説明

沈着基質ユニット及び浮遊幼生育成用構造物

【課題】日照が妨げられず、中詰め材同士の間に隙間が生じず中詰め材が内部で動かないようにした沈着基質ユニット並びにこれを用いた浮遊幼生育成用構造物を提供する。
【解決手段】浮遊幼生を沈着させる基質として用いる沈着基質ユニット(1)において、所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網(2)と、
前記網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体からなる、前記袋網に充填された中詰め材(3,31)と、前記袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段と、を備え、前記締付手段が、前記袋網の外面を周回させるとともに該袋網の内部を貫通させてかつ緊張させたロープである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊幼生期をもつ有用な動植物を沈着または着生(以下、着生の意味も含めて単に「沈着」と称する場合がある)させるために水底に設置される沈着基質ユニット、並びにこの沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋や河川において砂泥が滞留する砂泥底質の水底は、概ね流速が緩やかであるため、浮遊幼生期をもつ有用な動物又は植物に属する生物(以下、「浮遊幼生」と称する)が集積されやすい。ここでの浮遊幼生は、例えばナマコ、アワビ、ウニまたは藻類などである。しかしながら、砂泥底質の水底は、岩礁域や礫底質の水底と異なり、幼生が掴まる場所(石岩質(生物種により礫や粗砂も含まれる)などの沈着する基質)が乏しいために沈着することができない。従って、砂泥底質の水底では、有用資源である浮遊幼生を沈着育成して生物資源として増殖利用することが難しい。
【0003】
従来、砂泥底質の水底において、浮遊幼生の沈着とその後の成育を促進するために、人工的な沈着基質として投石やコンクリートブロックを投入する方法があったが、砂泥底質であるために投入物が潜掘や沈下を生じて、その効果を持続できず、さらに、潜掘や沈下した投入物の回収も困難であった。
【0004】
また、浮遊幼生の沈着並びに繁茂・成育を促進する別の従来技術として、特許文献1には、ネット状の袋に多孔質材料を詰めて海底に敷き並べ、藻類を繁茂させて生物を増加させ、魚介類の生息環境を保全する方法が記載されている。動物類の浮遊幼生は、初期餌料として利用される微細藻類の糸状体や単細胞種が着生している基質を選択的に沈着し易い傾向が解明され、この点で貝殻・石材などは、表面積に比例した藻類量が確保できる沈着基質として必要、かつ好適である。
【0005】
非特許文献1によれば、ホタテガイを沈着基質として用いた試験により、藻類などの植物性の浮遊幼生が沈着基質に着生して繁茂した環境下の方が、藻類の繁茂していない環境下に比べて、ナマコやアワビ、ウニなどの動物性の浮遊幼生が選択的に沈着し成育し易いことが判明している。これは、ナマコやアワビなどの浮遊幼生が、珪藻類などの微細藻類から出される誘起物質により沈着が促進され、さらにこれらの藻類を飼料として成育するためである。従って、人工的な沈着基質の条件としては、先ず、植物性の浮遊幼生(遊走子・配偶体・胞子体など)の着生生育を促進でき、さらにその後、動物性の浮遊幼生生物の沈着及び成育を促進できる形状と生息可能な内部構造を有するものが望ましい。
藻類の繁茂を促進する従来技術として、特許文献2には、人工魚礁に藻類を繁茂させるための海藻生育具が記載されている。これは、合成樹脂製の織布からなる袋体の内部に鉄鉱スラグを充填したものである。織布に藻類を沈着させると共に、鉄鉱スラグから海中に流出する微量元素が藻類の繁茂を促進するとされている。但し、この技術は、動物性の浮遊幼生の沈着及び成育を対象とするものではない。着生基質は織布であり、さらに天然由来の石材・貝殻ではなく人為的な物質と方法で微量元素の供給によるものである。
【0006】
図10は、透水性の入れ物に沈着基質(貝殻、石材等)を充填した沈着基質ユニットの従来技術の一例である。透水性の入れ物として、メッシュケースを用いている。図10(A)は外観斜視図であり、図10(B)は、メッシュケースの材料の一部を示す平面図である。
図10(A)に示す沈着基質ユニット100は、硬質プラスチック製の円筒状のメッシュケース102と、その中に沈着基質として充填された貝殻(カキやホタテガイ)からなる中詰め材103とから構成されている。メッシュケース102は、筒状部材とその両端開口を塞ぐ一対の平面部材とから形成されており、規格サイズは、長さ100cm程度、直径15cm程度である。作製方法は、先ず筒状部材の一端を1つの平面部材で塞ぎ、次に沈着基質である貝殻を内部に投入し、他端をもう1つの平面部材で塞いで完成する。なお、メッシュケース102の全体形状や孔の形状は、図示の例に限られない。
