説明

法枠用網状側枠および法枠構造物

【課題】法枠用網状側枠の強度を向上させ、法枠用網状側枠の軽量化を図り、COを削減して、環境性能を向上させることができる法枠用網状側枠および法枠構造物を提供すること。
【解決手段】複数の縦線3,3,・・・と、複数の横線4,4,・・・とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠2であって、各縦線3,3,・・・の上端部および下端部3a,3bを、複数の横線4,4,・・・のうち最上位および最下位に配設された横線4a,4bに巻き付けるようにしたため、法枠用金網型枠1全体の強度を向上させ、法枠用網状側枠2の軽量化を図ることができ、COを削減して、環境性能を向上させることができる。また、法枠構造物施工時の作業性も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の縦線と複数の横線とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠と、それを使用した法枠構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
法枠用金網型枠に使用する法枠用網状側枠として、例えば、縦線と横線の端部を突出させたままで何等処理していないもの(例えば、特許文献1参照。)や、縦線または横線の少なくとも一方の上端部または下端部を交互、すなわち一本置きに最外部に配設された縦線または横線に巻き付けるようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177100号公報
【特許文献2】特許第3961889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の背景技術の法枠用網状側枠は、縦線と横線の端部を突出させたままで何等処理していなかったり、縦線または横線の少なくとも一方の上端部または下端部を一本置きに最外部に配設された縦線または横線に巻き付けるようにしているに過ぎないので、型枠として強度的に不十分であり、実際の施工現場にて法枠構造物を施工する際に、法枠用金網型枠が安定しない、という課題がある。
【0005】
特に、法枠用網状側枠として、複数の縦線と複数の横線とを交互に編み込んだクリンプ金網等を使用する場合、縦線と横線との交点が溶接等により固定されていないので、強度が不足する。
【0006】
そのため、予め、法枠用網状側枠を構成する複数の縦線と横線の線径を大きくすることも考えられるが、このようにすると、法枠用網状側枠の重量が増すことになり、運搬性や現場作業性等の点で問題が生じると共に、CO発生量が増加し、環境性能が劣ることになる。
【0007】
そこで、本発明は、法枠用網状側枠の強度を向上させ、法枠用網状側枠の軽量化を図り、COを削減して、環境性能を向上させることができる、法枠用網状側枠および法枠構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の法枠用網状側枠は、複数の縦線と複数の横線とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠であって、前記縦線の上端部および下端部を、それぞれ、前記複数の横線のうち最上位および最下位に配設された横線に巻き付けた、ことを特徴とする法枠用網状側枠である。
ここで、前記縦線および横線は、引張り強さが500N/mm以上であり、線径が2.15mmの線材からなる、ようにしても良い。
また、本発明の法枠構造物は、自然または人工の斜面に構築して斜面の安定化を図る法枠であって、前述の法枠用網状側枠を一対用意し、その一対の法枠用網状側枠を所定間隔を空けて型枠形成用補助部材により連結することにより構成した法枠用金網型枠を、法枠の少なくとも縦枠または横枠の少なくとも一方として使用する、ことを特徴とする法枠構造物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の法枠用網状側枠および法枠構造物によれば、各縦線の上端部および下端部を複数の横線のうち最上位および最下位に配設された横線に巻き付けるようにしたので、法枠用網状側枠の強度を向上させることができる。その結果、法枠用網状側枠の軽量化が可能となり、運搬性および現場作業性が向上し、COを削減して、環境性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態の法枠用金網型枠の一例を示す概略全体構成図である。
【図2】図1に示す法枠用金網型枠の正面図である。
【図3】図1に示す法枠用金網型枠の平面図ある。
