説明

汎用腫瘍抗原に対するポリクローナル抗血清

本発明は、(i) 非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する非ヒト脊椎動物の胚性組織に対してインビボ液性応答を誘導し;(ii) 免疫した前記非ヒト脊椎動物から脾臓を取り出し、前記脾臓から個々の脾臓細胞/リンパ球を単離し;(iii) 工程(i)の非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する更なる非ヒト脊椎動物において工程(ii)で得られた単離脾臓細胞/リンパ球懸濁液に対して第2のインビボ液性応答を誘導し;そして(iv) 前記動物から目的とするポリクローナル抗血清単離する、ことによって入手可能な、汎用腫瘍抗原に対するポリクローナル抗血清に関する。更に本発明は、がん、特に、乳癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸癌、胃癌、若しくは膀胱癌の改善、予防、及び/又は治療のための医薬組成物を製造するための、ポリクローナル抗血清の使用を提供する。更に本発明は、治療を必要とする被験者に、更なる抗増殖薬又は薬剤と組み合わせて投与されるべき医薬組成物を製造するための、本発明のポリクローナル抗血清の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i) 非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する非ヒト脊椎動物の胚性組織に対してインビボ液性応答を誘導し;(ii) 免疫した前記非ヒト脊椎動物から脾臓を取り出し、前記脾臓から個々の脾臓細胞/リンパ球を単離し;(iii) 工程(i)の非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する更なる非ヒト脊椎動物において工程(ii)で得られた単離脾臓細胞/リンパ球懸濁液に対して第2のインビボ液性応答を誘導し;そして(iv) 前記動物から目的とするポリクローナル抗血清を単離する、ことによって入手可能な、汎用腫瘍抗原に対するポリクローナル抗血清に関する。更に本発明は、がん、特に、乳癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、結腸癌、胃癌、若しくは膀胱癌の改善、予防、及び/又は治療のための医薬組成物を製造するための、ポリクローナル抗血清の使用を提供する。更に本発明は、治療を必要とする被験者に、更なる抗増殖薬又は薬剤と組み合わせて投与されるべき医薬組成物を製造するための、本発明のポリクローナル抗血清の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国では2003年にがんの新規症例が約100万人診断され、その疾患により約50万人が死亡している。このようにがんは、合衆国及び世界中で第2の主要死因である(American Cancer Society、2003;Stern、2004)。化学療法、外科手術、又は放射線療法のような従来のがん治療法は、それら治療法がしばしば非特異的及び不正確であるため、有効性がほとんど限定されている(Kimball、1993)。しかしながら、多くの症例では、腫瘍は遺伝子を特異的に発現しており、その産物は悪性状態を誘発又は維持するために必要である。これらのタンパク質は、有効な抗がん療法を開発及び確立するための抗原マーカーとして役立つことができる。抗原は免疫応答を誘導することが知られている。これらの抗原はタンパク質、多糖、脂質、又は糖脂質であり、リンパ球、即ちB細胞及びT細胞により「異物」として認識される。上記抗原へリンパ球が曝露されることによって急速な細胞の分裂及び分化が誘導され、曝露されたリンパ球クローンを形成する。B細胞は形質細胞を産生し、次いで形質細胞は抗原と選択的に結合する抗体を産生する。モノクローナル抗体はBリンパ球の単一クローンの産物であるが、ポリクローナル抗体はBリンパ球の数種のクローンにより産生される。
【0003】
ポリクローナル抗体は、ウサギをマウスの内皮細胞でワクチン接種することによって、マウスにおいてアポトーシスを誘発し、腫瘍増殖支持をブロックするために首尾よく使用されてきた。このアプローチから、強力な抗血管新生活性を有するポリクローナル免疫グロブリンが産生された。ポリクローナル抗体は、マウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を示し、インビボ腫瘍放射性イメージングにおいて有用性を実証した(Scappaticci、2003)。Okajiらも、結腸癌の血管新生及び転移に対する自己免疫による阻害効果について報告している(2004)。この研究では、Colon−26がんの肝類洞内皮細胞を用いてBALB/cマウスが免疫され、転移の発生を著しく阻害する予防的及び治療的抗腫瘍免疫を誘導した。免疫グロブリン応答は、抗体のサブクラスIgM及びIgGが関与していた。さらに、特許出願WO01/89563号は、アレルギーを治療するための精製ポリクローナル抗体の使用を想定し、記載している。特に、複合タンパク質であることが多いアレルゲンの場合、ポリクローナル抗体による治療が明らかに有益であり、モノクローナル抗体の使用より好ましいことが開示されている。
【0004】
Abelevによれば、抗原は以下の4群に区別することができる:(i)同種のウイルス性腫瘍に対して同一のウイルス性腫瘍抗原;(ii)患者及び腫瘍に対して特異的な発がん性腫瘍抗原;(iii)個々の種の腫瘍全てでは異なるが、同一ウイルスを原因とするさまざまな腫瘍では同じである移植型同種抗原又は腫瘍特異的移植抗原;並びに(iv)胚性抗原。発がんの過程で細胞は脱分化するため、胚性状態の遺伝子発現を獲得し得る。したがって、生物の胚発生に特異的な胚性抗原が、これらのがん細胞中に見出される。そのような抗原は、腫瘍に対して生物を免疫し、抗がん治療を確立するために使用することができる。最も有望な胚性抗原は、α−フェトプロテイン及びがん胎児抗原(CEA)である。α−フェトプロテインは、胎児における主要な輸送タンパク質であり、特に臨床検査室におけるがん及び胎児の欠陥の血清マーカーとして(Tatarinov、1965;Abelev、1971;Mizejewski、2003)、並びに頸頭部癌に対する特異的免疫療法のための標的として(Kass、2002)役立つ。CEAは糖タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、細胞間接着分子1(ICAM−1)との類似性を有する。CEAは最初、胎児結腸及び結腸腺癌に存在する抗原として同定されたが、健常な成人結腸には存在しなかった。CEAは、膵臓癌、胃癌、及び乳癌に対して最も繁用されているマーカーの1つであり、結腸直腸癌のマーカーとして最も頻繁に使用されている。CEAは、例えば特異的抗体組成物に対する治療標的としても役立つ。
【0005】
前記特徴を有する胚性抗原は、がんの検出及びモニタリングに極めて重要になってきたが、腫瘍細胞上の胚性抗原の存在に関する情報及び理解は依然として著しく不足している。WO99/53952号は、胚性組織に特異的に由来する汎用腫瘍抗原に対する特異的抗血清の産生方法を提供する。対応する抗血清が、(悪性)腫瘍を検出するための診断ツールとして提唱された。
【0006】
先行技術には、特異的がん関連エピトープに対するモノクローナル抗体のいくつかが記載されている。例としては、特に、乳癌の治療に使用されるHER2/c−erb−B2に対するモノクローナル抗体である。抗ヒト乳癌抗体として使用されるモノクローナル抗体は、特に、EP−A2 0 153 114号又はWO89/06692号に記載されている。しかしながら、ある種の欠点に関連して、モノクローナル抗体の使用は最適ではないとも記載されている。これは、モノクローナル抗体が非常に特異的な単一抗原エピトープに対するものであるという事実による。したがって、標的が複雑な性質を有し、分子レベルで未解明であるか、又は1つの標的だけでなく1群の異なる標的が関与している場合は、モノクローナル抗体は標的を非常に低い親和性で認識するか又は全く認識せず、そのため次善の策としてしか使用されないであろう。したがって、単一のモノクローナル抗体が、がん細胞上の少数ではないおそらく関連のあるエピトープ全体をカバーするとは考えられない。このことは例えば、明確なシグナルを得るために、2種類以上のモノクローナル抗体を使用する必要がある免疫学的試験によっても例示されている。
【0007】
したがって、当該技術分野において、増殖性疾患、特にがんの効果的な改善、予防、及び/又は治療を提供する治療の手段並びに方法に対する必要性が存在する。
【非特許文献1】Abelev、1971、Adv.Cancer Res.14:295−357.
【非特許文献2】米国癌協会、2003、『がんの正確な情報』.
【非特許文献3】Arnonら、1982、Cancer Surveys、1:429−449.
【非特許文献4】Barltropら、1991、Bioorg.&Med.Chem.Lett.1:611.
【非特許文献5】Brennanら、1985、Science、229(4708):81−3.
【非特許文献6】Coryら、1991、Cancer Comm.3:207−12.
【非特許文献7】Cumberら、1985、Meth in Enzymol、12:207−225.
【非特許文献8】Davolら、2004、Clin Prostate Cancer.3(2):112−21.
【非特許文献9】Eckelmanら、1980、Cancer Res.40:3036−42.
【非特許文献10】Fangerら、1991、Trends Biotechnol.9(11):375−80.
【非特許文献11】Flechner、1973、European Journal of Cancer、9:741−745.
【非特許文献12】Ghoseら、1972、British Medical Journal、3:495−499.
【非特許文献13】Goldenbergら、1993、Immunol Today、14(1):5−7.
【非特許文献14】Hamannら、2002、Bioconjug Chem、3:40.
【非特許文献15】Harlow及びLane、1988、『抗体:実験室マニュアル』、コールドスプリングハーバー研究所出版
【非特許文献16】Harris、2004、Lancet Oncol.5(5):292−302.
