力を車に供給させることを確実にするために、後方重量偏位が前輪駆動と組み合わされると、WO02/12005として公開された出願人の同時係属出願に記載するように、結果的に生じる路上取扱い性が多少予想できなくなる。したがって、滑走水陸両用車には後輪駆動が好ましい。そのような車の設計者は、出水する最初の車輪は駆動されないので、水上駆動の利用可能性が、制御された出水を達成するのに特に有用であることを認識しなければならない。
【0008】
上記考慮事項の全てが、最適化された陸上および水上性能を有する水陸両用車を設計するのに重要である。そのような車が路上走行車市場全体の有意の占有率を占めたことはないので、そのような車のほとんどの所有者および操作者は、以前にそのような車両を運転したことは無いであろうと思われる。彼らは路上走行車および水上車の両方の操作に別個にすでに熟練しているかもしれないが、これらの二つのモードを切り替えるように設計された車は、きわめて新規の態様を呈する。特に陸上から水中へ及びその逆に駆動する今までにない経験において、新しい操作者が車に安心感を持つのに役立つ従来の水陸両用車制御システムの変更は、前記操作者が新しい輸送手段に安心感を持つのを助けるのに大きい価値を有すると思われる。冷静沈着な車の操作者は、新しい経験に不安な気持ちで順応しようとし、どのように対処すべきか確信していない操作者より、車を安全に制御する可能性が高い。陸上および水上モードの両方でできるだけ同様の制御入力を必要とし、かつ同一制御効果を有する陸上および水上車制御システムの利用可能性は、車の操作者が車の制御に自信を持つのを助けるのに重要なステップである。さらに、大部分の制御装置が最近の操作中に確立されたものと同様に働く、陸上から水中へおよびその逆に駆動する「重複」期間は、車の操作者が自信を持って安全に車を制御することを助ける。
【0009】
水上駆動の切離しを含む水上モードから陸上モードへの完全切替えおよびその逆を提供する先行技術の水陸両用車の慣行は、初心者の操作者による使い易さを考慮するよりむしろ、車モードの分離についての技術者の理解に基づいており、これが(推進器の接地を回避するために水から出る前に水上推進手段を機械的に後退させることを必要とする、バートレット(Bartlett)の米国特許第3,903,831号およびコバッチ(Kovac)の米国特許第4,802,433号の場合のように)先行技術のシステムに影響を及ぼしてきたことが示唆される。
【特許文献1】米国特許第3,903,831号
【特許文献2】米国特許第4,802,433号
【0010】
また、本発明の場合のように、水上駆動が永久係合される場合、水上分離装置およびその関連制御装置のコスト、重量、嵩、および複雑さが回避されることにも注目すべきである。これらの要素は、水陸両用車の路上および水上モードの両方における欠点である。永久係合水上駆動の追加の「フライホイール効果」は、陸上で駆動すると特定の条件下で欠点になるかもしれないが、水から出るときは、水中の通過の高い水抵抗が空気中の通過の低い空気抵抗に切り替わるときに、予想外の急速な加速を抑制するのにも役立つことができる。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、第一態様で、
原動機と、
水上推進手段と、
陸上推進手段と、
動力伝達手段と、を備えた水陸両用車用の推進システムであって、
該水陸両用車は、水上モードまたは陸上モードのどちらでも作動可能であり、動力伝達手段が原動機から動力を伝達するときには、前記車が水上モードまたは陸上モードのどちらで作動するかに関係なく、伝達される動力は常に水上推進手段に伝達され、それによって
前記車が水上モードで作動するときに、動力伝達手段は原動機から水上推進手段のみに動力を伝えることができ、かつ
前記車が陸上モードで作動するときに、動力伝達手段は原動機から水上推進手段および陸上推進手段の両方に動力を伝えることができる、推進システムを提供する。
【0012】
車が水上モードで作動する場合、水上推進手段は、車が滑走するのに充分な流体力学的揚力が達成される速度まで車を付勢することができることが好ましい。
【0013】
陸上モードは、車の入水および車の出水を含むことが好ましい。
【0014】
水陸両用車は陸上モードが作動するとき、動力伝達手段は原動機から水上推進手段および陸上推進手段の両方に、均等にまたは選択的可変比率で、動力を同時に伝えることができることが好ましい。
【0015】
推進システムは、原動機から陸上推進手段への動力の伝達を選択的に分離および/または制御するための分離手段を備えることが好ましい。
【0016】