【図4】図1に示す法枠用金網型枠の側面図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態の法枠用網状側枠の特徴部分である図4におけるA,Bの結合部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
≪本実施の形態の法枠用網状側枠の構成≫
図1〜図4は、実施の形態の法枠用金網型枠の一例を示す概略全体構成図、平面図、正面図、側面図であり、図5(a),(b)は、それぞれ、実施の形態の法枠用網状側枠の特徴部分である図4におけるA,Bの結合部分を拡大して示す拡大斜視図である。
【0013】
図1〜図4に示すように、実施の形態の法枠用金網型枠1は、少なくとも、本発明に係る左右一対の法枠用網状側枠2と、これらを連結する型枠形成用補助部材としてのスペーサー(フープタイあるいはセパレータともいう。)5とを有して構成される。
【0014】
法枠用網状側枠2は、本実施の形態では、予め波状(クリンプ)に加工した縦線3,3,・・・と、複数の横線4,4,・・・とを交互に編み込んだクリンプ金網を使用する。そのため、法枠用網状側枠2の縦線3,3,・・・と横線4,4,・・・の交点は、溶接などされてなく、外力を加えれば、多少ずれたり、変形するように構成されている。法枠用網状側枠2をクリンプ金網により構成したのは、自然に形成された斜面や、切土や盛土により人工に造成された法面等は、凹凸があり、また、その凹凸が不規則なので、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4がそのような凹凸に追従して変形やずれたりする必要があるからである。ただし、法枠用網状側枠2は、クリンプ金網に限らず単に溶接した金網等を用いてもよい。
【0015】
スペーサー5は、上下の横棒6及び左右の縦棒7を井桁状に結合したもので、法枠用網状側枠2の長手方向に沿って、例えば200mm程度の所定間隔ごとに複数個設けられる。なお、図1では、便宜上、1個のみ示しているが、実際には複数設けられている。また、スペーサー5の形状は、縦棒7が2本の井桁形状に限らず、縦棒7が1本でキ字状としてもよい。また、上側の横棒6の中央部を開口させ、その中央部を開口させた左右の横棒6の自由端側を縦棒7に連結したスペーサー5とし、その開口から下側鉄筋(図示せず。)を配設できる法枠用金網型枠1としてもよい。さらに、下側の横棒6の中央部を開口させた法枠用金網型枠とすることもできる。
【0016】
なお、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4、およびスペーサー5を構成する横棒6及び縦棒7は、亜鉛めっき鉄線等により構成されている。そして、法枠用網状側枠2を構成する縦線3及び横線4の線径は、後述するように、例えば2.15mm、スペーサー5を構成する横棒6及び縦棒7の線径は、例えば3.2mmとしている。
【0017】
そして、法枠用網状側枠2を構成する複数の縦線3,3,・・・の上端部3aと下端部3bとは、全て、図5(a),(b)に示すように、複数の横線4のうち、最上位の横線4aと最下位の横線4bとに巻き付けて固定されている。なお、巻き付ける方向は、外側から内側でも、あるいは内側から外側でも、どちらでも良いが、本実施の形態では前者にしている。ここで、最上位の横線4aと最下位の横線4bに対する、縦線3,3,・・・の上端部3aと下端部3bの巻き付けは、図5(a),(b)に示すように、横線4a,横線4bに引っ掛ける程度でも良いし、完全に1周以上巻き付けるようにしても良い。なお、図5(a),(b)では、縦線3,3,・・・は、便宜上、1本のみ示しており、また、複数の横線4のうち、最上位の横線4aと最下位の横線4b以外の横線は省略して図示している。
【0018】
そのため、法枠用網状側枠2が縦線3,3,・・・と、横線4,4,・・・との交点が溶接などされていないクリンプ金網であることを考慮すると、本実施の形態の法枠用網状側枠2は、各縦線3,3,・・・全ての上端部3aと下端部3bとを、それぞれ、複数の横線4のうちの最上位の横線4aと最下位の横線4bとに巻き付けて固定しているので、法枠用網状側枠2全体の形状、ひいては法枠用金網型枠1全体の形状を従来より強固かつ安定して保持することができ、法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1全体の強度を向上させることができる。その結果、後述するように、法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1の軽量化が可能となり、運搬性および現場作業性が向上し、COを削減して、環境性能を向上させることができる。また、法枠用網状側枠2全体の形状が従来より強固かつ安定化することにより、横線4,4,・・・の左右の両端部を、左右両端部の縦線3に巻き付けたり、溶接等により固定する必要がなくなる。ただし、法枠用網状側枠2全体の形状をさらに強固かつ安定化させるため、横線4,4,・・・左右の両端部を、左右両端部の縦線3に巻き付けて固定するようにしても勿論よい。
