説明

汚染物質の拡散防止構造及び方法

【課題】地盤内に分布する汚染物質を分離除去するに先立ち、該汚染物質が周辺に拡散するのを防止する。
【解決手段】本発明に係る汚染物質の拡散防止構造1は、地盤2内に構築された環状集水路3と、該環状集水路内の水を揚水する揚水ポンプ4とを備えてなる。環状集水路3は、汚染領域5がその水平投影位置で取り囲まれるように位置決めしてあるとともに、汚染領域5の上方に位置するように地盤2内に構築してあり、暗渠6に沿ってストレーナ管7を水平配置してなる。環状集水路3の側方位置には、集水ピット11をその底面深さがストレーナ管7よりも低くなるように地盤2に形成してあるとともに、該集水ピットの底面に揚水ポンプ4を据え付けてあり、集水ピット11を連通管10を介してストレーナ管7の内部空間に連通させることで、ストレーナ管7に流入した地下水を集水ピット11に集めて揚水ポンプ4で地上に揚水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の汚染領域に分布する汚染物質の拡散を防止する際に適用される汚染物質の拡散防止構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場跡地においては、揮発性有機塩素化合物、燃料油や機械油、ダイオキシン類、あるいはカドミウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、クロムなどの重金属といったさまざまな汚染物質が地盤に浸透していることがあり、かかる状況を放置すると、地盤内の汚染物質が土粒子間隙から抜け出して地表面から揮散し、あるいは地下水系に流入することにより、広範囲に拡散して不測の健康被害が生じるおそれがある。
【0003】
そのため、地盤内の汚染物質を原位置で浄化可能な技術が開発されており、例えば、掘削曝気法や揚水曝気法あるいは通水洗浄法をはじめ、土壌ガス吸引法、空気を送り込んでその気泡に汚染物質を連行させるいわゆる気泡連行浄化法、空気圧入を行って有害物質を揮発させるエアスパージング法、土中菌の微生物活性を利用したバイオレメディエーションによる方法、酸化還元反応を利用した薬液注入法など多種多様な方法が知られている。
【0004】
これらのうち、通水洗浄法は、地盤内の汚染領域を取り囲むように遮水壁を構築し、しかる後、遮水壁で囲まれた地盤領域に注水するとともに、注水された水を該地盤領域から揚水するものであって、汚染物質を、注水された水に遊離させる形で回収することにより、地盤を浄化することが可能となる(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−33757号公報
【特許文献2】特開平7−224440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、通水洗浄法は、地盤内の汚染物質を除去して地盤を浄化することが目的であって、注水された水に汚染物質を遊離させる必要があるため、十分な流速と流量で注入水を汚染領域に流入させるとともに、汚染物質が遊離した水、いわば汚染水については、周囲に拡散させることなく、確実に回収しなければならない。
【0007】
したがって、通水洗浄法を採用するにあたっては、上述したように汚染領域を取り囲むように、遮水壁を構築することが必要不可欠となるが、遮水壁を構築するには、例えば多数の鋼矢板を連続的に地盤内に打ち込むなど、費用と時間がかかり、土壌浄化に必要なトータル費用を押し上げる原因となっていた。
【0008】
一方、通水洗浄のような原位置処理ではなく、掘削土をプラントで浄化処理する技術も開発が進んでおり、かかる処理を選択した方が経済性に優れるものの、プラントの処理能力その他の事情によって汚染領域から掘削された汚染土を速やかにプラント処理できない場合や、原位置処理かどうかにかかわらず、汚染物質の特定や汚染物質の分布範囲あるいはそれらに応じた浄化方法の選定、さらには周辺環境への影響評価といった検討や準備に時間を要する場合がある。
【0009】
