説明

油中水型乳化組成物

【課題】本発明の課題は、乳化安定性に優れて、べたつき感が改善された、シリコーン油高配合の油中水型乳化組成物を提供することである。
【解決手段】特定の(A)N−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、(B)シリコーン油、(C)水を配合することにより、課題が解決できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のN−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、シリコーン油、水を含有する油中水型乳化組成物、更に油中水乳化組成物を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型の乳化化粧料は、外相が油分であることから、皮膚の保護や柔軟性付与等の利点を有する一方で、高温で保存すると系が不安定化して水滴の合一や相分離を生じたり、外相が油のため皮膚に塗布したときに、べたつき感を呈したりする問題があった。シリコーン油を高配合させることにより、べたつき感を解消させることは常識であったが、一方でシリコーン油自体の乳化は極めて困難であり、これまで種々の乳化安定化の試みが行われてきた。
【0003】
特許文献1や特許文献2には、使用感に優れた油中水型乳化組成物を得るために、特定の乳化剤を含有させたシリコーン油高配合の油中水型乳化組成物が開示されている。しかしながら、油中水型乳化組成物を調製するために使用できる乳化剤が極めて限定されていたり、界面活性剤も高配合する必要があるなど、必ずしも汎用的な技術とは言い切れなかった。
【0004】
また、特許文献3には、第四級アンモニウム塩で処理して得られる粘土鉱物を用いて油中水型乳化組成物を安定化させる技術が開示されている。また、特許文献4には、N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルと第四級アンモニウム塩で処理して得られる有機変性粘土鉱物を含有させると極めて安定な油中水型乳化組成物が得られることが開示されている。しかし、油相としてシリコーン油を高配合させた例示はなく、シリコーン油を高配合させた場合には乳化組成物が得られない等、シリコーン油には適用できる技術とは言い切れなかった。
【0005】
一方、特許文献5には、N−長鎖アシル中性アミノ酸エステルが開示されている。しかしながら、安全性の高い油性原料としては知られていても、乳化能を有するという知見はこれまで一切知られてはいなかった。
【0006】
乳化安定性に優れて、べたつき感が改善された、シリコーン油高配合の油中水型乳化組成物が切に望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−169130号公報
【特許文献2】特開2006−306868号公報
【特許文献3】特開昭61−129033号公報
【特許文献4】特開平8−20529号公報
【特許文献5】特許第3802288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、乳化安定性に優れて、べたつき感が改善された、シリコーン油高配合の油中水型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(A)N−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、(B)シリコーン油、(C)水を配合することにより、課題が解決できることを見出し、発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
〔1〕(A)下記一般式で(I)で表されるN−長鎖アシル中性アミノ酸エステル(B)シリコーン油、(C)水を含有し、外相が(B)シリコーン油であることを特徴とする油中水型乳化組成物。(但し、一般式(I)において、Rは炭素原子数5〜21の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、炭素原子数3〜4の分岐鎖若しくは直鎖のアルキル基、又はヒドロキシメチル若しくはヒドロキシエチル基を示し、Rは炭素原子数1〜34の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基、若しくはステロールのアルコール残基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【0011】
【化1】

【0012】
〔2〕(A)成分と(B)成分の重量比が4:96〜90:10かつ(C)成分の重量が組成物に対して0.1〜94.6%であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
〔3〕該(A)成分の中性アミノ酸がグリシン、アラニン、N−メチル−β−アラニン、スレオニン、サルコシンのいずれかから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の油中水型乳化組成物。
〔4〕該(A)成分が、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンフィトステリル、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンデシルテトラデシルから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする油中水型乳化組成物。
〔5〕該(B)成分が、環状シリコーン油であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の油中水型乳化組成物。
〔6〕請求項1〜5の何れか一項に記載の油中水型乳化組成物を含有する化粧料。
【発明の効果】
【0013】
特定のN−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、シリコーン油、水を配合することにより、乳化安定性に優れて、べたつき感が改善された、油中水型乳化組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において使用される成分(A)は、下記一般式で(I)で表されるN−長鎖アシル中性アミノ酸エステルである。
【0015】
【化2】

