波長選択スイッチ
【課題】フィルタ特性の中心波長ずれを修正可能な波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】波長選択スイッチ300は、波長多重された光信号が入力される入力ポート301と、光信号が出力される出力ポート302と、光信号を分波および合波する分波合波器304と、光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイ306と、入力ポート301と出力ポート302を分波合波器304と光偏向器アレイ306を介して結合させる光学部材303を有している。光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に配列された複数の光偏向器305と、光偏向器305から外れた光信号を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部307を有している。波長選択スイッチ300はさらに、光偏向器アレイ306の位置を変更し得る位置変更部309と、光検出部307による検出結果に基づいて位置変更部309をサーボ制御する制御部308を有している。
【解決手段】波長選択スイッチ300は、波長多重された光信号が入力される入力ポート301と、光信号が出力される出力ポート302と、光信号を分波および合波する分波合波器304と、光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイ306と、入力ポート301と出力ポート302を分波合波器304と光偏向器アレイ306を介して結合させる光学部材303を有している。光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に配列された複数の光偏向器305と、光偏向器305から外れた光信号を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部307を有している。波長選択スイッチ300はさらに、光偏向器アレイ306の位置を変更し得る位置変更部309と、光検出部307による検出結果に基づいて位置変更部309をサーボ制御する制御部308を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信業界では、通信データ量の増大に対応するために波長多重(WDM)技術が利用されている。WDM技術を用いた大容量光通信システムを構築するための光デバイスの一つとして波長選択スイッチ(WSS)がある。波長選択スイッチは、たとえば、入力された波長多重信号(波長多重された光信号)を波長ごとに異なる出力に振り分けることができるデバイスである。そのために、波長選択スイッチは、光信号を分波する分波素子と、分波された複数の波長のビームをそれぞれ偏向する複数の光偏向器を有している。
【0003】
このような波長選択スイッチは、たとえば、特開2007−148429号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波長選択スイッチを通して通信される光信号にエラーデータが発生しないために、波長選択スイッチのフィルタ特性は、その中心波長がITU−GRIDなる規格化された波長に一致している必要があり、また広い透過帯域幅を有していることが望まれる。ここでフィルタ特性とは、たとえば、各光偏向器が偏向する光ビームの波長範囲に相当する。
【0006】
波長選択スイッチのフィルタ特性は、温度変化などの環境変化によって変化し得る。このため、フィルタ特性の中心がITU−GRIDから外れてしまうことがある(以下では、この状態をフィルタ特性の中心波長ずれと呼ぶ)。このような事態は、波長選択スイッチを通して通信される光信号の品質低下を招く。
【0007】
特開2007−148429号公報に開示された波長選択スイッチをはじめ、従来の波長選択スイッチは、このような事態を考慮してフィルタ特性の中心波長ずれを修正する機能を有するものは提案されていない。
【0008】
本発明は、環境変化によって発生するフィルタ特性の中心波長ずれを修正可能な波長選択スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による波長選択スイッチは、波長多重された光信号が入力される入力ポートと、前記光信号が出力される出力ポートと、前記光信号を分波および合波する分波合波器と、前記光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイと、前記入力ポートと前記出力ポートを前記分波合波器と前記光偏向器を介して結合させる光学部材を備えている。前記光偏向器アレイは、前記分波合波器の分波方向に配列された複数の光偏向器と、受光した光量を反映した電気信号を出力する光検出部を有している。波長選択スイッチは、前記光偏向器アレイの位置を変更し得る位置変更部と、前記光検出部による検出結果に基づいて前記位置変更部をサーボ制御する制御部をさらに有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境変化によって発生するフィルタ特性の中心波長ずれを修正可能な波長選択スイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】波長選択スイッチのフィルタ特性と波長選択スイッチを通して通信される光信号の関係を示している。
【図2】フィルタ特性の中心波長ずれによる光信号の品質低下を説明する概念図である。
【図3】フィルタ特性の中心波長ずれが生じていない状態におけるフィルタ特性と光偏向器とビームスポットの位置関係を示している。
【図4】光偏向器アレイの位置ずれによるフィルタ特性の中心波長ずれの発生を説明する概念図である。
【図5】ビームスポットの位置ずれによるフィルタ特性の中心波長ずれの発生を説明する概念図である。
【図6】フィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムのフローを示している。
【図7】第1実施形態の波長選択スイッチの構成を模式的に示している。
【図8】第1実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図9】第1実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図10】第1実施形態におけるフィルタ特性の中心波長ずれ検出の原理を説明する図である。
【図11】第1実施の形態の波長選択スイッチにおけるフィルタ特性の中心波長ずれ修正の動作フローを示している。
【図12】第2実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図13】第2実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの一部を拡大して示している。
【図14】第2実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図15】第3実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図16】第3実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの一部を拡大して模式的に示している。
【図17】第3実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図18】第3実施形態の波長選択スイッチの動作フローを模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の説明に先立ち、まず、波長選択スイッチにおけるフィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムとその影響について説明する。
【0013】
前述したように、波長選択スイッチのフィルタ特性は、その中心波長がITU−GRIDに一致している必要があり、波長選択スイッチのフィルタ特性は、広い透過帯域幅を有していることが望まれる。
【0014】
波長選択スイッチのフィルタ特性と波長選択スイッチを通して通信される光信号の関係を図1に示す。図1には、ITU−GRIDのひとつに対応したフィルタ特性と光信号(分波されたひとつの波長のビーム)が示されている。図1(A)は、フィルタ特性が広い帯域幅を有している例を示し、図1(B)は、フィルタ特性が狭い帯域幅を有している例を示している。図1(A)に示されように、フィルタ特性が広い帯域幅を有している場合には、信号光は、遮断されることなく伝送される。これに対して、図1(B)に示されるように、フィルタ特性が狭い帯域幅を有している場合には、信号光は、図中の楕円内の部分に対応する光信号の波長成分がカットされる。これは、通信される光信号の品質低下を招き、エラーデータが発生する原因となる。
【0015】
また、図2に示されるように、フィルタ特性の中心波長がずれると、信号光は、図中の円内の部分に対応する光信号の波長成分がカットされる。これは、通信される光信号の品質低下を招き、エラーデータが発生する原因となる。
【0016】
本発明者は研究を通して、振動衝撃や温度変化などの外乱によってフィルタ特性の中心波長がずれ得ることを見出し、フィルタ特性の中心波長とITU−GRIDの間のずれの管理が必要であるとの結論に達した。
【0017】