かかる場合においては、浄化処理を開始するまでの間、地盤内の汚染物質が周辺に拡散することがないよう、適切な措置を講じる必要があるが、一時的な措置であるため、経済性に優れた対策であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、地盤内に分布する汚染物質を分離除去するに先立ち、該汚染物質が周辺に拡散するのを防止可能な汚染物質の拡散防止構造及び方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る汚染物質の拡散防止構造は請求項1に記載したように、地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるようにかつ前記汚染領域の上方に位置するように前記地盤に環状集水路を構築するとともに、前記環状集水路内の水をその水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定に保たれた状態で揚水可能に構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る汚染物質の拡散防止構造は、前記環状集水路を、暗渠に沿ってほぼ水平に配置されたストレーナ管で構成するとともに、該ストレーナ管の内部空間に連通する集水ピットを前記ストレーナ管とほぼ同一又は該ストレーナ管よりも低い位置に設け、前記集水ピットに揚水ポンプを設置したものである。
【0013】
また、本発明に係る汚染物質の拡散防止方法は請求項3に記載したように、地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるようにかつ前記汚染領域の上方に位置するように前記地盤に環状集水路を構築し、前記汚染領域に対する浄化処理が開始されるまでの間、前記環状集水路内の水をその水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定となるように揚水するものである。
【0014】
通水洗浄は、十分な流速と流量で注入水を汚染領域に流入することにより、汚染領域に分布する汚染物質を注入水に遊離させるとともに、汚染物質が遊離してなる汚染水を揚水ポンプで回収するものであるが、かかる汚染水を周囲に拡散させることなく確実に回収するためには、上述したように遮水壁の構築が不可欠となる。
【0015】
本出願人は、さまざまな事情で浄化処理の開始に時間を要する場合があることを踏まえ、汚染水が地盤内で発生するのを抑制しながら、地盤内の汚染物質が周囲に拡散するのを防止することができないかに着眼して研究開発を行った結果、以下に述べる新規な発明をなすに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明においては、地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるようにかつ汚染領域の上方に位置するように環状集水路を地盤に構築するとともに、環状集水路内の水を、その水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定に保たれた状態で揚水可能にに構成し、かかる状態で環状集水路内の水を揚水する。
【0017】
このようにすると、通常の揚水井戸であれば、揚水井戸に向けてその全方位から地下水位が低下する動水勾配が地盤内に形成されるとともに、その動水勾配に沿った地下水流が発生するところ、本発明では、環状集水路で取り囲まれた内側地盤領域(以下、単に内側地盤領域)の地下水位が、環状集水路の周囲に拡がる外側地盤領域(以下、単に外側地盤領域)の地下水位よりも低く維持されながら、外側地盤領域では、環状集水路に流れ込む地下水流が形成される一方、内側地盤領域においては、水の供給が行われないため、定常状態においては、地下水がほとんど移動せずに滞留する。
【0018】
そのため、汚染領域においては、地下水が通過しない状態、すなわち汚染領域に分布する汚染物質が地下水の流れに曝されない状態となって、汚染物質は、地下水にほとんど遊離することなく汚染領域にとどまり、あるいはわずかに遊離したとしても、汚染物質が遊離した地下水がほとんど移動しないので、やはり汚染領域にとどまることとなり、かくして外側地盤領域で地下水に一定方向の流れが生じている場合であっても、内側地盤領域では、地下水の流れによる汚染物質の拡散を未然に防止することができるとともに、溶解やコロイド粒子による分散という形で汚染物質が地下水に拡散する場合が生じたとしても、環状集水路近傍における外側地盤領域での地下水の流入圧に押し戻され、汚染物質が環状集水路の外側にまで流出するおそれはない。
【0019】
また、上述したように、汚染領域に分布する汚染物質は、地下水にほとんど遊離せず、環状集水路を介して揚水された水も、ほとんどが外側地盤領域から流入した地下水であるので、揚水された水を浄化処理することなくそのまま環境に放流し、あるいは簡易な浄化処理を経て環境に放流することが可能となる。
【0020】
環状集水路は、地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるように、すなわち鉛直上方から地盤の地表面を見たとき、該汚染領域が包囲されるように構築され、なおかつ汚染領域の上方に位置するように構築される限り、その構造や形状は任意であって、例えば平面形状が円形状又は多角形状になるように構成することが可能である。