推進システムは、原動機、水上推進手段、陸上推進手段、および動力伝達手段の各々のすべての調整可能なパラメータを制御するための制御手段を備えることが好ましい。制御手段は、特に電子処理手段および/または電気的、機械的、油圧式、もしくは電気機械的作動装置、またはそれらの任意の組合せを含むことがさらに好ましい。制御手段は車の運転者が少なくとも部分的に利用可能であり、運転者が少なくとも原動機の始動および停止、水上または陸上モード、車の操舵、ギヤ選択、および車の速度を選択または制御できることが好ましい。水上および陸上モードの両方で車の速度は、運転者が単一の速度制御装置を使用することによって制御することが好ましい。水上および陸上モードの両方で車の方向は、運転者が単一の操舵制御装置を使用することによって制御することが好ましい。さらに、水上および陸上モードの両方で車のギヤボックスは、運転者が単一のギヤチェンジ/選択制御装置を使用することによって制御することが好ましい。
【0017】
推進システムの原動機は、火花点火内燃エンジン、圧縮点火内燃エンジン、電気モータ、燃料電池、またはハイブリッドエンジンのいずれか一つまたはそれらの組合せを含むことが好ましい。
【0018】
推進システムの水上推進手段は、一つまたはそれ以上のジェット駆動装置を含むことが好ましい。
【0019】
推進システムの陸上推進手段は一つまたはそれ以上の駆動可能な車輪を含むことが好ましい。
【0020】
動力伝達手段は原動機と一体であることが好ましい。動力伝達手段は、原動機からの動力を前記水上推進手段へ伝達するための水上動力伝達手段と、前記原動機からの動力を前記陸上推進手段へ伝達するための陸上動力伝達手段とを含むことが好ましい。水上および陸上動力伝達手段は同一種類であることが好ましい。代替的に、水上および陸上動力伝達手段は異なる種類である。
【0021】
水上および/または陸上動力伝達手段は機械的であることが好ましい。機械的動力伝達手段は、手動もしくは自動ギヤボックス、または水上および陸上推進手段に駆動力を(駆動軸を介して)提供するための連続可変伝達装置であることが好ましい。
【0022】
代替的に、水上および/または動力伝達手段は油圧式である。油圧式動力伝達手段は、油圧動力(油圧管路を介して伝達される)を発生するための一つまたはそれ以上の油圧ポンプと、水上および/または陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の油圧モータとを含むことが好ましい。
【0023】
代替的に、水上および/または動力伝達手段は電動である。電動式伝達手段は、電力(ワイヤ/ケーブルを介して伝達される)を発生するための、交流発電機とすることのできる一つまたはそれ以上の発電機と、水上および/または陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の電気モータとを含むことが好ましい。
【0024】
原動機は水陸両用車の中央または後部に配置されることが好ましい。原動機は、重心が長さ4.6mないし5.0mの水陸両用車の後部から1.5mから1.6mの間に位置するように配置されることがさらに好ましい。重心は、長さ4.82mの水陸両用車の後部から略1.54mにあることがさらに好ましい。
【0025】
原動機は、東西または西東構成の水陸両用車に横方向に配設されることが好ましい。代替的に、原動機は、北南または南北構成の水陸両用車に並んで配置される。
【0026】
原動機は、動力を前記水上推進手段に直接提供するために使用される一体的動力取出し軸を有することが好ましい。原動機は、前記動力取出し軸が原動機の速度とは異なる速度で回転するように、一体的ギヤリング構成体を有することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好適な実施形態について今から、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1を参照すると、水陸両用車10に設置された本発明に係る推進システムの略図が示されている。原動機20は、水上および陸上モードの両方で作動するときに、水陸両用車10を推進するための動力を供給する。原動機20によって発生した動力は、動力伝達手段30を介して水上推進手段40および/または陸上推進手段50に伝達される。動力伝達手段30を介してのそれぞれ水上推進手段40および陸上推進手段50への動力の伝達は、制御手段60によって制御される。制御手段60は少なくとも部分的に、当業界で周知の(例えばEPROM、ROM、および/またはRAMに格納された)制御論理を使用して、電子制御モジュール(ECM)(図示せず)の制御下で、i)車10の運転者からの入力、およびii)車両センサ(図示せず)からの入力に基づいて作用する。
【0029】
本発明の基本的特徴は、水上モードで作動しているときは、推進システムが、運転者からの制御入力に従って水上推進手段40のみに動力の伝達を発生しかつ制御し、陸上モードで作動しているときは、推進システムが、運転者からの制御入力に従って水上推進手段40および陸上推進手段50の両方に動力の伝達を発生しかつ制御することである。本発明では、水陸両用車10は二つのモードのうちの一つでしか作動することができない。第一は、車10を完全排水モード、または水中速度によって充分な流体力学的揚力が達成されるので車10が水から浮き上がり滑走する高速滑走モードのいずれかで、水上のみで駆動することのできる水上モードである。第二は、車10が三つの相のうちの一つを取る陸上モードである。陸上モードの第一相は、自動車の場合のように、通常の陸上状態で車10を単に運転する。第二相は、車10が陸から水中に入るときであり、第三相は車10が水中から陸上に出るときである。陸上モードの三つの相の全てにおいて、推進システムは、運転者からの入力に基づいて作用する制御手段60のコマンド下で、水上推進手段40および陸上推進手段50の両方に動力を伝達する。