このフィルタ特性の中心波長は、波長選択スイッチ内の光偏向器とそのミラーに入射する光のビームスポットの位置によって決まる。光偏向器の中心にITU−GRIDなる波長のビームスポット中心がくるとき、フィルタ特性の中心波長はITU−GRIDに一致する(図3参照)。そのため、フィルタ特性の中心波長ずれの原因は、光偏向器アレイの位置ずれやビームスポットの位置ずれが考えられる。
【0018】
フィルタ特性の中心波長ずれの原因の一つとして、環境温度変化などの外乱による光偏向器アレイの設置位置ずれが考えられる。通常、光偏向器アレイは、その中の各光偏向器の中心が、ITU−GRIDの入力光のビームスポットの中心に一致するように配置されている。そのため、図4に示されるように、光偏向器アレイに位置ずれが生じると、これに伴ってフィルタ特性の透過帯域の中心波長が信号光の帯域の中心波長からずれる。このずれが大きい場合には、信号光の帯域の一部がフィルタ特性の透過帯域の外にはみ出すため、光信号の一部の波長成分がカットされてしまう。これは、光信号の品質低下を招き、データエラーの発生の原因となる。
【0019】
また、分波素子やレンズなどの光学部品の変形や位置ずれが原因で、光偏向器への入力光のビームスポットの位置がずれた場合についても同様の事態が生じる(図5参照)。図5に示されるように、光偏向器への入力光のビームスポットの位置が光偏向器の中心からずれると、ビームスポットの中心がフィルタ特性の透過帯域の中心波長から外れる。この場合も、光偏向器アレイに位置ずれが生じた場合と同様に、信号光の帯域の一部がフィルタ特性の透過帯域の外にはみ出すため、信号光の一部の波長成分がカットされてしまい、光信号の品質低下を招き、データエラーの発生の原因となる。
【0020】
以上をまとめると、フィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムのフローは図6に示されるようになる。まず、環境変化などの外乱が発生する。これにより、波長選択スイッチ内の(光偏向器を含む)光学部品の変形や位置ずれが発生する。そして、波長選択スイッチ内の光路の空間的なずれが発生する。このため、光偏向器とビームスポットの相対的な位置ずれが発生する。そして、フィルタ特性の中心波長ずれが発生する。これにより、光信号の一部がカットされる。その結果、光信号の品質が低下する。
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
(構成)
図7に示すように、第1実施形態の波長選択スイッチ300は、波長多重された光信号が入力される入力ポート301と、光信号が出力される出力ポート302と、光信号を分波および合波するグレーティングなどの分波合波器304と、光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイ306と、入力ポート301と出力ポート302を分波合波器304と光偏向器アレイ306を介して結合させるレンズなどの光学部材303とを有している。
【0022】
分波合波器304は、入力ポート301から入力された光信号を、波長の異なる複数のビームに分割する機能を有している。各ビームは、波長の広がりを有しており、その中心波長はITU−GRIDに一致している。
【0023】
光偏向器アレイ306は、複数の光偏向器305と、光偏向器305から外れた光信号310を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部307を有している。一例では、光偏向器305はMEMSミラーで構成され、したがって光偏向器アレイ306はMEMSミラーアレイで構成され得る。ここで、MEMSミラーは、たとえば、二軸周りに揺動可能なミラーを備え、ミラーの反射面の向き(たとえば反射面に立てた法線の方向)を電圧などの電気信号の入力によって制御し得るMEMS素子を意図している。しかし光偏向器305は、MEMSミラーに限定されるものではなく、光を偏向可能な他の任意の素子で構成されてよい。
【0024】
波長選択スイッチ300はさらに、光偏向器アレイ306に入射する光信号に対する光偏向器アレイ306の位置を変更し得る位置変更部309と、光検出部307による検出結果に基づいて位置変更部309をサーボ制御する制御部308を有している。位置変更部309は、たとえば、光偏向器アレイ306を移動可能に支持しているモータなどにより駆動されるステージで構成され得る。
【0025】
光偏向器アレイ306の構成について図8を参照しながら説明する。図8に示すように、光偏向器アレイ306は、複数たとえばN個(Nは自然数)の光偏向器305−1〜305−Nを有している。図8において、光偏向器305−1は、最も左側に位置する光偏向器を表し、光偏向器305−Nは、最も右側に位置する光偏向器を表している。光偏向器305−M(1≦M≦N)は、光偏向器305−1,305−Nを含め、左側を起点としてM番目の光偏向器を表している。
【0026】
光偏向器305−1〜305−Nは、分波合波器304の分波方向に配列されている。ここで、分波合波器304の分波方向とは、光偏向器アレイ306上における、分波合波器304によって分波された複数の波長のビームの広がり方向を意味する。分波合波器304と光偏向器アレイ306の間にミラーなどが存在する場合には、光偏向器アレイ306上における複数の波長のビームの広がり方向は、分波直後の複数の波長のビームの広がり方向と必ずしも一致しないが、ここでは便宜上そのように呼ぶ。
【0027】
光偏向器アレイ306はさらに、分波合波器304の分波方向に沿って配置された一対の光検出器307−1,307−2を有している。光検出器307−1,307−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、光偏向器305−1〜305−Nの全体の両側に配置されている。これら一対の光検出器307−1,307−2は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は一対の光検出器307−1,307−2を有している。
【0028】
制御部308の構成について図9を参照しながら説明する。図9に示すように、制御部308は、光検出器307−1,307−2からの電気信号(電圧値)を光検出器ごとに一時的に格納・更新することによりその電気信号の値をモニタするモニタ部600と、光検出器307−1,307−2の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納しているLUT(ルックアップテーブル)602と、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する演算部601と、演算部601から制御信号を受けて位置変更部309を駆動するドライバ603を有している。
【0029】
(作用)
次に第1実施形態の波長選択スイッチ300の動作について説明する。
図7および図8を参照しながら、波長選択スイッチ300において、波長多重された光信号の入力から出力までの基本的な動作について説明する。まず図7において、波長多重された光信号が、入力ポート301から入力され、光学部材303を介して分波合波器304に入射し、ここで波長に応じて異なる角度方向に回折し、複数の波長のビームに分離され、光偏向器アレイ306に到達する。光偏向器アレイ306は、図8に示すように、複数の波長のビームにそれぞれ対応した光偏向器305−1〜305−Nを有しており、複数の波長のビームをそれぞれ独立に所定の角度に偏向し得る。具体的には、光偏向器305が静電引力型の可動ミラーである場合には、所定の電圧を与えることにより可動ミラーが所定の角度となる。偏向された光信号は入力ポートからの光路とは異なる光路を通り、再び分波合波器304と光学部材303を介して出力ポート302に出力される。そのため光偏向器305−1〜305−Nのうち指定したミラーに対応した波長の光信号のみを選択して出力することが可能である。以上が波長選択スイッチ300における基本的な動作である。
【0030】
ここで、環境変化などの外乱によりフィルタ特性の中心波長ずれが起こった場合を想定し、本実施形態によるフィルタ特性の中心波長ずれの修正方法について説明する。修正方法は大きく分けて、(1)中心波長ずれの検出、(2)中心波長ずれの方向と量の演算、(3)光偏向器アレイ306の位置変更(移動)、以上3つの項目となる。図7を用いて、修正方法の概要について以下に説明する。光偏向器アレイ306の設置位置のずれやビームスポットの位置のずれによりフィルタ特性の中心波長ずれが起こったときに、光信号の一部を受光していた光検出部307の受光量の増減からずれ方向とずれ量を演算し、ずれ量分をキャンセルするように位置変更部309を駆動する。これにより光偏向器アレイ306の設置位置を変更し、フィルタ特性の中心波長ずれを修正する。
【0031】
以下、修正方法の詳細について図8と図9と図10を用いて説明する。
【0032】
まず(1)フィルタ特性の中心波長ずれの検出方法について説明する。
【0033】