【0007】
メッシュケース102の材料は、図10(B)に示すように所定の幅Wの筋部102aを、所定の大きさの孔102bをもつ格子状に形成した硬質プラスチックである。例えば、押出成型で作製できる。水底で長期間使用するものであるから耐久性が重視され、筋部102aは、幅Wが5〜10mm程度で厚みも2〜3mm程度あり、孔102bは(四角形の場合)一辺が2〜3cm(中詰め材の大きさによる)程度であった。また、硬質プラスチックであるから、全体形状を維持して自立する剛性を有しており、筋部102a及び孔102bの形状は、中詰め材を充填することで補強されるため水底の水流や波浪などではほとんど変形しない。
別の例として、金属製の網の中に石材を詰めた「じゃかご」も、硬質の沈着基質ユニットとして用いられる場合がある。
【特許文献1】特開2006−223297号公報(段落0014)
【特許文献2】実開平6−55342号公報
【非特許文献1】日本水産学会誌71(1),83-85(2005):短報「ホタテガイ貝殻リングを用いたエゾアワビ当歳貝の生息量評価」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10に示した従来の沈着基質ユニット100には、以下のような問題点がある。
・メッシュケース102の筋部102aが太く、藻類が最初に着生して、この藻類の陰影が形成されるため、中詰め材103に対する日照が遮られる結果、中詰め材上での藻類の着生が阻害され、繁茂しにくい環境が形成される。
・メッシュケース102の筋部102aが太いことに加えて、メッシュケース102が硬質プラスチックで形状が一定であるために、メッシュケース102と中詰め材103の間に隙間が形成されることにより、波浪などで揺り動かされ、やがて貝殻では周辺から破損・減耗する。
・特に、中詰め材103として二枚貝の貝殻を使用する場合、ランダムに投入して詰め込んでいたため、図10(A)に示すように、凸状の表面103aと凹状の裏面103bが様々な方向を向くことになる結果、凸面103aが外側に向いて突出している外殻にだけ藻類が多く着生する傾向があった。
・硬質のメッシュケース102と中詰め材103と間に必ず隙間が生じることに加え、中詰め材は、貝殻や石材等の表面摩擦抵抗の大きい素材であるため、投入時には最密充填状態では詰め込まれず、余分な隙間が生じる。この結果、振動や水流によって中詰め材がケース内で移動する余地ができる。中詰め材は、ケース内で動くことによってさらに密に詰め込まれて目減りし、ますます動きやすくなる。また、中詰め材がケース内で頻繁に動く場合、静止している場合に比べて浮遊幼生の沈着は難しくなるばかりか減耗・消滅・逃避の原因となり生物類は散逸する。
・特に貝殻の場合は、ケース内で動きやすいと互いに衝突して破損消耗し、粒径が小さくなりメッシュケース102の網目から脱落するため、さらに目減りし易い。波浪の影響の大きい浅い水深の沿岸域では、短期間のうちにケース内の貝殻が消失することもあった。
【0009】
なお、特許文献1では、透水性の入れ物として袋網(一応、柔軟と考えられる)を用いて中詰め材を充填しているが、柔軟な袋網に中詰め材を充填しただけでは、内部で中詰め材が動くことができるため、上記と同様に目減りや破損、減耗の問題が生じ生物類の沈着や生息場としては不適である。
【0010】
本発明は、透水性の入れ物に沈着基質として中詰め材を充填してユニット化した沈着基質ユニットにおいて、日照が妨げられないような入れ物とし、入れ物と中詰め材との間にできるだけ隙間が生じないようにし、かつ中詰め材が内部で動かないようにすることにより、長期間に亘って浮遊幼生の沈着並びにその後の繁茂及び育成を促進できるようにすることを目的とする。また、このような沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を提供する。括弧付きの数字は、後述する図面中の符号であり参考のために付する。