【0019】
また、各縦線3の上下端部3a,3bが法枠用網状側枠2の上下から突出することがなくなるので、法枠用網状側枠2の短手方向の上辺及び下辺は、実質上平坦(直線状)に揃えることができる。このとき、本実施の形態では、各縦線3の上下端部3a,3bが内側に折り返されているので、折り返された上下端部3a,3bが法枠用網状型枠2の外面に露出することがなくなり、作業中の引っ掛りが防止されるとともに、法枠用金網型枠1の外面の仕上げ作業も円滑にできる。
【0020】
なお、法枠用網状側枠2の縦線3,3,・・・と横線4,4,・・・とにより形成される格子状の網目については、上下方向の中間部より端部側の網目を大きくしてもよい。これにより、リバウンドロスを少なくして安定したコンクリート強度の法枠が得られる。
【0021】
また、法枠用金網型枠1を折り畳んで運搬するときは、スペーサー5を上限位置に移動させるようにすると良い。この場合、法枠用金網型枠1を上下反転させてスペーサー5を自重で落下させることにより上限位置に移動させることができる。自重では落下しない程度の多少のスライド抵抗を持たせ、手で持上げるようにしてもよい。これにより持ち運びの際に型枠上下への突出部分がなくなり取扱い性が向上するとともに梱包が簡素化され、ダンボールなどの梱包材を大幅に削減できる。そして、法枠構造物施工時には、上下を適正に配置して法枠用金網型枠1を開くことにより自重で(または手で)スペーサー5を下限位置に移動させる。これにより、スペーサー5の縦棒7の下端が法枠用網状側枠2の下縁から突出するので、斜面に植生用金網を敷いた場合等に縦棒7がこれらに引っ掛かり、法枠用金網型枠1が滑らず、法枠施工作業を円滑に行うことができる。
【0022】
≪本実施の形態と従来との性能比較≫
次に、本実施の形態の法枠用網状側枠2と、従来の法枠用網状側枠とを比較して説明する。
【0023】
(1)縦線3および横線4の線径
上述したように本実施の形態では、法枠用網状側枠2の各縦線3は全て上端部3aと下端部3bとを、それぞれ複数の横線4のうちの最上位の横線4aと最下位の横線4bとに巻き付けて固定したので、法枠用網状側枠2全体の形状、ひいては法枠用金網型枠1全体の形状を従来より強固かつ安定して保持することができ、法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1全体の強度を向上させることができる。そのため、本実施の形態では、縦線3および横線4の線径(線径)を、2.15mmとすることができ、従来の線径の2.3mmより、細い線材を使用できる。
【0024】
(2)縦線3および横線4の引張り強さ
(1)でも述べたように、本実施の形態では、同じ線径の線材を使用した場合には、法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1全体の強度が従来のものより向上するので、細い線径の線材を使用することができるが、縦線3および横線4の引張り強さを、500N/mm以上とし、従来の420N/mmより、強い線材を使用することにより、その線径や使用本数を減らすことができる。
【0025】
(3)縦線3および横線4の軽量化
本実施の形態によれば、(1),(2)で述べたような縦線3および横線4の線径の細線化と、引張り強さの強化とが可能となったので、法枠用金網型枠1の断面積が150(cm)断面の場合、縦線3および横線4は1.01kg/mとなり、従来型枠の1.19kg/mの84.9%になる。同様に、200(cm)断面では、縦線3および横線4は1.43kg/mとなり、従来型枠の1.60kg/mの89.4%となった。また、300(cm)断面では、縦線3および横線4は1.99kg/mとなり、従来型枠の2.32kg/mの85.8%になる。その結果、本実施の形態の法枠用網状側枠2によれば、断面の大きさにかかわらず、従来型枠より軽量化が図れていることがわかる。
【0026】
(4)CO削減量
本実施の形態によれば、(3)で述べたように縦線3および横線4の軽量化を図ることができる。その結果、150(cm)断面の場合、CO削減量は、従来型枠との比較で、0.39kg・CO/m・製品となる。詳細には、金網資材減による削減量が0.36であり、運搬による削減量が0.03であり、1000m当たり390kgのCOを削減できることになる。また、200(cm)断面の場合、CO削減量は、従来型枠との比較で、0.37kg・CO/m・製品となる。詳細には、金網資材減による削減量が0.34であり、運搬による削減量が0.03であり、1000m当たり370kgのCOを削減できることになる。さらに、300(cm)断面の場合、CO削減量は、従来型枠との比較で、0.71kg・CO/m・製品となる。詳細には、金網資材減による削減量が0.66であり、運搬による削減量が0.05であり、1000m当たり710kgのCOを削減できることになる。
