説明

沈殿池設備

【課題】傾斜板又は傾斜管沈降装置内に流入する水の流速を均一化して、濁度密度、温度密度流を防止し、沈殿池内のフロックのフロックがキャリーオーバーを防止できる沈殿池設備を提供すること。
【解決手段】沈殿池10内に傾斜板又は傾斜管沈降装置11、集水トラフ12、流入室13を配置すると共に、該流入室底部に堆積した汚泥を排出する汚泥排出機構を備えた沈殿池設備において、流入室13内の傾斜板又は傾斜管沈降装置11の下方に水を整流し且つ汚泥を排出する整流排泥装置14を設けた。整流排泥装置14は多数の整流排泥セル15を備え、各整流排泥セル15は平断面形状が矩形状で、上端から所定部分は平断面が同じ形状で且つ同じ断面積であり、その下方断面が徐々に縮小するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場で使用される沈殿池設備に関し、特に沈殿池設備の沈殿池に配置された傾斜板又は傾斜管沈降装置に流入する水の流速を均一化して、沈殿池内のフロックのキャリオーバを防止するようにした沈殿池設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の沈殿池設備は図1に示すように、沈殿池100内に傾斜板又は傾斜管沈降装置101を配置し、傾斜板又は傾斜管沈降装置101の上部に集水トラフ102、下部に水(濁っている水)の流入する流入室103を配置している。沈殿池100の側部には整流壁104を配置し、該整流壁104を通して水Wが整流されて流入するようになっている。該流入室103に流入した水は傾斜板又は傾斜管沈降装置101の下端流入部に流入する。傾斜板又は傾斜管沈降装置101内においては、流入水は固液分離されて、水は上昇して集水トラフ102に流れ込む。流水中の汚泥は傾斜板又は傾斜管沈降装置101内で分離され、傾斜面を滑り落ち、流入室103を沈降し、該流入室103の底部に堆積する。堆積したフロック、即ち汚泥は汚泥掻寄機108で掻き寄せられ排泥ピット105に集められる。排泥弁106を開くことにより、排泥ピット105内の汚泥は沈殿池100の外に排出されるようになっている。なお、図1の107は、汚泥掻寄機108を駆動する駆動装置である。
【非特許文献1】水道施設設計指針2000 197ページ 平成12年3月31日発行 社団法人日本水道協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図2に示すように水Wは整流壁104を通して均一な流速の整流水wとなって流入室103に流入するが、傾斜板又は傾斜管沈降装置101内においては、沈殿池100に流入する水Wの高濁度による濁度密度流、沈殿池100内の水温差による温度密度流によって傾斜板又は傾斜管沈降装置101内の水の流速が不均一となり(例えば図2のA部分で流速が速くなる)、沈殿池100内のフロックがキャリオーバして後段のろ過池(図示せず)に流出することがある。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、傾斜板又は傾斜管沈降装置内に流入する水の流速を均一化して、濁度密度、温度密度流を防止し、沈殿池内のフロックのフロックがキャリオーバを防止できる沈殿池設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、沈殿池内に傾斜板又は傾斜管沈降装置を配置し、傾斜板又は傾斜管沈降装置の上部に集水トラフ、下部に水が流入する流入室を配置すると共に、該流入室底部に堆積した汚泥を排出する汚泥排出機構を備え、該流入室に流入した水が前記傾斜板又は傾斜管沈降装置を通って前記集水トラフに流出するように構成した沈殿池設備において、前記流入室内の前記傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に該傾斜板又は傾斜管沈降装置に流入する水を整流し且つ汚泥を排出する整流排泥装置を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の沈殿池設備において、前記整流排泥装置は平面状に互いに隣接して配列した多数の整流排泥セルを備え、前記各整流排泥セルは平断面形状が多角形状で、上端から下方所定位置までの平断面が同じ形状で且つ同じ断面積であり、該所定位置から下方はその断面が徐々に縮小するように構成され、下端開口部が水の流入口、上端開口部が水の流出口となっていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の沈殿池設備において、前記傾斜板又は傾斜管沈降装置は前記沈殿池の上下方向所定位置に設置された架台に搭載設置されており、