本発明による浮遊幼生を沈着させる基質として用いる沈着基質ユニット(1)の一形態は、所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網(2)と、前記網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体からなる、前記袋網に充填された中詰め材(3,31)と、前記袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段と、を備え、前記締付手段が、前記袋網の外面を周回させるとともに該袋網の内部を貫通させてかつ緊張させたロープであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明による浮遊幼生を沈着させる基質として用いる沈着基質ユニット(1)の別の一形態は、所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網(2)と、前記網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体からなる、前記袋網に充填された中詰め材(3,31)と、前記袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段と、を備え、前記締付手段が、前記袋網を挟み込む一対の鋼製格子枠と、該一対の鋼製格子枠を互いに近づけるように両枠間に掛けかつ緊張させたロープとを有することを特徴とする。
【0013】
上記において、前記無機固体物が貝殻(3)または貝殻破砕物でありかつ貝殻における凸形状の表面(3a)を外側に向けて前記袋網(2)に充填されていることが好適である。
また、上記において、前記無機固体物は石材(31)でもよい。
【0014】
本発明による浮遊幼生育成用構造物(10)は、上記の沈着基質ユニットを、複数個用いて形成され、隣り合う沈着基質ユニット同士が互いに当接して全体が面状に配置されていることを特徴とする。
さらに、上記の浮遊幼生育成用構造物において、複数個の沈着基質ユニットの全体を囲む鋼製枠を備えたことが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による沈着基質ユニットは、所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網の中に、網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体を中詰め材として充填したものである。さらに、袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段を備えている。
【0016】
本発明の構成によれば、袋網が、所定の網目をもつ可撓性のあるネットからなるので、袋網による中詰め材への日照阻害が発生し難い。また、可撓性があるので、充填された中詰め材の外郭形状に沿うように袋網を密着させることが可能である。これにより、袋網と中詰め材との間に余分な隙間を生じないので、そのような余分な隙間に起因する中詰め材の目減りや破損などを生じ難い。この結果、安定した中詰め材の表面には珪藻類の着生が促進継続されるため、珪藻類を餌料とする浮遊幼生の沈着及び成育が促進される。
【0017】
中詰め材が長期的に安定しているので、浮遊幼生の着生・沈着並びに繁茂及び成育が促進される。また、中詰め材同士の間に形成される隙間も安定するため、浮遊幼生の隠れ場として好ましい空間となり、保護・育成が促進される。
【0018】
好適例では、中詰め材として入手しやすい二枚貝を用い、凸形状の表面を外側に向けて袋網に充填する。二枚貝の表面は、凸面に珪藻類が繁茂しやすくかつ表面積が大きいことにより、着生量が増大する。カキやホタテガイなどの貝殻は、生物の着生、生息に適した表面形状を有している上に、漁業系廃棄物として容易に入手できるので好ましい。ナマコ幼生の場合、紫外線や日照からの隠れ場として微細な起伏や空隙が有効である。
なお最密充填するために破砕した貝殻を混合、または破砕貝殻のみ採用することも可能で、対象生物に合わせた内部空隙の小型化も可能である。
【0019】
中詰め材が石材の場合は、貝殻に比べて破損に強い点で好ましく、重量があるので水底における安定性がよい。また何処でも安価に安定的に入手できる点でも好ましい。さらに、対象生物により規格やサイズを変更できる。
【0020】
中詰め材を充填した袋網の締付手段によれば、可撓性のある袋網を全体的に引っ張ることにより面内張力を生じさせた状態となり、この袋網の面内張力により中詰め材全体を外側から押圧する効果が得られる。この結果、袋網と中詰め材とがより安定して固定される。
【0021】
また袋網により外郭が囲われるためウニなど藻食性の動物類による着生藻類の食害を抑制することができる。
【0022】
本発明による浮遊幼生育成用構造物は、上記の本発明による沈着基質ユニットを複数個用いて形成される。隣り合う沈着基質ユニットが互いに当接して面状に配置される。この結果、この構造物を設置した区画全体において、浮遊幼生育成環境を向上させることができる。先ず、各ユニットに植物の浮遊幼生が沈着し、珪藻などが繁茂することにより、各ユニットにアワビやナマコなどの動物の浮遊幼生が沈着し、生育することができる。
【0023】