【非特許文献17】Hurwitzら、1975、Cancer Research、35:1175−1181.
【非特許文献18】Kassら、2002、Cancer Res.62(17):5049−5057.
【非特許文献19】Kimball、1993、『生物学』、William C.Brown編.
【非特許文献20】Kipriyanovら、2004、Curr Opin Drug Discov Devel.7(2):233−42.
【非特許文献21】Laemmli、1970、Nature 227(5259):680−5.
【非特許文献22】Liu Yuanfangら、1991、『IUPACレポート』、427−462.
【非特許文献23】Morgan及びDarling、1993、『動物細胞培養』、BIOS Scientific Publishers社編.
【非特許文献24】Mizejewskiら、2003、Mol Cancer Ther.2:1243−1255.
【非特許文献25】Okajiら、2004、Cancer Sci.95:85−90.
【非特許文献26】Osawaら、1982、Cancer Surveys、1:373−388.
【非特許文献27】『レミントンの薬学』1990、第18版増補版、A.Gennaro著、Mack出版社、ペンシルバニア州イーストン.
【非特許文献28】Rodeら、2004、『アポトーシス、細胞死、及び細胞増殖マニュアル』、第3版、Roche Applied Science.
【非特許文献29】Scappaticciら、2003、Vaccine、21:2667−77.
【非特許文献30】Smithら、1985、Anal.Biochem.150(1):76−85.
【非特許文献31】Stan、1999、Cancer Res.59:115−121.
【非特許文献32】Stern、2004、『がんと向き合う』、MacGraw−Hill編.
【非特許文献33】Szekerkeら、1972、Neoplasm、19:211−215.
【非特許文献34】Tatarinov、1965、Vop.Khim.SSR、11:20−24.
【非特許文献35】Thorpeら、1982、『モノクローナル抗体−毒素結合体:特効薬に向けて』、168.
【非特許文献36】Van Sprielら、2000、Immunol Today、21:391−6.
【非特許文献37】Waldmann、1991、Science、252:1657.
【非特許文献38】Waldmann、1988、『モノクローナル抗体療法』、第45巻、Karger編.
【発明の開示】
【0008】
したがって、本発明の基礎にある技術的課題は、上記必要性を満たすこと、及び多数のさまざまな種類のがんの治療を提供すること、又は両者を同時に満たすことである。
したがって、本発明は、以下の工程:
(i) 非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する非ヒト脊椎動物の胚性組織に対してインビボ液性応答を誘導し;(ii) 免疫した前記非ヒト脊椎動物から脾臓を取り出し、前記脾臓から個々の脾臓細胞/リンパ球を単離し;(iii) 工程(i)の非ヒト脊椎動物と同一遺伝系を有する更なる非ヒト脊椎動物において工程(ii)で得られた単離脾臓細胞/リンパ球懸濁液に対して第2のインビボ液性応答を誘導し;そして(iv) 前記動物から目的とするポリクローナル抗血清を単離する、ことによって得られるポリクローナル抗血清を含む医薬組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において「ポリクローナル抗血清」という用語は、ポリクローナル抗体又は多重特異的抗体、Fab断片、F(ab’)断片、抗イディオタイプ抗体、及び上記のエピトープ結合断片に関するものである。ポリクローナル又は多重特異的抗体、Fab断片、F(ab’)断片、抗イディオタイプ抗体、及びエピトープ結合断片は、本明細書に概説した工程(iv)で単離されるように得られた血清中に含まれるか、又は当該技術分野において公知の対応する方法、特にHarlow及びLane、『抗体』(1988)に記載の方法を用いて更に精製することができる。本明細書において「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、即ち免疫特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含有する分子を表す。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれのクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であってもよい。
【0010】
「非ヒト脊椎動物においてインビボ液性応答を誘導する」という語句は、非ヒト脊椎動物における免疫応答の発現、特に非ヒト脊椎動物の胚性組織又はその精製画分に対する抗体反応の発現に関するものである。抗体反応は、胚性組織を用いた抗原刺激に対する1次及び2次抗体反応を含む。したがって、「インビボ液性応答を誘導する」という語句は、胚性組織に含まれる複数の抗原に対する抗体の産生に関与する免疫反応の発現に関するものである。本明細書の実施例で説明するように、非ヒト、好ましくは非ヒト脊椎動物の胚性組織は、特にホモジナイズされたマウス胎仔、例えば12日齢の胎仔から得られる組織又は細胞であってもよい。したがって、本明細書で使用した(工程(i))「非ヒト胚性組織」という用語は、最も好ましい態様では、ホモジナイズされた胎仔(又は胚性組織)から得られる単離細胞を含む。最も好ましくは、使用すべき「胚性組織細胞」は、いかなる組織塊を含まない。対応の更なる詳細は、本明細書の非限定的実施例、特に実施例1から得ることができる。本明細書で説明するように、本発明の好ましい態様では、「胚性組織」/「胚性組織細胞」は、マウス、最も好ましくはCBA/CaJマウスに由来する。対応の免疫用胚性細胞は、好ましくは10〜14日齢のマウス胎仔であり、最も好ましくは12日齢のマウス胎仔である。
【0011】
「遺伝系」という用語は、本発明によれば、非ヒト脊椎動物において免疫応答を誘導するために使用すべき胚性組織/胚性細胞は少なくとも同一種であるという事実に関する。したがって、マウス由来胚性組織を使用する場合、工程(i)の対応の免疫応答は、マウスにおいて誘導されるべきである。最も好ましくは、「同一遺伝系」という用語は、対応の免疫応答が誘導される動物と同種であるか、又は遺伝的に同一背景を有する動物が胚性組織の供給源として使用されるという事実に対応する。例えば実施例で説明するように、非ヒト胚性組織の供給源としてCBA/CaJマウスを使用し、単離胚性組織で免疫するために同一系統(CBA/CaJ)のマウスを使用することが想定され、例示される。
【0012】
医薬組成物の好ましい態様では、免疫されるべき非ヒト動物はマウスであり、最も好ましい態様ではマウスはCBA系マウスである。CBA系マウスは当該技術分野で公知であり、例えばJackson Laboratory、米国から入手可能である。CBA系は、特にCBA/H、CBA/J、CBA/CaJ、及びCBA/Nマウスを含む。実施例で示すように、CBA/CaJマウス、特にJackson Laboratoriesからストック番号000654で入手可能なマウスが最も好ましい。しかしながら、本明細書に記載の「非ヒト脊椎動物」は、ラット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ブタ、及びロバから成る群より選択してもよい。しかし、脊椎動物はマウスであることが最も好ましい。
【0013】
本発明の更に好ましい態様は、ポリクローナル抗血清が精製ポリクローナル抗血清である医薬組成物又は使用に関するものである。
「精製ポリクローナル抗血清」という用語は、当該技術分野において公知の標準的方法を用いて精製された単離ポリクローナル抗体又はその断片に関する。しかしながら、前記用語は、「免疫」精製された抗体調製物にも関するものであり、本明細書に記載の方法の工程(iv)で得られるポリクローナル抗血清は、非胚性(すなわち産後)器官、器官溶解物、又は非胚性器官若しくは器官溶解物由来の細胞と接触させられる。好ましくは、前記の非胚性(すなわち産後)器官、器官溶解物、又は非胚性器官若しくは器官溶解物由来の細胞は、インビボ腫瘍応答が誘導されるか又は誘導された動物と同種の非ヒト動物に由来するものである。そのような精製は、当該技術分野に熟練した者に公知の望ましくない交差反応性を回避するために好適な混合、吸着、又はインキュベーション方法によって行うことができる。好ましくは、精製方法は、実施例3に記載の方法に従って行われる。
【0014】
具体的には、「精製ポリクローナル抗血清」という用語は、単離ポリクローナル抗体又はその断片に関するものであり、均一になるまで、特に、純度が少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、更により好ましくは少なくとも97%、特に好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%のレベルまで精製されている。ポリクローナル抗血清の純度は、当該技術分野で公知の方法によって、最も好ましくは本発明の実施例に記載の方法によって確認することができる。したがって、好ましくは、本発明の精製ポリクローナル抗血清調製物が含む無関係な夾雑タンパク質又はタンパク質断片は5%未満である。最も好ましくは、前記調製物が含む無関係な夾雑タンパク質又はタンパク質断片は2%未満である。
【0015】
好ましくは、ポリクローナル抗血清は、免疫グロブリンを含む画分のような抗血清画分を含む。ポリクローナル抗血清の画分は、IgG画分であるか、又はF(ab’)断片画分であるか若しくはその画分を含むことが最も好ましく有益である。
【0016】
ポリクローナル抗血清を分画するためのさまざまな代替方法が存在し、当該技術分野に熟練した者に公知である。簡便な技法の一つに、例えばプロテインG又はプロテインAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィの使用が挙げられる。典型的にはカラムは、5ml又は10mlの充填されたプロテインA又はGアガロースを含有する。カラムのサイズは、プロテインA/Gの結合能及び処理される抗血清の量によって決定される。プロテインA及びプロテインGは、結合されるアガロース1mlあたり約20mlのIgGと結合する。