【0030】
本発明に係る推進システムは概略的に示されており、多くの異なる実施形態の形をとることができることが分かる。例えば、陸上推進手段50は、前輪駆動もしくは後輪駆動のいずれかの二輪駆動、または四輪駆動によって達成することができる。
【0031】
次に図2を参照すると、二輪駆動(後輪駆動)のレイアウトを採用し、中央部搭載エンジンを有する(後部搭載エンジンを使用することもできる)水陸両用車10に設置された、本発明に係る推進システムの好適な実施形態が示されている。この文脈で、中央部搭載エンジンは従来、乗員座席領域の後部に、ただしリヤアクスルの前に搭載される。しかし、フランスのホビーカー水陸両用車は車の中央部にエンジンが搭載され、個々の乗員席が車の四隅に配置されるという点で、この規則には例外がある。ホビーカーはエンジンが車の中央部にあるので、中央部エンジンとみなさなければならないが、該レイアウトは様々な実用上の欠点を持ち、ホビーカーは商業的に成功しなかった。
【0032】
図2に戻ると、原動機は、水陸両用車10の中央または後部に横方向に取り付けられた内燃エンジン20の形を取る。動力伝達手段は自動ギヤボックス30の形を取り、内燃エンジン20からの駆動力をギヤ比の範囲で駆動軸34および動力取出し(PTO)軸32に伝達することができる。駆動軸34は各々、駆動軸34に取り付けられ、それによって駆動される二つの後輪50の形で、自動ギヤボックス30から陸上推進手段へ駆動力を伝達する。各駆動軸34は、後輪50の各々への駆動力の伝達を制御するために、分離装置36を含む。二つの分離装置36が図示されているが、分離装置は一つの駆動軸のみに取り付け、他の駆動軸のロックは車のハンドブレーキに頼ることができる。各分離装置36は、油圧手段(図示せず)によって作動し、等速(CV)ジョイントに組み込むことが好ましい。WO02/14092として公開された出願人の同時係属出願に記載するように、シンクロメッシュ機構を組み込むこともできる。ギヤボックス30からの駆動力は、動力取出し軸32および継手33を介して、水上推進手段40に伝達される。この好適な実施形態では、水上推進手段40は、「A Jet Drive For An Amphibious Vehicle」と称する出願人の同時係属英国特許出願第0311495.6号に開示されたジェット駆動装置の形を取る。
【0033】
上述の通り、電子制御モジュール(ECM)(図示せず)は、推進システムの制御を達成するために使用される制御手段60の一部を形成し、部分的には図3に示すドライバインタフェース70を介して車10の運転者から入力を受け取った後にそうする。ドライバインタフェース70は、典型的な車のダッシュボードレイアウトの形を取るように示されている。運転者は中央運転位置を持つように示されており、運転席の両側に乗員/クルー席(図示せず)が配置される。使用される座席配置および調整機構は、出願人の同時係属ドイツ特許出願第0218604.7号に開示されている。制御手段60はまた、自動車技術分野で周知の通り、点火スイッチおよびイモビライザーシステム、ならびにエンジンおよびギヤボックス/伝達装置管理コンピュータをも含むことができる。これらの追加項目は物理的に、ECMおよび/または制御手段60に分離するかまたは統合することができる。
【0034】
また、ECMを組み込んだ制御手段60の機能を示した流れ図を示す図4に関連して、水陸両用車10の第一の好適な動作モードについて、今から説明する。運転者は最初に、従来の方法でキーを差し込み、点火スイッチをオンにすることによって、水陸両用車10の制御手段60を作動させる(ステップ100)。エンジンスタータインターロックは、ギヤセレクタまたは自動伝達装置セレクタ74が「ニュートラル」または「パーキング」位置にあることを前提としてのみ、エンジン20の始動を可能とする(ステップ110)。その場合には、エンジン20が始動し(ステップ120)、そうでなければエンジン20は始動しない(ステップ220)。
【0035】
運転者は、エンジン20によって発生する動力を、当業界で周知の通り、アクセルペダル76を使用して制御することができる。アクセルペダル76は、動力が水上または陸上モードのいずれかで伝達されるときに、エンジン20によって発生する動力、およびその動力のジェット駆動装置40および/または車輪50への伝達の両方を制御する。図示する好適な実施形態では、伝達装置は関連ギヤセレクタ74を備えた自動ギヤボックスであるが、手動伝達装置を設け、当業界で周知の通り駆動力を係合するためにクラッチペダルを含むことができることは理解されるであろう。