図10に示すように、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号はN番目の光偏向器305−Nに入射してビームスポット700を形成する。フィルタ特性の中心波長ずれが生じていない状態では、ビームスポット700の中心は光偏向器305−Nの中心に位置する。この時のビームスポット700の中心座標702を基準0とする。ここで、環境変化などの外乱が生じて、ビームスポット700が+方向に移動してビームスポット701になったとする。この時のビームスポットの中心座標703を+x1とする。ビームスポット701の一部の光は、光偏向器305−Nから外れて、光検出器307−2に入射する。光検出器307−2は、その外れた光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。光検出器307−2が出力する電気信号の増大減少をモニタすることにより、+方向の中心波長ずれの発生を検出することができる。
【0034】
また、−方向の中心波長ずれが発生した場合には、同様の原理で、光検出器307−1が出力する電気信号の増大減少をモニタして、1番目の光偏向器305−1に対応する波長のビームスポットの−方向の移動を検出することにより、−方向の中心波長ずれの発生を検出することができる。
【0035】
ここまでがフィルタ特性の中心波長ずれの検出方法である。
【0036】
次にフィルタ特性の中心波長ずれの検出後の(2)ずれ量演算方法と(3)ずれ対象の位置変更方法について説明する。
【0037】
図11に中心波長ずれ検出後から修正までの動作フローを示す。
【0038】
(工程801)補正を開始する。たとえば、光検出器307−1,307−2や制御部308の各部の初期化処理をおこなう。
【0039】
(工程802)モニタ部600において、光検出器307−1,307−2の電気信号をモニタする。
【0040】
(工程803)演算部601において、光検出器307−1,307−2の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0041】
(工程804)光検出器307−1,307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程801へ移行する。たとえば、光検出器307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致する場合には、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号は、図10のビームスポット700を形成していると想像される。一方、光検出器307−1,307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致しない場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更するために、工程805へ移行する。たとえば、光検出器307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致しない場合には、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号は、図10のビームスポット701を形成していると想像される。
【0042】
(工程805)演算部601において、キャリブレーションデータと電気信号の差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0043】
(工程806)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動して光偏向器アレイ306の位置を変更する。その後、工程801へ移行(フィードバック制御)する。
【0044】
これらの一連の工程801〜806によって、たとえば、光偏向器305−1,305−Nに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が光偏向器305−1,305−Nの中心に維持される。したがって、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心もまた、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心に維持される。その結果、波長選択スイッチ300のフィルタ特性の中心とITU−GRIDの一致が維持される。
【0045】
本実施形態では、光偏向器アレイ306を一次元的に移動させているので、位置変更部309は、一次元的に移動可能なステージで構成されてよい。
【0046】
(効果)
以上の説明からわかるように、本実施形態の波長選択スイッチ300では、環境変化などの外乱により光偏向器アレイ306などの光学部品の位置ずれが生じ、それに伴うフィルタ特性の中心波長ずれが発生した場合でも、フィルタ特性の中心波長ずれが速やかに修正される。
【0047】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
第2実施形態の波長選択スイッチの基本構成は第1実施形態と同じであり、したがって図7に示される通りである。第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器アレイ306の構成と制御部308の機能の点において、第1実施形態の波長選択スイッチと相違している。以下では、相違部分に重点をおいて説明する。つまり、以下の説明で触れない部分は、第1実施形態と同様である。
【0048】
(構成)
第2実施形態では、図12と図13に示すように、光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している。光検出器307−M−1,307−M−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。これら複数対の光検出器307−M−1,307−M−2は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は、複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している
第2実施形態の制御部308では、図14からわかるように、モニタ部600は、光検出器307−M−1,307−M−2からの電気信号(電圧値)をモニタする。モニタ部600はまた、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2の選択機能を有している。またLUT602は、光検出器307−M−1,307−M−2の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納している。さらに演算部601は、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する。
【0049】
(作用)
モニタ部600は、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2を選択し、その選択した光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号をモニタする。選択の対象は、入力される光信号に含まれる複数の波長のビームが入射する複数の光偏向器305−Mに対応する複数の光検出器307−M−1,307−M−2である。モニタ部600は、たとえば、それら複数の光検出器307−M−1,307−M−2のうちのひとつを選択し、その電気信号をモニタしてよい。または、複数の光検出器307−M−1,307−M−2のうちのいくつかまたはすべてを選択し、それらの電気信号を順番にモニタしてもよい。演算部601は、モニタ部600がモニタする電気信号に対して、第1実施形態と同様の処理をおこなうことにより、フィルタ特性の中心波長ずれの検出と修正をおこなう。
【0050】
(効果)
第2実施形態の波長選択スイッチは、第1実施形態の波長選択スイッチと同じ利点を有しているほか、次の利点を有している。
【0051】
第1実施形態の波長選択スイッチは、両端の光偏向器305−1,305−Nのいずれかに対応する波長の光信号が入力された場合にのみ、中心波長ずれの検出および修正を実施できる。言い換えれば、光偏向器305−1,305−Nのいずれかに対応する波長の光信号が入力されない限り、中心波長ずれの検出および修正を実施できない。
【0052】
これに対して、第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器305−1〜305−Nのいずれに対応する波長の光信号が入力された場合であっても、中心波長ずれの検出および修正を実施できる。波長選択スイッチの使用時には、光偏向器305−1〜305−Nの少なくともひとつ(実際は二つ以上)に対応する波長の光信号が必ず入力されるので、第2実施形態の波長選択スイッチでは、使用のあいだは常に、中心波長ずれの検出および修正が実施される。
【0053】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
本来、波長選択スイッチには、光学的損失の小さいことが望まれている。ビームスポットと光偏向器の位置ずれは、ビームスポットの一部の光が光偏向器から外れて光学的損失を引き起こす要因となる。ビームスポットと光偏向器の分波方向の位置ずれは、フィルタ特性の中心波長ずれ防止の観点から修正されるべきであることは前述したとおりである。これに加えて、光学的損失低減の観点を加味すると、さらに、ビームスポットと光偏向器の垂直方向の位置ずれも修正されることが好ましい。
【0054】
第3実施形態の波長選択スイッチは、このような観点のもと、分波方向に加えて垂直方向に関してもビームスポットと光偏向器の位置ずれを修正し得る構成となっている。
【0055】
