説明

汎用型コンバイン

【課題】異なる種類の穀稈の刈取り作業をした際に、扱胴の先端側の掻き込み部に残留した穀稈が新たに刈取った穀稈に混入してしまう。
【解決手段】扱胴の先端部にラセン羽根24が巻回され、その周囲が覆われて形成される掻き込み部を有する汎用型コンバインであって、該掻き込み部の側方を覆う扱室入口板50に掃除口51を形成し、かつ該掃除口51を掃除蓋52で開閉自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取った穀稈を脱穀する扱室を備えたコンバインに係り、詳しくは、扱胴の先端部を囲う扱室入口部を有する汎用型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、穀稈を脱穀する扱室を備えており、扱室には、回転しながら穀稈を脱穀する扱胴が内装されている。そして、前処理部で刈取られた穀稈は、扱室に搬送されて扱胴で脱穀された後に、穀粒とワラ屑等とに選別されながら刈取り作業が行われる。
【0003】
上記のコンバインにあっては、例えば、扱室内における詰まりの除去や、メンテナンスのために扱室内を清掃する必要がある。特に汎用型コンバインにあっては、自脱型コンバインと比べて、稲、麦及び大豆等、様々な穀稈の刈取り作業を行うため、異なる種類の穀稈が混在するのを避けるためにも、異なる穀稈の収穫前には扱室内の掃除作業を行う必要がある。
【0004】
従来から、作業者が扱室内の清掃作業を行う際、清掃作業を容易にするために扱室の側板を開閉させるコンバイン(例えば、特許文献1参照)や、扱室の天板を開閉させるコンバイン(例えば、特許文献2参照)が案出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−70680号公報
【特許文献2】特開平9−103174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2記載のコンバインにあっては、扱室の側板及び天板を開くことで扱胴の本体部を容易に清掃することができるが、汎用型コンバインにおける扱胴の先端部は、ラセン羽根が巻回されると共に、その周囲が覆われて掻き込み部を構成しており、該掻き込み部は、扱室の側板及び天板に覆われているため、清掃作業は困難である。このため、例えば、作業者が異なる種類の穀稈の刈取り作業を行うために扱室を清掃しても、扱胴の先端部に前回に刈取った穀稈を除去しきれず残ってしまう虞があり、かかる状態で作業を行った場合には、新たに刈取った穀稈に除去できなかった穀稈等が混入してしまう虞がある。
【0007】
そこで本発明は、掻き込み部の側方を覆う扱室入口板に掃除口を掃除蓋で開閉自在に設け、もって上記課題を解決した汎用型コンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、穀稈を刈取る前処理部(5)と、該前処理部(5)で刈取った穀稈を脱穀する扱室(25)と、該扱室(25)に回転自在に内装される扱胴(26)と、を備え、
前記扱胴(26)は、その先端部にラセン羽根(24)が巻回されると共に、その周囲が覆われて掻き込み部(28)を形成してなる、汎用型コンバイン(1)において、
前記掻き込み部(28)の側方を覆う扱室入口板(50)に掃除口(51)を形成し、該掃除口(51)を掃除蓋(52)で開閉自在に構成した。
【0009】
また、前記扱室入口板(50)は、前記扱室(25)の側方を覆う開閉自在なサイドカバー(47)に覆われて、該サイドカバー(47)を開くと前記掃除蓋(52)が露出する。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、ラセン羽根が巻回された扱胴の掻き込み部の側方を覆う扱室入口板に掃除蓋で開閉自在な掃除口を設けたので、扱室を清掃する際、容易に掻き込み部を清掃することができ、また、刈取り作業中に、刈取った穀稈が掻き込み部に詰まっても容易に詰まりを除去することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によると、扱室入口板は、扱室の側方を覆う開閉自在なサイドカバーに覆われてサイドカバーを開くと掃除蓋が露出するので、容易に掃除蓋を開閉することができ、扱室の清掃作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る汎用型コンバインの平面図。
【図2】その左側側面図。
【図3】汎用型コンバインのサイドカバーを開いた状態を示す側面図。
【図4】掃除口が掃除蓋で塞がれた状態を示す拡大側面図。
【図5】掃除口が開放された状態を示す拡大側面図。
【図6】扱胴及び扱室入口板を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る汎用型コンバインについて図面に沿って説明する。本実施の形態に係る汎用型コンバイン1は、左右一対の走行装置であるクローラ2に支持された機体3を有している(図2参照)。該機体3の前方には、図1及び図2に示すように、穀稈を刈取る前処理部5が昇降自在に設けられており、該前処理部5の後方には、汎用型コンバイン1を操作するための運転操作部6が設けられている。運転操作部6の後方には、前処理部5で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置7が設けられており、該脱穀装置7の隣には、脱穀した穀粒を貯蔵するグレンタンク9が設けられている。該グレンタンク9の上方には、グレンタンク9内の穀粒を排出する排出オーガ10が設けられており、脱穀装置7の後方には、脱穀処理された排稈を細断する後処理装置11が設けられている。