【0036】
操舵輪72は、再び水上および陸上モードの両方とも、車10の操舵を制御するために設けられる。車10の操舵は、出願人の同時係属ドイツ特許出願第0309452.1号に記載するように、水上および陸上モードの両方とも、操舵輪72によって達成される。
【0037】
ダッシュボードレイアウトは、運転者に車10の速度(陸上または水上でmphまたはkm/時で測定される)をrpmまたはエンジンから出力される動力と共に知らせるための一連のダイヤル80、ならびに当業界で周知のそれぞれの温度計および燃料計を含む。フットブレーキペダル77は車輪ブレーキの作動のために設けられ、パーキングブレーキペダル78は、車10を陸上モードで駐車するときにパーキングブレーキを作動させるために設けられる。
【0038】
次に、ステップ130(モード識別/選択)で、制御手段60は、モードセレクタボタン82を介して水上モードが選択されたかどうかを決定する。水上モードが選択されている場合には、陸上から水上モードへの切替えの一部として、路上走行車輪50への駆動力が分離される。したがって、ギヤセレクタ74が「駆動」位置に移動されると(ステップ170)、エンジン20からの動力がジェット駆動装置40のみに伝達される(ステップ180)。水上モードが選択されていない場合には、制御手段60はステップ140で、モードセレクタボタン82を介して陸上モードが選択されているかどうかが決定される。陸上モードが選択されている場合には、水上から陸上モードへの切替えの一部として、路上走行車輪50への駆動力が連結される。したがって、ギヤセレクタ74が「駆動」位置に移動すると(ステップ150)、エンジン20はギヤボックス30および駆動軸34を介して車輪50に動力を提供し(分離装置36が連結され)、また動力取出し軸32を介して、エンジン20からジェット駆動装置40へ動力を伝達する。いずれのモードでも、車10の制御は、操舵輪72、アクセルペダル76、フットブレーキペダル77、およびギヤセレクタ74を使用して、駆動装置によって達成される。次に、制御手段60はステップ190に進み、モード切替が検出されると、システムは130でモード識別/選択ルーチンに戻り、制御プロセスが続行される。代替的に、モード切替えが運転者によってモードセレクタボタン82を介して選択されない場合には、制御手段60はステップ200に進み、運転者がエンジン20を停止することを選択したか否かが決定される。選択されていない場合には、制御手段はステップ130でモード識別/選択ルーチンの開始に戻り、上述したように続行する。しかし、運転者がエンジン20を停止することを選択した場合には、制御手段60はステップ210に移動し、そこでエンジン20は停止され、車の制御プロセスはステップ220で終了する。
【0039】
上記と類似のプロセスで、車が水上モードから陸上モードに変更されるときに、車輪分離装置36が連結されるので、水上モードにおける水上駆動装置のみへの駆動力は、陸上モードで水上駆動装置への駆動および車輪への駆動に変更される。
【0040】
上述した好適な実施形態では、原動機20は内燃エンジンの形を取るが、原動機20は代替的に圧縮点火内燃エンジン、電気モータ、燃料電池、ハイブリッドエンジン、またはそれらのいずれかの組合せの形を取ることができることは理解されるであろう。さらに、動力伝達手段30は車軸およびアクスル(動力取出し軸を含む)を介して動力を伝達する従来の自動ギヤボックスの形を取るが、多数の代替的レイアウトを実現することができることは理解されるであろう。例えば、動力伝達手段30は、駆動力を水上および陸上推進手段に提供するための連続可変伝達装置を含むかあるいはその形を取ることができる。特に、原動機が電気モータであり、あるいは交流発電機を介して電力を発生する場合、一つまたはそれ以上の車輪および/またはジェット駆動装置を駆動するために、一つまたはそれ以上の電気モータを設けることができることが予想される。代替的に、原動機20は斜板ポンプのような単数または複数の油圧ポンプに動力を供給することができ、動力は、油圧配管と、各車輪50および/またはジェット駆動装置40に直接連結された単数または複数の油圧モータを駆動する加圧作動油とによって、車輪および/またはジェット駆動装置に配分することができる。
【0041】
さらに、様々な機械的、電気的、かつ/または油圧式ハイブリッドシステムの組合せを有利に使用することができることは理解されるであろう。例えば、原動機20は、ギヤボックスおよび車軸組合せを介してジェット駆動装置40へ駆動力を機械的に提供し、かつ斜板ポンプ、油圧管路、および車輪50の一つまたはそれ以上に付けられた油圧モータを介して一つまたはそれ以上の車輪50に油圧により駆動力を提供する、内燃エンジンの形を取ることができる。
【0042】