第3実施形態の波長選択スイッチの基本構成は第1実施形態と同じであり、したがって図7に示される通りである。第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器アレイ306の構成と制御部308の機能の点において、第1実施形態の波長選択スイッチと相違している。以下では、相違部分に重点をおいて説明する。つまり、以下の説明で触れない部分は、第1実施形態と同様である。
【0056】
(構成)
第3実施形態では、図15と図16に示すように、光偏向器アレイ306は、第2実施形態と同様に、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している。光検出器307−M−1,307−M−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。さらに、光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−3,307−M−4を有している。光検出器307−M−3,307−M−4は、分波合波器304の分波方向の垂直方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。これら複数対の光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は、複数対の光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4を有している。
【0057】
第3実施形態の制御部308では、図17からわかるように、モニタ部600は、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4からの電気信号(電圧値)をモニタする。モニタ部600は、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4の選択機能を有している。またLUT602は、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納している。さらに演算部601は、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する。
【0058】
(作用)
第3実施形態におけるフィルタ特性の中心波長ずれの修正について図18を参照しながら説明する。
【0059】
(工程901)補正を開始する。たとえば、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4や制御部308の各部の初期化処理をおこなう。
【0060】
(工程902)モニタ部600において、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4を選択する。選択の手法は第2実施形態と同様である。さらに、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号をモニタする。
【0061】
(工程903)演算部601において、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0062】
(工程904)光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とキャリブレーションデータが一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程907へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、垂直方向に関して、光偏向器305−Mの中心にビームスポットを形成していると想像される。一方、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とキャリブレーションデータが一致しない場合には、光偏向器アレイ306の垂直方向の位置を変更するために、工程905へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、垂直方向に関して、光偏向器305−Mの中心からずれた位置にビームスポットを形成していると想像される。
【0063】
(工程905)演算部601において、電気信号とキャリブレーションデータの差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0064】
(工程906)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動し、光偏向器アレイ306の垂直方向の位置を変更する。その後、工程907へ移行する。
【0065】
(工程907)モニタ部600において、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号をモニタする。
【0066】
(工程908)演算部601において、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0067】
(工程909)光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とキャリブレーションデータが一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程901へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心にビームスポットを形成していると想像される。一方、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とキャリブレーションデータが一致しない場合には、光偏向器アレイ306の分波方向の位置を変更するために、工程910へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心からずれた位置にビームスポットを形成していると想像される。
【0068】
(工程910)演算部601において、電気信号とキャリブレーションデータの差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0069】
(工程911)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動し、光偏向器アレイ306の分波方向の位置を変更する。その後、工程901へ移行する。
【0070】
これらの一連の工程901〜911によって、選択された光偏向器305−Mに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が、分波方向と垂直方向の両方に関して、光偏向器305−Mの中心に維持される。したがって、すべての光偏向器305−1〜305−Nに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が、それぞれ、分波方向と垂直方向の両方に関して、光偏向器305−1〜305−Nの中心に維持される。
【0071】
図18の動作フローによる処理では、垂直方向の検出と修正の後に分波方向の検出と修正をおこなっているが、これは単なる例示であり、それらの順序は逆であってもかまわない。
【0072】
本実施形態では、光偏向器アレイ306を二次元的に移動させているので、位置変更部309は、二次元的に移動可能ないわゆるXYステージで構成されてよい。
【0073】
(効果)
第3実施形態の波長選択スイッチは、第2実施形態の波長選択スイッチと同じ利点を有しているほか、次の利点を有している。
【0074】
ビームスポットと光偏向器の分波方向の位置ずれに加えて垂直方向の位置ずれも修正されるので、波長選択スイッチの光学的損失が低減される。
【0075】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0076】
300…波長選択スイッチ、301…入力ポート、302…出力ポート、303…光学部材、304…分波合波器、305,305−1〜305−N…光偏向器、306…光偏向器アレイ、307…光検出部、307−1,307−2,307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4…光検出器、308…制御部、309…位置変更部、310…外れた光信号、600…モニタ部、601…演算部、603…ドライバ、700,701…ビームスポット、702,703…中心座標。
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信業界では、通信データ量の増大に対応するために波長多重(WDM)技術が利用されている。WDM技術を用いた大容量光通信システムを構築するための光デバイスの一つとして波長選択スイッチ(WSS)がある。波長選択スイッチは、たとえば、入力された波長多重信号(波長多重された光信号)を波長ごとに異なる出力に振り分けることができるデバイスである。そのために、波長選択スイッチは、光信号を分波する分波素子と、分波された複数の波長のビームをそれぞれ偏向する複数の光偏向器を有している。
【0003】
このような波長選択スイッチは、たとえば、特開2007−148429号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