前記整流排泥装置はその上端が前記架台に前記傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に位置するように取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の沈殿池設備において、前記整流排泥装置は、その上端が前記該傾斜板又は傾斜管沈降装置の下端に連結し一体的に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に該傾斜板又は傾斜管沈降装置に流入する水を整流し且つ汚泥を排出する整流排泥装置を設けたので、傾斜板又は傾斜管沈降装置下端の流入部に流入する水の流速は均一化され、濁度密度流、温度密度流を防止して沈殿池内のフロックのキャリオーバを防止できる沈殿池設備を提供できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、整流排泥装置の各整流排泥セルは平断面形状が多角形状で、上端から下方所定位置までの平断面が同じ形状で且つ同じ断面積であり、該所定位置から下方はその断面が徐々に縮小するように構成されたので、各整流排泥セルの断面縮小部の下端の流入口に流入する噴流水は断面積が徐々に大きくなっていく部分を通り、断面形状及び断面積が同一部分を通る間に流速が均一化され、斜管沈降装置下端の流入部に流入する水の流速は均一化され、濁度密度流、温度密度流を防止して沈殿池内のフロックのキャリオーバを防止できる。また、整流排泥装置の各整流排泥セルの平断面形状は正多角形であることが好ましく、さらには矩形状又は正六角形であることがより好ましい。矩形状(正方形)又は正六角形の形状を採用することで、沈殿設備への整流排泥セルの設置が容易になり、また、流入した水の流速がより均一化されやすいからである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、整流排泥装置を傾斜板又は傾斜管沈降装置が搭載されている架台に該傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に位置するように取り付けたので、傾斜板又は傾斜管沈降装置を架台に搭載させた既存の沈殿池設備を本発明に係る沈殿池設備に容易に改造することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、整流排泥装置は該傾斜板又は傾斜管沈降装置の下端に一体的に連結されて設けられているので、整流排泥装置と該傾斜板又は傾斜管沈降装置は一体となるから、沈殿池設備の沈殿池への設置が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。図3及び図4は本発明に係る沈殿池設備の沈殿池の要部を示す図で、図3は沈殿池の要部を示す側断面図、図4は図3のB−B平断面図である。沈殿池10内に傾斜板又は傾斜管沈降装置11を配置し、傾斜板又は傾斜管沈降装置11の上部に集水トラフ12、下部に水(濁水)が流入する流入室13を配置している点は、図1の沈殿池設備と同一である。ここでは、流入室13内の傾斜板又は傾斜管沈降装置11の下方に該傾斜板又は傾斜管沈降装置11に流入する水を整流し且つ汚泥を排出する整流排泥装置14を設けている。なお、整流壁、汚泥掻寄機、排泥ピット等は図1と略同一であるから、その図示は省略する。
【0014】
整流排泥装置14は互い隣接して平面状に配列した多数の整流排泥セル15を備え、各整流排泥セル15は図5及び図6に示すように、平断面形状が矩形状(正方形)で、上端から下方所定位置まで(上端から下方寸法L4-1まで)はその平断面が同じ矩形状で且つその断面積も同じである。該所定位置から下端まで(寸法L4-1の下端から寸法L4-2まで)その断面が徐々に収縮する収縮部(傾斜部15c)ように構成され、その内面が傾斜面をなしている。即ち、各整流排泥セル15から所定位置までは平断面が矩形状で且つ断面積が同一で、所定位置から下端までが平断面が矩形状で断面積が徐々に収縮するように構成されている。そして整流排泥セル15の下端は開口し水の流入口15aとなっており、上端は同じく開口し水の流出口15bとなっている。ここで、流入口15aから流入する水の噴流を減衰させるためには、開口面積率(流出口15bに対する流入口15a)を5%〜10%程度とするか、または、流入口15aへの流入速度を500mm/min〜200mm/min程度とするのか好ましい。
【0015】
各整流排泥セル15は例えば樹脂材で形成されている。複数個の整流排泥セル15を吊下げ用ワイヤ16で縛り、傾斜板又は傾斜管沈降装置11を設置している架台17に吊り下げて、整流排泥装置14の上端、即ち、各整流排泥セル15の上端開口の流出口15bが傾斜板又は傾斜管沈降装置11の下方に位置するように取り付ける。これにより、既存の沈殿池設備の沈殿池10の流入室13内に整流排泥装置14を配置することが容易となる。即ち、既存の傾斜板又は傾斜管沈降装置11が架台17に設置されている構成の沈殿池設備を本発明に係る沈殿池設備に改造することが容易となる。また、傾斜板又は傾斜管沈降装置11上端から集水トラフ12までの寸法L1、傾斜板又は傾斜管沈降装置11の厚さ寸法L2、傾斜板又は傾斜管沈降装置11下端から整流排泥装置14上端までの寸法L3、整流排泥装置14の厚さ寸法L4は、流速の均一化、フロックの分離、沈降効率等を考慮して任意に設定できるが、ここではL1=600mm、L2=800mm、L3=300mm、L4=500mmとした。
【0016】