水上推進手段はジェット駆動装置40の形で具現することが好ましいが、従来の推進器および推進器軸を代替的に使用することができることは理解されるであろう。同様に、陸上推進手段は路上走行車輪50を含むと記載したが、代替的にトラックを使用することもできる。
【0043】
すべての場合、特定の原動機、水上推進手段、陸上推進手段、および動力伝達手段は、関連するレイアウトと共に、当業者には容易に理解される通り、水陸両用車の特定の用途に最も良く適合するように適応される。
【0044】
さらに、原動機は、WO02/07999として公開された出願人の同時係属出願で図示しかつ記載するように横方向に、あるいは都合に応じて、長手方向に取り付けることができる。長手方向に取り付けられた原動機を含むパワートレインの一例は、WO02/12005として公開された出願人の同時係属出願に見ることができる。上述した推進システムは、水上で使用する場合には喫水線より上に後退させ、陸上で使用する場合には喫水線より下に延ばすことのできる道路走行車輪を組み込んだ、水陸両用車に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】水陸両用車に設置された本発明に係る推進システムを示す略図である。
【図2】本発明に係る推進システムの第一の好適な実施形態を示す略図である。
【図3】図1および図2の推進システムを制御するためのドライバインタフェースの好適な実施形態を示す略図である。
【図4】図2の推進システムの好適な制御プロセスを概略的に示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水陸両用車用の推進システムであって、
原動機と、
水上推進手段と、
陸上推進手段と、
動力伝達手段と、
前記原動機、水上推進手段、陸上推進手段、動力伝達手段、および水陸両用車の各々の調整可能なパラメータを制御するための制御手段と、を備え、
前記水陸両用車は水上モードまたは陸上モードのどちらでも作動可能であり、動力伝達手段が原動機から動力を伝達するときに、前記車が水上モードまたは陸上モードのどちらで作動するかに関係なく、前記伝達される動力は常に前記水上推進手段に伝達され、それによって
前記車が水上モードで作動するときに、前記動力伝達手段は前記原動機から前記水上推進手段のみに動力を伝えることができ、
前記車が陸上モードで作動するときに、前記動力伝達手段は前記原動機から前記水上推進手段および前記陸上推進手段の両方に動力を伝えることができ、
前記制御手段は電子処理手段および/または電気的、機械的、油圧式、または電気機械的作動装置、またはそれらの任意の組み合わせを含み、かつ前記車の運転者が少なくとも部分的に利用可能であり、前記運転者が各パラメータおよび/または各組のパラメータのための単一の作動装置を使用して、水上および陸上モードの両方で個別パラメータを選択または制御することができるように構成された、推進システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記運転者が次の個別パラメータ、つまり
前記原動機の始動および停止、
水上または陸上モード、
前記車の操舵、および
前記車の速度、を選択または制御することを可能にする、請求項1に記載の推進システム。
【請求項3】
水上および陸上モードの両方で前記車の速度が単一の速度制御装置を使用して運転者によって制御される、請求項1または2に記載の推進システム。
【請求項4】
水上および陸上モードの両方で前記車の方向が単一の操舵制御装置を使用して運転者によって制御される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項5】
前記単一の操舵制御装置が走行範囲を有し、前記走行範囲は水上および陸上モードの両方で同一である、請求項4に記載の推進システム。
【請求項6】
前記単一の操舵制御装置の走行範囲は、水上および陸上モードで利用可能な車操舵の全範囲へのアクセスを運転者に与える、請求項5に記載の推進システム。
【請求項7】
水上および/または陸上モードで利用可能な車操舵の範囲に対する前記単一の操舵制御装置の走行範囲の比率が1:1である、請求項6に記載の推進システム。
【請求項8】
水上および/または陸上モードで利用可能な車操舵の範囲に対する前記単一の操舵制御装置の走行範囲の比率が1:1以外である、請求項6に記載の推進システム。
【請求項9】
前記動力伝達手段がギヤボックスであり、前記ギヤボックスは水上および陸上モードの両方で、単一のギヤチェンジ制御装置を使用して運転者によって制御される、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項10】
運転者が利用可能な前記制御手段は、前記車が陸上モードで作動する場合、第一駆動位置で駆動するときに運転者によって作動可能であり、かつ前記車が水上モードで作動する場合は、前記第一駆動位置より高い第二駆動位置で駆動するときに運転者によって作動可能である、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項11】