波長選択スイッチを通して通信される光信号にエラーデータが発生しないために、波長選択スイッチのフィルタ特性は、その中心波長がITU−GRIDなる規格化された波長に一致している必要があり、また広い透過帯域幅を有していることが望まれる。ここでフィルタ特性とは、たとえば、各光偏向器が偏向する光ビームの波長範囲に相当する。
【0006】
波長選択スイッチのフィルタ特性は、温度変化などの環境変化によって変化し得る。このため、フィルタ特性の中心がITU−GRIDから外れてしまうことがある(以下では、この状態をフィルタ特性の中心波長ずれと呼ぶ)。このような事態は、波長選択スイッチを通して通信される光信号の品質低下を招く。
【0007】
特開2007−148429号公報に開示された波長選択スイッチをはじめ、従来の波長選択スイッチは、このような事態を考慮してフィルタ特性の中心波長ずれを修正する機能を有するものは提案されていない。
【0008】
本発明は、環境変化によって発生するフィルタ特性の中心波長ずれを修正可能な波長選択スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による波長選択スイッチは、波長多重された光信号が入力される入力ポートと、前記光信号が出力される出力ポートと、前記光信号を分波および合波する分波合波器と、前記光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイと、前記入力ポートと前記出力ポートを前記分波合波器と前記光偏向器を介して結合させる光学部材を備えている。前記光偏向器アレイは、前記分波合波器の分波方向に配列された複数の光偏向器と、受光した光量を反映した電気信号を出力する光検出部を有している。波長選択スイッチは、前記光偏向器アレイの位置を変更し得る位置変更部と、前記光検出部による検出結果に基づいて前記位置変更部をサーボ制御する制御部をさらに有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境変化によって発生するフィルタ特性の中心波長ずれを修正可能な波長選択スイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】波長選択スイッチのフィルタ特性と波長選択スイッチを通して通信される光信号の関係を示している。
【図2】フィルタ特性の中心波長ずれによる光信号の品質低下を説明する概念図である。
【図3】フィルタ特性の中心波長ずれが生じていない状態におけるフィルタ特性と光偏向器とビームスポットの位置関係を示している。
【図4】光偏向器アレイの位置ずれによるフィルタ特性の中心波長ずれの発生を説明する概念図である。
【図5】ビームスポットの位置ずれによるフィルタ特性の中心波長ずれの発生を説明する概念図である。
【図6】フィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムのフローを示している。
【図7】第1実施形態の波長選択スイッチの構成を模式的に示している。
【図8】第1実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図9】第1実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図10】第1実施形態におけるフィルタ特性の中心波長ずれ検出の原理を説明する図である。
【図11】第1実施の形態の波長選択スイッチにおけるフィルタ特性の中心波長ずれ修正の動作フローを示している。
【図12】第2実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図13】第2実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの一部を拡大して示している。
【図14】第2実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図15】第3実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの構成を模式的に示している。
【図16】第3実施形態の波長選択スイッチの光偏向器アレイの一部を拡大して模式的に示している。
【図17】第3実施形態の波長選択スイッチの制御部の構成を模式的に示している。
【図18】第3実施形態の波長選択スイッチの動作フローを模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の説明に先立ち、まず、波長選択スイッチにおけるフィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムとその影響について説明する。
【0013】
前述したように、波長選択スイッチのフィルタ特性は、その中心波長がITU−GRIDに一致している必要があり、波長選択スイッチのフィルタ特性は、広い透過帯域幅を有していることが望まれる。
【0014】
波長選択スイッチのフィルタ特性と波長選択スイッチを通して通信される光信号の関係を図1に示す。図1には、ITU−GRIDのひとつに対応したフィルタ特性と光信号(分波されたひとつの波長のビーム)が示されている。図1(A)は、フィルタ特性が広い帯域幅を有している例を示し、図1(B)は、フィルタ特性が狭い帯域幅を有している例を示している。図1(A)に示されように、フィルタ特性が広い帯域幅を有している場合には、信号光は、遮断されることなく伝送される。これに対して、図1(B)に示されるように、フィルタ特性が狭い帯域幅を有している場合には、信号光は、図中の楕円内の部分に対応する光信号の波長成分がカットされる。これは、通信される光信号の品質低下を招き、エラーデータが発生する原因となる。
【0015】
また、図2に示されるように、フィルタ特性の中心波長がずれると、信号光は、図中の円内の部分に対応する光信号の波長成分がカットされる。これは、通信される光信号の品質低下を招き、エラーデータが発生する原因となる。
【0016】
本発明者は研究を通して、振動衝撃や温度変化などの外乱によってフィルタ特性の中心波長がずれ得ることを見出し、フィルタ特性の中心波長とITU−GRIDの間のずれの管理が必要であるとの結論に達した。
【0017】
このフィルタ特性の中心波長は、波長選択スイッチ内の光偏向器とそのミラーに入射する光のビームスポットの位置によって決まる。光偏向器の中心にITU−GRIDなる波長のビームスポット中心がくるとき、フィルタ特性の中心波長はITU−GRIDに一致する(図3参照)。そのため、フィルタ特性の中心波長ずれの原因は、光偏向器アレイの位置ずれやビームスポットの位置ずれが考えられる。
【0018】
フィルタ特性の中心波長ずれの原因の一つとして、環境温度変化などの外乱による光偏向器アレイの設置位置ずれが考えられる。通常、光偏向器アレイは、その中の各光偏向器の中心が、ITU−GRIDの入力光のビームスポットの中心に一致するように配置されている。そのため、図4に示されるように、光偏向器アレイに位置ずれが生じると、これに伴ってフィルタ特性の透過帯域の中心波長が信号光の帯域の中心波長からずれる。このずれが大きい場合には、信号光の帯域の一部がフィルタ特性の透過帯域の外にはみ出すため、光信号の一部の波長成分がカットされてしまう。これは、光信号の品質低下を招き、データエラーの発生の原因となる。
【0019】
また、分波素子やレンズなどの光学部品の変形や位置ずれが原因で、光偏向器への入力光のビームスポットの位置がずれた場合についても同様の事態が生じる(図5参照)。図5に示されるように、光偏向器への入力光のビームスポットの位置が光偏向器の中心からずれると、ビームスポットの中心がフィルタ特性の透過帯域の中心波長から外れる。この場合も、光偏向器アレイに位置ずれが生じた場合と同様に、信号光の帯域の一部がフィルタ特性の透過帯域の外にはみ出すため、信号光の一部の波長成分がカットされてしまい、光信号の品質低下を招き、データエラーの発生の原因となる。
【0020】
以上をまとめると、フィルタ特性の中心波長ずれの発生メカニズムのフローは図6に示されるようになる。まず、環境変化などの外乱が発生する。これにより、波長選択スイッチ内の(光偏向器を含む)光学部品の変形や位置ずれが発生する。そして、波長選択スイッチ内の光路の空間的なずれが発生する。このため、光偏向器とビームスポットの相対的な位置ずれが発生する。そして、フィルタ特性の中心波長ずれが発生する。これにより、光信号の一部がカットされる。その結果、光信号の品質が低下する。
【0021】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
(構成)
図7に示すように、第1実施形態の波長選択スイッチ300は、波長多重された光信号が入力される入力ポート301と、光信号が出力される出力ポート302と、光信号を分波および合波するグレーティングなどの分波合波器304と、光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイ306と、入力ポート301と出力ポート302を分波合波器304と光偏向器アレイ306を介して結合させるレンズなどの光学部材303とを有している。
【0022】
分波合波器304は、入力ポート301から入力された光信号を、波長の異なる複数のビームに分割する機能を有している。各ビームは、波長の広がりを有しており、その中心波長はITU−GRIDに一致している。
【0023】
