説明

泡立てネット

【課題】きめ細かく、弾力性に富んだ泡を形成することができる泡立てネットを提供する。
【解決手段】伸縮性を有する網材により形成される筒状網材20をその軸線方向に押し縮めることにより形成された環状ネット本体21の対峙する2ヶ所をそれぞれ結束部材3により結束し、環状ネット本体21に対する押し縮め力を解放することにより形成された泡立てネット1であって、筒状網材20は、その径方向に沿う伸縮率が、軸線方向に沿う伸縮率よりも大きいことを特徴とする泡立てネット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立てネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗顔液、石鹸、ボディーシャンプー等の洗浄剤を用いて身体を洗浄する際には、洗浄剤の泡立ちをよくするために特許文献1に開示されているような泡立てネットが用いられている。
【0003】
この泡立てネットは、伸縮性を有する網材により形成された筒状網材をその軸線方向に押し縮めて環状体を形成し、この環状体の互いに対峙する2ヶ所をそれぞれ結束部材により結束し、環状体に対する押し縮め力を解放することにより形成されている。
【特許文献1】特開2000−316743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の泡立てネットを用いて洗浄剤を泡立てた場合、簡単に多量の泡を形成することができるが、形成された泡は、きめ細かさが足りず、また、弾力性にも乏しい泡であり、身体を洗浄するための泡としては良質なものではないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、きめ細かく、弾力性に富んだ泡を形成することができる泡立てネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、伸縮性を有する網材により形成される筒状網材をその軸線方向に押し縮めることにより形成された環状ネット本体の対峙する2ヶ所をそれぞれ結束部材により結束し、前記環状ネット本体に対する押し縮め力を解放することにより形成された泡立てネットであって、前記筒状網材は、その径方向に沿う伸縮率が、軸線方向に沿う伸縮率よりも大きいことを特徴とする泡立てネットにより達成される。
【0007】
また、この泡立てネットにおいて、前記筒状網材は、その軸線方向に殆ど伸縮しないように形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記筒状網材は、延伸加工が施されて形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記環状ネット本体は、前記筒状網材を蛇腹状に押し縮めることにより形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記結束部材には、指挿通リングが取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、きめ細かく、弾力性に富んだ泡を形成することができる泡立てネットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る泡立てネットについて添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る泡立てネットを示す概略構成図である。図2は、図1に示す泡立てネットの作成方法を説明するための説明図である。
【0013】
図1に示すように、泡立てネット1は、ネット本体2、結束部材3及び指挿通用リング4を備えている。ネット本体2は、略球形状をしており、その表面が網材からなるひだ状になっている。
【0014】
この泡立てネット1は、次のようにして作成される。まず、図2(a)に示すように、伸縮性を有する網材から形成される筒状網材20を準備する。そして、筒状網材20を図2(b)に示すように板状体5に被覆した後、筒状網材20をその軸線方向に沿って蛇腹状に押し縮めることにより、環形状の環状ネット本体21を形成する。筒状網材20をその軸線方向に沿って蛇腹状に押し縮めることにより形成されるひだ22の数は、使用する筒状網材20の長さによって変動するが、例えば、長さ100cmの筒状網材20を使用する場合、ひだ22の数を10〜20枚とすることが好ましい。
【0015】
次に、押し縮めた状態で、環状ネット本体21を板状体5から取り外し、図2(c)に示すように、環状ネット本体21の互いに対峙する2ヶ所をそれぞれ結束部材3により環の胴部を絞るようにして結束する。このとき、環状ネット本体21の胴部と共に指挿通用リング4を結束部材3により結束する(図2(d))。その後、環状ネット本体21に対する押し縮め力を解放すると、筒状網材20の弾性復元力により、結束部材3にて結束した2ヶ所を結ぶ直線を軸として環状ネット本体21が広がって略球形状のネット本体2が形成され、図2(e)や図1に示すような略球形状の泡立てネット1が作成される。
【0016】
ここで、筒状網材20は、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン等の合成樹脂を原料として一体押出し成形法により形成される筒状のプラスチックネットであり、その径方向(図2(a)における矢示C方向)の伸縮率が、軸線方向(図2(a)における矢示D方向)の伸縮率よりも大きくなるように形成されている。なお、筒状網材20の網目形状は、菱形形状、四角形状、三角形状、円形状等の各種形状を採用することができる。
【0017】
また、使用される筒状網材20としては、その軸線方向の長さが80cm〜150cm、折径が20cm〜35cm、目数が70〜100、厚みが0.1mm〜0.5mmであるものが好ましく使用される。ここで、折径とは、筒状網材20を径方向に最大限に拡げた時の拡張方向における寸法であり、目数とは、周方向における網目の数のことをいう。また、図2(a)に示すように、筒状網材20を径方向に拡張する力を加えない状態での筒状網材20の内径dが、2cm〜5cmであるものが好ましい。