また、浮遊幼生育成用構造物は、複数個の沈着基質ユニットが互いに当接して面状に配置されるため、重量が一箇所に集中しない設置となる。よって、砂泥底質の水底であっても沈下や埋没が発生し難い。この結果、長期に亘って基質効果が得られるとともに、回収する場合も容易に回収できる。
【0024】
また、複数個の沈着基質ユニットを鋼製枠で囲み収容することは、岩石底質の場合に有効である。これにより底質上に安定して設置できる。また、複数の枠体を連結することも可能であり、重量固定が実現される。
【0025】
さらに、浮遊幼生育成用構造物に珪藻等が繁茂することにより、天然の浮遊幼生の沈着を促進するだけでなく、放流された人工種苗稚仔の飼料にもなるため、放流生物のその後の成長と健全な成育も促進し、散逸を防止して保護育成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を示した図面を参照して実施の形態を説明する。
図1(A)は、本発明による沈着基質ユニットの一実施例の外観平面図であり、図1(B)は、(A)のX断面の概略図である。図1(C)は、(A)の実施例における中詰め材を構成する1枚の貝殻の断面図である。
【0027】
本発明による沈着基質ユニット1は、透水性の入れ物に沈着基質としての中詰め材を充填して一つのユニットとしたものであって、海洋や河川などの水底に設置して使用される。沈着基質ユニット1の全体形状は、図1(A)の平面図において略矩形であり、図1(B)のX断面図に示すように、表面1aと裏面1bが略平坦で所定の厚みをもつ扁平形状である。袋網2に中詰め材3を充填することによりこのような立体形状を形成するが、この全体形状は一例である。例えば、表裏面の矩形は一辺が20〜50cm程度、厚さは10〜15cm程度とするが用途と工法、設置場所などによりその形状と重量が決定されるため定形ではない。
【0028】
図1(A)に示すように、透水性の入れ物として、ネットを袋状に形成した袋網2を用いる。ここでのネットは、種々の素材の繊維からなる連続糸をメッシュ状に編んだものである。繊維の素材としては、水中での使用に適した耐久性及び強度を備えた合成繊維が好ましく、例えばナイロン、テトロン、ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、さらに生分解性などの機能を持つ材質でもよい。糸は、引っ張り強度と耐久性に優れている点で長繊維のフィラメント糸が好適である。引っ張りや擦れ強度に優れた材質が好ましく、中詰め材質、総体重量、設置場所などの環境により決定されるが、袋網内部への日照や強度を阻害しない範囲で細いものが好ましい。例えば、漁網に用いられるようなネットが好適である。このようなネットは、網目を形成する各糸が任意の方向に自在に曲がることができるので、袋網全体として可撓性を有している。
なお、袋網の糸の太さは、袋網の形成寸法や重量、中詰め材寸法や設置方法などにより適宜設定される。例えば、市販の漁網製品であれば、0.5mm〜2.0mm程度が一般的である(但し、この範囲に限定しない)。一方、図10に示した従来のメッシュケースでは、通常、筋部の幅が5mm以上あり太かったため日照が遮られていた。
袋網の網目の大きさは、中詰め材に応じて中詰め材が漏出しない大きさとする必要があるが、日照を阻害しないという観点から、中詰め材が漏出せずかつできるだけ大きな網目とすることが好ましい。
【0029】
中詰め材3は、袋網2の網目から脱落しない大きさをもつ無機固体物の集合体であり、袋網2に充填されている。図1(A)の実施例では、無機固体物として貝殻、特にカキとホタテガイを混合して用いている。別の実施例では、カキのみ、またはホタテガイのみ、その他の入手しやすい貝殻、または貝殻破砕物を混合充填してもよい。これらの貝殻は、通常、図1(C)の断面図に示すように、表面3aが凸曲面、裏面3bが凹曲面の形状を有し、特に表面3aは微細な起伏に富む。表面形状と複層形成される内部空隙(または構造)の複雑さは日照による紫外線からの幼体保護や外敵生物からの隠れ場として機能する。
【0030】
図1(B)のX断面図に示すように、各貝殻は、その表面3aが沈着基質ユニット1の外側を向くように袋網2に充填されている。これにより、水中に露出している沈着基質ユニット1の外面全体に対して、珪藻類の着生量を増やすことで浮遊幼生を満遍なく沈着させることが可能となる。図示の例では、沈着基質ユニット1の開口部は裏面1bの中央部分にあり、中詰め材3の充填後に適宜の閉止ロープ4aで閉じられている(これについては図2で詳述する)。
【0031】
さらに、図1(A)に示すように、沈着基質ユニット1に対して縦方向及び横方向に必要数の締付ロープ4を周回させ、さらに、少なくとも1箇所(符号4b)においてロープが沈着基質ユニット1を貫通し、中詰め材を中割りに通して締め付けている。これは、中詰め材3が袋網2の内部で移動しないようにするためである。また、可撓性のある袋網2を中詰め材3の外郭形状に沿わせて密着させる機能でもある。袋網2が中詰め材3に密着した状態においては、中詰め材3の一部が袋網2の網目から若干突出する場合もあるが、流れを乱す微地形の変化を与える効果が得られる。