【0017】
「Fab断片」という用語は、抗原結合活性を含有する抗体断片を表す。抗体分子の2つの同一領域に相当し、重鎖のV及びC1ドメインと組み合わされた完全な軽鎖を含有する。ジスルフィド結合したヘテロ2量体であり、その各鎖は1の免疫グロブリンCドメイン及び1のVドメインを含有し、両方のVドメインの並置によって抗原結合部位が形成される。「F(ab’)断片」という用語は、抗体分子の2つの抗原結合領域が連結状態にある抗体断片を表す。この場合、重鎖の残りの部分はいくつかの小断片に切断される。Fab断片及びF(ab’)断片は、元の抗体と全く同一の抗原結合特異性を有するが、いかなるエフェクター分子又は細胞とも相互作用し得ない。
【0018】
抗体画分、抗体調製物、及び/又は抗体断片の産生(得られた血清から出発)に関するいくつかのアプローチが文献に報告されている。例えば、米国特許第4,849,352号は、固定化パパインを用いて抗体を消化し、次いで免疫アフィニティーにより断片を精製することによる両Fab断片の産生について記載している。また、固定化パパインを用いて抗体を消化し、F(ab’)断片及びFc小断片を得、次いでゲル濾過により免疫グロブリンを精製することによるF(ab’)断片の産生についても記載している。滅菌培地中で全血を用いてFab断片を産生する方法を記載する米国特許第5,733,742号には別のアプローチが示されおり、ここでは、好ましくは精製された、遊離又は固定化酵素に全血を直接接触させる。続いて、細胞残渣を遠心分離により除去し、得られた断片を分離及び回収し、次いで好ましくは免疫アフィニティーにより精製する。米国特許第4,814,433号は、Fab断片を産生する更なるアプローチを示しており、パパイン不含Fabを得るための手順を記載している。次いで、Fc断片及びハイブリッド化合物が保持された、プロテインAを有するカラムに溶液を通過させることによって断片を精製する。更なる方法は、ペプシンによる消化、及び硫酸アンモニウム又はナトリウムを用いた断片分画の沈殿を包含するが、通常、硫酸塩を用いた沈殿とその後の抗体画分の消化によって抗体による事前分離が行われる。
【0019】
ポリクローナル抗血清の最も重要な臨床的使用は、がんの改善、予防、及び/又は治療のための医薬組成物を製造することにある。したがって、本発明のポリクローナル抗血清は、がんを治療及び/又は改善する方法において被験者へ使用することもできる。好ましい態様では、被験者はヒト患者である。
【0020】
したがって本発明の1つの側面では、担癌被験者を改善、予防、又は治療するためのポリクローナル抗血清の使用であり、被験者の癌腫又はがん細胞は本発明のポリクローナル抗血清に結合する抗原を発現する。治療は、特に治療効果を十分発揮する量のポリクローナル抗体を担癌被験者に投与することを含む。本発明の別の側面は、標識されたポリクローナル抗体の投与である。当業者であれば、化学療法剤、アポトーシス剤、DNAの発現を阻害する薬剤、又は放射性薬剤のような抗体に使用可能な標識の種類を熟知している。当該技術分野で公知の多数の治療薬のなかでも、放射性同位体、抗炎症剤、酵素、アンチセンス分子、ペプチド、サイトカイン、及び化学療法剤から成る群より選択される治療薬が好ましい。
【0021】
したがって、更なる側面では、本発明によるポリクローナル抗体/ポリクローナル抗血清、又はその断片を、それを必要とする患者に投与することができ、ここで、前記血清又は得られた抗体(断片)調製物に含まれる抗体タンパク質又はその断片は治療剤と結合している。抗体を化学療法剤に結合させる方法は前述のとおりである。好適な化学療法剤は、当該技術分野に熟練した者に公知であり、限定されるものではないが、ダウノマイシン、アドリアマイシン、エトポシド、シクロホスファミド、メトトレキサート、ビンデシン、ネオカルヂノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5−フルオロウラシル、メルファラン、リシン、アブリン、及びカリケアマイシンが含まれる。
【0022】
これら薬剤は、2官能性又はヘテロ2官能性架橋剤、例えば、SPDP、2−イミノチオラン、カルボジイミド若しくはグルタルアルデヒドの使用などのさまざまな周知の化学的方法のいずれかを用いた化学的架橋結合によって、本発明のポリクローナル抗体又はその断片へ化学的に結合させることができる。
【0023】
抗体又は抗体断片へ、例えばクロラムブシルを結合させる方法は、Flechner、1993;Ghose、1972;及びSzekerke、1972に記載されている。例えばダウノマイシン及びアドリアマイシンを抗体に結合させる方法は、Hurwitz、1975及びArnon、1982に記載されている。抗体−リシン結合体を調製する方法は、米国特許第4,414,148号、及びOsawa、1982に記載されている。カリケアマイシンを抗体に結合させる方法は、Hamann、2002に認めることができる。抗体へのドキソルビシンの結合は、例えばStan、1999に由来する方法を用いることができる。さまざまな免疫毒素を産生するための更なる手法は、例えばThorpe、1982;Waldmann、1991;Blakely、1998;Waldmann、1988;又はCumber、1985に認めることができる。
【0024】
前記の抗体又は抗体断片の1つにリシン又はアブリンなどのポリペプチドを化学的に結合させることは、2官能性又はヘテロ2官能性試薬(例えば、グルタルアルデヒド又はNスクシミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオン酸塩(SPDP))を用いた化学的架橋反応のような当該技術分野で公知の方法によって行うこともできる。Waldmann、1988及びCumber、1985を参照されたい。
【0025】
抗体の2つの可変ドメインが互いに結合することによって形成され、それぞれが異なるエピトープに特異的な2重特異性抗体もがん療法において提唱されている。したがって、2重特異性抗体は、2つの異なる抗原結合部位(パラトープ)を有するハイブリッド免疫グロブリンであり、例えば化学的架橋によって調製することができる(Brennan、1985)。がん治療用の2重特異性抗体は、腫瘍抗原に対するパラトープと、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、又は他のエフェクター細胞による貪食又は溶解反応を仲介し得る細胞表面分子に対するパラトープとによって形成される(Van Spriel、2000;Kipriyanov、2004;Fanger、1991;Davol、2004を参照されたい)。
【0026】
本発明に包含される、ポリクローナル抗体に結合可能な更なる治療薬は、放射性同位体又は放射性同位体を含有する薬剤である。放射性同位体のなかでも、γ線、β線、及びα線放射性同位体を使用することができる。治療用放射性同位体としては、β線放射性同位体が好ましい。使用可能な放射性標識の種類には、インジウム111、ヨウ素131、ヨウ素125、イットリウム90、ルテチウム177、レニウム186、レニウム188、ビスマス213、コバルト、インジウムのさまざまな同位体、その他の放射性物質がある。放射性標識抗体のためのプロトコールとして、例えばWO93/05804号を参照されたい。悪性腫瘍細胞への局部照射及び破壊を実現するには、レニウム186、レニウム188、ヨウ素131、及びイットリウム90が特に有用なβ線同位体であることが示されている。したがって、レニウム186、レニウム188、ヨウ素131、及びイットリウム90から成る群より選択される放射性同位体が、本発明のポリクローナル抗血清のタンパク質に結合される治療薬として特に好ましい。
【0027】
したがって、放射性核種の放射線療法では、がん細胞にさまざまな放射線量を直接照射するための放射標識抗体の使用に焦点が当てられてきた(放射免疫療法)。本発明に従って得られる抗体及び抗体断片を、当該技術分野で公知の方法により放射性核種へ化学的に結合させてもよい。特に、Liu Yuanfang、1991;Eckelman、1980を参照されたい。
【0028】
本発明によれば、腫瘍特異的ポリクローナル抗血清は、各種の腫瘍又は腫瘍細胞に対するさまざまな「殺傷機序」を誘発することも可能である。例えば、腫瘍細胞上で補体系を活性化することができる。免疫グロブリン分子全体、即ちポリクローナル抗体は、腫瘍細胞に局在化して補体系を活性化することができ、その結果、膜に孔を開けて細胞を溶解させる(Harris、2004)。
【0029】
あるいは、免疫エフェクター細胞が腫瘍増殖部位に向けて誘導され、その場所で細胞傷害作用が活性化されることもある。特に、免疫グロブリン分子がエフェクター細胞を補充して活性化し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に至ることもある。ナチュラルキラー細胞(NK)は、IgGのFc断片に対する受容体を有するので、その付着によって標的細胞のアポトーシスを含む細胞傷害に至る一連の反応が活性化される。
【0030】
さらに、本明細書中に記載の各種毒素又は放射性核種のような、細胞の挙動又は細胞の生存に傷害をきたす細胞傷害性の分子又は原子は、前記の腫瘍又は腫瘍細胞の部位へ送達されることもある。腫瘍細胞に対して細胞毒性薬が有するそのような特異的標的作用によって、腫瘍部位で濃度の上昇を起す可能性があるものの、全身投与による用量規制の副作用は生じない。前記複合体は一端細胞表面に付着すると細胞質内に取り込まれ、そこで細胞の酵素が抗体と薬剤又は毒素を切り離す。その薬剤又は毒素は放出と同時に細胞死を含む傷害を細胞にもたらす。例えば、腫瘍細胞に結合した放射性標識抗体は細胞で放射能を濃縮する。細胞核から至近距離での照射によってがん細胞の死滅が起きる(Goldenberg、1993)。
【0031】