前記車が水上モードで作動するときに、前記水上推進手段は前記車が滑走するのに充分な流体力学的揚力が達成される速度まで車を付勢することができる、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項12】
前記陸上モードは、前記車が水に入ることおよび水から出ることを含む、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項13】
前記水陸両用車が陸上モードで作動するときに、前記動力伝達手段は原動機からの動力を均等比率または選択的可比率で水上推進手段および陸上推進手段の両方に同時に伝えることができる、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項14】
前記原動機から前記陸上推進手段への動力の伝達を選択的に分断かつ/または制御するための分断手段をさらに備える、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項15】
前記原動機は、
火花点火内燃エンジン、
圧縮点火内燃エンジン、
電気モータ、
燃料電池、または
ハイブリッドエンジン、のいずれか一つまたはそれらの組合せを含む、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項16】
前記水上推進手段は一つまたはそれ以上のジェット駆動装置を含む、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項17】
前記陸上推進手段は一つまたはそれ以上の駆動可能な車輪を含む、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項18】
前記動力伝達手段は前記原動機と一体である、請求項1ないし17のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項19】
前記動力伝達手段は、原動機からの動力を前記水上推進手段へ伝達するための水上動力伝達手段と、前記原動機からの動力を前記陸上推進手段へ伝達するための陸上動力伝達手段とを含む、請求項1ないし18のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項20】
前記水上および陸上動力伝達手段は同一種類である、請求項19に記載の推進システム。
【請求項21】
前記水上および陸上動力伝達手段は異なる種類である、請求項19に記載の推進システム。
【請求項22】
前記動力伝達手段は機械的である、請求項1ないし18のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項23】
前記水上および/または陸上動力伝達手段は機械的である、請求項19ないし21のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項24】
前記機械的動力伝達手段は、手動もしくは自動ギヤボックス、または前記水上および陸上推進手段に駆動力を提供するための連続可変伝達装置である、請求項22に記載の推進システム。
【請求項25】
前記水上および/または陸上動力伝達手段は、手動もしくは自動ギヤボックス、または前記水上および/または陸上推進手段に駆動力を提供するための連続可変伝達装置である、請求項23に記載の推進システム。
【請求項26】
前記動力伝達手段は油圧式である、請求項1ないし18のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項27】
前記水上および/または陸上動力伝達手段は油圧式である、請求項19ないし21、23、または25のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項28】
前記油圧式動力伝達手段は、油圧動力を発生するための一つまたはそれ以上の油圧ポンプを含む、請求項26に記載の推進システム。
【請求項29】
前記水上および/または陸上動力伝達手段は、油圧動力を発生するための一つまたはそれ以上の油圧ポンプを含む、請求項27に記載の推進システム。
【請求項30】
前記油圧式動力伝達手段は、前記水上および陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の油圧モータを含む、請求項26または28に記載の推進システム。
【請求項31】
前記水上および/または陸上油圧式動力伝達手段は、前記水上および/または陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の油圧モータを含む、請求項27または29に記載の推進システム。
【請求項32】
前記動力伝達手段は電動である、請求項1ないし18のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項33】