【0021】
ここで、汚染領域は、環状集水路内の水位を低下させてもなお、その水位の下方に位置することが前提であって、汚染領域の深さが元の地下水位よりも相対的に浅い場合には本発明の対象とならないが、本発明においては、外側地盤領域と内側地盤領域との間で生じるヘッド差はわずかであり、加えて、汚染領域の深さが元の地下水位よりも相対的に浅い場合は、汚染領域に分布する汚染物質がそもそも地下水流によって拡散するおそれが少ないため、実質的には、地下水流によって汚染物質が周辺地盤に拡散するおそれがある全ての場合に本発明を適用することが可能である。
【0022】
環状集水路内の水を揚水するための具体的構成としては、例えば環状集水路に沿って所定ピッチで揚水ポンプを複数設置するとともに、該各揚水ポンプを環状集水路内の水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定となるようにそれぞれ駆動制御する構成を採用することが可能であるが、前記環状集水路を、暗渠に沿ってほぼ水平に配置されたストレーナ管で構成するとともに、該ストレーナ管の内部空間に連通する集水ピットを前記ストレーナ管とほぼ同一又は該ストレーナ管よりも低い位置に設け、前記集水ピットに揚水ポンプを設置した構成としたならば、ストレーナ管によって環状集水路に沿った水位をほぼ一定に保つことができるため、環状集水路で集水された水を集水ピットに導いた上で、一つの揚水ポンプでこれを揚水することが可能となる。
【0023】
汚染物質は、揮発性有機塩素化合物、燃料油や機械油、ダイオキシン類、あるいはカドミウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、クロムなどの重金属が含まれるほか、セシウム137などの放射性物質も含まれる。
【0024】
本発明に係る汚染物質の拡散防止構造は、大気への緩やかな放散等によって濃度が徐々に低下することから人為的な浄化が不要になる場合にも適用することができるが、汚染領域に対する浄化処理が開始されるまでの汚染物質の拡散防止措置として用いるようにすれば、汚染物質の拡散を経済的にかつ長期間にわたり防止することができるとともに、その間を利用して最適な汚染浄化方法を選定することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造の図であり、(a)は鉛直断面図、(b)は環状集水路の断面詳細図。
【図2】A−A線に沿う水平断面図。
【図3】揚水ポンプ4を作動させる前の地下水位の状況を示した概念図。
【図4】本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1において揚水ポンプ4を作動させたときの地下水位の状況を示した概念図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る汚染物質の拡散防止構造及び方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造を示した鉛直断面図及び断面詳細図、図2はA−A線に沿う水平断面図である。これらの図に示したように、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1は、汚染領域5が滞水層に拡がっている地盤2に適用されたものであって、該地盤内に構築された環状集水路3と、該環状集水路内の水を揚水する揚水ポンプ4とを備えてなる。
【0028】
環状集水路3は、汚染領域5がその水平投影位置で取り囲まれる、換言すれば鉛直上方から地盤2の地表面を見たときに該汚染領域が包囲されるように位置決めしてあるとともに、水位低下前、すなわち揚水ポンプ4を駆動しないときの地下水位(図1の一点鎖線)から若干下がった深さであって、汚染領域5の上方に位置するように地盤2内に構築してあり、平面が八角形状で断面が矩形状をなす暗渠6に沿ってストレーナ管7をほぼ水平に配置して構成してある。
【0029】
ストレーナ管7は、透水孔9が多数形成された円筒状の中空管からなり、その周囲に充填された砂利8の間隙を介して地盤2から流入してきた地下水を集水するようになっている。
【0030】
一方、環状集水路3の側方位置においては、集水ピット11をその底面深さがストレーナ管7よりも低くなるように地盤2に形成してあるとともに、該集水ピットの底面に揚水ポンプ4を据え付けてあり、かかる集水ピット11を連通管10を介してストレーナ管7の内部空間に連通させることにより、ストレーナ管7に流入した地下水を集水ピット11に集めて揚水ポンプ4で地上に揚水することができるようになっている。
【0031】