2重特異性の免疫グロブリン療法は、疾患に関連する一定の標的構造に対する免疫エフェクター機序の選択的動員に依拠する。こうして2重特異性分子は、エフェクター機序とその標的間の連結役となる。極めて多様なエフェクター機序は治療面への応用が期待され、その多くは既に高く評価されている。それらには、エフェクター分子(例えば、毒素、薬物、プロドラッグ、サイトカイン、放射性核種)の動員、エフェクター細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球、NK細胞、マクロファージ、顆粒球)の再標的化、及び担体系の標的化が含まれる。
【0032】
本発明のポリクローナル抗血清及び/又はそれから得られる抗体は、増殖性疾患、がんの医療的介入、及び/又は腫瘍の治療において特に有効である。
本発明の明細書に記載される「がん」又は「腫瘍」という用語は、悪性増殖に関連する疾患を含む。本発明によるがん又は腫瘍は、限定されるものではないが、下記を含む。
【0033】
1) (i)鼻腔及び副鼻腔の癌、鼻咽頭癌、口腔癌及び中咽頭癌喉頭及び下咽頭の腫瘍、唾液腺腫瘍及び傍神経節腫、並びに(ii)扁平上皮細胞癌、疣状癌、肉腫様扁平上皮細胞癌、リンパ上皮腫、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺房細胞癌、腺癌及び神経内分泌腫瘍の諸変異型を含めた頸頭部癌。
【0034】
2) (i)癌腫、腺癌、大細胞(未分化)癌及び扁平上皮細胞癌を含む各種の非小細胞肺癌、並びに(ii)燕麦細胞癌、リンパ球様癌、中期癌、及び(扁平上皮癌又は腺癌の合併した)SCLCを含む小細胞肺癌を含めた肺癌。
【0035】
3) (i)胸腺新生物、リンパ腫、胚細胞腫瘍及び癌腫を含む縦隔上前部の新生物、上腕、腸管及び心膜の嚢胞、異常上皮小体腫瘍及び甲状腺新生物;(ii)嚢腫性病変、リンパ腫、間葉性腫瘍及びがんを含む縦隔中部新生物;並びに(iii)神経原性腫瘍、嚢腫病変、間葉性腫瘍及び内分泌腺腫瘍を含む縦隔後部の新生物を含めた縦隔の新生物。
【0036】
4) (i)十二指腸癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、小腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門部の癌、扁平上皮細胞癌、腺棘細胞腫、カルチノイド腫瘍、平滑筋肉腫、間葉性腫瘍、上皮性新生物、混合型HCC/胆管癌、リンパ腫、及び黒色腫を含めた消化管癌。
【0037】
5) 腎臓及び尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、尿道及び陰茎癌、並びに移行細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、黒色腫、基底細胞癌及び間葉性腫瘍を含む泌尿生殖器系の癌。
6) 上皮内、精上皮及び非精上皮腫の癌、ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫、顆粒膜細胞腫、生殖芽細胞腫、中皮腫、肉腫、精巣網及び類表皮嚢胞の腺癌、リンパ腫、並びに転移性癌を含む精巣癌。
【0038】
7) 子宮内膜癌、子宮頚、膣及び外陰の癌、子宮体癌、妊娠性絨毛性疾患、卵巣癌、卵管癌及び腹膜癌、並びに上皮内腺癌、上皮内扁平上皮癌、悪性混合型ミュラー腫瘍(malignant mixed Mullerian tumor:MMT)、絨毛性腫瘍、及び胚細胞又は間質細胞の腫瘍を含む婦人科の癌。
【0039】
8) 乳癌、即ち、上皮内癌、非浸潤性乳管癌、及び上皮内小葉癌を含む乳房の悪性腫瘍。
9) 甲状腺腫瘍、副甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、膵内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍及びカルチノイド症候群、癌腫及び腺腫を含む多発性内分泌新生物1型(MEN 1)から成る群より選択される内分泌系の癌。
【0040】
10) (i)軟組織の肉腫;並びに(ii)紡錘細胞腫瘍、傍骨性骨肉腫、骨膜性骨肉腫、パジェト肉腫、高悪性度表在性骨肉腫及び小細胞骨肉種、骨の巨細胞腫瘍、仙骨の巨細胞腫瘍、悪性線維細胞組織腫、骨の線維肉腫、骨の悪性血管内皮腫、脊索腫、骨の小円形細胞肉腫、及び骨のリンパ腫(びまん性大細胞型リンパ腫)からなる骨の肉腫を含めた軟組織及び骨の肉腫。
【0041】
11) 上皮、肉腫様、及び混合型腫瘍を含む悪性中皮腫。
12) 基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、癌関連遺伝性皮膚症(色素性乾皮症、母斑性基底細胞癌症候群、ファーガソン−スミスの多発性自然治癒性上皮腫、ムーアトーレ(Muir−Torre)症候群、コーデン症候群、ガードナー症候群及びカーニー症候群を含む)、並びに表皮メルケル細胞から生じる腫瘍、メルケル細胞癌、表皮ランゲルハンス細胞から生じる腫瘍、毛嚢腫瘍、脂腺腫瘍、アポクリン汗腺腫瘍、エクリン汗腺腫瘍、真皮から生じる腫瘍、リンパ網内系腫瘍及び関連病態から成る群より選択される皮膚癌。
【0042】
13) 上皮黒色腫及び眼内黒色腫を含む悪性黒色腫。
14) 乏突起星細胞腫、脈絡叢の腫瘍、星状細胞腫−乏突起膠腫、星状細胞腫−上衣腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫及び膠芽細胞腫を含む中枢神経系の新生物。
【0043】
15) ウィルムス腫瘍、神経芽種、横紋筋肉腫、網膜芽種、ユーイング肉腫及び抹消原始神経外胚葉腫瘍、小児の固形腫瘍、並びに睾丸腫瘍、卵巣腫瘍、縦隔腫瘍及び膣腫瘍のような悪性性腺胚細胞及び性腺外胚細胞腫瘍、並びに卵黄嚢腫瘍、胎生癌腫、精上皮腫、絨毛腫、奇形腫、奇形癌及び未分化胚細胞腫を含めた小児癌。
【0044】
16) (i)小リンパ球性リンパ腫/B細胞慢性リンパ球性白血病(SLL/B−CLL)、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)及びバーキットリンパ腫(BL)などの細胞性非ホジキンリンパ腫、(ii)エイズ(AIDS)関連リンパ種、(iii)未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)及び成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのT細胞非ホジキンリンパ腫、(iv)ホジキン病、(v)急性リンパ性白血病(ALL)及び急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病、並びに(vi)リンパ芽球性リンパ腫、非開裂型小細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及び大細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫を含む白血病を含めたリンパ腫。
【0045】
17) 急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病、有毛細胞白血病、T細胞慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病及び形質細胞腫を含めた白血病。
【0046】
18) カポジ肉腫及び非カポジ肉腫などのエイズ関連の悪性疾患。
最も好ましい態様では、本発明のポリクローナル抗血清の使用により、治療、改善、及び/又は予防されるべきがんは、子宮癌である。
【0047】
さらに本発明は、がんを治療するための、本発明の医薬組成物(本明細書に規定の本発明のポリクローナル抗血清を含む)の使用に関するものであり、本発明による医薬組成物が、それを必要とする個体へ1回〜数回投与され、抗体タンパク質に連結した放射性同位体、又は化学療法剤により腫瘍細胞が破壊され、治療成績がモニターされる。前記の腫瘍治療方法は、インビボでもインビトロでも行うことができる。がんは本明細書に定義されたものである。抗体の長期適用中に免疫複合体によるアナフラキシー様ショックが誘発されることがあるため、患者にはコルチコイドなどの免疫抑制剤を併用することも想定される。
【0048】
投与されるべき前記抗体分子又は医薬組成物若しくは製剤は、医薬的に許容される担体若しくは賦形剤を更に含んでいてもよい。「医薬的に許容される担体」とは、投与される患者に対して生理学的に許容性のある担体を意味する。医薬的に許容される担体の1例は、生理食塩水である。医薬的に許容される担体はまた、例えば、グルコース、スクロース、若しくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、その他の安定剤、又は賦形剤を含む医薬的に許容される各種化合物を含んでいてもよい。他の医薬的に許容される担体及び担体製剤は周知であり、例えば一般に『レミントンの薬学』、1990年に記載されている。当該技術分野に熟練した者であれば、生理学的に許容性のある化合物を含む医薬的に許容される担体の選択は、例えば前記組成物の投与経路に依存することを知っているであろう。
【0049】
本明細書において「投与する」とは、前記組成物を患者に与え、結果的に患者の体内に留まらせること意味する。そのような投与は、当業者に決定される適切ないかなる経路によっても可能である。本発明の医薬組成物は、専門家に周知のさまざまな投与経路、特に静注又は標的組織への直接注入によって適用することもできる。全身投与は、静注、脈管内、筋注、動脈内、腹腔内、経口、又は髄腔内の投与が好ましい。より局所の投与は、皮下、皮内、心内膜、葉内、髄質内、肺内、又は処置すべき組織(結合、骨、筋肉、神経、上皮組織)への直接若しくは近傍で行われてもよい。ポリクローナル抗血清を用いた治療は、治療計画の全体、又は例えば、がんに対する化学療法、更なる抗体を用いた療法若しくは標準的療法の他の形態などを含む一部であってもよい。
【0050】
最も好ましくは、本発明の医薬組成物を静脈内に投与すべきである。
動物又はヒトの身体では、治療される腫瘍の種類又は原発部位に応じて静注又は他の経路、例えば、全身、目的の組織若しくは器官へ局部又は局所により前記抗体又は薬剤を適用することは有利なことが証明できる。例えば、びまん性であるか又は局在化しにくい腫瘍などでさまざまな器官又は器官組織が治療を必要とする場合、全身投与が望ましい。また、局所腫瘍などで新生物の増殖が局所に限られる場合、局所投与が検討されよう。したがって、本発明の医薬組成物は、がん細胞又はがん組織に近接する部位において静注又は他のいかなる適切な投与法によって適用することもできる。