光偏向器アレイ306は、複数の光偏向器305と、光偏向器305から外れた光信号310を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部307を有している。一例では、光偏向器305はMEMSミラーで構成され、したがって光偏向器アレイ306はMEMSミラーアレイで構成され得る。ここで、MEMSミラーは、たとえば、二軸周りに揺動可能なミラーを備え、ミラーの反射面の向き(たとえば反射面に立てた法線の方向)を電圧などの電気信号の入力によって制御し得るMEMS素子を意図している。しかし光偏向器305は、MEMSミラーに限定されるものではなく、光を偏向可能な他の任意の素子で構成されてよい。
【0024】
波長選択スイッチ300はさらに、光偏向器アレイ306に入射する光信号に対する光偏向器アレイ306の位置を変更し得る位置変更部309と、光検出部307による検出結果に基づいて位置変更部309をサーボ制御する制御部308を有している。位置変更部309は、たとえば、光偏向器アレイ306を移動可能に支持しているモータなどにより駆動されるステージで構成され得る。
【0025】
光偏向器アレイ306の構成について図8を参照しながら説明する。図8に示すように、光偏向器アレイ306は、複数たとえばN個(Nは自然数)の光偏向器305−1〜305−Nを有している。図8において、光偏向器305−1は、最も左側に位置する光偏向器を表し、光偏向器305−Nは、最も右側に位置する光偏向器を表している。光偏向器305−M(1≦M≦N)は、光偏向器305−1,305−Nを含め、左側を起点としてM番目の光偏向器を表している。
【0026】
光偏向器305−1〜305−Nは、分波合波器304の分波方向に配列されている。ここで、分波合波器304の分波方向とは、光偏向器アレイ306上における、分波合波器304によって分波された複数の波長のビームの広がり方向を意味する。分波合波器304と光偏向器アレイ306の間にミラーなどが存在する場合には、光偏向器アレイ306上における複数の波長のビームの広がり方向は、分波直後の複数の波長のビームの広がり方向と必ずしも一致しないが、ここでは便宜上そのように呼ぶ。
【0027】
光偏向器アレイ306はさらに、分波合波器304の分波方向に沿って配置された一対の光検出器307−1,307−2を有している。光検出器307−1,307−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、光偏向器305−1〜305−Nの全体の両側に配置されている。これら一対の光検出器307−1,307−2は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は一対の光検出器307−1,307−2を有している。
【0028】
制御部308の構成について図9を参照しながら説明する。図9に示すように、制御部308は、光検出器307−1,307−2からの電気信号(電圧値)を光検出器ごとに一時的に格納・更新することによりその電気信号の値をモニタするモニタ部600と、光検出器307−1,307−2の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納しているLUT(ルックアップテーブル)602と、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する演算部601と、演算部601から制御信号を受けて位置変更部309を駆動するドライバ603を有している。
【0029】
(作用)
次に第1実施形態の波長選択スイッチ300の動作について説明する。
図7および図8を参照しながら、波長選択スイッチ300において、波長多重された光信号の入力から出力までの基本的な動作について説明する。まず図7において、波長多重された光信号が、入力ポート301から入力され、光学部材303を介して分波合波器304に入射し、ここで波長に応じて異なる角度方向に回折し、複数の波長のビームに分離され、光偏向器アレイ306に到達する。光偏向器アレイ306は、図8に示すように、複数の波長のビームにそれぞれ対応した光偏向器305−1〜305−Nを有しており、複数の波長のビームをそれぞれ独立に所定の角度に偏向し得る。具体的には、光偏向器305が静電引力型の可動ミラーである場合には、所定の電圧を与えることにより可動ミラーが所定の角度となる。偏向された光信号は入力ポートからの光路とは異なる光路を通り、再び分波合波器304と光学部材303を介して出力ポート302に出力される。そのため光偏向器305−1〜305−Nのうち指定したミラーに対応した波長の光信号のみを選択して出力することが可能である。以上が波長選択スイッチ300における基本的な動作である。
【0030】
ここで、環境変化などの外乱によりフィルタ特性の中心波長ずれが起こった場合を想定し、本実施形態によるフィルタ特性の中心波長ずれの修正方法について説明する。修正方法は大きく分けて、(1)中心波長ずれの検出、(2)中心波長ずれの方向と量の演算、(3)光偏向器アレイ306の位置変更(移動)、以上3つの項目となる。図7を用いて、修正方法の概要について以下に説明する。光偏向器アレイ306の設置位置のずれやビームスポットの位置のずれによりフィルタ特性の中心波長ずれが起こったときに、光信号の一部を受光していた光検出部307の受光量の増減からずれ方向とずれ量を演算し、ずれ量分をキャンセルするように位置変更部309を駆動する。これにより光偏向器アレイ306の設置位置を変更し、フィルタ特性の中心波長ずれを修正する。
【0031】
以下、修正方法の詳細について図8と図9と図10を用いて説明する。
【0032】
まず(1)フィルタ特性の中心波長ずれの検出方法について説明する。
【0033】
図10に示すように、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号はN番目の光偏向器305−Nに入射してビームスポット700を形成する。フィルタ特性の中心波長ずれが生じていない状態では、ビームスポット700の中心は光偏向器305−Nの中心に位置する。この時のビームスポット700の中心座標702を基準0とする。ここで、環境変化などの外乱が生じて、ビームスポット700が+方向に移動してビームスポット701になったとする。この時のビームスポットの中心座標703を+x1とする。ビームスポット701の一部の光は、光偏向器305−Nから外れて、光検出器307−2に入射する。光検出器307−2は、その外れた光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。光検出器307−2が出力する電気信号の増大減少をモニタすることにより、+方向の中心波長ずれの発生を検出することができる。
【0034】
また、−方向の中心波長ずれが発生した場合には、同様の原理で、光検出器307−1が出力する電気信号の増大減少をモニタして、1番目の光偏向器305−1に対応する波長のビームスポットの−方向の移動を検出することにより、−方向の中心波長ずれの発生を検出することができる。
【0035】
ここまでがフィルタ特性の中心波長ずれの検出方法である。
【0036】
次にフィルタ特性の中心波長ずれの検出後の(2)ずれ量演算方法と(3)ずれ対象の位置変更方法について説明する。
【0037】
図11に中心波長ずれ検出後から修正までの動作フローを示す。
【0038】
(工程801)補正を開始する。たとえば、光検出器307−1,307−2や制御部308の各部の初期化処理をおこなう。
【0039】
(工程802)モニタ部600において、光検出器307−1,307−2の電気信号をモニタする。
【0040】
(工程803)演算部601において、光検出器307−1,307−2の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0041】
(工程804)光検出器307−1,307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程801へ移行する。たとえば、光検出器307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致する場合には、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号は、図10のビームスポット700を形成していると想像される。一方、光検出器307−1,307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致しない場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更するために、工程805へ移行する。たとえば、光検出器307−2の電気信号がキャリブレーションデータと一致しない場合には、N番目の光偏向器305−Nに対応する波長の光信号は、図10のビームスポット701を形成していると想像される。
【0042】
(工程805)演算部601において、キャリブレーションデータと電気信号の差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0043】
(工程806)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動して光偏向器アレイ306の位置を変更する。その後、工程801へ移行(フィードバック制御)する。
【0044】