このような汚染物質の拡散防止構造1を構築するには、まず、バックホウなどを用いて地盤2の地表面にトレンチを平面形が多角形状になるように掘削形成し、次いで、該トレンチの底部に砂利8を敷き詰めながら該砂利に埋設されるようにストレーナ管7を水平配置した後、トレンチの上方空間に土砂を埋め戻すことで地盤2内に環状集水路3を配置するとともに、該環状集水路の側方近傍に集水ピット11を掘削形成し、その底面に揚水ポンプ4を据え付ければよい。
【0032】
本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1を用いて汚染領域5に分布する汚染物質、例えば揮発性有機塩素化合物、燃料油や機械油といった油類、ダイオキシン類、カドミウム、鉛、銅、亜鉛、ニッケル、クロムなどの重金属、あるいはセシウム137などの放射性物質の拡散を防止するには、上述した拡散防止構造1において、集水ピット11の底面に据え付けられた揚水ポンプ4を作動させる。
【0033】
図3は、揚水ポンプ4を作動させる前の地下水位の状況を示した概念図であり、同図で言えば右から左に向かう地下水流が地盤2の滞水層に生じており、これを放置すれば、地下水が汚染領域5に流れ込むとともに、該汚染領域に分布する汚染物質が地下水に遊離し、さらには地下水の流れに乗って拡散するおそれがある。
【0034】
図4は、揚水ポンプ4を作動させたときの地下水位の状況を示した概念図であり、同図実線矢印は地下水の流れを、破線矢印はストレーナ管7内の水の流れをそれぞれ示す。同図でわかるように、揚水ポンプ4を作動させた後においては、環状集水路3で取り囲まれた内側地盤領域41の地下水位が、環状集水路3の周囲に拡がる外側地盤領域42の地下水位よりも低く維持されながら、外側地盤領域42では、環状集水路3に流れ込む地下水流が形成される一方、内側地盤領域41においては、水の供給が行われないため、定常状態においては、地下水がほとんど移動せずに滞留する。
【0035】
そのため、汚染領域5においては、地下水が通過しない状態、すなわち汚染領域5に分布する汚染物質が地下水の流れに曝されない状態となり、汚染物質は、地下水にほとんど遊離することなく汚染領域にとどまるか、あるいはわずかに遊離したとしても、汚染物質が遊離した地下水がほとんど移動しないので、やはり汚染領域5にとどまる。
【0036】
内側地盤領域41の地下水位を外側地盤領域42の地下水位よりどの程度低く設定するかは、地盤2の透水係数や地下水流の速度などを勘案しながら適宜定めればよいが、必要に応じて内側地盤領域41と外側地盤領域42のそれぞれに水位計を設置し、該水位計でそれぞれの地下水位を監視しつつ、例えば、ストレーナ管7の中空内面のうち、底部位置が下限水位、天井位置が上限水位となるように、揚水ポンプ4を駆動制御するようにすればよい。
【0037】
なお、揚水ポンプ4による水位低下後の地下水位は、内側地盤領域41内で地下水流が生じないよう、環状集水路3に沿ってほぼ一定にする必要があるが、地下水を集水するためのストレーナ管7は、内部が中空であってかつ環状集水路3に沿ってほぼ水平に設けてあるため、環状集水路3に沿った地下水位はおのずと一定となる。
【0038】
また、汚染領域5に分布する汚染物質が、溶解やコロイド粒子による分散という形で地下水に拡散する場合が生じたとしても、環状集水路3近傍では、図4に示したように外側地盤領域42から環状集水路3に流れ込む地下水の流れが形成されているため、上述した汚染物質は、かかる地下水の流入圧に押し戻され、外側地盤領域42へは拡散しない。
【0039】
このように汚染物質の拡散防止構造1を用いた汚染物質の拡散防止を所望の期間にわたって継続した後、汚染領域5に対する原位置浄化処理、又はプラント処理のための掘削搬出を適宜開始する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1によれば、汚染領域5においては、地下水が通過しない状態となり、該汚染領域に分布する汚染物質は、地下水にほとんど遊離することなく汚染領域5にとどまる。
【0041】
そのため、外側地盤領域42で地下水に一定方向の流れが生じている場合であっても、内側地盤領域41では、地下水の流れによる汚染物質の拡散を未然に防止することが可能となる。
【0042】
また、溶解やコロイド粒子による分散という形で汚染物質が地下水に拡散する場合が生じたとしても、環状集水路3近傍における外側地盤領域42での地下水の流入圧に押し戻されるため、汚染物質が環状集水路3の外側にまで流出するおそれはない。
【0043】