【0051】
投与経路のいかんに係わらず、本発明の医薬組成物は、後述するように又は当該技術分野に熟練した者に公知の他の従来法によって医薬的に許容される剤形として製剤化される。
【0052】
本発明の医薬組成物における有効成分の実質投与量は変更可能であるため、特定の患者、組成物及び投与法において所望の治療的応答を起こすに十分な有効成分量が得られる。
選ばれた投与量は、使用時の本医薬組成物の活性、投与経路、投与時間、使用中の本医薬組成物の排泄速度、治療期間、本医薬組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は物質、治療対象患者の年齢、性別、体重、体調、健康状態及び既往歴、並びに医療分野で周知の要因を含む諸要因に依存するであろう。
【0053】
本発明のある非限定的態様では、ポリクローナル抗血清は生理食塩水溶液などの緩衝液50mLに溶解した、1〜10mg、好ましくは1.5〜5.5mg、より好ましくは2mgの用量として投与される。したがって、ある投与プロトコールでは、製剤の抗体用量が1〜10%、好ましくは2〜6%、より好ましくは4〜5%、特に好ましくは4%を含んでいてもよい。好ましくは、その溶液は、約1〜100分、好ましくは10〜60分、より好ましくは約20分かけて徐々に注入される。しかしなお、それより長い投与時間も短い投与時間も想定され、当該技術分野に熟練した者、例えば担当医師の技量の枠内にある。
【0054】
前記用量を完全に投与し得ないようなアレルギー反応又は他の反応が生じれば、より低い用量を投与時又は以降の治療に使用することもでき、その結果、用量の期待範囲は、1回の治療あたり1〜2mgとなろう。タンパク質に対するアレルギー反応のリスクを低減するため、経口又は静注ジフェンヒドラミン(25〜50mg)を用いた前投薬が一般に行われる。ポリクローナル抗血清の投与は、先立って行われるべき必要な手術の後に開始され、その治療期間が終了するまで続けることもできる。
【0055】
本発明は、医薬組成物を調製するための、本明細書に記載され規定されたポリクローナル抗血清の使用も提供し、前記医薬組成物が更なる抗増殖薬又は薬剤と組み合わせて治療を必要とする被験者に投与される。
【0056】
本発明のある態様では、使用された抗増殖薬又は薬剤は市販品である。非限定的な例として、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、HClリポソーム注入(HCl liposome injection)、トポテカン、塩酸塩、ゲンシタビン(gemcitabine)、シクロホスファミド及びエトポシド、又はそれらの組み合わせのいずれでもよい。例示だけを目的にすると、抗増殖薬又は薬剤は、クロマチン機能の阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、DNA損傷剤、代謝拮抗物質(それぞれ各種の葉酸拮抗薬、ピリミジン類似体、プリン類似体、糖修飾類似体など)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(インターカレート剤など)、及び/又はDNA修復阻害剤であってもよい。
【0057】
本発明で想定される化学療法剤は、作用機序に従って例えば以下のグループに分類することもできる:代謝拮抗物質/抗がん剤[各種のピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フロキシウリジン(floxuridine)、カペシタビン、ゲンシタビン及びシタラビン)及びプリン類似体、葉酸拮抗薬、並びに関連阻害剤(メルカプトトウリジン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン(cladribine)など);抗増殖剤/有糸分裂阻害剤[ビンカアルカロイド類(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、タキセン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール(nocodazole)、エポチロン類(epothilones)及びネーブルビンなどの微小管阻害剤、エピディポドフィロトキシン類(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン類、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトセン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、チトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン(hexamethylmelamineoxaliplatin)、イホスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メルクロエタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソレール、テニポシド、トリエチレンチオホスフォラミド及びエトポシド(VP16))を含む];抗生物質[ダクチノマイシン(アクチノマイシン D)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン系、ミトキサントロン、ブレオマイシン系、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシンなど];酵素[L−アスパラギナーゼ(身体のL−アスパラギンを代謝し、アスパラギンを合成する能力のない細胞で枯渇させる)];抗血小板薬;抗増殖剤/有糸分裂阻害アルキル化剤[ナイトロジェンマスタード類(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン類及びメチルメラミン類(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル−ブスルファン、ニトロソウレア類(カルマスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼンズ−ダカルバジニン(trazenes−dacarbazinine:DTIC)など]:抗増殖剤/有糸分裂阻害代謝拮抗物質[葉酸類似体(メトトレキサート)など];白金配位錯体[(シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド];ホルモン及びホルモン類似体[エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、バイカルタミド(bicalutamide)、ニルタミド(nilutamide)、及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール];抗凝血薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩類、その他のトロンビン阻害剤);線維素溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドクレル、アブシキマブ(abciximab);遊走阻害剤;分泌抑制薬(ブレベルジン(breveldin));免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)及び増殖阻害因子[血管内皮細胞因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤];アンジオテンシン受容体遮断薬;酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド類;抗体[トラスツズマブ(trastuzumab)、リツキシマブ];細胞周期阻害剤及び分化誘導物質(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトセン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾン、及びプレドニゾロン(prenisolone));増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導剤;各種毒素(コレラ毒素、リシン、緑膿菌外毒素、百日咳アデニル酸シクラーゼ毒素又はジフテリア毒素、及びカスパーゼ活性化因子など);並びに各種クロマチン分裂阻害剤。前記化学療法剤の好ましい投与量は、現在処方される投与量と等しい。
【0058】
最も好ましくは、抗増殖薬又は薬剤は、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、パクリタキセル及びセタキセルから成る群より選択される。
他の好ましい態様では、前記の抗増殖薬又は薬剤をさらに、本発明の医薬組成物の投与前、投与中又は投与後に投与されるべきである。したがって、その抗増殖薬又は薬剤をポリクローナル抗血清の投与前後の1、2、3若しくは4週以内に投与することもできる。
【0059】
一例として、ポリクローナル抗血清を化学療法の治療計画内で投与してもよい。その化学療法は、治療の担当医及び通常の臨床経験に従って3〜4週サイクルで行うことができる。化学療法は、2年以内で12週ごとに1回のポリクローナル抗血清投与した後、6サイクル以内で継続することができる。
【0060】
化学療法と抗体投与による併用療法、例えば、ある化学療法剤の投与後(例えば5日以内)に、本発明(若しくは本明細書の一部)のポリクローナル抗血清を用量2mg以内で、1、3、5、9週間、次いで8週ごとに20分かけて静注する治療計画も想定される。担当医は常に、本発明のポリクローナル抗体/ポリクローナル抗血清の使用により治療すべき患者個人の(医療的)ニーズに応じて対応する治療計画を推定する立場にある。
【0061】
本発明を、以下の実施例に従って例示する。
【実施例1】
【0062】
胚性細胞の取得
近交系CBA/CaJマウス(Jackson Laboratory、米国、ストック番号000654)のメス5匹及びオス2匹(6〜8週齢)を20×30cmのケージに入れて12時間(午後から開始)交配させた。次いで、膣栓検出により妊娠を確認し、妊娠しているメスを分別した。この日を妊娠1日目とみなした。