【0015】
前処理部5は、刈取作物と未刈取作物とに分けるデバイダ12を前方に有しており、該デバイダ12の上方には、複数のタインが取付けられた掻き込みリール13が設けられている。該掻き込みリール13の後方には、穀稈を搬送するプラットホームオーガ15が進行方向と直交する横向きの状態で配設されており、該プラットホームオーガ15の後方には、プラットホームオーガ15によって搬送された穀稈を脱穀装置7まで搬送する搬送フィーダ16が設けられている。
【0016】
運転操作部6には、運転者が着座するための運転席17が設けられており、該運転席17の前方には操作パネル19が設けられている。該操作パネル19の右側には、汎用型コンバイン1を操舵するための操作レバー20が設けられており、該操作レバー20の隣には、様々な計器類を表示するための表示パネル21が設けられている。また、運転席17の左側には、サイドパネル22が設けられており、該サイドパネル22には、主変速レバー23が設けられている。
【0017】
後処理装置であるスプレッダーチョッパー11は、脱穀装置7の後部に取付けた際に、脱穀装置7に面する一面及び圃場面と面する一面が開放された略立方体形状のカバー体54を有している。該カバー体54内には、図示はしないが、脱穀装置7で脱穀処理された排稈を細断するロータリ細断爪が設けられており、該ロータリ細断爪は、カバー体54内で回転自在に支持された回転軸に上下左右それぞれ対向するように複数の細断爪が取付けられて構成されている。
【0018】
脱穀装置7は、扱室25を有しており、該扱室25には、図2に示すように、刈取られた穀稈を脱穀する扱胴26が回転自在で内装されている。該扱胴26には、ラセン形状した扱歯27が巻回されており、扱胴26の先端部には、搬送フィーダ16によって扱室25の入口まで搬送された穀稈を扱室25内に掻き込むためのラセン羽根24が巻回されている。この先端部は、扱室入口板50等によりその周囲が覆われて掻き込み部28が形成されている(図6参照)。
【0019】
掻き込み部28の側方を覆う扱室入口板50には、作業者が掻き込み部28の掃除や、掻き込み部28での詰まりの除去を行うための略矩形形状に形成された掃除口51が形成されている。そして、該掃除口51を覆うように掃除口51と同一の形状に形成された掃除蓋52が扱室入口板50に取付けられている(図4及び図5参照)。
【0020】
該掃除蓋52は、取付部材であるノブボルト55によって扱室入口板50に着脱自在で構成されており、該掃除蓋52を扱室入口板50に着脱することで掃除口51は開閉自在に設けられている。また、掃除蓋52の内側(掃除蓋52を扱室入口板50に取付けた際、掃除口51に面する側の面)には、掃除蓋52を掃除口51に取付けた際、掃除口51と扱室入口板50との段差を無くすために掃除口51と同一の形状の板53が溶着されており、掃除蓋52の左右両端部は、掃除蓋52の強度を上げるために断面コ字形状に折り曲げ加工されている(図6参照)。
【0021】
また、上記扱胴26は、楕円形状に形成された受網29に覆われている(図5参照)。該受網29の下方には、唐箕ファン30や揺動移動板31、チャフシーブ32、ラック33、ストローラック35、及びグレンシーブ36等で構成される揺動選別体37等を内装する選別室39が設けられており、該選別室39には、一番ラセン40及び二番ラセン41が進行方向に直交する横向きにそれぞれ配設されている。脱穀装置7は、主に、この扱室25及び選別室39から構成されている。
【0022】
脱穀装置7は、カバー体で覆われており、扱室25の上方は天板45で覆われている。扱室25の後部はリヤカバー46で覆われており、扱室入口板50を含む扱室25の左側側方は、略矩形形状したサイドカバー47で覆われている。該サイドカバー47の上端部には、ヒンジ部48が設けられており、サイドカバー47は、該ヒンジ部48によって回動自在に設けられていると共に、扱室25の左側側方はサイドカバー47によって開閉自在に設けられている。また、サイドカバー47には、図3に示すように、サイドカバー47を上方(開き方向)に付勢するガススプリング49が取付けられており、サイドカバー47の後方側端部には、方向指示器及び尾灯が一体形成されたテールランプアッシ56が取付けられている。
【0023】
次に、上記のように構成された汎用型コンバイン1の動作について説明する。作業者は、汎用型コンバイン1を圃場まで移動させて、作業開始位置から刈取り作業を開始する。刈取り作業は、掻き込みリール13を回転させながら行われる。掻き込みリール13は、回転しながら穀稈を引き起こし、引き起こした穀稈を刈刃で刈取る。刈取られた穀稈は、プラットホームオーガ15から搬送フィーダ16に搬送された後、搬送フィーダ16によって扱室25に搬送される。扱室25に入口まで搬送された穀稈は、掻き込み部28によって扱室25の内へ掻き込まれる。扱室25内に掻き込まれた穀稈は、回転する扱胴26の扱歯27によって籾等が扱ぎ落され、扱ぎ落された籾等は受網29を通過して揺動選別体37に落下する。
【0024】