【0018】
筒状網材20において、その径方向の伸縮率が、軸線方向の伸縮率よりも大きくなるように形成するには、例えば、筒状網材20の押出成形時に、所定の延伸条件で延伸加工を施すことにより行うことができる。
【0019】
結束部材3は、環状ネット本体21の胴部と指挿通用リング4とを強固に結束するため部材であり、例えば、インシュロックや紐材等である。
【0020】
指挿通用リング4は、泡立てネット1を安定的に保持するために設けられるものであり、指が挿通できる程度の大きさのリング状部材である。この指挿通用リング4は、プラスチック等の合成樹脂や、木材、或いは金属等により形成されており、リング内径が、例えば2cm〜4cmとなるように形成されている。
【0021】
このように構成された泡立てネット1を用いて洗浄剤を泡立てる方法の一例について以下に説明する。まず、一方の指挿通用リングに左手の指を挿通して泡立てネット1を保持した後、水又はお湯で泡立てネット1を濡らす。次に、液体石鹸や固形石鹸等の洗浄剤を泡立てネット1につけた後、他方の指挿通用リング4に右手の指を挿通し、泡立てネット1を両手の指間で保持する。
【0022】
そして、2つの指挿通用リング4を互いに反対方向に引っ張ることによるネット本体2を引き延ばす動作、および、引き延ばし力を解除することによるネット本体2を収縮させる動作を繰り返す。ネット本体2を引き延ばす動作によって、泡に多量の空気を含ませることができ、収縮させる動作によって、泡の空気を抜き出すことができる。この動作の繰り返しによって、泡は、きめが細かくかつ弾力性に富む状態に変化していく。なお、ネット本体2を収縮させる際において、泡の空気をより効果的に抜き出すために、ネット本体2を両手の掌で擦りつけるようにすることが好ましい。
【0023】
このようにして生成された泡は、例えば、泡立てネット1から絞るようにして分離され、洗顔や身体の洗浄に用いられる。なお、泡が付着している泡立てネット1により身体を直接擦ることによって身体の洗浄を行ってもよい。
【0024】
ここで、きめが細かくて、弾力性に富んだ良質の泡を生成するためには、ネット本体2の収縮時において、多量の空気を含んだ泡からできるだけ多くの空気を抜き出すことが必要になる。ネット本体2を収縮させて泡の空気を抜き出す場合、ネット本体2の各ひだ22の網目は、弾性復元力によって、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に沿う方向には収縮するが、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向には広がろうと動く。結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向に広がろうとする網目の動きが速いと、ネット本体2を収縮させて空気を抜き出そうとするにもかかわらず、泡に空気が含まれることになってしまうおそれが高い。
【0025】
本実施形態に係る泡立てネット1が有するネット本体2は、径方向の伸縮率が軸線方向の伸縮率よりも大きくなるように形成されている筒状網材20を蛇腹状に押し縮めて環状ネット本体21を形成し、この環状ネット本体21の互いに対峙する2ヶ所をそれぞれ結束した後、環状ネット本体21に作用させている押し縮め力を解放することにより構成されている。このような構成によって、ネット本体2の各ひだ22は、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向(図1の矢示A方向)の伸縮率が、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に沿う方向(図1の矢示B方向)の伸縮率よりも小さくなる。つまり、ネット本体2の各ひだ22の網目は、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向に伸縮しにくい構造を有することになる。
【0026】
本実施形態に係る泡立てネット1においては、上述のように、各ひだ22の網目が、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向に伸縮しにくい構造を有しているため、ネット本体2を収縮させて空気を抜き出す動作を行う際に、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向に広がろうとする各ひだ22の網目の動きを緩やかにすることができ、泡に空気が含まれてしまうことを効果的に抑制することができる。このように、泡立てネット1の収縮時における空気の抜き出しを効率よく行うことが可能になる結果、きめが細かく、弾力性に富む良質な泡を形成する事が可能になる。
【0027】
特に、軸線方向に殆ど伸縮しない筒状網材20を用いて泡立てネット1を形成した場合、ネット本体2の各ひだ22は、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向にほとんど伸縮しない構造となるため、ネット本体2の収縮時において、結束部材3により結束した2ヶ所を結ぶ直線に垂直な方向に広がろうとする各ひだ22の網目の動きをより一層緩やかにすることができる。これにより、ネット本体2の収縮時における空気の抜き出しをより一層効率的に行うことが可能になり、きめが細かく、弾力性に富む良質な泡を確実に形成する事が可能になる。ここで、「軸線方向に殆ど伸縮しない筒状網材20」とは、軸線方向に引張荷重を負荷した場合における筒状網材20の軸線方向の最大長さL1と、引張荷重を負荷していない場合における筒状網材20の軸線方向の長さL0との比(L1/L0)が、1.05以下である筒状網材20のことをいう。なお、軸線方向に殆ど伸縮せず、径方向に伸縮性を有する筒状網材20は、筒状網材20の押出成形時における延伸加工条件を適宜変更することにより製造可能である。
【0028】
発明者は、上記効果を確認するための実験を行ったので、その実験結果について以下説明する。
【0029】