【0063】
妊娠12日目に妊娠マウスを頚椎脱臼により殺した。死の直後に、そのマウスを解剖板に乗せ、仰向けに固定した。外科用ハサミを用いて、皮膚及び腹膜を鼠蹊部から顎先にかけて腹側正中に沿って切開した。
【0064】
子宮を摘出し、ウェルセン溶液(PBS 1L中にNaEDTA 0.2gを含有)が入ったペトリ皿に移した。ピンセットとハサミを用いて胎児を胎嚢から剥がし、ウェルセン溶液(PBS 1L中にNaEDTA 0.2gを含有)で2回洗った。卵黄嚢を切除した。検出された12の膣栓のうち7つが妊娠していた。
【0065】
ウェルセン溶液(PBS 1000ml[NaCl 137mM、KCl 2.7mM、NaHPO 4.3mM、KHPO 1.4mM、pH7.3±0.1]中にNaEDTA 0.2gを含有)で洗浄した胎児は、細胞を放出するため、組織グラインダーで機械的にホモジナイズした。
【0066】
ホモジナイズされた胎児を4℃にて370×gで20分間遠心し、199培地(シグマアルドリッチ、製品番号M4530)を用いて妊娠マウス2匹あたり1mlで洗浄した。得られた材料を1分間静置した。遊離した細胞を滅菌シリンジ(25G 5/8針)で吸引し、組織塊を除去した。
【0067】
単離した細胞は、ウェルセン溶液(PBS 1L中にNaEDTA 0.2gを含有)で少なくとも100倍希釈してノイバウアー(Neubauer)改良型血球計算板を用いて計数した。
【実施例2】
【0068】
胚特異的脾臓細胞に富む画分の取得
本明細書中における胚性細胞を4℃にて20分間370×gで遠心した。上清を捨て、完全フロイントアジュバント(CFA)と混合し、マウス1匹あたりの細胞濃度を0.1ml CFA中で10×10細胞とした。各用量は個別に調製した。近交系CBA/CaJマウス(Jackson Laboratory、米国、ストック番号000654)の童貞のオス(6〜8週齢)に対して、フロイントアジュバントと細胞を混合する前記工程により得られたエマルジョン0.1mlの皮下注射によって免疫した。反応性の血清を得るためには、約70匹のオスマウスが必要であった。
【0069】
接種して5日後に、頚椎脱臼により殺して脾臓を摘出した。
前記工程により得られた免疫マウスからの脾臓を199培地(シグマアルドリッチ、製品番号M4530)含有のペトリ皿に集め、ハサミで細片に刻んだ。次いで、単一細胞の懸濁液が得られるまで細片をポッター・エレージェン(Potter−Elehjen)組織グラインダーを用いて磨りつぶした。シリンジを用いて19G針に繰り返し通過させて細胞塊を分散させた。得られた脾臓細胞懸濁液は、200μmのナイロンメッシュで濾過し、15mlのポリプロピレン製円錐チューブに移し、4℃にて200×gで10分間遠心した。上清は捨てた。夾雑赤血球を溶解するために、細胞ペレットに処理脾臓1個当たり塩化アンモニウム溶液(NHCl 0.15M、KHCO 1mM、NaEDTA 0.1mM、pH7.3±0.1)5mlを添加し、静かに混合し、室温にて5分間インキュベーションした。インキュベーション後、得られた混合物を4℃にて200×gで10分間遠心した。上清は捨てた。残った脾臓を199培地(シグマアルドリッチ、製品番号M4530)で洗浄し、20mlの199培地に懸濁した。
【実施例3】
【0070】
抗血清の調製
本明細書中における脾臓細胞を4℃にて200×gで10分間遠心し、上清を捨て細胞を完全フロイントアジュバント(CFA)と混合し、マウス1匹あたりの細胞濃度を0.1ml CFA中で10×10細胞とした。各用量は個別に調製した。生きたオスマウスに対して、前記で得られたエマルジョン0.1mlの腹腔内注射によって免疫した。血清10mlを得るためにオスのマウス約50匹へ接種した。
【0071】
接種の4日後、それらのマウスを頚椎脱臼により殺し、解剖板に乗せ、仰向けに固定した。外科用ハサミを用いて、皮膚及び腹膜を鼠蹊部から顎先にかけて腹側正中に沿って切開した。肋骨を切断し、胸腔を開いた。肺を切除せずに入念に除けて、心臓を摘出した。胸腔から血液を集め、凝固するまで4℃にて冷蔵した。次いで、その血液を4℃にて370×gで20分間遠心し、得られた血清を一緒にプールした。その後、56℃での加温インキュベーションを15〜20分間行った。
【0072】
正常マウスから切除した新鮮な器官の細胞とインキュベーションすることによって、望ましくない正常組織との交叉反応を回避した。そのために6〜8週齢のCBA/CaJマウス(Jackson Laboratory、米国、ストック番号000654)を頚椎脱臼により殺し、解剖板に乗せ、仰向けに固定した。外科用ハサミを用いて、皮膚及び腹膜を鼠蹊部から顎先にかけて腹側正中に沿って切開した。心臓、肝臓及び腎臓細胞を切除して、それらの器官をペトリ皿に乗せ199培地(シグマアルドリッチ、製品番号M4530)で洗浄した。血液を抜くために心臓を鉗子で圧し、脂肪を器官から分離した。
【0073】
続いて、それらの器官をハサミで細片に刻み、パスツールピペットを用いて15mlのポリプロピレン製円錐チューブに移した。次いで、細片を4℃にて370×gで10分間遠心し、1999培地で2回洗浄した。上清は捨て、細胞を前述で得られた血液と室温にて29〜25分間インキュベーションした。インキュベーション後、混合物を4℃にて370×gで290分間遠心し、粗い固形物を除去した。こうして得られた上清を4℃にて3500×gで10分間、最後の遠心分離にかけ、−70℃にて保存した。
【0074】
抗血清の更なる調製プロトコールは以下の工程を含む。
本実施例における脾臓細胞を4℃にて200×gで10分間遠心し、上清を捨て、細胞を完全フロイントアジュバント(CFA)と混合し、マウス1匹あたりの細胞濃度を0.1ml CFA中で10×10細胞とした。各用量は個別に調製した。童貞のオスマウスに対して、本明細書中におけるエマルジョン0.1mlを腹腔内注射することによって免疫した。血清10mlを得るためにオスのマウス約50匹へ接種した。最初に免疫から4日後、本明細書中において新たに取得した細胞によりマウスの免疫応答を増強させた。オスマウスに対して、本明細書中におけるエマルジョン0.1mlの腹腔内注射により免疫応答を増強させた。
【0075】
最後の接種から4日後、それらのマウスを頚椎脱臼により殺し、解剖板に乗せ、仰向けに固定した。外科用ハサミを用いて、皮膚及び腹膜を鼠蹊部から顎先にかけて腹側正中に沿って切開した。肋骨を切断し、胸腔を開いた。肺を傷付けないよう除けて、入念に心臓を摘出した。胸腔から血液を集め、凝固するまで4℃にて冷蔵した。次いで、その血液を4℃にて370×gで20分間遠心し、得られた血清を一緒にプールした。その後、56℃での加温インキュベーションを15〜20分間行った。
【0076】
正常マウスから切除した新鮮な器官の細胞とインキュベーションすることにより、望ましくない正常組織との交叉反応を回避した。このために6〜8週齢のCBA/CaJマウス(Jackson Laboratory、米国、ストック番号000654)を頚椎脱臼により殺し、解剖板に乗せ、仰向けに固定した。外科用ハサミを用いて皮膚及び腹膜を鼠蹊部から顎先にかけて腹側正中に沿って切開した。心臓、肝臓及び腎臓細胞を切除して得られた器官をペトリ皿に乗せ199培地(シグマアルドリッチ、製品番号M4530)で洗浄した。血液を採取するために心臓を鉗子で圧し、脂肪を器官から分離した。
【0077】
続いて、それらの器官をハサミで細片に刻み、パスツールピペットを用いて15mlのポリプロピレン製円錐チューブに移した。次いで、細片を4℃にて370×gで10分間遠心し、1999培地で2回洗浄した。上清は捨て、細胞を前述で得られた血液と室温にて29〜25分間インキュベーションした。インキュベーション後、混合物を4℃にて370×gで290分間遠心し、粗い固形物を除去した。こうして得られた上清を4℃にて3500×gで10分間、最後の遠心分離にかけ、−70℃にて保存した。
【実施例4】
【0078】
ポリクローナル抗体のアフィニティー精製
本明細書中に記載したポリクローナル抗血清から出発して、1mLのHiTrap HiTrap(登録商標)カラム(アマシャムバイオサイエンス、米国)を用い、製造業者の指示書に従ってプロテインG・アフィニティークロマトグラフィによるIgGの精製を行った。ポリクローナル抗血清2mLを、結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH7.0)で6mlまで希釈し、12,000gで5分間遠心した。得られた上清を、結合緩衝液で平衡化したカラムに流速1mL/分でかけた。このカラムをAbs280nm<0.01となるまで結合緩衝液20mLで洗浄した。吸着したIgGを、溶離緩衝液(0.1Mグリシン−HCl、pH2.7)で溶離した。酸に不安定な各種IgGの活性を保つため、500μl画分は1M Tris−HCl(pH9.0)50μlを含む試験管に集めた。280nmでのUVモニターに従ってIgGを溶離した。一般に、IgGは最初の3mL以内で溶離した。吸光度280nm>0.2を示す画分をプールし、PBS(NaCl 137mM、KCl 2.7mM、NaHPO 4.3mM、KHPO 1.4mM、pH7.3±0.1)に対して透析し、−20oCにて保存した。
【0079】
本明細書中に記載した工程により得られたさまざまな精製IgGは、アガロース固定化ペプシン(InmunoPure(登録商標)F(ab’)調製キット、カタログ番号44888、Pierce社、米国)を用い、製造業者の推奨方法に若干の修正を加えてペプシンにより消化した。特に、IgG溶液及びアガロース固定化ペプシンは、酢酸(20mM、pH2.8)で平衡化し混合した。消化は、37℃にて静かに撹拌しながら行った。インキュベーションの2時間後、F(ab’)断片を含む上清を分離し、1M Tris緩衝液を加えて、pHを中性近くに高めた。F(ab’)含有画分をPBSで透析し、−20℃にて保存した。SDS−PAGE解析で示されたように約90%のIgGがF(ab’)に転換された。
【実施例5】
【0080】
アフィニティー精製したポリクローナル抗体の品質試験及びタンパク質濃度の定量