【0027】
(5)法枠用金網型枠1のたわみ試験
5分勾配(1:0.5)にセットした合板上で、吹き付けたモルタルが滑るようにして最大たわみ量を測定した。その結果、従来の法枠用金網型枠の場合、最大たわみ量が22mmであったのに対し、本実施の形態の法枠用金網型枠1によれば、最大たわみ量が16mmであり、最大たわみ量が大幅に減少したことから、法枠用金網型枠1全体の強度が向上していることがわかる。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態の法枠用網状側枠2によれば、斜面を安定化させる際に構築する法枠用金網型枠1を構成する複数の縦線3,3,・・・と、複数の横線4,4,・・・とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠2において、各縦線3,3,・・・全ての上端部および下端部3a,3bを、複数の横線4,4,・・・のうち最上位および最下位に配設された横線4a,4bに巻き付けて固定するようにしたため、法枠用網状側枠2、ひいては法枠用金網型枠1全体の形状を従来より強固かつ安定して保持することができ、法枠用金網型枠1全体の強度を向上させることができる。
【0029】
その結果、本実施の形態の法枠用網状側枠2および法枠用金網型枠1の軽量化が可能となり、運搬性および現場作業性が向上し、COを削減して、環境性能を向上させることができる。
【0030】
また、法枠用網状側枠2の短手方向の上辺及び下辺が実質的に平坦となり、法枠用網状側枠2から縦線3,3,・・・の切りっぱなしの部分が上下に突出することがなくなるため、保管時や持ち運び中の取扱性が向上して、少ない梱包材で済み、梱包も容易にできる。また、法枠構造物施工時においても、コンクリート圧送ホースや作業服等に引っ掛ることがなく、作業性が向上する。
【0031】
また、法枠用網状側枠2の短手方向の上辺及び下辺が同じ形状になるため、現場における作業時に、法枠用網状側枠2の上下を確認する必要もなくなり、この点でも作業性が向上する。
【0032】
また、法枠用網状側枠2の短手方向の下辺が平坦であるため、法枠構造物施工時に、法面に設置したときに地山への食込みが防止され、必要な高さが保たれ、所定の型枠断面積を確保できる。その結果、余分なコンクリートを付加したり、型枠を継ぎ足して高くする必要がなくなり、無駄がなくなり、この点でも作業性が向上する。
【0033】
なお、本実施の形態の法枠用網状側枠2は、モルタル等のセメント系固化材を吹き付けて構成する法枠構造物の縦枠の形成にも、横枠の形成にも使用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 法枠用金網型枠
2 法枠用網状側枠
3 縦線
3a 上端部
3b 下端部
4 横線
4a 最上位の横線
4b 最下位の横線
5 スペーサー(型枠形成用補助部材)
6 横棒
7 縦棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦線と複数の横線とを交互に編み込んだ金網からなる法枠用網状側枠であって、
前記縦線の上端部および下端部を、それぞれ、前記複数の横線のうち最上位および最下位に配設された横線に巻き付けた、
ことを特徴とする法枠用網状側枠。
【請求項2】
請求項1記載の法枠用網状側枠において、
前記縦線および横線は、
引張り強さが500N/mm以上であり、線径が2.15mmの線材からなる、
ことを特徴とする法枠用網状側枠。
【請求項3】
自然または人工の斜面に構築して斜面の安定化を図る法枠構造物であって、
請求項1または請求項2記載の法枠用網状側枠を一対用意し、その一対の法枠用網状側枠を所定間隔を空けて型枠形成用補助部材により連結することにより構成した法枠用金網型枠を、法枠の少なくとも縦枠または横枠の少なくとも一方として使用する、
ことを特徴とする法枠構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97441(P2012−97441A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245192(P2010−245192)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(390019323)小岩金網株式会社 (32)
【出願人】(000112886)フリー工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】