【0016】
但し、一般式(I)において、Rは炭素元素数5〜21の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、炭素原子数3〜4の分岐鎖若しくは直鎖のアルキル基、又はヒドロキシメチル若しくはヒドロキシエチル基を示し、Rは炭素原子数1〜34の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基、若しくはステロールのアルコール残基を示し、nは0〜2の整数を示す。
【0017】
本発明において使用される成分(A)であるN−長鎖アシル中性アミノ酸エステルは、例えば、特許第2990624号公報や特許第3802288号公報等の公知の方法により容易に得ることができる。具体的には、中性アミノ酸と脂肪酸ハライドとのショッテンバウマン反応後、アルコールやステロール類をエステル化する方法が広く知られている。
【0018】
成分(A)の中性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、N−メチル−β−アラニン、スレオニン、サルコシン、β−アラニン、フェニルアラニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、ヒドロキシプロリン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸等が使用できる。これらのアミノ酸はL体、D体又はDL体の何れでも良い。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。安定性およびエステル化後の素材の使用感が良いという観点で、N−メチル−β−アラニンが好ましい。
【0019】
成分(A)のアシル基としては、炭素原子数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導される、直鎖または分岐鎖のものを使用できる。例えば、脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、等が挙げられる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。特に、安定性の良い油中水型乳化組成物を得るという観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パーム脂肪酸が好ましく、特にミリスチン酸が好ましい。
【0020】
成分(A)のN−長鎖アシル中性アミノ酸エステルのアルコール部位を構成する炭化水素基(R)としては、炭素元素数が1〜34の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基や、ステロール類を使用することができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、フーゼル油、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、2−ヘキサデシルアルコール、2−オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、フィトステロール、及びラノステロールから誘導されるものを挙げることができる。これらの中で、好ましくはイソステアリルアルコール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ベヘニルアルコール、フィトステロール、コレステロール、シトステロールであり、特に好ましくはデシルテトラデカノール、フィトステロールである。これらのうち、1種類を使用しても良いし、上記郡から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。これらは、動物由来、植物由来及び合成物の何れであっても差し支えない。
【0021】
成分(B)シリコーン油として、特に制限はないが、通常化粧品に用いられる固体又は液状のシリコーン油を使用することができる。具体的には、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等のポリシロキサン;ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等の環状シリコーン、等が挙げられる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。他の条件によらず安定した油中水型乳化組成物が得られ易いという観点で、液状シリコーンが好ましく、環状シリコーンがより好ましく、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサンが更に好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが更に一層好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
【0022】
本発明において使用される(C)成分である水は、一般に洗浄剤や化粧料に使用される程度の純度であれば、特に限定されない。具体的には、イオン交換水、井戸水、天然水、地下水、市水、硬水、軟水等が使用できる。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。本発明品の保存安定性や衛生面の観点からイオン交換水が好ましい。
【0023】
本発明において使用される(A)成分と(B)成分の重量比は、油中水型乳化組成物を形成しさえすれば特に制限はないが、4:96〜90:10が好ましい。(A)成分が4より少ないと十分な乳化状態が得られず相分離を生じる場合があり、(A)成分が90より多いと流動性の低下を生じる場合がある。安定な油中水型乳化組成物を得るという観点から、5:95〜80:20がより好ましく、6:94〜75:25が更に好ましい。
【0024】
本発明において使用される(C)成分の重量は、油中水型乳化組成物を形成しさえすれば特段制限は無いが、(A)と(B)と(C)の全重量に対して、0.1〜94.6重量%が好ましい。(C)成分の重量が、0.1重量%より少ないと、乳化組成物を実質上形成し難い場合があり、94.6%重量より多いと離水を生じる場合がある。安定な油中水型乳化組成物を得るという観点から、0.5〜90%が更に好ましく、1.0〜80%が特に好ましい。
【0025】
本発明の油中水型乳化組成物は、例えば、サンスクリーンクリームや、保湿クリーム、メイク落とし、液状ファンデーション、下地クリーム等の化粧料として使用できる。
【0026】
本発明の油中水型乳化組成物は、上述の必須成分の他に通常の化粧料、医薬部外品等に用いられる各種任意成分、例えば、炭化水素、高級脂肪酸エステル、動植物油脂、フッ素系油等の油性成分や、有機顔料、無機顔料等の粉体、水溶性高分子、アルコール類等の水性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料等を、本発明の効果を阻害しない程度に適宜配合することができる。
【0027】
油性成分としては、必須成分であるシリコーン油の他に、化粧品一般に使用される固形油、半固形油、液体油、揮発性油等が使用できる。炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、フッ素系油類、親油性界面活性剤などが挙げられる。これらは、動物油、植物油、鉱物油、合成油を問わない。具体的には、固形パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、セレシンワックス、蜜蝋、木蝋、鯨蝋、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、ポリイソブテン、ワセリン、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ポリイソステアリン酸ジグリセリル、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロポリエーテル、モノステアリン酸グリセリル、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0028】
粉体としては、化粧品一般に使用される粉体であれば形状に限定なく、球状、板状、針状等何れも使用できる。例えば、無機粉体としては、タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム、コンジョウ、群青、酸化鉄雲母、酸化鉄雲母チタン、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等が挙げられ、有機粉体としては、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、メチルメタアクリレート粉末、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、タール系色素及びそのレーキ色素等、また、これらの粉体を1種又は2種以上複合化したものが挙げられる。更に、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等の1種又は2種以上を用いて表面処理したものを用いることもできる。