IgG及びF(ab’)調製物の品質は、Laemmli、1970に従ってドデシル硫酸ナトリウム存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により調べた。タンパク質濃度は、BCA(商標)タンパク質アッセイキット(カタログ番号23227、Pierce、米国)を用いたスミス、1985の方法に従ってビシンコニン酸により測定した。
【実施例6】
【0081】
腫瘍特異的免疫染色
腫瘍を特異的に認識するために、ホルマリン固定パラフィン包埋した組織を免疫染色した。チェッカーボード・マルチノーマル・ブロック・スライド(カタログ番号T1065)及びチェッカーボード・マルチチューモア・ブロック・スライド(カタログ番号T1064)は、米国ダコ社から購入した。
【0082】
組織切片を脱パラフィン化して水に戻し、沸騰水浴中でTarget Retrieval Solution(ダコ、米国、カタログ番号S1699)を用いた抗原回収手順に20分間かけた。組織切片は、徐々に冷却した後、室温にてリン酸緩衝生理食塩水(PBS[NaCl 137mM、KCl 2.7mM、NaHPO 4.3mM、KHPO 1.4mM、pH7.3±0.1])の1%ウシ血清アルブミン(BSA:シグマ、米国、カタログ番号A7030)溶液と30分間インキュベーションすることによって特異的結合を阻害した。洗浄した後、各組織切片に対して、PBS中に1%BSAを含有するポリクローナルIgG(F(ab’)断片)の40μg/mL溶液(約50μL)を添加し、4℃の加湿チャンバー中で一晩インキュベーションし洗浄した。固有ペルオキシダーゼ活性は、製造業者のガイドラインに従って既製のPeroxidase Blocking Reagent(ダコ、米国、カタログ番号S2001)と一緒にインキュベーションすることによって阻害した。徹底的に洗浄した後、製造業者の指示書に従ってHRP−LSAB 2system(ダコ、米国、カタログ番号K0675)及びLiquid DAB Substrate−Chromogen System(ダコ、米国、カタログ番号K3465)を用いることによって、腫瘍特異的反応を検出した。顕微鏡分析に先立って、ヘマトキシリン−エオシンによる対比染色を実施した。
【実施例7】
【0083】
細胞増殖試験におけるポリクローナル抗血清のHeLa細胞に対する効果
HeLa細胞に対するポリクローナル抗血清の細胞傷害効果を測定するために、テトラゾリウム塩(MTS)を用いた比色分析法[ミトコンドリア活性用の基質として着色ホルマザンに還元される(Rode、2004)]を使用した。
【0084】
HeLa細胞[ATCC寄託番号CCL−2]は、5%ウシ胎仔血清(FCS:Bio Whitaker)及び40μg/mLゲンタマイシン(シグマ、米国)を添加したL−グルタミン(2mM)含有の最小必須培地(MEM:シグマ)中で日常的に保存された。培養物を含む25cm又は75cmの組織培養フラスコ(Nunc、米国)を、加湿5%COインキュベータ中で37℃にてインキュベーションした。必要に応じて、HeLa細胞を標準的なトリプシン処理法により継代培養した(Morgan及びDarling、1993)。培地を吸引濾過により除去し、細胞をFCS非含有培地で洗浄し、37℃にてトリプシン−EDTA溶液(PBS中における1%トリプシン、1mM EDTA(pH8.0)、シグマ)3mLで5分間インキュベーションした。剥がれた細胞は、完全培地(元の培養物25cm当たり5mL)で洗浄し、1×10細胞/mLの濃度で完全培地に再懸濁した。トリパンブルー色素排除法(2)により測定し、細胞生存率が95%を上回る細胞だけを試験に使用した。
【0085】
細胞増殖試験は、96ウェル組織培養プレート(Greiner,ドイツ)中で行った。表1で概説したように、HeLa細胞懸濁液(1×10細胞/mL)を多チャンネルピペットを用いたプレートの各ウェルに入れた。細胞を付着させるために、マイクロプレートを5%CO加湿インキュベータ中で37℃にて24時間インキュベーションした。吸引濾過により培地を除去し、細胞をFCS非含有のMEM培地で2回洗浄した。ポリクローナル抗血清は、濾過滅菌し、選択された培地(1ウェルにつき100μL)で適切に希釈してから、表1に記載したように多チャンネルピペットを用いてHeLa細胞含有のマイクロプレート(少なくとも4枚のレプリカ)に加えた。マイクロプレートは、5%CO加湿インキュベータ中で37℃にて24、48又は72時間インキュベーションした後、MTS/PMS検出試薬を添加した。
【0086】
ポリクローナル抗血清の複数ロット(R02/02、R08/02及びR09/02)を細胞増殖試験用に選択した。血清は、1%FCS含有若しくは0.1%FCS含有のMEM培地又はFCS非含有の培地(0%FCS)で1/20に希釈し、0.22μmの膜濾過により滅菌した。希釈物はその都度、調製した。
【0087】
【表1】

【0088】
HeLa細胞培養物に対するポリクローナル抗血清添加の効果を測定するために、プロメガCellTiter 96(登録商標)AQueous 非放射アッセイ(プロメガ、米国、カタログ番号G5421;Barltrop、1991;Cory、1991)を用いた。溶液は製造業者の指示書に従って調製した。ストックMTS(プロメガ、米国)及びPMS(ICN、米国)を、DPBS(シグマ)にそれぞれ2.0mg/mL及び0.92mg/mLの濃度で溶解した。溶液は、0.22μmの滅菌膜(Sartorius、ドイツ、カタログ番号16534)に通して濾過し、遮光チューブ中で−20℃にて保存した。MTSとPMS検出試薬は、滅菌条件下にて20:1の割合(MTS:PMS)で使用直前に混合し、細胞培養物に1:5の割合(試薬20μL/各培地100μL)で添加した。MTS/PMSの添加後、マイクロプレートを、5%CO加湿インキュベータ中で37℃にて4時間インキュベーションした。発色は、インキュベーションの間、コンピュータ連結Multiskan MSマイクロプレートリーダー(Thermo Labsystems)を用いて1時間毎に492nmでモニターした。
【0089】
得られた結果は、完全MEM培地中で増殖する細胞に比較してポリクローナル抗血清による処理細胞の代謝活性が減少していることを示していた(図16を参照されたい)。この効果は、APU血清で処理した場合の細胞数又は代謝活性の低下によるか又は両効果によって説明可能であった。しかし顕微鏡観察した場合、ポリクローナル抗血清による処理細胞は、明確なストレス傾向を示した。ポリクローナル抗血清にさらしたHeLa細胞培養物では、明らかな細胞質の空洞化(図17d)及び膜の変化(図17b)が認められた。
【実施例8】
【0090】
−チミジン細胞増殖アッセイにおけるポリクローナル抗血清のHeLa細胞培養物に対する効果
HeLa細胞に対するポリクローナル抗血清の細胞傷害効果を測定するために、DNA合成中のH−チミジン取り込みに基づく方法を用いた。10%ウシ胎仔血清を添加したL−グルタミン(2mM)含有の最小必須培地(イーグル)及び調節イーグルBSS[2g/L重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、1.0mMピルビン酸ナトリウム、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100g/l)含有]中でHeLa細胞(ATCC寄託番号CCL−2)を増殖させ、37℃の5%CO中において単層の付着細胞を得た。トリプシン溶液(0.25%トリプシン、0.53mM EDTA)処理により細胞を剥がした。細胞濃度を3200細胞/mlで完全培地に再懸濁し、96ウェルプレートへ分散させ(200μl/ウェル)、37℃にて5%CO中で5日間インキュベーションした。
【0091】
5日目に培地を捨て、ウシ胎仔血清非含有の培地(200μl/ウェル、4組)中にポリクローナル抗血清(ロットC0902)から得たプロテインG精製免疫グロブリンの異なる希釈液(60、30、15、7.5、3.25μg/ml)を加え、37℃にて5%CO中で24時間インキュベーションした。
【0092】
次いで細胞を収穫し、96ウェルウェルプレートβ線計測器を用いてH−チミジン取り込み量を計測した。各4組に対する平均c.p.m.±標準偏差(SD)値を計算した。
【0093】
得られた結果は、ポリクローナル抗血清からの精製免疫グロブリン処理細胞の場合、対照に比べてH−チミジン取り込み量の減少を示した。この効果は用量依存的であった(18図を参照されたい)。
【実施例9】
【0094】
汎用腫瘍抗原に対するポリクローナル抗血清による線維芽細胞の増殖阻害
4mML−グルタミン添加のイスコベ型(Iscove’s)修飾ダルベッコ培地[1.5g/L重炭酸ナトリウム(90%)及びウシ胎仔血清(10%)を含むように調節]中で線維芽細胞(ATCC寄託番号CCD−986Sk)を増殖させ、37℃の5%CO中において単層の付着細胞を得た。
【0095】
次いで、トリプシン溶液(0.25%トリプシン、0.53mM EDTA)処理により細胞を剥がした。細胞を3200細胞/mlで完全培地に再懸濁し、96ウェルプレートへ分散させ(200μl/ウェル)、37℃にて5%CO中で5日間インキュベーションした。5日目に培地を捨て、ウシ胎仔血清非含有の培地(200μl/ウェル、4組)中にポリクローナル抗血清(ロットC0902)からのプロテインG精製免疫グロブリンの異なる希釈液(60、30、15、7.5、3.25μg/ml)を加え、37℃にて5%CO中で24時間インキュベーションした。通常の血清(ロットC0402)から得られたプロテインG精製免疫グロブリンを対照として用いた。次いで、上清を捨て、完全培地(200μl/ウェル)を加え、細胞は16時間37℃にて5%CO中でH−チミジン(1μCi/ウェル)により放射線を当てた。
【0096】
最後に細胞を収穫し、96ウェルプレートβ線計測器を用いてH−チミジン取り込み量を計測した。各4組に対する平均c.p.m.±標準偏差(SD)値を計算した。
得られた結果によれば、対照に比べて、ポリクローナル抗血清から得られた精製免疫グロブリン処理細胞の場合、H−チミジン取り込み量に差はなかった(図19を参照されたい)。
【実施例10】
【0097】
ヒト線維芽細胞の免疫化学染色