揺動選別体37に落下した籾などの穀粒は、揺動選別体37による揺動選別及び唐箕ファン30による風選別による選別によって、一番物と二番物とにそれぞれ選別される。ここで一番物とは、選別処理された穀粒であり、二番物とは、選別不十分でワラ屑や穂切れ粒などの夾雑物と穀粒とが混合した混合物である。一番物は、一番ラセン40から一番揚穀装置(不図示)に搬送された後、該一番揚穀装置によってグレンタンク9まで搬送され、二番物は、二番ラセン41から二番還元装置(不図示)に搬送された後、該二番還元装置によって二番還元ラセン(不図示)に搬送される。二番還元ラセンに搬送された二番物は、再選別を行うため、二番還元ラセンによって再び扱室25に還元される。
【0025】
脱穀装置7で脱穀処理された排稈等は、排塵口(不図示)からスプレッダーチョッパー11に搬送され、搬送された排稈等は、回転するロータリ細断爪によって細かく細断されて排出口から圃場へと排出される。
【0026】
異なる種類の穀稈の刈取り作業を行う際、作業者は、刈取り作業終了後又は刈取り作業開始前に異種の穀粒が混在するのを防ぐため、脱穀装置7内を清掃する。そして、扱室25内の清掃は、サイドカバー47を開放して行う。サイドカバー47を開くと、図3及び図4に示すように、受網29、扱室入口板50及び掃除蓋52が露出する。作業者は、受網29を取外して扱室25内の清掃を行う。またこの際、掃除蓋52を取外して、掃除口51から掻き込み部28の掃除も行われる。
【0027】
扱室25内の清掃終了後、作業者は、再び掃除蓋52を扱室入口板50に取付けて掃除口51を塞ぎ、取外した受網29を取付けた後サイドカバー47を閉じて清掃作業を終了する。
【0028】
また、刈取り作業中に、穀稈が扱室25の入口付近(掻き込み部28付近)に詰まった場合も作業者は、清掃作業時と同様にサイドカバー47を開いて、掃除蓋52を扱室入口板から取外し、掃除口51から詰まった穀稈を除去する。
【0029】
上述のように、穀稈を掻き込むラセン羽根24が巻回された扱胴の掻き込み部28の側方を覆う扱室入口板50に、脱着自在な掃除蓋52で、開閉自在な掃除口51を設けたので、扱室25を清掃する際、作業者は、掃除蓋52を取外して掃除口51から容易に掻き込み部28の清掃を行うことができ、前回刈取り作業を行った穀稈とは異なる種類の穀稈の刈取り作業を行う際に、前回刈取った穀稈の穀粒が混入するのを防ぐことができる。また、刈取り作業中に、扱室25内で刈取った穀稈が掻き込み部28付近に詰まっても掃除口51から容易に詰まりを除去することができる。
【0030】
また、掃除口51が形成された扱室入口板50は、扱室25の側方を覆う開閉自在なサイドカバー47に覆われて、サイドカバー47を開くと掃除蓋52が露出するので、容易に掃除蓋52を開閉することができ、扱室25の清掃作業の作業効率を向上させることができる。
【0031】
また、掃除蓋52の内側に、掃除蓋52を掃除口51に取付けた際、掃除口51と扱室入口板50との段差を無くすための掃除口51と同一の形状の板53を溶着したので、扱胴26による脱穀作業の際に、扱胴26と共に扱室25内を回る処理物が掃除口51の縁に引っかかることによる処理物(穀粒)の損傷を防ぐことができる。
【0032】
また、掃除蓋52の左右両端部を掃除蓋52の強度上げるために断面コ字形状に折り曲げ加工したので、掃除蓋52を扱室入口板50に取付けた際の脱穀負荷による掃除蓋52の変形を防ぐことができる。これにより、掃除口51を大きくすることができるので、清掃作業や穀稈の詰まりの除去作業などの作業性の向上を図ることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、ノブボルト55によって掃除蓋52を扱室入口板50に着脱自在に構成したが、これに限らず、掃除蓋52は、他の手段により掃除口51を開閉自在に構成してなる。例えば、扱室入口板50を覆うサイドカバー47の内側に掃除蓋52を一体に設け、サイドカバー47を開閉すると同時にサイドカバー47に設けられた掃除蓋52によって掃除口51が開閉するという構成であってよい。
【符号の説明】
【0034】
1 汎用型コンバイン
5 前処理部
24 ラセン羽根
25 扱室
26 扱胴
28 掻き込み部
47 サイドカバー
50 扱室入口板
51 掃除口
52 掃除蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈取る前処理部と、該前処理部で刈取った穀稈を脱穀する扱室と、該扱室に回転自在に内装される扱胴と、を備え、
前記扱胴は、その先端部にラセン羽根が巻回されると共に、その周囲が覆われて掻き込み部を形成してなる、汎用型コンバインにおいて、
前記掻き込み部の側方を覆う扱室入口板に掃除口を形成し、該掃除口を掃除蓋で開閉自在に構成した、
ことを特徴とする汎用型コンバイン。
【請求項2】
前記扱室入口板は、前記扱室の側方を覆う開閉自在なサイドカバーに覆われて、該サイドカバーを開くと前記掃除蓋が露出する、
請求項1に記載の汎用型コンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−90579(P2013−90579A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233273(P2011−233273)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】