【0032】
図2Aの(A)(B)は、図1の沈着基質ユニット1の作製方法を示している。可撓性のある袋網2は、矩形の表面ネット材と裏面ネット材の二枚を重ねて周囲を閉じた袋状に形成されている。図2A(A)は、裏面側から見た図であり、裏面ネット材には中央縦方向の両端間に亘る開口部2aが形成されている。中詰め材3を開口部2aから充填していく。中詰め材3が二枚貝の場合は、表面が外側に向くように配置する。実施例では全体が所定の厚さの扁平形状となるように中詰め材3を充填する。
【0033】
中詰め材3を充填し終えたならば、図2A(B)に示すように、開口部2aに沿って閉止ロープ4aを通す。例えば、開口部2aの両側を縫い合わせるように閉止ロープ4aを袋網2の網目に通す充填に支障がなければ、中詰め材3を入れる前に閉止ロープ4aを予め通しておいてもよい。なお、閉止ロープ4aを袋網2の網目に通す際には、袋網2の余分な弛みを開口部2aの方に手繰り寄せ(矢印参照)、袋網2を全体的に引っ張った状態とした上で閉止ロープ4aを結び止める。これにより、袋網2の全体に面内張力が生じた状態となり、袋網2が外側から中詰め材3を弾性的に押圧する状態となる。
このように開口部2aを閉じた後、さらに図1(A)(B)に示した締付ロープ4を、複数箇所に回し掛けて、さらに中詰め材を中割りに通して、袋網2の外面を部分的に締め付ける。
締付ロープ4の素材は、水中での使用に適した耐久性と強度に加え、締付けによる緊張に耐え得る強度を備えたものとする。例えば、合成繊維製、炭素繊維製、鋼製索、ワイヤーロープ(繊維材と鋼材の混合製品も含む)などがある。
【0034】
図2B(A)〜(D)は、締付ロープ4の好適な締付方法を示した図である。締付ロープ4を締付金具49により捻り締め付けることで、緊張させることができる。締付金具49には、図示のように、丸棒形、U形、V形、S形等、種々の形状があり得る。締付金具49は、例えば線状鋼材などで形成できる。締付金具49を矢印のように回転させると、これに掛かっている締付ロープ4が撚り合わされる。締付ロープ4が緊張させられ、袋網2は内側に変形するので袋網2の面内張力がさらに高められる。締付ロープ4に適度な捻りを加えた後、締付金具49は、締付ロープ4の戻りを停止させるストッパーの役割も果たす。戻り停止ストッパとする場合、締付金具49を袋網2の上に寝かせ、その両端をネットの適宜の箇所に固定(例えば巻き付けや結び付け)することができる。
これらの締付手段により、袋網2と中詰め材3とが互いに一体となるように固定される。中詰め材3は内部で移動せず、中詰め材3同士の間の隙間も安定する。袋網2は、中詰め材3の外郭形状に沿って密着する。
【0035】
図3は、本発明による沈着基質ユニット1の別の実施例である。図3(A)は、中詰め材31として用いた石材の集合体を示し、図3(B)は沈着基質ユニット1の外観平面図である。石材は、天然の石又は砕石であり、粒径は、対象生物により設定され、数ミリから人頭大程度と想定される。作製方法は、図2A及び図2Bに示した方法と同様であるが、二枚貝と異なり特定の向きで配置する必要はない。
図示しないが、中詰め材とする無機固体物の別の例として、セラミックなど無害が証明される無機質砕片でもよい。
【0036】
図4(A)〜(D)は、本発明による沈着基質ユニット1の全体形状及び締付ロープ4による締付方法について、幾つかの例を概略的に示しており、各図の上図が外観斜視図、下図が断面図である。実際には、充填された中詰め材が袋網の外側から見えるが、図示を省略している(以下、図8まで同様)。
図4(A)は、平面視において略矩形であって所定の厚みをもつ扁平な全体形状をもつ実施例である。袋網2の外面を縦横1本ずつの締付ロープ4で締め付け、さらに中央の1箇所で中詰め材を中割りに通し、締め付け固定している(符号4b)。
図4(B)は、扁平形状の別の実施例である。縦横2本ずつの締付ロープ4で締め付け、さらに4箇所で中詰め材を中割りに通し、締め付け固定している(符号4b)。
図4(C)は、円筒形状の全体形状をもつ実施例である。円筒の一端が開口部2aとなっている。筒周りの2箇所を締付ロープ4で締め付け、さらに他端から筒軸上を開口部2aまで貫通するように中詰め材を中割りに通し、、締め付け固定している(符号4b)。
図4(D)は、円筒形状の全体形状をもつ別の実施例である。筒周りの3箇所を締付ロープ4で締め付け、さらに他端から筒軸上を開口部2aまで貫通するように中詰め材を中割りに通し、締め付け固定している(符号4b)。