反応性又は対照血清を混合したヒト線維芽細胞の免疫化学染色(ATCC寄託番号CCD−986Sk)を図20に示す。固定された細胞を、抗イディオタイプ血清とインキュベーションしてダコLSAB 2キットを用いて反応させ、核をマイヤーヘマトキシリンにより染色する(図20Aを参照されたい)か、又は対照血清とインキュベーションしてダコLSAB 2キットを用いて反応させ核をマイヤーヘマトキシリンにより染色した(図20Bを参照されたい)。抗イディオタイプ血清又は対照血清と細胞をインキュベーションしたいずれの場合でも、細胞膜の特異的染色は観察されなかった。どちらの状況でもポリクローナル抗血清を用いた研究に際して予期されたように、核に対するバックグラウンド染色が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の結腸腺癌である。倍率:40倍。
【図2】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の結腸腺癌である。倍率:40倍。
【図3】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の胃癌である。倍率:40倍。
【図4】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の胃癌である。倍率:40倍。
【図5】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の胃癌である。倍率:40倍。
【図6】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の乳癌である。倍率:40倍。
【図7】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の乳癌である。倍率:40倍。
【図8】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の前立腺癌である。倍率:40倍。
【図9】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の前立腺癌である。倍率:40倍。
【図10】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号022145)の肺腺癌である。倍率:40倍。
【図11】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号00121)の小腸正常組織である。倍率:40倍。
【図12】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号00121)の胃正常組織である。倍率:40倍。
【図13】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号00121)の前立腺正常組織である。倍率:40倍。
【図14】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号00121)の前立腺正常組織である。倍率:40倍。
【図15】ポリクローナル抗血清のF(ab)’画分を用いて染色したCheckerboard multi−tumor block(ダコ、ロット番号00121)の肺正常組織である。倍率:40倍。
【図16】ポリクローナル抗血清(ロット09/02及び08/02)のHeLa細胞に対するインビトロ効果の図である。HeLa細胞を播種し、培地で20倍希釈したポリクローナル抗血清のロット09/02及び08/02を処理した96ウェルプレートから得られた平均吸光度を示す。24時間後、プレートにMTS/PMS試薬を添加し、4時間インキュベーションした後に吸光度を記録した。
【図17】MEM/1%FCS中で増殖させたHeLa細胞の顕微鏡写真である。図17Aは、細胞をMEM/1%FCS中で増殖させた(10倍)。図17Bは、細胞をAPU血清ロットR09/02(MEM/1%FCSで20倍希釈)に24時間曝露させた(10倍)。図17Cは、MEM/1%FCS中のHeLa細胞の詳細である(40倍)。図17Dは、R09/02を用いたMEM/1%FCS中のHeLa細胞である(40倍)。
【図18】H−チミジン取り込み試験におけるポリクローナル抗血清のHeLa細胞に対するインビトロ効果の図である。HeLa細胞を播種し、培地で40倍希釈したポリクローナル抗血清のロット09/02を処理した96ウェルプレートから得られた取り込み値を示す。24時間後、プレートに完全MEM及びH−チミジンを添加し、16時間インキュベーションした後にH−チミジンの取り込みを記録した。
【図19】汎用腫瘍抗原に対するポリクローナル抗血清による線維芽細胞の増殖阻害の図である。線維芽細胞を播種し、培地で40倍希釈したポリクローナル抗血清のロット09/02を処理した96ウェルプレートから得られた取り込み値を示す。対照として正常血清(ロットC0402)を使用した。24時間後、プレートに完全MEM及びH−チミジンを添加し、16時間インキュベーションした後にH−チミジンの取り込みを記録した。
【図20】図20A:反応性血清を用いたヒト線維芽細胞(CCD−986−Sk、ATCC)の免疫組織化学的染色を示す。固定した細胞を抗イディオタイプ血清とともにインキュベーションした。ダコLSAB 2キットを用いて反応させた。マイヤーのヘマトキシリンで核を染色した。図20B:対照血清を用いたヒト線維芽細胞(CCD−986−Sk、ATCC)の免疫組織化学的染色を示す。固定した細胞を対照血清とともにインキュベーションした。ダコLSAB 2キットを用いて反応させた。マイヤーのヘマトキシリンで核を染色した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(i) 非ヒト脊椎動物と同じ系統(本明細書中において「同一遺伝系」)を有する非ヒト脊椎動物の胚性組織に対してインビボ液性応答を誘導し;
(ii) 免疫した前記非ヒト脊椎動物から脾臓を取り出し、前記脾臓から個々の脾臓細胞/リンパ球を単離し;
(iii) 工程(i)の非ヒト脊椎動物と同じ系統(遺伝系)を有する更なる非ヒト脊椎動物において工程(ii)で得られた単離脾臓細胞/リンパ球懸濁液に対して第2のインビボ液性応答を誘導し;そして
(iv) 前記動物から目的とするポリクローナル抗血清を単離する、
ことによって得られるポリクローナル抗血清を含む、医薬組成物。
【請求項2】
がんの改善、予防、及び/又は治療のための医薬組成物を製造するための、請求項1で特徴付けられた方法により得られるポリクローナル抗血清の使用。
【請求項3】
免疫されるべき非ヒト動物がマウスである、請求項1に記載の医薬組成物又は請求項2に記載の使用。
【請求項4】
マウスがCBA系のマウスである、請求項1若しくは3に記載の医薬組成物又は請求項2若しくは3に記載の使用。
【請求項5】
ポリクローナル抗血清が精製ポリクローナル抗血清である、請求項1、3若しくは4に記載の医薬組成物、又は請求項2、3若しくは4に記載の使用。
【請求項6】
ポリクローナル抗血清が抗血清の画分を含む、請求項1、3、4若しくは5に記載の医薬組成物、又は請求項2、3、4若しくは5に記載の使用。
【請求項7】
ポリクローナル抗血清の画分がIgG画分であるか、あるいはF(ab’)若しくはFab断片画分であるか又はそれらを含む、請求項6に記載の医薬組成物又は使用。
【請求項8】
ポリクローナル抗体又はその断片が治療剤に結合している、請求項7に記載の医薬組成物又は使用。
【請求項9】
治療剤が、エトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、カリケアマイシン、リシン、アブリン、又は放射性核種から成る群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物又は使用。
【請求項10】
被験者のがんを治療方法及び/又は改善する方法であって、以下の工程:前記治療又は前記改善を必要とする被験者に、請求項1、3、4、5、6、7、8、若しくは9のいずれか1項に規定された医薬組成物の医薬的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
被験者がヒトの患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
がんが、頸頭部癌、肺癌、縦隔の新生物、消化管癌、泌尿生殖器癌、精巣癌、婦人科癌、乳癌、内分泌系癌、軟部組織及び骨の肉腫、悪性中皮腫、皮膚癌、悪性黒色腫、中枢神経系の新生物、小児癌、リンパ腫、白血病、又はエイズ関連の悪性疾患である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の使用又は請求項10若しくは11に記載の方法。
【請求項13】
がんが子宮癌である、請求項12に記載の使用又は方法。
【請求項14】
ポリクローナル抗血清又は医薬組成物が、治療を必要とする被験者に更なる抗増殖薬又は薬剤と組み合わせて投与されるべきである、請求項2〜9、12、13のいずれか1項に記載の使用、又は請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
更なる抗増殖薬又は薬剤が、請求項1、3〜9のいずれか1項に規定された医薬組成物の投与前、投与中、又は投与後に投与されるべきである、請求項14に記載の使用又は方法。
【請求項16】
抗増殖薬又は薬剤が、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、及びドセタキセルから成る群より選択される、請求項14又は15に記載の使用又は方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−542325(P2008−542325A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514025(P2008−514025)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005269
【国際公開番号】WO2006/128715
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(505171964)ウィドネス・カンパニー・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】