【0029】
水性成分としては、化粧品一般に使用される水に可溶な成分であれば特に限定なく使用できる。例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、ソルビトール、ショ糖、マルチトール等の糖類、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルキル化カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸亜鉛等の塩類、ローズ、レモン、ラベンダー等の植物抽出液等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤として、N−長鎖アシルアミノ酸塩として、N−長鎖アシルグルタミン酸塩やN−長鎖アシルアスパラギン酸塩などのN−長鎖アシル酸性アミノ酸塩やN−長鎖アシルグリシン塩やN−長鎖アシルアラニン塩や、N−長鎖アシルスレオニン塩などのN−長鎖アシル中性アミノ酸塩、N−長鎖脂肪酸アシル−N−メチルタウリン塩、アルキルサルフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、脂肪酸の金属塩および弱塩基塩、スルホコハク酸系界面活性剤、アルキルリン酸塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、カルボキシベタインなどのベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤などが挙げられる。カチオン界面活性剤として、アルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライドなどの脂肪族アミン塩、それらの4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩などの芳香族4級アンモニウム塩、脂肪酸アシルアルギニンエステル、アルキルオキシヒドロキシプロピルアルギニン塩等が挙げられる。非イオン界面活性剤として、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ブチレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物等が挙げられる。
【0031】
紫外線吸収剤としては、例えば、室温で液状または結晶であり、紫外線を吸収して、その吸収したエネルギーをより長波長の放射線(例えば熱)として放出することのできる有機物質(光保護フィルター)である。UV−Bフィルターは、油溶性または水溶性であり得る。油溶性物質としては、例えば、3−ベンジリデンカンファーまたは3−ベンジリデンノルカンファーおよびそれらの誘導体、例えば3−(4−メチルベンジリデン)−カンファー;4−アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4−(ジメチルアミノ)−安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸−2−オクチルエステル、および4−(ジメチルアミノ)−安息香酸アミルエステル;桂皮酸エステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシルエステル、4−メトキシ桂皮酸プロピルエステル、4−メトキシ桂皮酸イソアミルエステル、2−シアノ−3,3−フェニル桂皮酸−2−エチルヘキシルエステル[オクトクリレン(Octocrylene)];サリチル酸エステル、好ましくはサリチル酸−2−エチルヘキシルエステル、サリチル酸−4−イソプロピルベンジルエステル、サリチル酸ホモメンチルエステル;ベンゾフェノン誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;ベンザルマロン酸エステル、好ましくは4−メトキシベンザルマロン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル;トリアジン誘導体、例えば2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン、およびオクチル・トリアゾン、またはジオクチル・ブタミド・トリアゾン[Uvasorb(登録商標)HEB];プロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−t−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン;ケトトリシクロ(5.2.1.0)デカン誘導体などが挙げられる。適当な水溶性物質は、例えば、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸並びにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩およびグルカンモニウム塩;ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびその塩;3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば4−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)−ベンゼンスルホン酸および2−メチル−5−(2−オキソ−3−ボルニリデン)−スルホン酸並びにそれらの塩などが挙げられる。通常のUV−Aフィルターはとりわけ、ベンゾイルメタン誘導体として、例えば1−(4’−t−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン、4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(Parsol(登録商標)1789)または1−フェニル−3−(4’−イソプロピルフェニル)−プロパン−1,3−ジオン、およびエナミン化合物などが挙げられる。
【0032】
保湿剤としては、例えば、ムコ多糖類、コラーゲン、ペプチド、ケラチン等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜実施例24および比較例1〜12:
下記の表1〜5に記載の配合組成よりなる油中水型乳化組成物(実施例1〜24、比較例1〜12)を調製した。なお、(A)N−長鎖アシル中性アミノ酸エステルとして、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンフィトステリル及びN−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンデシルテトラデシル、(B)シリコーン油として、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(DC246、東レダウコーニングシリコーン株式会社)を用いた。
【0035】
(油中水型乳化組成物の保存安定性評価)
調製直後、40℃における二週間後及び四週間後の相状態を目視観察し、下記の基準にて安定性評価を行った。
◎:40℃保存四週間後に相分離は認めらない
○:40℃保存四週間後に相分離が認められた
△:40℃保存二週間後に相分離が認められた
×:25℃調製直後に相分離が認められた
【0036】
(油中水型乳化組成物の使用感評価)
調製した油中水型乳化組成物を皮膚に塗布したときの使用感について、専門パネラー3名による官能評価を行い、下記の評価基準に基づいて評価した。3名の評価点の平均値を算出し、0点以上1点未満を×、1点以上2点未満を△、2点以上3点未満を○、3点以上4点以下を◎とした。
4点:非常になめらかで良好な油中水型乳化組成物である。
3点:なめらかで良好な油中水型乳化組成物である。
2点:ややなめらかな油中水型乳化組成物である。
1点:やや硬く伸びの悪い油中水型乳化組成物である。
0点:非常に硬く伸びの悪い油中水型乳化組成物または、相分離等油中水型乳化組成物
の形状を有しない。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
表1〜5から明らかなように、(A)N−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、(B)シリコーン油、(C)水において、良好な保存安定性と使用感と有する油中水型乳化組成物が得られた(実施例1〜24)。N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルを用いた場合、油中水型乳化組成物は得られず、何れも調製直後に分離を生じた(比較例1〜6)。
【0043】
実施例25〜30:
下記の表6に記載の配合組成よりなる油中水型乳化組成物(実施例25〜30)を調製し、表1〜5と同様の評価を行った。なお、(B)シリコーン油として、デカメチルシクロペンタシロキサン(SH245、東レダウコーニングシリコーン株式会社)を用いた。
【0044】
【表6】