上記のように互い隣接して平面状に配列した多数の整流排泥セル15で構成された整流排泥装置14において、図6に示すように、各整流排泥セル15の流入口15aから流入した水wは上向に流れる。そして断面積が大きくなった断面拡張部で流速が均一化され、傾斜板又は傾斜管沈降装置11へと流入する。流入する水と共に流入してくるフロック(汚泥)fは整流排泥セル15内で沈降し、下部傾斜部分15cに堆積し、徐々に落下していく。また、傾斜板又は傾斜管沈降装置11から落下するフロックも整流排泥セル15内を沈降し、下部傾斜部分15cに沈降して堆積し徐々に落下していく。この下部傾斜部分15cの傾斜角度θは安息角度に近い角度、即ち50°〜70°好ましくは55°〜65°、より好ましくは60°とするのがよい。また、整流排泥セル15の高さ幅寸法は流入口(下端開口)15aから流入する水の噴流が減衰するのに要する距離に設定する。ここでは高さ寸法L4=500mmとし、断面拡張部の高さ寸法L4-1=200mm、断面収縮部の高さ寸法幅寸法L4-2=300mm、流出口(上端開口)15bの幅寸法L5=500mm、流入口(下端開口)15aの幅寸法L6=150mmとした。
【0017】
なお、上記例では、整流排泥装置14を傾斜板又は傾斜管沈降装置11とは別々に製造し、複数個の整流排泥セル15からなる整流排泥装置14を吊下げ用ワイヤ16で傾斜板又は傾斜管沈降装置11を設置している架台17に吊り下げて取り付ける例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば図7に示すように整流排泥装置14と傾斜板又は傾斜管沈降装置11を一体的に製造し、これを沈殿池に設置するようにしてもよい。これにより、傾斜板又は傾斜管沈降装置11と整流排泥装置14は一体となっているから、沈殿池に設置するのが容易となる。
【0018】
また、整流排泥セル15の形状も平断面矩形に限定されるものではなく、例えば図8(a)、(b)にその平面、側面を示すように、平断面が正六角形で下部に断面が収縮した傾斜部15cを形成し、下端開口部を流入口15a、上端開口部を流出口15bとした整流排泥セル15を用い、この整流排泥セル15を図9(図3のB−B断面に相当)に示すように、多数互い隣接させて平面状に配列して整流排泥装置14を構成してもよい。
【0019】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の沈殿池設備の構成例を示す図である。
【図2】従来の沈殿池設備の水の流れ状態を示す図である。
【図3】本発明に係る沈殿池設備の要部構成例を示す図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明に係る沈殿池設備の一部を示す図である。
【図6】本発明に係る沈殿池設備の整流排泥装置の整流排泥セルの水及びフロックの動きを説明するための図である。
【図7】本発明に係る沈殿池設備の傾斜板又は傾斜管沈降装置及び整流排泥装置の構成例を示す図である。
【図8】本発明に係る沈殿池設備の整流排泥装置の整流排泥セルの構成例を示す図である。
【図9】本発明に係る沈殿池設備の整流排泥装置の平面構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 沈殿池
11 傾斜板又は傾斜管沈降装置
12 集水トラフ
13 流入室
14 整流排泥装置
15 整流排泥セル
16 吊り下げ用ワイヤ
17 架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池内に傾斜板又は傾斜管沈降装置を配置し、傾斜板又は傾斜管沈降装置の上部に集水トラフ、下部に水が流入する流入室を配置すると共に、該流入室底部に堆積した汚泥を排出する汚泥排出機構を備え、該流入室に流入した水が前記傾斜板又は傾斜管沈降装置を通って前記集水トラフに流出するように構成した沈殿池設備において、
前記流入室内の前記傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に該傾斜板又は傾斜管沈降装置に流入する水を整流し且つ汚泥を排出する整流排泥装置を設けたことを特徴とする沈殿池設備。
【請求項2】
請求項1に記載の沈殿池設備において、
前記整流排泥装置は平面状に互い隣接して配列した多数の整流排泥セルを備え、
前記各整流排泥セルは平断面形状が多角形状で、上端から下方所定位置までの平断面が同じ形状で且つ同じ断面積であり、該所定位置から下方はその断面が徐々に縮小するように構成され、下端開口部が水の流入口、上端開口部が水の流出口となっていることを特徴とする沈殿池設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の沈殿池設備において、
前記傾斜板又は傾斜管沈降装置は前記沈殿池の上下方向所定位置に設置された架台に搭載設置されており、
前記整流排泥装置はその上端が前記架台に前記傾斜板又は傾斜管沈降装置の下方に位置するように取り付けられていることを特徴とする沈殿池設備。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の沈殿池設備において、
前記整流排泥装置は、その上端が前記該傾斜板又は傾斜管沈降装置の下端に連結し一体的に設けられていることを特徴とする沈殿池設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−69181(P2007−69181A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262181(P2005−262181)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)