【0037】
図5A(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニット1の袋網と中詰め材を固定する固定手段について、別の実施例を示す図である。図5A(A)は平面図、図5A(B)は概略的なY断面図である。袋網2には中詰め材が充填され、開口部が閉じられている。袋網2の上面に2本の上部丸鋼45を、下面に2本の下部丸鋼47を、それぞれ平行に配置する。一組の上部丸鋼45と下部丸鋼47における2箇所に締付ロープを掛け回し、中割りに通す(符号4b)。上部丸鋼45と締付ロープの間の隙間に、締付金具46を差し込み、矢印のように回転させ、締付ロープを締め込む。締付金具46は、ストッパー突起46aを設けたL形である。締付ロープに適度な捻りを加えた後、ストッパー突起46aを上部丸鋼45に引っ掛けて戻り止めとする。
【0038】
図5B(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニット1の袋網と中詰め材を固定する固定手段について、それぞれ別の実施例を示す図である。袋網には既に中詰め材が充填され、開口部が閉じられている。
図5B(A)の実施例では、扁平な全体形状をもつ沈着基質ユニット1の表面に十字型の押さえ具41を載置し、押さえ具41の中心において厚さ方向にボルト42を貫通させ、裏面中央部分に当接させた支持板43を通してナット44で締め込み、固定している。
図5B(B)の実施例では、沈着基質ユニット1の表面に等間隔で3つの円形押さえ具(ボルト42の座金に相当する)41を配置し、各押さえ具41にそれぞれボルト42を厚さ方向に貫通させ、裏面全体を支持するように当接させた支持板43に穿設したボルト孔43aに対して締め込み、固定している。
【0039】
図5C(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニット1の袋網と中詰め材を固定する固定手段について、別の実施例を示す図である。図5C(A)は締付前の、図5C(B)は締付後の外観斜視図である。袋網2には既に中詰め材が充填され、開口部が閉じられている。
図5C(A)に示すように、一対の鋼製格子枠48a、48bにより袋網2を上側と下側から挟み込むように配置する。鋼製格子枠48a、48bの四隅において締付ロープをそれぞれ掛け回す。図示の例では、上側の鋼製格子枠48aと締付ロープ4の間の隙間に、図2B(B)に示したU形の締付金具49を差し込み、回転させることにより締付ロープ4を捻ることで締付ロープ4を絞り込み緊張させる。これにより、鋼製格子枠48aと48bを互いに近づけ、袋網2を上下から押圧し、袋網2を緊張させる。なお、図5C(B)に破線で示すように、別の沈着基質ユニット1を隣接させて連結することができる。
【0040】
上記の本発明による沈着基質ユニット1は、複数個を互いに当接するように面状に配置し連結することにより浮遊幼生育成用構造物10を構築することができる。以下の図6A〜図6Cは、本発明による浮遊幼生育成用構造物10の固定方法の例を示しており、水底の種類によって適切な固定方法を選択できる。
【0041】
図6A(A)〜(C)は、砂泥底質の場合の固定方法である。
図6A(A)では、先ず水底にロープ5を張設し、その上に複数個の沈着基質ユニット1を配置して、それぞれロープ5と連結するとともに、隣接するユニット同士も連結する(符号5a)。ロープ5の両端には、漁業用の爪アンカーなどのアンカー8が取り付けられている。ロープ5の替わりにネットを敷設してもよい。
図6A(B)では、図6A(A)の爪アンカーに替えて、砂泥底質打込みアンカーを用いている。
図6A(C)では、軟弱地盤用ネット(沈下防止ネット)7を敷設し、その上に複数個の沈着基質ユニット1を配置し、それぞれネット7と連結するとともに、隣接するユニット同士も連結する。軟弱地盤用ネット7の四隅には、爪アンカーなどのアンカー8が取り付けられている。
【0042】
図6B(A)は、岩盤・砂泥共用の固定方法である。水底にロープ5又はネットを張設し、その上に複数個の沈着基質ユニット1を面状に密着配置させ、さらに複数の段となるように鉛直方向に積み重ねている。これは、重量を利用した固定方法の例である。
図6B(B)は、岩盤での鋼製アンカーピンの固定方法の例を示している。アンカーピン73を用いる場合は、アンカーピン73の頭部の環と、沈着基質ユニットとをロープなどで連結すればよい。アンカーピン73を岩盤に固定する場合は、先ず、必要な深さだけ岩盤を削孔する(符号70)。1つの方法では、この孔に対して接着剤71を充填した後に、アンカーピン73を押し入れる。別の方法では、アンカーピン73を孔に押し入れた後、孔壁との隙間に打撃振動で砂を充填する。これは、摩擦抵抗を利用した固定方法の例である。