【0045】
表6の結果から明らかなように、成分(A)N−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、(B)シリコーン油、(C)水からなる、油中水型乳化組成物を得ることができた。
【0046】
処方例1〜3
下記表7〜9に示すサンスクリーン処方を常法に従って作成したところ、いずれも良好な使用感と保存安定性を得ることができた。
【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
【表9】

【0050】
処方例4〜31
表10〜37に処方例を開示する。
【0051】
【表10】

【0052】
【表11】

【0053】
【表12】

【0054】
【表13】

【0055】
【表14】

【0056】
【表15】

【0057】
【表16】

【0058】
【表17】

【0059】
【表18】

【0060】
【表19】

【0061】
【表20】

【0062】
【表21】

【0063】
【表22】

【0064】
【表23】

【0065】
【表24】

【0066】
【表25】

【0067】
【表26】

【0068】
【表27】

【0069】
【表28】

【0070】
【表29】

【0071】
【表30】

【0072】
【表31】

【0073】
【表32】

【0074】
【表33】

【0075】
【表34】

【0076】
【表35】

【0077】
【表36】

【0078】
【表37】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明により、特定のN−長鎖アシル中性アミノ酸エステル、シリコーン油、水を配合することにより、乳化安定性に優れて、べたつき感が改善された、油中水型乳化化粧料を提供できるようになったことは極めて意義深い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式で(I)で表されるN−長鎖アシル中性アミノ酸エステル(B)シリコーン油、(C)水を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物。(但し、一般式(I)において、Rは炭素原子数5〜21の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、炭素原子数3〜4の分岐鎖若しくは直鎖のアルキル基、又はヒドロキシメチル若しくはヒドロキシエチル基を示し、Rは炭素原子数1〜34の分岐鎖又は直鎖のアルキル基又はアルケニル基、若しくはステロールのアルコール残基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
【化1】

【請求項2】
(A)成分と(B)成分の重量比が4:96〜90:10かつ(C)成分の重量が組成物に対して0.1〜94.6%であることを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項3】
該(A)成分の中性アミノ酸がグリシン、アラニン、N−メチル−β−アラニン、スレオニン、サルコシンのいずれかから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜2の何れか一項に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項4】
該(A)成分が、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンフィトステリル、N−ミリストイル−N−メチル−β−アラニンデシルテトラデシルから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする油中水型乳化組成物。
【請求項5】
該(B)成分が、環状シリコーン油であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の油中水型乳化組成物を含有する化粧料。

【公開番号】特開2013−56943(P2013−56943A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281737(P2012−281737)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2007−103686(P2007−103686)の分割
【原出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】