これらの一連の工程801〜806によって、たとえば、光偏向器305−1,305−Nに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が光偏向器305−1,305−Nの中心に維持される。したがって、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心もまた、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心に維持される。その結果、波長選択スイッチ300のフィルタ特性の中心とITU−GRIDの一致が維持される。
【0045】
本実施形態では、光偏向器アレイ306を一次元的に移動させているので、位置変更部309は、一次元的に移動可能なステージで構成されてよい。
【0046】
(効果)
以上の説明からわかるように、本実施形態の波長選択スイッチ300では、環境変化などの外乱により光偏向器アレイ306などの光学部品の位置ずれが生じ、それに伴うフィルタ特性の中心波長ずれが発生した場合でも、フィルタ特性の中心波長ずれが速やかに修正される。
【0047】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
第2実施形態の波長選択スイッチの基本構成は第1実施形態と同じであり、したがって図7に示される通りである。第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器アレイ306の構成と制御部308の機能の点において、第1実施形態の波長選択スイッチと相違している。以下では、相違部分に重点をおいて説明する。つまり、以下の説明で触れない部分は、第1実施形態と同様である。
【0048】
(構成)
第2実施形態では、図12と図13に示すように、光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している。光検出器307−M−1,307−M−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。これら複数対の光検出器307−M−1,307−M−2は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は、複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している
第2実施形態の制御部308では、図14からわかるように、モニタ部600は、光検出器307−M−1,307−M−2からの電気信号(電圧値)をモニタする。モニタ部600はまた、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2の選択機能を有している。またLUT602は、光検出器307−M−1,307−M−2の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納している。さらに演算部601は、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する。
【0049】
(作用)
モニタ部600は、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2を選択し、その選択した光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号をモニタする。選択の対象は、入力される光信号に含まれる複数の波長のビームが入射する複数の光偏向器305−Mに対応する複数の光検出器307−M−1,307−M−2である。モニタ部600は、たとえば、それら複数の光検出器307−M−1,307−M−2のうちのひとつを選択し、その電気信号をモニタしてよい。または、複数の光検出器307−M−1,307−M−2のうちのいくつかまたはすべてを選択し、それらの電気信号を順番にモニタしてもよい。演算部601は、モニタ部600がモニタする電気信号に対して、第1実施形態と同様の処理をおこなうことにより、フィルタ特性の中心波長ずれの検出と修正をおこなう。
【0050】
(効果)
第2実施形態の波長選択スイッチは、第1実施形態の波長選択スイッチと同じ利点を有しているほか、次の利点を有している。
【0051】
第1実施形態の波長選択スイッチは、両端の光偏向器305−1,305−Nのいずれかに対応する波長の光信号が入力された場合にのみ、中心波長ずれの検出および修正を実施できる。言い換えれば、光偏向器305−1,305−Nのいずれかに対応する波長の光信号が入力されない限り、中心波長ずれの検出および修正を実施できない。
【0052】
これに対して、第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器305−1〜305−Nのいずれに対応する波長の光信号が入力された場合であっても、中心波長ずれの検出および修正を実施できる。波長選択スイッチの使用時には、光偏向器305−1〜305−Nの少なくともひとつ(実際は二つ以上)に対応する波長の光信号が必ず入力されるので、第2実施形態の波長選択スイッチでは、使用のあいだは常に、中心波長ずれの検出および修正が実施される。
【0053】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態の波長選択スイッチについて説明する。
本来、波長選択スイッチには、光学的損失の小さいことが望まれている。ビームスポットと光偏向器の位置ずれは、ビームスポットの一部の光が光偏向器から外れて光学的損失を引き起こす要因となる。ビームスポットと光偏向器の分波方向の位置ずれは、フィルタ特性の中心波長ずれ防止の観点から修正されるべきであることは前述したとおりである。これに加えて、光学的損失低減の観点を加味すると、さらに、ビームスポットと光偏向器の垂直方向の位置ずれも修正されることが好ましい。
【0054】
第3実施形態の波長選択スイッチは、このような観点のもと、分波方向に加えて垂直方向に関してもビームスポットと光偏向器の位置ずれを修正し得る構成となっている。
【0055】
第3実施形態の波長選択スイッチの基本構成は第1実施形態と同じであり、したがって図7に示される通りである。第2実施形態の波長選択スイッチは、光偏向器アレイ306の構成と制御部308の機能の点において、第1実施形態の波長選択スイッチと相違している。以下では、相違部分に重点をおいて説明する。つまり、以下の説明で触れない部分は、第1実施形態と同様である。
【0056】
(構成)
第3実施形態では、図15と図16に示すように、光偏向器アレイ306は、第2実施形態と同様に、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−1,307−M−2を有している。光検出器307−M−1,307−M−2は、分波合波器304の分波方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。さらに、光偏向器アレイ306は、分波合波器304の分波方向に沿って配置された複数対の光検出器307−M−3,307−M−4を有している。光検出器307−M−3,307−M−4は、分波合波器304の分波方向の垂直方向に沿った、各光偏向器305−Mの両側に配置されている。これら複数対の光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4は、図7に示された光検出部307を構成している。言い換えれば、光検出部307は、複数対の光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4を有している。
【0057】
第3実施形態の制御部308では、図17からわかるように、モニタ部600は、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4からの電気信号(電圧値)をモニタする。モニタ部600は、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4の選択機能を有している。またLUT602は、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4の電圧値の初期値すなわちフィルタ特性の中心波長ずれが未発生の状態の電圧値(キャリブレーションデータ)を格納している。さらに演算部601は、モニタ部600の出力に対してLUT602を参照してフィルタ特性の中心波長ずれの発生を検出し、そのずれ量を修正する制御信号を出力する。
【0058】
(作用)
第3実施形態におけるフィルタ特性の中心波長ずれの修正について図18を参照しながら説明する。
【0059】
(工程901)補正を開始する。たとえば、光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4や制御部308の各部の初期化処理をおこなう。
【0060】
(工程902)モニタ部600において、モニタする光検出器307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4を選択する。選択の手法は第2実施形態と同様である。さらに、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号をモニタする。
【0061】
(工程903)演算部601において、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0062】