また、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1によれば、汚染領域5に分布する汚染物質は、地下水にほとんど遊離せず、環状集水路3を介して揚水された水は、ほとんどが外側地盤領域42から流入した地下水であるため、揚水された水を浄化処理することなくそのまま環境に放流し、あるいは簡易な浄化処理を経て環境に放流することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止構造1によれば、環状集水路3を、暗渠6に沿ってほぼ水平に配置されたストレーナ管7で構成するとともに、該ストレーナ管の内部空間に連通する集水ピット11をストレーナ管7よりも低い位置に設け、集水ピット11に揚水ポンプ4を設置するようにしたので、ストレーナ管7によって環状集水路3に沿った水位をほぼ一定に保つことができるとともに、環状集水路3で集水された水を集水ピット11に導いた上で、一つの揚水ポンプ4でこれを揚水することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る汚染物質の拡散防止方法によれば、汚染領域5に対する浄化処理が開始されるまでの汚染物質の拡散防止措置として汚染物質の拡散防止構造1を用いるようにしたので、汚染物質の拡散を経済的にかつ長期間にわたり防止することができるとともに、その間を利用して最適な汚染浄化方法を慎重に選定することも可能となる。
【0046】
本実施形態では、地下水に一定の流れがある場合に本発明を適用した例を説明したが、地下水に流れがない場合であっても、溶解やコロイド粒子の分散という形での汚染物質の拡散を防止するために本発明を適用することが可能である。
【0047】
また、本実施形態では、環状集水路3を、暗渠6にストレーナ管7を水平配置して構成するとともに、該ストレーナ管の内部空間に連通するように集水ピット11を掘削形成して該集水ピットの底面に揚水ポンプ4を据え付けるようにしたが、これに代えて、暗渠6自体を環状集水路とするとともに、該暗渠に充填された砂利8の間隙に連通するように揚水ポンプを配置するようにしてもよい。
【0048】
かかる変形例においては、暗渠6に流入した地下水が砂利8の間隙を流れながら集水されるため、その透水抵抗によって環状集水路に沿った水位が一定にならない状況が想定されるが、かかる場合には、揚水ポンプを環状集水路に沿って所定ピッチで複数設置するとともに、環状集水路に沿った水位が一定になるように、該各揚水ポンプをそれぞれ駆動制御するようにすればよい。
【0049】
一方、環状集水路の設置深さが浅くても足りる場合、暗渠6自体を環状集水路とした上、さらに砂利8を省略して単なるトレンチあるいはU字溝として構成してもかまわない。
【0050】
かかる変形例においては、環状集水路に沿った水位がほぼ一定になるため、本実施形態と同様、揚水ポンプを環状集水路に沿って複数設置する必要はなく、例えば一台で足りる。
【0051】
また、本実施形態及び上述の変形例では、環状集水路内の水を揚水ポンプで揚水するようにしたが、これに代えて、地上に真空ポンプを設置するとともにその吸入口を環状集水路に連通させるようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0052】
1 汚染物質の拡散防止構造
2 地盤
3 環状集水路
4 揚水ポンプ
5 汚染領域
7 ストレーナ管
11 集水ピット
41 内側地盤領域
42 外側地盤領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるようにかつ前記汚染領域の上方に位置するように前記地盤に環状集水路を構築するとともに、前記環状集水路内の水をその水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定に保たれた状態で揚水可能に構成したことを特徴とする汚染物質の拡散防止構造。
【請求項2】
前記環状集水路を、暗渠に沿ってほぼ水平に配置されたストレーナ管で構成するとともに、該ストレーナ管の内部空間に連通する集水ピットを前記ストレーナ管とほぼ同一又は該ストレーナ管よりも低い位置に設け、前記集水ピットに揚水ポンプを設置した請求項1記載の汚染物質の拡散防止構造。
【請求項3】
地盤内の汚染領域がその水平投影位置で取り囲まれるようにかつ前記汚染領域の上方に位置するように前記地盤に環状集水路を構築し、前記汚染領域に対する浄化処理が開始されるまでの間、前記環状集水路内の水をその水位が該環状集水路に沿ってほぼ一定となるように揚水することを特徴とする汚染物質の拡散防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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