まず、軸線方向に殆ど伸縮しない筒状網材20を用いて形成した本発明に係る泡立てネット1と、径方向及び軸線方向の伸縮率が同等の筒状網材を用いて形成した比較用泡立てネットとを準備する。泡立てネット1及び比較用泡立てネットを形成する筒状網材は、それぞれ、長さが100cm、折径が28cm、目数が80、筒状網材を径方向に拡張する力を加えない状態での筒状網材の内径が4cmのものを使用した。また、ネット本体の表面に形成されるひだの数が12枚となるように形成した。
【0030】
次に、泡立てネット1及び比較用泡立てネットのそれぞれについて、洗浄剤(株式会社ディアワールド社製 セルビック ウォッシングフォーム)を用いて上述した方法により泡立てを行った。なお、使用した洗浄剤の分量は、1ccであり、泡立て時間は1分間である。
【0031】
泡立てが終了した後、図3(a)に示すように、泡立てネット1及び比較用泡立てネットのそれぞれから取り出した泡を、同じ形状の容器に充満させ、泡の上面にスポンジを介して重量486gの錘を載置した。このような実験を合計5回行い、それぞれの結果を図3の写真(a)〜(e)に示す。図3の各写真(a)〜(e)において左側に配置されている容器が、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡が収容された容器であり、右側に配置されている容器が、比較用泡立てネットにより生成した泡が収容されている容器である。
【0032】
泡の上面にスポンジを介して錘を載置した状態において、容器に収容されている泡の高さ(容器の底面からスポンジの下面までの長さ)は、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡の場合、4〜5cmであった。一方、比較用泡立てネットにより生成した泡の場合、容器に収容されている泡の高さは、2〜3cmであった。この実験結果から、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡は、潰れにくく弾力性に富んだ良質の泡であることが分かる。なお、生成した泡を目視により比較した結果、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡の方が、比較用泡立てネットにより生成した泡よりもきめが細かいことが確認できた。
【0033】
また、洗浄剤の分量を2ccとして、上述と同様な実験を行った。泡の上面にスポンジを介して錘を載置した状態において、容器に収容されている泡の高さは、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡の場合、6〜7cmであった。一方、比較用泡立てネットにより生成した泡の場合、容器に収容されている泡の高さは、4〜5cmであった。このように、洗浄剤の分量を変化させた場合であっても、本発明に係る泡立てネット1により生成した泡は、比較用泡立てネットにより生成した泡よりも、潰れにくく弾力性に富んだ良質の泡であることが確認できた。
【0034】
また、本実施形態においては、筒状網材20を蛇腹状に押し縮めることにより環状ネット本体21を形成し、結束部材3による結束の後、押し縮め力を解放して略球形状のネット本体2を形成しているので、ネット本体2の表面には、規則的に形成された複数のひだ22が露出することになる。このような構成により、ひだ22に付着する洗浄剤と空気との接触率を高めることができるため、洗浄剤の泡立ちをよくすることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る泡立てネット1は、指挿通用リング4を備えているため、泡立てネット1を安定的に保持しつつ、ネット本体2の引き延ばし動作を容易に行うことができる。
【0036】
以上、本発明に係る泡立てネット1の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、指挿通用リング4を結束部材3によりネット本体2に取り付けるように構成しているが、例えば、結束部材3として紐材を用いる場合、環状ネット本体21を結束する紐材で指を挿通させるリングを形成することにより、指挿通用リング4を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る泡立てネットを示す概略構成図である。
【図2】図1に示す泡立てネットの作成方法を説明するための説明図である。
【図3】図1に示す泡立てネットの効果を確認するために発明者が行った実験結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0038】
1 泡立てネット
2 ネット本体
20 筒状網材
21 環状ネット本体
22 ひだ
3 結束部材
4 指挿通用リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する網材により形成される筒状網材をその軸線方向に押し縮めることにより形成された環状ネット本体の対峙する2ヶ所をそれぞれ結束部材により結束し、前記環状ネット本体に対する押し縮め力を解放することにより形成された泡立てネットであって、
前記筒状網材は、その径方向に沿う伸縮率が、軸線方向に沿う伸縮率よりも大きいことを特徴とする泡立てネット。
【請求項2】
前記筒状網材は、その軸線方向に殆ど伸縮しないように形成されている請求項1に記載の泡立てネット。
【請求項3】
前記筒状網材は、延伸加工が施されて形成されている請求項1又は2に記載の泡立てネット。
【請求項4】
前記環状ネット本体は、前記筒状網材を蛇腹状に押し縮めることにより形成されている請求項1から3のいずれかに記載の泡立てネット。
【請求項5】
前記結束部材には、指挿通リングが取り付けられている請求項1から4のいずれかに記載の泡立てネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−106627(P2009−106627A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283489(P2007−283489)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(399132180)株式会社ディアワールド (1)
【Fターム(参考)】