【0043】
図6C(A)(B)は、転石海底での固定方法である。
図6C(A)では、自然石である転石75の隙間に嵌め込むように、比較的大型の袋網を用いた沈着基質ユニット1を設置する。これも、重量と海底の地形との間に得られる摩擦抵抗を利用した固定方法の例である。
図6C(B)では、転石75の間の水底に沈着基質ユニット1を密着配置し、さらにその上に投石76を設置する方法である。これも、重量を利用した固定方法の例である。
【0044】
図7は、砂泥底質の場合の固定方法を適用した浮遊幼生育成用構造物10の一実施例を示す外観斜視図である。
図示の例では、水底Gに12個の沈着基質ユニット1が3列×4列で面状に並設されている。各沈着基質ユニット1は、隣り合うものと互いに側面を当接させている。両端に位置する一列3個の沈着基質ユニット1の外側面に沿って一対の錘ロッド6がそれぞれ置かれている。錘ロッド6は、例えば鋼棒である。錘ロッド6には漁業用アンカー8が取り付けられ、これにより水底Gに固定されている。
【0045】
また、一列に並んだ4個の沈着基質ユニット1に対し、1本の連結ロープ5が、各ユニット1の袋網端部に併設された補強ロープに接合され、これにより一列4個のユニット1が互いに連結される。図示の例では、合計3本の連結ロープ5が用いられている。各連結ロープ5の両端5aは各錘ロッド6に固定されている。この結果、12個の沈着基質ユニット1の全体が、一体に連結されたことになる。なお、連結ロープ5の実施例は、図示の例に限られず、種々の連結方式が可能である。各ユニット1の締付ロープに余分な長さをもたせておき、それを隣のユニット1との連結ロープとして用いてもよい。
【0046】
図8は、砂泥底質の場合の固定方法を適用した浮遊幼生育成用構造物10の別の実施例を示す外観斜視図である。
図7の実施例と異なる点は、錘ロッドの替わりに鋼製枠9を設け、その中に12個の沈着基質ユニット1を収容していることである。連結ロープ5の両端5aは、鋼製枠9の孔9aに固定されている。鋼製枠9は、その外面に取り付けた漁業用アンカー8により水底Gに固定されている。複数の鋼製枠9を次々に連結することにより、浮遊幼生育成用構造物10を水平方向に拡張することができる。図示しないが、鋼製枠は、立体的な駕籠形状としてもよい。
【0047】
図9は、本発明による沈着基質ユニット1(図3(B)に示した石材充填の実施例)を水底Gに設置し、所定の期間が経過した後の状況を示す図である。珪藻20が沈着基質ユニット1の外面全体に繁茂している(糸状体の模式図で単細胞の珪藻にあっては図に表現していない)。珪藻20が繁茂することにより、動物性の浮遊幼生の沈着、成育が促進される。
【0048】
図示しないが、本発明による浮遊幼生育成用構造物の別の実施例を挙げる。先ず、石材充填の沈着基質ユニットを複数個並べて面状に敷設し、その上の要所に貝殻を収容した沈着基質ユニットを取り付ける。これにより、中詰め材質の変化のみならず、水底の地形的な変化を、石材と貝殻の沈着基質ユニットを併設することで固定できる。従って、この貝殻基質に人工的に浮遊幼生を沈着させた上で、所定の場所へ移設すれば人工種苗を極めて天然由来に近い種苗に置き換えることが可能となり、中間育成などの生産経費の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(A)は、本発明による沈着基質ユニットの一実施例の外観平面図であり、(B)は、(A)のX断面の概略図である。(C)は、(A)の実施例における中詰め材を構成する貝殻の断面図である。
【図2A】図1の沈着基質ユニットの作製方法を示している。(A)は開口部を閉じる前であり、(B)は開口部を閉じた後である。
【図2B】(A)〜(D)は、締付金具による締付ロープの締付方法を示す図である。
【図3】本発明による沈着基質ユニット1の別の実施例であり、(A)は、中詰め材として用いた石材の集合体を示し、(B)は沈着基質ユニットの外観平面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明による沈着基質ユニットの全体形状及び締付ロープによる締付方法について、幾つかの例を概略的に示す外観斜視図である。
【図5A】(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニットの袋網と中詰め材を固定する固定手段について、別の実施例を示す図である。
【図5B】(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニットの袋網と中詰め材を固定する固定手段について、別の実施例を示す図である。
【図5C】(A)(B)は、本発明による沈着基質ユニットの袋網と中詰め材を固定する固定手段について、別の実施例を示す図である。