(工程904)光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とキャリブレーションデータが一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程907へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、垂直方向に関して、光偏向器305−Mの中心にビームスポットを形成していると想像される。一方、光検出器307−M−3,307−M−4の電気信号とキャリブレーションデータが一致しない場合には、光偏向器アレイ306の垂直方向の位置を変更するために、工程905へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、垂直方向に関して、光偏向器305−Mの中心からずれた位置にビームスポットを形成していると想像される。
【0063】
(工程905)演算部601において、電気信号とキャリブレーションデータの差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0064】
(工程906)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動し、光偏向器アレイ306の垂直方向の位置を変更する。その後、工程907へ移行する。
【0065】
(工程907)モニタ部600において、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号をモニタする。
【0066】
(工程908)演算部601において、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とLUTに格納されているキャリブレーションデータを比較する。
【0067】
(工程909)光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とキャリブレーションデータが一致する場合には、光偏向器アレイ306の位置を変更することなく、工程901へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心にビームスポットを形成していると想像される。一方、光検出器307−M−1,307−M−2の電気信号とキャリブレーションデータが一致しない場合には、光偏向器アレイ306の分波方向の位置を変更するために、工程910へ移行する。この場合、光偏向器305−Mに対応する波長の光信号は、分波方向に関して、光偏向器305−Mの中心からずれた位置にビームスポットを形成していると想像される。
【0068】
(工程910)演算部601において、電気信号とキャリブレーションデータの差分量に基づいて位置変更部309の駆動量に相当する制御信号をドライバ603に出力する。
【0069】
(工程911)ドライバ603において、制御信号に基づいて位置変更部309を駆動し、光偏向器アレイ306の分波方向の位置を変更する。その後、工程901へ移行する。
【0070】
これらの一連の工程901〜911によって、選択された光偏向器305−Mに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が、分波方向と垂直方向の両方に関して、光偏向器305−Mの中心に維持される。したがって、すべての光偏向器305−1〜305−Nに対応する波長の光信号が形成するビームスポットの中心が、それぞれ、分波方向と垂直方向の両方に関して、光偏向器305−1〜305−Nの中心に維持される。
【0071】
図18の動作フローによる処理では、垂直方向の検出と修正の後に分波方向の検出と修正をおこなっているが、これは単なる例示であり、それらの順序は逆であってもかまわない。
【0072】
本実施形態では、光偏向器アレイ306を二次元的に移動させているので、位置変更部309は、二次元的に移動可能ないわゆるXYステージで構成されてよい。
【0073】
(効果)
第3実施形態の波長選択スイッチは、第2実施形態の波長選択スイッチと同じ利点を有しているほか、次の利点を有している。
【0074】
ビームスポットと光偏向器の分波方向の位置ずれに加えて垂直方向の位置ずれも修正されるので、波長選択スイッチの光学的損失が低減される。
【0075】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0076】
300…波長選択スイッチ、301…入力ポート、302…出力ポート、303…光学部材、304…分波合波器、305,305−1〜305−N…光偏向器、306…光偏向器アレイ、307…光検出部、307−1,307−2,307−M−1,307−M−2,307−M−3,307−M−4…光検出器、308…制御部、309…位置変更部、310…外れた光信号、600…モニタ部、601…演算部、603…ドライバ、700,701…ビームスポット、702,703…中心座標。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された光信号が入力される入力ポートと、
前記光信号が出力される出力ポートと、
前記光信号を分波および合波する分波合波器と、
前記光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイと、
前記入力ポートと前記出力ポートを前記分波合波器と前記光偏向器を介して結合させる光学部材とを備え、
前記光偏向器アレイは、前記分波合波器の分波方向に配列された複数の光偏向器と、前記光偏向器から外れた光信号を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部を有しており、さらに、
前記光偏向器アレイの位置を変更し得る位置変更部と、
前記光検出部による検出結果に基づいて前記位置変更部をサーボ制御する制御部を有している波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された一対の光検出器を有し、前記一対の光検出器は、前記分波方向に沿った、前記複数の光偏向器の全体の両側に配置されている、請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された複数対の光検出器を有し、各対の光検出器は、前記分波方向に沿った、前記各光偏向器の両側に配置されている、請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された複数対の第二の光検出器をさらに有し、各対の第二の光検出器は、前記分波方向の垂直方向に沿った前記各光偏向器の両側に配置されている、請求項3に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記位置変更部は、前記光偏向器アレイを少なくとも前記分波方向に移動可能に支持しているステージを有している、請求項1〜4のいずれかひとつに記載の波長選択スイッチ。
【請求項1】
波長多重された光信号が入力される入力ポートと、
前記光信号が出力される出力ポートと、
前記光信号を分波および合波する分波合波器と、
前記光信号を波長ごとに偏向し得る光偏向器アレイと、
前記入力ポートと前記出力ポートを前記分波合波器と前記光偏向器を介して結合させる光学部材とを備え、
前記光偏向器アレイは、前記分波合波器の分波方向に配列された複数の光偏向器と、前記光偏向器から外れた光信号を受光しその光量を反映した電気信号を出力する光検出部を有しており、さらに、
前記光偏向器アレイの位置を変更し得る位置変更部と、
前記光検出部による検出結果に基づいて前記位置変更部をサーボ制御する制御部を有している波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された一対の光検出器を有し、前記一対の光検出器は、前記分波方向に沿った、前記複数の光偏向器の全体の両側に配置されている、請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された複数対の光検出器を有し、各対の光検出器は、前記分波方向に沿った、前記各光偏向器の両側に配置されている、請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記光検出部は、前記分波方向に沿って配置された複数対の第二の光検出器をさらに有し、各対の第二の光検出器は、前記分波方向の垂直方向に沿った前記各光偏向器の両側に配置されている、請求項3に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記位置変更部は、前記光偏向器アレイを少なくとも前記分波方向に移動可能に支持しているステージを有している、請求項1〜4のいずれかひとつに記載の波長選択スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−104918(P2013−104918A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246815(P2011−246815)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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