前記水上および/または陸上動力伝達手段は電動である、請求項19ないし21、23、25、27、または29のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項34】
前記電動式伝達手段は、電力を発生するための一つまたはそれ以上の発電機を含み、それは交流発電機とすることができる、請求項32に記載の推進システム。
【請求項35】
前記電動式水上および/または陸上伝達手段は、電力を発生するための一つまたはそれ以上の発電機を含み、それは交流発電機とすることができる、請求項33に記載の推進システム。
【請求項36】
前記電動式伝達手段は、前記水上および陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の電気モータを含む、請求項32または34に記載の推進システム。
【請求項37】
前記電動式水上および/または陸上伝達手段は、前記水上および陸上推進手段に駆動力を提供するための一つまたはそれ以上の電気モータを含む、請求項33または35に記載の推進システム。
【請求項38】
前記原動機は前記水陸両用車の中央または後部に配置される、請求項1ないし37のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項39】
前記原動機は、重心が長さ4.6mないし5.0mの水陸両用車の後部から1.5mから1.6mの間に位置するように配置される、請求項1ないし38のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項40】
前記原動機は、重心が長さ略4.82mの水陸両用車の後部から略1.54mに位置するように配置される、請求項39に記載の推進システム。
【請求項41】
前記原動機は、東西または西東構成の前記水陸両用車に横方向に配設される、請求項1ないし40のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項42】
前記原動機は、北南または南北構成の前記水陸両用車に並んで配置される、請求項1ないし41のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項43】
前記原動機は、動力を前記水上推進手段に直接提供するために使用される一体的動力取出し軸を有する、請求項1ないし42のいずれか一項に記載の推進システム。
【請求項44】
前記原動機は、前記動力取出し軸が前記原動機の速度とは異なる速度で回転するように、一体的ギヤリング構成体を有する、請求項43に記載の推進システム。
【請求項45】
請求項1ないし44のいずれか一項に記載の推進システムの水陸両用車における使用。
【請求項46】
請求項1ないし44のいずれか一項に記載の推進システムを組み込んだ水陸両用車。
【請求項47】
水上で使用する場合に喫水線より上に後退させ、陸上で使用する場合に喫水線より下に延ばすことのできる一つまたはそれ以上の車輪をさらに組み込んだ、請求項46に記載の水陸両用車。
【請求項48】
前記一つまたはそれ以上の車輪の少なくとも一つが、流体サスペンション構成体によって後退される、請求項47に記載の水陸両用車。
【請求項49】
前記一つまたはそれ以上の車輪の少なくとも一つの軸線が少なくとも45度後退する、請求項48に記載の水陸両用車。
【請求項50】
前記流体サスペンション構成体は油圧式である、請求項48または49に記載の水陸両用車。
【請求項51】
前記流体サスペンション構成体はガス式である、請求項48ないし50のいずれか一項に記載の水陸両用車。
【請求項52】
前記サスペンション構成体は、少なくとも一つの筋交いを含む、請求項48ないし51のいずれか一項に記載の水陸両用車。
【請求項53】
前記少なくとも一つの筋交いは陸上モードでもサスペンションのために使用される、請求項51に記載の水陸両用車。
【請求項54】
実質的に添付の図面に図示しまたはそれに関連して明細書に記載した推進システム。
【請求項55】
実質的に添付の図面に図示しまたはそれに関連して明細書に記載した推進システムの使用。
【請求項56】
実質的に添付の図面に図示しまたはそれに関連して明細書に記載した推進システムを組み込んだ水陸両用車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503360(P2007−503360A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530513(P2006−530513)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002143
【国際公開番号】WO2004/103742
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500170009)ギブズ テクノロジーズ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】