【図6A】(A)〜(C)は、沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物の固定方法の例を示す外観斜視図である。
【図6B】(A)(B)は、沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物の固定方法の例を示す外観斜視図である。
【図6C】(A)(B)は、沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物の固定方法の例を示す外観斜視図である。
【図7】沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物の実施例を示す外観斜視図である。
【図8】沈着基質ユニットを用いた浮遊幼生育成用構造物の別の実施例を示す外観斜視図である。
【図9】図3に示した石材を充填した沈着基質ユニットを水底に設置した後に珪藻が繁茂した状態を示す側面図である。
【図10】透水性の入れ物に沈着基質を充填して1つのユニットとした沈着基質ユニットの従来技術の一例である。
【符号の説明】
【0050】
1 沈着基質ユニット
1a ユニット表面
1b ユニット裏面
2 袋網
2a 開口部
3 中詰め材(貝殻)
3a 貝殻表面
3b 貝殻裏面
31 中詰め材(石材)
4 締付ロープ
4a 閉止ロープ
4b 中割り通し部分
48a、48b 鋼製格子枠
46 締付金具(ストッパー突起付)
49 締付金具
5 連結ロープ
6 錘ロッド
7 軟弱地盤用ネット
73 アンカーピン
8 アンカー(漁業用アンカーまたは砂泥底質打込みアンカー)
9 鋼製枠
9a ロープ孔
10 生物育成構造物
20 珪藻
G 水底
100 沈着基質ユニット
102 ネットケース
103 中詰め材(貝殻)
103a 貝殻表面
103b 貝殻裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊幼生を沈着させる基質として用いる沈着基質ユニット(1)において、
所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網(2)と、
前記網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体からなる、前記袋網に充填された中詰め材(3,31)と、
前記袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段と、を備え、
前記締付手段が、前記袋網の外面を周回させるとともに該袋網の内部を貫通させてかつ緊張させたロープであることを特徴とする沈着基質ユニット。
【請求項2】
浮遊幼生を沈着させる基質として用いる沈着基質ユニット(1)において、
所定の大きさの網目をもつネットを袋状に形成した可撓性のある袋網(2)と、
前記網目から脱落しない大きさの無機固体物の集合体からなる、前記袋網に充填された中詰め材(3,31)と、
前記袋網の内部における前記中詰め材の移動を阻止するべく該袋網を締め付ける締付手段と、を備え、
前記締付手段が、前記袋網を挟み込む一対の鋼製格子枠と、該一対の鋼製格子枠を互いに近づけるように両枠間に掛けてかつ緊張させたロープとを有することを特徴とする沈着基質ユニット。
【請求項3】
前記無機固体物が貝殻(3)または貝殻破砕物でありかつ貝殻における凸形状の表面(3a)を外側に向けて前記袋網(2)に充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の沈着基質ユニット。
【請求項4】
前記無機固体物が石材(31)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の沈着基質ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の沈着基質ユニットを、複数個用いて形成された浮遊幼生育成用構造物(10)であって、
隣り合う沈着基質ユニット同士が互いに当接して全体が面状に配置されていることを特徴とする浮遊幼生育成用構造物。
【請求項6】
前記複数個の沈着基質ユニットの全体を囲む鋼製枠を備えたことを特徴とする請求項5に記載の浮遊幼生育成用構造物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−225678(P2009−225678A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71822(P2008−71822)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(593077010)株式会社海洋探査 (3)
【Fターム(参考)】